電動刃物研ぎ機
【課題】 本発明は、研磨面に供給された研ぎ水を一瞬の間に飛散させることなく、適正な研磨に必要な研ぎ水を研磨面に供給できる電動刃物研ぎ機を提供することを目的とする。
【解決手段】 研磨砥石8を有する回転研磨部材9が、回転用駆動装置により回転される回転軸7に一体回転可能に固定され、回転している研磨砥石8の研磨面19に研ぎ水を供給することによりその研磨面19で刃物を研磨する電動刃物研ぎ機1であって、研磨面19に供給される研ぎ水にあらかじめ研磨砥石8の回転と同じ回転の慣性を与える手段を有する。
【解決手段】 研磨砥石8を有する回転研磨部材9が、回転用駆動装置により回転される回転軸7に一体回転可能に固定され、回転している研磨砥石8の研磨面19に研ぎ水を供給することによりその研磨面19で刃物を研磨する電動刃物研ぎ機1であって、研磨面19に供給される研ぎ水にあらかじめ研磨砥石8の回転と同じ回転の慣性を与える手段を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨面に研ぎ水を供給しながら包丁などの刃物を研ぐ電動刃物研ぎ機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動刃物研ぎ機の一種に、砥石に研ぎ水を掛けながら使用する研ぎ機がある。研ぎ水を掛ける理由は、砥石を傷めないように、刃物がスムーズに動くように、そして刃の焼が戻らないようにするためである。
【0003】
研ぎ水を使用する従来の電動刃物研ぎ機は、砥石表面に外部から研ぎ水を掛けるように供給する構造である。そのような構造の電動刃物研ぎ機の砥石は高速回転しているので、回転中に砥石表面に掛けられた研ぎ水はその表面に付着する間もなく一瞬の間に砥石表面に弾き飛ばされ飛散してしまうのである。したがって、このような電動刃物研ぎ機では研ぎ水を砥石表面に効率よく供給できないのである。
【0004】
特許文献1における砥石表面への研ぎ水の供給手段は、砥石の上方にある研ぎ水散布管から研ぎ水供給用の多数本の糸を砥石表面に接触させ或いは離間させ、この糸を伝って落下する研ぎ水を砥石表面に供給する構造である。多数本の糸を砥石表面に接触させても、砥石表面によって糸はすぐに研削されてしまうので、結局、糸は砥石表面から離間した状態となる。そうすると、研ぎ水は糸を伝い水滴となって砥石表面に落下する。その結果、落下した水滴は砥石表面に付着する間もなく弾き飛ばされ砥石表面から飛散してしまうのである。水滴が弾き飛ばされ飛散する理由の一つは、高速回転する砥石表面に対して水滴は高速回転の慣性を有していないので、水滴が砥石と同じ速度で回転することができず、そのために水滴が砥石表面に十分に付着できないからであると考えられる。また、砥石表面から飛散した研ぎ水は周囲に飛び散るので、使用者に研ぎ水が掛かってしまうのである。さらに、砥石表面に供給した研ぎ水が一瞬にして飛散してしまうので、多くの研ぎ水を供給する必要があり、その分だけ飛散する研ぎ水の量が多くなるのでその処理に手間がかかる。
【0005】
特許文献2における砥石表面への研ぎ水の供給手段は、水道水の水圧を利用して研ぎ水を回転軸の中空を通し、前記砥石の砥石面に噴出させ、その噴出した研ぎ水を遠心力により砥石の上面である砥石面に均一的に散布させようとする構造である。研ぎ水を勢いよく砥石面に噴出させて遠心力により砥石面に散布するので、噴出した研ぎ水の多くは砥石面に散布されることなく無駄に飛散し、残りの研ぎ水が砥石面に散布されるが砥石面は高速回転しているから研ぎ水は一瞬で砥石面の外側に飛散する。この場合も、高速回転する回転砥石に対して研ぎ水は高速回転の慣性を有していないので、研ぎ水が砥石と同じ速度で回転することができず、そのために研ぎ水が砥石表面に十分に付着できないからであると考えられる。したがって、比較的大きな水圧で水道からかなりの量の水を連続的に供給しなければならず、多量の水道水が必要となりコストもかかるから商品化は実現性に乏しい。また、多量の水が飛散するのでその処理が容易でない。さらに、この研ぎ機は、砥石を囲繞する刃物台を有しているので、砥石面から飛散した研ぎ水がこの刃物台に当たるのであるが、刃物台は刃物保持溝を有していてこの刃物保持溝から研ぎ水が外部に飛散してしまうのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭46−798号公報
【特許文献2】実開昭51−34090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、回転している研磨砥石の研磨面に供給する研ぎ水に、あらかじめその回転と同じ回転の慣性を与えることにより、研磨面に供給された研ぎ水を一瞬の間に飛散させることなく、適正な研磨に必要な研ぎ水を研磨面に供給できる電動刃物研ぎ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1は、研磨砥石を有する回転研磨部材が、回転用駆動装置により回転される回転軸に一体回転可能に固定され、回転している研磨砥石の研磨面に研ぎ水を供給することによりその研磨面で刃物を研磨する電動刃物研ぎ機であって、研磨面に供給される研ぎ水にあらかじめ研磨砥石の回転と同じ回転の慣性を与える手段を有する構成である。
【0009】
請求項2は、研磨砥石が内面を有し、その内面から取り込まれた研ぎ水が研磨砥石の内部を通ることにより研磨砥石の回転と同じ回転の慣性を与えられ研磨面に供給される構成である。
【0010】
請求項3は、研ぎ水を溜める空所が回転研磨部材に設けられ、この回転研磨部材は前記空所に研ぎ水を注入するための注入口を有しており、研磨砥石は水の浸透性を有する材料で形成され、回転研磨部材の回転により空所に溜められた研ぎ水が研磨砥石の内面から浸透し研磨面に滲出して供給される構成である。
【0011】
請求項4は、研磨砥石が環状に形成され、研磨砥石の内側の空間を下側から塞ぐ基板が研磨砥石の下面に固定され、研磨砥石と基板により研ぎ水を溜めるための空所が構成され、空所の上部に空所の底よりも内径の小さな注入口が形成されている構成である。
【0012】
請求項5は、回転軸が鉛直に対して傾斜した方向に延びており、回転研磨部材で構成される平面が回転軸と直角をなすように回転研磨部材が回転軸に固定されている構成である。
【0013】
請求項6は、空所が円錐内面状に傾斜した内面を有している構成である。
【0014】
請求項7は、研磨砥石の研磨面が円錐面に形成されている構成である。
【0015】
請求項8は、回転軸が鉛直に対して傾斜した方向に延びている電動刃物研ぎ機であって、この電動刃物研ぎ機が水平な平面に置かれたときに、研磨面の母線中最も高い位置にある母線が水平に延びる構成である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1は、研磨砥石を有する回転研磨部材が、回転用駆動装置により回転される回転軸に一体回転可能に固定され、回転している研磨砥石の研磨面に研ぎ水を供給することによりその研磨面で刃物を研磨する電動刃物研ぎ機であって、研磨面に供給される研ぎ水にあらかじめ研磨砥石の回転と同じ回転の慣性を与える手段を有する。したがって、研磨面に供給された研ぎ水は研磨砥石と同じ回転の慣性を有しているので、研ぎ水から見れば研磨砥石は回転しておらず、相対的な移動がないので研磨面から弾き飛ばされることがなく、遠心力により研磨面上をその外周に向かって移動する。これにより、研磨面に供給された研ぎ水のほぼ全部が研磨面に付着しながら移動するので、適正な研磨に必要な研ぎ水が研磨面に供給される。また、研ぎ水が研磨面から弾き飛ばされることがなく、研ぎ水を無駄なく効率的に使用できるので、飛散する研ぎ水の量が少なくその処理が楽である。
【0017】
請求項2は、研磨砥石が内面を有し、その内面から取り込まれた研ぎ水が研磨砥石の内部を通過しているときに研磨砥石の回転と同じ回転の慣性を与えられ研磨面に供給される。研ぎ水が研磨砥石の内部を通過するだけで研磨砥石の回転と同じ回転の慣性を得られるので、特に研ぎ水を回転させる装置を必要としない。
【0018】
請求項3は、研ぎ水を溜める空所が回転研磨部材に設けられ、この回転研磨部材は空所に研ぎ水を注入するための注入口を有しており、研磨砥石は水の浸透性を有する材料で形成され、回転研磨部材の回転により空所に溜められた研ぎ水が研磨砥石の内面から浸透し研磨面に滲出して供給される。回転研磨部材を高速回転させると、回転研磨部材の空所に溜められた研ぎ水に遠心力が加わり、研ぎ水と接する空所の内面が高速で回転しているので、研ぎ水は空所の内面に押し付けられた状態で回転する。研磨砥石は水の浸透性を有するから、内面から浸透した研ぎ水は遠心力によって研磨砥石の内部を通過して研磨面に滲出する。また、研ぎ水は研磨砥石の内部を通過しているときに、研磨砥石の回転と同じ回転の慣性を与えられるので、研磨面に滲出した研ぎ水は研磨砥石と同じ回転で回転しながら、遠心力により研磨面上をその外周方向に徐々に移動するだけであり、研磨面から弾き飛ばされることがない。したがって、空所に溜められた研ぎ水を研磨砥石の水の浸透性を利用して研磨砥石の回転と同じ回転の慣性を与えつつ研磨面に供給することができる。このため、研ぎ水に回転の慣性を与え且つ移動させる特別の装置又は構成を必要としない。さらに、研ぎ水は水の浸透性を有する研磨砥石の中を浸透し研磨面の表面に滲出するので、多数の細管による研ぎ水の供給と異なり、研ぎ水が研磨砥石内で拡散し研ぎ水が研磨面に均一に供給される。
【0019】
請求項4は、研磨砥石が環状に形成され、研磨砥石の内側の空間を下側から塞ぐ基板が研磨砥石の下面に固定され、研磨砥石と基板により研ぎ水を溜めるための空所が構成されている。そして、空所の上部に空所の底よりも内径の小さな注入口が形成されている。したがって、研ぎ水の注入は注入口の上方から研ぎ水を注ぎ落とすだけであるから容易に研ぎ水を注入することができる。また、研磨砥石が回転中であっても研ぎ水を注入することができる。
【0020】
請求項5は、回転軸は鉛直に対して傾斜した方向に延びており、回転研磨部材で構成される平面が回転軸と直角をなすように回転研磨部材が回転軸に固定されている。仮に、回転軸が鉛直に延びる構成であると研磨砥石は水平になるので、空所に溜められた本発明と同程度の量の研ぎ水は空所の底に平均的に広く浅く溜まる。その状態から研磨砥石を回転させると、研ぎ水はまず遠心力で空所の内面方向に向かって移動し、次いで研ぎ水の粘性により研ぎ水は内面に張り付くようにして内面に沿ってその上部に向かって移動し、これにより、研磨面の下部から上部まで研ぎ水が供給される。したがって、広く浅く溜まっている研ぎ水は高速回転により空所の内面方向への移動と、内面に張り付いた状態での上方への移動を経て研磨面に供給されるので、それまでの工程が長くなりすぐに研磨作業に取り掛かれない。これに対して、請求項5は、回転研磨部材の空所に溜められた研ぎ水は、回転研磨部材が傾斜しているので最初から空所の低い場所に集まっており、研ぎ水はすでに空所の内面の上部付近まで届いている。この状態で回転研磨部材を高速回転させると、研ぎ水は空所の内面方向に移動するという工程なしで空所の内面に張り付いた状態で回転するから、研ぎ水は即座に空所の内面に浸透して研磨面に供給され研磨作業をすぐに始めることができる。
【0021】
請求項6は、空所が円錐内面状に傾斜した内面を有している。傾斜した内面は同じ高さの垂直内面よりも面積が広がるので研ぎ水を十分に取り入れることができる。また、遠心力により空所の研ぎ水が研磨砥石の傾斜した内面に張り付いた状態となるので、研ぎ水を研磨面に平均的に供給できる。
【0022】
請求項7は、研磨砥石の研磨面が円錐面に形成されている。仮に、研磨砥石が円板状で研磨面がその周面であるときは、研磨面の幅が狭いので刃渡りの長い刃物を効率的に研磨できない。また、仮に、研磨砥石が円板状で研磨面がその端面である上面であるときは、研磨砥石の内部に溜めた研ぎ水は遠心力で周面方向に向かって内周面に張り付くが、遠心力は中心から径方向に向かう力であって上方に向かう力ではないから、遠心力では研ぎ水を上面である研磨面まで上昇させることができず研磨面に研ぎ水を供給することができない。請求項7は、研磨面が斜面であるから研磨面の幅が広くなって効率的に研磨でき、さらに遠心力により研ぎ水を研磨面に供給することができる。
【0023】
請求項8は、回転軸が鉛直に対して傾斜した方向に延びている電動刃物研ぎ機であって、電動刃物研ぎ機が水平な平面に置かれたときに、研磨面の母線中最も高い位置にある母線が水平に延びる。したがって、刃物をその母線の方向に位置させれば、刃物を水平にして研磨できるので使い勝手が良いのである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の正面側から見た斜視図である。
【図2】本発明の右側面図である。
【図3】本発明の平面図である。
【図4】図3におけるA−A断面図である。
【図5】研磨砥石の斜視図である。
【図6】研磨砥石の中央断面図である。
【図7】カバーの斜視図である。
【図8】カバーに取り付けられる刃支持台の斜視図である。
【図9】刃支持台を下側から見た斜視図である。
【図10】研ぎ機本体に設けられたカバーとの係合構造を示す斜視図である。
【図11】カバーに設けられた研ぎ機本体との係合構造を示す斜視図である。
【図12】刃の一方の面を研磨する状態を示した斜視図である。
【図13】刃の他方の面を研磨する状態を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
研ぎ機1は、研ぎ機本体2と、カバー3と、排水容器4とから成る。図4に示すように、研ぎ機本体2はハウジング5を有し、このハウジング5の中にモータ6を備えている。モータ6の回転軸7には研磨砥石8を有する回転研磨部材9が一体回転可能に取り付けられている。ハウジング5はその底面10に対して所定の角度で斜めに立ち上がるように形成され、回転軸7も同じ所定の角度で傾斜している。鉛直線に対する傾斜角度は約35度であるがこの数値に限定されるものではない。ハウジング5は上面部11を有し、回転研磨部材9はこの上面部11の上方で回転する。上面部11は、研ぎ水がハウジング5の内部に侵入することを防止する。上面部11には排水口12が設けられ、この排水口12に排水パイプ13が取り付けられ、上面部11で受けた排水をハウジング5の外部に排出する。排出された排水を溜めるための排水容器4がハウジング5の外面に着脱可能に取り付けられている。この排水容器4は側面に開口15を有し、この開口15に排水パイプ13が挿入されている。研ぎ機本体2の排水容器4と接する外面に容器掛け止め用の突起(図示せず。)が設けられ、排水容器4にはこの突起に係合する孔部(図示せず。)が設けられ、突起と孔部の係合によって排水容器4が研ぎ機本体2に取り付けられる。排水容器4もその底面16からハウジング5と同じ角度で傾斜するように立ち上がっている。排水容器4は着脱自在の蓋17が取り付けられている。刃物の研磨は刃をカバー3のガイド溝38に挿し入れて行うが、排水容器4はそのガイド溝38の設けられた側と反対側に取り付けられる。これにより、研磨中に排水容器4が研磨作業の邪魔にならない。なお、符号14は電気コードの一部である。
【0026】
図5や図6に示すように、回転研磨部材9は円形の基板18の表面に環状の研磨砥石8が接着剤により固着されており、その研磨面19は円錐面に形成されている。基板18は金属で形成され、研磨砥石8は水の浸透性を有する材料が使用されている。水の浸透性を有する材料として砥粒がアルミナ系砥粒であるホワイトアランダムの番手320番が用いられているが、他の材料でもよく例えば天然の水砥石でもよい。研磨砥石8の最大直径は約135mmであり、最大厚みは約24mmである。なお、研磨砥石8の固着方法は接着剤に限定されるものでなく、他の方法、例えばボルトなどの金具による結合でもよい。
【0027】
図6に示すように、回転研磨部材9はその内部に研ぎ水を溜めるための空所20を有する。空所20はその周囲が内面21で囲われている。内面21は内側に傾斜する傾斜面に形成されており、空所20は裾広がりの円錐台形をなす。研磨砥石8の上部中央に研ぎ水の注入口22が形成されている。この注入口22から空所20に研ぎ水が注入される。内面21が内側に傾斜しているので、当然のことであるが注入口22の内径は空所20の底の内径よりも小さい。注入口22の内径は約54mmであり空所20の底の内径は約88mmであるがこれらの数値に限定されるものではない。図6の状態において、研磨砥石8の研磨面19である円錐面の傾斜角度、すなわち回転研磨部材9の水平面である基板18に対する研磨面19の傾斜角度は約35度である。また、図4に示すようにハウジング5は鉛直線に対して約35度斜め方向に立ち上がっているので、ハウジング5と同じ角度で斜めに延びている回転軸7の傾斜角度も約35度である。この結果、研磨面19の最も高い位置にある母線23は水平をなす。この母線23付近で刃を研磨すれば、刃物全体を水平に保ちながら研磨することができるので作業がしやすい。
【0028】
研ぎ機1は、研磨面19から飛散する研ぎ水が外部に飛散することを防止するための手段を備える。その手段の一つは、ハウジング5の上面部11に円周状に延びる上部周壁25である。上部周壁25は主に水平方向に飛散する研ぎ水が外部に飛散することを防止する。他の手段は、カバー3である。カバー3は主に上方及び水平方向に飛散する研ぎ水が外部に飛散することを防止する。
【0029】
カバー3はハウジング5の上部周壁25に着脱可能に取り付けることができる。カバー3の周壁26を前記上部周壁25の外側に嵌合することにより、カバー3はハウジング5に取り付けられる。カバー3がハウジング5から脱離することを防止するための手段がカバー3とハウジング5に設けられている。図11に示すように、カバー3の周壁26の内面に離脱防止のための係合凸部27が設けられている。この係合凸部27には係止溝28が設けられている。また、図10に示すように、ハウジング5の上面部11に円周状に延びる上部周壁25の表面に離脱防止のための凹部29が設けられている。この凹部29は、カバー3の係合凸部27を導入するための導入口30と、係合凸部27を係合するための係合凹部31を有する。係合凹部31には係止突起32が設けられている。符号33は出没可能な安全スイッチであり、図10のように突出しているときは駆動スイッチ34を押してもモータ6は回転しない。カバー3をハウジング5に取り付けるときは、カバー3の係合凸部27をハウジング5の導入口30から凹部29に導入し、次いでカバー3を係合凹部31方向に回転させる。一杯に回転させると、安全スイッチ33が没入して駆動スイッチ34を押せばモータ6は回転する。また、カバー3の係止溝28にハウジング5の係止突起32が係止して、カバー3が容易に逆回転することを防止する。なお、図10における符号35と図11における符号36は位置合わせ突起であり、双方の位置合わせ突起35,36が完全に重なることにより、カバー3の係止溝28にハウジング5の係止突起32が係止したことを確認することができる。この係合構造は反対側の外周部分にも設けられているが、安全スイッチ33と位置合わせ突起35,36は設けられていない。
【0030】
カバー3は、その外周の一部が円錐面37に形成されている。この円錐面37の傾斜角度は、研磨砥石8の研磨面19の傾斜角度とほぼ等しい。その円錐面37にガイド溝38が形成されている。ガイド溝38はその溝内のその一方の面であるガイド溝内面40,41と他方の面である上面部42により構成される。ガイド溝38の両端に形成されているガイド溝内面40,41の一方のガイド溝内面41は、ハウジング5の上部周壁25により構成されている。ガイド溝38から研磨砥石8の研磨面19が覗いているので、ガイド溝38の刃挿し入れ口39から刃を挿し入れることにより刃を研磨することができる。挿し入れ口39の上下幅は約7mmであり指が入らない大きさになっている。図3に示すように、ガイド溝38はカバー3の円錐面37の母線方向に延びているので、図12又は図13に示すように、包丁51をその母線方向に沿って移動させながら刃52を研磨する。カバー3の全体又はガイド溝38の上面部42を透明とすることにより、研磨状態を目視することができる。
【0031】
刃挿し入れ口39に隣接する円錐面37に、刃支持台43が着脱可能に取り付けられている。図8に示すように、刃支持台43は所定の傾斜角度を有する刃支持面44を有する。図9に示すように、刃支持台43はほぼ半円形の嵌合部45を有している。図7に示すように、カバー3の円錐面37に刃支持台43を取り付けるための刃支持台受け46が形成されている。この刃支持台受け46には、ほぼ半円形の凹部47が形成されており、この凹部47に刃支持台43の嵌合部45を嵌合することにより、刃支持台43をカバー3に取り付けることができる。刃支持台43がカバー3に取り付けられたときに、傾斜している刃支持面44の下向きの傾斜方向の延長線がガイド溝38の刃挿し入れ口39に延びている。刃を刃支持面44の表面に宛がいつつ刃挿し入れ口39から刃をガイド溝38内に挿し入れると、刃は刃支持面44の傾斜角度と同じ研磨角度で研磨面19に宛がわれ研磨される。刃支持面44の研磨面19に対する傾斜角度は約16度であって研磨角度も約16度となるが、この角度は例えば家庭で調理に使用される薄刃包丁に好ましい。薄刃包丁は刃の両面を研磨するので、研磨角度16度で両面を研磨すると包丁の刃先縁の断面の角度である切刃角度は32度となる。刃支持面44の傾斜角度の異なる複数の刃支持台43を、刃物に合わせて交換することにより好ましい研磨を得ることができる。例えば、刃支持面44の傾斜角度が22度のものを用意すれば、出刃包丁の好ましい研磨角度を得ることができる。出刃包丁は刃の片面のみ研磨するので、研磨角度22度で研磨すると切刃角度も22度になる。刃支持面44の傾斜角度はこれらの数値に限定されないことは勿論であり、これら以外の数値に設定することにより用途に応じた最適の切刃角度を得ることができる。また、最初に刃を比較的小さな鋭角の研磨角度で研磨し、次いで刃支持台43を交換して比較的大きな鋭角の研磨角度で研磨することにより、刃先縁付近の切刃角度が変わり二段刃付けが可能となる。
【0032】
カバー3の中央部には研ぎ水を回転研磨部材9の空所20に注入するための注入孔48が設けられている。注入孔48には、ホイール状のリブ49が設けられている。研磨中に研ぎ水が注入孔48から飛散することを最小限に食い止めるためのものである。図4に示すように、注入孔48から注入された研ぎ水は、回転研磨部材9の注入口22を介して空所20に注入される。カバー3はその周壁26の内側に内壁50が設けられている。これは、飛散する研ぎ水を内壁50に付着させれば、使用後にカバー3を取り外して容易に洗い流すことができるからである。
【0033】
回転研磨部材9の空所20に溜められた研ぎ水は、回転研磨部材9が傾斜しているので空所20の低い場所に集まる。この状態で回転研磨部材9を高速回転させると、研ぎ水に遠心力が加わり、研ぎ水と接する空所20の内面21が高速で回転しているので、研ぎ水は内面21に張り付いた状態で回転する。研磨砥石8は水の浸透性を有するから、内面21から浸透した研ぎ水は遠心力によって研磨砥石8の内部を通過して研磨面19に滲出する。研ぎ水は研磨砥石8の内部を通過しているときに、研磨砥石8の回転と同じ回転の慣性を与えられるので、研磨面19に滲出した研ぎ水は研磨砥石8と同じ回転で回転しながら、遠心力により徐々に研磨面19の外周方向に移動する。ただし、研ぎ水が外周方向へ移動しても、すぐに刃の刃先縁が接触するので、研ぎ水の外周方向への移動量はわずかである。したがって、研ぎ水が研磨面の外周から飛散することはほとんどなく研磨に必要な研ぎ水が効率よく供給される。
【0034】
次に本発明の使用方法の一例について図12及び図13を参照して説明する。これらの図は、料理用の薄刃包丁の研磨方法を示している。薄刃包丁は刃の両面を研ぐ必要があるからそれらについて説明する。図12は刃の一方の面を研磨する場合を示している。研ぎ機1を使用するときは、ガイド溝38の刃挿し入れ口39が作業者の方向を向くように研ぎ機1を置く。次に、研ぎ水をカバー3の注入孔48に注入し、回転研磨部材9の空所20に適当量溜める。次いで、包丁51の柄55を右手で握り、駆動スイッチ34を押してオンにする。研磨砥石8は毎分約500回転で回転するが、その回転数に限定されるものではない。また、回転数を可変式にしてもよい。研磨砥石8の回転に伴い研ぎ水が研磨面9に滲出するので刃52の刃元部53をその刃先縁54からガイド溝38の中に挿し入れる。そのときに、刃52を刃支持台43の刃支持面44に宛がって研磨角度を決め、包丁51を矢印方向に引きながら刃先縁54の部分の表面を研磨面9で研磨する。研磨するときにあいている左手を刃52に添えると包丁が安定する。包丁51をゆっくり引きながら研磨すれば包丁を一回引いただけで刃を良好な状態にすることができる。包丁51を数往復させて研磨してもよいことは勿論である。刃52の一方の面の研磨を終了したときは、図13に示すように包丁51を左手に持ち替えて前述した方法と同じようにして、矢印方向に包丁51を引きながら刃52の他方の面を研磨する。その際、駆動スイッチ34はオンのままで持ち替えてもよく、駆動スイッチ34を一度オフにしてから再度オンにしてもよい。
【0035】
前述した研ぎ機1の使用方法では、図2に示すように刃挿し入れ口39が作業者の方向を向いている。図2から明らかなように、置かれている研ぎ機1において、刃挿し入れ口39や刃支持台43は最も高い領域に設けられており、そこからカバー3の上面56は右下がりに傾斜し、ハウジング5の左側の外周面57は左下がりに傾斜している。包丁51の研磨時に包丁51は水平に保たれるから、図12に示すように包丁51を右手に持って研磨するときは、水平な包丁51の柄55とカバー3の上面55との間に図2で見て三角形の空間が生じるので、研磨時に包丁51を握る右手がカバー3の上面56に干渉されず使い易い。そのときに、包丁51を安定させるため刃52に左手を添えることが好ましいが、添えた左手はハウジング5の左側の外周面57に干渉されない。また、図13に示すように包丁51を左手に持って研磨するときは、水平な包丁51の柄55とハウジング5の左側の外周面57との間に図2で見て三角形の空間が生じるので、研磨時に包丁51を握る左手がハウジング5の左側の外周面57に干渉されず使い易い。そのときに、包丁51を安定させるため刃52に右手を添えることが好ましいが、添えた右手はカバー3の上面56に干渉されない。すなわち、包丁51を左右いずれの手に持って研磨してもハウジング5やカバー3が手や柄55に干渉しないので円滑に研磨作業をすることができる。
【0036】
なお、本発明は前述した構成に基づいて種々の態様をとることが可能である。例えば、研磨する刃は、包丁の刃に限定されることはなく、例えば鋏やナイフや彫刻刀の刃であってもよい。包丁とは異なる刃物を研磨するときは、それに対応する刃支持台43を用意する。また、彫刻刀のように刃先縁の長さが研磨面よりも短いときは研磨時に彫刻刀を固定したままで研磨することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
回転している研磨砥石の研磨面に供給する研ぎ水に、あらかじめその回転と同じ回転の慣性を与えることにより、研磨砥石の研磨面に必要な研ぎ水を供給できるので、研ぎ水を必要とする電動刃物研ぎ機に適正に対応できる。
【符号の説明】
【0038】
1 研ぎ機、 2 研ぎ機本体、 3 カバー、 4 排水容器、 5 ハウジング、 6 モータ、 7 回転軸、 8 研磨砥石、 9 回転研磨部材、 10 ハウジングの底面、 11 ハウジングの上面部、 12 排水口、 13 排水パイプ、 14 電気コードの一部、 15 開口、 16 排水容器の底面、 17 蓋、 18 基板、 19 研磨面、 20 空所、 21 内面、 22 注入口、 23 母線、 24 孔、 25 上部周壁、 26 周壁、 27 係合凸部、 28 係止溝、 29 凹部、 30 導入口、 31 係合凹部、 32 係止突起、 33 安全スイッチ、 34 駆動スイッチ、 35 位置合わせ突起、 36 位置合わせ突起、 37 円錐面、 38 ガイド溝、 39 刃挿し入れ口、 40 ガイド溝内面、 41 ガイド溝内面、 42 ガイド溝の上面部、 43 刃支持台、 44 刃支持面、 45 嵌合部、 46 刃支持台受け、 47 凹部、 48 注入孔、 49 リブ、 50 カバーの内壁、 51 包丁、 52 包丁の刃、 53 刃元部、 54 刃先縁、 55 包丁の柄、 56 カバーの上面、 57 ハウジングの左側の外周面
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨面に研ぎ水を供給しながら包丁などの刃物を研ぐ電動刃物研ぎ機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動刃物研ぎ機の一種に、砥石に研ぎ水を掛けながら使用する研ぎ機がある。研ぎ水を掛ける理由は、砥石を傷めないように、刃物がスムーズに動くように、そして刃の焼が戻らないようにするためである。
【0003】
研ぎ水を使用する従来の電動刃物研ぎ機は、砥石表面に外部から研ぎ水を掛けるように供給する構造である。そのような構造の電動刃物研ぎ機の砥石は高速回転しているので、回転中に砥石表面に掛けられた研ぎ水はその表面に付着する間もなく一瞬の間に砥石表面に弾き飛ばされ飛散してしまうのである。したがって、このような電動刃物研ぎ機では研ぎ水を砥石表面に効率よく供給できないのである。
【0004】
特許文献1における砥石表面への研ぎ水の供給手段は、砥石の上方にある研ぎ水散布管から研ぎ水供給用の多数本の糸を砥石表面に接触させ或いは離間させ、この糸を伝って落下する研ぎ水を砥石表面に供給する構造である。多数本の糸を砥石表面に接触させても、砥石表面によって糸はすぐに研削されてしまうので、結局、糸は砥石表面から離間した状態となる。そうすると、研ぎ水は糸を伝い水滴となって砥石表面に落下する。その結果、落下した水滴は砥石表面に付着する間もなく弾き飛ばされ砥石表面から飛散してしまうのである。水滴が弾き飛ばされ飛散する理由の一つは、高速回転する砥石表面に対して水滴は高速回転の慣性を有していないので、水滴が砥石と同じ速度で回転することができず、そのために水滴が砥石表面に十分に付着できないからであると考えられる。また、砥石表面から飛散した研ぎ水は周囲に飛び散るので、使用者に研ぎ水が掛かってしまうのである。さらに、砥石表面に供給した研ぎ水が一瞬にして飛散してしまうので、多くの研ぎ水を供給する必要があり、その分だけ飛散する研ぎ水の量が多くなるのでその処理に手間がかかる。
【0005】
特許文献2における砥石表面への研ぎ水の供給手段は、水道水の水圧を利用して研ぎ水を回転軸の中空を通し、前記砥石の砥石面に噴出させ、その噴出した研ぎ水を遠心力により砥石の上面である砥石面に均一的に散布させようとする構造である。研ぎ水を勢いよく砥石面に噴出させて遠心力により砥石面に散布するので、噴出した研ぎ水の多くは砥石面に散布されることなく無駄に飛散し、残りの研ぎ水が砥石面に散布されるが砥石面は高速回転しているから研ぎ水は一瞬で砥石面の外側に飛散する。この場合も、高速回転する回転砥石に対して研ぎ水は高速回転の慣性を有していないので、研ぎ水が砥石と同じ速度で回転することができず、そのために研ぎ水が砥石表面に十分に付着できないからであると考えられる。したがって、比較的大きな水圧で水道からかなりの量の水を連続的に供給しなければならず、多量の水道水が必要となりコストもかかるから商品化は実現性に乏しい。また、多量の水が飛散するのでその処理が容易でない。さらに、この研ぎ機は、砥石を囲繞する刃物台を有しているので、砥石面から飛散した研ぎ水がこの刃物台に当たるのであるが、刃物台は刃物保持溝を有していてこの刃物保持溝から研ぎ水が外部に飛散してしまうのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭46−798号公報
【特許文献2】実開昭51−34090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、回転している研磨砥石の研磨面に供給する研ぎ水に、あらかじめその回転と同じ回転の慣性を与えることにより、研磨面に供給された研ぎ水を一瞬の間に飛散させることなく、適正な研磨に必要な研ぎ水を研磨面に供給できる電動刃物研ぎ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1は、研磨砥石を有する回転研磨部材が、回転用駆動装置により回転される回転軸に一体回転可能に固定され、回転している研磨砥石の研磨面に研ぎ水を供給することによりその研磨面で刃物を研磨する電動刃物研ぎ機であって、研磨面に供給される研ぎ水にあらかじめ研磨砥石の回転と同じ回転の慣性を与える手段を有する構成である。
【0009】
請求項2は、研磨砥石が内面を有し、その内面から取り込まれた研ぎ水が研磨砥石の内部を通ることにより研磨砥石の回転と同じ回転の慣性を与えられ研磨面に供給される構成である。
【0010】
請求項3は、研ぎ水を溜める空所が回転研磨部材に設けられ、この回転研磨部材は前記空所に研ぎ水を注入するための注入口を有しており、研磨砥石は水の浸透性を有する材料で形成され、回転研磨部材の回転により空所に溜められた研ぎ水が研磨砥石の内面から浸透し研磨面に滲出して供給される構成である。
【0011】
請求項4は、研磨砥石が環状に形成され、研磨砥石の内側の空間を下側から塞ぐ基板が研磨砥石の下面に固定され、研磨砥石と基板により研ぎ水を溜めるための空所が構成され、空所の上部に空所の底よりも内径の小さな注入口が形成されている構成である。
【0012】
請求項5は、回転軸が鉛直に対して傾斜した方向に延びており、回転研磨部材で構成される平面が回転軸と直角をなすように回転研磨部材が回転軸に固定されている構成である。
【0013】
請求項6は、空所が円錐内面状に傾斜した内面を有している構成である。
【0014】
請求項7は、研磨砥石の研磨面が円錐面に形成されている構成である。
【0015】
請求項8は、回転軸が鉛直に対して傾斜した方向に延びている電動刃物研ぎ機であって、この電動刃物研ぎ機が水平な平面に置かれたときに、研磨面の母線中最も高い位置にある母線が水平に延びる構成である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1は、研磨砥石を有する回転研磨部材が、回転用駆動装置により回転される回転軸に一体回転可能に固定され、回転している研磨砥石の研磨面に研ぎ水を供給することによりその研磨面で刃物を研磨する電動刃物研ぎ機であって、研磨面に供給される研ぎ水にあらかじめ研磨砥石の回転と同じ回転の慣性を与える手段を有する。したがって、研磨面に供給された研ぎ水は研磨砥石と同じ回転の慣性を有しているので、研ぎ水から見れば研磨砥石は回転しておらず、相対的な移動がないので研磨面から弾き飛ばされることがなく、遠心力により研磨面上をその外周に向かって移動する。これにより、研磨面に供給された研ぎ水のほぼ全部が研磨面に付着しながら移動するので、適正な研磨に必要な研ぎ水が研磨面に供給される。また、研ぎ水が研磨面から弾き飛ばされることがなく、研ぎ水を無駄なく効率的に使用できるので、飛散する研ぎ水の量が少なくその処理が楽である。
【0017】
請求項2は、研磨砥石が内面を有し、その内面から取り込まれた研ぎ水が研磨砥石の内部を通過しているときに研磨砥石の回転と同じ回転の慣性を与えられ研磨面に供給される。研ぎ水が研磨砥石の内部を通過するだけで研磨砥石の回転と同じ回転の慣性を得られるので、特に研ぎ水を回転させる装置を必要としない。
【0018】
請求項3は、研ぎ水を溜める空所が回転研磨部材に設けられ、この回転研磨部材は空所に研ぎ水を注入するための注入口を有しており、研磨砥石は水の浸透性を有する材料で形成され、回転研磨部材の回転により空所に溜められた研ぎ水が研磨砥石の内面から浸透し研磨面に滲出して供給される。回転研磨部材を高速回転させると、回転研磨部材の空所に溜められた研ぎ水に遠心力が加わり、研ぎ水と接する空所の内面が高速で回転しているので、研ぎ水は空所の内面に押し付けられた状態で回転する。研磨砥石は水の浸透性を有するから、内面から浸透した研ぎ水は遠心力によって研磨砥石の内部を通過して研磨面に滲出する。また、研ぎ水は研磨砥石の内部を通過しているときに、研磨砥石の回転と同じ回転の慣性を与えられるので、研磨面に滲出した研ぎ水は研磨砥石と同じ回転で回転しながら、遠心力により研磨面上をその外周方向に徐々に移動するだけであり、研磨面から弾き飛ばされることがない。したがって、空所に溜められた研ぎ水を研磨砥石の水の浸透性を利用して研磨砥石の回転と同じ回転の慣性を与えつつ研磨面に供給することができる。このため、研ぎ水に回転の慣性を与え且つ移動させる特別の装置又は構成を必要としない。さらに、研ぎ水は水の浸透性を有する研磨砥石の中を浸透し研磨面の表面に滲出するので、多数の細管による研ぎ水の供給と異なり、研ぎ水が研磨砥石内で拡散し研ぎ水が研磨面に均一に供給される。
【0019】
請求項4は、研磨砥石が環状に形成され、研磨砥石の内側の空間を下側から塞ぐ基板が研磨砥石の下面に固定され、研磨砥石と基板により研ぎ水を溜めるための空所が構成されている。そして、空所の上部に空所の底よりも内径の小さな注入口が形成されている。したがって、研ぎ水の注入は注入口の上方から研ぎ水を注ぎ落とすだけであるから容易に研ぎ水を注入することができる。また、研磨砥石が回転中であっても研ぎ水を注入することができる。
【0020】
請求項5は、回転軸は鉛直に対して傾斜した方向に延びており、回転研磨部材で構成される平面が回転軸と直角をなすように回転研磨部材が回転軸に固定されている。仮に、回転軸が鉛直に延びる構成であると研磨砥石は水平になるので、空所に溜められた本発明と同程度の量の研ぎ水は空所の底に平均的に広く浅く溜まる。その状態から研磨砥石を回転させると、研ぎ水はまず遠心力で空所の内面方向に向かって移動し、次いで研ぎ水の粘性により研ぎ水は内面に張り付くようにして内面に沿ってその上部に向かって移動し、これにより、研磨面の下部から上部まで研ぎ水が供給される。したがって、広く浅く溜まっている研ぎ水は高速回転により空所の内面方向への移動と、内面に張り付いた状態での上方への移動を経て研磨面に供給されるので、それまでの工程が長くなりすぐに研磨作業に取り掛かれない。これに対して、請求項5は、回転研磨部材の空所に溜められた研ぎ水は、回転研磨部材が傾斜しているので最初から空所の低い場所に集まっており、研ぎ水はすでに空所の内面の上部付近まで届いている。この状態で回転研磨部材を高速回転させると、研ぎ水は空所の内面方向に移動するという工程なしで空所の内面に張り付いた状態で回転するから、研ぎ水は即座に空所の内面に浸透して研磨面に供給され研磨作業をすぐに始めることができる。
【0021】
請求項6は、空所が円錐内面状に傾斜した内面を有している。傾斜した内面は同じ高さの垂直内面よりも面積が広がるので研ぎ水を十分に取り入れることができる。また、遠心力により空所の研ぎ水が研磨砥石の傾斜した内面に張り付いた状態となるので、研ぎ水を研磨面に平均的に供給できる。
【0022】
請求項7は、研磨砥石の研磨面が円錐面に形成されている。仮に、研磨砥石が円板状で研磨面がその周面であるときは、研磨面の幅が狭いので刃渡りの長い刃物を効率的に研磨できない。また、仮に、研磨砥石が円板状で研磨面がその端面である上面であるときは、研磨砥石の内部に溜めた研ぎ水は遠心力で周面方向に向かって内周面に張り付くが、遠心力は中心から径方向に向かう力であって上方に向かう力ではないから、遠心力では研ぎ水を上面である研磨面まで上昇させることができず研磨面に研ぎ水を供給することができない。請求項7は、研磨面が斜面であるから研磨面の幅が広くなって効率的に研磨でき、さらに遠心力により研ぎ水を研磨面に供給することができる。
【0023】
請求項8は、回転軸が鉛直に対して傾斜した方向に延びている電動刃物研ぎ機であって、電動刃物研ぎ機が水平な平面に置かれたときに、研磨面の母線中最も高い位置にある母線が水平に延びる。したがって、刃物をその母線の方向に位置させれば、刃物を水平にして研磨できるので使い勝手が良いのである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の正面側から見た斜視図である。
【図2】本発明の右側面図である。
【図3】本発明の平面図である。
【図4】図3におけるA−A断面図である。
【図5】研磨砥石の斜視図である。
【図6】研磨砥石の中央断面図である。
【図7】カバーの斜視図である。
【図8】カバーに取り付けられる刃支持台の斜視図である。
【図9】刃支持台を下側から見た斜視図である。
【図10】研ぎ機本体に設けられたカバーとの係合構造を示す斜視図である。
【図11】カバーに設けられた研ぎ機本体との係合構造を示す斜視図である。
【図12】刃の一方の面を研磨する状態を示した斜視図である。
【図13】刃の他方の面を研磨する状態を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
研ぎ機1は、研ぎ機本体2と、カバー3と、排水容器4とから成る。図4に示すように、研ぎ機本体2はハウジング5を有し、このハウジング5の中にモータ6を備えている。モータ6の回転軸7には研磨砥石8を有する回転研磨部材9が一体回転可能に取り付けられている。ハウジング5はその底面10に対して所定の角度で斜めに立ち上がるように形成され、回転軸7も同じ所定の角度で傾斜している。鉛直線に対する傾斜角度は約35度であるがこの数値に限定されるものではない。ハウジング5は上面部11を有し、回転研磨部材9はこの上面部11の上方で回転する。上面部11は、研ぎ水がハウジング5の内部に侵入することを防止する。上面部11には排水口12が設けられ、この排水口12に排水パイプ13が取り付けられ、上面部11で受けた排水をハウジング5の外部に排出する。排出された排水を溜めるための排水容器4がハウジング5の外面に着脱可能に取り付けられている。この排水容器4は側面に開口15を有し、この開口15に排水パイプ13が挿入されている。研ぎ機本体2の排水容器4と接する外面に容器掛け止め用の突起(図示せず。)が設けられ、排水容器4にはこの突起に係合する孔部(図示せず。)が設けられ、突起と孔部の係合によって排水容器4が研ぎ機本体2に取り付けられる。排水容器4もその底面16からハウジング5と同じ角度で傾斜するように立ち上がっている。排水容器4は着脱自在の蓋17が取り付けられている。刃物の研磨は刃をカバー3のガイド溝38に挿し入れて行うが、排水容器4はそのガイド溝38の設けられた側と反対側に取り付けられる。これにより、研磨中に排水容器4が研磨作業の邪魔にならない。なお、符号14は電気コードの一部である。
【0026】
図5や図6に示すように、回転研磨部材9は円形の基板18の表面に環状の研磨砥石8が接着剤により固着されており、その研磨面19は円錐面に形成されている。基板18は金属で形成され、研磨砥石8は水の浸透性を有する材料が使用されている。水の浸透性を有する材料として砥粒がアルミナ系砥粒であるホワイトアランダムの番手320番が用いられているが、他の材料でもよく例えば天然の水砥石でもよい。研磨砥石8の最大直径は約135mmであり、最大厚みは約24mmである。なお、研磨砥石8の固着方法は接着剤に限定されるものでなく、他の方法、例えばボルトなどの金具による結合でもよい。
【0027】
図6に示すように、回転研磨部材9はその内部に研ぎ水を溜めるための空所20を有する。空所20はその周囲が内面21で囲われている。内面21は内側に傾斜する傾斜面に形成されており、空所20は裾広がりの円錐台形をなす。研磨砥石8の上部中央に研ぎ水の注入口22が形成されている。この注入口22から空所20に研ぎ水が注入される。内面21が内側に傾斜しているので、当然のことであるが注入口22の内径は空所20の底の内径よりも小さい。注入口22の内径は約54mmであり空所20の底の内径は約88mmであるがこれらの数値に限定されるものではない。図6の状態において、研磨砥石8の研磨面19である円錐面の傾斜角度、すなわち回転研磨部材9の水平面である基板18に対する研磨面19の傾斜角度は約35度である。また、図4に示すようにハウジング5は鉛直線に対して約35度斜め方向に立ち上がっているので、ハウジング5と同じ角度で斜めに延びている回転軸7の傾斜角度も約35度である。この結果、研磨面19の最も高い位置にある母線23は水平をなす。この母線23付近で刃を研磨すれば、刃物全体を水平に保ちながら研磨することができるので作業がしやすい。
【0028】
研ぎ機1は、研磨面19から飛散する研ぎ水が外部に飛散することを防止するための手段を備える。その手段の一つは、ハウジング5の上面部11に円周状に延びる上部周壁25である。上部周壁25は主に水平方向に飛散する研ぎ水が外部に飛散することを防止する。他の手段は、カバー3である。カバー3は主に上方及び水平方向に飛散する研ぎ水が外部に飛散することを防止する。
【0029】
カバー3はハウジング5の上部周壁25に着脱可能に取り付けることができる。カバー3の周壁26を前記上部周壁25の外側に嵌合することにより、カバー3はハウジング5に取り付けられる。カバー3がハウジング5から脱離することを防止するための手段がカバー3とハウジング5に設けられている。図11に示すように、カバー3の周壁26の内面に離脱防止のための係合凸部27が設けられている。この係合凸部27には係止溝28が設けられている。また、図10に示すように、ハウジング5の上面部11に円周状に延びる上部周壁25の表面に離脱防止のための凹部29が設けられている。この凹部29は、カバー3の係合凸部27を導入するための導入口30と、係合凸部27を係合するための係合凹部31を有する。係合凹部31には係止突起32が設けられている。符号33は出没可能な安全スイッチであり、図10のように突出しているときは駆動スイッチ34を押してもモータ6は回転しない。カバー3をハウジング5に取り付けるときは、カバー3の係合凸部27をハウジング5の導入口30から凹部29に導入し、次いでカバー3を係合凹部31方向に回転させる。一杯に回転させると、安全スイッチ33が没入して駆動スイッチ34を押せばモータ6は回転する。また、カバー3の係止溝28にハウジング5の係止突起32が係止して、カバー3が容易に逆回転することを防止する。なお、図10における符号35と図11における符号36は位置合わせ突起であり、双方の位置合わせ突起35,36が完全に重なることにより、カバー3の係止溝28にハウジング5の係止突起32が係止したことを確認することができる。この係合構造は反対側の外周部分にも設けられているが、安全スイッチ33と位置合わせ突起35,36は設けられていない。
【0030】
カバー3は、その外周の一部が円錐面37に形成されている。この円錐面37の傾斜角度は、研磨砥石8の研磨面19の傾斜角度とほぼ等しい。その円錐面37にガイド溝38が形成されている。ガイド溝38はその溝内のその一方の面であるガイド溝内面40,41と他方の面である上面部42により構成される。ガイド溝38の両端に形成されているガイド溝内面40,41の一方のガイド溝内面41は、ハウジング5の上部周壁25により構成されている。ガイド溝38から研磨砥石8の研磨面19が覗いているので、ガイド溝38の刃挿し入れ口39から刃を挿し入れることにより刃を研磨することができる。挿し入れ口39の上下幅は約7mmであり指が入らない大きさになっている。図3に示すように、ガイド溝38はカバー3の円錐面37の母線方向に延びているので、図12又は図13に示すように、包丁51をその母線方向に沿って移動させながら刃52を研磨する。カバー3の全体又はガイド溝38の上面部42を透明とすることにより、研磨状態を目視することができる。
【0031】
刃挿し入れ口39に隣接する円錐面37に、刃支持台43が着脱可能に取り付けられている。図8に示すように、刃支持台43は所定の傾斜角度を有する刃支持面44を有する。図9に示すように、刃支持台43はほぼ半円形の嵌合部45を有している。図7に示すように、カバー3の円錐面37に刃支持台43を取り付けるための刃支持台受け46が形成されている。この刃支持台受け46には、ほぼ半円形の凹部47が形成されており、この凹部47に刃支持台43の嵌合部45を嵌合することにより、刃支持台43をカバー3に取り付けることができる。刃支持台43がカバー3に取り付けられたときに、傾斜している刃支持面44の下向きの傾斜方向の延長線がガイド溝38の刃挿し入れ口39に延びている。刃を刃支持面44の表面に宛がいつつ刃挿し入れ口39から刃をガイド溝38内に挿し入れると、刃は刃支持面44の傾斜角度と同じ研磨角度で研磨面19に宛がわれ研磨される。刃支持面44の研磨面19に対する傾斜角度は約16度であって研磨角度も約16度となるが、この角度は例えば家庭で調理に使用される薄刃包丁に好ましい。薄刃包丁は刃の両面を研磨するので、研磨角度16度で両面を研磨すると包丁の刃先縁の断面の角度である切刃角度は32度となる。刃支持面44の傾斜角度の異なる複数の刃支持台43を、刃物に合わせて交換することにより好ましい研磨を得ることができる。例えば、刃支持面44の傾斜角度が22度のものを用意すれば、出刃包丁の好ましい研磨角度を得ることができる。出刃包丁は刃の片面のみ研磨するので、研磨角度22度で研磨すると切刃角度も22度になる。刃支持面44の傾斜角度はこれらの数値に限定されないことは勿論であり、これら以外の数値に設定することにより用途に応じた最適の切刃角度を得ることができる。また、最初に刃を比較的小さな鋭角の研磨角度で研磨し、次いで刃支持台43を交換して比較的大きな鋭角の研磨角度で研磨することにより、刃先縁付近の切刃角度が変わり二段刃付けが可能となる。
【0032】
カバー3の中央部には研ぎ水を回転研磨部材9の空所20に注入するための注入孔48が設けられている。注入孔48には、ホイール状のリブ49が設けられている。研磨中に研ぎ水が注入孔48から飛散することを最小限に食い止めるためのものである。図4に示すように、注入孔48から注入された研ぎ水は、回転研磨部材9の注入口22を介して空所20に注入される。カバー3はその周壁26の内側に内壁50が設けられている。これは、飛散する研ぎ水を内壁50に付着させれば、使用後にカバー3を取り外して容易に洗い流すことができるからである。
【0033】
回転研磨部材9の空所20に溜められた研ぎ水は、回転研磨部材9が傾斜しているので空所20の低い場所に集まる。この状態で回転研磨部材9を高速回転させると、研ぎ水に遠心力が加わり、研ぎ水と接する空所20の内面21が高速で回転しているので、研ぎ水は内面21に張り付いた状態で回転する。研磨砥石8は水の浸透性を有するから、内面21から浸透した研ぎ水は遠心力によって研磨砥石8の内部を通過して研磨面19に滲出する。研ぎ水は研磨砥石8の内部を通過しているときに、研磨砥石8の回転と同じ回転の慣性を与えられるので、研磨面19に滲出した研ぎ水は研磨砥石8と同じ回転で回転しながら、遠心力により徐々に研磨面19の外周方向に移動する。ただし、研ぎ水が外周方向へ移動しても、すぐに刃の刃先縁が接触するので、研ぎ水の外周方向への移動量はわずかである。したがって、研ぎ水が研磨面の外周から飛散することはほとんどなく研磨に必要な研ぎ水が効率よく供給される。
【0034】
次に本発明の使用方法の一例について図12及び図13を参照して説明する。これらの図は、料理用の薄刃包丁の研磨方法を示している。薄刃包丁は刃の両面を研ぐ必要があるからそれらについて説明する。図12は刃の一方の面を研磨する場合を示している。研ぎ機1を使用するときは、ガイド溝38の刃挿し入れ口39が作業者の方向を向くように研ぎ機1を置く。次に、研ぎ水をカバー3の注入孔48に注入し、回転研磨部材9の空所20に適当量溜める。次いで、包丁51の柄55を右手で握り、駆動スイッチ34を押してオンにする。研磨砥石8は毎分約500回転で回転するが、その回転数に限定されるものではない。また、回転数を可変式にしてもよい。研磨砥石8の回転に伴い研ぎ水が研磨面9に滲出するので刃52の刃元部53をその刃先縁54からガイド溝38の中に挿し入れる。そのときに、刃52を刃支持台43の刃支持面44に宛がって研磨角度を決め、包丁51を矢印方向に引きながら刃先縁54の部分の表面を研磨面9で研磨する。研磨するときにあいている左手を刃52に添えると包丁が安定する。包丁51をゆっくり引きながら研磨すれば包丁を一回引いただけで刃を良好な状態にすることができる。包丁51を数往復させて研磨してもよいことは勿論である。刃52の一方の面の研磨を終了したときは、図13に示すように包丁51を左手に持ち替えて前述した方法と同じようにして、矢印方向に包丁51を引きながら刃52の他方の面を研磨する。その際、駆動スイッチ34はオンのままで持ち替えてもよく、駆動スイッチ34を一度オフにしてから再度オンにしてもよい。
【0035】
前述した研ぎ機1の使用方法では、図2に示すように刃挿し入れ口39が作業者の方向を向いている。図2から明らかなように、置かれている研ぎ機1において、刃挿し入れ口39や刃支持台43は最も高い領域に設けられており、そこからカバー3の上面56は右下がりに傾斜し、ハウジング5の左側の外周面57は左下がりに傾斜している。包丁51の研磨時に包丁51は水平に保たれるから、図12に示すように包丁51を右手に持って研磨するときは、水平な包丁51の柄55とカバー3の上面55との間に図2で見て三角形の空間が生じるので、研磨時に包丁51を握る右手がカバー3の上面56に干渉されず使い易い。そのときに、包丁51を安定させるため刃52に左手を添えることが好ましいが、添えた左手はハウジング5の左側の外周面57に干渉されない。また、図13に示すように包丁51を左手に持って研磨するときは、水平な包丁51の柄55とハウジング5の左側の外周面57との間に図2で見て三角形の空間が生じるので、研磨時に包丁51を握る左手がハウジング5の左側の外周面57に干渉されず使い易い。そのときに、包丁51を安定させるため刃52に右手を添えることが好ましいが、添えた右手はカバー3の上面56に干渉されない。すなわち、包丁51を左右いずれの手に持って研磨してもハウジング5やカバー3が手や柄55に干渉しないので円滑に研磨作業をすることができる。
【0036】
なお、本発明は前述した構成に基づいて種々の態様をとることが可能である。例えば、研磨する刃は、包丁の刃に限定されることはなく、例えば鋏やナイフや彫刻刀の刃であってもよい。包丁とは異なる刃物を研磨するときは、それに対応する刃支持台43を用意する。また、彫刻刀のように刃先縁の長さが研磨面よりも短いときは研磨時に彫刻刀を固定したままで研磨することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
回転している研磨砥石の研磨面に供給する研ぎ水に、あらかじめその回転と同じ回転の慣性を与えることにより、研磨砥石の研磨面に必要な研ぎ水を供給できるので、研ぎ水を必要とする電動刃物研ぎ機に適正に対応できる。
【符号の説明】
【0038】
1 研ぎ機、 2 研ぎ機本体、 3 カバー、 4 排水容器、 5 ハウジング、 6 モータ、 7 回転軸、 8 研磨砥石、 9 回転研磨部材、 10 ハウジングの底面、 11 ハウジングの上面部、 12 排水口、 13 排水パイプ、 14 電気コードの一部、 15 開口、 16 排水容器の底面、 17 蓋、 18 基板、 19 研磨面、 20 空所、 21 内面、 22 注入口、 23 母線、 24 孔、 25 上部周壁、 26 周壁、 27 係合凸部、 28 係止溝、 29 凹部、 30 導入口、 31 係合凹部、 32 係止突起、 33 安全スイッチ、 34 駆動スイッチ、 35 位置合わせ突起、 36 位置合わせ突起、 37 円錐面、 38 ガイド溝、 39 刃挿し入れ口、 40 ガイド溝内面、 41 ガイド溝内面、 42 ガイド溝の上面部、 43 刃支持台、 44 刃支持面、 45 嵌合部、 46 刃支持台受け、 47 凹部、 48 注入孔、 49 リブ、 50 カバーの内壁、 51 包丁、 52 包丁の刃、 53 刃元部、 54 刃先縁、 55 包丁の柄、 56 カバーの上面、 57 ハウジングの左側の外周面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨砥石を有する回転研磨部材が、回転用駆動装置により回転される回転軸に一体回転可能に固定され、回転している研磨砥石の研磨面に研ぎ水を供給することによりその研磨面で刃物を研磨する電動刃物研ぎ機であって、研磨面に供給される研ぎ水にあらかじめ研磨砥石の回転と同じ回転の慣性を与える手段を有することを特徴とする電動刃物研ぎ機。
【請求項2】
研磨砥石は内面を有し、その内面から取り込まれた研ぎ水が研磨砥石の内部を通ることにより研磨砥石の回転と同じ回転の慣性を与えられ研磨面に供給される請求項1記載の電動刃物研ぎ機。
【請求項3】
研ぎ水を溜める空所が回転研磨部材に設けられ、該回転研磨部材は前記空所に研ぎ水を注入するための注入口を有しており、研磨砥石は水の浸透性を有する材料で形成され、回転研磨部材の回転により空所に溜められた研ぎ水が研磨砥石の内面から浸透し研磨面に滲出して供給される請求項2記載の電動刃物研ぎ機。
【請求項4】
研磨砥石は環状に形成され、研磨砥石の内側の空間を下側から塞ぐ基板が研磨砥石の下面に固定され、研磨砥石と基板により研ぎ水を溜めるための空所が構成され、空所の上部に空所の底よりも内径の小さな注入口が形成されている請求項2又は請求項3記載の電動刃物研ぎ機。
【請求項5】
回転軸は鉛直に対して傾斜した方向に延びており、回転研磨部材で構成される平面が回転軸と直角をなすように回転研磨部材が回転軸に固定されている請求項4記載の電動刃物研ぎ機。
【請求項6】
空所は、円錐内面状に傾斜した内面を有している請求項4又は請求項5記載の電動刃物研ぎ機。
【請求項7】
研磨砥石の研磨面が円錐面に形成されている請求項4乃至請求項6のいずれか一項記載の電動刃物研ぎ機。
【請求項8】
回転軸が鉛直に対して傾斜した方向に延びている電動刃物研ぎ機であって、該電動刃物研ぎ機が水平な平面に置かれたときに、研磨面の母線中最も高い位置にある母線が水平に延びる請求項7記載の電動刃物研ぎ機。
【請求項1】
研磨砥石を有する回転研磨部材が、回転用駆動装置により回転される回転軸に一体回転可能に固定され、回転している研磨砥石の研磨面に研ぎ水を供給することによりその研磨面で刃物を研磨する電動刃物研ぎ機であって、研磨面に供給される研ぎ水にあらかじめ研磨砥石の回転と同じ回転の慣性を与える手段を有することを特徴とする電動刃物研ぎ機。
【請求項2】
研磨砥石は内面を有し、その内面から取り込まれた研ぎ水が研磨砥石の内部を通ることにより研磨砥石の回転と同じ回転の慣性を与えられ研磨面に供給される請求項1記載の電動刃物研ぎ機。
【請求項3】
研ぎ水を溜める空所が回転研磨部材に設けられ、該回転研磨部材は前記空所に研ぎ水を注入するための注入口を有しており、研磨砥石は水の浸透性を有する材料で形成され、回転研磨部材の回転により空所に溜められた研ぎ水が研磨砥石の内面から浸透し研磨面に滲出して供給される請求項2記載の電動刃物研ぎ機。
【請求項4】
研磨砥石は環状に形成され、研磨砥石の内側の空間を下側から塞ぐ基板が研磨砥石の下面に固定され、研磨砥石と基板により研ぎ水を溜めるための空所が構成され、空所の上部に空所の底よりも内径の小さな注入口が形成されている請求項2又は請求項3記載の電動刃物研ぎ機。
【請求項5】
回転軸は鉛直に対して傾斜した方向に延びており、回転研磨部材で構成される平面が回転軸と直角をなすように回転研磨部材が回転軸に固定されている請求項4記載の電動刃物研ぎ機。
【請求項6】
空所は、円錐内面状に傾斜した内面を有している請求項4又は請求項5記載の電動刃物研ぎ機。
【請求項7】
研磨砥石の研磨面が円錐面に形成されている請求項4乃至請求項6のいずれか一項記載の電動刃物研ぎ機。
【請求項8】
回転軸が鉛直に対して傾斜した方向に延びている電動刃物研ぎ機であって、該電動刃物研ぎ機が水平な平面に置かれたときに、研磨面の母線中最も高い位置にある母線が水平に延びる請求項7記載の電動刃物研ぎ機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−228748(P2012−228748A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98251(P2011−98251)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000001454)株式会社貝印刃物開発センター (123)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000001454)株式会社貝印刃物開発センター (123)
【Fターム(参考)】
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