説明

電子透かしによるリップシンク装置及びリップシンク方法

【課題】
従来の電子透かしによるリップシンク方法では、音声と映像の伝送/処理系における同期情報として、映像信号と音声信号の両方に同一の時間情報を挿入する為、映像信号より情報量の密な音声信号には時間情報を挿入し辛いという問題があった。
【解決手段】
音声と映像の同期情報として、同一の時間情報ではなく、例えば振幅といった音声の特徴信号を、音声信号に比べて情報量の粗な映像信号に対してのみ電子透かしとして挿入するので、容易且つ効率的にリップシンクが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声信号と映像信号の伝送/処理系において電子透かしにより映像と音声を同期させる装置と方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電子透かしによるリップシンク方法では、同期情報として映像信号と音声信号にそれぞれ同一の時間情報を挿入し、受信側でこれらの時間差を検出後一方を遅延して映像と音声を同期させる方法であった。
【0003】
【特許文献1】特開2003−259314号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電子透かしによるリップシンク方法では、同期情報として映像信号と音声信号の両方に同一の時間情報を挿入する為、情報量の密な音声信号には同期情報を挿入し辛いという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決した電子透かしによるリップシンク装置及びリップシンク方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決する為に、本発明の電子透かしによるリップシンク方法は、同期情報として同一の時間情報ではなく、音声の特徴信号を抽出して映像信号に挿入する事を特徴としている。
【0007】
この発明によれば、情報量の粗な映像信号にのみ音声の特徴信号を電子透かしとして挿入するので、挿入が容易且つ効率的である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、同期情報として音声の特徴信号を映像信号に対してのみ電子透かしとして挿入するので、音声信号が電子透かし挿入による影響を受けないという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は本発明によるブロック図であり、図2は従来の技術によるブロック図である。以下図1に従って本発明内容について説明する。
【0010】
図1において音声信号入力部1より入力された音声信号は、分岐後特徴信号抽出部3においてその特徴信号例えば振幅が抽出される。抽出された特徴信号は映像信号入力部2より入力された映像信号に対して電子透かし挿入部4において電子透かしとして挿入される。
【0011】
音声信号と電子透かしを挿入した映像信号は、それぞれ伝送経路やデジタル処理回路を表す遅延系5を通過する。 遅延系5を通過した後の音声信号と映像信号は同期がずれており、一般的には音声信号より映像信号が遅延する。
【0012】
音声の特徴信号を電子透かしとして挿入した映像信号は、電子透かし抽出部7において音声の特徴信号が抽出されて比較部8に送られる。一方遅延系5を通過した音声信号は、分岐後特徴信号抽出部6において音声の特徴信号(ここでは振幅)が抽出されて比較部8へ送られる。比較部8ではこれら2つの音声の特徴信号を比較し、時間差を算出して時間差信号を送出する。
【0013】
比較部8から送出された時間差信号により、音声信号は音声遅延部9において映像信号と同期する様に遅延処理が施されて音声信号出力部10に送付される。また電子透かし抽出部7を経た映像信号は映像信号出力部11へ送付される。この結果、遅延系5において遅延差を生じた音声信号と映像信号の同期が回復される。
【0014】
図2において音声信号入力部21より入力された音声信号と、映像信号入力部22より入力された映像信号は、電子透かし挿入部24,25においてタイムコード発生器23より送出された同一の時間情報が挿入される。
【0015】
電子透かしを各々挿入した音声信号と同映像信号は、それぞれ伝送経路やデジタル処理回路を表す遅延系26を通過する。遅延系26を通過した後の音声信号と映像信号は一般に同期がずれている。
【0016】
同一の時間情報が挿入された音声信号と映像信号は、電子透かし抽出部27,28で時間情報が抽出されて比較部29へ送られる。比較部29ではこれらの時間情報を比較し、時間差を算出して時間差信号を送出する。
【0017】
比較部29から送出された時間差信号は、音声遅延部30と映像遅延部31に送付されて遅延の大きい方に合わせて同期がとられる。同期が回復した音声信号と映像信号は、各々音声信号出力部32と映像信号出力部33へ送付される。
【0018】
図3は本発明による音声の特徴信号の抽出例であり、音声信号41に対して音声の特徴信号42が抽出される。更に図1の比較部8において映像信号の遅延量43が判定され、音声遅延部9において遅延量43だけ音声信号が遅延されて映像信号との同期が取られる。
【0019】
尚、本実施例では音声の特徴信号として振幅を上げたが、これ以外にも周波数特性やゼロクロスの間隔やエネルギー(電力)等が音声の特徴信号として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明によるリップシンクのブロック図である。
【図2】従来技術によるリップシンクのブロック図である。
【図3】本発明による音声の特徴信号の抽出例である。
【符号の説明】
【0021】
1 音声信号入力部
2 映像信号入力部
3 特徴信号抽出部
4 電子透かし挿入部
5 遅延系
6 特徴信号抽出部
7 電子透かし抽出部
8 比較部
9 音声遅延部
10 音声信号出力部
11 映像信号出力部
21 音声信号入力部
22 映像信号入力部
23 タイムコード発生器
24 電子透かし挿入部
25 電子透かし挿入部
26 遅延系
27 電子透かし抽出部
28 電子透かし抽出部
29 比較部
30 音声遅延部
31 映像遅延部
32 音声信号出力部
33 映像信号出力部
41 音声信号
42 音声の特徴信号
43 遅延量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声信号と映像信号の伝送/処理系において、
音声信号入力部と、
映像信号入力部と、
入力された音声信号から音声の特徴信号を抽出する特徴信号抽出部と、
入力された映像信号に該特徴信号を電子透かしとして挿入する電子透かし挿入部と、
遅延系を経た音声信号から音声の特徴信号を抽出する特徴信号抽出部と、
遅延系を経た映像信号から音声の特徴信号を抽出する電子透かし抽出部と、
これら2つの音声の特徴信号を取り込んで時間差を算出し、時間差信号を送出する比較部と、
該時間差信号に基づいて音声を遅延させる音声遅延部を含む事を特徴とするリップシンク装置。
【請求項2】
音声の特徴信号が、振幅/周波数成分/ゼロクロスの間隔/エネルギー(電力)のいずれかである事を特徴とする請求項1に記載のリップシンク装置。
【請求項3】
音声信号と映像信号の伝送/処理系において、
音声信号入力工程と、
映像信号入力工程と、
入力された音声信号から音声の特徴信号を抽出する特徴信号抽出工程と、
入力された映像信号に該特徴信号を電子透かしとして挿入する電子透かし挿入工程と、
遅延系を経た音声信号から音声の特徴信号を抽出する特徴信号抽出工程と、
遅延系を経た映像信号から音声の特徴信号を抽出する電子透かし抽出工程と、
これら2つの音声の特徴信号を取り込んで時間差を算出し、時間差信号を送出する比較工程と、
該時間差信号に基づいて音声を遅延させる音声遅延工程を含む事を特徴とするリップシンク方法。
【請求項4】
音声の特徴信号が、振幅/周波数成分/ゼロクロスの間隔/エネルギー(電力)のいずれかである事を特徴とする請求項3に記載のリップシンク方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−208345(P2007−208345A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−21607(P2006−21607)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000101330)アストロデザイン株式会社 (28)
【Fターム(参考)】