電子制御装置
【課題】カバー接合面の突条をケース接合面のシール溝に適切に係合させ得る電子制御装置を提供する。
【解決手段】回路基板11を収容するケース12の隅部に第1〜第4位置決め固定壁31〜34を立設する一方、ケース12に被嵌して回路基板11を被覆するカバー13に、前記各位置決め固定壁31〜34の内側面37a…と係合することによってケース12に対するカバー13の位置決めを行う第1〜第4位置決め固定片41〜44を設け、カバー13接合面である取付部38の下面38aに有する固定用突条39がケース12接合面である取付面26に有するシール溝27に充填された接着剤30に接触する以前に、前記各位置決め固定片41〜44を前記各位置決め固定壁31〜34に係合させて、ケース12とカバー13の位置決めを行うように構成した。
【解決手段】回路基板11を収容するケース12の隅部に第1〜第4位置決め固定壁31〜34を立設する一方、ケース12に被嵌して回路基板11を被覆するカバー13に、前記各位置決め固定壁31〜34の内側面37a…と係合することによってケース12に対するカバー13の位置決めを行う第1〜第4位置決め固定片41〜44を設け、カバー13接合面である取付部38の下面38aに有する固定用突条39がケース12接合面である取付面26に有するシール溝27に充填された接着剤30に接触する以前に、前記各位置決め固定片41〜44を前記各位置決め固定壁31〜34に係合させて、ケース12とカバー13の位置決めを行うように構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車に搭載され、エンジンやブレーキ等の制御に供する電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子制御装置としては、例えば以下の特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
概略を説明すれば、この電子制御装置では、ケースの接合面における対角の隅部に一対の位置決め用突起が突設されていて、当該一対の位置決め用突起にカバーの接合面に設けた位置決め用切欠部を係合させることによって、ケースに対するカバーの位置決めを行うことで、装置の組立性の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−57345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、エンジンルーム内に配置されるなど、水分に晒されるおそれのある電子制御装置では、ケース接合面に設けたシール溝にシール材を充填し、このシール材が充填されたシール溝にカバー接合面に設けた突条を係合させることによってケースとカバーとの間にシール材を介在させ、これによって、筐体内への水分の侵入を抑制するようになっている。
【0006】
しかしながら、前記従来の電子制御装置に係る位置決めは、前記突条を前記シール溝内に係合させることについて何ら考慮されていないため、前記突条を前記係合溝に係合させる際に、当該突条によって前記シール溝内のシール材を掻き出してしまうおそれがあり、これによって、十分な防水が図れないという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる技術的課題に鑑みて案出されたものであり、カバー接合面の突条をケース接合面のシール溝内に適切に係合させ得る電子制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、その接合面にシール溝を有する第1部材と、その接合面に前記シール溝に係合する突条を有する第2部材とを、前記シール溝内に充填されたシール材を介して接合することにより構成された筺体内に回路基板を収容してなる電子制御装置において、前記突条が前記シール溝内に充填されたシール材に接触する以前に前記第1部材と前記第2部材の位置決めを行う位置決め手段を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本願発明によれば、前記位置決め手段を設けたことにより、第1部材と第2部材を位置決めした状態で突条をシール溝内に進入させることができる。これによって、装置の組立時において、突条をシール溝内に適切に進入させることが可能となり、その結果、当該突条がシール溝内の接着剤を掻き出してしまうといった不具合の抑制が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る電子制御装置を表側から見た斜視図である。
【図2】本発明に係る電子制御装置を裏側から見た斜視図である。
【図3】図1に示す電子制御装置の分解斜視図である。
【図4】図2に示す電子制御装置の分解斜視図である。
【図5】図1のA−A線断面図である。
【図6】図1のB−B線断面図である。
【図7】図5の要部拡大図である。
【図8】図1のC−C線断面図である。
【図9】位置決め固定片が位置決め固定壁により位置決めされた状態を現す図8に相当する断面図である。
【図10】図8におけるケースとカバーとの間の通常のクリアランスを示す断面図である。
【図11】図8におけるケースとカバーとの間の最小のクリアランスを示す断面図である。
【図12】本発明の他の実施形態を現した図8に相当する断面図である。
【図13】ケースとカバーの仮固定構造の他の実施形態を現した図3に相当する分解斜視図である。
【図14】ケースとカバーの仮固定構造の他の実施形態を現した図9に相当する図13のD−D線断面図である。
【図15】放熱フィンの他の実施形態を現した図2に相当する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る電子制御装置の実施形態を図面に基づいて詳述する。なお、以下に示す実施形態では、この電子制御装置を自動車のエンジン制御に適用したものを示している。
【0012】
すなわち、本実施形態に係る電子制御装置10は、図1〜図4に示すように、その表裏面に所定の電子部品14が実装される回路基板11と、この回路基板11が収容固定される金属製のケース12(本発明に係る第1部材に相当)と、前記回路基板11を覆うように前記ケース12の上方から被嵌して当該ケース12と共に本発明に係る筐体を構成するカバー13(本発明に係る第2部材に相当)と、から主として構成され、車両のエンジンルーム等に搭載される。
【0013】
前記回路基板11は、図3、図4に示すように、いわゆるプリント配線基板であり、例えばガラスエポキシ樹脂等からなる板材の表裏面あるいはその内部に配線回路パターン(図示外)が形成され、この配線回路パターンに前記電子部品14が半田等により電気的に接続されている。
【0014】
ここで、前記電子部品14としては、例えばコンデンサやコイル、トランジスタやIC等が用いられる。なお、当該電子部品14を現した図3、図4、図6では、便宜上、これらの電子部品14のうち、比較的発熱性の高い電子部品14a,14b(例えばMOS−FETやIC等)のみを図示している。
【0015】
また、前記回路基板11には、ケース12に対する取付面となる裏面11bに、外部のコネクタ(図示外)とそれぞれ接続される3つの第1〜第3接続口16〜18を有するコネクタ15が取り付けられている。このコネクタ15は、その接続先に応じて3つに分割された前記各接続口16〜18がベースとなる取付基部19を介して一体化されたものであって、この取付基部19を介して回路基板11に複数のビス20により固定されている。そして、このコネクタ15は、図2、図4に示すように、前記取付基部19によって連結された一連の接続口16〜18が、ケース12の底壁12aに開口形成された後記の窓部21を介して外部へと臨むようになっていて、ケース12の外部にて前記図外のコネクタと接続される。
【0016】
なお、前記各接続口16〜18には、図2に示すように、それぞれ前記図外の配線回路パターンに電気的に接続された複数の雄型端子16a〜18aが収容されており、これらの雄型端子16a〜18aが前記図外のコネクタに収容される複数の雌型端子と接続されることで、当該図外のコネクタ(雌型端子)に接続されるセンサー類やポンプ等の所定の機器と電気的に接続されることとなる。
【0017】
前記ケース12は、図3、図4に示すように、鉄やアルミニウム等の放熱性に優れた金属材料によっていわゆる箱状に一体形成されたものであって、具体的には、ほぼ矩形状の底壁12aの外周縁(各側辺)に第1〜第4側壁12b〜12eが立設され、全体が上方へ開口するように構成されている。そして、このケース12の底壁12aには、コネクタ15の前記各接続口16〜18を当該ケース12の外部へと臨ませる窓部21が貫通形成されていて、この窓部21に前記各接続口16〜18が嵌挿されることにより、これら各接続口16〜18が当該ケース12の外部へ突出するようになっている。
【0018】
また、前記ケース12の底壁12aの内側面には、図3に示すように、回路基板11の取付固定に供する複数の基板固定部22が立設されている。これら基板固定部22は、その上端部に、それぞれ回路基板11を支持する平坦状の支持面22aが構成されていて、これら各支持面22aには、回路基板11の固定に供する図外のビスが螺合する雌ねじ穴22bが形成されている。かかる構成から、回路基板11の外周縁部に複数設けられたビス挿通孔11cに挿通する前記図外のビスが前記各雌ねじ穴22bに螺着されることによって、回路基板11が前記各基板固定部22に支持された状態でケース12に固定されることとなる。
【0019】
さらに、前記ケース12の底壁12aの内側面には、回路基板11において電子部品14(特に発熱性の高い電子部品14a,14b)から発生した熱の放熱に供する一対の第1、第2放熱用台座23a,23bが突設されている。これら第1、第2放熱用台座23a,23bは、図6に示すように、回路基板11の組み付け状態において、この回路基板11の裏面11bのうち、その反対側(表面11a)に前記各電子部品14a,14bが実装される所定領域と対向するように配置されていて、当該所定領域が、それぞれ周知の第1、第2放熱シート24a,24bを介して当該各放熱用台座23a,23b上に当接配置されるようになっている。ここで、前記各放熱シート24a,24bは、例えば放熱グリス等でもよく、いわゆる熱伝導材であれば、シート状のものに限定されるものではない。
【0020】
一方、前記第1、第2放熱用台座23a,23bが設けられる底壁12aの外側面には、放熱の促進に供する第1、第2放熱フィン25a,25bが設けられている。これによって、前記各放熱用台座23a,23bが受熱した熱が効率よく放熱され、冷却効果を高めることが可能となっている。なお、本実施形態では、前記各放熱フィン25a,25bは、前記底壁12aの長手方向、つまり前記各放熱用台座23a,23bの短辺方向に沿うようにして設けられている(図2、図4参照)。
【0021】
また、前記ケース12には、図3、図7に示すように、前記各側壁12b〜12eの上端に、カバー13の取付に供するほぼ平坦状の一連の取付面26が周方向に亘って構成され、この取付面26には、当該ケース12とカバー13の固定に供する接着剤30(本発明に係るシール材に相当)が充填される一連のシール溝27が全周に亘って切欠形成されている。すなわち、このシール溝27には、前記接着剤30が充填された状態でカバー13に設けられる後記の固定用突条39が挿入されるようになっていて、主として当該シール溝27と前記固定用突条39とが接着剤30を介して接着されることで、ケース12とカバー13とが固定されることとなる(図8参照)。
【0022】
ここで、前記接着剤30については、流動性を有するシール材であれば特に具体的な構成は限定されるものではなく、例えばエポキシ系やシリコーン系、アクリル系等、電子制御装置10の仕様に応じて自由に選択することができる。また、かかる接着剤30は、シール溝27一杯に充填されている必要はなく、後述するように、固定用突条39がシール溝27内へ進入した際に後記の隙間L5内へと押し出されるに足りる量が充填されていればよい。
【0023】
また、前記ケース12における第1、第3側壁12b,12dの外側部には、図1〜図4に示すように、電子制御装置10の車体(図示外)への取付に供する一対の第1、第2ブラケット28,29が一体に設けられている。そして、第1ブラケット28には、上下方向に貫通する貫通孔28aが設けられる一方で、第2ブラケット29には、側方に開口する切欠溝29aが設けられていて、これら貫通孔28a及び切欠溝29aをもって前記車体への取付が行われる。
【0024】
さらに、前記第1、第2ブラケット28,29には、図3、図5に示すように、カバー13に設けられる後記の係合突起46a,46bと係合可能に構成された第1、第2係合溝28b,29bが切欠形成されている。ここで、これら各切欠溝28b,29bは、それぞれ対応する前記各係合突起46a,46bのみが係合可能となるように構成されている。つまり、例えば第2係合突起46bを第1切欠溝28bには係合することができないように構成されており、これによって、ケース12とカバー13の誤組み付けの防止が図られている。
【0025】
また、前記ケース12には、図3、図7に示すように、前記各側壁12b〜12eによって構成される各隅部(四隅)に、当該ケース12に対するカバー13の水平方向(水平回転方向を含む)の位置決めに供する第1〜第4位置決め固定壁31〜34(本発明に係る位置決め固定手段に相当)が立設され、前記各側壁12b〜12eと一体に構成されている。なお、これらの位置決め固定壁31〜34はいずれも同形状に構成されていることから、その構成については、便宜上、図7〜図9の図示に基づいて、第1位置決め固定壁31についてのみ、以下に説明する。
【0026】
すなわち、前記第1位置決め固定壁31は、図7に示すように、第1側壁12bに沿って構成される第1位置決め壁35と、第4側壁12eに沿って構成される第2位置決め壁36と、前記両位置決め壁35,36を繋ぐように構成され、ケース12に対するカバー13の固定に供する固定壁37と、を有し、これらが一体に形成されている。
【0027】
前記第1位置決め壁35は、カバー13に設けられる後記の第1位置決め固定片41の第1係合溝45aと係合することで、その対角に位置する第3位置決め固定壁33の第1位置決め壁33aと共に、主として、カバー13の長辺方向(図1中のX軸方向)の移動を規制する(図1参照)。
【0028】
前記第2位置決め壁36は、カバー13に設けられる後記の第1位置決め固定片41の第2係合溝45bと係合することで、その対角に位置する第3位置決め固定壁33の第2位置決め壁33bと共に、主として、カバー13の短辺方向(図1中のY軸方向)の移動を規制する(図1参照)。
【0029】
前記固定壁37は、図7〜図9に示すように、その内側面37aがカバー13に設けられる後記の第1位置決め固定片41の外側面41aと当接することによって、その対角に位置する第3位置決め固定壁33の固定壁33cと共に、主として、カバー13の対角線方向の移動規制に供する(図1参照)。
【0030】
また、前記固定壁37の内側面37aには、その高さ方向における所定の位置に、後記の第1位置決め固定片41に設けられる係止突起41bに係止可能に構成された係止溝37b(本発明に係る係止部に相当)が穿設されている。そして、かかる係止溝37bに前記係止突起41bが係止することで、ケース12に対するカバー13の鉛直方向(図1中のZ軸方向)の移動が規制され、その対角に位置する第3位置決め固定壁33の固定壁33cと共にカバー13の鉛直方向の移動を規制する(図1参照)。
【0031】
さらに、前記固定壁37には、その内側上端部には、前記内側面37a側へ下り傾斜状となるテーパ面37cが設けられている。なお、本実施形態では、このテーパ面37cを平滑に形成することとしたが、必ずしも平滑である必要はなく、例えば断面が外方へ凸円弧状となるように形成することも可能である。
【0032】
前記カバー13は、図3、図4に示すように、金属材料に比べて軽量な所定の樹脂材料によってケース12と同様のいわゆる箱状に一体成形されたものであり、ほぼ矩形状の天井壁13aの外周縁(各側辺)に第1〜第4側壁13b〜13eが設けられ、全体が下方へと開口するように構成されていて、ケース12内に収容固定された回路基板11を覆うように被嵌されることによって、当該ケース12に組み付けられる。
【0033】
そして、このカバー13は、図3、図7に示すように、第1〜第4側壁13b〜13eの各先端部に、ケース12の前記取付面26と対向する一連の取付部38が側方へ鍔状に突設されると共に、図4、図8に示すように、この取付部38の下面38a(取付面26との対向面)に、ほぼ環状に構成された一連の固定用突条39(本発明に係る突状に相当)が全周に亘って突出形成されていて、この固定用突条39がケース12の前記シール溝27に係合するかたちで接着剤30を介してケース12に固定されている。
【0034】
この固定用突条39は、図8、図9に示すように、その厚さ幅W1がシール溝27の溝幅W2に比べて十分に小さく設定され、このシール溝27との間に所定の隙間L6が確保されるようになっていて、当該隙間L6をもって十分な量の接着剤30を介在させることが可能となっている。また、この固定用突条39は、その突出量L1についてもシール溝27の溝深さD1に比べて十分に小さく設定され、このシール溝27内において、接着剤30を切断してしまうことがないように構成されている。すなわち、固定用突条39の突出量L1は、当該固定用突条39の先端がシール溝27の底部に当接することがないように設定され、固定用突条39の先端とシール溝27の底部との間に十分な量の接着剤を介在させることが可能となっている。
【0035】
さらに、この固定用突条39の突出量L1については、前記固定壁37におけるテーパ面37cの下端縁から取付面26までの距離(前記内側面37aの高さ幅)L2と同じか又はこれよりも小さくなるように、つまり当該内側面37aの高さ幅L2との間で「L1≦L2」の関係が成立するように設定されている。そして、このような構成から、カバー13は、固定用突条39がシール溝27に充填された接着剤30中に進入するのとほぼ同時又は進入するよりも前に、例えば後記の第1、第3位置決め固定片41,43を介して第1、第3位置決め固定壁31,33をもって、その水平方向の位置決めが行われることとなる。
【0036】
また、前記カバーの取付部38には、図3、図7に示すように、その四隅に、ケース12の第1〜第4位置決め固定壁31〜34にそれぞれ対向する第1〜第4位置決め固定片41〜44が延設され、当該カバー13と一体に構成されている。なお、これらの位置決め固定片41〜44は、前記各位置決め固定壁31〜34と同様に、いずれも同形状に構成されるていことから、その構成については、便宜上、図7〜図9の図示に基づいて、第1位置決め固定片41についてのみ、以下に説明する。
【0037】
すなわち、前記第1位置決め固定片41は、図7に示すように、前記取付面26に対してほぼ直角に折れ曲がるように立設され、その外側面41aが第1位置決め固定壁31に係る固定壁37の内側面37aと対向し、相互に面接触するような構成となっている。さらに、この第1位置決め固定片41の両側部には、第1、第2位置決め壁35,36にそれぞれ係合可能な第1、第2係合溝45a,45bが切欠形成されており、該各係合溝45a,45bが前記各位置決め壁35,36と係合することで、その対角に位置する第3位置決め固定片43と共にカバー13の水平方向の移動を規制し、これによって、ケース12に対するカバー13の位置決めが行えるようになっている。
【0038】
また、前記第1位置決め固定片41の外側面41aには、前記固定壁37の係止溝37bに係止可能に構成された係止突起41bが突出形成されている。そして、この係止突起41bは、図8、図9に示すように、前記係止溝37bに嵌入され当該係止溝37bに係止することで、その対角に位置する第3位置決め固定片43と共にカバー13の鉛直方向の移動を規制し、これによって、ケース12に対してカバー13を固定(仮固定)することが可能となっている。
【0039】
ここで、前記係止突起41bは、断面がほぼ円弧状となるように形成されると共に、その中心から取付部38の下面38aまでの距離L3(以下、「係止突起41bのオフセット量」という。)が、前記固定壁37における係止溝37bの中心から取付面26までの距離L4(以下、「係止溝37bのオフセット量」という。)よりも小さくなるように、つまり当該係止溝37bのオフセット量L4との間において「L3<L4」の関係が成立するように設定され、ケース12とカバー13を組み付けた状態において、ケース12の取付面26とカバー13の取付部38(その下面38a)との間に、所定の隙間L5(L4−L3)が形成されるように構成されている。さらに、この隙間L5は、シール溝27内における固定用突条39との隙間L6と同じか又はこれよりも小さくなるように、つまり当該隙間L6との間において「L5≦L6」の関係が成立するように設定されている(図10、図11参照)。なお、前記係止突起41bについては、前記係止溝37bと共にその断面がほぼ矩形状となるように形成されていてもよく、前記係止溝37bとの間で係合可能な関係を有する形状であれば、その形状は特に限定されるものではない。
【0040】
このような構成から、カバー13は、図8に示すように、固定用突条39が予めシール溝27に充填された接着剤30中へ進入することで、シール溝27内の接着剤30が前記隙間L5内へと押し出されて、当該シール溝27近傍におけるケース12の取付面26とカバー13の取付部38下面38aとの間に接着剤30の一部が充填されるようになっている。
【0041】
ここで、前記隙間L5については、図10に通常に設定した場合を、図11に最小に設定した場合をそれぞれ現しているが、当該図示の間隔に限定されるものではなく、ケース12の取付面26とカバー13の取付部38の下面38aとの間に接着剤30が流入可能な程度の間隔を有していれば、前記「L5≦L6」となる範囲内で任意に設定可能である。なお、前記隙間L5の上限値をL6に設定した根拠については、当該隙間L5がL6よりも大きくなった場合には、後述する接着剤30への加圧作用が十分に得られず、シール溝27及び固定用突条39と接着剤30との十分な圧接が図れない可能性があり、これによって、ケース12とカバー13の良好な接着性が確保できないおそれがあるからである。
【0042】
さらに、前記第1位置決め固定片41には、図9に示すように、その基端側に有する折曲部41dの外側に、いわゆる面取りにより形成された円弧状隅部41cが構成されている。かかる構成とすることで、ケース12にカバー13を組み付ける際に、前記円弧状隅部41cが前記固定壁37のテーパ面37c上を滑降することによって、その対角に設けられる第1位置決め固定片43と共に、カバー13の水平方向位置をケース12の中央側へと導く(ガイドする)、当該カバー13のいわゆるセンタリングを行うことが可能となっている。なお、この際に、前記折曲部41dの外側に前記円弧状隅部41cを設けたことで、当該折曲部41dとテーパ面37cとの滑らかな接触が得られ、これによって、カバー13の円滑なセンタリングに供される。
【0043】
また、前記カバー13にて第1、第2側壁13b,13cに隣接する取付部38の側部には、前記第1、第2ブラケット28,29の係合溝28b,29bに対応する第1、第2係合突起46a,46bが、それぞれ当該取付部38の厚さ幅方向に沿って突設されている。これにより、前述のようなカバー13の誤組み付け防止が図れる。
【0044】
さらに、前記カバー13には、図1、図3に示すように、その天井壁13aに、ほぼ円形の呼吸孔47が貫通形成されており、この呼吸孔47の外側開口端部には、当該カバー13とケース12とによって構成される筐体CSの内外圧力差の調整に供する呼吸フィルタ48が配設されている。なお、前記呼吸孔47の外周縁部には、いわゆる堰塞壁49が全周に亘って立設されることで、前記筐体CS内への水の侵入が抑制可能となっている。
【0045】
次に、以上のように構成された電子制御装置10の組立について説明すれば、まず、図3に示すように、ケース12の前記各放熱用台座23a,23b上に前記各放熱シート24a,24bを貼着して、回路基板11にコネクタ15をビス20によって取付固定した後、この回路基板11を、コネクタ15の前記各接続口16〜18を窓部21に挿通させつつケース12の基板固定部22の支持面22a上に載置して、図外のビスをもってケース12に固定する。
【0046】
そして、この回路基板11が取り付けられたケース12のシール溝27内に接着剤30を充填した後、当該ケース12にカバー13を被嵌する。具体的には、カバー13の前記各係合突起46a,46bがケース12の前記各係合溝28b,29bと係合可能となるようにカバー13の向きを調整し、当該両者12,13の四隅を合わせるように、つまりカバー13の前記各位置決め固定片41〜44の下端部外側をケース12の前記各位置決め固定壁31〜34の上端部内側に当接させるかたちで、カバー13を前記取付部38側からケース12上に載置する。
【0047】
すると、前記カバー13は、図9にて仮想線で示すように、前記各位置決め固定片41〜44の円弧状隅部41c…が前記各位置決め固定壁31〜34のテーパ面37c…上を滑降することで、ケース12の中央側へと自動的に案内され、ケース12に対しカバー13をセンタリングすることができる。続いて、このセンタリングが完了した状態でカバー13を下方へ押し込むことにより、図9にて実線で示すように、前記各位置決め固定片41〜44と前記各位置決め固定壁31〜34との係合構造をもって、ケース12に対するカバー13の水平方向についての位置決めがなされる。これにより、カバー13側の固定用突条39の先端がシール溝27の幅方向中央付近に臨むことになる。
【0048】
そして、この位置決めされた状態で、カバー13をさらに下方へ押し込むことによって、図8にて仮想線で示すように、前記各位置決め固定片41〜44の係止突起41b…が前記各位置決め固定壁31〜34の内側面37a…により押し退けられ、当該各位置決め固定片41〜44が内側へ弾性変形した状態で前記各係止突起41b…が前記各内側面37a…を摺動することとなって、前記各係止溝37b…の位置に到達したところで、図8にて実線で示すように、前記弾性変形に基づく復元力をもって当該各係止突起41b…がそれぞれ前記各係止溝37b…内に嵌合し係止することとなる。すると、かかる係止構造によって、ケース12に対するカバー13の鉛直方向の移動が規制されて、当該カバー13がケース12に固定される。
【0049】
ここで、本実施形態では、前記カバー13を樹脂製としているため、成形時にいわゆる反り変形を生じてしまう可能性があるが、前記ケース12の取付面26とカバー13の取付部38下面38aとの間に前記隙間L5を設けることで、カバー13に前記反り変形が生じて当該カバー13の取付部38が下方へ膨出してしまったとしても、これを前記隙間L5によって吸収することができ、これによって、前記各係止溝37bと前記各係止突起41bとによる前記係止固定を良好に行うことが可能となっている。換言すれば、前記隙間L5がないとすると、カバー13に前記反り変形が生じてしまっている場合には、前述のようにして下方へ膨出したカバー13の取付部38がケース12の取付面26と干渉して前記係止固定が適切に行われない可能性があるが、本実施形態では、かかる不都合を回避することができる。
【0050】
また、前述のケース12に対するカバー13の押し込みに伴い、当該カバー13の固定用突条39がシール溝27内の接着剤30の中へと進入し、前記各係止突起41b…が前記各係止溝37b…に係止することで、当該固定用突条39が接着剤30中に浸漬した状態のまま保持されることとなる。
【0051】
この際、本実施形態では、前記「L1≦L2」の関係から、前記カバー13の位置決め以後に固定用突条39がシール溝27内の接着剤30中へ進入する構成となっているため、当該固定用突条39は、前記カバー13の位置決めによって、シール溝27の内壁から前記隙間L6を確保した状態で、この接着剤30表面(シール溝27の開口面)に対してほぼ垂直に進入することとなる。これによって、当該固定用突条39の接着剤30中への進入時に、この固定用突条39が接着剤30を掻き出してしまうといった不具合の発生を抑制することに供される。
【0052】
また、本実施形態では、前記「L3<L4」の関係から、ケース12の取付面26とカバー13の取付部38の下面38aとの間に所定の前記隙間L5が設けられると共に、当該隙間L5が前記「L5≦L6」の条件を満たすように構成されていることから、固定用突条39が接着剤30の中へ進入することによって押し出された接着剤30の一部が隙間L6に対し比較的小さな隙間L5内へと押し込まれることによって、当該シール溝27内における接着剤30に圧力が作用することとなる(以下、「接着剤30への加圧作用」という。)。すると、これにより、接着剤30がシール溝27の内面及び固定用突条39の外面に圧接することとなって当該シール溝27及び固定用突条39と接着剤30との密着性が高められることから、この結果、当該シール溝27及び固定用突条39に対する接着剤30の塗れ馴染み性が向上することとなる。
【0053】
さらには、前記隙間L5を設けたことで、前述のようにケース12とカバー13の係止固定(仮固定)を良好に行えることから、当該両者12,13と接着剤30との間における適切な密着が図れ、これによって、接着剤30による良好なシール性(防水性)の確保にも供される。
【0054】
このようにして、前記ケース12にカバー13が仮固定された後、前記係止構造をもって固定用突条39が接着剤30中に進入した状態のまま保持されることで、所定時間の経過後に接着剤30が硬化し、ケース12とカバー13とが完全に固定されることとなり、これをもって、前記電子制御装置10の組立が完了する。
【0055】
以上のように、本実施形態に係る電子制御装置10によれば、ケース12に少なくとも一対の前記各位置決め固定壁31〜34を立設すると共に、カバー13に、前記各位置決め固定壁31〜34に係合可能な前記各位置決め固定片41〜44を設けることとして、これらを前記「L1≦L2」の条件を満たすように構成したことで、ケース12に対するカバー13の位置決めを行いつつ固定用突条39をシール溝27内の接着剤30中へ進入させるようにしたため、当該固定用突条39を、適切な幅方向位置において、接着剤30表面(シール溝27の開口面)に対しほぼ真っ直ぐに進入させることができる。これにより、ケース12とカバー13との接合(組立)時において、固定用突条39が接着剤30中へと進入したときに、当該固定用突条39が接着剤30を掻き出してしまうといった不具合の発生が抑制され、装置10についての容易かつ適切な組立が図れる。
【0056】
さらに、前記位置決め構造を採用するにあたり、前記各位置決め固定壁31〜34の上端部内側に前記各テーパ面37c…を設けたことから、該各テーパ面37c…によって、カバー13をケース12の中央側に誘導することが可能となる。これにより、前記各位置決め固定壁31〜34による当該カバー13の位置決めを容易に行うことができ、装置10の組立作業性を向上させることにも供される。
【0057】
しかも、従来では、複数のビスを用いてケース12とカバー13とを仮固定していたところ、本実施形態では、ケース12の少なくとも一対の前記各位置決め固定壁31〜34に前記各係止溝37b…を設けると共に、カバー13の前記各位置決め固定片41〜44に、前記各係止溝37b…に係止可能な前記各係止突起41b…を設けることとして、樹脂材料からなるカバー13の弾性を利用したいわゆるスナップフィット構造をもってケース12とカバー13を係止固定可能に構成したことから、当該両者12,13の仮固定を容易に行うことができる。これにより、装置10の組立作業性のさらなる向上が図れると共に、従来のように複数のビスを使用することがない分、装置10の軽量化にも貢献できる。
【0058】
さらには、かかる従来のビス止めを廃止することにより、特にケース12側のねじ穴の加工も不要になるため、当該加工工数の低減化による生産性の向上及びコスト低減も図れる。
【0059】
そして、前記スナップフィット構造を採用するにあたり、本実施形態では、前記「L3<L4」の関係から、ケース12の取付面26とカバー13の取付部38の下面38aとの間に所定の前記隙間L5を設けると共に、当該隙間L5が前記「L5≦L6」の条件を満たすように構成したことから、固定用突条39をシール溝27内の接着剤30中へ進入させたときに生ずる当該隙間L5による前記接着剤30への加圧作用によって、ケース12とカバー13の間における当該接着剤30の塗れ馴染み性の向上が図れる。これによって、ケース12とカバー13を強固に接着できると共に、当該両者12,13間における高いシール性を確保することができ、この結果、装置10の耐久性の向上にも供される。
【0060】
また、本実施形態では、回路基板11を収容固定するケース12を金属材料によって形成すると共に、回路基板11の被覆に供するカバー13を樹脂材料によって形成することとしたため、筐体CS全体を金属材料によって形成していた従来に比べ、当該筐体CSに係る重量の低減化に供され、装置10の軽量化を図ることができる。そして、この構成を採用するにあたり、コネクタ15を外部へ臨ませるための窓部21や、発熱性の高い各電子部品14a,14bの放熱に供する前記各放熱用台座23a,23bを、剛性が高く放熱性に優れた金属材料からなるケース12に集約して配置するようにしたため、装置10としての十分な剛性及び放熱性を確保することができる。
【0061】
なお、前記筐体CS内の圧力調整に供する呼吸孔47については、樹脂材料からなるカバー13に設けることとしたが、当該呼吸孔47は前記窓部21等に比べて十分に小さい開口部であることから、当該カバー13の剛性を極端に低下させるおそれもない。そればかりか、この呼吸孔47の周縁部には水分が作用することから、当該呼吸孔47を金属材料からなるケース12側ではなく樹脂材料からなるカバー13側に配置することにより、当該呼吸孔47の腐食のおそれもなく、装置10の耐久性のさらなる向上にも供される。
【0062】
しかも、樹脂材料によって形成したカバー13については、単なる蓋形状とするのではなく、前記天井壁13aとその周縁部に立設した前記各側壁13b〜13eとによって構成されるいわゆる箱形状としたことで、カバー13自体の剛性の向上が図れ、当該カバー13の熱影響による反り変形についても抑制することができる。したがって、かかる観点からも、装置10の耐久性のさらなる向上に寄与することができる。
【0063】
本発明は前記実施形態の構成に限定されるものではなく、例えばケース12及びカバー13の双方を金属材料によって構成し、従来と同様に、両者12,13を複数のビスを用いて仮固定を行う場合であっても、前記実施形態に係る位置決め効果を得ることは可能である。
【0064】
また、前記実施形態のごとくケース12及びカバー13の一方を樹脂材料によって形成する場合であっても、例えば回路基板11をカバー13に取付固定して、このカバー13に窓部21や前記各放熱用台座23a,23bを設けることとして、図12に示すように、当該カバー13を金属材料によって形成し、ケース12を樹脂材料によって形成することとしてもよい。換言すれば、前述のように、ケース12及びカバー13の一方を樹脂材料によって形成する場合、前記窓部21及び前記各放熱用台座23a,23bが設けられた、回路基板11の固定対象となる部材が金属材料で形成されていれば、それがケース12であるかカバー13であるかは問わない。
【0065】
また、前記各位置決め固定壁31〜34については、前記実施形態においてケース12の四隅に配置する構成となっているが、これらの各位置決め固定壁31〜34は、第1位置決め固定壁31と第3位置決め固定壁33、第2位置決め固定壁32と第4位置決め固定壁34、といった対角に向き合う各壁同士が対になって機能するものであって、2対あれば安定性が向上する点で有利ではあるものの、少なくとも一対あれば前記位置決め作用を得ることができる。よって、必ずしも前記各隅部に設ける必要はなく、例えば電子制御装置10の仕様や搭載される自動車の仕様等に応じて自由に変更することができる。
【0066】
さらに、これら一対の前記各位置決め固定壁31〜34は、前記実施形態のように必ずしもケース12の隅部に設けられている必要はなく、例えば図13、図14に示すように、当該各位置決め固定壁31〜34をケース12の前記各側壁12b〜12eに設け、これに合わせて、カバー13の前記各側壁13b〜13eに一対の前記各位置決め固定片41〜44を設けることとしてもよい。換言すれば、前記各位置決め固定壁31〜34と前記各位置決め固定片41〜44とによって構成される係止手段は、その位置についても、電子制御装置10の仕様ないし搭載される自動車の仕様等に応じて自由に変更可能である。
【0067】
また、本実施形態では、前記各放熱フィン23a,23bを、前記底壁12aの長手方向、つまり前記各放熱用台座23a,23bの短辺方向に沿って設けることとしたが、図15に示すように、前記各放熱用台座23a,23bの長辺方向に沿って設けることも可能である。すなわち、前記各放熱フィン25a,25bの向きや大きさ等は、前記各電子部品14a,14bの発熱量等、電子制御装置10の仕様ないし搭載される自動車の仕様等に応じて任意に選択することができ、当該実施形態の構成に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0068】
11…回路基板
12…ケース(第1部材)
13…カバー(第2部材)
26…取付面(第1部材の接合面)
27…シール溝
30…接着剤(シール材)
31〜34…第1〜第4位置決め固定壁(位置決め手段)
38a…取付部の下面(第2部材の接合面)
39…固定用突条(突条)
CS…筐体
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車に搭載され、エンジンやブレーキ等の制御に供する電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子制御装置としては、例えば以下の特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
概略を説明すれば、この電子制御装置では、ケースの接合面における対角の隅部に一対の位置決め用突起が突設されていて、当該一対の位置決め用突起にカバーの接合面に設けた位置決め用切欠部を係合させることによって、ケースに対するカバーの位置決めを行うことで、装置の組立性の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−57345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、エンジンルーム内に配置されるなど、水分に晒されるおそれのある電子制御装置では、ケース接合面に設けたシール溝にシール材を充填し、このシール材が充填されたシール溝にカバー接合面に設けた突条を係合させることによってケースとカバーとの間にシール材を介在させ、これによって、筐体内への水分の侵入を抑制するようになっている。
【0006】
しかしながら、前記従来の電子制御装置に係る位置決めは、前記突条を前記シール溝内に係合させることについて何ら考慮されていないため、前記突条を前記係合溝に係合させる際に、当該突条によって前記シール溝内のシール材を掻き出してしまうおそれがあり、これによって、十分な防水が図れないという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる技術的課題に鑑みて案出されたものであり、カバー接合面の突条をケース接合面のシール溝内に適切に係合させ得る電子制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、その接合面にシール溝を有する第1部材と、その接合面に前記シール溝に係合する突条を有する第2部材とを、前記シール溝内に充填されたシール材を介して接合することにより構成された筺体内に回路基板を収容してなる電子制御装置において、前記突条が前記シール溝内に充填されたシール材に接触する以前に前記第1部材と前記第2部材の位置決めを行う位置決め手段を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本願発明によれば、前記位置決め手段を設けたことにより、第1部材と第2部材を位置決めした状態で突条をシール溝内に進入させることができる。これによって、装置の組立時において、突条をシール溝内に適切に進入させることが可能となり、その結果、当該突条がシール溝内の接着剤を掻き出してしまうといった不具合の抑制が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る電子制御装置を表側から見た斜視図である。
【図2】本発明に係る電子制御装置を裏側から見た斜視図である。
【図3】図1に示す電子制御装置の分解斜視図である。
【図4】図2に示す電子制御装置の分解斜視図である。
【図5】図1のA−A線断面図である。
【図6】図1のB−B線断面図である。
【図7】図5の要部拡大図である。
【図8】図1のC−C線断面図である。
【図9】位置決め固定片が位置決め固定壁により位置決めされた状態を現す図8に相当する断面図である。
【図10】図8におけるケースとカバーとの間の通常のクリアランスを示す断面図である。
【図11】図8におけるケースとカバーとの間の最小のクリアランスを示す断面図である。
【図12】本発明の他の実施形態を現した図8に相当する断面図である。
【図13】ケースとカバーの仮固定構造の他の実施形態を現した図3に相当する分解斜視図である。
【図14】ケースとカバーの仮固定構造の他の実施形態を現した図9に相当する図13のD−D線断面図である。
【図15】放熱フィンの他の実施形態を現した図2に相当する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る電子制御装置の実施形態を図面に基づいて詳述する。なお、以下に示す実施形態では、この電子制御装置を自動車のエンジン制御に適用したものを示している。
【0012】
すなわち、本実施形態に係る電子制御装置10は、図1〜図4に示すように、その表裏面に所定の電子部品14が実装される回路基板11と、この回路基板11が収容固定される金属製のケース12(本発明に係る第1部材に相当)と、前記回路基板11を覆うように前記ケース12の上方から被嵌して当該ケース12と共に本発明に係る筐体を構成するカバー13(本発明に係る第2部材に相当)と、から主として構成され、車両のエンジンルーム等に搭載される。
【0013】
前記回路基板11は、図3、図4に示すように、いわゆるプリント配線基板であり、例えばガラスエポキシ樹脂等からなる板材の表裏面あるいはその内部に配線回路パターン(図示外)が形成され、この配線回路パターンに前記電子部品14が半田等により電気的に接続されている。
【0014】
ここで、前記電子部品14としては、例えばコンデンサやコイル、トランジスタやIC等が用いられる。なお、当該電子部品14を現した図3、図4、図6では、便宜上、これらの電子部品14のうち、比較的発熱性の高い電子部品14a,14b(例えばMOS−FETやIC等)のみを図示している。
【0015】
また、前記回路基板11には、ケース12に対する取付面となる裏面11bに、外部のコネクタ(図示外)とそれぞれ接続される3つの第1〜第3接続口16〜18を有するコネクタ15が取り付けられている。このコネクタ15は、その接続先に応じて3つに分割された前記各接続口16〜18がベースとなる取付基部19を介して一体化されたものであって、この取付基部19を介して回路基板11に複数のビス20により固定されている。そして、このコネクタ15は、図2、図4に示すように、前記取付基部19によって連結された一連の接続口16〜18が、ケース12の底壁12aに開口形成された後記の窓部21を介して外部へと臨むようになっていて、ケース12の外部にて前記図外のコネクタと接続される。
【0016】
なお、前記各接続口16〜18には、図2に示すように、それぞれ前記図外の配線回路パターンに電気的に接続された複数の雄型端子16a〜18aが収容されており、これらの雄型端子16a〜18aが前記図外のコネクタに収容される複数の雌型端子と接続されることで、当該図外のコネクタ(雌型端子)に接続されるセンサー類やポンプ等の所定の機器と電気的に接続されることとなる。
【0017】
前記ケース12は、図3、図4に示すように、鉄やアルミニウム等の放熱性に優れた金属材料によっていわゆる箱状に一体形成されたものであって、具体的には、ほぼ矩形状の底壁12aの外周縁(各側辺)に第1〜第4側壁12b〜12eが立設され、全体が上方へ開口するように構成されている。そして、このケース12の底壁12aには、コネクタ15の前記各接続口16〜18を当該ケース12の外部へと臨ませる窓部21が貫通形成されていて、この窓部21に前記各接続口16〜18が嵌挿されることにより、これら各接続口16〜18が当該ケース12の外部へ突出するようになっている。
【0018】
また、前記ケース12の底壁12aの内側面には、図3に示すように、回路基板11の取付固定に供する複数の基板固定部22が立設されている。これら基板固定部22は、その上端部に、それぞれ回路基板11を支持する平坦状の支持面22aが構成されていて、これら各支持面22aには、回路基板11の固定に供する図外のビスが螺合する雌ねじ穴22bが形成されている。かかる構成から、回路基板11の外周縁部に複数設けられたビス挿通孔11cに挿通する前記図外のビスが前記各雌ねじ穴22bに螺着されることによって、回路基板11が前記各基板固定部22に支持された状態でケース12に固定されることとなる。
【0019】
さらに、前記ケース12の底壁12aの内側面には、回路基板11において電子部品14(特に発熱性の高い電子部品14a,14b)から発生した熱の放熱に供する一対の第1、第2放熱用台座23a,23bが突設されている。これら第1、第2放熱用台座23a,23bは、図6に示すように、回路基板11の組み付け状態において、この回路基板11の裏面11bのうち、その反対側(表面11a)に前記各電子部品14a,14bが実装される所定領域と対向するように配置されていて、当該所定領域が、それぞれ周知の第1、第2放熱シート24a,24bを介して当該各放熱用台座23a,23b上に当接配置されるようになっている。ここで、前記各放熱シート24a,24bは、例えば放熱グリス等でもよく、いわゆる熱伝導材であれば、シート状のものに限定されるものではない。
【0020】
一方、前記第1、第2放熱用台座23a,23bが設けられる底壁12aの外側面には、放熱の促進に供する第1、第2放熱フィン25a,25bが設けられている。これによって、前記各放熱用台座23a,23bが受熱した熱が効率よく放熱され、冷却効果を高めることが可能となっている。なお、本実施形態では、前記各放熱フィン25a,25bは、前記底壁12aの長手方向、つまり前記各放熱用台座23a,23bの短辺方向に沿うようにして設けられている(図2、図4参照)。
【0021】
また、前記ケース12には、図3、図7に示すように、前記各側壁12b〜12eの上端に、カバー13の取付に供するほぼ平坦状の一連の取付面26が周方向に亘って構成され、この取付面26には、当該ケース12とカバー13の固定に供する接着剤30(本発明に係るシール材に相当)が充填される一連のシール溝27が全周に亘って切欠形成されている。すなわち、このシール溝27には、前記接着剤30が充填された状態でカバー13に設けられる後記の固定用突条39が挿入されるようになっていて、主として当該シール溝27と前記固定用突条39とが接着剤30を介して接着されることで、ケース12とカバー13とが固定されることとなる(図8参照)。
【0022】
ここで、前記接着剤30については、流動性を有するシール材であれば特に具体的な構成は限定されるものではなく、例えばエポキシ系やシリコーン系、アクリル系等、電子制御装置10の仕様に応じて自由に選択することができる。また、かかる接着剤30は、シール溝27一杯に充填されている必要はなく、後述するように、固定用突条39がシール溝27内へ進入した際に後記の隙間L5内へと押し出されるに足りる量が充填されていればよい。
【0023】
また、前記ケース12における第1、第3側壁12b,12dの外側部には、図1〜図4に示すように、電子制御装置10の車体(図示外)への取付に供する一対の第1、第2ブラケット28,29が一体に設けられている。そして、第1ブラケット28には、上下方向に貫通する貫通孔28aが設けられる一方で、第2ブラケット29には、側方に開口する切欠溝29aが設けられていて、これら貫通孔28a及び切欠溝29aをもって前記車体への取付が行われる。
【0024】
さらに、前記第1、第2ブラケット28,29には、図3、図5に示すように、カバー13に設けられる後記の係合突起46a,46bと係合可能に構成された第1、第2係合溝28b,29bが切欠形成されている。ここで、これら各切欠溝28b,29bは、それぞれ対応する前記各係合突起46a,46bのみが係合可能となるように構成されている。つまり、例えば第2係合突起46bを第1切欠溝28bには係合することができないように構成されており、これによって、ケース12とカバー13の誤組み付けの防止が図られている。
【0025】
また、前記ケース12には、図3、図7に示すように、前記各側壁12b〜12eによって構成される各隅部(四隅)に、当該ケース12に対するカバー13の水平方向(水平回転方向を含む)の位置決めに供する第1〜第4位置決め固定壁31〜34(本発明に係る位置決め固定手段に相当)が立設され、前記各側壁12b〜12eと一体に構成されている。なお、これらの位置決め固定壁31〜34はいずれも同形状に構成されていることから、その構成については、便宜上、図7〜図9の図示に基づいて、第1位置決め固定壁31についてのみ、以下に説明する。
【0026】
すなわち、前記第1位置決め固定壁31は、図7に示すように、第1側壁12bに沿って構成される第1位置決め壁35と、第4側壁12eに沿って構成される第2位置決め壁36と、前記両位置決め壁35,36を繋ぐように構成され、ケース12に対するカバー13の固定に供する固定壁37と、を有し、これらが一体に形成されている。
【0027】
前記第1位置決め壁35は、カバー13に設けられる後記の第1位置決め固定片41の第1係合溝45aと係合することで、その対角に位置する第3位置決め固定壁33の第1位置決め壁33aと共に、主として、カバー13の長辺方向(図1中のX軸方向)の移動を規制する(図1参照)。
【0028】
前記第2位置決め壁36は、カバー13に設けられる後記の第1位置決め固定片41の第2係合溝45bと係合することで、その対角に位置する第3位置決め固定壁33の第2位置決め壁33bと共に、主として、カバー13の短辺方向(図1中のY軸方向)の移動を規制する(図1参照)。
【0029】
前記固定壁37は、図7〜図9に示すように、その内側面37aがカバー13に設けられる後記の第1位置決め固定片41の外側面41aと当接することによって、その対角に位置する第3位置決め固定壁33の固定壁33cと共に、主として、カバー13の対角線方向の移動規制に供する(図1参照)。
【0030】
また、前記固定壁37の内側面37aには、その高さ方向における所定の位置に、後記の第1位置決め固定片41に設けられる係止突起41bに係止可能に構成された係止溝37b(本発明に係る係止部に相当)が穿設されている。そして、かかる係止溝37bに前記係止突起41bが係止することで、ケース12に対するカバー13の鉛直方向(図1中のZ軸方向)の移動が規制され、その対角に位置する第3位置決め固定壁33の固定壁33cと共にカバー13の鉛直方向の移動を規制する(図1参照)。
【0031】
さらに、前記固定壁37には、その内側上端部には、前記内側面37a側へ下り傾斜状となるテーパ面37cが設けられている。なお、本実施形態では、このテーパ面37cを平滑に形成することとしたが、必ずしも平滑である必要はなく、例えば断面が外方へ凸円弧状となるように形成することも可能である。
【0032】
前記カバー13は、図3、図4に示すように、金属材料に比べて軽量な所定の樹脂材料によってケース12と同様のいわゆる箱状に一体成形されたものであり、ほぼ矩形状の天井壁13aの外周縁(各側辺)に第1〜第4側壁13b〜13eが設けられ、全体が下方へと開口するように構成されていて、ケース12内に収容固定された回路基板11を覆うように被嵌されることによって、当該ケース12に組み付けられる。
【0033】
そして、このカバー13は、図3、図7に示すように、第1〜第4側壁13b〜13eの各先端部に、ケース12の前記取付面26と対向する一連の取付部38が側方へ鍔状に突設されると共に、図4、図8に示すように、この取付部38の下面38a(取付面26との対向面)に、ほぼ環状に構成された一連の固定用突条39(本発明に係る突状に相当)が全周に亘って突出形成されていて、この固定用突条39がケース12の前記シール溝27に係合するかたちで接着剤30を介してケース12に固定されている。
【0034】
この固定用突条39は、図8、図9に示すように、その厚さ幅W1がシール溝27の溝幅W2に比べて十分に小さく設定され、このシール溝27との間に所定の隙間L6が確保されるようになっていて、当該隙間L6をもって十分な量の接着剤30を介在させることが可能となっている。また、この固定用突条39は、その突出量L1についてもシール溝27の溝深さD1に比べて十分に小さく設定され、このシール溝27内において、接着剤30を切断してしまうことがないように構成されている。すなわち、固定用突条39の突出量L1は、当該固定用突条39の先端がシール溝27の底部に当接することがないように設定され、固定用突条39の先端とシール溝27の底部との間に十分な量の接着剤を介在させることが可能となっている。
【0035】
さらに、この固定用突条39の突出量L1については、前記固定壁37におけるテーパ面37cの下端縁から取付面26までの距離(前記内側面37aの高さ幅)L2と同じか又はこれよりも小さくなるように、つまり当該内側面37aの高さ幅L2との間で「L1≦L2」の関係が成立するように設定されている。そして、このような構成から、カバー13は、固定用突条39がシール溝27に充填された接着剤30中に進入するのとほぼ同時又は進入するよりも前に、例えば後記の第1、第3位置決め固定片41,43を介して第1、第3位置決め固定壁31,33をもって、その水平方向の位置決めが行われることとなる。
【0036】
また、前記カバーの取付部38には、図3、図7に示すように、その四隅に、ケース12の第1〜第4位置決め固定壁31〜34にそれぞれ対向する第1〜第4位置決め固定片41〜44が延設され、当該カバー13と一体に構成されている。なお、これらの位置決め固定片41〜44は、前記各位置決め固定壁31〜34と同様に、いずれも同形状に構成されるていことから、その構成については、便宜上、図7〜図9の図示に基づいて、第1位置決め固定片41についてのみ、以下に説明する。
【0037】
すなわち、前記第1位置決め固定片41は、図7に示すように、前記取付面26に対してほぼ直角に折れ曲がるように立設され、その外側面41aが第1位置決め固定壁31に係る固定壁37の内側面37aと対向し、相互に面接触するような構成となっている。さらに、この第1位置決め固定片41の両側部には、第1、第2位置決め壁35,36にそれぞれ係合可能な第1、第2係合溝45a,45bが切欠形成されており、該各係合溝45a,45bが前記各位置決め壁35,36と係合することで、その対角に位置する第3位置決め固定片43と共にカバー13の水平方向の移動を規制し、これによって、ケース12に対するカバー13の位置決めが行えるようになっている。
【0038】
また、前記第1位置決め固定片41の外側面41aには、前記固定壁37の係止溝37bに係止可能に構成された係止突起41bが突出形成されている。そして、この係止突起41bは、図8、図9に示すように、前記係止溝37bに嵌入され当該係止溝37bに係止することで、その対角に位置する第3位置決め固定片43と共にカバー13の鉛直方向の移動を規制し、これによって、ケース12に対してカバー13を固定(仮固定)することが可能となっている。
【0039】
ここで、前記係止突起41bは、断面がほぼ円弧状となるように形成されると共に、その中心から取付部38の下面38aまでの距離L3(以下、「係止突起41bのオフセット量」という。)が、前記固定壁37における係止溝37bの中心から取付面26までの距離L4(以下、「係止溝37bのオフセット量」という。)よりも小さくなるように、つまり当該係止溝37bのオフセット量L4との間において「L3<L4」の関係が成立するように設定され、ケース12とカバー13を組み付けた状態において、ケース12の取付面26とカバー13の取付部38(その下面38a)との間に、所定の隙間L5(L4−L3)が形成されるように構成されている。さらに、この隙間L5は、シール溝27内における固定用突条39との隙間L6と同じか又はこれよりも小さくなるように、つまり当該隙間L6との間において「L5≦L6」の関係が成立するように設定されている(図10、図11参照)。なお、前記係止突起41bについては、前記係止溝37bと共にその断面がほぼ矩形状となるように形成されていてもよく、前記係止溝37bとの間で係合可能な関係を有する形状であれば、その形状は特に限定されるものではない。
【0040】
このような構成から、カバー13は、図8に示すように、固定用突条39が予めシール溝27に充填された接着剤30中へ進入することで、シール溝27内の接着剤30が前記隙間L5内へと押し出されて、当該シール溝27近傍におけるケース12の取付面26とカバー13の取付部38下面38aとの間に接着剤30の一部が充填されるようになっている。
【0041】
ここで、前記隙間L5については、図10に通常に設定した場合を、図11に最小に設定した場合をそれぞれ現しているが、当該図示の間隔に限定されるものではなく、ケース12の取付面26とカバー13の取付部38の下面38aとの間に接着剤30が流入可能な程度の間隔を有していれば、前記「L5≦L6」となる範囲内で任意に設定可能である。なお、前記隙間L5の上限値をL6に設定した根拠については、当該隙間L5がL6よりも大きくなった場合には、後述する接着剤30への加圧作用が十分に得られず、シール溝27及び固定用突条39と接着剤30との十分な圧接が図れない可能性があり、これによって、ケース12とカバー13の良好な接着性が確保できないおそれがあるからである。
【0042】
さらに、前記第1位置決め固定片41には、図9に示すように、その基端側に有する折曲部41dの外側に、いわゆる面取りにより形成された円弧状隅部41cが構成されている。かかる構成とすることで、ケース12にカバー13を組み付ける際に、前記円弧状隅部41cが前記固定壁37のテーパ面37c上を滑降することによって、その対角に設けられる第1位置決め固定片43と共に、カバー13の水平方向位置をケース12の中央側へと導く(ガイドする)、当該カバー13のいわゆるセンタリングを行うことが可能となっている。なお、この際に、前記折曲部41dの外側に前記円弧状隅部41cを設けたことで、当該折曲部41dとテーパ面37cとの滑らかな接触が得られ、これによって、カバー13の円滑なセンタリングに供される。
【0043】
また、前記カバー13にて第1、第2側壁13b,13cに隣接する取付部38の側部には、前記第1、第2ブラケット28,29の係合溝28b,29bに対応する第1、第2係合突起46a,46bが、それぞれ当該取付部38の厚さ幅方向に沿って突設されている。これにより、前述のようなカバー13の誤組み付け防止が図れる。
【0044】
さらに、前記カバー13には、図1、図3に示すように、その天井壁13aに、ほぼ円形の呼吸孔47が貫通形成されており、この呼吸孔47の外側開口端部には、当該カバー13とケース12とによって構成される筐体CSの内外圧力差の調整に供する呼吸フィルタ48が配設されている。なお、前記呼吸孔47の外周縁部には、いわゆる堰塞壁49が全周に亘って立設されることで、前記筐体CS内への水の侵入が抑制可能となっている。
【0045】
次に、以上のように構成された電子制御装置10の組立について説明すれば、まず、図3に示すように、ケース12の前記各放熱用台座23a,23b上に前記各放熱シート24a,24bを貼着して、回路基板11にコネクタ15をビス20によって取付固定した後、この回路基板11を、コネクタ15の前記各接続口16〜18を窓部21に挿通させつつケース12の基板固定部22の支持面22a上に載置して、図外のビスをもってケース12に固定する。
【0046】
そして、この回路基板11が取り付けられたケース12のシール溝27内に接着剤30を充填した後、当該ケース12にカバー13を被嵌する。具体的には、カバー13の前記各係合突起46a,46bがケース12の前記各係合溝28b,29bと係合可能となるようにカバー13の向きを調整し、当該両者12,13の四隅を合わせるように、つまりカバー13の前記各位置決め固定片41〜44の下端部外側をケース12の前記各位置決め固定壁31〜34の上端部内側に当接させるかたちで、カバー13を前記取付部38側からケース12上に載置する。
【0047】
すると、前記カバー13は、図9にて仮想線で示すように、前記各位置決め固定片41〜44の円弧状隅部41c…が前記各位置決め固定壁31〜34のテーパ面37c…上を滑降することで、ケース12の中央側へと自動的に案内され、ケース12に対しカバー13をセンタリングすることができる。続いて、このセンタリングが完了した状態でカバー13を下方へ押し込むことにより、図9にて実線で示すように、前記各位置決め固定片41〜44と前記各位置決め固定壁31〜34との係合構造をもって、ケース12に対するカバー13の水平方向についての位置決めがなされる。これにより、カバー13側の固定用突条39の先端がシール溝27の幅方向中央付近に臨むことになる。
【0048】
そして、この位置決めされた状態で、カバー13をさらに下方へ押し込むことによって、図8にて仮想線で示すように、前記各位置決め固定片41〜44の係止突起41b…が前記各位置決め固定壁31〜34の内側面37a…により押し退けられ、当該各位置決め固定片41〜44が内側へ弾性変形した状態で前記各係止突起41b…が前記各内側面37a…を摺動することとなって、前記各係止溝37b…の位置に到達したところで、図8にて実線で示すように、前記弾性変形に基づく復元力をもって当該各係止突起41b…がそれぞれ前記各係止溝37b…内に嵌合し係止することとなる。すると、かかる係止構造によって、ケース12に対するカバー13の鉛直方向の移動が規制されて、当該カバー13がケース12に固定される。
【0049】
ここで、本実施形態では、前記カバー13を樹脂製としているため、成形時にいわゆる反り変形を生じてしまう可能性があるが、前記ケース12の取付面26とカバー13の取付部38下面38aとの間に前記隙間L5を設けることで、カバー13に前記反り変形が生じて当該カバー13の取付部38が下方へ膨出してしまったとしても、これを前記隙間L5によって吸収することができ、これによって、前記各係止溝37bと前記各係止突起41bとによる前記係止固定を良好に行うことが可能となっている。換言すれば、前記隙間L5がないとすると、カバー13に前記反り変形が生じてしまっている場合には、前述のようにして下方へ膨出したカバー13の取付部38がケース12の取付面26と干渉して前記係止固定が適切に行われない可能性があるが、本実施形態では、かかる不都合を回避することができる。
【0050】
また、前述のケース12に対するカバー13の押し込みに伴い、当該カバー13の固定用突条39がシール溝27内の接着剤30の中へと進入し、前記各係止突起41b…が前記各係止溝37b…に係止することで、当該固定用突条39が接着剤30中に浸漬した状態のまま保持されることとなる。
【0051】
この際、本実施形態では、前記「L1≦L2」の関係から、前記カバー13の位置決め以後に固定用突条39がシール溝27内の接着剤30中へ進入する構成となっているため、当該固定用突条39は、前記カバー13の位置決めによって、シール溝27の内壁から前記隙間L6を確保した状態で、この接着剤30表面(シール溝27の開口面)に対してほぼ垂直に進入することとなる。これによって、当該固定用突条39の接着剤30中への進入時に、この固定用突条39が接着剤30を掻き出してしまうといった不具合の発生を抑制することに供される。
【0052】
また、本実施形態では、前記「L3<L4」の関係から、ケース12の取付面26とカバー13の取付部38の下面38aとの間に所定の前記隙間L5が設けられると共に、当該隙間L5が前記「L5≦L6」の条件を満たすように構成されていることから、固定用突条39が接着剤30の中へ進入することによって押し出された接着剤30の一部が隙間L6に対し比較的小さな隙間L5内へと押し込まれることによって、当該シール溝27内における接着剤30に圧力が作用することとなる(以下、「接着剤30への加圧作用」という。)。すると、これにより、接着剤30がシール溝27の内面及び固定用突条39の外面に圧接することとなって当該シール溝27及び固定用突条39と接着剤30との密着性が高められることから、この結果、当該シール溝27及び固定用突条39に対する接着剤30の塗れ馴染み性が向上することとなる。
【0053】
さらには、前記隙間L5を設けたことで、前述のようにケース12とカバー13の係止固定(仮固定)を良好に行えることから、当該両者12,13と接着剤30との間における適切な密着が図れ、これによって、接着剤30による良好なシール性(防水性)の確保にも供される。
【0054】
このようにして、前記ケース12にカバー13が仮固定された後、前記係止構造をもって固定用突条39が接着剤30中に進入した状態のまま保持されることで、所定時間の経過後に接着剤30が硬化し、ケース12とカバー13とが完全に固定されることとなり、これをもって、前記電子制御装置10の組立が完了する。
【0055】
以上のように、本実施形態に係る電子制御装置10によれば、ケース12に少なくとも一対の前記各位置決め固定壁31〜34を立設すると共に、カバー13に、前記各位置決め固定壁31〜34に係合可能な前記各位置決め固定片41〜44を設けることとして、これらを前記「L1≦L2」の条件を満たすように構成したことで、ケース12に対するカバー13の位置決めを行いつつ固定用突条39をシール溝27内の接着剤30中へ進入させるようにしたため、当該固定用突条39を、適切な幅方向位置において、接着剤30表面(シール溝27の開口面)に対しほぼ真っ直ぐに進入させることができる。これにより、ケース12とカバー13との接合(組立)時において、固定用突条39が接着剤30中へと進入したときに、当該固定用突条39が接着剤30を掻き出してしまうといった不具合の発生が抑制され、装置10についての容易かつ適切な組立が図れる。
【0056】
さらに、前記位置決め構造を採用するにあたり、前記各位置決め固定壁31〜34の上端部内側に前記各テーパ面37c…を設けたことから、該各テーパ面37c…によって、カバー13をケース12の中央側に誘導することが可能となる。これにより、前記各位置決め固定壁31〜34による当該カバー13の位置決めを容易に行うことができ、装置10の組立作業性を向上させることにも供される。
【0057】
しかも、従来では、複数のビスを用いてケース12とカバー13とを仮固定していたところ、本実施形態では、ケース12の少なくとも一対の前記各位置決め固定壁31〜34に前記各係止溝37b…を設けると共に、カバー13の前記各位置決め固定片41〜44に、前記各係止溝37b…に係止可能な前記各係止突起41b…を設けることとして、樹脂材料からなるカバー13の弾性を利用したいわゆるスナップフィット構造をもってケース12とカバー13を係止固定可能に構成したことから、当該両者12,13の仮固定を容易に行うことができる。これにより、装置10の組立作業性のさらなる向上が図れると共に、従来のように複数のビスを使用することがない分、装置10の軽量化にも貢献できる。
【0058】
さらには、かかる従来のビス止めを廃止することにより、特にケース12側のねじ穴の加工も不要になるため、当該加工工数の低減化による生産性の向上及びコスト低減も図れる。
【0059】
そして、前記スナップフィット構造を採用するにあたり、本実施形態では、前記「L3<L4」の関係から、ケース12の取付面26とカバー13の取付部38の下面38aとの間に所定の前記隙間L5を設けると共に、当該隙間L5が前記「L5≦L6」の条件を満たすように構成したことから、固定用突条39をシール溝27内の接着剤30中へ進入させたときに生ずる当該隙間L5による前記接着剤30への加圧作用によって、ケース12とカバー13の間における当該接着剤30の塗れ馴染み性の向上が図れる。これによって、ケース12とカバー13を強固に接着できると共に、当該両者12,13間における高いシール性を確保することができ、この結果、装置10の耐久性の向上にも供される。
【0060】
また、本実施形態では、回路基板11を収容固定するケース12を金属材料によって形成すると共に、回路基板11の被覆に供するカバー13を樹脂材料によって形成することとしたため、筐体CS全体を金属材料によって形成していた従来に比べ、当該筐体CSに係る重量の低減化に供され、装置10の軽量化を図ることができる。そして、この構成を採用するにあたり、コネクタ15を外部へ臨ませるための窓部21や、発熱性の高い各電子部品14a,14bの放熱に供する前記各放熱用台座23a,23bを、剛性が高く放熱性に優れた金属材料からなるケース12に集約して配置するようにしたため、装置10としての十分な剛性及び放熱性を確保することができる。
【0061】
なお、前記筐体CS内の圧力調整に供する呼吸孔47については、樹脂材料からなるカバー13に設けることとしたが、当該呼吸孔47は前記窓部21等に比べて十分に小さい開口部であることから、当該カバー13の剛性を極端に低下させるおそれもない。そればかりか、この呼吸孔47の周縁部には水分が作用することから、当該呼吸孔47を金属材料からなるケース12側ではなく樹脂材料からなるカバー13側に配置することにより、当該呼吸孔47の腐食のおそれもなく、装置10の耐久性のさらなる向上にも供される。
【0062】
しかも、樹脂材料によって形成したカバー13については、単なる蓋形状とするのではなく、前記天井壁13aとその周縁部に立設した前記各側壁13b〜13eとによって構成されるいわゆる箱形状としたことで、カバー13自体の剛性の向上が図れ、当該カバー13の熱影響による反り変形についても抑制することができる。したがって、かかる観点からも、装置10の耐久性のさらなる向上に寄与することができる。
【0063】
本発明は前記実施形態の構成に限定されるものではなく、例えばケース12及びカバー13の双方を金属材料によって構成し、従来と同様に、両者12,13を複数のビスを用いて仮固定を行う場合であっても、前記実施形態に係る位置決め効果を得ることは可能である。
【0064】
また、前記実施形態のごとくケース12及びカバー13の一方を樹脂材料によって形成する場合であっても、例えば回路基板11をカバー13に取付固定して、このカバー13に窓部21や前記各放熱用台座23a,23bを設けることとして、図12に示すように、当該カバー13を金属材料によって形成し、ケース12を樹脂材料によって形成することとしてもよい。換言すれば、前述のように、ケース12及びカバー13の一方を樹脂材料によって形成する場合、前記窓部21及び前記各放熱用台座23a,23bが設けられた、回路基板11の固定対象となる部材が金属材料で形成されていれば、それがケース12であるかカバー13であるかは問わない。
【0065】
また、前記各位置決め固定壁31〜34については、前記実施形態においてケース12の四隅に配置する構成となっているが、これらの各位置決め固定壁31〜34は、第1位置決め固定壁31と第3位置決め固定壁33、第2位置決め固定壁32と第4位置決め固定壁34、といった対角に向き合う各壁同士が対になって機能するものであって、2対あれば安定性が向上する点で有利ではあるものの、少なくとも一対あれば前記位置決め作用を得ることができる。よって、必ずしも前記各隅部に設ける必要はなく、例えば電子制御装置10の仕様や搭載される自動車の仕様等に応じて自由に変更することができる。
【0066】
さらに、これら一対の前記各位置決め固定壁31〜34は、前記実施形態のように必ずしもケース12の隅部に設けられている必要はなく、例えば図13、図14に示すように、当該各位置決め固定壁31〜34をケース12の前記各側壁12b〜12eに設け、これに合わせて、カバー13の前記各側壁13b〜13eに一対の前記各位置決め固定片41〜44を設けることとしてもよい。換言すれば、前記各位置決め固定壁31〜34と前記各位置決め固定片41〜44とによって構成される係止手段は、その位置についても、電子制御装置10の仕様ないし搭載される自動車の仕様等に応じて自由に変更可能である。
【0067】
また、本実施形態では、前記各放熱フィン23a,23bを、前記底壁12aの長手方向、つまり前記各放熱用台座23a,23bの短辺方向に沿って設けることとしたが、図15に示すように、前記各放熱用台座23a,23bの長辺方向に沿って設けることも可能である。すなわち、前記各放熱フィン25a,25bの向きや大きさ等は、前記各電子部品14a,14bの発熱量等、電子制御装置10の仕様ないし搭載される自動車の仕様等に応じて任意に選択することができ、当該実施形態の構成に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0068】
11…回路基板
12…ケース(第1部材)
13…カバー(第2部材)
26…取付面(第1部材の接合面)
27…シール溝
30…接着剤(シール材)
31〜34…第1〜第4位置決め固定壁(位置決め手段)
38a…取付部の下面(第2部材の接合面)
39…固定用突条(突条)
CS…筐体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その接合面にシール溝を有する第1部材と、
その接合面に前記シール溝に係合する突条を有し、該突条を前記シール溝に係合させることによって前記第1部材に組み付けられる第2部材と、
前記第1部材と前記第2部材とによって構成される筐体内に収容される回路基板と、
前記シール溝内に充填され、該シール溝と前記突条との間に介在することによって前記第1部材と前記第2部材の接合面間を液密にシールするシール材と、
前記突条が前記シール材に接触する以前に、前記第1部材と前記第2部材の位置決めを行う位置決め手段と、を備えたことを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
前記第1部材又は前記第2部材のうち一方の部材が樹脂材料によって形成されると共に、
前記位置決め手段は、樹脂製でない他方の部材における前記接合面の外側縁に立設され、それぞれの内側部に、樹脂製の一方の部材が係止可能な係止部を有する一対の位置決め固定壁によって構成され、
前記第1部材と前記第2部材との組み付け時に、前記突条が前記シール溝内の所定深さ位置まで進入したところで、前記一方の部材が前記係止部を介して前記他方の部材に係止固定されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記各位置決め固定壁の先端部内側に、当該各位置決め固定壁の内側へ下り傾斜状となるテーパ面が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の電子制御装置。
【請求項1】
その接合面にシール溝を有する第1部材と、
その接合面に前記シール溝に係合する突条を有し、該突条を前記シール溝に係合させることによって前記第1部材に組み付けられる第2部材と、
前記第1部材と前記第2部材とによって構成される筐体内に収容される回路基板と、
前記シール溝内に充填され、該シール溝と前記突条との間に介在することによって前記第1部材と前記第2部材の接合面間を液密にシールするシール材と、
前記突条が前記シール材に接触する以前に、前記第1部材と前記第2部材の位置決めを行う位置決め手段と、を備えたことを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
前記第1部材又は前記第2部材のうち一方の部材が樹脂材料によって形成されると共に、
前記位置決め手段は、樹脂製でない他方の部材における前記接合面の外側縁に立設され、それぞれの内側部に、樹脂製の一方の部材が係止可能な係止部を有する一対の位置決め固定壁によって構成され、
前記第1部材と前記第2部材との組み付け時に、前記突条が前記シール溝内の所定深さ位置まで進入したところで、前記一方の部材が前記係止部を介して前記他方の部材に係止固定されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記各位置決め固定壁の先端部内側に、当該各位置決め固定壁の内側へ下り傾斜状となるテーパ面が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の電子制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−70508(P2012−70508A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211972(P2010−211972)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
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