説明

電気式床暖房システム

【課題】遮断電流が十分に大きいブレーカーを設置することができない場合であっても、床暖房を開始した時点から短時間で、床面温度を所定温度まで昇温させることができる電気式床暖房システムを提供する。
【解決手段】床暖房エリアAに敷設される、線ヒータが内蔵された複数の床暖房パネル11と、各床暖房パネル11の線ヒータへの通電をON/OFF制御するコントローラ20とを備えており、コントローラ20の電源入力端子21は、ブレーカー30を介して、交流電源40に接続されている。コントローラ20の制御出力端子22a、22bには、床暖房エリアAに敷設される床暖房パネル11の線ヒータが接続された2つの端末通電回路10a、10bが接続されており、コントローラ20が、双方の端末通電回路10a、10bに対して同時に通電しないように、各端末通電回路10a、10bに対する通電タイミングをずらすようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、線ヒータが内蔵された複数の床暖房パネルを使用して床暖房を行う電気式床暖房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気式床暖房システムとしては、例えば、図8に示すようなものがある。この電気式床暖房システム50は、同図に示すように、床暖房エリアAに敷設される、線ヒータが内蔵された複数の床暖房パネル51と、床暖房パネル51に内蔵された線ヒータへの通電をON/OFF制御するコントローラ52とを備えており、コントローラ52の電源入力端子52bは、ブレーカー54を介して、交流電源55に接続されていると共に、コントローラ52の制御出力端子52aには、各床暖房パネル51の線ヒータが接続された端末通電回路53が接続されている。
【0003】
前記床暖房パネル51に内蔵される線ヒータは、各床暖房パネル51の線ヒータが接続されている端末通電回路53の電流値が、ブレーカー54の遮断電流を下回るように、その消費電力が設定されており、通電時は、全ての各床暖房パネル51の線ヒータに通電されるようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−162049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、全ての床暖房パネル51の線ヒータに同時に通電される、上述した電気式床暖房システム50では、各床暖房パネル51に内蔵されている線ヒータの消費電力は、床暖房パネル51の敷設枚数とブレーカー54の遮断電流とによって決定される消費電力以上に設定することができないので、例えば、遮断電流が十分に大きいブレーカーを設置することができない場合は、各床暖房パネル51に内蔵されている線ヒータの消費電力、即ち、加熱能力が必然的に小さくなり、床暖房を開始した時点から、床面温度が所定温度まで昇温するのに時間がかかるといった問題がある。
【0006】
そこで、この発明の課題は、遮断電流が十分に大きいブレーカーを設置することができない場合であっても、床暖房を開始した時点から短時間で、床面温度を所定温度まで昇温させることができる電気式床暖房システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1にかかる発明は、床暖房エリアに敷設される、線ヒータが内蔵された複数の床暖房パネルと、前記床暖房パネルの前記線ヒータへの通電をON/OFF制御するコントローラとを備えた電気式床暖房システムにおいて、前記コントローラを介してブレーカーに接続される、前記床暖房パネルの前記線ヒータが接続された端末通電回路を複数に分割し、前記コントローラが、複数の前記端末通電回路に対して同時に通電しないように、各端末通電回路に対する通電タイミングをずらすようにしたことを特徴とする電気式床暖房システムを提供するものである。
【0008】
また、請求項2にかかる発明は、請求項1にかかる発明の電気式床暖房システムにおいて、前記コントローラが、所定の制御周期に対して設定された通電時間に基づいて、前記端末通電回路に断続的に通電するようにしたのである。
【0009】
また、請求項3にかかる発明は、請求項2にかかる発明の電気式床暖房システムにおいて、前記通電時間を、運転開始時点から所定時間が経過するまでの間に適用される初期通電時間と、運転開始時点から所定時間が経過した後に適用される定常通電時間とによって構成したのである。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、請求項1にかかる発明の電気式床暖房システムでは、床暖房パネルの線ヒータが接続された端末通電回路を複数に分割し、コントローラが、複数の端末通電回路に対して同時に通電しないように、各端末通電回路に対する通電タイミングをずらすようにしたので、それぞれの端末通電回路の許容電流値を、ブレーカーの遮断電流値付近まで高くすることが可能になる。
【0011】
これによって、それぞれの端末通電回路に接続されている線ヒータの消費電力、即ち、加熱能力を、全ての床暖房パネルの線ヒータに同時に通電するようになっている電気式床暖房システムに比べて、高くすることができるので、遮断電流が十分に大きいブレーカーを設置することができない場合であっても、床暖房を開始した時点から短時間で、床面温度を所定温度まで昇温させることができる。
【0012】
また、請求項2にかかる発明の電気式床暖房システムでは、設定された使用温度や床暖房パネルの面積に応じた通電時間を適宜選択することにより、不要な通電を行う必要がなく、消費電力の削減を図ることができる。また、コントローラに端末通電回路への通電をON/OFFするリレーが搭載されている場合は、リレー接点の開閉回数が抑制されるので、リレーの寿命が長くなるという効果も得られる。
【0013】
また、請求項3にかかる発明の電気式床暖房システムでは、初期通電時間と定常通電時間とをそれぞれ個別に設定することができるので、それぞれの時間を適正な値に設定しておくことによって、暖房運転を開始した後、短時間で床暖房パネルの表面温度を使用温度まで昇温させることができると共に、床暖房パネルの表面温度が使用温度まで昇温した後は、その使用温度に安定して保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。図1に示すように、この電気式床暖房システム1は、床暖房エリアAに敷設される、線ヒータが内蔵された複数の床暖房パネル11と、各床暖房パネル11に内蔵された線ヒータへの通電をON/OFF制御するコントローラ20とを備えており、コントローラ20の電源入力端子21は、ブレーカー30を介して、交流電源40に接続されている。
【0015】
前記コントローラ20を介してブレーカー30に接続される端末通電回路は、床暖房エリアAの半分の領域に敷設される床暖房パネル11の線ヒータが接続された端末通電回路10aと、床暖房エリアAの残り半分の領域に敷設される床暖房パネル11の線ヒータが接続された端末通電回路10bとに分割されており、端末通電回路10a、10bは、コントローラ20の制御出力端子22a、22bにそれぞれ接続されている。
【0016】
前記コントローラ20は、図2に示すように、使用温度を設定する温度設定ボタン23と、端末通電回路10a、10bへの通電をON/OFFするリレー24a、24bと、表1に示すように、使用温度毎に設定された、端末通電回路10a、10bへの通電時間を記憶するROM25と、制御周期(例えば、6分)や端末通電回路10a、10bへの通電時間を計測するタイマ26と、温度設定ボタン23によって設定された使用温度に応じて、ROM25から端末通電回路10a、10bへの通電時間を読み出し、これに基づいて、リレー24a、24bの動作を制御するCPU27とを備えている。
【0017】
【表1】

【0018】
前記ROM25に記憶されている端末通電回路10a、10bへの通電時間は、予め、定められている制御周期(例えば、6分)に対する通電時間として設定されており、図3に示すように、端末通電回路10a、10bへの通電時間(ON時間)が短くなると、逆に、非通電時間(OFF時間)は長くなるようになっている。
【0019】
また、ROM25に記憶されている端末通電回路10a、10bへの通電時間は、表1に示すように、運転開始から30分が経過するまでの間に適用される初期通電時間と、30分経過後に適用される定常通電時間とから構成されており、初期通電時間は、図4(a)に示すように、使用温度に拘わらず、180秒であるが、定常通電時間は、同図(b)に示すように、使用温度に応じて、180秒から90秒まで変化するようになっている。従って、この電気式床暖房システム1では、運転開始直後の30分間の通電時間(初期通電時間)が、30分経過後の通電時間(定常通電時間)よりも短くなることはない。
【0020】
また、CPU27は、図5(a)、(b)に示すように、端末通電回路10aへの通電開始時点よりも、制御周期の1/2(180秒)だけ遅らせた時点から、端末通電回路10bへの通電を開始するようになっており、端末通電回路10a及び端末通電回路10bの双方に同時に通電されないようになっている。なお、同図(a)は、運転開始直後の30分間の状態、同図(b)は30分経過後の状態を示している。
【0021】
以上のように構成された電気式床暖房システム1では、床暖房パネル11の線ヒータに電力を供給する端末通電回路を、2つの端末通電回路10a、10bに分割し、コントローラ20が、双方の端末通電回路10a、10bに対して同時に通電しないように、各端末通電回路10a、10bに対する通電タイミングをずらすようにしたので、それぞれの端末通電回路10a、10bの許容電流値を、ブレーカー30の遮断電流値付近まで高くすることが可能になる。従って、この電気式床暖房システム1では、全ての床暖房パネルの線ヒータに同時に通電するようになっている電気式床暖房システムに比べて、それぞれの端末通電回路10a、10bに接続されている線ヒータの消費電力、即ち、加熱能力を高くすることができるので、遮断電流が十分に大きいブレーカーを設置することができない場合であっても、床暖房を開始した時点から短時間で、床暖房フロアの床面温度を所定温度まで昇温させることができる。
【0022】
図6に示すグラフは、消費電力が34.5Wの線ヒータが内蔵された床暖房パネルを20枚敷設することによって床暖房フロアを形成し、全ての床暖房パネルの線ヒータが接続された1つの端末通電回路に100%通電(連続通電)することによって床暖房を行った場合と、消費電力が2倍の69Wの線ヒータが内蔵された床暖房パネルを20枚敷設することによって床暖房フロアを形成し、10枚の床暖房パネルの線ヒータがそれぞれ接続された2つの端末通電回路に同時に通電しないように、50%通電(交互通電)することによって床暖房を行った場合の床面温度の時間変化を示している。このグラフにおいて、T0が床暖房を開始した時点であり、T1は69W50%通電の場合における床面温度が30℃に到達した時点、T2は34.5W100%通電の場合における床面温度が30℃に到達した時点を示している。なお、50%通電の場合の制御周期は6分、初期通電時間及び定常通電時間はそれぞれ180秒である。
【0023】
このグラフから分かるように、69W50%通電の場合は、床暖房の開始後、約10分経過した時点で、床面温度が30℃に到達しているが、34.5W100%通電の場合は、床暖房の開始後、床面温度が30℃に到達するまでに、15分程度要しており、34.5W100%通電に比べて、69W50%通電のほうが5分程度早く30℃まで昇温させることができる。
【0024】
なお、上述した実施形態では、端末通電回路を2つに分割しているが、これに限定されるものではなく、端末通電回路を3以上に分割することも可能であり、その場合は、各端末通電回路の許容電流値をさらに高くすることができるので、さらに消費電力の大きい線ヒータを内蔵した床暖房パネルを使用することができる。
【0025】
例えば、端末通電回路を3つに分割した場合は、制御周期を6分とすると、各端末通電回路への初期通電時間を120秒に設定し、図7に示すように、分割された3つの端末通電回路X、Y、Zに対して、同時に通電しないように、各端末通電回路X、Y、Zの通電タイミングを120秒づつずらすようにしておけばよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明にかかる電気式床暖房システムの一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】同上の電気式床暖房システムに使用されているコントローラを示すブロック図である。
【図3】同上のコントローラによって設定可能な使用温度毎の通電時間と制御周期との関係を示す図である。
【図4】(a)は運転開始直後の30分間の各端末通電回路への通電動作を示すタイミングチャート、(b)は30分経過後の各端末通電回路への通電動作を示すタイミングチャートである。
【図5】(a)は運転開始直後の30分間の双方の端末通電回路への通電動作を示すタイミングチャート、(b)は30分経過後の双方の端末通電回路への通電動作を示すタイミングチャートである。
【図6】同上の電気式床暖房システム及び従来の電気式床暖房システムについて、それぞれの床面温度の時間変化を示すグラフである。
【図7】他の実施形態における運転開始直後の30分間の通電動作を示すタイミングチャートである。
【図8】従来の電気式床暖房システムを示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0027】
1 電気式床暖房システム
10a、10b 端末通電回路
11 床暖房パネル
20 コントローラ
21 電源入力端子
22a、22b 制御出力端子
23 温度設定ボタン
24a、24b リレー
25 ROM
26 タイマ
27 CPU
30 ブレーカー
40 交流電源
A 床暖房エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床暖房エリアに敷設される、線ヒータが内蔵された複数の床暖房パネルと、
前記床暖房パネルの前記線ヒータへの通電をON/OFF制御するコントローラと
を備えた電気式床暖房システムにおいて、
前記コントローラを介してブレーカーに接続される、前記床暖房パネルの前記線ヒータが接続された端末通電回路を複数に分割し、
前記コントローラが、複数の前記端末通電回路に対して同時に通電しないように、各端末通電回路に対する通電タイミングをずらすようにしたことを特徴とする電気式床暖房システム。
【請求項2】
前記コントローラは、所定の制御周期に対して設定された通電時間に基づいて、前記端末通電回路に断続的に通電するようになっている請求項1に記載の電気式床暖房システム。
【請求項3】
前記通電時間は、運転開始時点から所定時間が経過するまでの間に適用される初期通電時間と、運転開始時点から所定時間が経過した後に適用される定常通電時間とから構成されている請求項2に記載の電気式床暖房システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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