説明

電子機器ケース

【課題】
電子機器ケース1の外形寸法を大きくすることなく,F型プラグの取付性を向上する。
【解決手段】
高周波機器4を収納可能な前面が開放された本体2と,この本体2の開放部を覆う蓋体3とから成り,前記本体2の背面の側に,マスト取付部材5と壁面取付部材7の両取付部材を備えた電子機器ケース1において,前記マスト取付部材5が形成されている背面11を基準面として,前記マスト取付部材5の突出寸法が,前記壁面取付部材7の突出寸法と同じか乃至はそれより小さくなるように形成する。前記本体2の背面には,前記マスト取付部材7が形成されている背面11と,前記壁面取付部材7が形成されている背面13の高さが異なるように,同一面上に段差を持たせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,主にアンテナに接続するブースター,コンバーター,あるいは混合器等の電子機器ケース(以下,単にケースと呼ぶ)に関し,詳しくはアンテナマストに対する取付けと,家屋の壁面に対する取付けの,二様の取付けを可能にしたケースの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種のケース1においては,図1及び図2に示すように,本体の背面11の側に,マストに取付可能なマスト取付部材5と,家屋の壁面に取付可能な壁面取付部材7の両取付部材を備えているので,周知のようにケース1をマストあるいは壁面のいずれかにも取付けができる構成となっている。マスト取付部材5は,本体2の略中央に設けられ,本体2の背面11に固着されマストや壁面に当接させる当付座16と,マストに取付ける為のU字型ボルト23,押え具24,締付ねじ25等の部材からなる。そして,上記部材は上記マスト取付部材5に備えられるとともに,上記部材を本体2下方の縁端に設けた収納部40に保持可能とし,しかも,押え具24等の部材の本体背面11からの張出寸法が,上記アンテナ取付部5の当付座16の張出寸法と同じか,乃至はそれより小さくなるように設定されており,メーカー出荷時の梱包状態を小型化,また,上記U字型ボルト23,押え具24,締付ねじ25等の部材の梱包忘れを防止するように構成されている。
【0003】
また,家屋の壁面に取付ける壁面取付部材7は,本体の下方の両端付近に2ヵ所設けられて,当該壁面取付部材7に備えさせた止着ねじ37を壁に向けて螺進させることにより壁面への取付けを行う。 上記壁面取付部材7の本体の背面11からの張出寸法が上記当付座16の張出寸法と同高となるように形成されているので,上記当付座16はケース1を壁面に押付ける力に対して支えとなる補強効果となっていた。 更に詳しく言えば,ケース1の取付けがすんだならば,その状態で内部の高周波回路基板に備わっている接続端子にケーブル(周知である同軸ケーブル,フィーダー)の接続を行う。その場合,ドライバーによって接続用の螺子を大きな力で壁面方向に押しながら螺子止め作業を行っても,壁面に当接している当付座16がその大きな力を支えるためケース1が壁面の側によることが防止され,壁面取付部材7の破損が防止されるよう構成されていた。
(例えば,特許公報第2572981号)
【特許文献1】特許第2572981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,BSデジタル放送や110°CSデジタル放送の中間周波数帯を利用する分配器やブースター等の高周波回路は略1GHz〜2.6GHz帯までを使うようになり,また,信号がデジタル変調されていることから,高周波回路に妨害波が飛び込んで,受信画像に妨害が発生しないよう,前記高周波回路を組み込んだ基板を金属ケースに収容すると共に,接続端子にはF型コネクターを使用した高周波機器を構成することで,特性の安定化を図り,当該高周波回路のイミュニティーを良くする必要が生じてきた。
【0005】
このように形成された高周波機器は,屋外にも設置できるよう,前記ケースに収納されているのである。ところがこの高周波機器は,高周波回路との接続コネクターとしてF型コネクターを用いているので,アンテナからのケーブルや宅内等へ引き込むためには,先端にF型プラグを組付けたケーブルを,指先で取付けた後,最終的には工具を使って適正トルクで持って確実に接続する必要が生じる。 この時,従来のケースの外形寸法を維持しつつ,上述の衛星放送受信のための増幅回路の追加による入・出力端子の増設に対応するために,ケースのケーブル挿通孔の増設(例えば,従来は挿通孔が4つであったものを5つにする。)が必要となった。この結果,前記壁面取付部材に備えさせた止着ねじと,前記F型コネクターの位置が近接して配置されることになり,前記F型プラグをF型コネクターに接続する場合の,(1)指先でもってF型プラグをF型コネクターに仮止めする,(2)工具でもってのF型プラグを適正トルクで締め付ける。といった作業手順において,前記止着ねじが邪魔になって取付性が悪いと言った問題があった。 そこで,本願においては上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり, その目的は高周波機器を収納するケースの構造を提供するものである。 他の目的は,高周波機器の調整等が容易にできるよう蓋体が開閉自在であるケースの構造を提供するものである。 他の目的は,マスト及び壁面の何れに対する取付けも可能なケースの構造を提供するものである。 他の目的は,壁面に取付ける場合においては,壁面になるべく近く沿わせて取付可能なケースの構造を提供するものである。 他の目的は,U字形ボルト,押え具,締付ねじ等を収納した状態で壁面取付可能なケースの構造を提供するものである。 他の目的は,F型プラグを接続するときの取付性の良いケースの構造を提供するためのものである。 他の目的は,本体の背面に段差を持たせ,少なくとも2面以上の平面からなるように構成したケース構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために,請求項1の発明は,高周波機器を収納可能な前面が開放された本体と,この本体の開放部を覆う蓋体とから成り,前記本体の背面の側に,マスト取付部材と壁面取付部材の両取付部材を備えた電子機器ケースにおいて,前記マスト取付部材が形成されている背面を基準面として,前記マスト取付部材の張出寸法が,前記壁面取付部材の張出寸法と同じか乃至はそれより小さくなるように形成されていると共に,前記マスト取付部材が形成されている背面と,前記壁面取付部材が形成されている背面の高さが異なるように,同一面上に段差を持たせるよう構成する。
【発明の効果】
【0007】
以上のように本発明にあっては,高周波機器を収納可能な前面が開放された本体と,この本体の開放部を覆う蓋体とから成り,前記本体の背面の側に,マスト取付部材と壁面取付部材の両取付部材を備えた電子機器ケースにおいて,前記マスト取付部材が形成されている背面を基準面として,前記マスト取付部材の張出寸法が,前記壁面取付部材の張出寸法と同じか乃至はそれより小さくなるように形成されていると共に,前記マスト取付部材が形成されている背面と,前記壁面取付部材が形成されている背面の高さが異なるように,同一面上に段差を持たせるよう構成したので,マスト取付時でも,ケースに収納した高周波機器のF型コネクターに,ケーブルの先端に取付けられたF型プラグを接続するときに,前記壁面取付部材に備えさせた止着ねじに邪魔されずに取付作業が出来るので,作業性の良いケースが提供できる。 更にまた,壁面取付時においても本願のケースを用いれば,従来のケースの場合の,壁面取付部材に備えられた止着ねじの壁面との螺合寸法は同じのまま,止着ねじの寸法を段差分だけ短く出来ることから,ケースのコストダウンが出来ると言った有用性を備えたケースが提供できるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下本願の実施例を示す図面について説明する。図1は従来のケースの背面図であり,図2は従来のケースの底面図である。図3は本願のケースに高周波機器の取付状態を示す分解斜視図である。図4は本願のケースの背面図であり,図5は本願のケースの底面図である。図6は図4におけるA−A線要部断面図である。図7は図4におけるB−B線要部断面図である。図8は本願のケースを壁面へ取付けたときの状態を示し,図9は本願のケースをマストへ取付けた状態を示す。図10(a)は本願のF型プラグを接続する作業範囲を示す概略底面図であり,(b)は従来のケースの場合の作業範囲を示す概略底面図を示す。
【0009】
ケース1は前面が開放された本体2とその本体2の開放部を覆うよう本体2に対し開閉自在に取付けた蓋体3とから成り,更に上記本体2にはマスト取付部材5と,壁面取付部材7と,マスト取付部材5の保持部8とが備わっている。 上記本体2と蓋体3は合成樹脂材料を型成形して製造されている。この本体2において,11は背板,12は底板,12aは挿通孔,13は背板を下方へ張出させた張出片で,背板11の一部として形成されると共に,前記背板11とは異なる平面上に形成されていることで,ケース1の背面は段差を有する形状に形成されている。 上記本体には高周波回路を収納し,F型コネクター4a,4a…を備えさせた金属材料でシールドされた高周波機器4が収納される。
【0010】
次に上記マスト取付部材5は,本体2の背板11と一体形成した当付座16と,本体2に対して起倒自在の締着具17とから成る。上記当付座16において,18はマストに対する添付部,19は締着具引止用の透孔,20は締着具の上方への移行を阻止する為のストッパ,21は締着具の下倒防止用の膨出部を夫々示す。
【0011】
次に締着具17はU字形ボルト23と押え具24と締付ねじ25から成る。上記U字形ボルト23は周知のもので当付座の透孔19に挿通されており,持出部の自由端部27近くにはねじ溝が形成されている。
【0012】
次に上記押え具24は長方形状の金属板の長辺を断面略コ字形にプレスして形成されており,マスト44に対する添付部28と上記自由端部27への連結部29を備える。連結部29には周知の如く持出部の自由端部27を挿通する為の透孔が形成されており,その内の一方の透孔は図2に示されるように外部との連通部29aを有している。 上記締付ねじ25は持出部27のねじ部に螺合されており,自由端部27に取付けた止輪30(例えば軟質塩化ビニール製)でもって脱落が防止されている。
【0013】
次に上記壁面取付部材7は止着ねじ37と壁面取付用の座34構成され,当該座34は張出片13と一体に筒状に形成されており,当該座34の挿通孔35には止着ねじ37が取付けられている。張出片13は背板11の一部として形成さると共に,前記背板11とは異なる平面上に形成されている。すなわち,ケース1の背面11と張出片13とで段差を有する形状に形成されている。
【0014】
上記座34の長さは図6に示されるように,背板11が形成する平面を基準面としての張出寸法L1と,背板11に一体に形成された前記当付座16の張出寸法L2と同程度に形成してあり,太さは壁面45に対するケース1の安定な取付状態を達成できるよう形成してある。更に,上述のようにケース1の背面11には,基準面としての平面を形成する背板11と,張出片13の形成する背面13とを異なる平面で形成したので,ケース1を壁面45に取付けたときに,従来のケース1が壁面取付時に持っていた,止着ねじ37の壁面に対する螺合寸法を維持しながら,止着ねじ37の寸法を従来の止着ねじ37よりも段差分(図6におけるL2−L3分)だけ短く出来るので,材料費のコストダウンになるのである。 更にまた,上述のように張出片13を背板11に対して段差を設けて形成したので,前記底板12に一体に形成され,二重の筒部を備えたケーブルの挿通孔12aと前記止着ねじ37との離隔距離が従来と比較して広くでき,ケース1に収納された前記高周波機器4のF型コネクター4aに,ケーブルのF型プラグを接続するときの取付けの容易性が一層優れたものとなる。
【0015】
次に保持部8において,40は張出片13に形成され,前記押え具24の一部を底板12と重合する位置まで侵入させて,本体2における背板11の背面からの押え具24の出張り寸法L4を,上記座34の出張り寸法と同程度乃至はそれよりも小さくできるように形成されている収納部である。41は張出片13及び背板11と一体形成された凹部で,当該凹部41の底部41aは背板11と同一平面上になるように形成されている。また前記背板11と張出片13とをつないでいる凹部側板部41b,41bは,前記押え金具24の断面略コ字型に形成した内面側が収まるような寸法になるよう,背面11方向に突出させて形成されており,押え具24と収納部40とは重合されて保持される。また,前記凹部41の内面側であって,前記側板部41bと41bとの間隔は,前記U字型ボルト23を背板11に沿わせて収納したときに,前記U字型ボルト23が左右にぶれることなく,位置決めができるような間隔になるように形成されている。
【0016】
更に,押え具24を保持した状態でU字型ボルトは,本体における背板11と一体成型の止片46に吊り掛っているため下方への落下が防止され,かつ背板11からの浮き上がりは上記保持状態にある押え具24によって阻止される。
【0017】
上記構成のケース1は,メーカーから出荷されるに当たっては,マスト取付部材5における締着具17が図3示されるように本体2の背板11に沿わされた状態となっている。このようなケースを図9に示されるようにマスト44に取付ける場合には,マスト取付部材5における締着具17をその持出部27が膨出部21を乗り越えるように起立させる。そして周知のようにマスト44を当付座16と押え具24とでもって両側から挟み,締付ねじ25を締めてマスト44に対する固定を行う。
【0018】
一方,マスト取付状態で使用されていたケース1を図8に示されるように壁面45に対して取付ける場合は,止着ねじ37をドライバー等の工具を用いて壁に向けて螺進させることにより取付けを行う。尚,本実施例においてはU字形ボルト23,押え具24,締付ねじ25等を当付座16から外して壁面に取付けても良いし,前記部材を本体2の収納部40に収めた状態で壁面に取付けてもよい。
【0019】
上記のように取付けが済んだならば,その状態で図10に示すように本体2に収納した高周波機器4のF型コネクター4aに同軸ケーブル47のF型プラグ48の接続を行う。この作業手順としては,先ず指先で持って,F型プラグ47をF型コネクター4aに接続する。次にモンキースパナー等の工具を用いてF型プラグ48を適正トルクとなるように締め付ける。 この時,上記壁面取付部材7は止着ねじ37と壁面取付用の座34から構成され,当該座34は張出片13と一体に形成されている。張出片13は背板11の一部として形成さると共に,前記背板11とは異なる平面上に形成されている。すなわち,ケース1の背面11と張出片13とで段差を有する形状に形成されているので,ケース1を壁面に取付けたときに,従来のケース1が壁面取付時に持っていた,本願の発明によれば,止着ねじ37の壁面に対する螺合寸法を維持しながら,止着ねじ37の寸法を従来の止着ねじ37よりも短く出来るので,材料費のコストダウンになるのである。
【0020】
更にまた,上述のように張出片13を背板11に対して段差を設けて形成したので,前記底板12に一体に形成され,二重の筒部を備えたケーブルの挿通孔12aと前記止着ねじ37との離隔距離が従来と比較して広く出来るので,ケース1に収納された前記高周波機器4のF型コネクター4aに,ケーブルのF型プラグを接続するときの取付けの容易性が一層優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来のケースの背面図。
【図2】従来のケースの底面図。
【図3】本願のケースに高周波機器を収納するときの状態を示す分解斜視図。
【図4】本願のケースの背面図。
【図5】本願のケースの底面図。
【図6】図4におけるA−A線要部断面図。
【図7】図4におけるB−B線要部断面図。
【図8】本願のケースを壁面へ取付けたときの状態を示す。
【図9】本願のケースをマストへ取付けたとき状態を示す。
【図10】(a)は本願のF型プラグを接続する作業範囲を示す概略底面図であり,(b)は従来のケースの場合の作業範囲を示す概略底面図を示す。
【符号の説明】
【0022】
1…電子機器ケース(ケース),2…本体,3…蓋体,5…マスト取付部材,7…壁面取付部材,8…保持部,11…背板,12…底板,13…張出片,16…当付座,17…締着具,18…添付部,20…ストッパ,21…膨出部,23…U字形ボルト,24…押え具,25…締付ねじ,27…持出部の自由端部,28…添付部,29…連結部,29a…連通部,30…止輪,34…座,35…挿通孔,37…止着ねじ,40…収納部,41…凹部,44…マスト,45…壁面,46…止片,47…同軸ケーブル,48…F型プラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波機器を収納可能な前面が開放された本体と,この本体の開放部を覆う蓋体とから成り, 前記本体の背面の側に,マスト取付部材と壁面取付部材の両取付部材を備えた電子機器ケースにおいて,前記マスト取付部材が形成されている背面を基準面として,前記マスト取付部材の張出寸法が,前記壁面取付部材の張出寸法と同じか乃至はそれより小さくなるように形成されていると共に,前記マスト取付部材が形成されている背面と,前記壁面取付部材が形成されている背面の高さが異なるように,同一面上に段差を持たせて形成したことを特徴とした電子機器ケース。

【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−166843(P2008−166843A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67672(P2008−67672)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【分割の表示】特願2003−15190(P2003−15190)の分割
【原出願日】平成15年1月23日(2003.1.23)
【出願人】(000113665)マスプロ電工株式会社 (395)
【Fターム(参考)】