説明

電子制御装置

【課題】電源電圧の低下および回復があった場合に、制御部と開閉手段を保護する。
【解決手段】電子制御装置100は、モータ駆動回路11と、電源リレー19と、制御部1と、コンデンサ20と、電源電圧検出部2と、モータ/コンデンサ電圧検出部23とを備える。制御部1は、電源リレー19をON状態にして、モータ駆動回路11の制御を開始した後、電源電圧検出部2で検出された電源電圧の低下を察知すると、モータ駆動回路11の制御を停止し、電源リレー19をOFFし、スリープモードに移行する。その後、制御部1は、電源電圧が上基準値以上で、かつ、電源電圧とコンデンサ20の電圧との電位差が所定値より小さいことを検出した場合に、スリープモードを解除した状態で、電源リレー19をONし、モータ駆動回路11の制御を再開する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両システムに実装され、電動機の駆動を制御する電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両システムに実装され、電動機の駆動を制御する電子制御装置として、たとえば、電動パワーステアリングの電子制御装置(以下、「EPS−ECU」という)がある。EPS−ECUは、自動車のハンドル操作をアシストするために、駆動回路によりモータの駆動を制御する。
【0003】
たとえば、特許文献1に開示されているEPS−ECUでは、電源とモータの駆動回路との間に、開閉手段として電源リレーが設けられている。また、電圧を平滑化するため、駆動回路と電源リレーとの間に、蓄電手段としてコンデンサが設けられている。
【0004】
特許文献1では、イグニッションスイッチがONされた後、電源リレーをONする前に、コンデンサはプリチャージ回路により充電される。そして、電源リレーの接点両端間の電位差がしきい値より小さくなったときに、電源リレーがONされて、コンデンサの充電が終了され、電位差の値に基づいて電源リレーの溶着などの異常が検出される。これにより、電源からコンデンサへ突入電流が流れるのを抑制し、異常検出で電圧変動に起因して誤判断するのを回避している。
【0005】
ところで、最近、燃料消費量の節減とエミッションの低減とを目的として、車両が信号待ちなどで停車した場合に、エンジンを一時的に自動停止させるアイドルストップ制御を行う車両がある。このような車両では、アイドルストップ制御中には、エンジンを停止させる。そして、アイドルストップ制御の停止後には、エンジン始動用のモータを駆動して、エンジンを再始動させる。
【0006】
エンジン始動用のモータを駆動するには、大きな電力を必要とするため、車両システムの電源の電圧が低下する。電源の電圧が大きく低下した場合、車両システムの各電気負荷に必要な電力を供給できなくなり、各電気負荷の機能に支障を来たすおそれがある。
【0007】
そこで、特許文献2に開示された駆動電圧供給装置では、アイドルストップ制御の停止後に、エンジンの再始動を検出すると、電源の電圧を検出する。そして、電源の電圧が各電気負荷に電圧を供給可能な最小電圧より低下している場合は、車両の運行に必要な電気負荷への電圧の供給を維持し、運転者の運転環境を快適にする電気負荷への電圧の供給を停止する。
【0008】
また、特許文献3に開示された電源回路では、電気負荷とバッテリとの間に、電圧低下保護回路とバイパスリレーとを並列に設けている。電圧低下保護回路では、スイッチやトランジスタのON・OFF状態を制御することで、コンデンサが充電される。そして、イグニッションスイッチとバイパスリレーとがONされた後、始動指令があった場合に、バイパスリレーをOFFして、電圧低下保護回路を電気負荷に接続する。この状態で、エンジンを始動し、電圧低下保護回路の出力電圧を維持している。
【0009】
また、特許文献4に開示されたエンジン始動制御装置では、エンジンの起動前に、コンデンサを所定電圧以下に放電し、エンジン起動後に、バッテリからの電流でコンデンサを充電する。そして、エンジンの一時停止後の再始動時に、コンデンサからエンジン始動用のモータの動作電流が供給され、バッテリからは電流制限抵抗を介して始動電流が供給されることで、バッテリの出力電圧の低下を防止している。
【0010】
一方、EPS−ECUでは、モータの制御中に、アイドルストップ制御停止後のエンジンの再始動に起因して、電源の電圧が大きく低下すると、モータと駆動回路の制御に支障を来たし、CPUから成る制御部が暴走するおそれがある。また、電源の電圧が低下したときに、モータと駆動回路の制御を停止して、電源リレーをOFFすると、その後、オルタネータの作動により、電源の電圧が元に戻って、電源リレーをONしたときに、電源とコンデンサの電位差が大きいため、電源リレーの接点に大電流が流れて接点が溶着するおそれがある。リレー以外の開閉手段として半導体スイッチング素子を用いた場合も、大電流によって素子が破壊するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−276706号公報
【特許文献2】特開2004−92564号公報
【特許文献3】特開2005−112250号公報
【特許文献4】特開2006−29142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、電源の電圧の低下および回復があった場合に、制御部と開閉手段とを保護することができる電子制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る電子制御装置は、電動機を駆動させる駆動回路と、車両システムの電源と駆動回路との間に設けられた開閉手段と、駆動回路を制御し、開閉手段のON・OFF状態を切り替える制御部と、開閉手段と駆動回路との間に設けられ、開閉手段がOFF状態の時に充電される蓄電手段と、電源の電圧を検出する電源電圧検出部と、蓄電手段の電圧を検出する蓄電電圧検出部とを備える。制御部は、開閉手段をON状態にして、駆動回路の制御を開始した後、電源電圧検出部により検出された電源の電圧が低下したことを察知すると、駆動回路の制御を停止し、開閉手段をOFF状態にし、通常より低い電圧で動作するスリープモードに移行し、その後、電源の電圧が上基準値以上であることを検出し、かつ、電源の電圧と蓄電手段の電圧との電位差が所定値より小さいことを検出すると、スリープモードを解除した状態で、開閉手段をON状態にし、駆動回路の制御を再開する。
【0014】
上記によると、電源の電圧が低下しても、制御部が駆動回路および電動機の制御を停止して、スリープモードに移行するので、制御部の暴走を防止することができる。また、その後、電源の電圧が上基準値以上になって、電源の電圧と蓄電手段の電圧との電位差が所定値より小さくなってから、開閉手段がONされるので、大電流による開閉手段の故障を防止することができる。よって、電源の電圧の低下および回復があった場合に、制御部と開閉手段とを保護することが可能となる。
【0015】
また、本発明では、上記電子制御装置において、制御部は、駆動回路の制御を開始した後、電源電圧検出部により検出された電源の電圧が下基準値以下であるか否かを判定し、電源の電圧が下基準値以下であると判定したことをもって、電源の電圧の低下を察知するようにしてもよい。
【0016】
また、本発明では、上記電子制御装置において、車両システムの他の装置と通信する通信部をさらに備え、制御部は、通信部により他の装置からアイドルストップ制御の停止信号を受信したことをもって、電源の電圧の低下を察知するようにしてもよい。
【0017】
また、本発明では、上記電子制御装置において、制御部は、通信部により他の装置からエンジンの再始動信号を受信したことをもって、電源の電圧の低下を察知するようにしてもよい。
【0018】
また、本発明では、上記電子制御装置において、制御部は、スリープモードに移行した後、電源の電圧が上基準値以上であることを検出した場合に、スリープモードを解除するようにしてもよい。
【0019】
さらに、本発明では、上記電子制御装置において、制御部は、スリープモードに移行した後、電源の電圧が上基準値以上であることを検出し、かつ、電源の電圧と蓄電手段の電圧との電位差が所定値より小さいことを検出した場合に、スリープモードを解除するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、電源の電圧の低下および回復があった場合に、制御部と開閉手段とを保護することができる電子制御装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係るEPS−ECUの構成図である。
【図2】図1のEPS−ECUに備わる制御部を示した図である。
【図3】車両システムの一例を示した図である。
【図4】図1のEPS−ECUの動作フローチャートである。
【図5】他の実施形態に係るEPS−ECUの動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。各図において、同一の部分または対応する部分には、同一符号を付してある。
【0023】
まず、本実施形態に係るEPS−ECU(電動パワーステアリングの電子制御装置)100の構成を、図1〜図3を参照しながら説明する。EPS−ECU100は、本発明の「電子制御装置」の一例である。
【0024】
図3に示す、電動パワーステアリングユニットとアイドルストップユニットとは、同一の車両システムに実装されている。電動パワーステアリングユニットにおいて、EPS−ECU100は、アシストモータ10を駆動して、公知の駆動機構50を作動させ、車両のハンドル操作をアシストする。EPS−ECU100は、アイドルストップユニットのIDS−ECU(アイドルストップの電子制御装置)200とCAN(カーエリアネットワーク)により接続されている。
【0025】
アイドルストップユニットにおいて、IDS−ECU200は、所定の停止条件が成立すると、アイドルストップ制御を行い、車両のエンジン70を停止させる。この後、IDS−ECU200は、所定の再始動条件が成立すると、アイドルストップ制御を停止し、スタータモータ60を駆動して、エンジン70を再始動させる。各ECU100、200と各モータ10、60とは、バッテリ80から電力を供給される。バッテリ80は、本発明の「車両システムの電源」の一例である。
【0026】
図1に示すEPS−ECU100において、制御部1は、CPUやメモリなどから構成されている。電源電圧検出部2は、バッテリ80からEPS−ECU100に入力される電源電圧を検出する。制御電源生成部3は、バッテリ80の電圧を所定の大きさの電圧に変換して、制御部1用の電源を生成する。なお、図1中のVBATは、バッテリ80から各部へ供給される電源を表している。
【0027】
IG(イグニッション)電圧検出部4は、ダイオード39を介して、IGスイッチ40の一端に接続されている。IGスイッチ40の他端は、バッテリ80に接続されている。IG電圧検出部4は、IGスイッチ40の一端に現れる電圧を検出する。制御部1は、IG電圧検出部4の検出値に基づいて、IGスイッチ40のON・OFF(開閉)状態を判断する。
【0028】
トルクセンサ電源生成部6は、FET5のソースに接続されている。FET5のドレインは、電源VBATに接続されている。FET5のゲートは、制御部1に接続されている。制御部1がFET5のゲートに駆動信号を入力して、FET5がON状態になると、トルクセンサ電源生成部6が、電源VBATの電圧を所定の大きさの電圧に変換して、トルクセンサ41用の電源を生成する。
【0029】
トルクセンサ電源電圧検出部7は、トルクセンサ電源生成部6からトルクセンサ41に入力する電源電圧を検出する。トルクセンサ信号検出部8は、トルクセンサ41の出力信号を検出する。制御部1は、トルクセンサ信号検出部8の出力に基づいて、車両のハンドルの回転軸にかかる操舵トルクを検出する。
【0030】
CAN通信部9は、車両システムの他の装置とCANにより通信するためのインタフェイスである。他の装置には、IDS−ECU200が含まれる。CAN通信部9は、本発明の「通信部」の一例である。
【0031】
アシストモータ10は、三相ブラシレスモータから構成されている。モータ駆動回路11は、6つのFET12a〜12fと3つのシャント抵抗13a〜13cとを有するブリッジ回路から構成されている。モータ駆動回路11は、アシストモータ10のA相、B相、およびC相に通電して、アシストモータ10を駆動させる。アシストモータ10は、本発明の「電動機」の一例である。モータ駆動回路11は、本発明の「駆動回路」の一例である。
【0032】
ゲート駆動部14は、モータ駆動回路11の各FET12a〜12fのゲートに駆動信号を入力して、各FET12a〜12fのON・OFF状態を切り替える。制御部1は、ゲート駆動部14にゲート駆動許可信号を入力し、ゲート駆動部14を介してモータ駆動回路11を制御する。詳しくは、制御部1は、ゲート駆動部14により各FET12a〜12fのON・OFF状態を切り替えて、アシストモータ10の各相に流れる電流の大きさと向きを制御する。モータ相電流検出部15は、各シャント抵抗13a〜13cの両端の電圧に基づいて、アシストモータ10の各相に流れる電流を検出する。
【0033】
モータ駆動回路11とアシストモータ10との間には、モータリレー16が設けられている。詳しくは、モータ駆動回路11からアシストモータ10への3つの通電ラインのうち、2つの通電ライン上に、モータリレー16の接点が接続されている。モータリレー16のコイル(図示省略)は、電源VBATとモータリレー駆動部17との間に接続されている。モータリレー駆動部17は、スイッチング素子などから構成されている。
【0034】
制御部1は、モータリレー駆動部17により、モータリレー16のON・OFF状態を切り替える。詳しくは、制御部1は、モータリレー駆動部17を駆動して、モータリレー16のコイルに通電し、モータリレー16の接点をON状態にする。また、制御部1は、モータリレー駆動部17の駆動を停止して、モータリレー16のコイルへの通電を停止し、モータリレー16の接点をOFF状態にする。
【0035】
モータリレー16がON状態になると、モータ駆動回路11とアシストモータ10とが電気的に接続される。モータリレー16がOFF状態になると、モータ駆動回路11とアシストモータ10とが電気的に切断される。モータ端子電圧検出部18は、アシストモータ10の各相の端子にかかる電圧を検出する。
【0036】
バッテリ80とモータ駆動回路11との間には、電源リレー19が設けられている。電源リレー19とモータ駆動回路11との間には、コンデンサ20が設けられている。コンデンサ20とモータ駆動回路11との間には、シャント抵抗21が設けられている。つまり、バッテリ80からモータ駆動回路11への通電ライン上に、電源リレー19の接点、コンデンサ20、およびシャント抵抗21が接続されている。
【0037】
電源リレー19のコイル(図示省略)は、電源VBATと電源リレー駆動部22との間に接続されている。電源リレー駆動部22は、スイッチング素子などから構成されている。制御部1は、電源リレー駆動部22により、電源リレー19のON・OFF状態を切り替える。詳しくは、制御部1は、電源リレー駆動部22を駆動して、電源リレー19のコイルに通電し、電源リレー19の接点をON状態にする。また、制御部1は、電源リレー駆動部22の駆動を停止して、電源リレー19のコイルへの通電を停止し、電源リレー19の接点をOFF状態にする。
【0038】
電源リレー19がON状態になると、バッテリ80とモータ駆動回路11とが電気的に接続される。電源リレー19がOFF状態になると、バッテリ80とモータ駆動回路11とが電気的に切断される。電源リレー19は、本発明の「開閉手段」の一例である。
【0039】
コンデンサ20は、バッテリ80の電圧を平滑化する。モータ/コンデンサ電圧検出部23は、モータ駆動回路11にかかる電圧を検出する。また、モータ/コンデンサ電圧検出部23は、電源リレー19がOFFの時に、コンデンサ20の電圧を検出する。コンデンサ20は、本発明の「蓄電手段」の一例である。モータ/コンデンサ電圧検出部23は、本発明の「蓄電電圧検出部」の一例である。過電流検出部24は、シャント抵抗21の両端の電圧に基づいて、モータ駆動回路11に流れる過電流を検出する。
【0040】
自己保持回路25は、電源リレー19と並列に設けられている。自己保持回路25のFET26のドレインは、ダイオード38を介して、バッテリ80に接続されている。FET26のソースは、プリチャージ回路27のダイオード35のカソード、FET28のドレイン、電源電圧検出部2、および制御電源生成部3に接続されている。FET26のゲートは、ダイオード36を介して、IGスイッチ40に接続され、かつ、ダイオード37を介して、制御部1に接続されている。
【0041】
プリチャージ回路27のFET28のソースは、抵抗29の一端に接続されている。抵抗29の他端は、ダイオード35のアノード、電源リレー19、およびコンデンサ20に接続されている。FET28のゲートは制御部1に接続されている。
【0042】
IGスイッチ40のON信号が、自己保持回路25のFET26のゲートに入力されると、FET26がON状態になって、バッテリ80からの電力がダイオード38とFET26とを介して、電源電圧検出部2、制御電源生成部3、リレー16、19のコイル、およびFET5のドレインに供給される。そして、制御部1が起動して、FET26のゲートに駆動信号を入力すると、FET26のON状態が保持され、バッテリ80から上記各部への電力の供給が継続される。
【0043】
また、制御部1が、プリチャージ回路27のFET28のゲートに駆動信号を入力すると、FET28がON状態になって、バッテリ80からの電力がダイオード38、FET26、FET28、および抵抗29を介して、コンデンサ20に供給される。コンデンサ20は、電源リレー19がOFF状態の時に、プリチャージ回路27により充電される。
【0044】
モータ駆動回路11、リレー16、19、コンデンサ20、シャント抵抗21、およびサーミスタ30は、同一の基板に実装されている。温度検出部31は、サーミスタ30によりモータ駆動回路11の周囲の温度を検出する。
【0045】
レゾルバ電源生成部32は、制御部1からの出力に基づいて、レゾルバ42用の電源を生成する。レゾルバ電源電圧検出部33は、レゾルバ電源生成部32からレゾルバ42に入力する電源電圧を検出する。レゾルバ信号検出部34は、レゾルバ42の出力信号を検出する。制御部1は、レゾルバ信号検出部34の出力に基づいて、アシストモータ10の回転角度を検出する。
【0046】
制御部1には、図2に示すように、リレー制御部1a、モータ制御部1b、故障診断部1c、電圧比較判定部1d、および電圧低下察知部1eが備わっている。これらは、たとえばソフトウェアで構成されている。
【0047】
リレー制御部1aは、モータリレー駆動部17および電源リレー駆動部22を制御して、モータリレー16と電源リレー19のON・OFF状態を切り替える。モータ制御部1bは、上述したように各部で検出した、ハンドルの操舵トルク、アシストモータ10の回転角度、およびアシストモータ10の各相の電流と電圧に基づいて、ゲート駆動部14を制御して、モータ駆動回路11によりアシストモータ10を駆動する。故障診断部1cは、各部が故障していないかどうかを診断する。
【0048】
電圧比較判定部1dは、上述したように、電源電圧検出部2で検出した電源電圧(バッテリ80からの入力電圧)を上基準値または下基準値と比較して、大小を判定する。また、電圧比較判定部1dは、電源電圧検出部2で検出した電源電圧と、モータ/コンデンサ電圧検出部23で検出したコンデンサ20の電圧との電位差を所定値と比較して、大小を判定する。上基準値、下基準値、および所定値は、予め設定されて、制御部1のメモリに記憶されている。電圧低下察知部1eは、電源電圧検出部2またはIDS−ECU200からの入力に基づいて、電源電圧の低下を察知する。
【0049】
次に、EPS−ECU100の動作を、図4を参照しながら説明する。
【0050】
図1のIGスイッチ40がON状態に操作されると、制御部1が起動して、通常モードで動作する。制御部1が通常モードで動作するとき、電源電圧として、たとえば12V必要である。この状態で、制御部1は、リレー制御部1aにより、電源リレー19とモータリレー16とをON状態にし(図4のステップS1)、EPS(電動パワーステアリング)制御を起動する(ステップS2)。これにより、制御部1のモータ制御部1bが、ハンドルの操舵トルクなどに応じて、ゲート駆動部14を介してモータ駆動回路11を制御して、アシストモータ10を駆動させるため、ハンドル操作がアシストされる。
【0051】
次に、制御部1は、電源電圧検出部2により電源電圧を検出し(ステップS3)、該電源電圧が下基準値以下であるか否かを、電圧比較判定部1dにより判定する(ステップS4)。下基準値は、たとえば5.4Vである。EPS制御中に、IDS−ECU200により、アイドルストップ制御が行われた後、該制御が停止されて、エンジン70(図3)が再始動されると、スタータモータ60で大きな電力が消費されて、バッテリ80の電圧が低下する。
【0052】
そのため、制御部1は、電源電圧検出部2で検出した電源電圧が下基準値以下になると(ステップS4:YES)、アイドルストップ制御停止後のエンジン70の再始動により、電源電圧が低下したことを電圧低下察知部1eにより察知する。そして、制御部1は、EPS制御を停止し(ステップS5)、電源リレー19とモータリレー16とをOFF状態にし(ステップS6)、スリープモードに移行する(ステップS7)。スリープモードでは、制御部1は、通常モードより低い電圧(たとえば5V)で動作する。
【0053】
ステップS5のEPS制御の停止により、モータ駆動回路11とアシストモータ10の制御が停止されるので、これらで電力が消費されなくなる。また、ステップS7のスリープモードへの移行により、制御部1で消費される電力が少なくなる。さらに、ステップS6で電源リレー19がOFF状態になると、図1の自己保持回路25とプリチャージ回路27との駆動により、コンデンサ20が充電される。
【0054】
次に、制御部1は、電源電圧検出部2により電源電圧を検出し(ステップS8)、該電源電圧が上基準値以上であるか否かを判定する(ステップS9)。上基準値は、たとえば12Vである。エンジン70の再始動後に、オルタネータの作動によりバッテリ80が充電されると、バッテリ80の電圧が上昇して、電源電圧が元の大きさ(たとえば12V)に復帰する。
【0055】
そのため、制御部1は、電源電圧検出部2で検出した電源電圧が上基準値以上になると(ステップS9:YES)、スリープモードを解除して(ステップS10)、通常モードに移行する。スリープモードの解除後、制御部1の故障診断部1cは、初期診断を開始して、所定の部分の故障を診断する。
【0056】
次に、制御部1は、電源電圧検出部2により電源電圧を検出し(ステップS11)、モータ/コンデンサ電圧検出部23によりコンデンサ20の電圧を検出する(ステップS12)。そして、制御部1は、検出した電源電圧とコンデンサ20の電圧との電位差を算出して、該電位差が所定値より小さいか否かを判定する(ステップS13)。所定値は、たとえば3.5Vである。
【0057】
このとき、コンデンサ20が十分に充電されていない場合は、電源電圧がコンデンサ20の電圧より高くなっていて、両電圧の電位差が所定値以上になる(ステップS13:NO)。こうなると、制御部1は、再び、電源電圧検出部2により電源電圧を検出し(ステップS11)、モータ/コンデンサ電圧検出部23によりコンデンサ20の電圧を検出し(ステップS12)、両電圧の電位差が所定値より小さいか否かを判定する(ステップS13)。
【0058】
そして、コンデンサ20が十分に充電されて、電源電圧とコンデンサ20の電圧との電位差が所定値より小さくなると(ステップS13:YES)、制御部1は、電源リレー19とモータリレー16とをON状態にし(ステップS14)、再び、EPS制御を起動する(ステップS2)。つまり、制御部1のモータ制御部1bが、ゲート駆動部14を介してモータ駆動回路11の制御を再開して、アシストモータ10を駆動させることにより、ハンドル操作がアシストされる。この後、IGスイッチ40がOFF状態に操作されて、制御部1が停止するまで、各処理が繰り返し実行される。
【0059】
上記実施形態によると、アイドルストップ制御停止後のエンジン70の再始動により、電源電圧が低下しても、制御部1がモータ駆動回路11およびアシストモータ10の制御を停止して、スリープモードに移行するので、制御部1(CPU)の暴走を防止することができる。また、その後、電源電圧が上基準値以上になって、電源電圧とコンデンサ20の電圧との電位差が所定値より小さくなってから、電源リレー19がON状態にされるので、電源リレー19の接点に大電流が流れて接点が溶着するのを防止することができる。よって、電源電圧の低下および回復があった場合に、制御部1と電源リレー19とを保護することが可能となる。
【0060】
また、上記実施形態では、電源電圧が下基準値以下であると判定したことをもって、電源電圧の低下を察知しているので、電源電圧の低下を確実に認識することができる。
【0061】
さらに、上記実施形態では、電源電圧が上基準値以上であると判定した場合に、スリープモードを解除しているので、制御部1を通常モードで安定に動作させることができる。
【0062】
本発明は、上述した以外にも種々の実施形態を採用することができる。たとえば、上記実施形態では、電源電圧が下基準値以下になったこと(図4のステップS4)をもって、制御部1の電圧低下察知部1eが電源電圧の低下を察知している。しかしながら、本発明はこれに限定するものではない。
【0063】
これ以外に、たとえば、図5のステップS4aに示すように、アイドルストップ制御の停止を通知するIDS制御停止信号、または、アイドルストップ制御停止によるエンジンの再始動を通知するエンジン再始動信号を、IDS−ECU200からCAN通信部9(図1)により受信したこと(ステップS4a:YES)をもって、制御部1の電圧低下察知部1eが電源電圧の低下を察知するようにしてもよい。IDS−ECU200は、本発明の「他の装置」の一例である。
【0064】
このようにすると、アイドルストップ制御停止によるエンジンの再始動のため、スタータモータ60が駆動して、電源電圧が低下することは必然であるので、電源電圧の低下を確実に認識することができる。
【0065】
また、上記実施形態では、制御部1がスリープモードを解除してから(図4のステップS10)、電源電圧とコンデンサ20の電圧との電位差が所定値より小さいか否かを判定している(ステップS13)。しかしながら、本発明はこれに限定するものではない。
【0066】
これ以外に、たとえば、図5に示すように、電源電圧が上基準値以上に復帰した(ステップS9:YES)後、電源電圧とコンデンサ20の電圧とを検出して(ステップS11、S12)、これらの電位差が所定値より小さいか否かを判定する(ステップS13)。そして、当該電位差が所定値より小さくなった場合に(ステップS13:YES)、制御部1がスリープモードを解除する(ステップS10a)ようにしてもよい。また、電源電圧とコンデンサ20の電圧を検出する順番は、どちらが先でも後でもよいし、並行して行ってもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、開閉手段として電源リレー19を用いた例を挙げたが、本発明はこれのみに限定するものではない。リレー以外に、たとえば、FETやトランジスタなどのような、半導体スイッチング素子を開閉手段として用いてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、蓄電手段としてコンデンサ20を用いた例を挙げたが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、たとえば、充電式の電池などの蓄電手段を用いてもよい。
【0069】
さらに、上記実施形態では、車両のEPS−ECU100に本発明を適用した例を挙げたが、これ以外の車両システムに実装される電子制御装置に対しても、本発明を適用することは可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 制御部
2 電源電圧検出部
9 CAN通信部
11 モータ駆動回路
10 アシストモータ
19 電源リレー
20 コンデンサ
23 モータ/コンデンサ電圧検出部
80 バッテリ
100 EPS−ECU
200 IDS−ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機を駆動させる駆動回路と、
車両システムの電源と前記駆動回路との間に設けられた開閉手段と、
前記駆動回路を制御し、前記開閉手段のON・OFF状態を切り替える制御部と、
前記開閉手段と前記駆動回路との間に設けられ、前記開閉手段がOFF状態の時に充電される蓄電手段と、を備えた電子制御装置において、
前記電源の電圧を検出する電源電圧検出部と、
前記蓄電手段の電圧を検出する蓄電電圧検出部と、をさらに備え、
前記制御部は、
前記開閉手段をON状態にして、前記駆動回路の制御を開始した後、前記電源電圧検出部により検出された前記電源の電圧が低下したことを察知すると、
前記駆動回路の制御を停止し、前記開閉手段をOFF状態にし、通常より低い電圧で動作するスリープモードに移行し、
その後、前記電源の電圧が上基準値以上であることを検出し、かつ、前記電源の電圧と前記蓄電手段の電圧との電位差が所定値より小さいことを検出すると、
前記スリープモードを解除した状態で、前記開閉手段をON状態にし、前記駆動回路の制御を再開する、ことを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子制御装置において、
前記制御部は、
前記駆動回路の制御を開始した後、
前記電源電圧検出部により検出された前記電源の電圧が下基準値以下であるか否かを判定し、
前記電源の電圧が下基準値以下であると判定したことをもって、前記電源の電圧の低下を察知する、ことを特徴とする電子制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電子制御装置において、
車両システムの他の装置と通信する通信部をさらに備え、
前記制御部は、
前記通信部により前記他の装置からアイドルストップ制御の停止信号を受信したことをもって、前記電源の電圧の低下を察知する、ことを特徴とする電子制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電子制御装置において、
車両システムの他の装置と通信する通信部をさらに備え、
前記制御部は、
前記通信部により前記他の装置からエンジンの再始動信号を受信したことをもって、前記電源の電圧の低下を察知する、ことを特徴とする電子制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電子制御装置において、
前記制御部は、
前記スリープモードに移行した後、
前記電源の電圧が前記上基準値以上であることを検出した場合に、前記スリープモードを解除する、ことを特徴とする電子制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の電子制御装置において、
前記制御部は、
前記スリープモードに移行した後、
前記電源の電圧が前記上基準値以上であることを検出し、かつ、前記電位差が前記所定値より小さいことを検出した場合に、前記スリープモードを解除する、ことを特徴とする電子制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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