説明

電子装置

【課題】シール性及び放熱性を確保するとともに、コストを低減することができる電子装置を提供すること。
【解決手段】回路基板10と、回路基板10を収容するケース20とベース30からなる筐体と、ケース20とベース30との間に介在し、回路基板10が収容される空間を防水空間とするシール材40と、ベース30とプリント基板11における電子部品実装部位の裏面との間に介在する柔軟性を備えた熱伝導材50と、を含む電子装置100であって、発熱素子12aはプリント基板11の周縁部位に実装され、プレス加工により成形されるベース30の、熱伝導材50の配置部位とシール材40の配置部位との間に、プレス加工によりベース30の一部として一体的に構成され、熱伝導材50の配置部位に対して内面側に突起する突起部35を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板を筐体内に収容した状態で、シール材にてシールしてなる防水構造の電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両等に搭載される電子装置として、特許文献1には、回路基板を収容する筐体を放熱板として利用し、プリント基板に電子部品が実装されてなる回路基板を、柔軟性を有する熱伝導材を介して筐体へ熱的に接続する放熱構造が開示されている。このように柔軟性を有する熱伝導材を、筐体とプリント基板、若しくは、筐体と電子部品との間に配置すると、放熱性を向上することができる。
【0003】
また、特許文献2には、電子回路部品を収容する容器と蓋との間にシール材を介在させた構成の電子装置が開示されている。このようにシール部材を用いて容器と蓋をシールすると、電子回路部品が収容される空間を防水空間とすることができる。
【特許文献1】特開2003−289191号公報
【特許文献2】特開2005−93602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に示す構成において、放熱性を向上するために電子部品をプリント基板の周縁部位に実装し、防水性をもたせるために特許文献2に示すシール材を適用した場合、例えば硬化前の状態で流動性を有するシール材が筐体の内部空間に流れ込み、熱伝導材と接触することが考えられる。このようにシール材と熱伝導材が接触すると、シール材が所望のシール性を発揮できない、熱伝導材が所望の放熱性を発揮できない等の不具合が生じる恐れがある。そこで、両者の接触を防ぐために、筐体に溜り部として溝を形成することが考えられる。尚、回路基板の周縁部に対応する筐体の外周面には、一般的に取り付け部に取り付けるための取り付け用部材(例えばブラケット)が固定されている。または、取り付け用部材が筐体の一部として構成されている。従って、電子部品をプリント基板の周縁部位に実装すると、取り付け用部材までの放熱経路を短くすることができるので、放熱性を向上することができる。
【0005】
一般的に電子装置を構成する筐体の形成には、ダイカスト等の金型鋳造法(鋳造加工)やプレス加工法(塑性加工)が採用されている。金型鋳造法の場合、アルミニウム等の金属材料や樹脂材料を溶融状態で型内に注ぎ、筐体を形成するので、複雑な形状に対応しやすい。しかしながら、装置が複雑であり、製造コストが高いという問題がある。
【0006】
これに対し、プレス加工法の場合、金型鋳造法と比べて、装置が簡素であり、製造コストを低減することができる。しかしながら、原材料に圧力を加えて変形させるため、複雑な形状に対応するのは困難である。すなわち、シール材を溜める溝として、幅が狭く、深さの深い溝を形成する(小R加工する)ことは困難である。例えば幅が狭く浅い溝を形成した場合には、溝内に溜めることができるシール材の量が少ないので、シール材が溝を越えて、熱伝導材に接触する恐れがある。また、幅の広い溝を形成した場合には、シール材が溝を越えて熱伝導材に接触することを防ぐことはできるものの、プリント基板に対する電子部品の実装位置が溝幅の分だけ周縁部位から遠ざかるため、放熱性が低下することとなる。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑み、シール性及び放熱性を確保するとともに、コストを低減することができる電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、プリント基板に発熱する電子部品を実装してなる回路基板と、回路基板を収容する、ケースとカバーからなる筐体と、ケースとカバーとの間に介在し、回路基板が収容される空間を防水空間とするシール材と、筐体と電子部品との間、及び、筐体とプリント基板における電子部品実装部位の裏面との間、の少なくとも一方に介在する、柔軟性を備えた熱伝導材と、を含む電子装置であって、電子部品は、プリント基板の周縁部位に実装されており、筐体は、プリント基板に対して熱伝導材が配置される側のケース又はカバーが少なくともプレス加工により成形されており、熱伝導材の配置部位とシール材の配置部位との間に、プレス加工により筐体の一部として一体的に構成され、熱伝導材の配置部位に対して内面側に突起する突起部を有することを特徴とする。
【0009】
このように本発明によれば、プリント基板に対して熱伝導材が配置される側の筐体の構成要素(ケース、カバー、或いはその両方)がプレス加工により成形されている。従って、ダイカストや樹脂射出成形等の金型鋳造法を用いる場合よりも製造コストを低減することができる。
【0010】
また、筐体の熱伝導材の配置部位とシール材の配置部位との間に突起部が形成されている。溝部の場合、堰き止め能力(シール材、熱伝導材に対する)は溝内の容積で決定されるが、突起部の場合、突起高さと突起部に連結する突起部よりも高さの低い領域(筐体)の面積によって決定される。すなわち、同じ堰き止め能力であっても、熱伝導材の配置部位に対する溝部の深さより突起部の高さを短く(低く)することができるので、溝部よりも幅を狭くすることができる。従って、シール材と熱伝導材の接触を防ぎつつ、電子部品をできる限りプリント基板の周縁部位に配置することができるので、シール性と放熱性を確保することができる。
【0011】
尚、本発明においては、突起部を筐体の一部として構成しているので、部品点数を削減することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、プリント基板に発熱する電子部品を実装してなる回路基板と、回路基板を収容する、ケースとカバーからなる筐体と、ケースとカバーとの間に介在し、回路基板が収容される空間を防水空間とするシール材と、筐体と電子部品との間、及び、筐体とプリント基板における電子部品実装部位の裏面との間、の少なくとも一方に介在する、柔軟性を備えた熱伝導材と、を含む電子装置であって、電子部品は、プリント基板の周縁部位に実装されており、筐体は、プリント基板に対して熱伝導材が配置される側のケース又はカバーが少なくともプレス成形されており、熱伝導材の配置部位とシール材の配置部位との間に、筐体とは別部材からなり、熱伝導材の配置部位に対して内面側に突起する突起部を有することを特徴とする。
【0013】
このように本発明によっても、請求項1に記載の発明同様、プレス加工を採用しているので、製造コストを低減することができる。
【0014】
また、筐体の熱伝導材の配置部位とシール材の配置部位との間に突起部が形成されているので、シール性と放熱性を確保することができる。
【0015】
尚、本発明においては、突起部を筐体とは別部材として構成しているので、プレス加工により筐体の一部として突起部を構成する場合よりも、突起部の形状を自由に設定することができる。すなわち、請求項1に記載の発明よりも、突起高さを高くしたり、幅を狭くしたりすることができる。
【0016】
請求項3に記載のように、突起部が、熱伝導材の配置部位とシール材の配置部位との間の、近接する対向部位間にのみ設けられた構成を採用しても良い。
【0017】
近接する対向部位間にのみ突起部が設けられていれば、シール材と熱伝導材の接触を防ぐことができる。特に、プレス加工によって突起部を構成する場合には、プレス加工により筐体に生じる歪をできる限り抑える(すなわち、プレス加工による成形負荷を低減する)ことができる。
【0018】
請求項4に記載のように、突起部が、熱伝導材の配置部位の外周端の少なくとも一部に沿って環状に設けられた構成を採用しても良い。
【0019】
この場合、シール材と熱伝導材の接触をより確実に防ぐことができる。また、環状の突起部によって、熱伝導材の移動を抑制することができる。すなわち、振動等が印加されても、放熱性を確保することができる。また、組み付け時に、先に筐体側に熱伝導材を配置する場合には、突起部で規定される領域に熱伝導材を配置すれば良いので、所望の位置に熱伝導材を配置することができる。
【0020】
請求項5に記載のように、突起部の突起高さが、プリント基板の表面に接触しない高さに設定された構成とすると良い。これにより、筐体が導電材料からなる場合であっても、プリント基板とのショートを防ぐことができる。
【0021】
また、請求項6に記載のように、突起部の突起高さが、筐体の熱伝導材の配置部位と、対向するプリント基板の表面と、の間隔と略等しく設定されており、プリント基板が、突起部との接触部位として、電気的な接続機能を提供しない領域を有する構成としても良い。
【0022】
このように構成しても、請求項5と同様の作用効果を期待することができる。また、突起部によってプリント基板を支持することで、プリント基板の変形を抑制することができる。尚、この場合、プリント基板に突起部に対応して電気的な接続機能を提供しない領域を構成する必要があるので、突起部はできる限り小さい方が好ましい。
【0023】
請求項7に記載のように、プリント基板はケース又はカバー上に載置され、プリント基板の端面と、当該端面と対向するケース又カバーと、の間に隙間が構成されており、当該隙間にシール材が配置された構成としても良い。このように構成すると、簡素な構成でありながら、ケースとカバーを接着するとともに、できる限り熱伝導材が配置される内部空間側へシール材が流れ込むのを防ぐことができる。
【0024】
請求項8に記載のように、ケース又はカバーは、隙間を形成する空間形成部と、当該空間形成部からつながり、プリント基板と対向配置される平坦部と、当該平坦部からつながり、突起部が設けられる底部とを備え、平坦部とプリント基板との距離よりも、底部とプリント基板との距離の方が大きい構成とすると良い。
【0025】
シール材は空間形成部に配置されるが、その流動性(粘性)から、平坦部、底部へと行き渡ることとなる。従って、シール材が配置される空間形成部と底部との間に平坦部が設けられることによって、空間形性部から突起部が設けられた底部までの距離を稼ぐことができる。
【0026】
請求項9に記載のように、柔軟性を備えた熱伝導材としては、放熱ゲル若しくは放熱グリスを採用することができる。適度な柔軟性を有し、放熱性を向上することができる。また、電子部品の局部に応力が集中し、破損が生じるのを防ぐことができる。さらには、接着剤のように硬化しないため、電子部品に熱応力が加わることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る電子装置の概略構成を示す斜視図である。図2は、突起部の詳細を示す図であり、(a)は拡大断面図、(b)は配置領域を示すベースの平面図である。図2(b)においては、ベースの一部(取り付け部等)を省略して図示している。尚、本実施形態に係る電子装置は防水構造を有しており、車両の車室外(例えばエンジンルーム内)に配置される電子装置(例えば車両のエンジンECU(Electric Control Unit))として好適である。
【0028】
電子装置100は、回路基板10、筐体を構成するケース20及びベース30、回路基板10が収容される、ケース20及びベース30の内部空間を防水空間とするシール材40、回路基板10からの放熱性を向上するための熱伝導材50を含んでいる。
【0029】
回路基板10は、図示されない配線パターンや、配線パターン間を接続するビアホール等を形成してなるプリント基板11に、マイコン、抵抗、コンデンサ等の電子部品12を実装してなるものである。プリント基板11の構成材料としては、特に限定されるものではない。例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、セラミック、ガラス(例えばガラス布)と樹脂との複合体等の公知材料を採用することができる。本実施形態においては、ガラス布を含むエポキシ樹脂に、配線パターンを多層に配置してなる多層基板を採用している。
【0030】
また、電子部品12には、例えばパワートランジスタといった動作によって過度に発熱する発熱素子12aが含まれている。この発熱素子12aが、特許請求の範囲で示す発熱する電子部品に相当する。発熱素子12aは、図1及び図2(a)に示すように、放熱経路を短縮するために、プリント基板11の周縁部位に実装されている。尚、符号13は、基板11に実装された外部接続端子としてのコネクタであり、電子装置100を構成した状態で、一端が筐体外に露出するように構成されている。符号14は、筐体(ケース20)と位置決めするために、プリント基板11の角部に設けられた位置決め用凹部である。また、図2(a)中に示す符号11aは、発熱素子12aから筐体(ベース30)への放熱性を向上させるために、発熱素子12aに対応してプリント基板11に形成されたサーマルビアである。
【0031】
筐体を構成するケース20は、アルミニウムをプレス加工することによって、一方が開放された底の深い箱状に成形されている。構成材料としては、アルミニウムに限定されるものではなく、プレス成形可能な材料であれば、使用用途に応じて適宜採用することができる。符号21はベース30と対向し、シール材30と接触する固定部であり、固定部21には、プリント基板11に形成された位置決め用凹部14に対応する位置決め凸部22が形成されている。また、符号23は、固定部21に対して折曲されており、内部空間を構成するための空間構成部である。尚、図示はしないがコネクタ13と接触する部分にシール材40が配置される。
【0032】
筐体を構成するベース30も、ケース20同様、アルミニウムをプレス加工することによって、ケース20の開放面を閉塞すべく底の浅い箱状に成形されている。このベース30が、特許請求の範囲に示すカバーに相当する。構成材料としては、アルミニウムに限定されるものではなく、プレス成形可能な材料であれば、使用用途に応じて適宜採用することができる。符号31は、ケース20の固定部21と略平行であり、少なくとも一部にシール材40が配置される固定部であり、ケース20の固定部21との間隔が狭いか間隔がほぼゼロ(すなわちシール材40が介在されないか、介在されても肉厚が薄い部位)である狭部位31aと、間隔が広く、シール材40とともにプリント基板11が介在される広部位31bとを、折曲部位である連結部位31cにて連結してなる。この広部位31bが特許請求の範囲に示す平坦部に相当し、連結部位31cが特許請求の範囲に示す空間形成部に相当する。
【0033】
符号32は、固定部31に対して折曲されており、内部空間を構成するための空間構成部であり、その一部に、発熱素子12aの形成領域に対応して、電子装置100を構成した状態で他の空間構成部よりもプリント基板11との間隔が狭く、広部位31bよりもプリント基板11との間隔が広い隆起領域32aが区画されている。この隆起領域上に熱伝導材50が配置することで、放熱性が向上するようにしている。この隆起領域32aが特許請求の範囲に示す底部に相当する。符号33は、空間構成部32と反対側において、固定部31に対して折曲されており、他の部材に固定するための取り付け部であり、取り付け部33には、螺子固定用の穴34が形成されている。すなわち、本実施形態においては、他の部材に取り付けるための部材(ブラケット)がベース30の一部として構成されており、回路基板10から熱伝導材50を経て筐体(ベース30)へ伝達された熱を、他の部材に逃がすように放熱経路が構成されている。従って、上述したように、発熱素子12aをプリント基板11の周縁部位に実装することで、放熱経路を短縮し、放熱性を向上することができる。
【0034】
さらにベース30には、熱伝導材50の配置部位(本実施形態においては、隆起領域32aの端部)とシール材40の配置部位(固定部31)との間に、熱伝導材50の配置部位に対して内面側に突起する突起部35が、プレス加工によりベース30の一部として一体的に形成されている。従って、この突起部35により、硬化前のシール材40が流動して熱伝導材50と接触する、又は、熱伝導材50が振動等の印加により移動して、シール材40と接触するのを防ぐことができる。このように、突起部35はシール材40及び熱伝導材50に対してダムとして機能する。
【0035】
尚、ベース30に溝部を形成することによっても、シール材40と熱伝導材50の接触を防ぐことができる。しかしながら、突起部35の場合、突起高さhと突起部35に連結する突起部35よりも高さの低い領域(シール材40の溜まる領域:本実施形態においては隆起領域位32aに相当)の面積によって決定されるのに対し、溝部の場合、堰き止め能力(シール材、熱伝導材に対する)は溝内の容積で決定される。すなわち、同じ堰き止め能力であっても、突起部35の場合、隆起領域位32aに対する溝部の深さより突起高さを短く(低く)することができるので、溝部よりも幅を狭くすることができる。従って、プレス加工でも実現が可能であり、シール材40と熱伝導材50の接触を防ぎつつ、発熱素子12aをできる限りプリント基板11の周縁部位に配置することができるので、シール性と放熱性を確保することができる。
【0036】
また、本実施形態においては、突起部35を、図2(a)に示すように、熱伝導材50の配置部位(隆起領域32a)からの突起高さhが、隆起領域32aと対向するプリント基板11の表面との間隔hよりも短く、プリント基板11の表面に接触しない高さとしている。従って、筐体(ベース30)が導電材料からなる場合であっても、プリント基板11とのショートを防ぐことができる。また、図2(b)に示すように、突起部35を、熱伝導材50の配置部位と固定部位31との間の、近接する対向部位間にのみ設けている。従って、プレス加工により筐体(ベース30)に生じる歪をできる限り抑える(すなわち、プレス加工による成形負荷を低減する)ことができる。
【0037】
シール材40は、反発力と粘着力を兼ね備えた材料であり、ケース20とベース30との間に介在し、ケース20とベース30により構成される空間を防水空間とすることのできる材料(シール効果を発揮できるもの)であれば採用することができる。本実施形態においては、硬化前の状態で150〜200Pa・sである湿気硬化型のシリコン接着剤を採用している。それ以外にも、例えば本出願人による特開2005−93602号公報に記載の材料を採用することができる。
【0038】
熱伝導材50は、発熱素子12aにより生じた熱を、筐体(ベース30)を介して外部に放出するように、発熱素子12aに対応して、筐体と発熱素子12aとの間、若しくは、筐体とプリント基板11における発熱素子12aの実装部位の裏面との間に配置される。熱伝導材50としては、例えば本出願人による特開2003−289191号公報に記載の、柔軟性を有する(粘弾性が低い)熱伝導材を採用することができる。柔軟性を有する熱伝導材50を、上述の部位に配置すると、密着性を向上することができる。すなわち、放熱性を向上することができる。また、柔軟性を有するので、筐体とプリント基板11、若しくは、筐体と発熱素子12aとの間隔が一定でなくとも、発熱素子12aの局部に応力が集中し、破損が生じるのを防ぐことができる。本実施形態においては、熱伝導材50として600〜1000Pa・sであるシリコンゲルを採用し、プリント基板11における発熱素子12aの実装部位の裏面とベース30(隆起領域32a)との間に、熱伝導材50を介在させる構成としている。
【0039】
次に、組み付け方法の一例を説明する。上述した回路基板10、筐体を構成するケース20及びベース30を準備する。ケース20のコネクタ13と接続する部位にシール材40を塗布し、プリント基板11の位置決め用凹部14にケース20の位置決め用凸部22が挿入されるように両者を組み付ける。その後、熱伝導材50が隆起領域32aに配置され、固定部31にシール材40が塗布されたベース30に対し、回路基板10が固定部31の広部位31bに配置されるように、仮固定された上述の回路基板10及びケース20をシール材40に押し付けてベース30上に載置する。このとき、プリント基板11の端面、ケース20の固定部21、及びベース30の固定部31(連結部位31c)により構成される隙間に、シール材40が確保される。従って、シール性と接続信頼性を確保することができる。また、載置時に、回路基板10及びケース20によって押されたシール材40は、固定部31の広部位31bと対向するプリント基板11との間の隙間を介して、固定部31よりも低位置である隆起領域32aに移動する。しかしながら、突起部35によってシール材40が堰き止められ、シール材40と熱伝導材50が接触することはない。この状態で、シール材40が硬化され、シール材40によってケース20とコネクタ13、コネクタ13とベース30、ベース30とケース20がそれぞれ接続される。すなわち、コネクタ13、ケース20、及びベース30により構成される空間内に回路基板10が防水状態で収容された電子装置100が構成される。
【0040】
このように本実施形態に係る電子装置100によれば、筐体の構成要素(ケース20及びベース30)がプレス加工により成形されている。従って、ダイカストや樹脂射出成形等の金型鋳造法を用いる場合よりも製造コストを低減することができる。尚、プリント基板11に対して熱伝導材50が配置される側の筐体の構成要素(本実施形態におけるベース30)のみがプレス加工により成形された構成としても、製造コストを低減することができる。
【0041】
また、本実施形態においては、シール材40と熱伝導材50が接触するのを防ぐためのダムを突起部35により構成している。同じ堰き止め能力であれば、突起部35の方が、隆起領域32aに対する溝部の深さより突起部35の高さを短く(低く)することができるので、プレス加工可能な限り幅を狭くすることができる。従って、シール材40と熱伝導材50の接触を防ぎつつ、発熱素子12aをできる限りプリント基板11の周縁部位に配置することができるので、シール性と放熱性を確保することができる。
【0042】
また、本実施形態においては、突起部35をベース30の一部として構成している。従って、部品点数を削減することができる。
【0043】
また、本実施形態においては、プリント基板11の端面、ケース20の固定部21、及びベース30の固定部31(連結部位31c)により構成される隙間に、シール材40を確保するようにしている。従って、簡素な構成でありながら、シール性と接続信頼性を確保することができる。尚、本実施形態においては、固定部31の広部位31bとプリント基板11との間にシール材40が介在しているので、接続信頼性をより向上することができる。
【0044】
また、本実施形態においては、広部位31bによって突起部35までのシール材40の移動距離を稼ぐ構造となっている。すなわち、ケース20をベース30に載置するに際し、シール材40が、その流動性(粘性)により、広部位31bとプリント基板11とで形成される空間(流路)を充填しながらプリント基板11のより内側に配置される(延びる)こととなる。したがって、シール性(防水性)の向上を図りつつ、シール材40の熱伝導材50との接触をより効果的に防ぐことができる。
【0045】
尚、本実施形態においては、放熱経路を短縮するために、発熱素子12aの形成領域に対応して、電子装置100を構成した状態で他の空間構成部32よりもプリント基板11との間隔が狭い隆起領域32aが区画され、この隆起領域32aに熱伝導材50が配置される例を示した。しかしながら、隆起領域32aのない構成としても良い。
【0046】
また、本実施形態においては、隆起領域32a上に熱伝導材50の配置部位が3箇所構成される例を示した。しかしながら、熱伝導材50の配置部位の個数は上記例に限定されるものではない。1つの発熱素子12aにつき、1つの熱伝導材50を配置しても良いし、複数の発熱素子12aに対して、1つの熱伝導材50を配置しても良い。
【0047】
また、本実施形態においては、1本の突起部35によって、3つの熱伝導材50の配置部位と近接するシール材40の配置部位とを区画する例を示した。しかしながら、熱伝導材50の配置部位とシール材40の配置部位との間に、それぞれ別個に突起部35を設けても良い。
【0048】
また、プリント基板11上において、プリント基板11と発熱素子12aとの間に、他の素子が配置されても良いが、本実施形態に示すように、プリント基板11の最外周に発熱素子12aが配置されることが放熱上好ましい。
【0049】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を、図3に基づいて説明する。図3は、本発明の第2実施形態に係る電子装置100の概略構成を示す図であり、(a)は断面図、(b)はベース30の平面図である。
【0050】
第2実施形態に係る電子装置100は、第1実施形態に示した電子装置100と共通するところが多いので、以下、共通部分については詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。
【0051】
図3(a),(b)に示すように、本実施形態に係る電子装置100は、第1実施形態に係る突起部35を、熱伝導材50の配置部位の外周端に沿って環状に設けた点を特徴とする。尚、本実施形態においては、平面方向において熱伝導材50を円形配置しており、突起部35を円環状としている。
【0052】
このように本実施形態に係る電子装置100によれば、第1実施形態に記載の効果に加えて、シール材40と熱伝導材50の接触をより確実に防ぐことができる。また、環状の突起部35によって、熱伝導材50の移動を抑制することができる。すなわち、振動等が印加されても、放熱性を確保することができる。また、第1実施形態に示したように、組み付け時に、先にベース側に熱伝導材50を配置する場合には、突起部35で規定される領域内に熱伝導材50を配置すれば良いので、所望の位置に熱伝導材50を配置することができる。すなわち、熱伝導材50の位置決め性を向上することができる。
【0053】
尚、本実施形態においては、熱伝導材50の配置部位の外周端全周に沿って、突起部35を環状に設ける例を示した。しかしながら、熱伝導材50の配置部位の外周端の少なくとも一部に沿って、環状に設けた構成としても良い。この場合、放熱性及び位置決め性はやや低下するものの、環状のRが大きければプレス加工しやすくなる。また、熱伝導材50の配置部位を取り囲むように、突起部35を環状に設けた構成としても良い。例えば図4に示すように、突起部35を、熱伝導材50が配置される隆起領域32aの周囲を取り囲む構成としても良い。図4は、変形例を示すベース30の平面図である。
【0054】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態を、図5に基づいて説明する。図5は、本発明の第3実施形態に係る電子装置100の概略構成を示す断面図である。
【0055】
第3実施形態に係る電子装置100は、第1,第2実施形態に示した電子装置100と共通するところが多いので、以下、共通部分については詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。
【0056】
図5に示すように、本実施形態に係る電子装置100は、第1実施形態又は第2実施形態に係る突起部35において、突起高さhを、筐体(ベース30)の熱伝導材50の配置部位と対向するプリント基板11の表面との間隔h0と略等しくし、プリント基板11の突起部35との接触部位11bを、電気的な接続機能を提供しない領域とした点を特徴とする。
【0057】
このように構成しても、第1実施形態又は第2実施形態に記載と同様の効果を期待することができる。また、プリント基板11よりも変形しにくい材料からなる突起部35によってプリント基板11を支持するので、プリント基板11の変形(例えば温度変化による)を抑制することができる。
【0058】
尚、本実施形態に係る構成の場合、突起部35との接触部位11bを、電気的な接続機能を提供しない領域とする分、回路基板10の実装面積が減少する。従って、平面方向における突起部35の面積ができる限り小さい方が好ましい。例えば、第1実施形態に示した直線状の突起部35(図2(b)参照)に対して、本実施形態に係る構成を組み合わせると良い。
【0059】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態を、図6に基づいて説明する。図6は、本発明の第4実施形態に係る電子装置100の概略構成を示す断面図である。
【0060】
第4実施形態に係る電子装置100は、第1〜第3実施形態に示した電子装置100と共通するところが多いので、以下、共通部分については詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。
【0061】
本実施形態に係る電子装置100は、第1〜第3実施形態に係る突起部35を、筐体(ベース30)とは別部材によって構成した点を特徴とする。その一例として、図6には、第2実施形態に示した突起部35同様、熱伝導材50の配置部位の外周端に沿う、アルミニウムからなる円環状部材60を準備し、ベース30上に固定することで、突起部35と同様の機能を持たせている。
【0062】
このように本実施形態に係る電子装置100によっても、第1〜第3実施形態に記載の発明同様、プレス加工を採用しているので、製造コストを低減することができる。
【0063】
また、筐体(ベース30)の熱伝導材50の配置部位とシール材40の配置部位との間に円環状部材60によって突起部が構成されているので、シール性と放熱性を確保することができる。
【0064】
また、本実施形態においては、突起部を筐体(ベース30)とは別部材60として構成しているので、プレス加工により筐体(ベース30)の一部として突起部35を構成する場合よりも、突起部の形状を自由に設定することができる。すなわち、プレス加工上の制約がなく、突起高さhを高くしたり、幅を狭くしたりすることができる。
【0065】
また、図6に示すように、円環状部材60を採用した場合には、シール材40と熱伝導材50の接触をより確実に防ぐことができる。また、円環状部材60によって、熱伝導材50の移動を抑制することができる。すなわち、振動等が印加されても、放熱性を確保することができる。また、熱伝導材50の位置決め性を向上することができる。
【0066】
尚、第1実施形態に示した直線状の突起部35に対応する直線状部材を採用することもできる。また、部材の高さを筐体(ベース30)の熱伝導材50の配置部位と対向するプリント基板11の表面との間隔h0に等しくしても良い。
【0067】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0068】
上述した各実施形態においては、熱伝導材50として、シリコンゲル(放熱ゲル)を採用する例を示した。しかしながら、放熱グリスを採用した場合にも、放熱ゲルと同様の効果を期待することができる。
【0069】
また、上述した各実施形態においては、ベース30に対して突起部35、突起部35に対応する別部材(円環状部材60)を設ける例を示した。しかしながら、ケース20側に放熱する場合には、ケース20に突起部35、突起部35に対応する別部材(円環状部材60)を設ければ良い。また、ケース20及びベース30の両側に放熱する場合には、それぞれに、突起部35、突起部35に対応する別部材(円環状部材60)を設ければ良い。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電子装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】突起部の詳細を示す図であり、(a)は拡大断面図、(b)は配置領域を示すベースの平面図である。
【図3】第2実施形態に係る電子装置の概略構成を示す図であり、(a)は断面図、(b)はベースの平面図である。
【図4】変形例を示すベースの平面図である。
【図5】第3実施形態に係る電子装置の概略構成を示す断面図である。
【図6】第4実施形態に係る電子装置の概略構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0071】
10・・・回路基板
11・・・プリント基板
12・・・電子部品
12a・・・発熱素子(発熱する電子部品)
20・・・ケース
21・・・固定部
30・・・ベース(カバー)
31・・・固定部
32a・・・隆起領域
33・・・取り付け部
35・・・突起部
40・・・シール材
50・・・熱伝導材
100・・・電子装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板に発熱する電子部品を実装してなる回路基板と、
前記回路基板を収容する、ケースとカバーからなる筐体と、
前記ケースと前記カバーとの間に介在し、前記回路基板が収容される空間を防水空間とするシール材と、
前記筐体と前記電子部品との間、及び、前記筐体と前記プリント基板における前記電子部品実装部位の裏面との間、の少なくとも一方に介在する、柔軟性を備えた熱伝導材と、を含む電子装置であって、
前記電子部品は、前記プリント基板の周縁部位に実装されており、
前記筐体は、前記プリント基板に対して前記熱伝導材が配置される側の前記ケース又は前記カバーが少なくともプレス加工により成形されており、前記熱伝導材の配置部位と前記シール材の配置部位との間に、プレス加工により前記筐体の一部として一体的に構成され、前記熱伝導材の配置部位に対して内面側に突起する突起部を有することを特徴とする電子装置。
【請求項2】
プリント基板に発熱する電子部品を実装してなる回路基板と、
前記回路基板を収容する、ケースとカバーからなる筐体と、
前記ケースと前記カバーとの間に介在し、前記回路基板が収容される空間を防水空間とするシール材と、
前記筐体と前記電子部品との間、及び、前記筐体と前記プリント基板における前記電子部品実装部位の裏面との間、の少なくとも一方に介在する、柔軟性を備えた熱伝導材と、を含む電子装置であって、
前記電子部品は、前記プリント基板の周縁部位に実装されており、
前記筐体は、前記プリント基板に対して前記熱伝導材が配置される側の前記ケース又は前記カバーが少なくともプレス加工により成形されており、前記熱伝導材の配置部位と前記シール材の配置部位との間に、前記筐体とは別部材からなり、前記熱伝導材の配置部位に対して内面側に突起する突起部を有することを特徴とする電子装置。
【請求項3】
前記突起部は、前記熱伝導材の配置部位と前記シール材の配置部位との間の、近接する対向部位間にのみ設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記突起部は、前記熱伝導材の配置部位の外周端の少なくとも一部に沿って環状に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子装置。
【請求項5】
前記突起部は、その突起高さが、前記プリント基板の表面に接触しない高さに設定されていることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の電子装置。
【請求項6】
前記突起部は、その突起高さが、前記筐体の熱伝導材の配置部位と対向する前記プリント基板の表面との間隔と略等しく設定されており、
前記プリント基板は、前記突起部との接触部位として、電気的な接続機能を提供しない領域を有することを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の電子装置。
【請求項7】
前記プリント基板は、前記ケース又前記カバー上に載置され、
前記プリント基板の端面と、当該端面と対向する前記ケース又は前記カバーと、の間に隙間が構成されており、
当該隙間に前記シール材が配置されていることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載の電子装置。
【請求項8】
前記ケース又は前記カバーは、前記隙間を形成する空間形成部と、当該空間形成部からつながり、前記プリント基板と対向配置される平坦部と、当該平坦部からつながり、前記突起部が設けられる底部とを備え、
前記平坦部と前記プリント基板との距離よりも、前記底部と前記プリント基板との距離の方が大きいことを特徴とする請求項7に記載の電子装置。
【請求項9】
前記熱伝導材は、放熱ゲル若しくは放熱グリスであることを特徴とする請求項1〜8いずれか1項に記載の電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−184428(P2007−184428A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−1826(P2006−1826)
【出願日】平成18年1月6日(2006.1.6)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】