説明

電子内視鏡システム

【課題】 記録映像中の例えばコメント部分を容易に探し出す。
【解決手段】 体腔内を撮像する撮像素子を有した電子内視鏡と、撮像素子から出力される画像信号をモニタ表示可能に処理する画像処理手段と、外部から情報が入力される入力手段であって、該情報を所定形式の信号に変換する入力手段と、画像処理手段で処理された画像信号と入力手段から出力された所定形式の信号を記録媒体に記録し、これを再生することができる記録再生手段と、入力手段から出力される所定形式の信号の出力値を検出する出力値検出手段と、出力値検出手段において所定の閾値よりも高い出力値が検出された時、記録媒体にインデックス情報を書き込むインデックス情報書き込み手段を備えた電子内視鏡システムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子内視鏡によって取得された体腔内の撮像信号をモニタ表示可能に処理する電子内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
体腔内を撮像する撮像素子をその先端部に備えた電子内視鏡と、該撮像素子が出力した信号を処理してモニタに出力するプロセッサを備えた電子内視鏡装置が広く知られ実用に供されている。ここで、電子内視鏡装置によって撮像される患者の体腔内の映像は、病院側にとって患者の容態を示す資料となり得る。この為、体腔内の映像や音声を記録・再生する記録再生装置(例えばビデオテープデッキ)を電子内視鏡装置に接続し、診断や手術中の映像や音声を記録・再生するシステムが広く採用されている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開平10−127574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に示されたような電子内視鏡システムを使用中、術者は、例えば表示中の映像に何らかの情報を付加したいときにそれを音声のコメントとして残す。一般に、このようなコメントは重要なものであったり、注目されるべきものであったりする。
【0004】
ここで、診断や手術中或いはその後、重要であり得るコメントが記録された部分を確認したい場合、術者は、ビデオテープデッキを巻き戻して記録映像を先頭から再生させたり、コメントが記録されている部分の見当を付けて早送りや巻き戻しをしたりし、再生される映像や音声を確認してコメント部分を探し出す必要がある。しかしながらこれは術者にとって非常に煩雑な作業であった。
【0005】
そこで、本発明は上記の事情に鑑み、例えば上記の如きコメント部分を容易に探し出すことができる電子内視鏡システムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決する本発明の一態様に係る電子内視鏡システムは、体腔内を撮像する撮像素子を有した電子内視鏡と、撮像素子から出力される画像信号をモニタ表示可能に処理する画像処理手段と、外部から情報が入力される入力手段であって、該情報を所定形式の信号に変換する入力手段と、画像処理手段で処理された画像信号と入力手段から出力された所定形式の信号を記録媒体に記録し、これを再生することができる記録再生手段と、入力手段から出力される所定形式の信号の出力値を検出する出力値検出手段と、出力値検出手段において所定の閾値よりも高い出力値が検出された時、記録媒体にインデックス情報を書き込むインデックス情報書き込み手段を備えたことを特徴とする。
【0007】
なお、上記電子内視鏡システムにおいて入力手段から出力される所定形式の信号が音声信号であっても良い。
【0008】
また、上記電子内視鏡システムにおいて、インデックス情報の書き込み後、出力値検出手段において所定の閾値よりも高い出力値が継続して検出されている期間中は新たなインデックス情報が書き込まれないように制御され得る。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電子内視鏡システムを使用した場合、所定の信号に応じて記録媒体にインデックス情報が記録される為、術者は、当該記録媒体中の重要であり得るインデックス情報記録部分を容易に探し出して再生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明の実施の形態の電子内視鏡システム10の構成を示したブロック図である。以下、図面を参照して、本実施形態の電子内視鏡システム10の構成及び作用について説明する。
【0011】
本実施形態の電子内視鏡システム10は、患者の体腔内を術者が観察・診断する為のシステムであり、体腔内を撮像する電子内視鏡100、システム全体に係る処理等を実行するプロセッサ200、電子内視鏡100によって撮像された映像を表示するモニタ300、音声が入力され、それを音声信号に変換するマイクロフォン400、及び、当該映像を記録・再生するビデオテープデッキ500を備えている。
【0012】
電子内視鏡100は、挿入部可撓管110、先端部120、操作部130、コネクタユニット140、及び、ユニバーサルコード150を有している。挿入部可撓管110は、体腔内に挿入される可撓性を有した管である。先端部120は挿入部可撓管110の先端に形成されており、その内部には撮像処理に必要とされる各種部品が備えられている。操作部130は術者が各種操作をする為のものであり、このような操作には、例えば先端部120近傍の挿入部可撓管110を湾曲させて当該先端部120の方向を変えるものが挙げられる。コネクタユニット140は、電子内視鏡100とプロセッサ200とを電気的及び光学的に接続させる接続部を有している。ユニバーサルコード150は、可撓性を有しており、操作部130とコネクタユニット140とを繋いでいる。
【0013】
プロセッサ200は、コネクタユニット140の接続部の差し込み口である接続部212を有し、接続部212を介して入力された電子内視鏡100からの信号を処理してモニタ300で表示され得る映像信号に変換する信号処理部と、接続部212を介して電子内視鏡100に供給される体腔内照明用の光を放射する光源部を有している。また、マイクロフォン400のピンプラグが差し込まれる音声入力用ジャック214、及び、ビデオテープデッキ500のピンプラグが差し込まれるビデオ出力用ジャック216を有している。また、その前面には、術者が各種操作をする為の操作パネル220が設けられている。
【0014】
モニタ300、マイクロフォン400、及び、ビデオテープデッキ500は周知の機器である。モニタ300は、映像を表示させる画面に加え、ビデオテープデッキ500からの音声を出力させるスピーカも備えている。
【0015】
ここで、図2に、本実施形態の電子内視鏡100及びプロセッサ200の内部構成を概略的に示す。
【0016】
プロセッサ200は、装置全体の制御を統括的に行う制御部230を有しており、これによる制御下で各種処理を実行する。また、光源装置として、ランプ242、集光レンズ244、及び、ランプ制御回路246を有している。ランプ242は、体腔内照射用の白色光の光源であり、例えばメタルハライドランプや、キセノンランプ、ハロゲンランプ等が想定される。ランプ242はランプ制御回路246の制御により発光し、その光は、前方に設置された集光レンズ244によって集光され、接続部212を介して電子内視鏡100内部に入射する。なお、本実施形態の電子内視鏡システム10では撮像方式として周知の面順次方式が採用されているものとする。
【0017】
電子内視鏡100内部には、コネクタユニット140の接続部から先端部120に掛けて延在した、観察対象に光を導き得るライトガイド122が設けられている。ライトガイド122の一端は、コネクタユニット140の接続部の一部であり、当該コネクタユニット140が接続部212に差し込まれている状態で集光レンズ244前方に位置する。また、ライトガイド122のもう一端は、先端部120の前面に設けられた配光レンズ124と結合している。従って、集光レンズ244により集光された上記光は、ライトガイド122に入射してその内部を進行し、配光レンズ124を介して外部を照明する。これにより体腔内が照明され、術者は体腔内の観察・診断或いは処置を行うことができる。
【0018】
配光レンズ124から照射された照明光は、観察対象である生体組織を照明し、当該組織で反射される。この反射光は、先端部160前面に設けられた対物レンズ126に入射する。この入射光は、対物レンズ126のパワーにより、その後方に配置された固体撮像素子128の受光面(複数の受光素子がマトリクス状に配列された面)上に、観察対象(例えば体腔内の生体組織)の光学像として結像される。結像された光学像は、各受光素子においてその光量に応じた電荷として蓄積されて生体組織の像となり得る画像信号に変換される。固体撮像素子128の後方には、当該固体撮像素子128を駆動制御する駆動回路129が設置されている。ここで生成された画像信号は、駆動回路129の駆動制御によって出力され、挿入部可撓管110に沿って配線された信号線を伝送し、コネクタユニット140を介して接続部212に入力される。
【0019】
次に、プロセッサ200における信号処理について説明する。プロセッサ200は、画像信号の処理を行う手段として、画像処理信号回路252、アンプ254、画像信号用のメモリ256、及び、映像信号処理回路258を有している。
【0020】
接続部212に入力された画像信号は、画像処理信号回路252に入力し、ここでサンプリング・ホールド処理、A/D変換等の処理を経て、更に、R(Red)成分、G(Green)成分、及び、B(Blue)成分の各色成分の信号に色分離処理されてアンプ254に出力される。
【0021】
アンプ254は、R成分の信号を増幅するアンプ254R、G成分の信号を増幅するアンプ254G、及び、B成分の信号を増幅するアンプ254Bを有している。画像信号処理回路251から出力された各色成分の信号は、それぞれ対応するアンプに入力してその強度(信号レベル)が増幅され、メモリ256に出力される。
【0022】
メモリ256は、R成分の信号を格納するメモリ256R、G成分の信号を格納するメモリ256G、及びB成分の信号を格納するメモリ256Bを有している。アンプ254から出力された各色成分の信号は、それぞれ対応するメモリに格納される。そして各メモリに格納された各色成分の信号は、制御部230の制御によって、メモリ256R、256G、及び、256Bの各々から所定のタイミングで同時に読み出しされ、映像信号処理回路258に出力されて映像信号(例えばコンポジットビデオ信号やSビデオ信号或いはRGBビデオ信号など)に変換され、モニタ300で映像として表示される。
【0023】
また、プロセッサ200は、マイクロフォン400に入力された音声を検出する音声検出部260を有している。音声検出部260は、入力音声の音量レベル(すなわち入力された音声信号の出力値)に基づいて音声検出を行う。
【0024】
図3は、本実施形態のビデオテープデッキ500の構成を示したブロック図である。ビデオテープデッキ500は、周知の記録再生装置であり、制御部510、ビデオテープ520、記録再生処理部530、駆動部540、及び、インデックス情報処理部550を有している。
【0025】
制御部510は装置全体の制御を統括的に行うものであり、ビデオテープデッキ500は、この制御下で各種処理を実行する。ビデオテープ520は、体腔内の映像や術者のコメント等が記録される記録媒体であり、ビデオテープデッキ500の図示しない収納機構に収納されている。記録再生処理部530は、プロセッサ200からの入力映像や音声をビデオテープ520に記録し、或いは、ビデオテープ520に記録された情報を再生処理する為の電気回路である。駆動部540は、ビデオテープ520の記録情報の再生や、早送り、巻き戻し等をする為に当該ビデオテープ520の磁気テープロールを回転させるアクチュエータを備えている。インデックス情報処理部550は、インデックス情報をビデオテープ520に書き込んだり、書き込まれたインデックス情報を読み出したりする機能を有している。
【0026】
なお、ビデオテープデッキ500は、映像信号処理回路258から出力され得る映像信号を、ビデオ用ジャック216を介して受け取ることができる。その前面に設けられた操作部(不図示)を術者が操作すると、制御部510の制御下で、駆動部540がビデオテープ520のテープを送り、記録再生処理部530が、映像信号処理回路258からの映像信号をビデオテープ520に記録し、或いは、ビデオテープ520に記録された映像信号を再生する。
【0027】
図4は、本実施形態の電子内視鏡システム10で実行されるインデックス情報書込処理を示したフローチャートである。以下、図4を参照し、インデックス情報書込処理について説明する。
【0028】
プロセッサ200の電源がオンされている状態において、制御部230は、操作パネル220に設けられたスイッチによる設定がインデックス情報書込処理を行うように設定されているか否かを判定する(ステップ1、以下、ステップを「S」と略記)。ここで、上記スイッチが例えば術者の操作によってインデックス情報書込処理を行うように設定されていると判定した場合(S1:YES)、制御部230は、音声検出部260を制御して、マイクロフォン400に術者等の音声が入力されたか否かを判定する(S2)。また、上記スイッチがインデックス情報書込処理を行うように設定されていないと判定した場合(S1:NO)、所定時間経過後にS1の設定判定処理を再度実行する。
【0029】
なお、本実施形態のインデックス情報書込処理は、例えばプロセッサ200の電源がオフされたときに終了する。
【0030】
S2の処理においてマイクロフォン400に入力された音量レベルが所定の閾値S以上であると判定した場合(S2:YES)、制御部230は、術者がマイクロフォン400に音声を入力したと判断し、インデックス情報の書込命令の信号をビデオテープデッキ500の制御部510に出力する。また、マイクロフォン400に入力された音量レベルが所定の閾値Sよりも低いと判定した場合(S2:NO)、何れの音声も入力されていないものとして、所定時間経過後にS2の音量レベル判定処理を再度実行する。ここで上記書込命令の信号を受けたとき、制御部510は、インデックス情報処理部550を制御して、ビデオテープ520にインデックス情報の書き込みを実行させる(S3)。なお、制御部510は、ビデオテープ520へのインデックス情報の書き込みを、ビデオテープ520が停止/再生中の場合には実行せず、ビデオテープ520が映像信号や音声信号等の情報を記録しているときだけ実行する。また、マイクロフォン400に入力された音は、プロセッサ200を介してビデオテープデッキ500に出力され、その音量レベルに拘わらず、例えば患者の体腔内の映像と共にビデオテープ520に記録される。
【0031】
上記書込命令信号出力後、制御部230は、検出中の音量レベルが所定の閾値Sを下回っているか否かを判定する(S4)。ここで、音量レベルが所定の閾値Sを下回っていると判定した場合(S4:YES)、検出されていた音声が途切れたと判断し、所定時間経過後にS2の音量レベル判定処理を再度実行する。また、音量レベルが所定の閾値S以上であると判定した場合(S4:NO)、例えば術者が一つのコメントを継続的に発していると判断し、所定時間経過後にS4の音量レベル判定処理を再度実行する。なお、ここで使用されている閾値を、S2のものと別の値に設定しても良い。
【0032】
次に、上述した処理によってインデックス情報が書き込まれたビデオテープ520の頭出しをする処理について説明する。例えばビデオテープ520の頭出しをするようにビデオテープデッキ500の操作部が操作されると、駆動部540が動作して当該ビデオテープ520が早送り又は巻き戻しされる。早送り又は巻き戻し中、インデックス情報処理部550は、ビデオテープ520の記録域を常に監視しており、インデックス情報を検出すると、それを制御部510に伝える。これを受けて制御部510は、記録再生処理部530及び駆動部540を制御し、早送り又は巻き戻しされていたビデオテープ520を停止して再生する。これにより、ビデオテープ520中のインデックス情報記録部分の頭出し、すなわち当該部分からのビデオテープ520の再生が行われる。
【0033】
このように音量レベルに応じてビデオテープ520にインデックス情報を書き込みことにより、例えば術者の音声コメントが記録された部分を、頭出しで再生させることができる。この為、例えば体腔内の記録映像を確認する際に、術者は、音声コメントが記録された重要であり得る部分の映像を容易に探し出して再生させることができる。
【0034】
以上が本発明の実施形態である。本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく様々な範囲で変形が可能である。
【0035】
なお、本実施形態では入力音声の信号レベルに応じてインデックス情報をビデオテープ520に書き込んでいるが、別の実施形態では例えば操作者が操作パネル220等を操作して所望のタイミングでインデックス情報をビデオテープ520に書き込むようにしても良い。また、所定の動作(例えば送気や送水、ズーミング)に呼応してインデックス情報がビデオテープ520に書き込まれるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態の電子内視鏡システムの構成を示したブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態の電子内視鏡及びプロセッサの内部構成を概略的に示した図である。
【図3】本発明の実施の形態のビデオテープデッキの構成を示したブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態の電子内視鏡システムで実行されるインデックス情報書込処理を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0037】
10 電子内視鏡システム
100 電子内視鏡
200 プロセッサ
260 音声検出部
300 モニタ
400 マイク
500 ビデオテープデッキ
510 制御部
520 ビデオテープ
530 記録再生処理部
540 駆動部
550 インデックス情報処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体腔内を撮像する撮像素子を有した電子内視鏡と、
前記撮像素子から出力される画像信号をモニタ表示可能に処理する画像処理手段と、
外部から情報が入力される入力手段であって、該情報を所定形式の信号に変換する入力手段と、
前記画像処理手段で処理された画像信号と前記入力手段から出力された所定形式の信号を記録媒体に記録し、これを再生することができる記録再生手段と、
前記入力手段から出力される所定形式の信号の出力値を検出する出力値検出手段と、
前記出力値検出手段において所定の閾値よりも高い出力値が検出された時、前記記録媒体にインデックス情報を書き込むインデックス情報書き込み手段と、を備えたこと、を特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項2】
前記入力手段から出力される所定形式の信号が音声信号であること、を特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡システム。
【請求項3】
該インデックス情報の書き込み後、前記出力値検出手段において所定の閾値よりも高い出力値が継続して検出されている期間中は新たなインデックス情報を書き込まないこと、特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の電子内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−143968(P2007−143968A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−344383(P2005−344383)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】