説明

電子制御装置のシール構造

【課題】筐体に対するコネクタの変位を抑制し、耐荷重性・シール性の向上を図る。
【解決手段】一側にコネクタ15が取り付けられた回路基板11を挟み込む筐体のケース12とカバー13の周縁部同士の接合面部、及びコネクタ15の外周面と筐体の内周面との接合面部に、シール剤が充填されたシール部50を設ける。ケース12とカバー13のうち、合成樹脂製のカバー13よりも剛性が高い金属性のケース12と、コネクタ15と、に、互いに嵌合することにより筐体に対するコネクタ15の変位を抑制する凸部61と凹部62を有する変位抑制部60を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンコントロールユニットや自動変速機用コントロールユニットなどに好適な電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回路基板の一側に取り付けられたコネクタの一部を、筐体の窓部より側方へ露出させた、いわゆるコネクタ横出しタイプの電子制御装置が記載されている。コネクタは、筐体の一対のコネクタ挟持部材によって上下両面が基板厚さ方向に挟み込まれている。これら一対のコネクタ挟持部材の周縁部同士の接合面部、更にはコネクタの外周面と筐体の内周面との接合面部には、接着剤を兼ねるシール剤が充填されるシール部が設けられている。
【0003】
シール剤には、塗布した直後の未硬化時には形が崩れない程度の形状保持性を有し、かつ、所定厚みになるまで押圧されると、非接着部の形状に追従する適度な可塑性を有するシリコーン接着剤等が一般的に使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−70855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のコネクタには、このコネクタに接続される相手側の外部コネクタの取付時に大きなコジリ力が加わったり、ハーネスの重さや振れによる大きな荷重がかかりやすい。これにより、筐体に対してコネクタが変位すると、上記一対のコネクタ挟持部材の周縁部同士の接合面部やコネクタの外周面と筐体の内周面との接合面部に設けられたシール部におけるシール性の確保が困難となり、その対策が望まれていた。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、筐体に対するコネクタの変位を抑制し得る耐荷重性に優れた新規な電子制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、コネクタを厚さ方向に挟み込む一対のコネクタ挟持部材のうち、一方を他方よりも剛性が高いものとし、この剛性の高いコネクタ挟持部材とコネクタとに、互いに嵌合することにより筐体に対するコネクタの変位を抑制する変位抑制部を設けている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、変位抑制部により筐体に対するコネクタの変位を効果的に抑制 して、耐荷重性を向上し、この変位に起因するシール性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係るシール構造が適用された電子制御装置を示す分解斜視図。
【図2】上記第1実施形態のコネクタ部分の断面図。
【図3】上記第1実施形態のコネクタ部分のカバーを外した状態での斜視図。
【図4】上記第1実施形態のコネクタシール部における組立状態の断面図で、(A)が図1のA−A線に沿うコネクタ下面側の断面図、(B)が図1のB−B線に沿うコネクタ側面側の断面図、(C)が図1のC−C線に沿うコネクタ上面側の断面図。
【図5】上記第1実施形態の変位抑制部の近傍を示す断面図。
【図6】コジリ方向の外力に起因する許容振れ角を示す説明図。
【図7】図5と同じく変位抑制部の近傍を示す断面図。
【図8】本発明の第2実施形態に係る変位抑制部の近傍を示す斜視図。
【図9】同じく第2実施形態に係る変位抑制部の近傍を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る電子制御装置を、自動車のエンジンコントロールユニットに適用した実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。図1〜図7は本発明の第1実施形態に係る電子制御装置を示している。先ず、図1及び図2を参照して、電子制御装置10の基本構成について説明する。なお、ここでの説明においては、便宜上、図1の上下方向、つまり回路基板11の厚さ方向を装置10の上下方向・高さ方向として説明しているが、これは、車載状態での鉛直方向に必ずしも対応するものではない。
【0011】
この電子制御装置10は、車体側に取り付けられる略板状のケース12と略箱状のカバー13とを液密に接合してなる筐体と、この筐体内部の防水空間に収容される電子部品14を実装した回路基板11と、により大略構成されており、図示していないが、エンジンルーム等に搭載され、ケース12の底面を構成する平坦な取付面19において、車体側に取り付けられるものである。
【0012】
各構成要素について具体的に説明すると、回路基板11は、その表裏面に所定の電子部品14が実装された、いわゆるプリント配線基板であり、例えばガラスエポキシ樹脂等からなる板材の表裏面あるいはその内部に配線回路パターンが形成され、この配線回路パターンに電子部品14が半田等により電気的に接続されている。ここで、電子部品14としては、例えばコンデンサやコイル、トランジスタやIC等が用いられる。なお、図1では、便宜上、比較的発熱性の高い電子部品14(例えばMOS−FETやIC等)のみを図示している。
【0013】
また、回路基板11の一側には、外部のコネクタ70(図7参照)とそれぞれ接続される2つの第1,第2接続口16,17を有する表面実装タイプのコネクタ15が取り付けられている。このコネクタ15は、その接続先に応じて2つに分割された各接続口16,17が取付基部18を介して一体化された合成樹脂製のものであって、この取付基部18を介して回路基板11に複数のビス等により固定されている。このコネクタ15は、取付基部18によって連結された一連の接続口16,17が、ケース12とカバー13との間に形成される空間である窓部21を介して外部へと臨むようになっていて、ここにおいて外部のコネクタ70と接続される。これらコネクタ15の接続口16,17及び取付基部18は合成樹脂材料により一体的に形成されている。
【0014】
コネクタ15には、基板上の配線回路パターンに電気的に接続された複数の雄型端子16a,17aが設けられており、これらの雄型端子16a,17aが図外のコネクタに収容される複数の雌型端子と接続されることで、当該図外のコネクタ(雌型端子)に接続されるセンサー類やポンプ等の所定の機器と電気的に接続されることとなる。
【0015】
上記のケース12は、鉄やアルミニウム等の放熱性に優れた金属材料によって略板状、より詳しくは周縁がわずかに立ち上がる浅い箱状に一体形成されたものである。具体的には、ほぼ矩形状の底壁12aの外周縁(各側辺)に側壁12bが立設され、全体が僅かに上方へ開口するように構成されている。
【0016】
また、ケース12の底壁12aの内側面には、回路基板11の取付固定に供する基板固定部22が立設されている。基板固定部22は、その上端部に、回路基板11を支持する平坦状の支持面22aが構成されていて、これら各支持面22aには、回路基板11の固定に供する図外のビスが螺合する雌ねじ穴22bが形成されている。ビスが各雌ねじ穴22bに螺着されることによって、回路基板11が各基板固定部22に支持された状態でケース12に固定されることとなる。
【0017】
また、ケース12における側壁12bの外側部には、電子制御装置10の車体(図示省略)への取付に供する一対のブラケット23が一体に設けられている。なお、図1では手前側のブラケット23のみを図示している。ブラケット23には、上下方向に貫通する貫通孔23a、あるいは側方に開口する切欠溝が設けられていて、これら貫通孔23aや切欠溝を挿通するボルト等によって、車体側への取付が行われる。
【0018】
上記のカバー13は、金属材料に比べて軽量かつ低コストな所定の合成樹脂材料によって略箱状に一体成形されたものであり、回路基板11及びコネクタ15の上方を覆う上壁部31と、上記の窓部21を除く上壁部31の周縁の三方を囲う側壁32と、を有している。このカバー13は、四隅に設けられた係止爪部24が、ケース12の四隅に設けられた突起部25に弾性変形を伴って引っ掛かるように嵌合するとともに、窓部21の周縁の二箇所に設けられたコネクタ用の係止爪部26が、コネクタ15側に設けられた突起部(図示省略)に弾性変形を伴って引っ掛かるように嵌合することで、ケース12及びコネクタ15を含む回路基板11側に堅牢に組み付けらる、いわゆるスナップフィット式の固定構造となっている。このように本実施形態では、筐体の固定構造として、合成樹脂製のカバー13の弾性変形を利用したスナップフィット式の簡素な固定構造を採用しているが、これに限らず、ビスやボルト等を用いた他の固定構造を用いることもできる。なお、コネクタ15の取付基部18には、回路基板11に形成された位置決め孔27aに差し込まれる位置決め突起27が設けられている。
【0019】
この装置10においては、回路基板11の一側に取り付けられたコネクタ15の一部が、筐体側部に設けられた窓部21を貫通して側方へ露出する、いわゆるコネクタ横出しの構造となっている。この関係で、カバー13は、基板厚さ方向の寸法(高さ)が異なる回路基板11とコネクタ15のそれぞれに応じた段付形状をなしている。具体的には、回路基板11及びコネクタ15を挟んでケース12と対向するカバーの上壁部31には、ケース12の取付面19に平行な上段部33と下段部34とが設けられている。コネクタ15の上方を覆う上段部33は、回路基板11の上方を覆う下段部34に対して、基板厚さ方向の寸法が大きく設定されている。そして、このように高さの異なる上段部33と下段部34とを滑らかに繋ぐ傾斜壁部35が設けられている。この傾斜壁部35は、ケース12の取付面19に対して所定の傾斜角度、具体的にはほぼ45度の傾斜角度で平坦に傾斜しており、従って、上段部33や下段部34に対しても同じ傾斜角度で傾斜している。
【0020】
図示していないが、筐体の外壁の一部をなす傾斜壁部35における防護壁40の内側には、筐体内部の通気性を確保するための通気孔が厚さ方向に貫通形成されており、この通気孔には、防水性及び通気性の双方を併せ持つゴアテックス(登録商標)などの薄膜状の通気防水膜が取り付けられている。この通気防水膜へ洗車時等に高温・高圧の水が直接吹きかけられることを防止するように、通気孔の周囲を防護壁40で覆う形となっている。
【0021】
筐体内部の防水性を確保するために、部材間の接合面部には、接着剤としても機能するシール剤を充填したシール部50が設けられている。具体的には、ケース12の上面側の周縁部とカバー13の下面側の周縁部との合わせ面部である接合面部には、シール剤が充填された筐体シール部50Aが全周にわたって設けられるとともに、コネクタ15の外周面と筐体の窓部21の内周面との接合面部にも、シール剤が充填されたコネクタシール部50Bが全周にわたって設けられている。これらの筐体シール部50Aとコネクタシール部50Bとは、コネクタ下面側で接続している。つまり、コネクタ下面側に位置するシール部50が、筐体シール部50Aの一部とコネクタシール部50Bの一部とを兼用する形となっている。
【0022】
上記のシール剤としては、塗布した直後の未硬化時には形が崩れない程度の形状保持性を有し、かつ、所定厚みになるまで押圧されると、非接着部の形状に追従する適度な可塑性・流動性を有するものが用いられ、例えばエポキシ系やシリコーン系、アクリル系など、電子制御装置10の仕様や要求に応じて適宜に選択することができる。
【0023】
筐体シール部50Aでは、ケース12側にチャンネル形状・断面コ字状のシール溝51が全周にわたって設けられるとともに、カバー13及びコネクタ15の下面側に、このシール溝51に所定の間隙をもって嵌り込む断面矩形状の帯状をなす突条52が設けられており、これらシール溝51と突条52との断面U字状をなす間隙に、シール剤53が充填される。図1及び図2にも示すように、ケース12に形成されるシール溝51は、ケース12の側壁12bと、この側壁12bの内周位置で底壁12aより立ち上がる補助側壁12cと、の間に形成されている。一方、カバー13に形成される突条52は、合成樹脂製のカバー成形時に一体的に形成されるもので、カバー13の下面より下方へ一体的に突出している。同様に、コネクタ15に形成される突条52は、合成樹脂製のコネクタ15の成形時に一体的に形成され、このコネクタ15における取付基部18の下面より下方へ一体的に突出している。
【0024】
このように、シール部50にシール溝51及び突条52を設けて、シール剤53が充填される間隙を断面U字状に迂回させることで、シール長(リークパスとも呼ぶ)を十分に確保し、所期のシール性が得られるように構成されている。なお、筐体シール部50Aにおいては、一定のシール長を確保するように、シール溝51及び突条52の深さや幅が全周にわたってほぼ一定に設定されている。ここで、「シール長」とは、シール部50により隔てられる2つの空間の間に介在されるシール剤の充填長さに相当し、例えば図4(A)に示す部分では、シール剤53が充填されることとなる断面U字状の間隙を直線状に展開した長さに相当する(R2+(R1×2))。
【0025】
コネクタシール部50Bにおいても、上記の筐体シール部50Aと同様に、シール溝51と突条52とが設けられている。このコネクタシール部50Bのうち、筐体シール部50Aの一部を兼用するコネクタ下面側では、図2に示すように、コネクタ側に突条52が設けられ、この突条52がケース12に形成されたシール溝51に嵌り込むようになっている。一方、このコネクタ下面側を除く部位(コネクタ両側部)では、コネクタ側にシール溝51が形成され、これに対向するカバー側に突条52が形成されている。
【0026】
図4は、コネクタシール部50Bにおける組立状態での断面図であり、(A)が図1のA−A線に沿うコネクタ下面側の断面図、(B)が図1のB−B線に沿うコネクタ側面側の断面図、(C)が図1のC−C線に沿うコネクタ上面側の断面図である。本実施形態では、コネクタシール部50Bにおけるシール溝51及び突条52の形状・寸法を、位置に応じて異ならせている。すなわち、コネクタシール部50Bのうち、コネクタ下面側では、図4(A)に示すように、所定深さR1及び幅R2のシール溝51Aと、このシール溝51Aに間隙をもって嵌合する突条52Aと、を有する深底部54が形成されている。この深底部54においては、シール溝51Aの内面と突条52Aの外面とが所定の間隙をもって対向しており、この断面U字状をなす間隙に、シール剤53が充填されている。一方、コネクタ15の上面側では、図4(C)に示すように、コネクタ下面側の深底部54に対し、シール溝及び突条が浅く設定された浅底部55としており、特にこの実施形態においては、シール溝の深さを「0」として、シール溝を実質的に省略するとともに、シール溝に対応する突条も省略している。従って、この浅底部55となるコネクタ上面側では、コネクタ15の外周面と、これに対向する筐体のカバー13の内周面と、の平坦な帯状の間隙にシール剤53が充填された、いわゆる平面シール構造をなしている。
【0027】
また、コネクタシール部50Bのうち、コネクタ両側面側においては、図4(B)に示すように、コネクタ下面側の深底部54とコネクタ上面側の浅底部55とを繋ぐ接続部56が設けられている。これらの深底部54と浅底部55と接続部56とで、コネクタシール部50Bのシール長が全周にわたって一定となるように設定されている。具体的には、シール長が一定となるように、浅底部55が深底部54に比してシール溝及び突条の幅が大きく設定されるとともに、接続部56においては、深底部54と同様に、シール溝51Bと、このシール溝51Bに所定の間隙をもって嵌り込む帯状の突条52Bと、が形成されているが、深底部54に比して、シール溝51Bの深さR3が小さく設定されるとともに(R3<R1)、シール溝51Bの幅R4が大きく設定されている(R4>R2)。このようなシール溝51Bの形状に対応して、突条52Bについても、深底部54に比して、その深さが小さく設定されるとともに、幅が大きく設定されている。また、この接続部56においては、浅底部55から深底部54へ向かうに従って、シール溝51Bの深さR3が徐々に大きくなるとともに、シール溝51Bの幅R4が徐々に小さくなるように設定されている。
【0028】
このコネクタ側面側のシール構造について更に説明すると、コネクタ15の側面には、側方へ張り出した一対のリブ57が一体的に設けられ、これらリブ57の間に、接続部56におけるシール溝51Bが形成されている。これらのリブ57は、コネクタ上面からコネクタ下面に向けて徐々に深くなるように略三角形状をなしており、その上端部がコネクタ上面と滑らかに接続している。また、このコネクタ側面側のシール溝51Bの内側には、更に深く窪んだ補助シール溝58が設けられており、二重のシール構造をなしている。この補助シール溝58は、下方へ向かうに従って徐々に深くなっており、ケース12のシール溝51に嵌り込むコネクタ下面の突条52Aの端面にまで延長形成されている。つまり、コネクタ下面側の突条52Aの端面にも、補助シール溝58の一部が形成されている。
【0029】
次に、本実施形態の要部をなす構成について説明する。本実施形態においては、筐体における一対のコネクタ挟持部材を構成するケース12とカバー13のうち、一方のケース12を、剛性の高いアルミ合金等の金属材料により形成する一方、他方のカバー13を、軽量かつ低コストな合成樹脂材料により一体的に型成形している。そして、剛性の高いケース12とコネクタ15とに、互いに嵌合することにより筐体に対するコネクタ15の変位を抑制する変位抑制部60を設けている。図1にも示すように、この変位抑制部60は、コネクタ15に一体的に形成された凸部61と、ケース12に形成され、上記の凸部61が所定の間隙をもって嵌り込む凹部62と、により構成されている。
【0030】
凸部61は、コネクタ15における取付基部18の下面側の両側部にそれぞれ一体的に形成されており、詳しくは図3にも示すようにコネクタ側面側のシール溝51を形成する後方側のリブ57の後面側に付帯形成されており、下方へ延びる断面矩形の棒状をなしている。この凸部61の先端周縁部には、図5に示すように、適宜に傾斜もしくは湾曲する面取部63が形成されている。
【0031】
凹部62は、ケース12の周縁部に設けられるシール溝51の内周側の壁面を構成する補助側壁12cを利用して形成されており、詳しくは図1にも示すように、この補助側壁12cの隅角部分と、この補助側壁12cより内側へ延びる補助リブ64と、により概ね三方が囲われた下方へ延びるチャンネル形状をなしており、上記の凸部61が所定の間隙をもって嵌り込むように、上記の凸部61よりも大きな断面寸法に設定されている。また、図5にも示すように、凸部61の先端が局所的に接触・干渉することを回避するように、凸部61の底部には、凸部61の先端に設けられた面取部63に対応して、適宜に湾曲する湾曲面65が形成されている。なお、回路基板11におけるコネクタ側の隅角部分には、この凸部61との干渉を回避する切欠部66が形成され、この切欠部66を通して凸部61が凹部62に嵌合するように構成されている。
【0032】
このように本実施形態では、コネクタ15を挟み込む一対のコネクタ挟持部材としてのケース12とカバー13のうちで剛性の高い方のケース12と、コネクタ15とに、コネクタ15の変位を抑制する変位抑制部60を設けたことによって、剛性の低いカバー13側に変位抑制部を設けた場合に比して、筐体に対するコネクタ15の変位を効果的に抑制して、耐荷重性を向上し、この変位に起因するシール性の低下を抑制することができる。
【0033】
また、このようにケース12とカバー13とで剛性を異ならせることによって、剛性の低いカバー13を合成樹脂材料によって一体的に型成形することができる。このために、剛性の高いケース12側に変位抑制部60を設けることで所期の耐荷重性を確保した上で、剛性の低いカバー13の合成樹脂化により軽量化及び低コスト化を図ることができる。
【0034】
図5を参照して、凸部61の幅寸法と凹部62の幅寸法との差の1/2の値を、凸部61と凹部62との間隙Aとし、シール部50におけるシール溝51の幅寸法と突条52との幅寸法の差の1/2の値をシール幅Bとし、このシール部50において要求される最小のシール幅を必要最小シール幅Cと定義すると、以下の関係が成立するように設定されている。
【0035】
A<B
C<B
(B−A)<C
上記の変位抑制部60は、凸部61が凹部62に所定の間隙Aをもって嵌り込むことにより、コネクタ15を筐体へ組み付ける際のガイド部としても機能するものであるが、この組付の際に、仮に間隙Aがシール幅Bよりも大きく設定されていると、突条52の一方の側面がシール溝51の一方の側面に突き当てられた偏心状態で組付が行われる可能性が残り、凸部61と凹部62とが位置決め機構として十分に機能しない虞がある。これに対して本実施形態では、間隙Aがシール幅Bよりも小さく設定されているために、凸部61を凹部62に嵌め込んだ状態では、突条52の両側がシール溝51に対して確実に間隙を保った状態で相対的な位置決めがなされることとなり、組付時の位置決め精度が向上する。
【0036】
また、シール幅Bと間隙Aとの差が必要最小シール幅Cよりも小さく設定されているために、コネクタ組付時等の外部入力によりコネクタ15が筐体に対して変位したとしても、必要最小シール幅Cとなる前に凸部61が凹部62とが接触して、それ以上の変位が抑制・回避されるために、必要最小シール幅Cを確実に維持し、所期のシール性を確保することができる。
【0037】
図6に示すように、外部コネクタ70の組付の際には、コネクタ15が上下方向に振れるコジリ方向(図6の紙面直交方向に対する円周方向)の外力71が作用し、この外力71に起因して、コネクタ15が筐体に対してコジリ方向に変位し易い傾向にある。このコジリ方向の変位を、許容される最小の規定振れ角α未満に抑制するように、本実施形態では、上記の凸部61と凹部62の間隙の寸法が設定されている。詳しくは、図7に示す初期姿勢から凸部61と凹部62とが上端と下端とで接触することとなる傾斜姿勢までの振れ角βが、上記の規定振れ角αよりも小さく設定されている(β<α)。これによって、コネクタ組付時等の外部入力によりコネクタ15が筐体に対してコジリ方向に変位したとしても、規定振れ角αとなる前に凸部61が凹部62とが接触して、それ以上の変位が抑制・回避されるために、過度な変位を抑制し、信頼性・耐久性を向上することができる。
【0038】
更に、シール部50のうちでも、筐体シール部50Aとコネクタシール部50Bとが接続する繋ぎ目の部分では、局所的にシール長が短くなるなど、シール性の確保が困難であるが、本実施形態においては、このような繋ぎ目の部分、より具体的には、コネクタ両側部とコネクタ下面部との隅角部分の近傍に変位抑制部60を設けているために、このようにシール性の確保が困難なシール部の繋ぎ目の部分の変位を抑制して、耐久性・信頼性を有効に向上することができる。
【0039】
図8及び図9は、本発明の第2実施形態に係る凸部61Aと凹部62Aとを示す斜視図である。なお、上記第1実施形態と同一の構成要素には同じ参照符号を付し、重複する説明を適宜省略する。この第2実施形態では、凸部61Aの形状を、断面長方形状の第1片部67と、この第1片部67の中央部から垂直に延びる断面長方形状の第2片部68と、を有する断面T字形状としている。この凸部61Aの形状に応じて、凹部62Aは、上記第1片部67が所定間隙をもって嵌り込む断面長方形状に凹設されるとともに、その一方の側壁に、上記第2片部68が所定の隙間をもって嵌り込むスリット69が形成されている。このように、凸部61Aを断面T字形状とするとともに、凹部62Aをこれに対応した形状とすることで、第1実施形態のものに比して、回路基板11の板厚方向に直交するX−Y方向についての耐荷重性及び位置決め性を更に向上することができる。
【0040】
以上のように本発明を具体的な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変形・変更を含むものである。例えば、変位抑制部の凸部や凹部の形状は、上記第1,第2実施形態のものに限られず、様々な様々な形状を採用することができる。また、変位抑制部の位置についても、上記の実施形態のように、筐体シール部50Aとコネクタシール部50Bとの接続部分の近傍に限らず、他の部位に適用しても良い。
【符号の説明】
【0041】
10…電子制御装置
11…回路基板
12…ケース(コネクタ挟持部材)
13…カバー(コネクタ挟持部材)
15…コネクタ
50…シール部
51…シール溝
52…突条
53…シール剤
60…変位抑制部
61,61A…凸部
62,62A…凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側にコネクタが取り付けられた回路基板と、このコネクタを厚さ方向に挟み込む一対のコネクタ挟持部材を有する筐体と、を有し、コネクタの一部が筐体の外部に露出するとともに、コネクタの残部が回路基板とともに筐体内部の防水空間に収容されてなる電子制御装置において、
上記一対のコネクタ挟持部材の周縁部同士の接合面部、及び上記コネクタの外周面と筐体の内周面との接合面部には、シール剤が充填されたシール部が設けられ、
上記一対のコネクタ挟持部材のうち、一方が他方よりも剛性が高く設定され、
この剛性の高いコネクタ挟持部材とコネクタとに、互いに嵌合することにより筐体に対するコネクタの変位を抑制する変位抑制部を設けたことを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
上記変位抑制部は、上記剛性の高いコネクタ挟持部材とコネクタの一方に形成された凸部と、他方に形成された凹部と、を有し、
この変位抑制部は、上記凸部が凹部に所定の間隙をもって嵌り込むことにより、上記コネクタを筐体へ組み付ける際のガイド部として機能することを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
上記凸部と凹部との間隙は、上記シール部におけるシール剤が充填されるシール幅よりも小さく設定されていることを特徴とする請求項2に記載の電子制御装置。
【請求項4】
上記凸部と凹部との間隙をA、
上記シール部におけるシール剤が充填されるシール幅をB、
上記シール部における必要最小シール幅をC、とすると、
(B−A)<C
の関係を満たすことを特徴とする請求項3に記載の電子制御装置。
【請求項5】
上記剛性の高いコネクタ挟持部材が金属材料により形成され、上記剛性の低いコネクタ挟持部材が合成樹脂材料により形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子制御装置。
【請求項6】
上記変位抑制部が、一対のコネクタ挟持部材の周縁部同士の接合面部と、上記コネクタの外周面と筐体の内周面との接合面部と、が接続する部分の近傍に配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電子制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−69439(P2013−69439A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205475(P2011−205475)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】