電極用酸化チタン化合物及びそれを用いたリチウム二次電池
【課題】チタン系負極材料を用いたリチウム二次電池の電気容量を大きくすべく、結晶構造、結晶子径、比表面積および一次粒径が制御された酸化チタン化合物を製造し、これを用いたリチウム二次電池を提供する。
【解決手段】TiO2・(H2O)a・(A2O)b(但し、AはNaまたはKであり、aは0<a≦1、bは0<b≦0.1である)で表される酸化チタン化合物であり、かつX線回折図において2θ=20〜30°に主ピーク、45〜55°に副ピークを有し、前記主ピークで求めた結晶子径が40Å以上500Å以下である電極用酸化チタン化合物を電極用活物質としてリチウム二次電池を製造する。
【解決手段】TiO2・(H2O)a・(A2O)b(但し、AはNaまたはKであり、aは0<a≦1、bは0<b≦0.1である)で表される酸化チタン化合物であり、かつX線回折図において2θ=20〜30°に主ピーク、45〜55°に副ピークを有し、前記主ピークで求めた結晶子径が40Å以上500Å以下である電極用酸化チタン化合物を電極用活物質としてリチウム二次電池を製造する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池の活物質として有用な電極用酸化チタン化合物及びそれを用いたリチウム二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池はそのエネルギー密度の高さから携帯電話やノートパソコン用の電源として進歩してきたが、近年のIT技術の進歩により携帯端末機器の小型、軽量化に伴って、その電源である電池にも更に小型、高容量化が求められるようになってきた。またエネルギー密度の高さを生かし電気自動車やハイブリッド自動車用としての電源や電力貯蔵用電源として注目され始めている。
【0003】
従来、リチウム電池の負極材料はカーボン系負極が一般的であり、それを用いたリチウム二次電池は放電時の電圧が大きくエネルギー密度が高い特徴がある。しかし、負極の電位が低いために、急速充電を行うとリチウム金属が析出して内部短絡が起きる危険性が増すことや更に内部短絡により発火に至る危険性が内在している。そこで、エネルギー密度は低下するものの高電位負極を用いることによって内部短絡時の発熱を減少させ、更に電解液の分解を抑制することで安全性が高く長寿命なリチウム電池が検討されている。中でも、Li4Ti5O12はリチウム基準で1.5Vの電位を有し、充放電に際して体積変化が無くサイクル特性が極めて良好なことから、Li4Ti5O12を使用したコイン電池が実用化されている。
【0004】
しかしながら、Li4Ti5O12の理論容量は175mAh/gであり、一般的に負極材料として使用されているカーボンに比べ、その電気容量は約半分と小さく、Li4Ti5O12を使用したリチウム二次電池のエネルギー密度も小さくなる欠点がある。そこで、安全性や長寿命の観点からリチウム基準で1.0〜1.5Vに電圧を有し、電気容量の大きい負極材料が望まれている。
【0005】
このような状況の中、特許文献1には結晶構造がNa2Ti3O7の構造であるA2Ti3O7(但し、AはNa,Li、Hから選択された1種または2種)が示されており、また、特許文献2にはミクロンサイズの等方的な形状を有するチタン酸ブロンズ型の二酸化チタンが電極材料として有用であることが示されている。しかし、これらに示されている放電容量はいずれも180mAh/g未満であり、本質的に従来から示されているチタン系負極の電気容量を大きく凌駕したものではない。また、特許文献3にはH2Ti12O25なる特定の結晶構造でトンネル構造のチタン酸化物は220mAh/g程度の放電容量が得られることが示されているが、粒径に関する記述はなく、粒径の影響は明らかにされていない。また、他の結晶構造においても、粒径の影響は明らかにされていない。
【0006】
リチウム二次電池の電気容量はリチウムイオンが送入脱離できる粒子表面の大きさ、粒子内部のリチウムイオンの移動のし易さ、及びリチウムイオンが収まるサイトの数で決定される。サイトの数は結晶構造で決定されるが、それを有効に利用するためには、粒子内部へ出入りする窓口である比表面積を大きくし、粒子内部での移動距離を短くする必要があり、一次粒子の大きさ、即ち粒子内部の移動距離を表すパラメーターとして結晶子径が有効である。
【0007】
【特許文献1】特開2007−234233号公報
【特許文献2】特開2008−117625号公報
【特許文献3】特開2008−255000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、従来のリチウム二次電池の電気容量は未だ十分ではなく、電気容量の大きな材料であり、その結晶構造、結晶子径、比表面積および一次粒径が制御された負極材料が要望されていた。
【0009】
従って、本発明の目的は、チタン系負極材料を用いたリチウム二次電池の電気容量を大きくすべく、結晶構造、結晶子径、比表面積および一次粒径が制御された酸化チタン化合物を製造すること、及び該酸化チタン化合物を用いたリチウム二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の範囲の結晶構造を有し、結晶子径が40Å以上500Å以下に制御された酸化チタン化合物を得、それを電池用電極に用いたリチウム二次電池は安全性に優れ高容量の充放電容量を示すことを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明の電極用酸化チタン化合物は、電極用活物質であって、TiO2・(H2O)a・(A2O)b(但し、AはNaまたはKであり、aは0<a≦1、bは0<b≦0.1である)で表される酸化チタン化合物であり、かつX線回折図において2θ=20〜30°に主ピーク、45〜55°に副ピークを有し、前記主ピークで求めた結晶子径が40Å以上500Å以下であることを特徴とする。
【0012】
前記酸化チタン化合物の比表面積は20m2/g以上、400m2/g以下であることが好ましい。また、酸化チタン化合物の一次粒子径が、0.01〜0.5μmであることが好ましい。
【0013】
また、前記酸化チタン化合物を用い、金属Liを対極としてリチウム二次電池を作製した際に、活物質1g当たり35mAで行った充放電試験における3サイクル目の放電容量が200mAh/g以上を得ることができる。
【0014】
また、前記電極用酸化チタン化合物を正極または負極活物質として電池用電極とすることができる。
【0015】
更に、前記電池用電極を用いてリチウム二次電池を形成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電極用酸化チタン化合物は結晶子径、比表面積、一次粒子径及びNaまたはK含有量を制御することにより充放電容量を大きくすることができ、リチウム電池の負極とした場合、エネルギー密度を大きくすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の電極用酸化チタン化合物について詳しく説明する。
本発明の電極用酸化チタン化合物は、TiO2・(H2O)a・(A2O)b(但し、AはNaまたはKであり、aは0<a≦1、bは0<b≦0.1である)で表される酸化チタン化合物であり、かつX線回折図において2θ=20〜30°に主ピーク、45〜55°に副ピークを有し、前記主ピークで求めた結晶子径が40Å以上500Å以下である。
【0018】
(結晶構造)
結晶構造はX線回折のピーク強度が弱いために明確に同定することは困難であるが、チタン酸ナトリウムまたはチタン酸カリウムを中間体として合成した酸化チタン化合物は層状構造またはトンネル構造と推定される。これに対して、スピネル型チタン酸リチウムの様に酸化チタン化合物であっても20〜30°に主ピーク(メインピーク)を持たない場合には、結晶子径や比表面積を制御しても200mAh/g以上の充放電容量は得られない。
【0019】
(出発原料)
原料にはアナターゼ及びルチル型の酸化チタン、含水酸化チタン、水酸化チタン等の酸化チタンまたは酸化チタン化合物が使用可能であるが、結晶子径や比表面積を制御するため、原料には微粒子で反応性の良い含水酸化チタン(メタチタン酸)または水酸化チタン(オルソチタン酸)を使用することが好ましい。微粒子で反応性の良い含水酸化チタンまたは水酸化チタンはチタン化合物の加水分解により得ることが可能であり、チタン化合物としては硫酸チタニル、四塩化チタン、アルコキシドチタン等が使用可能である。含水酸化チタンや水酸化チタンを原料とした場合、最終的に結晶水が残る可能性がある。電気容量を大きくする観点から不純物である結晶水は少ない方が良いが、過度な熱処理により除去すると結晶構造が変化するため好ましくなく、適度な範囲であれば残っても悪影響は少ない。結晶水の量は900℃で2時間の熱処理によって生じる重量減量から測定することができる。
【0020】
(酸化チタン化合物の組成)
層状構造やトンネル構造を製造する際の中間生成物であるチタン酸ナトリウムやチタン酸カリウムに起因するナトリウムやカリウムの残存は不純物となり、充放電容量の低下を招くため可能な限り少ない方が良いが、少な過ぎると熱によってアナターゼやルチル型の酸化チタンに転移し易くなる。このため、少なくとも200mAh/g以上の放電容量を得るためにはTiO2・(H2O)a・(A2O)b(但しAはNaまたはKである)と表され、aは上記理由により0<a≦1でありbは0<b≦0.1である必要があり、より好ましくは、aは0<a≦0.8でありbは0.01≦b≦0.06である。尚、ナトリウムやカリウムの含有量は蛍光X線分析により測定することができる。
【0021】
(結晶子径)
結晶子径は単位結晶の大きさを表すパラメーターであり、粒子内の電極反応に伴って送入されたリチウムイオンの拡散距離、または挿入されたリチウムイオンが脱離する際の粒子表面に到達する移動距離を表しており、大き過ぎると粒子内のリチウムイオンの移動距離が長くなるため充放電容量が低下する。X線回折図において、層状構造酸化チタン化合物、トンネル構造酸化チタン化合物に共通して2θ=20〜30°及び45〜55°にピークを有し、20〜30°のピークの半価幅を用いてScherrerの式(D=Kλ/(βCOSθ) ここでD:結晶子径(A),K:定数0.9,λ:X線の波長(1.54A),β:回折線の半価幅(rad),θ:回折角(°))より求めた結晶子径が40Å以上500Å以下である時、200mAh/g以上の充放電容量を得ることができる。
【0022】
(比表面積)
比表面積はBET法に測定され、当該酸化チタン化合物がリチウムイオンの挿入脱離に伴う電極反応を行う際の反応界面の大きさを表すパラメーターであり、急速充放電を行う際に重要な因子である。即ち、数値が大きい程反応性は向上するが、大き過ぎると電極集電体との接着性の低下や粒子間の界面抵抗の増加による電池の内部抵抗の増加が起こり、小さ過ぎると反応性が低下し、十分な負荷特性が得られないため、20m2/g以上 400m2/g以下に制御することが好ましい。
【0023】
(一次粒子径)
一次粒子径は透過型電子顕微鏡により観察され、結晶子径や比表面積より直接的に観察される粒子サイズである。結晶子径や比表面積を上記範囲に制御し、更に一次粒子径を0.01〜0.5μmとすることにより、電気容量とサイクル特性のバランスが良い活物質とすることができる。
【0024】
(チタン酸ナトリウム、チタン酸カリウム中間体)
層状やトンネル構造の微粒子酸化チタン化合物を合成するためには、チタン酸ナトリウムやチタン酸カリウムを中間体として合成することができる。一般的に顔料として使用されているサブミクロンオーダーのアナターゼ型酸化チタンと炭酸ナトリウムや炭酸カリウムとを混合して焼成法により反応させたチタン酸ナトリウムやチタン酸カリウムを前駆体とする方法は、粉砕により微粒子化することは可能ではあるが、粉砕に多くのエネルギーを必要とするため、より好ましくは湿式合成法によりナノオーダーの中間体を作製することが好ましい。その場合、使用する酸化チタン原料は含水酸化チタンの微粒子を使用することが好ましい。湿式法によりチタン酸ナトリウムやチタン酸カリウムを中間体として合成する方法は粒成長が起こり難いため、最終的には結晶子径や比表面積が調整された酸化チタン化合物を得ることに有用である。更に放電容量を大きくするために不純物であるナトリウム及びカリウムを除去する必要があるが、酸処理により除去する場合、焼成法により合成した場合に比較して除去が容易であり、残存量を調整することが可能となる。
【0025】
(酸化チタン化合物)
酸処理によりプロトン置換した酸化チタン化合物は500℃以下のアナターゼ型酸化チタンに転移しない範囲の可能な限り高温で熱処理することにより結晶子径が40Å以上500Å以下で比表面積が20m2/g以上400m2/g以下の層状またはトンネル構造の酸化チタン化合物を合成することができる。合成した酸化チタン化合物を用いて電極を作製し、対極に金属Liを使用したコイン型二次電池を作製して充・放電試験を行った場合、本発明による酸化チタン化合物は活物質1g当たり35mAで行った充放電試験における3サイクル目の放電容量が200mAh/g以上の高い値を得ることが可能である。また、1サイクル目の放電容量に対する3サイクル目の放電容量の維持率も70%以上得ることができる。
【0026】
(合成方法)
層状またはトンネル構造の酸化チタン化合物を得る具体的な合成方法を述べる。チタン酸ナトリウムやチタン酸カリウムは含水酸化チタンの水分散スラリーに水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムをNa/Tiモル比またはK/Tiモル比が1.0〜10.0の範囲で添加し、90℃以上の温度で反応させることにより得られる。
【0027】
得られた反応物をろ過、洗浄後、再度スラリー化した後、酸によりpHを1〜3に保持し、ナトリウムまたはカリウムの全量または一部をプロトンに置換する。酸は硫酸や塩酸、硝酸等、一般的に使用される酸が使用できる。酸処理後、ろ過、洗浄及び乾燥し、700℃以下の温度で熱処理を行う。熱処理の温度が高過ぎるとアナターゼ型酸化チタンに転移し、低過ぎると電池とした時に電気容量の低下とサイクル特性の劣化の原因となるため、アナターゼ型酸化チタンに転移しない範囲で高い温度が最適であり、200〜500℃の範囲がより好ましい。
【0028】
(特性)
上記により合成した酸化チタン化合物を活物質として電極を作製し、対極に金属Liを使用したコイン型二次電池を作製して活物質1g当たり35mAで充・放電試験を行うと、本発明による酸化チタン化合物は放電容量が200mAh/g以上の高い値を得ることが可能であり、1サイクル目の放電容量に対する3サイクル目の放電容量の維持率も70%以上得ることができる。
【実施例】
【0029】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例は単に例示の為に記すものであり、発明の範囲がこれらによって制限されるものではない。
【0030】
[実施例1]
硫酸チタニルの加水分解により得られた微粒子含水酸化チタンを水分散させスラリー化した後、水酸化ナトリウム水溶液をNa/Tiモル比が2.0となるように添加し、90℃で24時間反応させた。反応終了物をろ過、洗浄し、硫酸にてpHを2に調整し、24時間保持した。その後、ろ過、洗浄した後、250℃で2時間の熱処理を行い、試料1を得た。得られた試料1の比表面積はマイクロメリティックス社製ジェミニ2375によりBET一点法により測定した。結晶子径は(株)リガク製TTRIIIによりターゲット Cu、2θ測定範囲 20〜30゜の回折線を測定し、Scherrerの方法により算出した。また本試料82重量部とアセチレンブラック9重量部及びポリフッ化ビニリデン9重量部を混合後、N−メチル−2−ピロリドンに固形分濃度30%でハイシェアーミキサーにより5分間混練し、塗料を作製した。次に上記塗料をアルミ箔上にドクターブレード法で塗布した。110℃で真空乾燥後、初期電極合剤の厚みに対して80%にロールプレスした。1cm2に打ち抜き後、図1に示すコイン電池の電極10とした。図1において対極は金属Li板12を、電解液はエチレンカーボネートとジメチルカーボネートの等容量混合物にLiPF6を1mol/Lで溶解したものを、セパレータ14はグラスフィルターを使用した。ケース16及びガスケット18でこれらを覆って作製したコイン電池20を用いて活物質1g当たり35mAで1.0Vまで放電後、同電流値で3.0Vまで充電し、このサイクルを3回繰り返した。また、900℃で2時間加熱し、重量減量より水分含有量を測定し、(株)リガク製サイマルティックス蛍光X線分析装置によりNa量を測定して、a値、及びb値を求めた。結果を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
図2にX線回折図を示す。試料1の結晶子径は70Åであり比表面積は350m2/gであった。また水分含有量は14.2wt%であり、Na2O含有量は0.7wt%であったことから、TiO2・(H2O)a・(Na2O)bのaは0.74、bは0.01であった。また、日本電子製透過型電子顕微鏡により一次粒径を確認した。図4は電子顕微鏡写真を示す。写真より、一次粒子径は0.5μm未満であることを確認した。図5は放電曲線を示す。1サイクル目の放電容量は350mAh/g、3サイクル目放電容量は250mAh/gと200mAh/g以上の高容量であることを確認した。
【0033】
[実施例2]
硫酸によるpH調整をpH4とした以外は実施例1と同様に行い、試料2を得た。結果を表1に示す。図2にX線回折図を示す。試料2の結晶子径は68Åであり比表面積は345m2/gであった。また水分含有量は13.8wt%であり、Na2O含有量は3.57wt%であったことから、TiO2・(H2O)a・(Na2O)bのaは0.74、bは0.06であった。図6は放電曲線を示す。1サイクル目の放電容量は280mAh/g、3サイクル目放電容量は200mAh/gと200mAh/g以上の高容量であることを確認した。
【0034】
[比較例1]
硫酸によるpH調整をpH7とした以外は実施例1と同様に行い、試料3を得た。結果を表1に示す。図2にX線回折図を示す。試料3の結晶子径は67Åであり、比表面積は343m2/gであった。また水分含有量は13.1wt%であり、Na2O含有量は8.50wt%であったことから、TiO2・(H2O)a・(Na2O)bのaは0.74、bは0.14であった。図7は放電曲線を示す。1サイクル目の放電容量は195mAh/g、3サイクル目放電容量は152mAh/gであった。
【0035】
[実施例3]
熱処理を400℃で行った以外は実施例1と同様に行い、試料4を得た。結果を表1に示す。図2にX線回折図を示す。試料8の結晶子径は111Åであり、比表面積は159m2/gであった。また水分含有量は8.9wt%であり、Na2O含有量は0.74wt%であったことから、TiO2・(H2O)a・(Na2O)bのaは0.44、bは0.01であった。図8は放電曲線を示す。1サイクル目の放電容量は270mAh/g、3サイクル目放電容量は226mAh/gと200mAh/g以上の高容量であることを確認した。
【0036】
[実施例4]
熱処理を600℃で行った以外は実施例1と同様に行い、試料5を得た。結果を表1に示す。図2にX線回折図を示す。試料5の結晶子径は230Åであり、比表面積は21m2/gであった。また水分含有量は5.0wt%であり、Na2O含有量は0.78wt%であったことから、TiO2・(H2O)a・(Na2O)bのaは0.24、bは0.01であった。図9は放電曲線を示す。1サイクル目の放電容量は241mAh/g、3サイクル目放電容量は200mAh/gと200mAh/g以上の高容量であることを確認した。
【0037】
[比較例2]
熱処理を900℃で行った以外は実施例1と同様に行い、試料6を得た。結果を表1に示す。図2にX線回折図を示す。試料6の結晶子径は512Åであり、比表面積は10m2/gであった。また水分含有量は1.0wt%であり、Na2O含有量は0.81wt%であったことから、TiO2・(H2O)a・(Na2O)bのaは0.05、bは0.01であった。図10は放電曲線を示す。1サイクル目の放電容量は125mAh/g、3サイクル目放電容量は113mAh/gであった。
【0038】
[実施例5]
実施例1において水酸化ナトリウム水溶液をNa/Tiモル比が2.0となるように添加したことを、水酸化カリウム水溶液をK/Tiモル比が2.0となるように添加したことに変更した以外は同様に行い、試料7を得た。結果を表1に示す。図3にX線回折図を示す。試料7の結晶子径は41Åであり、比表面積は320m2/gであった。また水分含有量は12.2wt%であり、K2O含有量は2.4wt%であったことから、TiO2・(H2O)a・(Na2O)bのaは0.63、bは0.02であった。図11は放電曲線を示す。1サイクル目の放電容量は261mAh/g、3サイクル目放電容量は222mAh/gと200mAh/g以上の高容量であることを確認した。
【0039】
[比較例3]
熱処理を900℃で行った以外は実施例5と同様に行い、試料8を得た。結果を表1に示す。図3にX線回折図を示す。試料8の結晶子径は505Åであり、比表面積は11m2/gであった。また水分含有量は1.0wt%であり、K2O含有量は2.1wt%であったことから、TiO2・(H2O)a・(Na2O)bのaは0.05、bは0.02であった。図12は放電曲線を示す。1サイクル目の放電容量は232mAh/g、3サイクル目放電容量は171mAh/gであった。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】電池評価を行ったコイン電池の模式図である。
【図2】中間体としてチタン酸ナトリウムを経由した試料のX線回折図である。
【図3】中間体としてチタン酸カリウムを経由した試料のX線回折図である。
【図4】実施例1の透過型電子顕微鏡写真である。
【図5】実施例1(試料1)の放電曲線図である。
【図6】実施例2(試料2)の放電曲線図である。
【図7】比較例1(試料3)の放電曲線図である。
【図8】実施例3(試料4)の放電曲線図である。
【図9】実施例4(試料5)の放電曲線図である。
【図10】比較例2(試料6)の放電曲線図である。
【図11】実施例5(試料7)の放電曲線図である。
【図12】比較例3(試料8)の放電曲線図である。
【符号の説明】
【0041】
10 電極(試料)
12 金属Li板
14 セパレータ
16 ケース
18 ガスケット
20 コイン電池
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池の活物質として有用な電極用酸化チタン化合物及びそれを用いたリチウム二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池はそのエネルギー密度の高さから携帯電話やノートパソコン用の電源として進歩してきたが、近年のIT技術の進歩により携帯端末機器の小型、軽量化に伴って、その電源である電池にも更に小型、高容量化が求められるようになってきた。またエネルギー密度の高さを生かし電気自動車やハイブリッド自動車用としての電源や電力貯蔵用電源として注目され始めている。
【0003】
従来、リチウム電池の負極材料はカーボン系負極が一般的であり、それを用いたリチウム二次電池は放電時の電圧が大きくエネルギー密度が高い特徴がある。しかし、負極の電位が低いために、急速充電を行うとリチウム金属が析出して内部短絡が起きる危険性が増すことや更に内部短絡により発火に至る危険性が内在している。そこで、エネルギー密度は低下するものの高電位負極を用いることによって内部短絡時の発熱を減少させ、更に電解液の分解を抑制することで安全性が高く長寿命なリチウム電池が検討されている。中でも、Li4Ti5O12はリチウム基準で1.5Vの電位を有し、充放電に際して体積変化が無くサイクル特性が極めて良好なことから、Li4Ti5O12を使用したコイン電池が実用化されている。
【0004】
しかしながら、Li4Ti5O12の理論容量は175mAh/gであり、一般的に負極材料として使用されているカーボンに比べ、その電気容量は約半分と小さく、Li4Ti5O12を使用したリチウム二次電池のエネルギー密度も小さくなる欠点がある。そこで、安全性や長寿命の観点からリチウム基準で1.0〜1.5Vに電圧を有し、電気容量の大きい負極材料が望まれている。
【0005】
このような状況の中、特許文献1には結晶構造がNa2Ti3O7の構造であるA2Ti3O7(但し、AはNa,Li、Hから選択された1種または2種)が示されており、また、特許文献2にはミクロンサイズの等方的な形状を有するチタン酸ブロンズ型の二酸化チタンが電極材料として有用であることが示されている。しかし、これらに示されている放電容量はいずれも180mAh/g未満であり、本質的に従来から示されているチタン系負極の電気容量を大きく凌駕したものではない。また、特許文献3にはH2Ti12O25なる特定の結晶構造でトンネル構造のチタン酸化物は220mAh/g程度の放電容量が得られることが示されているが、粒径に関する記述はなく、粒径の影響は明らかにされていない。また、他の結晶構造においても、粒径の影響は明らかにされていない。
【0006】
リチウム二次電池の電気容量はリチウムイオンが送入脱離できる粒子表面の大きさ、粒子内部のリチウムイオンの移動のし易さ、及びリチウムイオンが収まるサイトの数で決定される。サイトの数は結晶構造で決定されるが、それを有効に利用するためには、粒子内部へ出入りする窓口である比表面積を大きくし、粒子内部での移動距離を短くする必要があり、一次粒子の大きさ、即ち粒子内部の移動距離を表すパラメーターとして結晶子径が有効である。
【0007】
【特許文献1】特開2007−234233号公報
【特許文献2】特開2008−117625号公報
【特許文献3】特開2008−255000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、従来のリチウム二次電池の電気容量は未だ十分ではなく、電気容量の大きな材料であり、その結晶構造、結晶子径、比表面積および一次粒径が制御された負極材料が要望されていた。
【0009】
従って、本発明の目的は、チタン系負極材料を用いたリチウム二次電池の電気容量を大きくすべく、結晶構造、結晶子径、比表面積および一次粒径が制御された酸化チタン化合物を製造すること、及び該酸化チタン化合物を用いたリチウム二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の範囲の結晶構造を有し、結晶子径が40Å以上500Å以下に制御された酸化チタン化合物を得、それを電池用電極に用いたリチウム二次電池は安全性に優れ高容量の充放電容量を示すことを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明の電極用酸化チタン化合物は、電極用活物質であって、TiO2・(H2O)a・(A2O)b(但し、AはNaまたはKであり、aは0<a≦1、bは0<b≦0.1である)で表される酸化チタン化合物であり、かつX線回折図において2θ=20〜30°に主ピーク、45〜55°に副ピークを有し、前記主ピークで求めた結晶子径が40Å以上500Å以下であることを特徴とする。
【0012】
前記酸化チタン化合物の比表面積は20m2/g以上、400m2/g以下であることが好ましい。また、酸化チタン化合物の一次粒子径が、0.01〜0.5μmであることが好ましい。
【0013】
また、前記酸化チタン化合物を用い、金属Liを対極としてリチウム二次電池を作製した際に、活物質1g当たり35mAで行った充放電試験における3サイクル目の放電容量が200mAh/g以上を得ることができる。
【0014】
また、前記電極用酸化チタン化合物を正極または負極活物質として電池用電極とすることができる。
【0015】
更に、前記電池用電極を用いてリチウム二次電池を形成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電極用酸化チタン化合物は結晶子径、比表面積、一次粒子径及びNaまたはK含有量を制御することにより充放電容量を大きくすることができ、リチウム電池の負極とした場合、エネルギー密度を大きくすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の電極用酸化チタン化合物について詳しく説明する。
本発明の電極用酸化チタン化合物は、TiO2・(H2O)a・(A2O)b(但し、AはNaまたはKであり、aは0<a≦1、bは0<b≦0.1である)で表される酸化チタン化合物であり、かつX線回折図において2θ=20〜30°に主ピーク、45〜55°に副ピークを有し、前記主ピークで求めた結晶子径が40Å以上500Å以下である。
【0018】
(結晶構造)
結晶構造はX線回折のピーク強度が弱いために明確に同定することは困難であるが、チタン酸ナトリウムまたはチタン酸カリウムを中間体として合成した酸化チタン化合物は層状構造またはトンネル構造と推定される。これに対して、スピネル型チタン酸リチウムの様に酸化チタン化合物であっても20〜30°に主ピーク(メインピーク)を持たない場合には、結晶子径や比表面積を制御しても200mAh/g以上の充放電容量は得られない。
【0019】
(出発原料)
原料にはアナターゼ及びルチル型の酸化チタン、含水酸化チタン、水酸化チタン等の酸化チタンまたは酸化チタン化合物が使用可能であるが、結晶子径や比表面積を制御するため、原料には微粒子で反応性の良い含水酸化チタン(メタチタン酸)または水酸化チタン(オルソチタン酸)を使用することが好ましい。微粒子で反応性の良い含水酸化チタンまたは水酸化チタンはチタン化合物の加水分解により得ることが可能であり、チタン化合物としては硫酸チタニル、四塩化チタン、アルコキシドチタン等が使用可能である。含水酸化チタンや水酸化チタンを原料とした場合、最終的に結晶水が残る可能性がある。電気容量を大きくする観点から不純物である結晶水は少ない方が良いが、過度な熱処理により除去すると結晶構造が変化するため好ましくなく、適度な範囲であれば残っても悪影響は少ない。結晶水の量は900℃で2時間の熱処理によって生じる重量減量から測定することができる。
【0020】
(酸化チタン化合物の組成)
層状構造やトンネル構造を製造する際の中間生成物であるチタン酸ナトリウムやチタン酸カリウムに起因するナトリウムやカリウムの残存は不純物となり、充放電容量の低下を招くため可能な限り少ない方が良いが、少な過ぎると熱によってアナターゼやルチル型の酸化チタンに転移し易くなる。このため、少なくとも200mAh/g以上の放電容量を得るためにはTiO2・(H2O)a・(A2O)b(但しAはNaまたはKである)と表され、aは上記理由により0<a≦1でありbは0<b≦0.1である必要があり、より好ましくは、aは0<a≦0.8でありbは0.01≦b≦0.06である。尚、ナトリウムやカリウムの含有量は蛍光X線分析により測定することができる。
【0021】
(結晶子径)
結晶子径は単位結晶の大きさを表すパラメーターであり、粒子内の電極反応に伴って送入されたリチウムイオンの拡散距離、または挿入されたリチウムイオンが脱離する際の粒子表面に到達する移動距離を表しており、大き過ぎると粒子内のリチウムイオンの移動距離が長くなるため充放電容量が低下する。X線回折図において、層状構造酸化チタン化合物、トンネル構造酸化チタン化合物に共通して2θ=20〜30°及び45〜55°にピークを有し、20〜30°のピークの半価幅を用いてScherrerの式(D=Kλ/(βCOSθ) ここでD:結晶子径(A),K:定数0.9,λ:X線の波長(1.54A),β:回折線の半価幅(rad),θ:回折角(°))より求めた結晶子径が40Å以上500Å以下である時、200mAh/g以上の充放電容量を得ることができる。
【0022】
(比表面積)
比表面積はBET法に測定され、当該酸化チタン化合物がリチウムイオンの挿入脱離に伴う電極反応を行う際の反応界面の大きさを表すパラメーターであり、急速充放電を行う際に重要な因子である。即ち、数値が大きい程反応性は向上するが、大き過ぎると電極集電体との接着性の低下や粒子間の界面抵抗の増加による電池の内部抵抗の増加が起こり、小さ過ぎると反応性が低下し、十分な負荷特性が得られないため、20m2/g以上 400m2/g以下に制御することが好ましい。
【0023】
(一次粒子径)
一次粒子径は透過型電子顕微鏡により観察され、結晶子径や比表面積より直接的に観察される粒子サイズである。結晶子径や比表面積を上記範囲に制御し、更に一次粒子径を0.01〜0.5μmとすることにより、電気容量とサイクル特性のバランスが良い活物質とすることができる。
【0024】
(チタン酸ナトリウム、チタン酸カリウム中間体)
層状やトンネル構造の微粒子酸化チタン化合物を合成するためには、チタン酸ナトリウムやチタン酸カリウムを中間体として合成することができる。一般的に顔料として使用されているサブミクロンオーダーのアナターゼ型酸化チタンと炭酸ナトリウムや炭酸カリウムとを混合して焼成法により反応させたチタン酸ナトリウムやチタン酸カリウムを前駆体とする方法は、粉砕により微粒子化することは可能ではあるが、粉砕に多くのエネルギーを必要とするため、より好ましくは湿式合成法によりナノオーダーの中間体を作製することが好ましい。その場合、使用する酸化チタン原料は含水酸化チタンの微粒子を使用することが好ましい。湿式法によりチタン酸ナトリウムやチタン酸カリウムを中間体として合成する方法は粒成長が起こり難いため、最終的には結晶子径や比表面積が調整された酸化チタン化合物を得ることに有用である。更に放電容量を大きくするために不純物であるナトリウム及びカリウムを除去する必要があるが、酸処理により除去する場合、焼成法により合成した場合に比較して除去が容易であり、残存量を調整することが可能となる。
【0025】
(酸化チタン化合物)
酸処理によりプロトン置換した酸化チタン化合物は500℃以下のアナターゼ型酸化チタンに転移しない範囲の可能な限り高温で熱処理することにより結晶子径が40Å以上500Å以下で比表面積が20m2/g以上400m2/g以下の層状またはトンネル構造の酸化チタン化合物を合成することができる。合成した酸化チタン化合物を用いて電極を作製し、対極に金属Liを使用したコイン型二次電池を作製して充・放電試験を行った場合、本発明による酸化チタン化合物は活物質1g当たり35mAで行った充放電試験における3サイクル目の放電容量が200mAh/g以上の高い値を得ることが可能である。また、1サイクル目の放電容量に対する3サイクル目の放電容量の維持率も70%以上得ることができる。
【0026】
(合成方法)
層状またはトンネル構造の酸化チタン化合物を得る具体的な合成方法を述べる。チタン酸ナトリウムやチタン酸カリウムは含水酸化チタンの水分散スラリーに水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムをNa/Tiモル比またはK/Tiモル比が1.0〜10.0の範囲で添加し、90℃以上の温度で反応させることにより得られる。
【0027】
得られた反応物をろ過、洗浄後、再度スラリー化した後、酸によりpHを1〜3に保持し、ナトリウムまたはカリウムの全量または一部をプロトンに置換する。酸は硫酸や塩酸、硝酸等、一般的に使用される酸が使用できる。酸処理後、ろ過、洗浄及び乾燥し、700℃以下の温度で熱処理を行う。熱処理の温度が高過ぎるとアナターゼ型酸化チタンに転移し、低過ぎると電池とした時に電気容量の低下とサイクル特性の劣化の原因となるため、アナターゼ型酸化チタンに転移しない範囲で高い温度が最適であり、200〜500℃の範囲がより好ましい。
【0028】
(特性)
上記により合成した酸化チタン化合物を活物質として電極を作製し、対極に金属Liを使用したコイン型二次電池を作製して活物質1g当たり35mAで充・放電試験を行うと、本発明による酸化チタン化合物は放電容量が200mAh/g以上の高い値を得ることが可能であり、1サイクル目の放電容量に対する3サイクル目の放電容量の維持率も70%以上得ることができる。
【実施例】
【0029】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例は単に例示の為に記すものであり、発明の範囲がこれらによって制限されるものではない。
【0030】
[実施例1]
硫酸チタニルの加水分解により得られた微粒子含水酸化チタンを水分散させスラリー化した後、水酸化ナトリウム水溶液をNa/Tiモル比が2.0となるように添加し、90℃で24時間反応させた。反応終了物をろ過、洗浄し、硫酸にてpHを2に調整し、24時間保持した。その後、ろ過、洗浄した後、250℃で2時間の熱処理を行い、試料1を得た。得られた試料1の比表面積はマイクロメリティックス社製ジェミニ2375によりBET一点法により測定した。結晶子径は(株)リガク製TTRIIIによりターゲット Cu、2θ測定範囲 20〜30゜の回折線を測定し、Scherrerの方法により算出した。また本試料82重量部とアセチレンブラック9重量部及びポリフッ化ビニリデン9重量部を混合後、N−メチル−2−ピロリドンに固形分濃度30%でハイシェアーミキサーにより5分間混練し、塗料を作製した。次に上記塗料をアルミ箔上にドクターブレード法で塗布した。110℃で真空乾燥後、初期電極合剤の厚みに対して80%にロールプレスした。1cm2に打ち抜き後、図1に示すコイン電池の電極10とした。図1において対極は金属Li板12を、電解液はエチレンカーボネートとジメチルカーボネートの等容量混合物にLiPF6を1mol/Lで溶解したものを、セパレータ14はグラスフィルターを使用した。ケース16及びガスケット18でこれらを覆って作製したコイン電池20を用いて活物質1g当たり35mAで1.0Vまで放電後、同電流値で3.0Vまで充電し、このサイクルを3回繰り返した。また、900℃で2時間加熱し、重量減量より水分含有量を測定し、(株)リガク製サイマルティックス蛍光X線分析装置によりNa量を測定して、a値、及びb値を求めた。結果を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
図2にX線回折図を示す。試料1の結晶子径は70Åであり比表面積は350m2/gであった。また水分含有量は14.2wt%であり、Na2O含有量は0.7wt%であったことから、TiO2・(H2O)a・(Na2O)bのaは0.74、bは0.01であった。また、日本電子製透過型電子顕微鏡により一次粒径を確認した。図4は電子顕微鏡写真を示す。写真より、一次粒子径は0.5μm未満であることを確認した。図5は放電曲線を示す。1サイクル目の放電容量は350mAh/g、3サイクル目放電容量は250mAh/gと200mAh/g以上の高容量であることを確認した。
【0033】
[実施例2]
硫酸によるpH調整をpH4とした以外は実施例1と同様に行い、試料2を得た。結果を表1に示す。図2にX線回折図を示す。試料2の結晶子径は68Åであり比表面積は345m2/gであった。また水分含有量は13.8wt%であり、Na2O含有量は3.57wt%であったことから、TiO2・(H2O)a・(Na2O)bのaは0.74、bは0.06であった。図6は放電曲線を示す。1サイクル目の放電容量は280mAh/g、3サイクル目放電容量は200mAh/gと200mAh/g以上の高容量であることを確認した。
【0034】
[比較例1]
硫酸によるpH調整をpH7とした以外は実施例1と同様に行い、試料3を得た。結果を表1に示す。図2にX線回折図を示す。試料3の結晶子径は67Åであり、比表面積は343m2/gであった。また水分含有量は13.1wt%であり、Na2O含有量は8.50wt%であったことから、TiO2・(H2O)a・(Na2O)bのaは0.74、bは0.14であった。図7は放電曲線を示す。1サイクル目の放電容量は195mAh/g、3サイクル目放電容量は152mAh/gであった。
【0035】
[実施例3]
熱処理を400℃で行った以外は実施例1と同様に行い、試料4を得た。結果を表1に示す。図2にX線回折図を示す。試料8の結晶子径は111Åであり、比表面積は159m2/gであった。また水分含有量は8.9wt%であり、Na2O含有量は0.74wt%であったことから、TiO2・(H2O)a・(Na2O)bのaは0.44、bは0.01であった。図8は放電曲線を示す。1サイクル目の放電容量は270mAh/g、3サイクル目放電容量は226mAh/gと200mAh/g以上の高容量であることを確認した。
【0036】
[実施例4]
熱処理を600℃で行った以外は実施例1と同様に行い、試料5を得た。結果を表1に示す。図2にX線回折図を示す。試料5の結晶子径は230Åであり、比表面積は21m2/gであった。また水分含有量は5.0wt%であり、Na2O含有量は0.78wt%であったことから、TiO2・(H2O)a・(Na2O)bのaは0.24、bは0.01であった。図9は放電曲線を示す。1サイクル目の放電容量は241mAh/g、3サイクル目放電容量は200mAh/gと200mAh/g以上の高容量であることを確認した。
【0037】
[比較例2]
熱処理を900℃で行った以外は実施例1と同様に行い、試料6を得た。結果を表1に示す。図2にX線回折図を示す。試料6の結晶子径は512Åであり、比表面積は10m2/gであった。また水分含有量は1.0wt%であり、Na2O含有量は0.81wt%であったことから、TiO2・(H2O)a・(Na2O)bのaは0.05、bは0.01であった。図10は放電曲線を示す。1サイクル目の放電容量は125mAh/g、3サイクル目放電容量は113mAh/gであった。
【0038】
[実施例5]
実施例1において水酸化ナトリウム水溶液をNa/Tiモル比が2.0となるように添加したことを、水酸化カリウム水溶液をK/Tiモル比が2.0となるように添加したことに変更した以外は同様に行い、試料7を得た。結果を表1に示す。図3にX線回折図を示す。試料7の結晶子径は41Åであり、比表面積は320m2/gであった。また水分含有量は12.2wt%であり、K2O含有量は2.4wt%であったことから、TiO2・(H2O)a・(Na2O)bのaは0.63、bは0.02であった。図11は放電曲線を示す。1サイクル目の放電容量は261mAh/g、3サイクル目放電容量は222mAh/gと200mAh/g以上の高容量であることを確認した。
【0039】
[比較例3]
熱処理を900℃で行った以外は実施例5と同様に行い、試料8を得た。結果を表1に示す。図3にX線回折図を示す。試料8の結晶子径は505Åであり、比表面積は11m2/gであった。また水分含有量は1.0wt%であり、K2O含有量は2.1wt%であったことから、TiO2・(H2O)a・(Na2O)bのaは0.05、bは0.02であった。図12は放電曲線を示す。1サイクル目の放電容量は232mAh/g、3サイクル目放電容量は171mAh/gであった。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】電池評価を行ったコイン電池の模式図である。
【図2】中間体としてチタン酸ナトリウムを経由した試料のX線回折図である。
【図3】中間体としてチタン酸カリウムを経由した試料のX線回折図である。
【図4】実施例1の透過型電子顕微鏡写真である。
【図5】実施例1(試料1)の放電曲線図である。
【図6】実施例2(試料2)の放電曲線図である。
【図7】比較例1(試料3)の放電曲線図である。
【図8】実施例3(試料4)の放電曲線図である。
【図9】実施例4(試料5)の放電曲線図である。
【図10】比較例2(試料6)の放電曲線図である。
【図11】実施例5(試料7)の放電曲線図である。
【図12】比較例3(試料8)の放電曲線図である。
【符号の説明】
【0041】
10 電極(試料)
12 金属Li板
14 セパレータ
16 ケース
18 ガスケット
20 コイン電池
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極用活物質であって、TiO2・(H2O)a・(A2O)b(但し、AはNaまたはKであり、aは0<a≦1、bは0<b≦0.1である)で表される酸化チタン化合物であり、かつX線回折図において2θ=20〜30°に主ピーク、45〜55°に副ピークを有し、前記主ピークで求めた結晶子径が40Å以上500Å以下であることを特徴とする電極用酸化チタン化合物。
【請求項2】
前記酸化チタン化合物の比表面積が20m2/g以上、400m2/g以下であることを特徴とする請求項1に記載の電極用酸化チタン化合物。
【請求項3】
金属Liを対極としてリチウム二次電池を作製した際に、活物質1g当たり35mAで行った充放電試験における3サイクル目の放電容量が200mAh/g以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の電極用酸化チタン化合物。
【請求項4】
請求項1または2に記載の電極用酸化チタン化合物を正極または負極活物質として用いた電池用電極。
【請求項5】
請求項4に記載の電池用電極を用いたリチウム二次電池。
【請求項1】
電極用活物質であって、TiO2・(H2O)a・(A2O)b(但し、AはNaまたはKであり、aは0<a≦1、bは0<b≦0.1である)で表される酸化チタン化合物であり、かつX線回折図において2θ=20〜30°に主ピーク、45〜55°に副ピークを有し、前記主ピークで求めた結晶子径が40Å以上500Å以下であることを特徴とする電極用酸化チタン化合物。
【請求項2】
前記酸化チタン化合物の比表面積が20m2/g以上、400m2/g以下であることを特徴とする請求項1に記載の電極用酸化チタン化合物。
【請求項3】
金属Liを対極としてリチウム二次電池を作製した際に、活物質1g当たり35mAで行った充放電試験における3サイクル目の放電容量が200mAh/g以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の電極用酸化チタン化合物。
【請求項4】
請求項1または2に記載の電極用酸化チタン化合物を正極または負極活物質として用いた電池用電極。
【請求項5】
請求項4に記載の電池用電極を用いたリチウム二次電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図4】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図4】
【公開番号】特開2010−140863(P2010−140863A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318538(P2008−318538)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000109255)チタン工業株式会社 (17)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000109255)チタン工業株式会社 (17)
【Fターム(参考)】
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