説明

電子内視鏡の先端光学ユニット

【課題】対物レンズや固体撮像素子がオートクレーブによる影響を受けない構成でありながら光学的なフレアーやゴースト等が発生しない、耐久性と光学性能の双方で優れた特性を得ることができる電子内視鏡の先端光学ユニットを提供すること。
【解決手段】撮像素子保持筒12とカバーレンズ保持筒13とが、各々金属メッキされて互いの金属メッキ部どうしで金属溶解部材により気密に接合され、対物レンズ保持筒14に黒色の表面処理が施されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は電子内視鏡の先端光学ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内視鏡が一回使用される度にオートクレーブ(高温高圧蒸気滅菌装置)で滅菌されることが多くなり、オートクレーブに対する耐久性が内視鏡に求められるようになってきている。
【0003】
そこで、対物レンズや固体撮像素子の撮像面等にオートクレーブの蒸気等が入り込まないように、電子内視鏡の先端光学ユニットにおいては、対物レンズ群が内挿固定された対物レンズ保持筒と固体撮像素子が内挿固定された撮像素子保持筒とが、各々金属メッキされて互いの金属メッキ部どうしがハンダ付けやロー接等のような溶解金属部材により気密に接合されている。対物レンズ保持筒の先端部分には観察窓カバーレンズが取り付けられている(例えば、特許文献1、2)。
【特許文献1】特開2000−60793
【特許文献2】特開2000−115594
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
対物レンズ保持筒と撮像素子保持筒とを各々金属メッキして、互いの金属メッキ部どうしを溶解金属部材で気密に接合すれば、接合部が優れた耐オートクレーブ性を有し、その内側に封止された対物レンズや固体撮像素子がオートクレーブによる影響を受けないようにすることができる。
【0005】
しかし、対物レンズ保持筒が金属メッキされていると、内視鏡観察像の有効光より外側の領域にあって対物レンズの外周部等に当たる周辺光が対物レンズ保持筒の内周面で強く反射されて、光学的なフレアーやゴースト等が発生する原因になる場合があった。
【0006】
本発明は、対物レンズや固体撮像素子がオートクレーブによる影響を受けない構成でありながら光学的なフレアーやゴースト等が発生しない、耐久性と光学性能の双方で優れた特性を得ることができる電子内視鏡の先端光学ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の電子内視鏡の先端光学ユニットは、先端側が開放され、内部に固体撮像素子が固定されて後端側が気密に封止された撮像素子保持筒と、先端部分に観察窓カバーレンズが気密に取り付けられて後端側が開放され、その後端側部分が撮像素子保持筒の先端側部分と嵌合するカバーレンズ保持筒と、固体撮像素子の撮像面に観察像を投影するための対物レンズ群が内挿固定されて、カバーレンズ保持筒内に嵌合固定された対物レンズ保持筒とを有し、撮像素子保持筒とカバーレンズ保持筒とが、各々金属メッキされて互いの金属メッキ部どうしで溶解金属部材により気密に接合されているものであり、対物レンズ保持筒に黒色の表面処理が施されているとよい。
【0008】
なお、金属メッキの表面部分が金メッキであるとよく、カバーレンズ保持筒の後端部付近の対物レンズ保持筒が嵌合しない部分の内周面が黒色塗装されていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、撮像素子保持筒とカバーレンズ保持筒とが各々金属メッキされて互いの金属メッキ部どうしで溶解金属部材により気密に接合されていることにより、固体撮像素子の撮像面と対物光学系等が配置された空間が高レベルの気密空間になっていてオートクレーブによる影響を受けず、対物レンズ保持筒に黒色の表面処理が施されていることにより光学的なフレアーやゴースト等が発生せず、耐久性と光学性能の双方で優れた特性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
先端側が開放され、内部に固体撮像素子が固定されて後端側が気密に封止された撮像素子保持筒と、先端部分に観察窓カバーレンズが気密に取り付けられて後端側が開放され、その後端側部分が撮像素子保持筒の先端側部分と嵌合するカバーレンズ保持筒と、固体撮像素子の撮像面に観察像を投影するための対物レンズ群が内挿固定されて、カバーレンズ保持筒内に嵌合固定された対物レンズ保持筒とを有し、撮像素子保持筒とカバーレンズ保持筒とが、各々金属メッキされて互いの金属メッキ部どうしで溶解金属部材により気密に接合されている。そして、対物レンズ保持筒に黒色の表面処理が施されている。
【実施例】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図2は電子内視鏡の全体構成を示しており、可撓性の挿入部1の基端に操作部2が連結され、図示されていないビデオプロセッサに接続されるコネクタ3が、操作部2の後面上端部近傍から延出する接続可撓管4の先端に連結されている。
【0012】
挿入部1の先端に連結された先端部本体5には、図示されていない照明窓カバーレンズと並んで観察窓カバーレンズ6が配置されていて、観察窓カバーレンズ6の奥に内蔵されている対物光学系7による被写体の結像位置に、固体撮像素子8の撮像面が配置されている。9は、固体撮像素子8から出力される撮像信号を、コネクタ3の先端に配置された信号コネクタ部10に伝送するための信号ケーブルである。
【0013】
図1は、先端部本体5内において対物光学系7と固体撮像素子8とを保持する先端光学ユニット部分を示しており、内部に固体撮像素子8が固定された撮像素子保持筒12は、先端側(図1において下方側)が開放されて後端側が気密に封止されている。8aは固体撮像素子8の撮像面、8bは固体撮像素子8のカバーガラス、11はレーザカットフィルタである。
【0014】
先端部分に観察窓カバーレンズ6が気密に取り付けられたカバーレンズ保持筒13は、後端側が開放されてその後端側部分が撮像素子保持筒12の先端側の内周に嵌挿固定されている。そして、対物光学系7が内挿固定された対物レンズ保持筒14が、カバーレンズ保持筒13の内周に嵌挿固定されている。
【0015】
以下、先端光学ユニットの詳細について、図3〜図6を参照して組み立て手順にしたがって説明する。
図3に示されるように、カバーレンズ保持筒13と対物レンズ保持筒14とが組み付けられる前に、カバーレンズ保持筒13の先端面に観察窓カバーレンズ6が貼り付け固定され、対物レンズ保持筒14内に対物光学系7が嵌挿固定される。
【0016】
カバーレンズ保持筒13は、観察窓カバーレンズ6と熱膨張率が比較的近い、鉄−ニッケル−コバルト等のような熱膨張率の低い合金より形成されて、その全面に(少なくとも外周面に)、例えばニッケルメッキの上に腐食防止性の高い金メッキを施した二重の金属メッキが施されている。
【0017】
カバーレンズ保持筒13の前面に貼り付け固定される観察窓カバーレンズ6は、裏面部6aに公知のメタライズ処理が施されていて、その裏面部6aが、金属メッキが施されているカバーレンズ保持筒13の先端面にSn(スズ)系低融点合金等で気密に接合固定されている。
【0018】
対物レンズ保持筒14は、金属材により形成されていて、その全面に(少なくとも内周面に)例えば酸化クロムによる黒色メッキ等のような艶のない黒色の表面処理が施されている。したがって、対物レンズ保持筒14の内周面は光反射率が極めて小さい。
【0019】
複数のレンズからなる対物光学系7は、図3では全体を一まとめにして略示されているが、対物レンズ保持筒14の前後両端部14f,14rを内側にかしめて対物レンズ保持筒14に固定されている。ただし、接着固定等で固定しても差し支えない。
【0020】
そして、図4に示されるように、観察窓カバーレンズ6が先端に貼り付けられたカバーレンズ保持筒13の内周面13aに、対物光学系7が嵌挿固定された対物レンズ保持筒14が後方から嵌挿されて接着等で互いが固定されている。
【0021】
その状態においては、対物光学系7の外周面に面するのが、金属メッキされているカバーレンズ保持筒13の内周面13aではなく、黒色メッキされている対物レンズ保持筒14の内周面14aなので、対物光学系7の内側からその外周面に向かう光線は外周面でほとんど反射されない。
【0022】
また、カバーレンズ保持筒13の後端部付近の内周面13bは、他の部分と同様に金属メッキ(金メッキ)が施されているが、径を大きく形成することで対物光学系7を通った光線が当たらないようにすることができる。また、その部分(内周面13b)だけ黒色塗料を塗布して無反射面にするのも容易であり、その部分(内周面13b)だけ内径が大きいことにより正確な範囲に塗装することができる。
【0023】
図5に示されるように、固体撮像素子8は撮像面8a以外の部分がセラミック材等のような電気絶縁材で囲まれたブロック状に形成されて、撮像素子保持筒12の後半部分(図において上半部分)の内周面にロー接又は溶接等で気密に接合固定されている。
【0024】
金属材により単純な筒状に形成された撮像素子保持筒12は、その全面に(少なくとも内周面に)、例えばニッケルメッキの上に腐食防止性の高い金メッキを施した二重の金属メッキが施されている。
【0025】
そして、図6に示されるように、撮像素子保持筒12の先端開放部とカバーレンズ保持筒13の後端開放部とを同軸線上に向かい合わせ、図1に示されるように、撮像素子保持筒12の先端開放部とカバーレンズ保持筒13の後端開放部とを嵌合させてから、撮像素子保持筒12とカバーレンズ保持筒13とがその嵌合部において金メッキ面どうしで溶接又はロー接(溶解金属部材)により気密に接合固定されている。
【0026】
このように、固体撮像素子8の撮像面8aと対物光学系7等が配置された空間はオートクレーブ環境下等でも破綻のない溶解金属部材で封止されて高レベルの気密空間になっているので、対物光学系7や固体撮像素子8の撮像面8aがオートクレーブによる影響を受けない。
【0027】
そして、対物光学系7の外周面に向かって進む周辺光が当たる部分は対物レンズ保持筒14に黒色メッキが施されていて反射がほとんどないので、光学的なフレアーやゴースト等が発生せず、耐久性と光学性能の双方で優れた特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例に係る電子内視鏡の先端光学ユニットの側面断面図である。
【図2】本発明の実施例に係る電子内視鏡の全体構成を示す外観図である。
【図3】本発明の実施例に係る電子内視鏡の先端光学ユニットの組み立て工程における分解図である。
【図4】本発明の実施例に係る電子内視鏡の先端光学ユニットの組み立て工程における分解図である。
【図5】本発明の実施例に係る電子内視鏡の先端光学ユニットの組み立て工程における分解図である。
【図6】本発明の実施例に係る電子内視鏡の先端光学ユニットの組み立て工程における分解図である。
【符号の説明】
【0029】
6 観察窓カバーレンズ
7 対物光学系
8 固体撮像素子
8a 撮像面
12 撮像素子保持筒
13 カバーレンズ保持筒
14 対物レンズ保持筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側が開放され、内部に固体撮像素子が固定されて後端側が気密に封止された撮像素子保持筒と、
先端部分に観察窓カバーレンズが気密に取り付けられて後端側が開放され、その後端側部分が上記撮像素子保持筒の先端側部分と嵌合するカバーレンズ保持筒と、
上記固体撮像素子の撮像面に観察像を投影するための対物レンズ群が内挿固定されて、上記カバーレンズ保持筒内に嵌合固定された対物レンズ保持筒とを有し、
上記撮像素子保持筒と上記カバーレンズ保持筒とが、各々金属メッキされて互いの金属メッキ部どうしで溶解金属部材により気密に接合されていることを特徴とする電子内視鏡の先端光学ユニット。
【請求項2】
上記対物レンズ保持筒に黒色の表面処理が施されている請求項1記載の電子内視鏡の先端光学ユニット。
【請求項3】
上記金属メッキの表面部分が金メッキである請求項1又は2記載の電子内視鏡の先端光学ユニット。
【請求項4】
上記カバーレンズ保持筒の後端部付近の上記対物レンズ保持筒が嵌合しない部分の内周面が黒色塗装されている請求項1、2又は3記載の電子内視鏡の先端光学ユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−79881(P2008−79881A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−263838(P2006−263838)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】