説明

電動式ディスクブレーキ装置

【課題】車輪支持部に組み込み可能な現実的な大きさに抑えつつ、大きな制動力を得られ、且つ、十分な耐久性を確保できる構造を実現する。
【解決手段】駆動源としての電動モータ9a側である前段側に、ボールランプ式の第一増力機構20を設ける。又、インナパッド2aを押圧するピストン状構造体23側である後段側に、カム・ローラ式の第二増力機構22を設ける。これら両増力機構20、22の増力比の積で前記ピストン状構造体23を押圧する為、大きな制動力を得られる。又、前記第一増力機構20に加わるスラスト荷重は、前記第二増力機構22の増力比分小さくなるので、この第一増力機構20の耐久性を確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動モータを駆動源として自動車の制動を行う、電動式ディスクブレーキの改良に関する。具体的には、実用的寸法を有する空間内に組み付け可能で、しかも大きな制動力を得られ、且つ、十分な耐久性を確保できる構造の実現を図るものである。
【背景技術】
【0002】
電動モータを駆動源とする電動式ディスクブレーキは、従来から広く実施されている油圧式のディスクブレーキに比べて、配管が不要になり、製造の容易化、低コスト化を図れるだけでなく、用済のブレーキ液が生じず環境負荷が少ない、ブレーキ液の移動がない分応答性の向上を図れる等、多くの利点がある為、研究が進められている。この様な電動式ディスクブレーキでは、電動モータの回転運動を増力しつつ直線運動に変換し、一対のパッドをロータの両側面に強く押し付ける必要がある。この様な事情に鑑みて従来から、歯車式等の減速機と、ボール・ランプ式或いはカムローラ式の増力機構とを組み合わせた電動式ディスクブレーキが、例えば特許文献1〜7に記載される等により、従来から各種提案されている。尚、このうちの特許文献4、5、7に記載された構造は、走行時の制動を油圧式に、駐車時の制動を電動式に、それぞれ行うものである。
【0003】
図20は、このうちの特許文献6に記載された、従来構造の1例を示している。この電動式ディスクブレーキは、一般的な油圧式のディスクブレーキと同様に、車輪と共に回転するロータ1を挟んでインナパッド2及びアウタパッド3を、このロータ1の軸方向の変位を可能に設置している。この為に、このロータ1に隣接する状態でサポート4(本発明の実施の形態の1例を示す図1等参照)を、車体に支持(懸架装置を構成するナックルに固定)している。前記インナ、アウタ両パッド2、3は、前記ロータ1を軸方向両側から挟む状態で、軸方向(アウタ側とは、車体への組み付け状態でこの車体の幅方向外側を、インナ側とは、同じく中央側を、それぞれ言う。又、軸方向とは、特に断らない限り、ロータ1の軸方向を言う。何れも、本明細書及び特許請求の範囲全体で同じ。)の変位を可能に、前記サポート4に支持している。
【0004】
又、このサポート4にキャリパ5を、軸方向の変位を可能に組み付けている。このキャリパ5は、アウタ側端部にキャリパ爪6を、インナ側部分の内部にシリンダ空間7を、それぞれ設けている。そして、このキャリパ爪6を、前記アウタパッド3のアウタ側面に対向させると共に、前記シリンダ空間7内に設けた推力発生機構8により、前記インナパッド2を前記ロータ1のインナ側面に向け押圧する様にしている。制動時には、前記推力発生機構8により前記インナパッド2を前記ロータ1のインナ側面に押し付けると、前記キャリパ5がインナ側に変位し、前記キャリパ爪6が前記アウタパッド3を前記ロータ1のアウタ側面に押し付ける。この結果、このロータ1が軸方向両側から強く挟持されて、制動が行われる。以上の構成及び作用は、広く実施されている油圧式のディスクブレーキと同様である。
【0005】
電動式ディスクブレーキの場合には、電動モータ9を駆動源として、前記インナパッド2を前記ロータ1のインナ側面に押し付ける為に、この電動モータ9の出力軸10と前記インナパッド2のインナ側面との間に、歯車式の減速機11と、前記推力発生機構8と、ピストン部材12とを設けている。この減速機11で減速されると共にトルクを増大された回転力は、送りねじ係合部13を介して、ボール・ランプ式の増力機構を構成する駆動側ロータ14に伝達され、この駆動側ロータ14を回転させる。尚、この駆動側ロータ14は、前記インナ、アウタ両パッド2、3と前記ロータ1の側面との間の隙間が解消される迄の間は、前記送りねじ係合部13の機能により、アウタ側に平行移動する。これに対して、前記隙間が解消し、この送りねじ係合部13の機能が停止した後は回転する。すると、前記駆動側ロータ14のアウタ側面に設けた複数の駆動側ランプ溝15、15と、前記ピストン部材12のインナ側面に添設した被駆動側ステータ16のインナ側面に設けた、複数の被駆動側ランプ溝17、17と、これら両ランプ溝15、17同士の間に挟持した複数個のボール18との係合(転がり接触)に基づいて、前記駆動側ロータ14と前記被駆動側ステータ16との間隔を、大きな力で拡げる。この結果、前記ピストン部材11のアウタ側面が、前記インナパッド2のインナ側面に強く押し付けられる。
【0006】
上述の様なボール・ランプ式の推力発生機構8を備えた電動式ディスクブレーキは、回転力を軸方向の力である推力に変換する効率が高い為、比較的小型の電動モータ9により、大きな制動力を得易い。但し、前記各ボール18の転動面と、前記両ランプ溝15、17との転がり接触部の接触状態が点接触に近い(転がり接触部に存在する接触楕円の面積が狭い)為、転がり接触部の面圧が高くなる。この為、大きな制動力を得るべく、前記推力発生機構8により発生する(前記インナパッド2を押圧する)推力を大きくすると、前記各転がり接触部、特に、前記各ランプ溝15、17の底部に、大きな応力が発生する。この結果、これら各ランプ溝15、17の転がり疲れ寿命が低下したり、著しい場合には、これら各ランプ溝15、17の底部に圧痕等の損傷が発生する。
【0007】
この様な寿命の低下や損傷の発生を防止する為には、前記各ランプ溝15、17の断面形状及び前記各ボール18の直径を大きくすれば良いが、十分な効果を得る為には、これらの断面形状及び直径を相当に大きくしなければならない。従って、例え或る程度の大型化を許容できたとしても、推力発生機構8部分を現実的な形状及び大きさに抑える場合には、効果が限られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−291702号公報
【特許文献2】特開2001−173691号公報
【特許文献3】特開2001−311443号公報
【特許文献4】特開2003−14015号公報
【特許文献5】特開2003−65366号公報
【特許文献6】特開2004−169729号公報
【特許文献7】特開2008−45703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、車輪支持部に組み込み可能な現実的な形状及び大きさに抑えつつ、大きな制動力を得られ、且つ、十分な耐久性を確保できる電動式ディスクブレーキの構造の実現を図るべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電動式ディスクブレーキは、従来から知られているディスクブレーキと同様に、ロータと、サポートと、インナ、アウタ両パッドと、キャリパとを備える。
このうちのロータは、車輪と共に回転する。
又、前記サポートは、前記ロータに隣接する状態で、車体に支持される。
又、前記アウタ、インナ両パッドは前記サポートに、前記ロータを軸方向両側から挟む状態で、軸方向の変位を可能に支持されている。
更に、前記キャリパは前記サポートに対し、軸方向の変位を可能に支持されている。
そして、このキャリパのアウタ側端部に設けられたキャリパ爪を前記アウタパッドに対向させて、このアウタパッドを前記ロータのアウタ側面に押し付け可能としている。又、前記キャリパのインナ側部分に設けられた、電動モータ及び増力装置を備えた電動式アクチュエータにより、前記インナパッドを前記ロータのインナ側面に押し付け可能としている。
【0011】
特に、本発明の電動式ディスクブレーキに於いては、前記増力装置は、ボール・ランプ式の第一増力機構と、カム・ローラ式の第二増力機構とを、前記インナパッドの押し付け方向に関して直列に組み合わせて成るものである。
そして、前記第一増力機構は、駆動側ロータと、被駆動側ステータと、複数個のボールとを備える。
このうちの駆動側ロータは、前記インナパッドに対向する駆動側面に、軸方向に関する深さが円周方向に関して漸次変化する、複数の駆動側ランプ溝を形成したもので、前記電動モータにより回転駆動される。
又、前記被駆動側ステータは、前記駆動側面に軸方向に対向する被駆動側面に、軸方向に関する深さが円周方向に関して、前記駆動側ランプ溝と逆方向に漸次変化する、複数の被駆動側ランプ溝を形成している。
更に、前記各ボールは、この被駆動側ランプ溝と前記駆動側ランプ溝との間に、転動可能に挟持されている。
【0012】
又、前記第二増力機構は、カム軸と、外周面側カム溝と、カムブロックと、ローラと、入力腕とを備える。
このうちのカム軸は、前記ロータの軸方向に対し直角方向に配置されて、自身の中心軸回りの回転を可能とされている。
又、前記外周面側カム溝は、前記カム軸の両端部外周面に設けられたもので、このカム軸の径方向に関する深さが円周方向に関して漸次変化する。
又、前記カムブロックは、前記カム軸の外周面に対向する面に、このカム軸の径方向に関する深さが円周方向に関して、前記外周面側カム溝と逆方向に漸次変化する対向面側カム溝を形成している。
又、前記ローラは、前記対向面側カム溝と前記外周面側カム溝との間に、転動可能に挟持されている。
更に、前記入力腕は、前記カム軸の中間部にその基端部を結合固定されている。
そして、この入力腕の先端部と前記第一増力機構の被駆動側ステータとを、力の伝達を可能に連結している。
【0013】
上述の様な本発明の電動式ディスクブレーキ装置を実施する場合に好ましくは、請求項2に記載した発明の様に、前記第二増力機構を構成するカム軸を前記キャリパの内部に、回転及び前記ロータの軸方向の変位を可能に配置する。
又、前記カム軸の両端部の直径方向反対側2箇所位置ずつの、合計4箇所位置に、それぞれ外周面側カム溝を形成する。更に、前記カム軸の両端部を挟んで、この両端部毎に2個ずつ合計4個のカムブロックを、それぞれのカム軸と反対側の面を、前記キャリパに固定の部分と前記インナパッドの裏面に突き当たる部分とに突き当てた状態で設ける。そして、前記各カムブロックに設けた対向側カム溝と前記各外周面側カム溝との間に、それぞれローラを挟持する。
【0014】
更には、請求項3に記載した発明の様に、前記第一増力機構を構成する駆動側ロータを、外周面に雄ねじ部を設けたアジャスタプラグの内径側に、インナ側に向いたスラスト荷重を支承しつつ回転可能に支持する。又、このアジャスタプラグを、前記キャリパのインナ側部分に保持された、内周面に雌ねじ部を設けたランプケースの内径側に、この雌ねじ部と前記雄ねじ部との螺合に基づいて保持する。又、前記被駆動側ステータを前記ランプケースに対して、このランプケースと同期した回転及びこのランプケースに対する軸方向の変位を可能に支持する。更に、前記アジャスタプラグと前記駆動側ロータとの間に、この駆動側ロータを回転させるばねを設ける。このばねの弾力の作用方向は、この駆動側ロータと前記被駆動側ステータとの軸方向距離を縮めるベく、前記各ボールを転動させる方向とする。
【発明の効果】
【0015】
上述の様に構成する本発明によれば、車輪支持部に組み込み可能な現実的な形状及び大きさに抑えつつ、大きな制動力を得られ、且つ、十分な耐久性を確保できる電動式ディスクブレーキを実現できる。
即ち、本発明の構造によれば、電動モータの回転駆動力を、ボール・ランプ式の第一増力機構と、カム・ローラ式の第二増力機構との2段階で、増力しつつ直線運動に変換する。この為、小型の電動モータを使用した場合でも、インナパッドをロータのインナ側面に押し付ける力(総推力)を、十分に大きくできる。又、推力発生機構全体としての増力比(出力/入力)は、前記第一、第二両増力機構のそれぞれの増力比の積になる。従って、これら第一、第二両増力機構のそれぞれの増力比に就いては、特に大きな値にしなくても、前記推力発生機構全体としての増力比を十分に確保できる。この為、前記第一、第二両増力機構を特に大型化する必要がなく、これら両増力機構を、実用的な大きさに収められる。
更に、前段側(前記電動モータからの入力側)に設ける、前記ボール・ランプ式の第一増力機構が発生する推力、言い換えれば、この第一増力機構に加わるスラスト荷重は、前記総推力よりも、前記第二増力機構の増力比分だけ小さく(「総推力/第二増力機構の増力比」に)なる。この為、前記第一増力機構を構成する駆動側、被駆動側各ランプ溝の断面形状やボールの直径を特に大きくしなくても、これら各ランプ溝の転がり疲れ寿命の確保及び損傷の発生防止を図れる。
【0016】
又、請求項2に記載した発明の構造によれば、各外周面側カム溝及び各対向側カム溝の傾斜角度を小さく抑えつつ、第二増力機構のストロークを確保できる。この為、この第二増力機構を構成する各ローラの転動面と前記各外周面側カム溝及び前記各対向側カム溝との転がり接触部が滑る事を防止して、前記第二増力機構の作動を安定化できる。
【0017】
更に、請求項3に記載した発明の構造によれば、前記インナパッドをロータのインナ側面に押し付ける以前、即ち、これらインナパッドとロータのインナ側面との間の隙間を解消すべく、このインナパッドをこのインナ側面に近づける迄は、少なくとも前記第一増力機構を作動させずに済む。この為、この第一増力機構の増力比を大きくする代わりに、この第一増力機構のストロークが小さくなっても、前記インナパッドをロータのインナ側面に、確実に、且つ、十分に大きな力で押し付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態の1例を、アウタ側且つ外径側から見た状態で示す斜視図。
【図2】アウタ側から見た正投影図。
【図3】インナ側から見た正投影図。
【図4】外径側から見た正投影図。
【図5】図2の右方から見た正投影図。
【図6】図3のA−A断面図。
【図7】図6のB部拡大図。
【図8】図3のC−C断面図。
【図9】一部を省略して示す、図3のD−D断面図。
【図10】第一増力ユニットをアウタ側から見た状態で示す斜視図。
【図11】同断面図。
【図12】図11のE−E断面に相当する図。
【図13】同F−F断面に相当する図。
【図14】第二増力機構の斜視図。
【図15】この第二増力機構に一対のピストン素子から成るピストン状構造体を組み付けた状態で示す斜視図。
【図16】更に、前記第二増力機構をキャリパに支持する為の、スリーブを含むサポートブラケットを装着した状態で示す斜視図。
【図17】キャリパをインナ側且つ内径側から見た状態で示す斜視図。
【図18】駆動ユニットをアウタ側から見た状態で示す斜視図。
【図19】同じくインナ側から見た状態で示す斜視図。
【図20】従来構造の1例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1〜19は、本発明の実施の形態の1例を示している。尚、推力発生機構8a以外の部分、即ち、車体(懸架装置を構成するナックル)に対し支持したサポート4にインナ、アウタ両パッド2a、3a及びキャリパ5aを、軸方向の変位を可能に支持する部分の構造等は、従来から広く知られている油圧式のディスクブレーキと同様であるから、当該部分の構造に関しては、図示のみで詳しい説明は省略し、以下、本例の特徴である、前記推力発生機構8a部分の構造及び作用を中心に説明する。
【0020】
この推力発生機構8aは、前記キャリパ5aのインナ側部分の内部に設けられたシリンダ空間7a内に収納されている。この為にこのキャリパ5aは、アウタ側端部にキャリパ爪6aを設けると共に、インナ側部分の内部に前記シリンダ空間7aを、前記インナパッド2aに対向するアウタ側を開口させた状態で設けている。そして、このシリンダ空間7a内に設けた、前記推力発生機構8aにより、前記インナパッド2aをロータ1(図20参照)のインナ側面に向け押圧可能としている。
【0021】
前記推力発生機構8aを作動させる為の、電動モータ9aと歯車式の減速機11aとは、図18〜19に示す様な駆動ユニット19を構成して、前記キャリパ5aのインナ側端部にねじ止め固定している。前記推力発生機構8aは、この様な駆動ユニット19の出力部材56(図6〜7参照)、即ち、最終減速機構に遊星歯車機構を組み込んだ、前記減速機11aを構成するキャリアである出力部材56から伝達される回転駆動力を軸方向の推力に変換して、前記インナパッド2aに伝達するものである。この為に、前記出力部材56の側から順に、ボール・ランプ式の第一増力機構20と、それぞれがカム・ローラ式である、一対の増力ユニット21、21を組み合わせて成る第二増力機構22と、ピストン状構造体23とを、力の伝達方向に関して、互いに直列に設けている。そして、前記出力部材56のアウタ側部分と、前記第一増力機構20の入力軸24の基端部(インナ側端部)とを、ピン57によりトルクの伝達自在に連結固定している。尚、前記ピストン状構造体23は、図15〜16に示す様に、ぞれぞれが有底の欠円筒状である、一対のピストン状分割素子54、54から成る。
【0022】
前記第一増力機構20は、ランプケース25の内径側に組み込まれて、図10〜11に示す様な第一増力ユニット26としている。このランプケース25は、前記シリンダ空間7aのインナ側端部に固定した保持板27の幅方向(ロータ1の周方向)中央部に配置され、その外周面に設けた外側雄ねじ部58を、前記キャリパ5aのインナ側端部内周面に設けた外側雌ねじ部59に螺合している。従って前記ランプケース25は、このシリンダ空間7a内に、回転を阻止された状態で固定されている。この様なランプケース25の内周面には、雌ねじ部28を設けている。又、このランプケース25の内側にアジャスタプラグ29を組み付けている。このアジャスタプラグ29は、外周面に雄ねじ部30を形成したもので、この雄ねじ部30と前記雌ねじ部28とを螺合させる事により前記ランプケース25の内径側に、回転に伴ってこのランプケース25の軸方向に変位する様に設置している。又、前記ピストン状構造体23は、前記シリンダ空間7aの開口側(アウタ側)部分に、軸方向の変位を可能に内嵌している。そして、前記アジャスタプラグ29と前記ピストン状構造体23との間に前記第一、第二両増力機構20、22を、推力の伝達方向に関して互いに直列に設けている。
【0023】
このうち、前記アジャスタプラグ29側に設けた、ボール・ランプ式の第一増力機構20は、駆動側ロータ14aと、被駆動側ステータ16aと、複数個のボール18aとにより構成している。このうち、前記第一増力機構20の入力部材である、前記駆動側ロータ4aは、前記入力軸24に、トルク伝達及び軸方向の相対変位を可能に組み合わされている。この為に本例の場合には、前記入力軸24の先端部(アウタ側端部)に直径方向に組み付けた係合ピン31の両端部でこの入力軸24の外周面から突出した部分を、前記駆動側ロータ14aの中心部に設けた被駆動筒部32の内周面の直径方向反対側2箇所位置に形成した係合溝(図示省略)に、軸方向の変位を可能に係合させている。これら両係合溝の断面形状は円弧形とし、前記係合ピン31の両端部は半球状としている。又、前記アジャスタプラグ29のインナ側端部に内向鍔部33を形成し、この内向鍔部33のアウタ側面と、前記駆動側ロータ14aのインナ側面との間に、スラスト転がり軸受34を設けている。この構成により、前記入力軸24で前記駆動側ロータ14aを、この駆動側ロータ14aに加わるスラスト荷重を支承しつつ回転駆動し、且つ、前記アジャスタプラグ29の回転に伴う、この駆動側ロータ14aの軸方向の変位を許容する様にしている。尚、前記入力軸24と前記被駆動筒部32とは、一般的なスプライン係合で組み合わせても良い。
【0024】
又、前記駆動側ロータ14aの、前記ピストン状構造体23に対向する駆動側面(アウタ側面)に、複数(一般的には3〜4本)の駆動側ランプ溝15a、15aを形成している。これら各駆動側ランプ溝15a、15aは、軸方向から見た形状が、前記駆動側ロータ14aの中心をその中心とする単一円弧上に存在する部分円弧形で、断面形状に関しても部分円弧形である。そして、軸方向に関する深さが、円周方向に関して互いに同方向に漸次変化する。この様な駆動側ロータ14aは、次述する被駆動側ステータ16a及びボール18aと組み合わされて、前記第一増力機構20を構成する。
【0025】
前記被駆動側ステータ16aは、前記アジャスタプラグ29に対し、相対回転を阻止した状態で(このアジャスタプラグ29と共に回転する様にして)、且つ、このアジャスタプラグ29に対する軸方向変位を可能に組み付けている。この為に本例の場合には、このアジャスタプラグ29に対して前記被駆動側ステータ16aを、プラグ35を介して組み付けている。この為に、前記アジャスタプラグ29の先端縁(アウタ側端縁)の円周方向複数個所と、前記プラグ35の基端縁(インナ側端縁)の円周方向複数個所とに、図12に示す様な、係合凹部36と係合凸部37とによる凹凸係合部を設け、前記アジャスタプラグ29と前記プラグ35とが同期して回転する様にしている。更に、このプラグ35の内周面の円周方向複数個所に形成した係合凹溝38と、前記被駆動側ステータ16aの外周縁の円周方向複数個所に突設した係合突片39とを係合させて、この被駆動側ステータ16aが、前記プラグ35と同期して回転する様にしている。前記各係合凹溝38の軸方向長さは、前記被駆動側ステータ16aの前記プラグ35に対する軸方向変位を可能にすべく、十分に確保する。
【0026】
この様にして、前記アジャスタプラグ29に、相対回転を不能に、軸方向変位を可能に組み付けた、前記被駆動側ステータ16aのインナ側端面である被駆動側面に、前記各駆動側ランプ溝15a、15aと同数の被駆動側ランプ溝17a、17aを、これら各駆動側ランプ溝15a、15aに対し軸方向に対向する状態で形成している。前記各被駆動側ランプ溝17a、17aも、軸方向から見た形状が部分円弧形で、断面形状も部分円弧形である。そして、軸方向に関する深さが、前記各被駆動側ランプ溝17a、17a同士の間で円周方向に関して互いに同方向に、前記各駆動側ランプ溝15a、15aとは逆方向に、漸次変化する。この様な被駆動側ステータ16aは、前記駆動側ロータ14a及び前記複数個のボール18aと組み合わせて、前記第一増力機構20を構成する。即ち、互いに対向する前記各駆動側ランプ溝15a、15aと前記各被駆動側ランプ溝17a、17aとの間に前記各ボール18aを1個ずつ、これら各ランプ溝15a、17aに沿った転動可能に挟持する。
【0027】
以上の構成により、前記駆動側ロータ14aと前記被駆動側ステータ16aとの相対回転に伴う、各ランプ溝15a、17aに沿った前記各ボール18aの転動に基づき、前記駆動側ロータ14aと前記被駆動側ステータ16aとの軸方向距離を拡縮する、前記第一増力機構20を構成している。尚、前記駆動側ロータ14aと前記アジャスタプラグ29との間に、捩りコイルばね40を設けて、この駆動側ロータ14aに、回転方向の弾力を付与している。この捩りコイルばね40による弾力の方向は、この駆動側ロータ14aと前記被駆動側ステータ16aとの軸方向距離を縮める(前記第一増力機構20による推力を喪失させる)べく、前記各ボール18aを転動させる方向とする。
【0028】
又、前記第二増力機構22は、前記第一増力機構20から送り込まれる推力を拡大してから前記ピストン状構造体23に伝達するもので、前述した様に、それぞれがカムローラ式である、一対の増力ユニット21、21を組み合わせて成る。個々の増力ユニット21、21の構造及び作用に関しては、基本的には、特許文献7に記載されたカム・ローラ式の増力機構と同じである。特に、本例の構造の場合には、前記両増力ユニット21、21は、同心のカム軸41をそれぞれの入力部材として共用するもので、このカム軸41の両端部に設けられている。このカム軸41は、前記ロータ1の軸方向に対し直角方向に配置された状態で、前記ピストン状構造体23の内側の軸方向中間部に、自身の中心軸を中心とする回転、及び、軸方向(インナ⇔アウタ方向)の変位を可能に支持されている。
【0029】
この様なカム軸41の中央部に、入力腕43の基端部を外嵌固定している。この入力腕43の先端部インナ側面に、球状凹面である、被駆動側係合凹部44を設けている。一方、前記第一増力機構20を構成する前記被駆動側ステータ16aのアウタ側面中央部に、球状凹面である、駆動側係合凹部45を設けている。そして、この駆動側係合凹部45と前記被駆動側係合凹部44の間に、リンクロッド46を設けている。このリンクロッド46の両端部は、それぞれ半球状の凸面として、姿勢変化に拘らず、前記両係合凹部44、45との当接状態を適正に維持できる様にしている。
【0030】
又、前記カム軸41の両端部のそれぞれ直径方向反対側2箇所ずつ、合計4箇所に、それぞれ外周面側カム溝47a、47bを形成している。これら各外周面側カム溝47a、47bは、前記カム軸41の径方向に関する深さが円周方向に関して漸次変化する。変化する方向は、前記各外周面側カム溝47a、47b同士で互いに同じとしている。本例の場合には、図8に示す様にこれら各外周面側カム溝47a、47bが、同図で時計方向に向かう程深くなる様にしている。
【0031】
又、前記カム軸41の両端部をアウタ側とインナ側とから挟む状態で、前記両増力ユニット21、21毎に一対ずつ、合計4個のカムブロック48a、48bを設置している。これら各カムブロック48a、48bのうち、アウタ側の各カムブロック48a、48aは、図8〜9に示す様に、前記ピストン状構造体23の内部奥端部(アウタ側端部)突き当て固定している。これに対して、インナ側の各カムブロック48b、48bは、図6〜9、16に示す様に、スペーサブロック49を介して、前記ランプケース25に支持されている。このスペーサブロック49は、中間部に固設した円筒状のスリーブ55、並びに、このスリーブ55をアウタ側半部に外嵌した前記ランプケース25を介して前記各カムブロック48b、48bに加わるスラスト荷重を支承する為のものである。又、前記各カムブロック48a、48bのうち、前記カム軸41の端部外周面に対向する面に、このカム軸41の径方向に関する深さが円周方向に関して漸次変化する、対向面側カム溝50a、50bを形成している。これら各対向面側カム溝50a、50bの傾斜方向は、前記各外周面側カム溝47a、47bと逆方向としている。本例の場合には、図8に示す様に前記各対向面側カム溝50a、50bが、同図で反時計方向に向かう程深くなる様にしている。
【0032】
それぞれが上述の様な部分に、上述の様な傾斜方向で形成された、前記各外周面側カム溝47a、47bと前記各対向面側カム溝50a、50bとの間に、それぞれローラ51、51を、転動自在に設けている。これら各ローラ51、51の中心軸の方向は、前記ロータ1の中心軸の方向に対して直角方向としている。尚、前記両増力ユニット21、21には、それぞれで対となるカムブロック48a、48b同士の間隔を縮める方向の弾力を付与する事が好ましい。この弾力は、非制動時に前記両増力ユニット21、21の構成部材ががたつくのを防止すると共に、制動解除時にこれら両増力ユニット21、21の軸方向寸法が円滑に縮まる様にする為に設定する。又、前記カム軸41は、実質的に1本であれば良く、複数本を同軸に結合して構成する事もできる。本例の場合には、図9に示す様に、2本の軸素子52、52の端部同士を結合筒53を介して同軸に結合固定している。これら両軸素子52、52と結合筒53とは、セレーション係合等により、同期した回転を自在に嵌合させている。尚、この結合筒53に前記入力腕43を固設している。
【0033】
上述の様に構成する本例の電動式ディスクブレーキは、次の様にして制動力を発揮させる。
制動時には、前記電動モータ9aにより前記入力軸24を介して前記駆動側ロータ14aを回転駆動する。制動開始直後の初期段階では、前記インナ、アウタ両パッド2a、3aと前記ロータ1の両側面との間には隙間が存在し、これら両パッド2a、3aをこのロータ1に向けて移動させる為に要する力は小さくて済む。この為、前記初期段階では、前記駆動側ロータ14aの回転に伴って前記アジャスタプラグ29も、更には、前記プラグ35及び前記被駆動側ステータ16aも、前記駆動側ロータ4aと同期して回転する。そして、前記雄ねじ部30と前記雌ねじ部28との係合に基づいて、前記アジャスタプラグ29が、前記ロータ1に向けてアウタ側に変位する。そして、前記リンクロッド46により前記入力腕43を介して前記カム軸41を回動させ、前記両増力ユニット21、21を作動させて、前記両パッド2a、3aと前記ロータ1の両側面との間の隙間を解消する。この際、前記入力軸24及び前記駆動側ロータ14aの回転は、前記スラスト転がり軸受34の存在に基づき、軽い力でも安定して行える。前記隙間を解消する為に前記両増力ユニット21、21のストロークを或る程度消費する。但し、これら前記両増力ユニット21、21は、増力比を小さく(例えば2〜4程度)抑える代わりに、ストロークを確保している為、特に問題とはならない。
【0034】
この様にして前記両パッド2a、3aと前記ロータ1の両側面との間の隙間が解消されると、前記アジャスタプラグ29をロータ1に向けて移動させる為に要する力(このアジャスタプラグ29の回転抵抗)が、前記捩りコイルばね40によりこのアジャスタプラグ29に付与されている弾力よりも大きくなる。この結果、このアジャスタプラグ29がそれ以上回転しなくなり、このアジャスタプラグ29が停止する。同時に、前記プラグ35及び前記被駆動側ステータ16aの回転も停止する。この状態から更に前記駆動側ロータ14aを、前記捩りコイルばね40の弾力に抗して回転させると、前記各ボール18aが、前記各駆動側ランプ溝15a、15a及び前記各被駆動側ランプ溝17a、17aの浅い側に向けて転動する。この結果、前記駆動側ロータ14aと前記被駆動側ステータ16aとの間隔が拡がり、この被駆動側ステータ16aが前記ロータ1に向け、アウタ側に変位する。
【0035】
この様な被駆動側ステータ16aの変位に基づいて、前記カム軸41が(前記隙間を解消する行程よりも)大きなトルクで回転駆動されて、前記ピストン状構造体23を前記ロータ1に向け、大きな力で押し付ける。この結果、前記両パッド2a、3aがこのロータ1の両側面に強く押し付けられて、制動が行われる。本例の場合、前記隙間を解消する過程では、大きな増力比を得られる代わりにストロークが小さい、前記第一増力機構20が作動する必要はなく、この隙間解消の為にこの第一増力機構20のストロークが消費される事はない。従って、前記第一増力機構20として、ストロークが短い代わりに増力比が大きな構造を採用できて、前記ピストン状構造体23を前記ロータ1に向けて押し付ける力を、特に大きくできる。前記第二増力機構22は、増力比が小さい代わりにストロークが大きい為、上記隙間を解消しても、未だストロークに余裕を持たせる事ができる。
【0036】
制動解除の際には、従来から提案されている電動式ディスクブレーキと同様に、前記電動モータ9aを、逆方向に回転させて、前記ピストン状構造体23を前記ロータ1から退避させる。この際、前記両パッド2a、3aが前記ロータ1の両側面から離隔する瞬間の後、前記電動モータ9aを所定角度だけ逆方向に回転させ続けて、前記両パッド2a、3aと前記ロータ1の両側面との間に適正厚さの隙間を確保する。本例の場合には、前記アジャスタプラグ29を設ける事により、前記両パッド2a、3aの摩耗に拘らず、前記隙間を常に適正厚さに保てる様にしている。
【0037】
以上の様に本例の電動式ディスクブレーキは、前記電動モータ9aの回転駆動力を、前記ボール・ランプ式の第一増力機構20と、カム・ローラ式の第二増力機構22との2段階で増力する為、前記推力発生機構8a全体としての増力比を大きくできる。この為、前記電動モータ9aとして小型のものを使用した場合でも、前記インナパッド2aを前記ロータ1のインナ側面に押し付ける力(総推力)を十分に大きくして、十分に大きな制動力を得られる。又、前記推力発生機構8a全体としての増力比(出力/入力)は、前記第一、第二両増力機構20、22のそれぞれの増力比の積になる。従って、これら第一、第二両増力機構20、22のそれぞれの増力比に就いては、特に大きな値にしなくても、前記推力発生機構8a全体としての増力比を十分に確保できる。この為、前記第一、第二両増力機構20、22を実用的な大きさとして、これら両増力機構20、22を、前記キャリパ5aのシリンダ空間7a内に設置できる。
【0038】
更に、前記電動モータ9aに近い前段側に設ける、前記ボール・ランプ式の第一増力機構20が発生する推力であって、この第一増力機構20に加わるスラスト荷重でもある力は、前記総推力よりも、前記第二増力機構22の増力比分だけ小さくなる。この為、前記第一増力機構20を構成する、前記駆動側、被駆動側各ランプ溝15a、17aの断面形状や前記各ボール18aの直径を特に大きくしなくても、これら各ランプ溝15a、17aの転がり疲れ寿命の確保及び損傷の発生防止を図れる。
【符号の説明】
【0039】
1 ロータ
2、2a インナパッド
3、3a アウタパッド
4 サポート
5、5a キャリパ
6、6a キャリパ爪
7、7a シリンダ空間
8、8a 推力発生機構
9、9a 電動モータ
10 出力軸
11、11a 減速機
12 ピストン部材
13 送りねじ係合部
14、14a 駆動側ロータ
15、15a 駆動側ランプ溝
16、16a 被駆動側ステータ
17、17a 被駆動側ランプ溝
18、18a ボール
19 駆動ユニット
20 第一増力機構
21 増力ユニット
22 第二増力機構
23 ピストン状構造体
24 入力軸
25 ランプケース
26 第一増力ユニット
27 保持板
28 雌ねじ部
29 アジャスタプラグ
30 雄ねじ部
31 係合ピン
32 被駆動筒部
33 内向鍔部
34 スラスト転がり軸受
35 プラグ
36 係合凹部
37 係合凸部
38 係合凹溝
39 係合突片
40 捩りコイルばね
41 カム軸
43 入力腕
44 被駆動側係合凹部
45 駆動側係合凹部
46 リンクロッド
47a、47b 外周面側カム溝
48a、48b カムブロック
49 スペーサブロック
50a、50b 対向側カム溝
51 ローラ
52 軸素子
53 結合筒
54 ピストン状分割素子
55 スリーブ
56 出力部材
57 ピン
58 外側雄ねじ部
59 外側雌ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と共に回転するロータと、このロータに隣接する状態で車体に支持されるサポートと、このロータを軸方向両側から挟む状態で、軸方向の変位を可能にこのサポートに支持された、インナ、アウタ両パッドと、このサポートに対し軸方向の変位を可能に支持されたキャリパとを備え、このキャリパのアウタ側端部に設けられたキャリパ爪を前記アウタパッドに対向させて、このアウタパッドを前記ロータのアウタ側面に押し付け可能とすると共に、前記キャリパのインナ側部分に設けられた、電動モータ及び増力装置を備えた電動式アクチュエータにより、前記インナパッドを前記ロータのインナ側面に押し付け可能とした電動式ディスクブレーキに於いて、
前記増力装置は、ボール・ランプ式の第一増力機構と、カム・ローラ式の第二増力機構とを、前記インナパッドの押し付け方向に関して直列に組み合わせて成るものであり、
このうちの第一増力機構は、前記インナパッドに対向する駆動側面に、軸方向に関する深さが円周方向に関して漸次変化する複数の駆動側ランプ溝を形成し、前記電動モータにより回転駆動される駆動側ロータと、前記駆動側面に軸方向に対向する被駆動側面に、軸方向に関する深さが円周方向に関して、前記駆動側ランプ溝と逆方向に漸次変化する複数の被駆動側ランプ溝を形成した被駆動側ステータと、この被駆動側ランプ溝と前記駆動側ランプ溝との間に転動可能に挟持された複数個のボールとを備えたものであり、
前記第二増力機構は、前記ロータの軸方向に対し直角方向に配置されて自身の中心軸回りの回転を可能とされたカム軸と、このカム軸の両端部外周面に設けられた、このカム軸の径方向に関する深さが円周方向に関して漸次変化する外周面側カム溝と、このカム軸の外周面に対向する面に、このカム軸の径方向に関する深さが円周方向に関して、前記外周面側カム溝と逆方向に漸次変化する対向面側カム溝を形成したカムブロックと、この対向面側カム溝と前記外周面側カム溝との間に転動可能に挟持されたローラと、前記カム軸の中間部にその基端部を結合固定した入力腕とを備えたものであり、
この入力腕の先端部と前記第一増力機構の被駆動側ステータとを、力の伝達を可能に連結した事を特徴とする電動式ディスクブレーキ装置。
【請求項2】
前記第二増力機構を構成するカム軸を前記キャリパの内部に、回転及び前記ロータの軸方向の変位を可能に配置すると共に、
前記カム軸の両端部の直径方向反対側2箇所位置ずつの合計4箇所位置に、それぞれ前記外周面側カム溝を形成しており、前記カム軸の両端部を挟んで、この両端部毎に2個ずつ合計4個のカムブロックを、それぞれのカム軸と反対側の面を、前記キャリパに固定の部分と前記インナパッドの裏面に突き当たる部分とに突き当てた状態で設け、前記各カムブロックに設けた対向側カム溝と前記各外周面側カム溝との間に、それぞれローラを挟持している、
請求項1に記載した電動式ディスクブレーキ装置。
【請求項3】
前記第一増力機構を構成する駆動側ロータは、外周面に雄ねじ部を設けたアジャスタプラグの内径側に、インナ側に向いたスラスト荷重を支承しつつ回転可能に支持されており、このアジャスタプラグは、前記キャリパのインナ側部分に保持された、内周面に雌ねじ部を設けたランプケースの内径側に、この雌ねじ部と前記雄ねじ部との螺合に基づいて保持されており、前記被駆動側ステータは前記ランプケースに対して、このランプケースと同期した回転及びこのランプケースに対する軸方向の変位を可能に支持されており、前記アジャスタプラグと前記駆動側ロータとの間に、この駆動側ロータと前記被駆動側ステータとの軸方向距離を縮めるベく前記各ボールを転動させる方向に、前記駆動側ロータを回転させるばねを設けている、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載した電動式ディスクブレーキ。
【請求項4】
前記キャリパのインナ側部分に設けられたシリンダ空間に軸方向の変位を可能に内嵌したピストン状構造体の内部に前記カム軸を支持している、請求項3に記載した電動式ディスクブレーキ。
【請求項5】
前記カム軸と前記ピストン状構造体との間に、前記ローラを、前記外周面側カム溝及び前記対向面側カム溝の深い側に転動させるべく、前記カム軸を回転させるばねを設けている、請求項4に記載した電動式ディスクブレーキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−266006(P2010−266006A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118646(P2009−118646)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】