説明

電子機器

【課題】フロントパネルと天板との隙間の発生を抑えるとともに、天板の位置ずれを抑え、天板の取り外しを防止し、コストを抑えた電子機器を提供する。
【解決手段】フロントパネル2と天板3とを組み付けるための連結手段、及び天板3の位置を規制する位置規制手段を設ける。連結手段は、天板3の前方で下方へ屈曲する屈曲片32の先端より天板3に対して略水平に延設した舌片31と、舌片31の一部を切り欠いて屈曲片32の先端より下方に延設する挿通片33と、フロントパネル2の内面より後方へ延設した挿通片33が嵌る挿通孔23を形成した支持片とにより構成する。位置規制手段は、屈曲片32に形成する貫通孔と、フロントパネル2の内面より後方へ延設した貫通孔に挿通する突起部とにより構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントパネルと天板とシャーシにより外観を構成する電子機器に関し、特に外観を構成する部品を組み付けた後で容易に取り外すことが不可能であり、且つフロントパネルに組み付けた天板の位置を規制可能とした電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、CDプレーヤやDVDプレーヤ、DVDレコーダやビデオカセットレコーダなどの電子機器では、シャーシに再生又は記録及び再生を行うためのユニット(以下、総称して記録再生ユニットと称す)、並びに電源基板や各種制御基板を含む電子部材を組み付け、このシャーシの前面側にフロントパネルを組み付けた後、シャーシの上面側より天板を組み付ける構造としている。
【0003】
更に詳述すれば、フロントパネルはシャーシとの間でフックなどの係止手段を用いて固定し、シャーシの上面を覆う天板は両側面を下方(シャーシ側)に屈曲した略コ字状に形成してあり、対向するシャーシの側面には上方(天板側)に僅かに屈曲して天板との重ね合せ部を形成し、前記天板と前記シャーシとの重ね合せ部でねじ等の締結部品を用いて固定することとなる。
【0004】
ところで、フロントパネルは合成樹脂により成形することが多く、天板は金属製の板材を屈曲して成形する場合がほとんどであり、この異なる材質により形成された部材の連結においては、寸法誤差や変形、或いは撓み等が原因で連結部分に隙間が生じることとなり、電子機器としての製品の品位を損なう要因とされていた。即ち、合成樹脂製のフロントパネルの成形時に寸法のバラツキが生じたり、或いは金属性の天板に撓み変形が生じたりすることによって、前記フロントパネルと前記天板とを組み付けた際に連結部分で隙間が生じたり、或いは前記天板の撓み変形の影響を受けてフロントパネルの上面が変形したりするなどの不具合が生じていた。
【0005】
上述の不具合は電子機器の外観寸法にも関係しており、高さ寸法に比べて奥行き寸法が大きく、また奥行き寸法に比べて幅寸法が大きい電子機器においては、フロントパネルと天板との連結部分、特に前記電子機器の上部における連結部分では、微小な寸法誤差や変形に対しても隙間が顕著に現れることとなり、従来種々の対策が提案されている。
【0006】
特許文献1は、フロントパネルと天板との連結部分における隙間をなくす技術を開示している。具体的には、フロントパネルの上板部とトップカバーの板金製の天板部とを結合する結合手段が、天板部側の嵌合片とフロントパネル側の凹入部と嵌合片支え部と当り部と受け部とでなる支持結合機構と、天板部側の脚片とフロントパネル側のスライド面とでなる支持機構と、ねじ止め機構とを備えており、スライド面で脚片の摺動部をスライドさせながらトップカバーをフロントパネルに後方から近付けていく組立て動作を通じて嵌合片が凹入部に上方から嵌合する構造としている。
【0007】
【特許文献1】特開2005−294728号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されている技術を用いた場合、フロントパネルと天板との隙間をなくして組み付けることが可能であると考えられるが、以下のような問題が生じる可能性がある。
【0009】
先ず、位置ずれや撓みが生じやすいという問題がある。特許文献1に開示されている技術によれば、天板のねじ固定箇所には前記ねじが挿通可能な大きさの貫通孔を形成し、この貫通孔にねじを挿通してシャーシの重ね合せ部に螺着する構造としているため、貫通孔の大きさ分だけ天板がずれて固定される可能性がある。即ち、フロントパネルに天板を組み付けた状態において、フロントパネルと天板との間で機器の高さ方向(電子機器を水平面に設置した状態での垂直方向)での位置ずれが生じる可能性がある。又、フロントパネルの両側部に支持結合機構を設けているため、電子機器の中央部分においては天板のずれ以外にも撓みなどが生じ易い。特にDVDレコーダなどの据え置き機器においては幅方向の寸法が他の寸法(機器の高さ寸法及び奥行き寸法)に比べて大きい場合が多く、その分フロントパネルと天板との連結する上面での辺が長いことから、位置ずれや撓みが顕著に現れる。
【0010】
又、容易に天板を取り外すことが出来るという問題がある。特許文献1に開示されている技術によれば、天板の固定をねじのみによって行う構造となっており、このねじを取り除くことによって誰でも容易に天板を取り外すことが出来る。そのため、例えば電子機器のねじをユーザが取り外して電子機器の外観上部を覆う天板を取り外し、前記電子機器内部の部品に不用意に触れて発火や感電を誘発する可能性がある。
【0011】
更に、コストが高くなるという問題がある。特許文献1に開示されている技術によれば、フロントパネルの両側部分に支持結合機構を設けているが、この形状がトップカバーの嵌合片をスライドして嵌める構造となっているため、成形が難しくなり、又金型も複雑となることからコストの増加に繋がる。
【0012】
本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであり、フロントパネルと天板との隙間の発生を抑えるとともに、天板の位置ずれを抑え、天板の取り外しを防止し、コストを抑えた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の電子機器は、シャーシと、前記シャーシの前面に組み付けるフロントパネルと、前記シャーシの上面を覆う天板とにより外観を構成する電子機器であって、前記フロントパネルと前記天板とを組み付けるための連結手段を設けるとともに、前記フロントパネルに対する前記天板の位置を規制する位置規制手段を別途設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項1に記載の電子機器によれば、連結手段によってフロントパネルと天板とを組み付けることが出来るとともに、位置規制手段によってフロントパネルに対して天板の位置を規制することが出来る。
【0015】
請求項2に記載の電子機器は、請求項1において、前記連結手段を前記天板の前方において下方へ屈曲する屈曲片の先端より前記天板に対して略水平に延設した舌片と、前記舌片の一部を切り欠いて前記屈曲片の先端より下方に延設する挿通片と、前記フロントパネルの内面より後方へ延設した前記挿通片が嵌る挿通孔を形成した支持片とにより構成したことを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の電子機器によれば、簡素な形状の連結手段によって、天板に形成した挿通片がフロントパネルの支持片に形成した挿通孔に嵌りフロントパネルと天板とを組み付けることが出来るとともに、フロントパネルに対する天板の奥行き方向への位置規制を実現することが出来る。
【0017】
請求項3に記載の電子機器は、請求項1又は2において、前記位置規制手段を前記天板の前方において下方へ屈曲する屈曲片に形成する貫通孔と、前記フロントパネルの内面より後方へ延設した前記貫通孔に挿通する突起部とにより構成したことを特徴とする。
【0018】
請求項3に記載の電子機器によれば、簡素な形状の位置規制手段によって、天板に形成した貫通孔にフロントパネルの突起部が挿通してフロントパネルに対する天板の高さ方向への位置規制を実現することが出来る。
【0019】
請求項4に記載の電子機器は、請求項1乃至3の何れか1項において、前記連結手段をフロントパネル及び天板の両側部近傍に夫々設け、前記位置規制手段を前記連結手段の間に単数又は複数設けたことを特徴とする。
【0020】
請求項4に記載の電子機器によれば、連結手段及び位置規制手段を効率的に配置することが出来る。
【0021】
請求項5に記載の電子機器は、請求項1乃至4の何れか1項において、高さ寸法より奥行き寸法が大きく、且つ奥行き寸法より幅寸法が大きいことを特徴とする。
【0022】
請求項5に記載の電子機器によれば、高さ寸法より奥行き寸法が大きく、且つ奥行き寸法より幅寸法が大きい、一般的に据え置き製品で多く用いられている形状の外観におけるフロントパネルと天板との組み付け及び位置決めに適用することが出来る。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、連結手段によって、フロントパネルと天板とを組み付けることが出来るとともに、フロントパネルに対する天板の奥行き方向への位置規制を実現することが出来るため、フロントパネルと天板との間における隙間の発生を抑えた電子機器を提供することが出来る。
【0024】
更に、本発明によれば、位置規制手段によって、フロントパネルに対する天板の高さ方向への位置規制を実現することが出来るため、天板の位置ずれを抑えた電子機器を提供することが出来る。
【0025】
更に、本発明によれば、連結手段及び位置規制手段によって奥行き方向及び高さ方向の位置規制を実現することが出来るとともに、連結手段によってフロントパネルと天板とを組み付けることが出来るため、組み付け後に天板を容易に取り外すことを防止した電子機器を提供することが出来る。これにより、ユーザが誤って電子機器内部の部品に触れることを防止することが可能となる。
【0026】
更に、本発明によれば、連結手段及び位置規制手段を簡易な形状で実現することが出来るとともに、連結手段及び位置規制手段を効率的に配置することが出来るため、形成が簡易な電子機器を提供することが出来る。これにより、金型コストの削減が可能となる。
【0027】
更に、本発明によれば、一般に据え置き製品において多く用いられている形状(高さ寸法より奥行き寸法が大きく、且つ奥行き寸法より幅寸法が大きい形状)の外観においても、上述の効果が得られるため、このような外観の電子機器を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。尚、以下の実施例は本発明の具体例に過ぎず、本発明が以下の実施形態に限定されるものではない。
【0029】
図1は、本実施例の電子機器の外観を構成するフロントパネル2、天板3及びシャーシ4を示す分解斜視図であり、同図に示すシャーシ4には、電子部材が組み付けられている。シャーシ4の上面を覆う天板3は両側面を下方(シャーシ4側)に屈曲した略コ字状に形成してあり、対向するシャーシ4の側面には上方(天板3側)に僅かに屈曲して天板3との重ね合せ部が形成されている。そして、シャーシ4の前面側にフロントパネル2を組み付けた後、シャーシ4の上面側より天板3を組み付ける構造となっている。
【0030】
図2は、フロントパネル2の内面側を示す斜視図である。フロントパネル2の両側部近傍に内面より後方(図2においては上方)へ延設した挿通孔23を形成した支持片21を設け、その支持片21の間に後方(図2においては上方)へ延設した突起部22を設けている。図3は、フロントパネル2における支持片21の近傍の形状を示す断面斜視図である。図4は、フロントパネル2における突起部22の近傍の形状を示す断面斜視図である。
【0031】
図5は、天板3を示す斜視図であり、前記天板3の前方において、下方へ屈曲する屈曲片32が形成され、この屈曲片32の先端より天板3に対して略水平に舌片31が形成されている。更に、舌片31の一部を切り欠いて屈曲片32の先端より下方に延設する挿通片33と、屈曲片32に貫通孔34が形成されている(円Aは挿通片33が形成されている位置を、円Bは貫通孔34が形成されている位置を夫々示す)。図6は、挿通片33の近傍(図5の円A内)を示す斜視図である。図7は、貫通孔34の近傍(図5の円B内)を示す斜視図である。
【0032】
支持片21に形成された挿通孔23に、挿通片33が嵌ることで、連結手段の機能を実現する。又、突起部22が貫通孔34に嵌ることで、位置規制手段の機能を実現する。
【0033】
図8は、フロントパネル2に天板3を組み付ける前の連結手段近傍の状態を示す側面断面図であり、図9は、フロントパネル2に天板3を組み付けた後の連結手段近傍の状態を示す側面断面図である。このようにして、フロントパネル2と天板3との組み付け、及び奥行き方向(図8及び図9では横方向)の位置規制を実現することが出来る。
【0034】
図10は、フロントパネル2に天板3を組み付ける前の位置規制手段近傍の状態を示す側面断面図であり、図11は、フロントパネル2に天板3を組み付けた後の位置規制手段近傍の状態を示す側面断面図である。このようにして、高さ方向(図10及び図11では縦方向)の位置規制を実現することが出来る。
【0035】
以上述べたように、本発明では、フロントパネルと天板との間における隙間の発生を抑えた電子機器を提供することができる。更に、本発明では、天板の位置ずれを抑えた電子機器を提供することが出来る。更に、本発明では、組み付け後に天板を容易に取り外すことを防止した電子機器を提供することが出来る。更に、本発明では、形成が簡易な電子機器を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施例の電子機器の外観を構成するフロントパネル、天板及びシャーシを示す分解斜視図である。
【図2】同上、フロントパネルの内面側を示す斜視図である。
【図3】同上、フロントパネルにおける支持片近傍の形状を示す断面斜視図である。
【図4】同上、フロントパネルにおける突起部近傍の形状を示す断面斜視図である。
【図5】同上、天板を示す斜視図である。
【図6】同上、天板の挿通片近傍を示す斜視図である。
【図7】同上、天板の貫通孔近傍を示す斜視図である。
【図8】同上、フロントパネルに天板を組み付ける前の連結手段近傍の状態を示す側面断面図である。
【図9】同上、フロントパネルに天板を組み付けた後の連結手段近傍の状態を示す側面断面図である。
【図10】同上、フロントパネルに天板を組み付ける前の位置規制手段近傍の状態を示す側面断面図である。
【図11】同上、フロントパネルに天板を組み付けた後の位置規制手段近傍の状態を示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0037】
2 フロントパネル
3 天板
4 シャーシ
21 支持片
22 突起部
23 挿通孔
31 舌片
32 屈曲片
33 挿通片
34 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャーシと、前記シャーシの前面に組み付けるフロントパネルと、前記シャーシの上面を覆う天板とにより外観を構成する電子機器であって、前記フロントパネルと前記天板とを組み付けるための連結手段を設けるとともに、前記フロントパネルに対する前記天板の位置を規制する位置規制手段を別途設けたことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記連結手段を前記天板の前方において下方へ屈曲する屈曲片の先端より前記天板に対して略水平に延設した舌片と、前記舌片の一部を切り欠いて前記屈曲片の先端より下方に延設する挿通片と、前記フロントパネルの内面より後方へ延設した前記挿通片が嵌る挿通孔を形成した支持片とにより構成したことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記位置規制手段を前記天板の前方において下方へ屈曲する屈曲片に形成する貫通孔と、前記フロントパネルの内面より後方へ延設した前記貫通孔に挿通する突起部とにより構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記連結手段をフロントパネル及び天板の両側部近傍に夫々設け、前記位置規制手段を前記連結手段の間に単数又は複数設けたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の電子機器。
【請求項5】
高さ寸法より奥行き寸法が大きく、且つ奥行き寸法より幅寸法が大きいことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−207824(P2007−207824A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−22130(P2006−22130)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(390001959)オリオン電機株式会社 (427)
【Fターム(参考)】