説明

電気式床暖房構造

【課題】施工および日常のメンテナンスをより簡素化することができる電気式の床暖房構造を得る。
【解決手段】床下地40の上に感熱発熱線Aを所定のパターンに配設し、その上に、裏面に感熱発熱線Aの収容用凹溝21を形成したフロア材20を、収容用凹溝21内に感熱発熱線Aを収容した状態で接着固定する。感熱発熱線Aは、線状電極1aと1bを長手方向に一定の間隔を隔てて平行に配置し、この線状電極1aと1bの軸方向外周全体を覆うように正の抵抗温度係数を有する発熱体層2を断面円形または楕円形状に押出成形して形成したものであり、サーモスタット等の温度過昇防止装置を用いなくても、長い時間にわたり所要の温度条件範囲を維持することができ、かつ温度分布も均一となる。そのために、電気式床暖房構造のメンテナンスはきわめて容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気式床暖房構造に関し、特に、施工が容易でありかつ均一な温度分布を確保することのできる電気式床暖房構造に関する。
【背景技術】
【0002】
床暖房構造として、床下地の上に発熱源としての温水パイプを所要面積にわたってかつ所定のパターンで配設し、その上から、裏面に温水パイプ収容用の凹溝を形成したフロア材を、該温水パイプを凹溝内に収容した状態で敷き詰めるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3などを参照)。温水パイプに替えて、熱線ヒータを用い得ることも、前記特許文献1および特許文献2に記載されている。
【0003】
実際の施工に当たっては、基材シートの上に所定のパターンで温水パイプを固定した温水パイプ付きの基材シートを床下地の上に敷設したり(特許文献1、特許文献2)、温水パイプを両端部のUターン部とUターン部間を繋ぐ直線部分とからパターンとし、隣接する直線部分を連結部材により連結して構成される温水パイプユニットを床下地の上に敷設することが行われる(特許文献3)。
【0004】
いずれの場合も、この形態の床暖房構造は、工場で製造した温水パイプ付きの基材シートあるいは連結部材付きの温水パイプユニットを施工現場に持ち込んで床下地の上に敷設し、その上からフロア材を敷き詰めることによって、床暖房構造の施工を終えることができるので、施工時間を短縮することができ、また施工コストも大きく低減する。
【0005】
【特許文献1】特開2004−244992号公報
【特許文献2】特開2002−168465号公報
【特許文献3】特開2002−181343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献に記載される形態の床暖房構造およびその施工方法は施工性等において大きなメリットがある。しかし、発熱源として温水パイプを使用する形態では、温水の往きと戻りでパイプを別々に接続しなければならず、施工に依然として多くの工程を必要とする。また、温水の往き温度と戻り温度に差が生じるのを回避することはできず、床暖房フロア面にわずかとはいえ温度差がどうしても生じてしまう。さらに、温水を沸かし上げ循環させる装置が必要であり、そのための設置スペースも必要となる。
【0007】
発熱源として熱線ヒータを用いる態様は、温水パイプの場合と比較して施工が簡素化する利点があるが、サーモスタット等の温度過昇防止のための装置を取り付けることが安全上から必要であり、施工の簡素化の点からまたメンテナンスの点から、なお解決すべき課題が残されている。また、熱線ヒータを内蔵した形態の床フロア材を用いて電気式床暖房構造を構築する場合には、個々の床フロア材に設けたコネクタ同士を接続する作業が必要となる。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、施工および日常のメンテナンスをより簡素化することができる電気式の床暖房構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための本発明による電気式床暖房構造は、床下地の上に感熱発熱線が所定のパターンに配設されており、その上に、裏面に前記感熱発熱線の収容用凹溝を形成したフロア材が、該収容用凹溝内に感熱発熱線を収容した状態で配置されていることを特徴とする。
【0010】
本発明において「感熱発熱線」とは、図1に示すように、線状電極1aと1bを長手方向に一定の間隔を隔てて平行に配置し、この線状電極1aと1bの軸方向外周全体を覆うように正の抵抗温度係数を有する発熱体層2を断面円形または楕円形状に押出成形し、さらに、この発熱体層2の外周に絶縁シース層3を押出被覆して短手方向の断面を円形または楕円形状に形成した構造を有する発熱体である。
【0011】
正の抵抗温度係数を有する発熱体層2は少なくとも熱可塑性樹脂および導電性粒子を含有しており、熱可塑性樹脂としては結晶性熱可塑性樹脂が好ましく、具体的には、ポリオレフィン樹脂及びその共重合樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ジエン系重合体、ポリフェニレンオキシド樹脂、ノニル樹脂、ポリスルフォン樹脂等を挙げることができる。分配配合される導電性粒子としては、例えば、カーボンブラック粒子、グラファイト粒子等の粒状物、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、プラチナ(Pt)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)等の金属微粒子、金属粉体、金属酸化粉体等の粉状物、炭素繊維等の繊維状物、導電性無機材料(In―Sn―O等)、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)等の正の抵抗温度係数を有する無機材料等を挙げることができる。
【0012】
この感熱発熱線Aにおいて、線状電極1aと1bに通電することにより、発熱体層2に電流が流れ発熱する。正の抵抗温度係数を有する発熱体層2は、発熱体層2に電流が流れ、発熱体層2の温度が上昇すると、発熱体層2の抵抗値が増加して発熱体層2に流れる電流を減少させ、発熱体層2の発熱を抑制し、逆に、発熱体層2の温度が低下すると、発熱体層2の抵抗値が減少して発熱体層2に流れる電流を増加させ、発熱体層2の発熱を高める機能を有している。そのために、サーモスタット等の温度過昇防止装置を用いなくても、感熱発熱線Aは、長い時間にわたり所要の温度条件範囲を維持することができ、かつ温度分布も均一となる。
【0013】
なお、発熱体層2と絶縁シース層3の間には、必要に応じ、バリア層4が介在される。バリア層4は例えばポリエステルテープを縦添えして形成される。さらに、好ましくは、発熱体層2の熱による経時的な劣化を防止し、長期間安定した発熱が具現されるように、一対の線状電極1aと1b間にポリエチレン樹脂等で形成される絶縁体障壁5を配置することも行われる。このような感熱発熱線Aは、例えば、特開平8−195271号公報、特開平2004−185947号公報等に開示されている。
【0014】
本発明による電気式床暖房構造では、上記した感熱発熱線を床下地の上に所定のパターンに配置し、その上から、裏面に収容用凹溝を有するフロア材を、該収容用凹溝内に感熱発熱線を収容した状態で敷き詰めていくだけで、床暖房施工は実質的に終了する。感熱発熱線の持つ性質上、サーモスタット等の温度過昇防止装置を備える必要はなく、また、感熱発熱線と電源部との接続も1箇所で済むので、施工現場での作業工数はきわめて少なくなる。さらに、温度過昇防止装置等を備えなくても、床暖房面の温度分布は実質的に均一となる。
【0015】
好ましくは、前記の感熱発熱線が基材シートの上に所定のパターンで固定されている感熱発熱線付き基材シートを用いる。基材シートは任意であるが、アルミ箔のような均熱板層を備えたものを用いることが望ましい。このような感熱発熱線付き基材シートを工場等で規格品として製造し、それを施工現場に搬入して床下地の上に敷設することにより、電気式床暖房構造の施工は一層容易となる。さらに好ましくは、感熱発熱線付きの基材シートの一部に接着剤が透過できる部位を設ける。施工に際して、基材シートを床下地の上に敷設し、前記接着剤透過部位を中心に接着剤を塗布した後、フロア材をその上から敷き詰める。敷き詰めたフロア材は、接着剤透過部位を透過する接着剤により、床下地に基材シートと共に一体に接着固定されるので、現場での作業を簡略化することができる。
【0016】
他の態様において、感熱発熱線は両端部のUターン部とUターン部間を繋ぐ直線部分とから構成されるパターンを有し、隣接する直線部分が連結部材により連結されることによって、感熱発熱線ユニットを構成する。そして、該感熱発熱線ユニットが床下地の上に敷設され、その上に、裏面に前記感熱発熱線の収容用凹溝を形成したフロア材が、該収容用凹溝内に感熱発熱線を収容した状態で配置されることにより電気式床暖房構造が形成される。連結部材には、発泡樹脂や不織布のようなクッション性の良好な緩衝材を用いることが望ましい。
【0017】
この態様でも、上記の感熱発熱線ユニットは工場で作ることができ、それを施工現場に搬入して敷き詰めることにより、上記した感熱発熱線付き基材シートの場合と同様、現場施工がきわめて容易となる。さらに、連結部材として緩衝材を用いる場合には、電気式床暖房構造に、遮音性と断熱性を施工と同時に付与することが可能となる。この態様において、好ましくは、フロア材として、フロア材の裏面であって床下地に直接接する部位に、感熱発熱線ユニットで用いる連結部材と同じ厚さの連結部材が貼り付けられているフロア材を用いるようにする。それにより、床下地への熱の拡散がより完全に抑えられた電気式床暖房構造を構築することができる
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、温度分布が均一でかつ安全性の高い電気式床暖房構造を少ない作業工数でかつ低下ストで得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施の形態に基づき説明する。前記したように、図1は本発明による電気式床暖房構造において発熱源として用いられる感熱発熱線の一例を断面で示している。図2は感熱発熱線を基材シートの上に固定した感熱発熱線付き基材シートの一例を示す平面図であり、図3は図2に示す感熱発熱線付き基材シートを用いて電気式床暖房構造を施工するときの途中図である。図4は感熱発熱線を用いた床暖房用の感熱発熱線ユニットを示す平面図であり、図5は図4に示す感熱発熱線ユニットを用いて電気式床暖房構造を施工するときの途中図である。
【0020】
前記したように、本発明による電気式床暖房構造では、発熱源として、図1に基づき説明した感熱発熱線Aが用いられる。感熱発熱線Aを、床下地の上に所定のパターンに配設し、その上に、例えば図3に示すような裏面に感熱発熱線Aの収容用凹溝21を形成したフロア材20を、収容用凹溝21内に感熱発熱線Aを収容するようにして、所要枚数敷き詰めることにより、本発明による電気式床暖房構造は形成される。配設した感熱発熱線Aに通電するだけで、サーモスタット等の温度過昇防止装置を組み込むことなく、一定の温度範囲を維持することのできる電気式床暖房を得ることができる。
【0021】
施工の容易性およびより均一な床面温度を得るために、図2に示すような感熱発熱線付き基材シート30を用いることは望ましい。この例において、基材シートは、100μm程度の厚みのアルミ箔31であり、均熱板としての機能を果たす。アルミ箔31の上に粘着剤を塗布し、感熱発熱線Aを所定のパターンに粘着固定することで感熱発熱線付き基材シート30とされる。図示しないが、感熱発熱線付き基材シート30の全体を、感熱発熱線Aを収容する突溝を一体成形したシートカバーでもって覆うようにしてもよい。シートカバーは、0.3mm厚程度のポリプロピレン樹脂シートを真空成形することにより容易に得ることができる。また、感熱発熱線付き基材シート30の所要箇所には、貫通孔32が形成しておくことが望ましい。このような感熱発熱線付き基材シート30は工場において製造され、施工現場に搬入される。
【0022】
図3に示すように、搬入された感熱発熱線付き基材シート30は、施工現場の床下地40の上に敷き詰められ、接着剤を用いて固定される。図示の感熱発熱線付き基材シート30のように、貫通孔32を有する場合には、貫通孔32の場所に接着剤41を塗布する。その後、裏面に感熱発熱線Aの収容用凹溝21を形成したフロア材20を、収容用凹溝21内に感熱発熱線Aを収容するようにして、所要枚数敷き詰める。接着剤41は、貫通孔32を透過して床下地40と感熱発熱線付き基材シート30を接着一体化すると共に、フロア材20をも同時に床下地40に接着固定する。このようにしてきわめて容易に、本発明による電気式床暖房構造を施工することができる。
【0023】
図4に示す例において、感熱発熱線Aは、両端部のUターン部A1とUターン部間を繋ぐ直線部分A2とから構成されるパターンを有しており、隣接する直線部分A2は好ましくはクッション性を有する連結部材35により連結されることにより、感熱発熱線ユニット30Aを構成している。クッション性を有する連結部材35としては、例えば、3mm厚程度のポリオレフィン系発泡シートを好適に用いることができる。この感熱発熱線ユニット30Aも工場で作られて、施工現場に搬入される。
【0024】
施工現場では、図5に示すように、好ましくは床下地40の上にアルミ箔のような均熱板31Aを貼り付けた後、感熱発熱線ユニット30Aを床下地40に固定する。なお、図5では、図4でのV−V線に沿った断面により感熱発熱線ユニット30Aの一部を示している。その後、裏面に感熱発熱線Aの収容用凹溝21を形成したフロア材20を、収容用凹溝21内に感熱発熱線Aを収容するようにして、所要枚数敷き詰める。その際に、フロア材20の裏面が、床下地40に接する部分および感熱発熱線ユニット30Aの前記連結部材35に接する部分には接着剤41を塗布しておく。それにより、床下地40と感熱発熱線ユニット30Aとフロア材20は一体に接着固定され、本発明による電気式床暖房構造が構築される。
【0025】
なお、図5に示す例においては、フロア材20の裏面が床下地40に直接接する領域22には、感熱発熱線ユニット30Aに取り付けた連結部材35と同じ厚さであり、同じ材料からなるクッション材23が貼り付けてあり、また、感熱発熱線ユニット30Aに取り付けた連結部材35に接する領域24は、連結部材35の厚み分だけ切除されている。この構成を備えたフロア材20を用いることにより、床下地40とフロア材20との間に隙間のない状態で感熱発熱線ユニット30Aを配置することができ、高い暖房効率が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による電気式床暖房構造において発熱源として用いられる感熱発熱線の一例を示す断面図。
【図2】感熱発熱線を基材シートの上に固定した感熱発熱線付き基材シートの一例を示す平面図。
【図3】図2に示す感熱発熱線付き基材シートを用いて電気式床暖房構造を施工するときの途中図。
【図4】感熱発熱線を用いた床暖房用の感熱発熱線ユニットを示す平面図。
【図5】図4に示す感熱発熱線ユニットを用いて電気式床暖房構造を施工するときの途中図。
【符号の説明】
【0027】
A…感熱発熱線、1a、1b…線状電極、2…正の抵抗温度係数を有する発熱体層、3…絶縁シース層、4…バリア層、5…絶縁体障壁、20…フロア材、21…感熱発熱線の収容用凹溝、30…感熱発熱線付き基材シート、31…均熱板としてのアルミ箔、32…貫通孔、30A…感熱発熱線ユニット、A1…Uターン部、A2…直線部分、35…連結部材、40…床下地、41…接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床下地の上に感熱発熱線が所定のパターンに配設されており、その上に、裏面に前記感熱発熱線の収容用凹溝を形成したフロア材が、該収容用凹溝内に感熱発熱線を収容した状態で配置されていることを特徴とする電気式床暖房構造。
【請求項2】
感熱発熱線は基材シートの上に所定のパターンで固定されており、該感熱発熱線付きの基材シートが床下地の上に敷設され、その上に、裏面に前記感熱発熱線の収容用凹溝を形成したフロア材が、該収容用凹溝内に感熱発熱線を収容した状態で配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電気式床暖房構造。
【請求項3】
感熱発熱線付きの基材シートは接着剤が透過できる部位を有しており、フロア材は接着剤透過部位を透過する接着剤により、床下地に基材シートと共に一体に接着固定されていることを特徴とする請求項2に記載の電気式床暖房構造。
【請求項4】
感熱発熱線は両端部のUターン部とUターン部間を繋ぐ直線部分とから構成されるパターンを有し、隣接する直線部分は連結部材により連結されることにより、感熱発熱線ユニットを構成しており、該感熱発熱線ユニットが床下地の上に敷設され、その上に、裏面に前記感熱発熱線の収容用凹溝を形成したフロア材が、該収容用凹溝内に感熱発熱線を収容した状態で配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電気式床暖房構造。
【請求項5】
フロア材として、フロア材の裏面であって床下地に直接接する部位に、感熱発熱線ユニットで用いる連結部材と同じ厚さの連結部材が貼り付けられているフロア材を用いることを特徴とする請求項4に記載の電気式床暖房構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−145178(P2006−145178A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−339284(P2004−339284)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】