説明

電子機器の蓋ロック機構

【課題】大きな弾性を有する板ばねを用いることなく設置スペースを縮小することが出来る電子機器の蓋ロック機構を提供する。
【解決手段】本発明に係る蓋ロック機構は、キャビネット1に形成された座部13と、キャビネット1の座部13に設置され、蓋2をロックしたロック位置と該ロックを解除したロック解除位置との間で回転操作が可能なロック操作片3と、ロック操作片3に抜け止めを施す抜け止め機構とを具え、ロック操作片3には、キャビネット1の座部13との対向部に、ロック操作片3の回転軸に沿う方向に弾性変形可能な弾性片36が形成され、該弾性片36には、キャビネット1の座部13に向けて係合部37が形成されると共に、該座部13には、ロック操作片3のロック位置にて係合部37が係脱可能に係合する被係合部11が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機等の電子機器において電池蓋等の蓋を閉じ位置にてロックするための蓋ロック機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電子機器においては、図5(a)(b)に示す如くキャビネット(9)の背面に電池蓋(91)が取り付けられており、ロック操作片(92)を図5(a)に示すロック位置から同図(b)に示すロック解除位置まで回転操作することによって、電池蓋(91)のロックを解除して、電池蓋(91)をキャビネット(9)から取り外すことが出来る様になっている(特許文献1参照)。
【0003】
例えば図6及び図7に示す蓋ロック機構においては、キャビネット(9)の裏面に座部(94)が形成され、該座部(94)に貫通孔(90)が開設され、該貫通孔(90)をキャビネット(9)の表面側から裏面側へ貫通させてロック操作片(92)が設置される。ロック操作片(92)の胴部には突子(93)が形成されている。
キャビネット(9)の座部(94)の表面には、約90度の位相差を有する2箇所に第1被係合部(95)と第2被係合部(96)が凹設されている。
【0004】
キャビネット(9)の裏面には、貫通孔(90)から臨出するロック操作片(92)の端面に板ばね(8)が設置され、該板ばね(8)は、ビス(80)によってロック操作片(92)の端面に固定され、ロック操作片(92)に対して抜け止めを施す。
板ばね(8)はビス(80)が貫通する孔(82)から半径方向へ長く形成され、その長手方向の先端部には、前記キャビネット(9)の座部(94)へ向けて突出し、板ばね(8)の弾性によって座部(94)の第1被係合部(95)と第2被係合部(96)に対して係脱可能な係合部(81)が形成されている。
【0005】
上記蓋ロック機構においては、図5(a)に示す如くロック位置から同図(b)に示すロック解除位置までロック操作片(92)を回転させると、図6に示す板ばね(8)が回転すると共に弾性変形して、係合部(81)が第1被係合部(95)との係合状態から離脱して、第2被係合部(96)との係合状態へ移行する。
これによって、図7に示すロック操作片(92)の突子(93)が電池蓋(91)の端部から離脱して、電池蓋(91)のロックを解除する。
【0006】
又、図5(b)に示す如くロック解除位置から同図(a)に示すロック位置までロック操作片(92)を回転させると、図6に示す板ばね(8)が回転すると共に弾性変形して、係合部(81)が第2被係合部(96)との係合状態から離脱して、第1被係合部(95)との係合状態へ移行する。
これによって、図7に示すロック操作片(92)の突子(93)が電池蓋(91)の端部に係合して、電池蓋(91)を閉じ位置にロックする。
【0007】
この様にして、ロック操作片(92)の操作による電池蓋(91)のロック及びロック解除が実現されると共に、ロック操作片(92)の操作にクリック感が与えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−10599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図6及び図7に示す蓋ロック機構においては、板ばね(8)に十分な弾性変形能力を与えて板ばね(8)の塑性変形を阻止するべく、板ばね(8)の材質を例えば銅等の高価な材質とすると共に、板ばね(8)の長手方向の寸法を大きく設計することが行なわれていたため、コストアップを招くばかりでなく、板ばね(8)の回転半径が大きくなって、蓋ロック機構の設置スペースが大きくなる問題があった。
【0010】
そこで本発明の目的は、大きな弾性を有する板ばねを用いることなく設置スペースを縮小することが出来る蓋ロック機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る電子機器の蓋ロック機構は、キャビネット(1)に取り付けられた蓋を閉じ位置にてロックするための蓋ロック機構を具え、該蓋ロック機構は、
キャビネット(1)に形成された座部(13)と、
キャビネット(1)の座部(13)に設置され、蓋をロックしたロック位置と該ロックを解除したロック解除位置との間で回転操作が可能なロック操作片(3)と、
ロック操作片(3)に抜け止めを施す抜け止め機構
とを具えている。
【0012】
前記ロック操作片(3)には、前記キャビネット(1)の座部(13)との対向部に、ロック操作片(3)の回転軸に沿う方向に弾性変形可能な弾性片(36)が形成され、該弾性片(36)には、前記キャビネット(1)の座部(13)に向けて係合部(37)が形成されると共に、該座部(13)には、ロック操作片(3)のロック位置にて前記係合部(37)が係脱可能に係合する被係合部(11)が形成されている。
【0013】
上記本発明の蓋ロック機構によれば、ロック操作片(3)をロック解除位置からロック位置まで回転させることにより、弾性片(36)が弾性変形して、ロック操作片(3)の係合部(37)がキャビネット(1)の座部(13)の被係合部(11)に係合し、これによってロック操作片(3)がロック位置に軟係止される。
【0014】
具体的態様において、前記ロック操作片(3)の弾性片(36)は、ロック操作片(3)の回転軸を中心とする円弧線に沿って延びている。
これによって、ロック操作片(3)の外形を拡大することなく、弾性片(36)の長さを延長して、弾性片(36)の弾性変形能力を高めることが出来る。
【0015】
具体的態様において、前記キャビネット(1)の座部(13)には、ロック操作片(3)のロック解除位置にて前記係合部(37)が係脱可能に係合する第2の被係合部(12)が形成されている。
これによって、ロック操作片(3)をロック解除位置に軟係止することが出来る。
【0016】
更に具体的な態様において、前記ロック操作片(3)は円筒状の外周面を有する胴部(31)を具え、該胴部(31)には、キャビネット(1)の座部(13)との対向面に、ロック操作片(3)の回転軸を中心とする円弧線に沿って延びる第1スリット(34)が凹設されると共に、該胴部(31)の外周面には、ロック操作片(3)の回転軸を中心とする円弧線に沿って延びる第2スリット(35)が凹設され、第1スリット(34)と第2スリット(35)が交叉することによって、前記弾性片(36)が形成されている。
これによって、ロック操作片(3)の外形を大きくすることなく、弾性片(36)を形成することが出来る。
【0017】
又、前記ロック操作片(3)はキャビネット(1)を貫通するボス部(32)を具え、前記抜け止め機構は、キャビネット(1)の裏面側にてロック操作片(3)のボス部(32)の端面に設置されたワッシャ(4)と、該ワッシャ(4)をロック操作片(3)のボス部(32)の端面に締結するビス(5)とを具えている。
ここでワッシャ(4)には、ビス(5)が貫通する孔(40)が設けられ、ワッシャ(4)は必要最小限の外径を有する円板状に形成することが出来る。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る電子機器における蓋ロック機構によれば、キャビネット(1)の座部(13)上に設置されたロック操作片(3)の座部(13)との対向部に、弾性片(36)が形成されているので、該弾性片(36)は、ロック操作片(3)の回転に伴って該ロック操作片(3)の外周面の回転エリア内で回転するに過ぎない。従って、従来の如く大きな回転半径を有する板ばねは不要であり、これによって蓋ロック機構の設置スペースを縮小することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の一実施形態である蓋ロック機構を具えた携帯電話機の背面図である。
【図2】図2は、該蓋ロック機構の拡大断面図である。
【図3】図3は、該蓋ロック機構の分解斜視図である。
【図4】図4は、該蓋ロック機構を構成するロック操作片の拡大斜視図である。
【図5】図5は、従来の携帯電話機の蓋ロック機構におけるロック操作片のロック位置とロック解除位置を示す背面図である。
【図6】図6は、該蓋ロック機構の拡大斜視図である。
【図7】図7は、該蓋ロック機構の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を携帯電話機の蓋ロック機構に実施した形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
該携帯電話機においては、図1に示す如くキャビネット(1)の背面に電池蓋(2)が設置され、該電池蓋(2)は、ロック操作片(3)の回転操作によってロック状態とロック解除状態に切り換えることが出来る。
【0021】
尚、図1に示す閉じ位置でロック操作片(3)をロック操作することにより、ロック操作片(3)の胴部(31)に設けた突子(33)(図2、図3参照)が電池蓋(2)の端部に設けられた凹部に係合し、電池蓋(2)がキャビネット(1)に係止され、ロック状態となる。
【0022】
本発明の一実施形態である蓋ロック機構は、図2及び図3に示す如く、少なくともキャビネット(1)の表面に凹設された座部(13)と、キャビネット(1)の座部(13)に開設された貫通孔(10)を貫通して設置された合成樹脂製のロック操作片(3)と、キャビネット(1)の裏面側でロック操作片(3)の端面に設置されたSUS製のワッシャ(4)と、該ワッシャ(4)をロック操作片(3)の端面に締結するビス(5)とを具え、ワッシャ(4)とビス(5)によって、ロック操作片(3)に抜け止めを施す抜け止め機構が構成されている。
【0023】
ロック操作片(3)は、図4に示す如く、大径円板状の胴部(31)と、該胴部(31)の裏面側に突設された小径円柱状のボス部(32)とから構成され、胴部(31)には、その外周面に、前記電池蓋(2)に係合して電池蓋(2)を閉じ位置にロックするための突子(33)が形成されている(図2参照)。
【0024】
又、ロック操作片(3)の胴部(31)には、前記キャビネット(1)の座部(13)との対向面に、ロック操作片(3)の回転軸を中心とする円弧線に沿って延びる第1スリット(34)が凹設されると共に、該胴部(31)の外周面には、ロック操作片(3)の回転軸を中心とする円弧線に沿って延びる第2スリット(35)が凹設され、第1スリット(34)と第2スリット(35)が交叉することによって、ロック操作片(3)の回転軸を中心とする円弧線に沿って延びる円弧状の弾性片(36)が形成されている。
該弾性片(36)は、両端支持構造を有して、第2スリット(35)の幅寸法の範囲内で円弧状に弾性変形が可能である。
【0025】
更に、ロック操作片(3)の弾性片(36)には、前記キャビネット(1)の座部(13)との対向面に、該座部(13)に向かって円弧状に突出する係合部(37)が形成されている。
一方、前記キャビネット(1)の座部(13)には、図3に示す如く貫通孔(10)を包囲して約90度の位相角度位置に、前記ロック操作片(3)の係合部(37)が係脱可能な第1被係合部(11)と第2被係合部(12)とが凹設されている。
【0026】
図2に示す如く、キャビネット(1)の貫通孔(10)を貫通して設置されたロック操作片(3)のボス部(32)にはOリング(6)が装着される。ロック操作片(3)のボス部(32)の端面にワッシャ(4)を設置し、ワッシャ(4)の孔(40)を経てボス部(32)にビス(5)をねじ込むことによって、ロック操作片(3)に抜け止めが施される。
又、ビス(5)のねじ込みによってOリング(6)が挟圧され、キャビネット(1)とロック操作片(3)の間に防水が施される。
【0027】
図1の如くキャビネット(1)の電池室(図示省略)を電池蓋(2)によって閉じ、その状態でロック操作片(3)をロック解除位置からロック位置まで約90度回転させると、ロック操作片(3)の係合部(37)がキャビネット(1)の第2被係合部(12)と係合した状態から、ロック操作片(3)の係合部(37)がキャビネット(1)の第1被係合部(11)と係合した状態に移行する。
又、ロック操作片(3)をロック位置からロック解除位置まで約90度回転させると、ロック操作片(3)の係合部(37)がキャビネット(1)の第1被係合部(11)と係合した状態から、ロック操作片(3)の係合部(37)がキャビネット(1)の第2被係合部(12)と係合した状態に移行する。
【0028】
ロック操作片(3)の係合部(37)がキャビネット(1)の第2被係合部(12)と係合した状態では、ロック操作片(3)の突子(33)が電池蓋(2)の端部から離脱した状態に保持され、ロック操作片(3)の係合部(37)がキャビネット(1)の第1被係合部(11)と係合した状態では、ロック操作片(3)の突子(33)が電池蓋(2)の端部に係合した状態に保持される。
【0029】
又、ロック操作片(3)をロック位置とロック解除位置の間で約90度回転させる過程で、ロック操作片(3)の弾性片(36)がロック操作片(3)の回転軸に沿う方向に弾性変形し、ロック操作片(3)のロック位置とロック解除位置との間の双方向の操作にクリック感が与えられる。
【0030】
上記蓋ロック機構によれば、図4に示す如く、弾性片(36)がロック操作片(3)の回転軸を中心とする円弧線に沿って形成されているので、ロック操作片(3)の外形を増大させることなく、弾性片(36)を長く形成することが出来、これによって弾性片(36)の弾性変形能力を高めることが出来る。
【0031】
又、ワッシャ(4)は、ロック操作片(3)に抜け止めを施すものであるから、ワッシャ(4)の外径はキャビネット(1)の貫通孔(10)の内径よりも僅かに大きく形成すればよく、これによって、ロック操作片(3)の回転に伴ってワッシャ(4)が大きく振れ回ることはない。
【0032】
従って、上記蓋ロック機構によれば、従来の如く大きな回転半径を有する板ばねは不要であり、これによって蓋ロック機構の設置スペースを縮小することが出来る。
又、ワッシャ(4)の材質として銅等の高価な材質を用いる必要がないので、コストダウンを図ることが出来る。
【0033】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、キャビネット(1)の第2被係合部(12)は省略することが可能である。又、電池蓋(2)の係合部(37)とキャビネット(1)の被係合部(11)(12)との係合構造は、上記実施形態に限らず、周知の種々の係合構造(軟係止機構)を採用することが出来る。
【0034】
又、本発明は携帯電話機の電池蓋のロック機構に限らず、デジタルカメラやパーソナルコンピュータ等の電子機器における、電池蓋、端子蓋、メモリカード蓋等の各種蓋のロック機構に実施することが出来る。
【符号の説明】
【0035】
(1) キャビネット
(10) 貫通孔
(11) 第1被係合部
(12) 第2被係合部
(13) 座部
(2) 電池蓋
(3) ロック操作片
(31) 胴部
(32) ボス部
(33) 突子
(34) 第1スリット
(35) 第2スリット
(36) 弾性片
(37) 係合部
(4) ワッシャ
(5) ビス
(6) Oリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビネットに取り付けられた蓋を閉じ位置にてロックするための蓋ロック機構を具えた電子機器において、該蓋ロック機構は、
キャビネットに形成された座部と、
キャビネットの座部に設置され、蓋をロックしたロック位置と該ロックを解除したロック解除位置との間で回転操作が可能なロック操作片と、
前記ロック操作片に抜け止めを施す抜け止め機構
とを具え、前記ロック操作片には、前記キャビネットの座部との対向部に、ロック操作片の回転軸に沿う方向に弾性変形可能な弾性片が形成され、該弾性片には、前記キャビネットの座部に向けて係合部が形成されると共に、該座部には、ロック操作片のロック位置にて前記係合部が係脱可能に係合する被係合部が形成されていることを特徴とする蓋ロック機構。
【請求項2】
前記ロック操作片の弾性片は、ロック操作片の回転軸を中心とする円弧線に沿って延びている請求項1に記載の蓋ロック機構。
【請求項3】
前記キャビネットの座部には、ロック操作片のロック解除位置にて前記係合部が係脱可能に係合する第2の被係合部が形成されている請求項1又は請求項2に記載の蓋ロック機構。
【請求項4】
前記ロック操作片は円筒状の外周面を有する胴部を具え、該胴部には、キャビネットの座部との対向面に、ロック操作片の回転軸を中心とする円弧線に沿って延びる第1スリットが凹設されると共に、該胴部の外周面には、ロック操作片の回転軸を中心とする円弧線に沿って延びる第2スリットが凹設され、第1スリットと第2スリットが交叉することによって、前記弾性片が形成されている請求項1乃至請求項3の何れかに記載の蓋ロック機構。
【請求項5】
前記ロック操作片はキャビネットを貫通するボス部を具え、前記抜け止め機構は、キャビネットの裏面側にてロック操作片のボス部の端面に設置されたワッシャと、該ワッシャをロック操作片のボス部の端面に締結するビスとを具えている請求項1乃至請求項4の何れかに記載の蓋ロック機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−110334(P2013−110334A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255729(P2011−255729)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】