説明

電動補助力付小型車両

【課題】ハンドルに加えられる力から使用者の意図に沿う補助力を与えられる電動補助力付小型車両を提供する。
【解決手段】本発明の電動補助力付小型車両(10)は、使用者の操作力によって前後方向と旋回方向に作動するハンドル(28)と、ハンドルが取り付けられるハンドルポスト(9)と、ハンドルポストを旋回方向に回動可能に支持するハンドルポスト支持体(12)と、ハンドルが前後方向に揺動する揺動軸を構成する基軸(14)と、前後方向の各回転角度を該角度に対応する電気抵抗に変換する1対の電気抵抗変換手段(16)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の操作力に応じて車輪に対する駆動力を発生し、人力による運搬を補助する電動補助力付小型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、人手による運搬に利用される運搬用車両の中には、使用者の労力を軽減するためにバッテリ及びモータ等を具備し、使用者による走行制御に応じて走行する電動運搬用車両がある。この種の電動運搬用車両として、例えば、左右一対の車輪に補助動力を与えるため各々設けられた左右の駆動手段10L、Rと、台車部分又は車輪とハンドル操作部分との間に介在された左右の変形回復性部材33L、Rと、左右の変形回復性部材の各々に取り付けられた左右の歪み検出手段36L、Rと、左右の歪み検出手段の出力信号に応じて左右の駆動手段を個別に制御する制御手段14と、を備えるものがある。この電動運搬用車両では、ステンレス鋼などの金属材料からなる直方体プレートにより形成された変形回復性部材が使用され、直接ハンドルにその長辺を車両の前後方向に一致させるように組み込ませている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−176195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の電動補助力付小型車両は、変形回復性部材の歪み検出手段として歪みゲージセンサーが使用されているため、ノイズに敏感に影響されるという欠点がある。その結果、必ずしも使用者の意図するように動かないという問題がある。さらに、出力信号が小さいためマイクロコンピュータや増幅回路が必要となり、構造が複雑でコスト高になるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、ハンドルに加えられる力から使用者の意図に沿う補助力が与えられる簡単な構造の電動補助力付小型車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る電動補助力付小型車両(1)は、使用者の両手によって把持されるハンドル(8)と、一端に前記ハンドルが取り付けられる棒状のハンドルポスト(9)と、ハンドルポストの他端を旋回方向に回動可能に支持するハンドルポスト支持体(12)と、ハンドルポストが前後方向に揺動可能なようにハンドルポスト支持体の回動軸を構成する基軸(14)と、前後方向の各揺動角度を該角度に対応する電気抵抗に変換する1対の電気抵抗変換手段(16)とを有する。
【0007】
好ましい態様では、ハンドルポスト(9)は、基軸(14)より前方でハンドルポスト支持体(12)に支持される。このことによって、使用者が電動補助力付小型車両を前又は後に動かそうとしてハンドルに該方向の操作力を与えると、使用者が意図する方向の力が効率よく駆動輪に与えられる。
【0008】
さらに、ハンドルの旋回方向の各回転角度を該角度に対応する電気抵抗に変換する第2の1対の電気抵抗変換手段(18)を有することがより好ましい。このことによって、使用者が電動補助力付小型車両を左又は右方向に動かそうとハンドルを該方向に旋回させると、使用者が旋回させる方向と反対側の駆動輪の回転数を増加させ、意図する方向に動かすことができる。
【0009】
電気抵抗変換手段は各々圧力センサ(16,18)であることがより好ましい。このことによって、ハンドルポストの前後方向及び旋回方向の回転角度が効率よく対応する電気抵抗に変換できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る電動補助力付小型車両によれば、ハンドルポスト支持体はハンドルが取り付けられたハンドルポストを旋回方向に回動可能に支持し、基軸はハンドルポストが前後方向に揺動回動する前後方向回動軸を構成し、電気抵抗変換手段はハンドルポストの前後方向の各揺動回転角度を該角度に対応する電気抵抗に変換する。このため、使用者の意図によってハンドルに加えられた力に対応する補助力を駆動輪に与える、簡単な構造の電動補助力付小型車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1に係る電動補助力付小型車両の外観を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例1に係る電動補助力付小型車両によって使用者の操作力が検出される機構を示す説明図面であり、(a)はハンドルポスト支持体の上面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(b)のC−C断面図、(d)は(b)のB−B断面図である。
【図3】本発明の実施例2に係る電動補助力付小型車両の外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施例について詳細に説明するが、本発明は、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の実施例1に係る電動補助力付小型車両(本明細書において単に「台車」ということがある。)1の外観を示す。
台車10は、その車体3に運搬物を収容して搬送することができ、前後に1対ずつ車輪を備える。1対の後輪は駆動輪4,4であり、前後方向に対して直交する方向に併設されている。左右の駆動輪4,4は、左右のモータ6,6の各回転軸に接続され、これらモータ6は、それぞれコントローラ(図示せず)によって制御されたモータ電流により回転する。1対の前輪は、台車10に回転自在に設置された遊輪5,5である。
【0014】
本明細書において、前記1対の駆動輪4,4と直行する方向を前後方向といい、使用者が台車10の後部に立ちハンドルを操作する方向(前方向)に向いたとき、左手方向を左方向、右手方向を右方向という。
使用者は、ハンドル8を把持して台車10を操縦する。ハンドル8は、その中央部がハンドルポスト9に固定されており、ハンドルポスト9は、棒状であり、旋回方向(図1における矢印イの方向)に回動可能なように、その下部がハンドルポスト支持体12に支持されている。
【0015】
次に、図2を参照して、本発明の実施例1に係る電動補助力付小型車両1によって使用者の操作力が検出される機構について説明する。
図2(a)はハンドルポスト支持体12を示す上面図である。ハンドルポスト9は回動可能にハンドルポスト支持体12に支持されている。基軸14は、4本のボルト31によってハンドルポスト支持体12に固着され、2か所を基軸受け33で回動可能に支えられている。基軸受け33は、ボルト35でプレート21に固定されている。このような構造であるため、ハンドル8は使用者の操作に応じて、基軸受け33で支えられた基軸14を回動軸として前後方向(図1における矢印アの方向)に揺動回動することができる。
【0016】
図2(b)は、図2(a)のA−A断面図である。ハンドルポスト9は、その段部9aによりハンドルポスト支持体12に回動自在に係止されている。
図2(c)は、図2(b)のC−C断面図である。角柱体23は、ボルト27によって基軸14に固着されている。このため、ハンドル8が使用者の操作に応じて前後方向に揺動回動すると、角柱体23も基軸14を中心に回動する。このとき、角柱体23が回動する方向と回転角度の大きさによって、圧力センサ16a,16bに及ぼす圧力が変わり、圧力センサ16a,16bは、この圧力の大きさに対応する電気抵抗を示す。
つまり、ハンドル8は、使用者の操作力に応じて前後方向(=角柱体23の回転方向と角度)に揺動回動し、圧力センサ16a,16bは、この回転角に応じた抵抗値となる。
【0017】
図2(d)は、図2(b)のB−B断面図である。第2の角柱体25は、ボルト29によってハンドルポスト9の下端部9bに固着されている。このため、ハンドル8が使用者の操作に応じて旋回方向に回動すると、角柱体25もハンドルポスト9を中心に回動する。このとき、角柱体25が回動する方向と回転角度の大きさによって、圧力センサ18a,18bに及ぼす圧力が変わり、圧力センサ18a,18bは、この圧力の大きさに対応した電気抵抗を示す。
つまり、ハンドル8は、使用者の操作力に応じて旋回方向(=角柱体25の回転方向と角度)に回動し、圧力センサ18a,18bは、この回転角に応じた電気抵抗値を示す。
【0018】
本実施例で圧力センサ16,18は、微小の動作を圧力変換できる面圧力を検出するセンサであり、具体的には、ニッタ株式会社製FlexiForceA201-100を使用した。コントローラ(図示せず)では、圧力センサ16,18からの信号に慣性係数、負荷係数、旋回係数、加速度係数、直進性係数、出力電圧値、サンプリングカウント値、サンプリング周期などのパラメータによる論理計算に基づいて、左右のモータ6,6へ送る電力を制御した。
また、本実施例において圧力センサ16,18の中間圧力位置まで予圧が与えられた。このことにより、各1対の圧力センサ16,18で前後と左右の検出がより正確にできる。そして、台車1は、前後及び左右の指示操作を各方向で2度までの範囲で任意に可動域を決めることができた。
【0019】
次に、上記台車1の動作について説明する。
使用者は、台車1を前進させるときには、ハンドル8を前方に押し、後進させるときには、ハンドル8を手前(後方に)引く。この操作に応じてハンドル8は、ハンドルポスト9とともに前後方向(図1における矢印アの方向)に基軸14を中心に揺動回動する。
【0020】
基軸14が回動すると、基軸14に固着されている角柱体23が回動し、その回転方向と角度によって圧力センサ16a又は16bが押圧される。つまり、使用者が台車1を前進させようとハンドル8を前方向に押すと、圧力センサ16bが押圧され、後進させようとハンドル8を後方向に引くと、圧力センサ16aが押圧される。そして、無負荷時を基準としたとき、ハンドル8が基軸14を回転軸として前後方向にする揺動回転する角度、つまり角柱体23の回転角度に対応して、圧力センサ16a又は16bのに電気抵抗が変わるを生じる。
【0021】
この電気抵抗値はコントローラ(図示せず)に伝えられ、その抵抗値の大きさと押圧時間によって所定の回転力が左右のモータ6,6に与えられ、左右の駆動輪4,4に補助力が与えられる。具体的には、ハンドル8が前方向に押されると、圧力センサ16bが押圧され、圧力センサ16bの電気抵抗は減少し、この電気抵抗の減少はコントローラで電圧の増加に変換され、左右のモータ6,6を前進方向に回転される電力が供給される。
【0022】
台車1を左右に方向転換させるの動作も上記と同様である。つまり、使用者は、台車1を右回転させるときには、ハンドル8を右に旋回する。この操作に応じてハンドル8は、ハンドルポスト9を軸として右方向に回転する。ハンドルポスト9が右方向に回転すると、ハンドルポスト9に固着されている角柱体25も同方向に回転し、図2(d)において圧力センサ18aが押圧され、ハンドル8の回転角度、つまり角柱体25の回転角度に対応して、圧力センサ18aに電気抵抗が減少する。
【0023】
この電気抵抗値の減少はコントローラ(図示せず)に伝えられ、その抵抗値の大きさと押圧時間によって所定の回転力が左右のモータ6,6に与えられ、左右の駆動輪4,4に補助力が与えられる。例えば、左モータ6により大きな前進方向の回転力が与えられ、また、ハンドル8の回転角度が所定値より大きい場合には、左モータ6に前進方向の回転力が与えられ、かつ右モータ6に後進方向の回転力が与えられる。
【実施例2】
【0024】
図3は、本発明の実施例2に係る電動補助力付小型車両10の外観を示す。本実施例において実施例1に係る電動補助力付小型車両1と同一部材については同一の符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0025】
本実施例に係る電動補助力付小型車両10では、ハンドル28の握部28aがハンドルポスト9より前方に設けられている。その他の構成は第2実施例に係る電動補助力付小型車両1と同じである。このような構成であるため、使用者が台車10に前方に前方の補助力を与えようとするとき、より使用者の意図に沿う補助力が与えられる。
この前方斜め下方向の力を前進の入力として取り込み、ハンドルポスト9が基軸14より前方に位置することでハンドルにかかる力が上から下方向、かつ後ろから前方向のベクトルのときに前進の入力として取り込むことができる。
【0026】
ハンドルの形状は、上記実施例において示したようなT型形状に限定されない。前後方向に握部が左右に1個ずつ付いている、例えば車椅子などの押し手形状のものでもよい。このような押し手の形状のハンドルも前方斜め下方向の力を前進の入力として取り込むことができる。
上記実施例では、操作力の検出手段として圧力センサを使用したが、操作力及びその方向を検出し得るものであればこれに限定されるものではなく、例えばポテンショメータ等を使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上説明したように、本発明に係る電動補助力付小型車両は、電動台車、電動車椅子、電動乳母車などとして利用することができる。
【符号の説明】
【0028】
1,10 電動補助力付小型車両,台車
3 車体
4 駆動輪
5 遊輪
6 モータ
8,28 ハンドル
9 ハンドルポスト
12 ハンドルポスト支持体
14 基軸
16,18 電気抵抗変換手段,圧力センサ
21 プレート
23,25 角柱体
27,29,31,35 ボルト
33 基軸受け


【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の両手操作力によって把持される前後方向と旋回方向に作動するハンドル(8)と、
一端に前記ハンドルが取り付けられる棒状のハンドルポスト(9)と、
前記ハンドルポストの他端を旋回方向に回動可能に支持するハンドルポスト支持体(12)と、
前記ハンドルポストが前後方向に揺動回動可能なように前記ハンドルポスト支持体のする回動軸を構成する基軸(14)と、
前記前後方向の各揺動回転角度を該角度に対応する電気抵抗に変換する1対の電気抵抗変換手段(16)と
を有する電動補助力付小型車両。
【請求項2】
前記ハンドルポスト(9)は、前記基軸(14)より前方でハンドルポスト支持体(12)に支持されている請求項1記載の電動補助力付小型車両。
【請求項3】
前記ハンドルの旋回方向の各回転角度を該角度に対応する電気抵抗に変換する第2の1対の電気抵抗変換手段(18)を有する請求項1又は2記載の電動補助力付小型車両。
【請求項4】
前記電気抵抗変換手段は圧力センサ(16,18)である請求項1乃至ないし3のいずれかに1項記載の電動補助力付小型車両。
【請求項5】
前記ハンドル(8)は、その握部(28a)が前記ハンドルポスト(9)より前方にあるように、前記ハンドルポスト(9)に取り付けられている請求項1乃至4いずれかに記載の電動補助力付小型車両。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−162036(P2011−162036A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26434(P2010−26434)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000113997)株式会社アクリテック (20)
【Fターム(参考)】