説明

電動式サムターン錠

【課題】いかなる手段で解錠されても解錠履歴が分かる電動式サムターン錠を提供することである。
【解決手段】デッドボルト3の出没動作を、サムターン5の回動動作を検出するリミットスイッチ7で検知し、このリミットスイッチ7の出力履歴をマイクロコンピュータ9の記憶プログラムで、正常に解錠されたものと、それ以外のものとに仕分けして記憶することにより、いかなる手段で解錠されても解錠履歴が分かるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サムターンを電動アクチュエータで操作する電動式サムターン錠に関する。
【背景技術】
【0002】
デッドボルトを出没させて解施錠するサムターンと、サムターンの回動を操作する電動モータ等の電動アクチュエータを備えた電動式サムターン錠には、セキュリティ性能を高めるために、IC(Integrated Circuit)チップに書き込まれた固有情報を読み取るリーダを設けて、リーダで読み取られた固有情報を照合し、電動アクチュエータを駆動する制御装置を設けて、ICチップを装着したICカード等のデバイスの所持者のみが解錠できるようにしたものがある(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
前記ICチップを装着したICカード等のデバイスには、リーダに接触させて固有情報を読み取らせる接触型のものと、リーダに接触させずに固有情報を読み取らせる非接触型のものとがあり、特許文献1、2に記載されたものは、いずれも非接触型のICカードや携帯電話等のデバイスを用いるようにしている。非接触型のデバイスを用いる電動式サムターン錠は、リーダを露出しないように配置することができるので、リーダを露出させる必要のある接触型のデバイスを用いるものよりもシステム破壊等に対する安全性が高く、耐久性も優れている。このため、近年は、新設のものの他に手動式のサムターン錠を改造するものも含めて、非接触型のデバイスを用いるものが増加している。なお、手動式のサムターン錠を改造する場合は、解施錠するシリンダ錠を組み込んだ把手を流用することも多い。
【0004】
前記非接触型のデバイスに装着されるICチップは、固有情報が書き込まれた電子回路と、リーダから発信される電波を受信して、電子回路に書き込まれた固有情報を送信するアンテナ素子とからなり、ICチップを装着したICカード等のデバイスをリーダに向けて翳すことにより、リーダによって固有情報が読み取られ、サムターン錠が解錠される。なお、施錠については、解錠と同様に、ICカード等のデバイスを翳すことにより行うものと、扉を閉じたときに自動的に施錠されるオートロック式のものとがある。通常、ICカード等のデバイスは、電動式サムターン錠を取り付けた建屋や部屋を利用する社員や家族等の複数のメンバーが所持する。
【0005】
また、特許文献2に記載されたものは、リーダが読み取った固有情報の履歴を記憶する記憶手段を設けている。なお、ICチップを用いる電動式サムターン錠ではないが、錠本体と機械的または電気的に接続可能な電子鍵を用いる電子錠では、電子鍵による解施錠履歴データを電子鍵に送信可能としたものもある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−364220号公報
【特許文献2】特開2009−287251号公報
【特許文献3】特開2005−90049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載されたリーダが読み取った固有情報の履歴を記憶する記憶手段を設けた電動式サムターン錠は、ICカード等のデバイスを用いて解錠した履歴は分かるが、ピッキング等の他の手段で解錠された履歴が分からず、施錠管理を十分に行うことができない問題がある。また、特許文献3に記載された電子錠も、電子鍵で解錠された履歴は分かるが、他の手段で解錠された履歴は分からない。
【0008】
そこで、本発明の課題は、いかなる手段で解錠されても解錠履歴が分かる電動式サムターン錠を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、デッドボルトを出没させて解施錠するサムターンと、前記サムターンの回動を操作する電動アクチュエータと、ICチップに書き込まれた固有情報を読み取るリーダと、このリーダで読み取られた固有情報を照合して、少なくとも解錠するように前記電動アクチュエータを駆動する制御装置とを設けた電動式サムターン錠において、前記デッドボルトの出没動作を検知するセンサを設け、このセンサの出力履歴を記憶する記憶手段を設けた構成を採用した。
【0010】
すなわち、デッドボルトの出没動作を検知するセンサを設け、このセンサの出力履歴を記憶する記憶手段を設けることにより、いかなる手段で解錠されても解錠履歴が分かるようにした。
【0011】
前記デッドボルトの出没動作を検知するセンサを、前記サムターンの回動動作を検出するものとすることにより、デッドボルトの出没動作を検知するセンサを容易に扉側に配置することができる。
【0012】
前記記憶手段を前記制御装置に設け、前記記憶手段に記憶されるセンサの出力履歴を、前記リーダで読み取られた固有情報を照合して解錠されたものと、それ以外のものとに仕分けすることにより、ICチップ以外の他の手段で解錠されたケースを容易に判別することができる。
【0013】
前記制御装置に、前記記憶手段に記憶されたセンサの出力履歴を記録する記録媒体を接続可能とすることにより、センサの出力履歴を記録した記録媒体をパーソナルコンピュータ等に接続して、記憶手段に記憶されたセンサの出力履歴のデータを迅速に処理することができる。
【0014】
前記ICチップを、前記リーダと接触させない非接触型のデバイスに装着することにより、システム破壊等に対する安全性と耐久性が優れたものとすることができる。非接触型のデバイスとしては、ICカードの他に携帯電話等も用いることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る電動式サムターン錠は、デッドボルトの出没動作を検知するセンサを設け、このセンサの出力履歴を記憶する記憶手段を設けたので、いかなる手段で解錠されても解錠履歴が分かり、施錠管理を十分に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】電動式サムターン錠の実施形態を示す一部切欠き縦断面図
【図2】図1の扉の外側からの斜視図
【図3】図1の電動式サムターン錠の電気系統図
【図4】図3のマイクロコンピュータの制御ブロック図
【図5】図4の制御回路の記憶プログラムのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。この電動式サムターン錠は手動式のサムターン錠を改造したものであり、図1および図2に示すように、シリンダ錠1が組み込まれた把手2と、扉Aのフロント面から出没するデッドボルト3を備え、扉Aの内側に取り付けられた駆動ケース4に、デッドボルト3を出没させて解施錠するように回動するサムターン5と、サムターン5の回動を操作する電動アクチュエータとしての電動モータ6と、サムターン5の回動動作を検出するセンサとしてのリミットスイッチ7が設けられている。また、その上側に取り付けられた制御ケース8には、電動モータ6を駆動する制御装置としてのマイクロコンピュータ9と、電源となる電池10が組み込まれている。なお、この電動式サムターン錠はオートロック式とすることができ、その場合は扉Aが閉じたときに自動的に施錠される。
【0018】
前記電動モータ6は、デッドボルト3を出没させるサムターン5の軸部5aに、歯車伝達機構(図示省略)で回転を伝達する。サムターン5の回動動作を検出するリミットスイッチ7は、信号ケーブル11aでマイクロコンピュータ9に接続されている。また、サムターン5の軸部5aはシリンダ錠1も連結されており、電池切れ等の非常時には、シリンダ錠1で解施錠することもできる。通常時は、シリンダ錠1の鍵は別途に保管され、使用されない。
【0019】
前記扉Aの外側の把手2の周りを覆う樹脂製の把手カバー12の中には、RFID(Radio Frequency Identification)アンテナ13aを有するリーダ13が収納され、図2中に一点鎖線で示すように、非接触型のデバイスであるICカード20をリーダ13に向けて翳すことにより、ICカード20に埋設して装着されたICチップ(図示省略)に書き込まれた固有情報が無線で読み取られるようになっている。リーダ13は信号ケーブル11bで扉Aの内側のマイクロコンピュータ9に接続されている。
【0020】
図3は、上述した電動式サムターン錠の電気系統図を示す。前記マイクロコンピュータ9には、リミットスイッチ7とリーダ13の出力が入力され、電動モータ6に解錠信号を出力するようになっている。また、電池10の電力は、電源回路14を介して、電動モータ6、マイクロコンピュータ9、リミットスイッチ7およびリーダ13に供給される。電源回路14には、外部電源供給回路15も接続できるようになっている。
【0021】
図4は、前記マイクロコンピュータ9の制御ブロック図を示す。マイクロコンピュータ9には、電動モータ6を解錠するように駆動する制御回路16と、リーダ13で読み取られる固有情報を照合するためのデータを記憶するメモリ17と、日時を刻むRTC(Real Time Clock)回路18が設けられ、記録媒体としてUSB(Universal Serial Bus)メモリ19が接続可能とされている。制御回路16には、リーダ13で読み取られた固有情報をメモリ17に記憶されたデータと照合する照合プログラム16aと、照合プログラム16aが作動されて解錠された解錠履歴、およびデッドボルト3が出没したことを検知するリミットスイッチ7の出力履歴を記憶する記憶プログラム16bが組み込まれている。
【0022】
図5は、前記記憶プログラム16bを作動する制御フローチャートを示す。リミットスイッチ7の出力が入力されると、RTC回路18からそのときの日時が取得され、このとき照合プログラム16aが作動されたか否かを判別する。照合プログラム16aが作動されている場合は正常、作動されていない場合は異常と判別され、リミットスイッチ7の出力が入力された日時とこの判別結果が記憶される。したがって、適宜の日数間隔で、この記憶内容をマイクロコンピュータ9に接続されるUSBメモリ19に記録して、記憶内容を記録したUSBメモリ19をパーソナルコンピュータ等に接続することにより、全ての解錠履歴を把握できるとともに、各解錠がICカード20を用いた正常なものか、その他の手段による異常なものかを判別でき、施錠管理を十分に行うことができる。
【0023】
上述した実施形態では、電動式サムターン錠を、手動式のサムターン錠を改造したオートロック可能なものとし、解錠のときにのみICカードを使用するようにしたが、オートロック式でなく、施錠のときにもICカードを使用するようにしてもよい。また、新設する場合は、把手にシリンダ錠を組み込まなくてもよい。
【0024】
上述した実施形態では、ICチップを装着したデバイスを鍵専用のICカードとしたが、このICカードは電子マネーや定期券等に使用されるICカードと共用のものとすることもでき、ICカードの他に携帯電話等とすることもできる。
【0025】
上述した実施形態では、デッドボルトの出没動作を、サムターンの回動動作を検出するリミットスイッチで間接的に検知するようにしたが、サムターンの回動動作は他のセンサで検出してもよく、デッドボルトの出没動作を直接検出するようにしてもよい。
【0026】
上述した実施形態では、マイクロコンピュータの記憶プログラムに記憶された記憶内容をUSBメモリに記録して、パーソナルコンピュータ等を用いて記憶内容を出力するようにしたが、マイクロコンピュータ自身に記憶内容を出力する機能を持たせてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 シリンダ錠
2 把手
3 デッドボルト
4 駆動ケース
5 サムターン
5a 軸部
6 電動モータ
7 リミットスイッチ
8 制御ケース
9 マイクロコンピュータ
10 電池
11a、11b 信号ケーブル
12 把手カバー
13 リーダ
13a RFIDアンテナ
14 電源回路
15 外部電源供給回路
16 制御回路
16a 照合プログラム
16b 記憶プログラム
17 メモリ
18 RTC回路
19 USBメモリ
20 ICカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デッドボルトを出没させて解施錠するサムターンと、前記サムターンの回動を操作する電動アクチュエータと、ICチップに書き込まれた固有情報を読み取るリーダと、このリーダで読み取られた固有情報を照合して、少なくとも解錠するように前記電動アクチュエータを駆動する制御装置とを設けた電動式サムターン錠において、前記デッドボルトの出没動作を検知するセンサを設け、このセンサの出力履歴を記憶する記憶手段を設けたことを特徴とする電動式サムターン錠。
【請求項2】
前記デッドボルトの出没動作を検知するセンサを、前記サムターンの回動動作を検出するものとした請求項1に記載の電動式サムターン錠。
【請求項3】
前記記憶手段を前記制御装置に設け、前記記憶手段に記憶されるセンサの出力履歴を、前記リーダで読み取られた固有情報を照合して解錠されたものと、それ以外のものとに仕分けするようにした請求項1または2に記載の電動式サムターン錠。
【請求項4】
前記制御装置に、前記記憶手段に記憶されたセンサの出力履歴を記録する記録媒体を接続可能とした請求項3に記載の電動式サムターン錠。
【請求項5】
前記ICチップを、前記リーダと接触させない非接触型のデバイスに装着した請求項1乃至4のいずれかに記載の電動式サムターン錠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−226121(P2011−226121A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95932(P2010−95932)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 博覧会名 SECURITY SHOW 2010(第18回セキュリティ・安全管理総合展) 主催者名 日本経済新聞社 開催日 2010年3月9日(火)〜12日(金)
【出願人】(505149044)株式会社シーズンテック (10)
【Fターム(参考)】