説明

電子機器筐体の製造方法、及び電子機器筐体の構造

【課題】成型性・組み立て性に優れた電子機器筐体の製造方法、及び電子機器筐体の構造を提供する。
【解決手段】筐体本体による一次成型部10と液状シリコン系接着剤70との2色成型による電子機器筐体の製造方法において、一次成型部10のシール形成部位のエッジを、シール形成用の型60の面取り部61の押し付けにより面取り形状11に潰して変形し、この面取り形状11に型60の面取り部61を押し付けた状態で、当該型60内に液状シリコン系接着剤70を充填する。これにより、型60内への液状シリコン系接着剤70の充填時における一次成型部10との間からの漏れを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2色成形による電子機器筐体の製造方法と、その製造方法によって製造された電子機器筐体の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器筐体の製造方法としては、2色成型において、図7に示すように、一次成型部110に型160を押し付けて漏れを防止したり、図8に示すように、一次成型部110に潰れるリブ形状111を用意して漏れを防止したりしていた。すなわち、図7は従来の電子機器筐体の製造方法例1を示すもので、筐体本体による一次成型部110に型160を押し付けて、例えば液状シリコン系接着剤170の充填時における漏れを防止している。図8は従来の電子機器筐体の製造方法例2を示すもので、筐体本体による一次成型部110に潰れるリブ形状111を用意して、例えば液状シリコン系接着剤170の充填時における漏れを防止している。以上により、一次成型部110に弾性成型材180が一体化成型される。
【0003】
また、電子機器筐体の構造としては、例えば防水型携帯無線機の場合は、図6に示すように、外部との機密を保つ為にOリング150を使用していた。すなわち、図6は従来の電子機器筐体の構成例を示すもので、筐体本体を構成する上下のケース部材の一方のケース部材110のキーパッド部に弾性部材120を使用するとともに、サイドキー部にも弾性部材130を使用して、他方のケース部材との合わせ面にOリング150を適用したものである。
【0004】
また、エラストマーを可動部に使用した例もある。
【0005】
そして、例えば特許文献1により、シリコーンゴム接着剤組成物と熱可塑性樹脂の一体成型体を得る場合において、成型用金型に接着せずかつ熱可塑性樹脂を変形させずに接着する手法が知られる。
【特許文献1】特開2004−331820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した従来の電子機器筐体の製造方法は、例えば液状シリコン系接着剤を使用した2色成型によってシール部位を成型する場合、図7に示したように、一次成型部110に対する型160の押し付け圧を高めたり、図8に示したように、一次成型部110に潰れるリブ111を形成したりしたが、液状シリコン系接着剤の粘度の低さによって型からの漏れが発生し易く、漏れ止めに苦慮していた。
【0007】
また、電子機器筐体の構造は、図6に示したように、外部との機密を保つ為にOリング150を使用していたが、「組み立て性」が悪かった。また、エラストマーはOリング150の代替としては「耐久性」及び「熱への弱さ」から適用が見送られていた。
【0008】
そして、特許文献1のように、シリコーンゴム接着剤組成物と熱可塑性樹脂の一体成型体を得る場合において、成型用金型に接着せずかつ熱可塑性樹脂を変形させずに接着するが、一体成型する際に、接着剤が漏れないように形状などを工夫するものではない。
【0009】
本発明の課題は、成型性・組み立て性に優れた電子機器筐体の製造方法、及び電子機器筐体の構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、筐体本体による一次成型部と液状シリコン系接着剤との2色成型による電子機器筐体の製造方法において、前記一次成型部のシール形成部位のエッジを、シール形成用の型の押し付けにより面取り形状に潰して変形し、この面取り形状に前記型を押し付けた状態で、当該型内に前記液状シリコン系接着剤を充填することを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、筐体本体による一次成型部と液状シリコン系接着剤との2色成型による電子機器筐体の製造方法において、前記一次成型部にシールを形成する型内に、前記一次成型部のシール形成部位の両側面にそれぞれ押し付けられるシーリングを設け、このシーリングを前記一次成型部のシール形成部位の両側面にそれぞれ押し付けた状態で、前記型内に前記液状シリコン系接着剤を充填することを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の電子機器筐体の製造方法によって製造された電子機器筐体の構造を特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の電子機器筐体の構造において、前記筐体本体を構成する上下のケース部材の一方に、前記液状シリコン系接着剤の弾性成型材を一体化成型したことを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の電子機器筐体の構造において、前記一方のケース部材に、前記弾性成型材によるシールを一体化成型したことを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項4または5に記載の電子機器筐体の構造において、前記一方のケース部材に、前記弾性成型材による可動部を一体化成型したことを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の電子機器筐体の構造において、前記可動部は、前記一方のケース部材の孔部に設けられる可動プラグであることを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項6に記載の電子機器筐体の構造において、前記可動部は、前記一方のケース部材の内面部に設けられるキーパッドであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、成型性・組み立て性に優れた電子機器筐体の構造、及び電子機器筐体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、電子機器筐体の製造方法として、液状シリコン系接着剤70を使用した2色成型において、一次成型部10のエッジを型60の押し付けを利用して面取り形状11に潰したり(図2参照)、漏れ止めシーリング80を型60に配置したり(図3参照)することで、液状シリコン系接着剤70を使用した場合に起こり易い成型時の漏れを防止するものである。
【0020】
また、本発明は、電子機器筐体の構造として、上記電子機器筐体の製造方法によって、可動部のプラグ構造と筐体合わせ面のOリング構造、または可動部のエラストマー成型構造と筐体合わせ面のOリング構造を、液状シリコン系接着剤による弾性成型材20・30・40を使用し一部品化するもの(図1参照)である。
【0021】
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
図1は本発明を適用した電子機器筐体の一実施形態の構成を示すもので、筐体本体を構成する上下のケース部材の一方のケース部材10のキーパッド部に、液状シリコン系接着剤による弾性成型材20を使用するとともに、サイドキー部にも、液状シリコン系接着剤による弾性成型材30を使用して、他方のケース部材との合わせ面に、液状シリコン系接着剤による弾性成型材(シール)40を適用したものである。
【0022】
(実施形態1)
図2は本発明を適用した電子機器筐体の実施形態1の製造方法を示すもので、一方のケース部材10の他方のケース部材との合わせ面に、液状シリコン系接着剤による弾性成型材のシール40を一体化成型する場合を例に挙げて説明する。
ここで、ケース部材10は、塑性変形可能な樹脂により形成されている。また、シール40は、液状シリコン系接着剤のPC、PBT、ナイロンなどにより形成される。なお、樹脂はPC、PBT、ナイロンなどと接着しやすい。
【0023】
まず、成型前を示した図2(a)において、シール形成用の型60に、その型内の開口の両側のエッジを予め斜めに面取り加工した面取り部61を形成しておく。
次に、成型中は、図2(b)に示したように、ケース部材である一次成型部10のシール形成部位のエッジを、型60の面取り部61の押し付けにより面取り形状11に潰して変形し、この面取り形状11に型60の面取り部61を押し付けた状態で、当該型60内に液状シリコン系接着剤70を充填する。
そして、成型後は、離型することで、図2(c)に示したように、一次成型部10に弾性成型材によるシール40が2色成型された筐体構造が得られる。
【0024】
このように、一次成型部10のシール形成部位のエッジを、型60を利用して面取り形状11に潰して変形することで、型60内に充填する液状シリコン系接着剤70が一次成型部10との間から漏れるのを防止できる。
従って、漏れ止めリブ構造が不要となるばかりで無く、これまで構造上圧力をかけられなかった薄肉・低剛性部位や、リブを形成できなった微小部位にもシール40を形成することができる。
【0025】
(実施形態2)
図3は本発明を適用した電子機器筐体の実施形態2の製造方法を示すもので、前述した実施形態1と同様、一方のケース部材10の他方のケース部材との合わせ面に、液状シリコン系接着剤による弾性成型材のシール40を一体化成型する場合を例に挙げて説明する。
【0026】
まず、成型前を示した図3(a)において、型60内に、一次成型部10のシール形成部位の両側面にそれぞれ押し付けられるシーリング80を設けておく。
次に、成型中は、図3(b)に示したように、一次成型部10のシール形成部位の両側面に対し、型60内のシーリング80をそれぞれ押し付けた状態で、型60内に液状シリコン系接着剤70を充填する。
そして、成型後は、離型することで、図3(c)に示したように、一次成型部10に弾性成型材によるシール40が2色成型された筐体構造が得られる。
【0027】
このように、一次成型部10のシール形成部位の両側面にそれぞれ押し付けられるシーリング80を型60内に設けておくことによって、漏れを防止し、構造上圧力をかけられなかった薄肉・低剛性部位や、リブを形成できなった微小部位にもシール40を形成することができる。
また、一次成型部10の押さえ台を削減できることから、実施形態のように、薄肉化も可能となり、つまり、一次成型部10への負荷を削減し容易なシール部成型を実現できる。
【0028】
(可動プラグ構造例)
次に、図4は図1の筐体側面部に構成されるサイドキー部30の可動プラグの構造例を示したもので、シール40を2色成型する一次成型部10には、同時に2色成型する弾性成型材によるサイドキー部30に可動プラグ31が一体に形成されている。この可動プラグ31は、図示のように、一次成型部10の貫通孔に接着されて、外部に向けて開放されたキャップ状のもので、底部にキー押圧部32を有している。そして、可動プラグ31内には、外側から図示しないキートップが配置される。
【0029】
このように、一次成型部10に液状シリコン系接着剤の弾性成型材によるシール40を一体化成型したことによって、「外環境への耐久性」と「組み立て性」が向上するとともに、シール40の一体成型でシール面が減ることによって漏れの危険性が少なくなる効果が期待できる。
しかも、これまで構造上圧力をかけられなかった薄肉・低剛性部位や、リブを形成できなった微小部位にもシール40部及び可動プラグ31を形成することができる。
そして、シール40部と筐体部とを一体化するとともに、可動プラグ31と筐体部とを一体化したので、組み立て性と品質を向上させることができる。
【0030】
(キーパッド部構造例)
次に、図5は図1の筐体平面部に構成されるキーパッド部20の構造例を示したもので、シール40を2色成型する一次成型部10の平面部には、同時に2色成型する弾性成型材によるキーパッド部20に可動部のキー押圧部21が一体に形成されている。このキー押圧部21は、図示のように、一次成型部10の貫通孔に接着されて、外部に突出されている。そして、キー押圧部21は、その外面にキートップ22が後から接着されて、内方の突出部が、キー基板23上のキードーム24上に配置されている。
【0031】
このように、可動部のキー押圧部21と筐体部とを一体化したので、組み立て性と品質を向上させることができる。
【0032】
以上、電子機器筐体の製造方法による効果は次のとおりである。
まず、一次成型部10のシール形成部位のエッジを、型60を利用して面取り形状11に潰すことにより漏れを防止することによって、漏れ止めリブ構造が不要となるばかりで無く、これまで構造上圧力をかけられなかった薄肉・低剛性部位や、リブを形成できなった微小部位にもシール部・可動部を形成することができる。
【0033】
また、型60にシーリング80を形成することによって、漏れを防止し、構造上圧力をかけられなかった薄肉・低剛性部位や、リブを形成できなった微小部位にもシール部・可動部を形成することができる。また、一次成型部10の押さえ台を削減できることから薄肉化も可能となる。つまり、一次成型部10への負荷を削減し容易なシール40部成型を実現することができる。
【0034】
そして、電子機器筐体の構造による効果は次のとおりである。
まず、一次成型部10に液状シリコン系接着剤の弾性成型材によるシール40を一体化成型したことによって、「外環境への耐久性」と「組み立て性」が向上するとともに、シール40の一体成型でシール面が減ることによって漏れの危険性が少なくなる効果が期待できる。
【0035】
また、シール40部と筐体部とを一体化したので、組み立て性と品質を向上させることができる。
【0036】
また、可動部(可動プラグ31部、キーパッド部20)と筐体部とを一体化したので、組み立て性と品質を向上させることができる。
【0037】
なお、以上の実施形態においては、2色成型としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、一次成型部が塑性変形可能なアルミやステンレス等の金属の場合はインサート成型であっても良い。
また、可動プラグ部やキーパッド部についても、本発明に係る電子機器筐体の製造方法は適用可能である。
さらに、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明を適用した電子機器筐体の一実施形態の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明を適用した電子機器筐体の実施形態1の製造方法を示すもので、成型前を示した説明図(a)、成型中を示した説明図(b)、成型後を示した説明図(c)である。
【図3】本発明を適用した電子機器筐体の実施形態2の製造方法を示すもので、成型前を示した説明図(a)、成型中を示した説明図(b)、成型後を示した説明図(c)である。
【図4】図1の筐体側面部に構成されるサイドキー部の可動プラグの構造例を示した拡大断面図である。
【図5】図1の筐体平面部に構成されるキーパッド部の構造例を示した拡大断面図である。
【図6】従来の電子機器筐体の構成例を示す斜視図である。
【図7】従来の電子機器筐体の製造方法例1を示すもので、成型前を示した説明図(a)、成型中を示した説明図(b)、成型後を示した説明図(c)である。
【図8】従来の電子機器筐体の製造方法例2を示すもので、成型前を示した説明図(a)、成型中を示した説明図(b)、成型後を示した説明図(c)である。
【符号の説明】
【0039】
10…一次成型部、11…面取り形状、20…弾性成型材(キーパッド部)、21…キー押圧部、22…キートップ、23…キー基板、24…キードーム、30…弾性成型材(サイドキー部)、31…可動プラグ、32…キー押圧部、40…弾性成型材(シール)、60…型、61…面取り部、70…液状シリコン系接着剤、80…シーリング、110…一次成型部、120…弾性部材、130…弾性部材、150…Oリング、160…型、170…液状シリコン系接着剤、180…弾性成型材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体本体による一次成型部と液状シリコン系接着剤との2色成型による電子機器筐体の製造方法において、
前記一次成型部のシール形成部位のエッジを、シール形成用の型の押し付けにより面取り形状に潰して変形し、
この面取り形状に前記型を押し付けた状態で、当該型内に前記液状シリコン系接着剤を充填することを特徴とする電子機器筐体の製造方法。
【請求項2】
筐体本体による一次成型部と液状シリコン系接着剤との2色成型による電子機器筐体の製造方法において、
前記一次成型部にシールを形成する型内に、前記一次成型部のシール形成部位の両側面にそれぞれ押し付けられるシーリングを設け、
このシーリングを前記一次成型部のシール形成部位の両側面にそれぞれ押し付けた状態で、前記型内に前記液状シリコン系接着剤を充填することを特徴とする電子機器筐体の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子機器筐体の製造方法によって製造されたことを特徴とする電子機器筐体の構造。
【請求項4】
前記筐体本体を構成する上下のケース部材の一方に、前記液状シリコン系接着剤の弾性成型材を一体化成型したことを特徴とする請求項3に記載の電子機器筐体の構造。
【請求項5】
前記一方のケース部材に、前記弾性成型材によるシールを一体化成型したことを特徴とする請求項4に記載の電子機器筐体の構造。
【請求項6】
前記一方のケース部材に、前記弾性成型材による可動部を一体化成型したことを特徴とする請求項4または5に記載の電子機器筐体の構造。
【請求項7】
前記可動部は、前記一方のケース部材の孔部に設けられる可動プラグであることを特徴とする請求項6に記載の電子機器筐体の構造。
【請求項8】
前記可動部は、前記一方のケース部材の内面部に設けられるキーパッドであることを特徴とする請求項6に記載の電子機器筐体の構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−265165(P2008−265165A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−112015(P2007−112015)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(504149100)株式会社カシオ日立モバイルコミュニケーションズ (893)
【Fターム(参考)】