説明

電動乗用草刈機

【課題】走行面の起伏によらず刈高さを一定に保持可能な電動乗用草刈機を提供する。
【解決手段】モアブレードと、モアデッキ15と、モアデッキ15上面に載置されたモアモータ50と、モアデッキ15を懸架するデッキ支持フレーム37と、モアデッキ15をデッキ支持フレーム37に対して揺動自在に取り付けるジンバル機構36と、モアデッキ15の前部に取り付けられ、草刈作業時に接地して走行面の起伏に追随するゲージホイール23と、モアデッキ15とデッキ支持フレーム37との間に取り付けられ、モアデッキ15を下向きに付勢する複数の付勢手段31A,31Bとを備える。また、モアデッキ15の長手方向両側にそれぞれ少なくとも1つのゲージホイール23を備え、それぞれのゲージホイール23の近傍で、かつ、モアデッキ15の上面に付勢手段31A,31Bの下端を取り付けるとともに、付勢手段31A,31Bの上端をデッキ支持フレーム37に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転して草を刈るモアブレードと、モアブレードを上方および側方から覆う略深皿状のモアデッキとを備え、モータによってモアブレードを回転させる乗用草刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止の観点から、温室効果ガスを含む排気ガスを規制する動きが社会的潮流となってきた。この動きに対する対応は自動車産業において顕著であり、ハイブリッドカー、電気自動車など、いわゆるエコカーの開発が進められている。特に、近年、バッテリーを電源とした電気自動車の実用化に対する技術開発が活発化している。
【0003】
しかし、このような技術開発は、農業機械の分野においてはさほど活発ではない。特に、乗用の芝刈機の分野においては実施可能レベルの技術開発がなされていないのが現状である。したがって、電動による乗用草刈機を開発することは重要な意義を持っている。
【0004】
一方、従来より、エンジン搭載の乗用ローンモア(乗用草刈機)は、回転して芝を刈る2つのモアブレードを車両のほぼ幅方向に並べて備え、この2つのモアブレードを上方および側方から覆う1つの楕円深皿状のモアデッキを備える。このモアデッキは、デッキアームを介して機体のシャーシに取り付けられている。また、モアデッキの前後には、複数の車輪が取り付けられており、芝刈り作業を行う際には、この車輪は走行面に接地するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−095716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、乗用ローンモアでは走行面の起伏に沿って芝の刈高さを一定にすることが重要である。上述の乗用ローンモアは、モアデッキの車輪が接地した状態で芝刈り作業を行うが、モアデッキをフレーム状のデッキアームを介してシャーシに懸架しているため、モアデッキが機体と独立して上下動することはできない。このため、走行面の起伏に沿って芝の刈高さを一定にすることができないという問題があった。そこでこの発明は、走行面の起伏によらず刈高さを一定に保持可能な電動乗用草刈機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため請求項1に記載の発明は、回転して草を刈る複数のモアブレードと、
該モアブレードを上方および側方から覆う楕円深皿状のモアデッキと、
該モアデッキ上面に載置されるとともに前記モアブレードに回転軸を連結し、かつ、前記複数のモアブレードにそれぞれに対応して備えられた複数のモアモータと、
前記モアデッキを懸架するデッキ支持フレームと、
前記モアデッキを前記デッキ支持フレームに対して揺動自在に取り付けるリンク手段と、
前記モアデッキの前部に取り付けられ、草刈作業時に接地して走行面の起伏に追随する少なくとも2つのゲージホイールと、
前記モアデッキと前記デッキ支持フレームとの間に取り付けられ、前記モアデッキを下向きに付勢する複数の付勢手段とを備える電動乗用草刈機であって、
前記ゲージホイールを前記モアデッキの長手方向両側にそれぞれ少なくとも1つ備え、
前記それぞれのゲージホイールの近傍で、かつ、前記モアデッキの上面に前記付勢手段の下端を取り付けるとともに、該付勢手段の上端を前記デッキ支持フレームに取り付けたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電動乗用草刈機において、前記付勢手段を少なくとも4つ備えるとともに、該付勢手段が2つで1つの付勢手段ユニットを構成し、
該付勢手段ユニットを複数備えるとともに、該それぞれの付勢手段ユニットは前記複数のモアモータのいずれかに固有に対応し、
前記それぞれの付勢手段ユニットを構成する2つの付勢手段の下端は、対応する前記モアモータの回転軸の中心から同一距離に位置し、かつ、前記複数のモアモータを載置した前記モアデッキの重心から同一距離に位置し、さらに、1つのモアモータの回転軸の中心から前記2つの付勢手段の下端までの距離は、他のモアモータの回転軸の中心から前記2つの付勢手段の下端までの距離と同一であるとともに、
前記それぞれの付勢手段ユニットを構成する2つの付勢手段の上端は、対応する前記モアモータの回転軸の中心から同一距離に位置し、かつ、前記複数のモアモータを載置した前記モアデッキの重心から同一距離に位置し、さらに、1つのモアモータの回転軸の中心から前記2つの付勢手段の上端までの距離は、他のモアモータの回転軸の中心から前記2つの付勢手段の上端までの距離と同一であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の電動乗用草刈機において、前記リンク手段がジンバル機構であり、
前記モアデッキ上に載置された2つのモアモータを前記ジンバル機構の2つの軸のうちの1つで連結するとともに、該ジンバル機構を前記デッキ支持フレームに固設したことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の電動乗用草刈機において、前記ジンバル機構の、前記モアモータと連結されていない軸を前進方向に向けて備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、回転して草を刈る複数のモアブレードと、モアブレードを上方および側方から覆う楕円深皿状のモアデッキと、モアデッキ上面に載置されるとともにモアブレードに回転軸を連結し、かつ、複数のモアブレードにそれぞれに対応して備えられた複数のモアモータと、モアデッキを懸架するデッキ支持フレームと、モアデッキをデッキ支持フレームに対して揺動自在に取り付けるリンク手段と、モアデッキの前部に取り付けられ、草刈作業時に接地して走行面の起伏に追随する少なくとも2つのゲージホイールと、モアデッキとデッキ支持フレームとの間に取り付けられ、モアデッキを下向きに付勢する複数の付勢手段とを備える。また、ゲージホイールをモアデッキの長手方向両側にそれぞれ少なくとも1つ備え、それぞれのゲージホイールの近傍で、かつ、モアデッキの上面に付勢手段の下端を取り付けるとともに、付勢手段の上端をデッキ支持フレームに取り付ける。
【0012】
このため、モアデッキが走行面の起伏に沿って、電動乗用草刈機の機体とは独立して、揺動することができる。よって、例えば、電動乗用草刈機の走行方向の両側にそれぞれ異なる地形があるような場合であっても、モアデッキを起伏に自在に追随させることができる。したがって、走行面の起伏によらず刈高さを一定に保持可能な電動乗用草刈機を提供することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、付勢手段を少なくとも4つ備えるとともに、付勢手段が2つで1つの付勢手段ユニットを構成し、付勢手段ユニットを複数備えるとともに、それぞれの付勢手段ユニットは複数のモアモータのいずれかに固有に対応し、それぞれの付勢手段ユニットを構成する2つの付勢手段の下端は、対応するモアモータの回転軸の中心から同一距離に位置し、かつ、複数のモアモータを載置したモアデッキの重心から同一距離に位置し、さらに、1つのモアモータの回転軸の中心から2つの付勢手段の下端までの距離は、他のモアモータの回転軸の中心から2つの付勢手段の下端までの距離と同一であるとともに、それぞれの付勢手段ユニットを構成する2つの付勢手段の上端は、対応するモアモータの回転軸の中心から同一距離に位置し、かつ、複数のモアモータを載置したモアデッキの重心から同一距離に位置し、さらに、1つのモアモータの回転軸の中心から2つの付勢手段の上端までの距離は、他のモアモータの回転軸の中心から2つの付勢手段の上端までの距離と同一である。
【0014】
このため、付勢手段を用いてモアデッキをその上面より下方に向けて均等に付勢することができ、いっそうモアデッキを起伏に自在に追随させることができる。したがって、走行面の起伏によらず刈高さを一定に保持可能な電動乗用草刈機を提供することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、リンク手段がジンバル機構であり、モアデッキ上に載置された2つのモアモータをジンバル機構の2つの軸のうちの1つで連結するとともに、ジンバル機構をデッキ支持フレームに固設したので、簡単な構成でモアデッキを揺動自在にデッキ支持フレームに取り付けることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、ジンバル機構の、モアモータと連結されていない軸を機体の前進方向に向けて備えるので、ジンバル機構を確実に機能させることができ、したがって、モアデッキを起伏に追随するように確実に揺動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の電動乗用草刈機の一例としての、電動ローンモアの平面図である。
【図2】その左側面図である。
【図3】モアデッキの平面図である。
【図4】モアデッキの斜視図である。
【図5】その要部拡大斜視図である。
【図6】(a)はモータブラケットの斜視図、(b)はバネブラケット32A,32Bの斜視図、(c)はバネブラケット33の斜視図、(d)はバネブラケット34の斜視図である。
【図7】(a)は付勢手段の斜視図、(b)はその一部分解斜視図である。
【図8】(a)はデッキ支持フレームとメインフレームとの取り付けを示す側面図、(b),(c)はその部分平面図である。
【図9】(a)はジンバル機構の取り付けを示すための斜視図、(b)はジンバル機構とモアモータとの取り付けを示す斜視図である。
【図10】付勢手段の上下端の取り付け位置を示すための図である。
【図11】この例の電動ローンモアで芝刈りをする様子を示す図であり、(a)はモアデッキ近傍の走行面の右側が隆起している場合を示す正面図、(b)はそのときの左側面図である。
【図12】この発明の電動乗用草刈機に備えるモアデッキの取付構造の別の例を示す斜視図である。
【図13】その一部拡大斜視図である。
【図14】この発明の電動乗用草刈機に備えるモアデッキの取付構造のさらに別の例を示す一部拡大斜視図である。
【図15】この発明の電動乗用草刈機に備えるモアデッキの取付構造のさらにまた別の例を示す斜視図である。
【図16】その一部拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。なお、この明細書において、「前」とは電動乗用草刈機の前進方向を、「後」とは後進方向を、「左右」とはそれぞれ、前進方向に向かって「左右」を、「上下」とはそれぞれ、車両の「上下」方向を意味するものとする。図1,2にはそれぞれ、この発明の電動乗用草刈機の一例としての、電動ローンモア10の左側からの平面図、側面図を示す。電動ローンモア10は、前輪11,11、後輪12,12、運転席13、走行操作レバー14,14、モアブレード(不図示)、モアデッキ15などを備えてなる。前輪11はその中心に金属製のホイールを備え、ホイールの外側にはゴム製のタイヤを備える。ホイールの回転中心には車軸11Aを貫通させる。ホイールは、車軸11Aに対して回転自在となっている(すなわち、前輪11は従動回転する)。
【0019】
車軸11Aは、前輪ブラケット16の下端部に取り付けられている。前輪ブラケット16は、金属板を門型状に形成してなる。前輪ブラケット16の天面には円筒部17を載置する。円筒部17の中心には回動軸を備え、回動軸の下端は前輪ブラケット16にボルトなどで固設する。円筒部17の上端にはドーナツ状の金属板の蓋部を固設し、蓋部の中心には回動軸を回動自在に突出させる。左右の円筒部17の側面には、横フレーム19の両端を溶接などで固定する。そして、横フレーム19の、左右の円筒部17,17から少し隔たった位置にはそれぞれメインフレーム(シャーシ)18,18の先端を溶接などで固定する。なお、円筒部17は金属製の円筒、メインフレーム18および横フレーム19は、金属製の角筒である。また、メインフレーム18,18は左右側で対を成しており、それぞれ電動ローンモア10の前進方向に延びて配置される。
【0020】
メインフレーム18,18の上面には金属板からなる床板FLを渡し掛け、ボルトなどで固設する。また、メインフレーム18,18の間には、機体(電動ローンモア10)の幅方向に沿って支柱BEを2つ配置し、支柱BEの前後端をメインフレーム18,18の側面に溶接などで固設する。支柱BEはL型鋼である。
【0021】
メインフレーム18の下方にはモアデッキ15を備える。モアデッキ15内には2つのモアブレード(不図示)を回転自在に備える。それぞれのモアブレードの中央部は、モアデッキ15の上面に載置された2つのモアモータ50の回転軸にそれぞれ固設されている。
【0022】
モアデッキ15の前部の長手方向両側にはそれぞれ、ブラケット22を介してゲージホイール23を取り付ける。ゲージホイール23は、その中心に金属製のホイールを備え、ホイールの外側にはゴム製のタイヤを備えてなる。ホイールの回転中心には車軸23Aを貫通させる。ホイールは、車軸23Aに対して回転自在となっている(すなわち、ゲージホイール23は従動回転する)。なお、ゲージホイール23は走行面の起伏を検出する検出手段である。したがって、芝刈りを行うときは、ゲージホイール23は常に走行面に接地した状態である。
【0023】
車軸23Aは、補助前輪ブラケット24の下端部に取り付けられている。補助前輪ブラケット24は、板状の鉄を門型に形成してなる。補助前輪ブラケット24の天面には円筒部25を載置する。円筒部25の中心には回動軸を備え、回動軸の下端は補助前輪ブラケット24にボルトなどで固設する。円筒部25の上端にはドーナツ状の鉄板の蓋部を固設し、蓋部の中心には回動軸を回動自在に突設する。
【0024】
モアデッキ15は、デッキアーム21A,21Bを介してメインフレーム18に昇降自在に懸架されている。デッキアーム21A,21Bの先端はそれぞれメインフレーム18に回動自在に取り付けられている。なお、図2では、モアデッキ15は上昇した状態を示している。
【0025】
電動ローンモア10の前部の床板FL上には、フットレストFRを設ける。フットレストFRは、運転席13に向かって傾斜した面を有し、車幅方向に延びた三角筒状に形成される。
【0026】
運転席13の下方にはバッテリー30を2つ並べて平置きにする。バッテリー30は、リチウムイオン電池を用いることが望ましい。詳しくは、二酸化マンガンリチウム電池、フッ化黒鉛リチウム電池、塩化チオニルリチウム電池、酸化銅リチウム電池、二硫化鉄リチウム電池、ヨウ素リチウム電池など、エネルギー密度が高く、寿命が長いものを用いることが望ましい。2つのバッテリー30は直列に接続される。なお、バッテリー30の上方には不図示の収納ケースを備え、バッテリー30のコントローラ(電圧均等装置)などの電子機器を収納する。バッテリー30のコントローラは、バッテリー30の微小な電圧の変動を補正するものである。
【0027】
そして、バッテリー30を上方から覆うようにカウル28を設ける。カウル28は強化プラスチック製で複雑な曲面形状を一体成形によって形成する。カウル28の上面には、座席載置部材(不図示)を介して運転席13を取り付ける。座席載置部材は、運転席13を運転者の好みに応じて前後方向にスライド可能とするものである。なお、カウル28の左側面には、給電口を設けて、バッテリー30を充電できるようにしてもよい。この場合、給電口にはプラグを備え、家庭の電源に接続した電気コードを差し込んで、バッテリー30を充電する。バッテリー30とプラグとの間にはACアダプタおよび充電装置を適宜備える。
【0028】
バッテリー30の下方には、走行用モータ31を備える。走行用モータ31は、左右の後輪12,12に対して1つずつ備える。なお、走行用モータ31は、インホイールモータを適用してもよい。走行用モータ31のモータドライバは、バッテリー30上の収納ケース(不図示)に収納する。
【0029】
走行用モータ31のモータドライバは、走行操作レバー14の傾動量に応じて走行用モータ31の回転方向および回転速度を制御する。なお、モアモータ20の回転は、走行用モータ31の回転数と連動するように制御される。すなわち、走行スピードを速めると、モアブレードの回転数も速まり、走行スピードを落とすと、モアブレードの回転数も遅くなる。
【0030】
走行操作レバー14は傾動可能に設けられ、運転者が走行操作レバー14を前に倒すと走行用モータ31が前進方向に回転する。一方、走行操作レバー14が後に倒されると走行用モータ31は後進方向に回転する。さらに、走行操作レバー14の傾動度合いによって走行用モータ31の回転速度が変化する。すなわち、走行操作レバー14を大きく前(後)に倒すと、走行用モータ31が前進(後進)方向により早く回転し、走行操作レバー14を小さく前(後)に倒すと、走行用モータ31が前進(後進)方向にゆっくりと回転する。運転席13の左右に備える走行操作レバー14,14はそれぞれ左右の走行用モータ31,31の操作に対応している。したがって、運転者は、左右の走行操作レバー14,14を前後に適宜操作することで、前後進、左右折、旋回などを行うことができる。
【0031】
なお、符号27はデッキ昇降操作レバーであり、このレバーを操作することでモアデッキ15の高さを調整することができる。
【0032】
図3,4には、モアデッキ15の取付構造の詳細を示す。なお、図3中に示す符号Fは電動ローンモア10の前進方向である。モアデッキ15の上面には、モアモータ50,50を所定の間隔をもって並べて固設する。なお、符号50Aはモアモータ50の回転軸であり、モアブレードと反対側に突出した部分である。モアモータ50は、付勢手段31A,31Bを介してデッキ支持フレーム37に取り付けられている。デッキ支持フレーム37は、デッキアーム21A,21Bを介してメインフレーム18に取り付けられている。なお、デッキ支持フレーム37の下部には、ジンバル機構(リンク手段)36の一方の軸36Aを取り付ける。ジンバル機構36の他方の軸36Bの両端には、モアモータ50,50を固設する。また、ジンバル機構36の軸36Aおよびデッキ支持フレーム37の長手方向を電動ローンモア10の前進方向Fに一致するように設ける。
【0033】
図5にはモアモータ50付近の詳細図、図6には付勢手段31A,31Bを取り付けるための各部材の斜視図、図7には、付勢手段の斜視図を示す。モアモータ50,50の前後方向の両側面には、モータブラケット40,40をボルトにて固設する。モータブラケット40上には、一対の付勢手段31A,31Bの下端をそれぞれバネブラケット32Bを介して回動自在に取り付ける。一対の付勢手段31A,31Bは同一の規格のものを用いる。なお、1つのモアモータ50の前後に取り付けられた付勢手段31A,31Bは1つの固有なセットを構成し、これを付勢手段ユニットと称す。したがって、モアデッキ15には2つの付勢手段ユニットを備える。付勢手段31Aの上端は、バネブラケット33を介してデッキ支持フレーム37に回動自在に取り付ける。一方、付勢手段31Bの上端は、バネブラケット34を介してデッキ支持フレーム37に回動自在に取り付ける。
【0034】
モータブラケット40は、金属製の側部40Aと底部40Bとで構成される。側部40Aには、貫通孔40AHを4つ備える。この貫通孔40AHは、モータブラケット40をモアモータ50に固定するためにボルトを貫通させるためのものである。また、底部40Bは端部にて上方に立ち上がって側壁を形成する。底部40BにはピンP3を貫通させるための貫通孔40BHを形成する。
【0035】
バネブラケット32Aは、矩形の金属板を2箇所で折り曲げて略U字状に形成してなる。バネブラケット32Aは、一対の側部32A1,32A1と底部32A2とで構成される。側部32A1にはピンP1を貫通させるための貫通孔32AH2を形成する。また、底部32A2にはピンP3を貫通させるための貫通孔32AH1を形成する。なお、バネブラケット32Bはバネブラケット32Aと同一のものである。
【0036】
付勢手段31Aは、上部支持部と31A3と下部支持部31A1との間に圧縮コイルバネ31A2を備えてなる。上部支持部31A3には、圧縮コイルバネ31A2の上端を留めるための留部31A3Xを備えるとともに、上部には、ピンP2を貫通させるための貫通孔31A3Hを備える。下部支持部31A1には、圧縮コイルバネ31A2の下端を留めるための留部31A1Xを備えるとともに、下部には、ピンP1を貫通させるための貫通孔31A1Hを備える。なお、付勢手段31Bは付勢手段31Aと同一のものである。
【0037】
バネブラケット33は、2つの側部33A1,33A2と取付部33B,33Bとで構成され、これらは1枚の金属板を折り曲げて一体に形成される。側部33A1と側部33A2とは略直角に折り曲げて形成される。側部33A1には、ピンP5を貫通させるための貫通孔33AHを備える。なお、取付部33Bは、デッキ支持フレーム37に溶接するための溶接しろである。
【0038】
バネブラケット34は、正面部34A、2つの側部34B,34Bと取付部34C,34Cとで構成され、これらは1枚の金属板を折り曲げて一体に形成される。正面部34A、側部34B、取付部34Cはそれぞれ略直角に折り曲げて隣接してなる。正面部34Aには、ピンP4を貫通させるための貫通孔34Hを備える。なお、取付部34Cは、デッキ支持フレーム37に溶接するための溶接しろである。
【0039】
次に、付勢手段31Aの取り付け方について説明する。まず、バネブラケット33をデッキ支持フレーム37に溶接などで固定する。そして、バネブラケット32Aをバネブラケット33にピンP5によって固設する。一方、バネブラケット32Bをモータブラケット40にピンP3によって固設する。そして、付勢手段31Aの上部支持部31A3をバネブラケット32Aの一対の側部32A1,32A1の間に配置し、貫通孔31A3Hと貫通孔32AH2とを合わせてピンP2を挿入して上部支持部31A3をバネブラケット32Aに回動自在に取り付ける。同様にして、付勢手段31Aの下部支持部31A1をバネブラケット32Bの一対の側部32B1,32B1の間に配置し、貫通孔31A1Hと貫通孔32BH2とを合わせてピンP1を挿入して下部支持部31A1をバネブラケット32Bに回動自在に取り付ける。なお、上部支持部31A3の留部31A3Xと下部支持部31A1の留部31A1Xとの間には圧縮コイルバネ31A2を圧縮した状態で取り付ける。したがって、圧縮コイルバネ31A2の付勢力によってモアデッキ15は下方へ押し付けられている。
【0040】
同様に、付勢手段31Bの取り付け方について説明する。まず、バネブラケット34をデッキ支持フレーム37に溶接などで固定する。バネブラケット32Aをバネブラケット34にピンP4によって固設する。一方、バネブラケット32Bをモータブラケット40にピンP3によって固設する。そして、付勢手段31Bの上部支持部31B3をバネブラケット32Aの一対の側部32A1,32A1の間に配置し、貫通孔31A3Hと貫通孔32AH2とを合わせてピンP2を挿入して上部支持部31A3をバネブラケット32Aに回動自在に取り付ける。同様にして、付勢手段31Bの下部支持部31B1をバネブラケット32Bの一対の側部32B1,32B1の間に配置し、貫通孔31B1Hと貫通孔32BH2とを合わせてピンP1を挿入して下部支持部31B1をバネブラケット32Bに回動自在に取り付ける。なお、上部支持部31B3の留部31BA3Xと下部支持部31B1の留部31B1Xとの間には圧縮コイルバネ31B2を圧縮した状態で取り付ける。したがって、圧縮コイルバネ31B2の付勢力によってモアデッキ15は下方へ押し付けられている。
【0041】
図8は、デッキ支持フレーム37のメインフレーム18への取り付けを説明するための図である。なお、バネブラケット33,34は省略してある。デッキ支持フレーム37は金属製で断面視で逆L字状に形成される。その両端にはピンP7A,P7Bを取り付けるための貫通孔を形成する。デッキ支持フレーム37は、電動ローンモア10の前進方向Fに沿って2本並べて配置する(その際、上部が内側に折れ曲がるように配置する。図9(a)参照)。デッキ支持フレーム37の前部には、デッキアーム21Aを回動自在に取り付ける。デッキアーム21Aは断面視で門型の金属製フレームである。前端にはピンP8を取り付けるための貫通孔を形成し、後端にはピンP7Aを取り付けるための貫通孔を形成する。なお、デッキアーム21Aは、2本のデッキ支持フレーム37のそれぞれに対応して備えられる(すなわち2本備える)。一方、デッキ支持フレーム37の後部には、デッキアーム21Bを回動自在に取り付ける。デッキアーム21Bは断面視で門型の金属製フレームである。前端にはピンP9を取り付けるための貫通孔を形成し、後端にはピンP7Bを取り付けるための貫通孔を形成する。なお、デッキアーム21Bは、2本のデッキ支持フレーム37を繋ぐように備えられる(すなわちデッキアーム21Bは1つである)。
【0042】
左右一対のメインフレーム18,18の間には、取付フレームBE1,BE2を設ける。取付フレームBE1,BE2はそれぞれL型鋼で形成され、両者は同一形状である。取付フレームBE1,BE2の両端は、それぞれメインフレーム18,18の内側面に溶接などで固定する。取付フレームBE1には後述するボルトB1を貫通させるための貫通孔をそれぞれ2つずつ2箇所に形成する。一方、取付フレームBE2には後述するボルトB1を貫通させるための貫通孔をそれぞれ2つずつ2箇所に形成する。
【0043】
取付フレームBE1には連結部60を取り付ける。連結部60は角柱状に形成され、上部には鉛直方向に2本の雌ネジを形成する。一方、連結部60の下部にはピンP8を貫通させるための貫通孔を形成する。そして、ボルトB1を取付フレームBE1の上側から貫通させ、連結部60にネジつけて連結部60を取付フレームBE1に固定する。もう一つの連結部60も同様にして取付フレームBE1に取り付ける。一方、取付フレームBE2には連結部61を取り付ける。連結部60は金属板を逆L字状に折り曲げて形成され、上面部にはボルトB2を貫通させるための貫通孔を2つ形成する。一方、連結部61の下部にはピンP9を貫通させるための貫通孔を形成する。そして、ボルトB2を連結部61の下側から貫通させて、取付フレームBE2の上側でナットで締め付けて、連結部61を取付フレームBE2に固定する。もう一つの連結部61も同様にして取付フレームBE2に取り付ける。
【0044】
次に、連結部60,60にデッキアーム21A,21AをそれぞれピンP8にて回動自在に取り付ける。また、連結部61,61にデッキアーム21BをピンP9にて回動自在に取り付ける。そして、デッキ支持フレーム37,37にデッキアーム21A,21AをそれぞれピンP7Aにて回動自在に取り付ける。さらに、デッキ支持フレーム37,37にデッキアーム21BをピンP7Bにて回動自在に取り付ける。昇降操作レバー27は、不図示のリンクアームを介してデッキアーム21Bの中央部と連結されている。そして、昇降操作レバー27を回動させることでデッキアーム21Bを上下に回動させ、デッキアーム21Bと連結されたデッキ支持フレーム37が上下する。デッキ支持フレーム37が上下するとモアデッキ15が上下に昇降する。なお、デッキアーム21Aはデッキ支持フレーム37を従動的に懸架するものである。また、昇降操作レバー27には、モアデッキ15を所望の高さに保持することができるロック機構を備える。
【0045】
図9には、ジンバル機構36の取り付けを示す。ジンバル機構36は、軸36Aとそれに直交する軸36B、軸36Aと軸36Bとを回動自在に連結するジンバルリンク36Cとで構成される。軸36Aは、ジンバルリンク36Cに対して回動自在であるのに加えて、円筒部36A1,36A2に対しても回動自在である。同様に、軸36Bは、ジンバルリンク36Cに対して回動自在であるのに加えて、円筒部36B1,36B2に対しても回動自在である。このように構成されたジンバル機構36をデッキ支持フレーム37およびモアモータ50に取り付ける。詳しくは、一対のデッキ支持フレーム37,37を連結するようにジンバルフレーム38を4つ溶接などで取り付ける。そして、ジンバル機構36の円筒部36A1,36A2をシンバルフレーム38に固設する。一方、円筒部36B1,36B2をブラケット35を介してモアモータ50に取り付ける。したがって、ジンバル機構36は、デッキ支持フレーム37およびモアモータ50(すなわち、モアデッキ15)に対して回動自在となる。
【0046】
ところで、モアデッキ15上への付勢手段31A,31Bの取付位置には、図10に示すような条件がある。左側のモアモータ50に対して、回転軸50Aの回転中心をM1、付勢手段31AとピンP1との取付位置をSB1、付勢手段31BとピンP1との取付位置をSB2、付勢手段31AとピンP2との取付位置をST1、付勢手段31BとピンP2との取付位置をST2とする。同様に、右側のモアモータ50に対して、回転軸50Aの回転中心をM2、付勢手段31AとピンP1との取付位置をSB3、付勢手段31BとピンP1との取付位置をSB4、付勢手段31AとピンP2との取付位置をST3、付勢手段31BとピンP2との取付位置をST4とする。そして、左右のモアモータ50,50を載置した後のモアデッキ15の総重量(左右のゲージホイール23,23、ブラケット22,22、円筒部25,25、補助前輪ブラケット24,24、モアブレードなども含む)に対する重心をGとする。
【0047】
このとき、SB1,SB2は、M1から距離MR1で、かつ、Gから距離GR2となる位置となる。また、ST1,ST2は、M1から距離MR2で、かつ、Gから距離GR1となる位置となる。同様に、SB3,SB4は、M2から距離MR1で、かつ、Gから距離GR2となる位置となる。また、ST3,ST4は、M1から距離MR2で、かつ、Gから距離GR1となる位置となる。このように配置すると、SB1、SB2、SB3、SB4を4つの頂点とする四角形はその重心がGと一致する。同様に、ST1、ST2、ST3、ST4を4つの頂点とする四角形もその重心がGと一致する。このような条件のもとで、モアデッキ15は水平に懸架される。
【0048】
このように構成された電動ローンモア10では、図11に示すように、右側に突起があるような走行面Grを走行しながら芝を刈るときには、右側のゲージホイール23が走行面Grに追随して上昇する。このとき、右側のモアモータ50の前側に取り付けられた付勢手段31Aが縮みながらモアデッキ15を下方へ押し付ける。これによって、モアデッキ15が慣性によって跳ね上がることがない。一方、右側のモアモータ50の後側に取り付けられた付勢手段31Bは伸縮せずそのままの長さを保持する。また、左側のゲージホイール23は平坦な走行面Grを走行しているので上下動せず、左側のモアモータ50の前後に取り付けられた付勢手段31A,31Bは伸縮せずにそのままの長さを保持する。したがって、モアデッキ15は、右側前部のみが走行面Grの突起に追随して上昇し、外の箇所はそのままの位置を保持する。このように、モアデッキ15の前後左右4ヶ所に付勢手段31A,31Bを取り付けることで、モアデッキ15を3次元的に傾動させることができ、走行面Grの細かい起伏に追随できる。これによって、走行面Grの起伏に関係なく、一定の刈り高さで芝を刈ることができる。
【0049】
以上記述したように、この例の電動ローンモア10は、回転して草を刈る複数のモアブレードと、モアブレードを上方および側方から覆う楕円深皿状のモアデッキ15と、モアデッキ15上面に載置されるとともにモアブレードに回転軸50Aを連結し、かつ、複数のモアブレードにそれぞれに対応して備えられた複数のモアモータ50と、モアデッキ15を懸架するデッキ支持フレーム37と、モアデッキ15をデッキ支持フレーム37に対して揺動自在に取り付けるジンバル機構(リンク手段)36と、モアデッキ15の前部に取り付けられ、草刈作業時に接地して走行面Grの起伏に追随する少なくとも2つのゲージホイール23と、モアデッキ15とデッキ支持フレーム37との間に取り付けられ、モアデッキ15を下向きに付勢する複数の付勢手段31A,31Bとを備える。また、ゲージホイール23をモアデッキ15の長手方向両側にそれぞれ少なくとも1つ備え、それぞれのゲージホイール23の近傍で、かつ、モアデッキ15の上面に付勢手段31A,31Bの下端を取り付けるとともに、付勢手段31A,31Bの上端をデッキ支持フレーム37に取り付ける。
【0050】
また、付勢手段31A,31Bを少なくとも4つ備えるとともに、付勢手段31A,31Bが2つで1つの付勢手段ユニットを構成し、付勢手段ユニットを2つ備えるとともに、それぞれの付勢手段ユニットは2つのモアモータ50のいずれかに固有に対応し、それぞれの付勢手段ユニットを構成する2つの付勢手段31A,31Bの下端は、対応するモアモータ50の回転軸50Aの中心から同一距離MR1に位置し、かつ、2つのモアモータ50を載置したモアデッキ15の重心Gから同一距離GR2に位置し、さらに、1つのモアモータ50の回転軸50Aの中心から2つの付勢手段31A,31Bの下端までの距離MR1は、隣接する別のモアモータ50の回転軸50Aの中心から2つの付勢手段31A,31Bの下端までの距離MR1と同一であるとともに、それぞれの付勢手段ユニットを構成する2つの付勢手段31A,31Bの上端は、対応するモアモータ50の回転軸50Aの中心から同一距離MR2に位置し、かつ、2つのモアモータ50を載置したモアデッキ15の重心Gから同一距離GR1に位置し、さらに、1つのモアモータ50の回転軸50Aの中心から2つの付勢手段31A,31Bの上端までの距離MR2は、別のモアモータ50の回転軸50Aの中心から2つの付勢手段31A,31Bの上端までの距離MR2と同一である。
【0051】
さらに、モアデッキ15上に載置された2つのモアモータ50,50をジンバル機構36の2つの軸36A,36Bのうちの1つである軸36Bで連結するとともに、ジンバル機構36をデッキ支持フレーム37に固設する。
【0052】
そして、ジンバル機構36の、モアモータ50と連結されていない軸36Aを電動ローンモア10の機体の前進方向Fに向けて備える。
【0053】
なお、付勢手段31A,31Bは圧縮コイルバネを用いるものに限定されるものではない。例えば、付勢手段として油圧シリンダを用いてもよい。この場合、ゲージホイールに代えて加速度センサを1対のメインフレーム18,18の先端部分にそれぞれ取り付け、2つの加速度センサが検知した走行面の起伏に応じて、別に備える制御部を介して油圧シリンダを伸縮させ、モアデッキ15を適宜、傾動させる。
【0054】
図12,13には、電動ローンモア10の変形例を示す。この例では、付勢手段31A,31Bとデッキ支持フレーム37とを連結するバネブラケットの形状が異なる以外は、前述の例と同様である。この例では、付勢手段31Aはバネブラケット71を介してデッキ支持フレーム37に取り付けられ、付勢手段31Bはバネブラケット70を介してデッキ支持フレーム37に取り付けられる。バネブラケット70は金属製で、一対の側板70Aと上板70Bとで構成される。側板70Aはデッキ支持フレーム37に対して直立した状態で溶接などによって固設される。一対の側板70A,70Aの上には上板70Bを溶接などで固定する。上板70Bは断面視で略U字状に形成され、その底面にはピンP4を貫通させるための貫通孔を備える。上板70Bは、モアモータ50に向かって張り出すように設けられる。
【0055】
一方、バネブラケット71は金属製で、一対の側板71Aと上板71Bとで構成される。側板71Aはデッキ支持フレーム37に対して直立した状態で溶接などによって固設される。一対の側板71A,71Aの上には上板71Bを溶接などで固定する。上板71Bは断面視で略U字状に形成され、その底面にはピンP5を貫通させるための貫通孔を備える。上板71Bは、モアモータ50に向かって張り出すように設けられる。
【0056】
次に、前述の例と同様にして付勢手段31Aをデッキ支持フレーム37に取り付ける。まず、バネブラケット32Aをバネブラケット71にピンP5によって固設する。一方、バネブラケット32Bをモータブラケット40にピンP3によって固設する。そして、付勢手段31Aの上部支持部31A3をバネブラケット32Aの一対の側部32A1,32A1の間に配置し、貫通孔31A3Hと貫通孔32AH2とを合わせてピンP2を挿入して上部支持部31A3をバネブラケット32Aに回動自在に取り付ける。同様にして、付勢手段31Aの下部支持部31A1をバネブラケット32Bの一対の側部32B1,32B1の間に配置し、貫通孔31A1Hと貫通孔32BH2とを合わせてピンP1を挿入して下部支持部31A1をバネブラケット32Bに回動自在に取り付ける。なお、上部支持部31A3の留部31A3Xと下部支持部31A1の留部31A1Xとの間には圧縮コイルバネ31A2を圧縮した状態で取り付ける。したがって、圧縮コイルバネ31A2の付勢力によってモアデッキ15は下方へ押し付けられている。
【0057】
付勢手段31Bを取り付けるには、まず、バネブラケット32Aをバネブラケット70にピンP4によって固設する。一方、バネブラケット32Bをモータブラケット40にピンP3によって固設する。そして、付勢手段31Bの上部支持部31B3をバネブラケット32Aの一対の側部32A1,32A1の間に配置し、貫通孔31A3Hと貫通孔32AH2とを合わせてピンP2を挿入して上部支持部31A3をバネブラケット32Aに回動自在に取り付ける。同様にして、付勢手段31Bの下部支持部31B1をバネブラケット32Bの一対の側部32B1,32B1の間に配置し、貫通孔31B1Hと貫通孔32BH2とを合わせてピンP1を挿入して下部支持部31B1をバネブラケット32Bに回動自在に取り付ける。なお、上部支持部31B3の留部31BA3Xと下部支持部31B1の留部31B1Xとの間には圧縮コイルバネ31B2を圧縮した状態で取り付ける。したがって、圧縮コイルバネ31B2の付勢力によってモアデッキ15は下方へ押し付けられている。
【0058】
この例では、付勢手段31A,31Bをデッキ支持フレーム37に取り付けるためのバネブラケットの形状が異なるのみで、電動ローンモア10が走行面の起伏に出くわしたときにモアデッキ15の動作は前述の例と同様であるので、説明を省略する。
【0059】
図14にはさらに別の例を示す。この例では、付勢手段31A,31Bとデッキ支持フレーム37とを連結するバネブラケットの形状が異なる以外は、第1例と同様である。この例では、付勢手段31Aはバネブラケット81を介してデッキ支持フレーム37に溶接などで取り付けられ、付勢手段31Bはバネブラケット80を介してデッキ支持フレーム37に溶接などで取り付けられる。バネブラケット80は金属製で、一対の側板80Aと上板80Bとが一体に形成されている。バネブラケット80はモアモータ50に向けて張り出して設けられる。上板80BにはピンP4を貫通させるための貫通孔を備える。一方、バネブラケット81は金属製で、一対の側板81Aと上板81Bとが一体に形成されている。バネブラケット81はモアモータ50に向けて張り出して設けられる。上板71BにはピンP5を貫通させるための貫通孔を備える。
【0060】
次に、前述の例と同様にして付勢手段31Aをデッキ支持フレーム37に取り付ける。まず、バネブラケット32Aをバネブラケット81にピンP5によって固設する。そして、付勢手段31Aの上部支持部31A3をバネブラケット32Aの一対の側部32A1,32A1の間に配置し、貫通孔31A3Hと貫通孔32AH2とを合わせてピンP2を挿入して上部支持部31A3をバネブラケット32Aに回動自在に取り付ける。なお、付勢手段31Aをモータブラケット40取り付ける方法については前述の例と同様であるので説明を省略する。なお、上部支持部31A3の留部31A3Xと下部支持部31A1の留部31A1Xとの間には圧縮コイルバネ31A2を圧縮した状態で取り付ける。したがって、圧縮コイルバネ31A2の付勢力によってモアデッキ15は下方へ押し付けられている。
【0061】
付勢手段31Bを取り付けるには、まず、バネブラケット32Aをバネブラケット80にピンP5によって固設する。そして、付勢手段31Bの上部支持部31B3をバネブラケット32Aの一対の側部32A1,32A1の間に配置し、貫通孔31A3Hと貫通孔32AH2とを合わせてピンP2を挿入して上部支持部31A3をバネブラケット32Aに回動自在に取り付ける。なお、付勢手段31Bをモータブラケット40取り付ける方法については前述の例と同様であるので説明を省略する。なお、上部支持部31A3の留部31A3Xと下部支持部31A1の留部31A1Xとの間には圧縮コイルバネ31A2を圧縮した状態で取り付ける。したがって、圧縮コイルバネ31A2の付勢力によってモアデッキ15は下方へ押し付けられている。
【0062】
図15,16にはさらに別の例を示す。この例は、第1例と比べて、デッキアーム21A,21Bの取り付ける向きが逆(後方懸架)である点のみ異なる。それ以外の構成・作用は、第1例と同様である。このように構成すると、モアデッキ15を上昇させる際、モアデッキ15は前方に向けて上昇することになる。このため、たとえモアデッキ15と走行用モータ31とを近接して配置した場合であっても、モアデッキ15が上昇する際に、走行用モータ31に接触することを回避することができる。したがって、電動ローンモア10のホイールベースを短くすることを可能とし、電動ローンモア10の機動性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
この発明の電動乗用草刈機は、芝刈りに限定されるものではなく、草を刈るためのあらゆる作業に適用しうる。また、駆動源は、モータに限定されるものではなく、エンジンであってもよい。
【符号の説明】
【0064】
10 電動ローンモア(電動乗用草刈機)
15 モアデッキ
23 ゲージホイール
31A,31B 付勢手段
36 ジンバル機構(リンク手段)
37 デッキ支持フレーム
50 モアモータ
50A 回転軸
Gr 走行面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転して草を刈る複数のモアブレードと、
該モアブレードを上方および側方から覆う楕円深皿状のモアデッキと、
該モアデッキ上面に載置されるとともに前記モアブレードに回転軸を連結し、かつ、前記複数のモアブレードにそれぞれに対応して備えられた複数のモアモータと、
前記モアデッキを懸架するデッキ支持フレームと、
前記モアデッキを前記デッキ支持フレームに対して揺動自在に取り付けるリンク手段と、
前記モアデッキの前部に取り付けられ、草刈作業時に接地して走行面の起伏に追随する少なくとも2つのゲージホイールと、
前記モアデッキと前記デッキ支持フレームとの間に取り付けられ、前記モアデッキを下向きに付勢する複数の付勢手段とを備える電動乗用草刈機であって、
前記ゲージホイールを前記モアデッキの長手方向両側にそれぞれ少なくとも1つ備え、
前記それぞれのゲージホイールの近傍で、かつ、前記モアデッキの上面に前記付勢手段の下端を取り付けるとともに、該付勢手段の上端を前記デッキ支持フレームに取り付けたことを特徴とする、電動乗用草刈機。
【請求項2】
前記付勢手段を少なくとも4つ備えるとともに、該付勢手段が2つで1つの付勢手段ユニットを構成し、
該付勢手段ユニットを複数備えるとともに、該それぞれの付勢手段ユニットは前記複数のモアモータのいずれかに固有に対応し、
前記それぞれの付勢手段ユニットを構成する2つの付勢手段の下端は、対応する前記モアモータの回転軸の中心から同一距離に位置し、かつ、前記複数のモアモータを載置した前記モアデッキの重心から同一距離に位置し、さらに、1つのモアモータの回転軸の中心から前記2つの付勢手段の下端までの距離は、他のモアモータの回転軸の中心から前記2つの付勢手段の下端までの距離と同一であるとともに、
前記それぞれの付勢手段ユニットを構成する2つの付勢手段の上端は、対応する前記モアモータの回転軸の中心から同一距離に位置し、かつ、前記複数のモアモータを載置した前記モアデッキの重心から同一距離に位置し、さらに、1つのモアモータの回転軸の中心から前記2つの付勢手段の上端までの距離は、他のモアモータの回転軸の中心から前記2つの付勢手段の上端までの距離と同一であることを特徴とする、請求項1に記載の電動乗用草刈機。
【請求項3】
前記リンク手段がジンバル機構であり、
前記モアデッキ上に載置された2つのモアモータを前記ジンバル機構の2つの軸のうちの1つで連結するとともに、該ジンバル機構を前記デッキ支持フレームに固設したことを特徴とする、請求項1に記載の電動乗用草刈機。
【請求項4】
前記ジンバル機構の、前記モアモータと連結されていない軸を前進方向に向けて備えることを特徴とする、請求項3に記載の電動乗用草刈機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−90531(P2012−90531A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238192(P2010−238192)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】