説明

電気光学的表示装置の製造方法およびフレキシブル基板

【課題】フレキシブル基板の接続と保護樹脂の塗布とをほぼ同時に行えるようにする。
【解決手段】表示パネル10の信号入力電極部11cが形成されている端子部11aに、ベースフィルム210の一端側に信号出力電極部230が形成されているフレキシブル基板200をヒートシール接続手段30を介して電気的,機械的に接続するにあたって、フレキシブル基板200の一端側に、信号出力電極部230からベースフィルム210のみを端子部11aの奥行き方向に所定長さ分引き出してなるフラップ片211を連設し、フラップ片211に保護樹脂40の層を形成し、ヒートシール接続手段30とともにフラップ片211を加熱加圧して、保護樹脂40をフラップ片211からはみ出させて、端子部11a上を保護樹脂40にて被覆する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学的表示装置の製造方法および電気光学的表示装置の端子部に接続されるフレキシブル基板に関し、さらに詳しく言えば、フレキシブル基板の接続に伴って端子部上に保護樹脂を塗布する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気光学的表示装置には、液晶表示パネル,有機ELパネル,プラズマディスプレイパネルなどが含まれるが、いずれにしても表示要素を有する表示パネルに対してフレキシブル基板を接続し、フレキシブル基板を介して表示パネルに表示駆動信号を与えるようにしており、図3に液晶表示パネルにフレキシブル基板を接続した例を示す。
【0003】
これについて説明すると、液晶表示パネル10は、それぞれ内面に図示しない透明電極が形成された一対の電極基板11,12を周辺シール材13を介して貼り合わせたセル基板を有し、このセル基板内には所定の液晶物質14が封入されている。
【0004】
この例では、一方の電極基板11側に端子部11aが側方に張り出すように連設されており、図示しないが、端子部11aには表示部内の透明電極に表示駆動信号を入力するための信号入力電極部が形成されている。
【0005】
この場合、一方の電極基板11側の透明電極は、周辺シール材13を潜る引き回し配線を介して信号入力電極部と接続され、他方の電極基板11側の透明電極は、周辺シール材13内に設けられているトランスファ手段を介して信号入力電極部と接続されている。
【0006】
フレキシブル基板20は、その一端20a側に端子部11aの信号入力電極部に対応する図示しない信号出力電極を備え、その信号出力電極と信号入力電極部とがヒートシール接続手段30を介して電気的,機械的に接続される。
【0007】
多くの場合、ヒートシール接続手段30には、異方性導電フィルム(ACF)や、熱可塑性樹脂内に微粒子状の銀を含むペーストなどが用いられる。
【0008】
図示しないが、接続治具には、電気ヒータが内蔵されたヒーターバーが用いられ、ヒーターバーをフレキシブル基板20の上から押し付けることにより、信号出力電極と信号入力電極部とにそれぞれ含まれている多数のリード電極が一括して接続される。
【0009】
フレキシブル基板20の他端側は、図示しない表示制御基板に接続され、その表示制御基板から出力される表示駆動信号がフレキシブル基板20を介して液晶表示パネル10に入力され、これにより液晶表示パネル10が所定に駆動される。
【0010】
ところで、端子部11aの信号入力電極部に含まれている各リード電極は、通常、表示部内の透明電極と同じITO(Indium Tin Oxide)より形成されるが、ヒートシール接続手段30による接続部以外の部分が露出された状態であると、酸やアルカリによる腐蝕または電蝕にて消失して、極端な場合には断線することもある。
【0011】
そこで、従来では、図3に示すように、防湿コート材として、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの保護樹脂40を端子部11a上に塗布して、信号入力電極部に含まれている各リード電極を保護するようにしている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0012】
【特許文献1】特開平6−289410号公報
【特許文献2】特開平9−33941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、保護樹脂40の塗布はフレキシブル基板20の接続後に行われるため、その接続後で保護樹脂塗布するまでの間に、ゴミや人体分泌物なとの異物が端子部11aに付着することがあり、リークによる短絡、信頼性の低下などが懸念される。
【0014】
また、別の問題として、フレキシブル基板20の接続工程と、保護樹脂40の塗布工程とを分けて行っているため、生産性の面で好ましくない。
【0015】
したがって、本発明の課題は、フレキシブル基板の接続と保護樹脂の塗布とをほぼ同時に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明は、請求項1に記載されているように、表示駆動の信号入力電極部が形成されている端子部を有する表示パネルと、ベースフィルムの一方の面の一端側に上記信号入力電極部に対応する信号出力電極部が形成されているフレキシブル基板とを含み、上記フレキシブル基板の一端側を上記端子部に重ね、上記信号入力電極部と上記信号出力電極部とをヒートシール接続手段を介して電気的,機械的に接続するとともに、その接続部以外の上記端子部上を保護樹脂にて被覆する電気光学的表示装置の製造方法において、上記フレキシブル基板の一端側に、上記信号出力電極部から上記ベースフィルムのみを上記端子部の奥行き方向に所定長さ分引き出してなるフラップ片を連設し、上記フラップ片の上記信号出力電極部側の面に上記保護樹脂層を形成し、上記ヒートシール接続手段とともに上記フラップ片を加熱加圧して、上記保護樹脂を上記フラップ片からはみ出させて、上記ヒートシール接続手段による接続部以外の上記端子部上を保護樹脂にて被覆することを特徴としている。
【0017】
請求項1の発明において、請求項2に記載されているように、上記保護樹脂として、電気絶縁性の熱可塑性樹脂が用いられることが好ましい。より好ましくは、請求項2に記載されているように、上記ヒートシール接続手段に含まれる熱可塑性樹脂と同一または同種の熱可塑性樹脂が用いられるとよい。
【0018】
また、請求項4に記載されているように、上記保護樹脂の層厚が、上記フラップ片の引出基部側から先端部側に行くにしたがって漸次厚くされることが好ましい。
【0019】
また、本発明には、請求項5に記載のフレキシブル基板も含まれる。すなわち、請求項5に記載のフレキシブル基板は、ベースフィルムの一方の面の一端側に信号出力電極部を備え、上記信号出力電極部が表示パネルの端子部に形成されている信号入力電極部にヒートシール接続手段を介して電気的,機械的に接続されるフレキシブル基板において、上記信号出力電極部から上記ベースフィルムのみを上記端子部の奥行き方向に所定長さ分引き出してなるフラップ片を備え、上記フラップ片の上記信号出力電極部側の面に上記端子部のための保護樹脂層が形成されていることを特徴としている。
【0020】
請求項5の発明において、請求項6に記載されているように、上記保護樹脂の層厚が、上記フラップ片の引出基部側から先端部側に行くにしたがって漸次厚くされることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明による電気光学的表示装置の製造方法によれば、表示パネルの信号入力電極部が形成されている端子部に、ベースフィルムの一方の面の一端側に上記信号入力電極部に対応する信号出力電極部が形成されているフレキシブル基板をヒートシール接続手段を介して電気的,機械的に接続するにあたって、上記フレキシブル基板の一端側に、上記信号出力電極部から上記ベースフィルムのみを上記端子部の奥行き方向に所定長さ分引き出してなるフラップ片を連設し、上記フラップ片の一方の面に保護樹脂層を形成し、上記ヒートシール接続手段とともに上記フラップ片を加熱加圧して、上記保護樹脂を上記フラップ片からはみ出させて、上記ヒートシール接続手段による接続部以外の上記端子部上を保護樹脂にて被覆するようにしたことにより、端子部に異物が付着する時間を与えることなく、フレキシブル基板の接続と保護樹脂の塗布とをほぼ同時に行うことができる。
【0022】
この場合、保護樹脂の層厚をフラップ片の引出基部側から先端部側に行くにしたがって漸次厚くすることにより、フラップ片から保護樹脂をよりはみ出しやすくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、図1および図2により、本発明の実施形態について説明する。図1(a)〜(c)は本発明の電気光学的表示装置の製造方法を工程順に説明するための模式的な断面図、図2(a)は本発明のプリント基板を示す断面図,図2(b)はその底面図(パネルの端子部側から見た図)である。
【0024】
なお、この実施形態においても、先の図3で説明した従来例と同じく、電気光学表示装置は液晶表示パネル10としているが、図1(a)〜(c)には図3で図示省略としたパネル側の端子部11aに設けられる信号入力電極部を参照符号11cとして示している。この信号入力電極部11cは端子部11aの端縁11b側に配置されている。
【0025】
図1(a)に示すように、液晶表示パネル10の端子部11aにフレキシブル基板200を接続するにあたって、本発明では、フレキシブル基板200に次のような構成を採用している。
【0026】
図2(a),(b)を参照して、フレキシブル基板200は、基本的な構成として、例えばポリイミド樹脂フィルム製で可撓性を有するベースフィルム210と、ベースフィルム210の一方の面に形成された多数本のリード配線221を含む配線層220と、配線層220の一端側に配置された信号出力電極部230と、配線層220上に形成された電気絶縁性のカバー層240とを備えている。
【0027】
信号出力電極部230には、各リード配線221の端部がリード電極221aとして含まれている。信号出力電極部230上には、ヒートシール接着手段30が設けられ、信号出力電極部230は、ヒートシール接着手段30を介してパネル側の端子部11aに設けられる信号入力電極部11cと電気的,機械的に接続される。
【0028】
ヒートシール接着手段30には、例えば異方性導電フィルム(ACF)や、熱可塑性樹脂内に微粒子状の銀を含むペーストなどが用いられてよい。
【0029】
従来のフレキシブル基板においては、図3で説明したように、フレキシブル基板20の一端20a側に信号出力電極部が設けられ、そこで終端しているが、本発明のフレキシブル基板200では、信号出力電極部230からベースフィルム210のみを端子部11aの奥行き方向にさらに所定長さ分引き出してなるフラップ片211を備えている。
【0030】
なお、端子部11aの奥行き方向とは、端子部11aの端縁11bから周辺シール材13に向かう方向である。
【0031】
本発明において、フラップ片211の端子部11aと対向する一方の面、好ましくは幅方向の全体には、保護する保護樹脂40の層が形成されている。この保護樹脂40は、上記従来例と同じく、信号入力電極部11cのうちの端子部11aに露出されているリード電極を被覆して異物から保護するためのものである。
【0032】
この保護樹脂40は、熱可塑性合成樹脂、とりわけヒートシール接着手段30に含まれている熱可塑性合成樹脂と同一または同種の熱可塑性合成樹脂(ホットメルト樹脂など)であることが、同一工程で形成できる、同一条件で加熱溶融できる点で好ましい。また、図2(a)に示すように、保護樹脂40は、その塗布厚がフラップ片211の引出基部側(信号出力電極部230側)から先端部側に行くにしたがって漸次厚くなるように、フラップ片211に塗布されることが好ましい。
【0033】
フレキシブル基板200を端子部11aに接続するには、図1(b)に示すように、信号出力電極部230と信号入力電極部11cとを位置決めして重ね合わせるとともに、保護樹脂40付きのフラップ片211が端子部11a上に配置する。
【0034】
次に、図1(c)に示すように、ヒートシール接着手段30からフラップ片211の先端にかけての部分に図示しないヒーターバーを押し付けてフラップ片211がほぼ平らになるように圧着する。
【0035】
これにより、信号出力電極部230と信号入力電極部11cとが電気的,機械的に接続されるとともに、保護樹脂40が溶融してフラップ片211からはみ出し、ヒートシール接着手段30による通電部以外の部分が保護樹脂40にて被覆される。
【0036】
このように、本発明によれば、ヒートシール接着手段30による電気的,機械的な接続と、保護樹脂40の塗布を1工程で行うことができる。また、本発明によれば、フレキシブル基板200を端子部11aに接続した後、フラップ片211および保護樹脂40により、ヒートシール接着手段30が外気に晒されなくなるため、ヒートシール接着手段30の防湿効果も高められる。
【0037】
また、保護樹脂40の層厚をフラップ片211の引出基部側から先端部側に行くにしたがって漸次厚くすることにより、保護樹脂40の通電部側への流れが防止されるとともに、保護樹脂40がフラップ片211の先端部側から押し出されやすくなるため、電極基板12の端縁12aの下側に庇状に存在する隙間にも保護樹脂40が充填されることになる。
【0038】
なお、端子部11aに液晶駆動用のチップ部品が実装されているCOG(Chip On Glass)機種の場合には、フラップ片211にチップ部品が嵌合される開口部を設ければよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】(a)〜(c)本発明の電気光学的表示装置の製造方法を工程順に説明するための模式的な断面図。
【図2】(a)は本発明のプリント基板を示す断面図,(b)はその底面図。
【図3】従来例を示す模式的な断面図。
【符号の説明】
【0040】
10 液晶表示パネル
11,12 電極基板
11a 端子部
11c 信号入力電極部
13 周辺シール材
14 液晶物質
30 ヒートシール接着手段
40 保護樹脂
200 フレキシブル基板
210 ベースフィルム
211 フラップ片
220 配線層
230 信号出力電極部
240 カバー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示駆動の信号入力電極部が形成されている端子部を有する表示パネルと、ベースフィルムの一方の面の一端側に上記信号入力電極部に対応する信号出力電極部が形成されているフレキシブル基板とを含み、上記フレキシブル基板の一端側を上記端子部に重ね、上記信号入力電極部と上記信号出力電極部とをヒートシール接続手段を介して電気的,機械的に接続するとともに、その接続部以外の上記端子部上を保護樹脂にて被覆する電気光学的表示装置の製造方法において、
上記フレキシブル基板の一端側に、上記信号出力電極部から上記ベースフィルムのみを上記端子部の奥行き方向に所定長さ分引き出してなるフラップ片を連設し、上記フラップ片の上記信号出力電極部側の面に上記保護樹脂層を形成し、上記ヒートシール接続手段とともに上記フラップ片を加熱加圧して、上記保護樹脂を上記フラップ片からはみ出させて、上記ヒートシール接続手段による接続部以外の上記端子部上を保護樹脂にて被覆することを特徴とする電気光学的表示装置の製造方法。
【請求項2】
上記保護樹脂として、電気絶縁性の熱可塑性樹脂が用いられることを特徴とする請求項1に記載の電気光学的表示装置の製造方法。
【請求項3】
上記保護樹脂として、上記ヒートシール接続手段に含まれる熱可塑性樹脂と同一または同種の熱可塑性樹脂が用いられることを特徴とする請求項2に記載の電気光学的表示装置の製造方法。
【請求項4】
上記保護樹脂の層厚が、上記フラップ片の引出基部側から先端部側に行くにしたがって漸次厚くされることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電気光学的表示装置の製造方法。
【請求項5】
ベースフィルムの一方の面の一端側に信号出力電極部を備え、上記信号出力電極部が表示パネルの端子部に形成されている信号入力電極部にヒートシール接続手段を介して電気的,機械的に接続されるフレキシブル基板において、
上記信号出力電極部から上記ベースフィルムのみを上記端子部の奥行き方向に所定長さ分引き出してなるフラップ片を備え、上記フラップ片の上記信号出力電極部側の面に上記端子部のための保護樹脂層が形成されていることを特徴とするフレキシブル基板。
【請求項6】
上記保護樹脂の層厚が、上記フラップ片の引出基部側から先端部側に行くにしたがって漸次厚くされることを特徴とする請求項5に記載のフレキシブル基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−16392(P2009−16392A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−173225(P2007−173225)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【Fターム(参考)】