説明

電波時計

【課題】高周波を受信する電波時計において、受信性能を阻害しないソーラーセルの構造を提供する。
【解決手段】受信性能に影響を与えるソーラーセルの電極とアンテナを平面的に重ねない。
具体的には、ソーラーセル102を文字盤方向から見てアンテナ103が投影される部分以上の領域にあたるソーラー切り欠き部111を切り欠く。
切り欠く代わりに、アンテナと平面的に重なる部分に太陽電池層を積層しないようにしても良い。積層しない部分に、太陽電池と同様の色を着色しても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波を受信する電波時計とソーラーセル発電機能との両方の機能を有する電波時計に関するものであり、その中でも、特にGPSなどの高周波電波を受信する電波時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
時刻情報を含む標準電波を受信し、ここから正確な時刻を取得し、修正することのできる電波時計は既に広く使用されている。また、腕時計型、クロック型においてもソーラーセルを備えて、太陽光などの光を受光して発電させ、電池に蓄電してエネルギーとしている製品も実用化されており、こちらも広く使用されている。
【0003】
図7は、このような電波時計の構成を示す斜視図である。この電波時計は、カバーガラス700、文字盤701、ソーラーセル702、アンテナ703、基板704、RF受信IC705、デコーダーIC711、輪列706、モーター707、電池708、外装709、竜頭710から構成されている。
【0004】
この電波時計においては、アンテナ703で標準電波を受信し、RF受信部705にてベースバンド周波数への変換を行い、デコーダー711にて時刻情報を得る。ここで得られた時刻情報に基づき、所望の時刻へとモーター707を駆動し、輪列706にて針を駆動せしめ、時刻を修正するものである。これら一連の動作に必要なエネルギーは、文字盤701に近接して配置されたソーラーセル702にて光エネルギーから電気エネルギーへと変換され、電池708に蓄えられ、利用時に供出される仕組みである。
【0005】
腕時計には機能もさる事ながら、デザインが強く要求される装飾品の観点も強く、外装709や文字盤701等外見を作用する部品の色、素材、デザイン性等の本質的な機能とは無関係な要素が非常に大事である。これにより製品の価値、販売数が大きく変化するのでメーカーは機能とデザインの両立に大きな資本を投下し、日々開発を進めている。特に外装709に関しては受信性能確保から樹脂等の非金属材料が好適であるが、質感を伴わない安物時計として認識されるが故に、許容できる限界までの性能劣化を受け入れ、敢えて金属製外装を採用しているのが現実である。
【0006】
標準電波は周波数40〜100KHz程度の長波と呼ばれる周波数にて運用されており、時刻情報(タイムコード)は、60秒周期のパルス信号からなる。この様な周波数の場合、ソーラーセル702の構成は電極が張り巡らされた極めて薄い金網と同じ構成と同一であり、アンテナ703に対して劣化要因になる。だが、波長が非常に長いのと、ソーラーセルが極めて薄く、更に直径3〜4cm程度の薄い金網状の物ではアンテナ703から見て殆ど影響が無い事や、電波時計に使用されているアンテナ703がコイルと同等の構造から磁場の変化を捕らえている要因もあり、ソーラーセル702の下にアンテナ703を配置しても機能上制約を余り受けない事が判っている。
【0007】
こうした事から電力を沢山得ようとするならば、光の透過性の高い文字盤701を配置して、その直下にソーラーセル702を配置し、更にその下にアンテナ703を配置する図7の形態が好適であり、理にかなった構成方法である事が判る。
【0008】
しかしながら、電力収支の観点から光の透過率が高い文字盤701を使用した場合はカバーガラス700を通して濃紫色のソーラーセル702の認識が出来てしまいデザインの質感を落とす問題がある。また、より質感の高いデザインの一つとして文字盤701を金属
製にしたい要望もあるが、金属文字盤は光を透過しない問題もある。いずれもソーラーセルを用いる事に付随した問題点であり、特にデザインの観点から問題が生ずるのである。だが、こうした問題の解決にも種々の提案を見ることが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−274247号公報
【0010】
特許文献1によれば、上記の課題を解決するため、カバーガラスと文字盤との間で、該文字盤の外周縁部に透光性の見返しリングと、該見返しリングの外周にリング状に配設したソーラーセルを備え、該ソーラーセルの前面側又は背面側又は背面側の少なくとも一方側にアンテナを備えた構造が提案されている。
【0011】
こうした構造により、通常の金属製外装を使用しても、何の支障もなく時刻情報等の電波を受信して時刻修正することができ、また従来の構成と異なり外周にリング状に配設したソーラーセルを備えた事により文字盤下にソーラーセル独特の濃紫色が視認されず、安定した防水品質の下で高級感が得られる携帯時計が得られるとされている。また、一般の時計同様の金属文字盤の採用が可能になる事でデザインバリエーションの拡大を図ることが可能な携帯時計を提供することが可能とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
これまでの様な長波の標準電波を用いた電波修正時計では、ソーラーセルの影響がアンテナに対して軽微であり、それが故に文字盤の下にソーラーセルを配置し、その下にアンテナを配置した構造や、特許文献1の如くリング状のソーラーセルを配置し、それに近接した位置にアンテナを配置する構造等、何れも金属外装を用いた場合に電波が到来する唯一の方向であるカバーガラス方向から見て、アンテナ位置を覆い塞ぐ形でのソーラーセルの使用が前提であり、それを基にしてデザインや質感向上のメリットを謳っている発明が開示されている。
【0013】
他方、今日では多様な周波数帯域にて情報のやりとりが行われ、その中に時刻情報を含む電波信号もある。こうした一例として、1.5GHz帯域でのGPS電波、2GHz帯域でのCDMA携帯電話電波、同じくBluetooth電波等の所謂高周波をベースにした電波信号を利用して時刻情報やその他の有用な情報を得ることが可能である。
【0014】
この様な高周波信号は波長が短く、直進性が強いのと、電磁波の電界成分を主に利用し、共振現象を巧みに利用した小型アンテナが利用される。この様な帯域ではソーラーセルに配置されたアモルファスシリコン薄膜やITO電極膜が極めて薄い金網と同等の作用を及ぼすので、アンテナ上に覆い塞ぐ格好での利用が出来ない問題がある。
【0015】
また、この様な電波を受信する受信機であっても腕時計型にした場合には、時計本来の持つ商品特性上デザインや質感の要求は不変であり、外装に金属が求められるのは言うまでもない。寧ろ外装の質感の中に文字盤の色、質感も含まれ、従来同様構成にてソーラーセルを利用した場合には色味の視認の問題も存在する。これらに付け加えて更に、アンテナ受信性能の確保が要求され、その要求に従ってソーラーセルを小さくした場合には、動作に必要な電力収支が悪化すると言う問題がある。
【0016】
本発明は、高周波信号を受信する電波時計において、ソーラーセルとアンテナを備えつつ、受信性能を損なうことなく、ソーラセルによる充分な起電力が得られ、且つ腕時計としての質感やデザインを兼ね備え得る電波時計を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記問題を解決するために、本発明は、
カバーガラスの下に配置された文字盤と、
時計内に配置されたアンテナと、
時計内に配置されたソーラーセルと、を備え、
該ソーラーセルの電極層と前記アンテナとが平面的に重ならないことを特徴とする。
【0018】
前記ソーラーセルが前記文字盤下に配置され、かつ、
前記ソーラーセルの発電面が文字盤に平行に配置されており、
前記ソーラーセルの電極層と前記アンテナとが平面的に重ならないことを特徴とする。
【0019】
前記ソーラーセルの外形形状と前記アンテナとが平面的に重ならないことを特徴とする。
【0020】
前記ソーラーセルの太陽電池層の形成領域と前記アンテナとが平面的に重ならないことを特徴とする。
【0021】
前記ソーラーセルの太陽電池層の非形成領域に太陽電池層と略同色の着色を施すことを特徴とする。
【0022】
前記文字盤の外周に配置され、発電面が前記面ソーラーセルと略垂直の外周(リング)ソーラーセルを備えることを特徴とする。
【0023】
前記面ソーラーセルの非電極形成部の外周部分と対抗する領域に、
前記外周ソーラーセルの太陽電池層の電極層が形成されていないことを特徴とする。
【0024】
前記カバーガラスに太陽電池層が形成されるとともに、
該太陽電池層と前記アンテナが平面的に重ならないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明の効果として、請求項1に記載の電波時計では、ソーラーセルの電極層と前記アンテナとが平面的に重ならないため、ソーラーセルの電極層により受信性能が低下することが無い。
従って、GPSなどの高周波を受信する電波時計においても、従来の電波時計と略同様の構成を採用しながら、受信性能を確保することが可能となる。
ソーラーセルとしては、文字盤下に配置された面ソーラーセルの他(請求項2)、時計の側面に配置された、所謂リングソーラーセル(特許文献1参照)にも適用可能である。
【0026】
請求項3に記載の電波時計では、面ソーラーセルの外形形状とアンテナとが平面的に重ならないように切りかかれている。そのため、上記請求項1,2の効果を、簡単な構成であることが可能である。
【0027】
請求項4に記載の電波時計では、面ソーラーセルを切り欠くのではなく、太陽電池層を形成しないことで実現している。そのため、面ソーラーセルの強度を保ちつつ同様の受信性能を得ることが可能となる。
【0028】
請求項5に記載の電波時計では、面ソーラーセルの太陽電池層を形成しない部分に太陽電池と同色を着色している。そのため、太陽電池層の有無での見栄えに差が無いので、文字盤の見栄えを向上できる。
【0029】
請求項6,7の発明では、リングソーラーセルを配置し発電量を向上させつつ、リングソーラーセルのアンテナ近傍の電極を排除している。
このため、より大きな発電量を得ながら、受信性能を保つことが可能となる。
【0030】
請求項8の発明では、カバーガラスにソーラーセルを配置しつつ、アンテナと平面的に重なる部分には、太陽電池層を重ねていない。
このため、より大きな発電量を得ながら、受信性能を保つことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電波時計の斜視図である。
【図1a】図1における電波時計の断面図である。
【図1b】図1における電波時計の文字盤方向から見た概略透視図である。
【図1c】図1における電波時計の変形例を示す文字盤方向から見た概略透視図である。
【図1d】図1における電波時計の変形例を示す文字盤方向から見た概略透視図である。
【図1e】図1における電波時計の変形例を示す文字盤方向から見た概略透視図である。
【図1f】図1における電波時計の変形例を示す文字盤方向から見た概略透視図である。
【図1g】図1における電波時計の変形例を示す文字盤方向から見た概略透視図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る電波時計の斜視図である。
【図2a】図2における電波時計の断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る電波時計の斜視図である。
【図4】本発明の第4実施形態に係る電波時計の斜視図である。
【図4a】図4における電波時計の断面図である。
【図5】本発明の第5実施形態に係る電波時計の斜視図である。
【図5a】図5における電波時計の断面図である。
【図5b】図5における電波時計の文字盤方向から見た概略透視図である。
【図5c】図5における電波時計の変形例を示す断面図である。
【図6】本発明の第6実施形態に係る電波時計の斜視図である。
【図6a】図6における電波時計の文字盤方向から見た概略透視図である。
【図7】従来例を示す長波電波修正時計の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
〔第1の実施の形態:基本実施形態〕
以下、本発明の実施の形態に係わる電波時計1を図面に基づいて説明する。
本第1の実施の形態は、本発明の基本実施形態を示すものである。
【0033】
[第1の実施形態における電波時計1の構成]
第1の実施形態における電波時計1は、図1に示すようにカバーガラス100の下に文字盤101、文字盤101の直下にソーラーセル102が配置されている。更にその下方にアンテナ103、アンテナを保持し、固定している回路基板104、回路基板に実装された信号処理IC105、時計針を駆動する為の輪列106、輪列106を動かすモーター107が配置されている。ソーラーセル102にて発生した電力は時計裏蓋側に配置された電池108にて蓄えられ使用される。これらの内蔵物を納める外装109、時計に対して外部からの制御を行う竜頭110が配置される。これらの代表的な部品以外にも時計を構成する部品はたくさんあるが、本発明の趣旨に直接的に関わらないので省略する。
【0034】
文字盤101はその下に配置されたソーラーセル102に対し光を透過する必要があり、非金属製の樹脂で構成される。デザインの観点から透過率を下げても部分的に金属薄膜やメッキが装飾として使用されるが、デザインと透過率のトレードオフの関係から透過率は適宜調整される。但し、この透過率の制御にも関わらず場合によっては下に配置されたソーラーセル102に存在する分割線112が薄く見えたり、セル自体の濃紫色の色味が反映されたりする等の問題がある。
【0035】
ソーラーセル102はアモルファスシリコン薄膜からなる光電変換層やアルミニウム薄膜からなる電極薄膜、ITOからなる透明電極薄膜から構成されており、透明電極薄膜の積層厚みは数ミクロン程度の厚みであり、これらを樹脂フィルムにて封印している。この為、周波数が低い長波帯域ではそれを受信するアンテナに対して殆ど影響を及ぼさないが、波長が短くなる高周波ではITOからなる透明電極薄膜が金属膜と同等の作用をアンテナに及ぼす。
【0036】
その為、実施例1に基づく図1ではソーラーセル102を文字盤方向から見てアンテナ103が投影される部分以上の領域にあたるソーラー切り欠き部111を切り欠いている。切り欠く領域は使用するアンテナによって様々に変化するが、例えばGPS帯域を受信するパッチアンテナをアンテナ103とした場合にはアンテナ外形から2〜3mm程度更に切り欠いた方が望ましい。
これは、パッチアンテナのアンテナ特性に重大な影響を与えるアンテナ表面のパッチ面とソーラーセル102の持つ金属成分とのカップリングの影響を小さくし、アンテナ本来の特性を損なわないためである。
これ以外の周波数や、アンテナやサイズが更に小さいチップアンテナ等でもアンテナ投影領域部分以上の切り欠けが必要であり、大きさ、形状等は調整を要し一概に決定出来ない。だが、最低限の領域設定として、アンテナ投影面積と同等は必要である。
【0037】
外装109は受信アンテナを搭載した場合には非金属製の樹脂等で構成された方がアンテナ特性上非常に望ましい。だが、デザインや時計の持つ装飾品的価値観から金属材料で構成されるのを拒否する事は商品価値の観点から難しい。実施例1では金属材料で構成されても構わず、SUSやTi合金等従来良く使用されている材料で何ら問題ない。この場合
、アンテナの電波到来方向は文字盤方向のみとなり、金属外装によって側面や裏蓋側からの電波の進入は不可能である。このような形態の場合、文字盤方向でのアンテナ特性に有害な影響を与えるソーラーセル102の当該部分を切り欠く有効性が強く発揮される。
【0038】
[第1の実施形態の効果]
(1)受信性能の向上
本実施形態の電波時計1では、ソーラーセル102を文字盤方向から見てアンテナ103が投影される部分以上の領域にあたるソーラー切り欠き部111を切り欠く事により、外装109が金属からなる材料が用いられたとしても電波到来方向にアンテナ性能を阻害するソーラーセル102の持つ金属薄膜が切り欠かれている事により、効果的にアンテナ103が電波を捕捉することが可能になる。
[第1の実施形態の変形例]
【0039】
アンテナ投影部分を切り欠くソーラーセルとして、実施例1では従来良く用いられている平面型の文字盤下ソーラーセルの一部を切り欠いた図1b以外にも図1c、図1d、図1e、図1f、図1g等の変形例も本発明の範疇である。
図1cはソーラーセル102から扇形にカットしたものであり、図1dはソーラーセル102からアンテナ部分に相当する領域のみを切り落としたものであり、図1eはソーラーセル102からアンテナ部分に相当する領域よりもより大きな範囲を切り欠いたものである。
これらはアンテナ部分に相当する領域をアンテナに対して影響を及ぼさない配慮とソーラーセル102の発電量の兼ね合いからカットする面積を適宜調整した構造例である。
このうち、図1d、図1eの例は、図1b、図1cの例と比較し、形状的に強度が強く、時計への組み込み等扱いが容易となるメリットがある。
特に図1eの形状は、製造が簡単で取り扱いやすいメリットがあるが、反面、発電面積が小さくなるデメリットも有する。
【0040】
一方、図1fはソーラーセル102からアンテナ部分を含んだ時計中央部分を中抜きしたドーナツ状ソーラーセルであり、図1gは外装109に沿って配置されるリングソーラーを採用したものである。これらのソーラーセルは構造的に特異な形状であり、デザインの多様性を生かす目的と、更にアンテナ性能を阻害しない目的との兼ね合いから使用される。何れもアンテナ部分以上に広くソーラーセルが無い事によりアンテナの性能を最大限に引き出す事が可能となるが、ソーラーセル自体の面積量が少なくなるので発電量が少なくなる問題をはらんでいる。
いずれにせよ、どのような形状を採用するかは、アンテナの形状と特性、ならびに時計に必要な発電量、組み込みなどの取り扱いの良さ等を適宜勘案し、決定すればよい。
【0041】
また、文字盤は光を透過するので、文字盤下の構造物の色味が反映されてしまう問題が本実施例ではある。このような文字盤を通してソーラーセルの色味が反映する問題は、ソーラーセルを切り欠いた構造では特に顕著になるが、この問題の一つの解決方法として、図1におけるソーラー切り欠き部111の下に配置されたアンテナ103をアンテナ性能に影響を与えない塗料、特に金属粉末等を含まない塗料でアンテナ表面、若しくは全体、若しくはその周囲を含めて着色する事も一つである。
【0042】
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
なお、以下の各実施形態において、前述した第1実施形態と同一または同様の構成については、同一の符号を付し、その説明は省略する。
第1実施形態はソーラーセルを切り欠くことにより、強度的に問題が発生していた。第2の実施形態では、ソーラーセルの強度の改善を目的にしたものである。
【0043】
[第2の実施形態における電波時計1の構成]
第2の実施形態における電波時計1は、図2に示すように構成されている。第1の実施形態における電波時計との差異は、ソーラーセル202はソーラーセル202を文字盤方向から見てアンテナ203が投影される部分以上の領域の電極を抜いたソーラー電極未配置部211が存在している事である。ソーラー電極未配置部211はソーラーセル102のアモルファスシリコン薄膜からなる光電変換層やアルミニウム薄膜からなる電極薄膜、ITOからなる透明電極薄膜等の金属要素を持つ部分が配置されておらず、樹脂フィルムのみが存在している。
【0044】
[第2の実施形態の効果]
(1)受信性能の向上
本実施形態の電波時計1では、ソーラーセル202を文字盤方向から見てアンテナ203が投影される部分以上の領域の電極を抜いたソーラー電極未配置部211が存在している事により、外装209が金属からなる材料が用いられたとしても電波到来方向にアンテナ性能を阻害する事無く、効果的にアンテナ203が電波を捕捉することが可能になる。
【0045】
(2)ソーラセルの強度向上と保持構造の簡略化
ソーラーセルの一部を切り欠く事により、残った端部が細くなり、当該箇所のソーラーセルの強度が低下する。また、強度が不足するので、端部を固定する為の特別な保持構造が必要となってしまう。本実施形態の電波時計1では、ソーラーセル202にソーラー電極未配置部211を有しているが、切り欠いていないので樹脂フィルムが残っている。これにより、一般的なソーラーセルを用いた腕時計の保持構造をそのまま適用出来るメリットが生ずる。
【0046】
〔第3の実施の形態:第2実施形態の変形例〕
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
なお、以下の各実施形態において、前述した第2実施形態と同一または同様の構成については、同一の符号を付し、その説明は省略する。
第1、第2実施形態とも、ソーラーセルに太陽電池層が配置されている領域と配置されていない領域が存在する。このため、透過するソーラーセルの色が上記各領域で異なり、文字盤の見栄えを悪化させていた。第3の実施形態は、これを改善するものである。
【0047】
[第3の実施形態における電波時計1の構成]
第3の実施形態における電波時計1は、図3に示すように構成されている。第2の実施形態における電波時計との差異は、ソーラーセル302はソーラーセル302を文字盤方向から見てアンテナ303が投影される部分以上の領域の電極を抜いたソーラー電極未配置部をソーラーセル302のその他の部分と同色になるように濃紫色に着色した、ソーラー着色部311を有することである。
【0048】
[第3の実施形態の効果]
(1)受信性能の向上
本実施形態の電波時計1では、ソーラーセル302を文字盤方向から見てアンテナ303が投影される部分以上の領域の電極を抜いたソーラー電極未配置部が存在している事により、外装309が金属からなる材料が用いられたとしても電波到来方向にアンテナ性能を阻害する事無く、効果的にアンテナ303が電波を捕捉することが可能になる。
【0049】
(2)ソーラセルの強度向上と保持構造の簡略化
ソーラーセルの一部を切り欠く事により、残った端部が細くなり、当該箇所のソーラーセルの強度が低下する。更に、強度が不足するので端部を固定する為の特別な保持構造が
必要となる。本実施形態の電波時計1では、ソーラーセル302にソーラー電極未配置部を有しているが、切り欠いていないのでソーラーセルの樹脂フィルムが残っている。これにより、一般的なソーラーセルを用いた腕時計の保持構造をそのまま適用出来るメリットが生ずる。
【0050】
(3)文字盤を通してのソーラセルの色味が同一となる
本実施形態3の如く、ソーラー電極未配置部をソーラーセル302のその他の部分と同色になるように濃紫色に着色した、ソーラー着色部311を有することにより、透過率のある文字盤301を通して着色された部分とソーラーセルが配置された部分との色味の差が認識されなくなり、文字盤301の下に配置されたソーラーセル302が目立たなくなり、商品の質の向上やデザインの向上が図られる。
【0051】
〔第4の実施の形態〕
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
なお、以下の各実施形態において、前述した第1実施形態と同一または同様の構成については、同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0052】
[第4の実施形態における電波時計1の構成]
第4の実施形態における電波時計1は、図4に示すように構成されている。第1の実施形態における電波時計との差異は、カバーガラス400の文字盤側方向に透明ソーラー411が配置されている。
【0053】
透明ソーラー413は極微細幅なアモルファスシリコンを適当な間隔を開けて配置し、それにITOの透明電極薄膜から構成された構造からなり、見た目には透明に見える。だが、アンテナ403から見てこれらの電極薄膜は阻害要因となるので、ソーラーセル402と同様にアンテナ403が投影される部分以上の領域の電極を抜いており、切り欠いている。こうする事により透明ソーラー413にて発電され、更にそこを透過した光により文字盤401を通してソーラーセル402にて発電される。
【0054】
(ここは、おもしろい)
ソーラーセル402と透明ソーラー413は望ましくは、互いが異なる波長にて発電した方が良い。こうする事で、透明ソーラー413にて吸収された光が減光してソーラーセル402の発電量を抑える事もなく、アンテナ403によって切り欠かれた領域分によって本来発電される電力を効果的に補う事が可能となる。また、ソーラーセル402は実施例1、2、3の何れの構造を採用しても問題ない。
【0055】
[第4の実施形態の効果]
(1)受信性能の向上
本実施形態の電波時計1では、ソーラーセル402、及び透明ソーラー413を文字盤方向から見てアンテナ403が投影される部分以上の領域の電極を抜いたソーラー電極未配置部が存在している事により、外装409が金属からなる材料が用いられたとしても電波到来方向にアンテナ性能を阻害する事無く、効果的にアンテナ403が電波を捕捉することが可能になる。
【0056】
(2)外装材料に依存しない光発電の発電量アップ
ソーラーセルの一部が切り欠かれる事により、受光面積が減少し発電量が減ってしまうが、本実施形態では透明ソーラーをカバーガラス400の文字盤側方向に配置した事により、透明ソーラーとソーラーセルの2つのソーラーセルからの発電が可能になり、光発電の発電量アップがなされる。特に外装材料が金属等の光を透過しない素材からなる場合は特別な採光の手段を必要としない本実施例が極めて有効である。
【0057】
[第4の実施形態の変形例]
(1)上述の第4の実施形態では、ソーラーセル402はアンテナと平面的に重なる部分を切り欠く第1実施形態と同じ形状で説明したが、太陽電池層を形成しない第2実施形態や太陽電池非配置領域を着色する第3実施形態を採用しても良く、その効果も同一のものとなる。
【0058】
〔第5の実施の形態〕
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。
なお、以下の各実施形態において、前述した第1実施形態と同一または同様の構成については、同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0059】
[第5の実施形態における電波時計1の構成]
第5の実施形態における電波時計1は、図5、図5a、図5bに示すように構成されている。第1の実施形態における電波時計との差異は、外装509の素材とリングソーラー513が外装509の内側円周に沿って配置されている。
【0060】
リングソーラー513は実施例4に記載された透明ソーラー、若しくはソーラーセル502と同じソーラーセルから構成されている。外装509の側面にソーラーセルが配置されるため、外装509の素材には光を透過する素材の限定、若しくは採光手段を講じた形状等の制約を受ける。
光を透過する素材としては、ガラス、アクリル、その為透明または半透明樹脂等があげられる。採光手段を講じた形状としては光を取り込むためのスリットや穴等の形状を有した光を透過しない金属や樹脂等の素材と、その採光部分に前記光を透過する素材を複合的に用いて構成される。
勿論、外装全体を光を透過する素材で構成すればその限りではではない。また、外装が非金属で構成された場合、アンテナ503の受信劣化要因として大きな要因となる外装509の影響が無くなるのでアンテナの性能を最大限に引き出すことが可能になる。
【0061】
[第5の実施形態の効果]
(1)受信性能の向上
本実施形態の電波時計1では、ソーラーセル502を文字盤方向から見てアンテナ503が投影される部分以上の領域の電極を抜いたソーラー電極未配置部が存在している事と、同じく文字盤方向から見てアンテナ503が投影される部分以上の外側にリングソーラー513が配置されていることにより、外装509が金属からなる材料が用いられたとしても電波到来方向にアンテナ性能を阻害する事無く、効果的にアンテナ503が電波を捕捉することが可能になる。更に、外装全体が非金属による光を透過する材料から構成された場合にはアンテナの性能を最大限に引き出すことが可能になる。
【0062】
(2)光発電の発電量アップ
ソーラーセルの一部が切り欠かれる事により、受光面積が減少し発電量が減ってしまうが、本実施形態ではリングソーラーを外装側面に配置した事により、リングソーラーとソーラーセルの2つのソーラーセルからの発電が可能になり、光発電の発電量アップがなされる。
【0063】
[第5の実施形態の変形例]
(1)図5cの如く、文字盤501とカバーガラス500との間に生じる空間の内周部にリングソーラー513を配置することも本実施例の範疇である。この場合には、外装の選定自由度が増す事によるデザインの多様性が確保されるが、他方アンテナ上面部分にリングソーラー513が配置されるのでその電極がアンテナ503へ影響を及ぼし、感度劣化の一因となるデメリットも存在する。
【0064】
(2)上述の第5の実施形態では、ソーラーセル502はアンテナと平面的に重なる部分を切り欠く第1実施形態と同じ形状で説明したが、太陽電池層を形成しない第2実施形態や太陽電池非配置領域を着色する第3実施形態を採用しても良く、その効果も同一のものとなる。
【0065】
〔第6の実施の形態:第5実施形態の変形例〕
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。
なお、以下の各実施形態において、前述した第5実施形態と同一または同様の構成については、同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0066】
第5の実施形態、特に、外装509の側面にリングソーラー511を配置する構成では、発電量の増大が望める。また、アンテナ503の受信面よりもリングソーラー511の電極層が低くなるように配置されていれば受信への影響も小さい。
しかし、若干の影響は存在するので、その影響を低減するのが本実施形態である。
【0067】
[第6の実施形態における電波時計1の構成]
第6の実施形態における電波時計1は、図6、図6aに示すように構成されている。第5の実施形態における電波時計との差異は、リングソーラー613がアンテナ603と近接する箇所の部分をカットした事である。
【0068】
アンテナ近傍に配置されたリングソーラーもアンテナへの影響を及ぼすので感度劣化を引き起こす。どの範囲をカットするのかはアンテナにより異なるが、例えばGPS帯域を受信するパッチアンテナをアンテナ603とした場合にはアンテナ外形から2〜3mm程度の範囲内に掛かる部分をカットした方が望ましい。
この方法によれば、例えば外装609が光を透過する非金属製からなる場合は、外装609による劣化、ソーラーセル602による劣化、リングソーラー613による劣化のいずれも受けることなく、最大の性能を発揮する事が可能となる。
【0069】
[第6の実施形態の効果]
(1)受信性能の向上
本実施形態の電波時計1では、ソーラーセル602を文字盤方向から見てアンテナ603が投影される部分以上の領域の電極を抜いたソーラー電極未配置部が存在している事と、同じく文字盤方向から見てアンテナ603が投影される部分以上の外側にリングソーラー613が配置されており、更にアンテナ603近傍部分がカットされていることにより、電波到来方向にアンテナ性能を阻害する要因が無く、効果的にアンテナ603が電波を捕捉することが可能になる。更に、外装全体が非金属による光を透過する材料から構成された場合にはアンテナの性能を最大限に引き出すことが可能になる。
【0070】
(2)光発電の発電量アップ
ソーラーセルの一部が切り欠かれる事により、受光面積が減少し発電量が減ってしまうが、本実施形態ではリングソーラーを外装側面に配置した事により、リングソーラーとソーラーセルの2つのソーラーセルからの発電が可能になり、光発電の発電量アップがなされる。
【0071】
[第6の実施形態の変形例]
(1)上述の第6の実施形態では、ソーラーセル602はアンテナと平面的に重なる部分を切り欠く第1実施形態と同じ形状で説明したが、太陽電池層を形成しない第2実施形態や太陽電池非配置領域を着色する第3実施形態を採用しても良く、その効果も同一のものとなる。
(2)上述の第6の実施形態では、リングソーラー613のアンテナ603近傍部分がカットされている実施形態(第1の実施形態相当)で説明したが、カットするかわりに太陽電池層を設置しない実施形態(第2の実施形態相当)で実施しても良い。
また、外装609が透明部材で構成されソーラーセルの色調をそろえる必要がある場合は、太陽電池非配置領域を着色する(第3実施形態相当)を実施しても良い。
(3)上述の第6の実施形態では、リングソーラー613が外装609の側面に配置される構造で説明したが、図5cの実施形態に適用しても同様の効果を売ることが出来る。
リングソーラー613としては、上記(2)と同じ内容の構成とすることが出来る。
【符号の説明】
【0072】
100、200、300、400、500、600、700 カバーガラス
101、201、301、401、501、601、701 文字盤
102、202、302、402、502、602、702 ソーラーセル
103、203、303、403、503、603、703 アンテナ
104、204、304、404、504、604、704 基板
105、205、305、405、505、605 信号処理IC
705 RF受信IC
106、206、306、406、506、606、706 輪列
107、207、307、407、507、607、707 モーター
108、208、308、408、508、608、708 電池
109、209、309、409、509、609、709 外装
110、210、310、410、510、610、710 竜頭
111、511、611 ソーラー切り欠き部
211 ソーラー電極未配置部
311 ソーラー着色部
112 分割線
413 透明ソーラー
513、613 リングソーラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバーガラスの下に配置された文字盤と、
時計内に配置されたアンテナと、
時計内に配置されたソーラーセルと、を備え、
該ソーラーセルの電極層と前記アンテナとが平面的に重ならない
ことを特徴とする電波時計。
【請求項2】
前記ソーラーセルが前記文字盤下に配置され、かつ、
前記ソーラーセルの発電面が文字盤に平行に配置されており、
前記ソーラーセルの電極層と前記アンテナとが平面的に重ならない
ことを特徴とする請求項1に記載の電波時計。
【請求項3】
前記ソーラーセルの外形形状と前記アンテナとが平面的に重ならない
ことを特徴とする請求項2に記載の電波時計。
【請求項4】
前記ソーラーセルの太陽電池層の形成領域と前記アンテナとが平面的に重ならない
ことを特徴とする請求項2に記載の電波時計。
【請求項5】
前記ソーラーセルの太陽電池層の非形成領域に太陽電池層と略同色の着色を施す
ことを特徴とする請求項4に記載の電波時計。
【請求項6】
前記文字盤の外周に配置され、発電面が前記ソーラーセル(以下、面ソーラーセル)と略垂直の第2のソーラーセル(以下、外周ソーラーセル)を備える
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の電波時計。
【請求項7】
前記面ソーラーセルの非電極形成部の外周部分と対抗する領域に、
前記外周ソーラーセルの太陽電池層の電極層が形成されていない
ことを特徴とする請求項6に記載の電波時計。
【請求項8】
前記カバーガラスに太陽電池層が形成されるとともに、
該太陽電池層と前記アンテナが平面的に重ならない
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の電波時計。




【図1】
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【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図1e】
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【図1f】
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【図1g】
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【図2】
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【図2a】
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【図3】
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【図4】
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【図4a】
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【図5】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図6】
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【図6a】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−163913(P2011−163913A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26720(P2010−26720)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(307023373)シチズン時計株式会社 (227)
【Fターム(参考)】