説明

電波遮蔽性仕切面材

【課題】必要に応じた電波環境を、自由に設定・調整可能な方法を提供する。
【解決手段】電波遮蔽性仕切面材は、電波を遮蔽する電波遮蔽層を備えており、空間を開閉可能に仕切るものである。壁、パーティション等の空間の境界や窓等の開口を覆う電波遮蔽層の面積を自在に調整することができ、空間の開口や境界が電波遮蔽層で覆われるようにして空間への電波の入出を規制することができる。また空間の開口や境界の一部又は全部を電波遮蔽層で覆わないようにして、電波の入出を許容することができ、電波の遮蔽性を自由に調整して電波環境を任意に変更することができる。電波遮蔽層は特定の周波数の電波を選択的に反射する複数のアンテナを有し、中心から相互に120°の角度をなして放射状に略同一長さでもって延びる3本の線分状の第1エレメント部と、その外側端に結合された線分状の第2エレメント部とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電波遮蔽性仕切面材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、事業所内PHSや無線LAN等に代表される無線機器の利用が広がりを見せるなか、情報の漏洩防止といった観点や、外部からの侵入電波による誤動作やノイズ防止といった観点から、オフィス内での電波環境を整えることが不可欠になっている。従来、オフィス等における電波環境の整備用部材として、種々のタイプのものが提案されている(例えば、特許文献1、2等)。
【0003】
例えば、特許文献1には、電磁シールド部材を入れたコンクリートによりビルの躯体を構成してビルの躯体を介した電波の入出を規制する技術が開示されている。
【特許文献1】特公平6−99972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、ビル内が常に電波が遮蔽された状態となってしまう。このため、例えば、ビル内で無線LANを使用する時のような電波を遮蔽する必要性がある時のみビル内を電波遮蔽状態とし、それ以外の電波を遮蔽する必要がない時には電波遮蔽状態を解除する、というような必要に応じた電波環境の調整ができない。さらに具体例を挙げて説明すると、例えば、ビルの部屋を間仕切る壁や天井、床等を電磁シールド部材を入れたコンクリートにより構成し、部屋内で使用する電波が外部に漏れないようにした場合、電磁シールド部材が入れられた壁等を破壊して電磁シールド部材を取り除かない限りビル内の部屋相互間で無線LANを使用した通信ができないという問題がある。すなわち、従来の技術では、電波環境を自在に調整することが困難であるという問題がある。
【0005】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、必要に応じて電波環境が調整自在に構成された電波遮蔽性仕切面材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を解決するために、本発明に係る電波遮蔽性仕切面材は、電波を遮蔽する電波遮蔽層を備えており、空間を開閉可能に仕切るものであることを特徴とする。本発明に係る電波遮蔽性仕切面材によれば、空間の境界(具体的には、壁、パーティション等)や開口(具体的には、窓等)を覆う電波遮蔽層の面積を自在に調整することができる。このため、必要に応じて、例えば、空間の開口や境界が電波遮蔽層で覆われるようにして空間への電波の入出を規制することができ、一方、空間の開口や境界の一部又は全部を電波遮蔽層で覆わないようにして空間への電波の入出を許容することができる。すなわち、電波の遮蔽性を自由に調整して、電波環境を任意に変更することができる。
【0007】
また、電波遮蔽性仕切面材は、既存の建物等の必要な箇所に必要に応じて設置することができる。このため、電波遮蔽性を有さないようなビルに適宜電波遮蔽性の空間を設けることが可能となる。また、ひとつの部屋の中に複数の電波遮蔽空間を形成することも可能となる。
【0008】
さらに具体的に説明すると、例えば、複数の部屋が設けられたビルにおいて、部屋毎に異なる無線LANを使用するような場合は、隣接する部屋相互間における電波の混線を抑制するために、隣接する部屋を間仕切る壁やドア等に本発明に係る電波遮蔽性仕切面材を配置し、必要に応じて隣接する部屋相互間の電波の入出を自在に調整可能な状態をつくることができる。
【0009】
具体的に、本発明に係る電波遮蔽性仕切面材は、例えば、シャッター、カーテン、ブラインド、窓、間仕切り、ロールスクリーン又は垂れ幕等であってもよい。
【0010】
本発明において、電波遮蔽層は特定の周波数の電波を選択的に遮蔽するものであってもよい。その場合、電波遮蔽層は特定の周波数の電波を選択的に反射する複数のアンテナを有するものであってもよい。さらに、各アンテナは、各々、アンテナ中心から相互に120°の角度をなして放射状に略同一長さでもって延びる3本の線分状の第1エレメント部と、各第1エレメント部の外側端に結合された線分状の第2エレメント部とを有するものであってもよい。
【0011】
この構成によれば、特定の周波数の電波のみの入出が選択的に規制された空間を設けることができ、かつ、その空間における特定の周波数の電波の遮蔽性(電波環境)を自在に調整することができるので好ましい。
【0012】
また、電波遮蔽層は1又は複数の導電膜により構成されていてもよい。
【0013】
尚、本明細書において、「面材」は、板状部材、シート状部材、布状部材、フィルム状部材を含む概念である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、必要に応じて電波環境を自由に調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
(実施形態1)
図1は本実施形態1に係るロールスクリーン1の斜視図である。
【0017】
図2は図1中の切り出し線II−IIで切り出された部分の断面図である。
【0018】
本実施形態1では、本発明を実施した電波遮蔽性仕切面材についてロールスクリーン1を例に挙げて説明するが、これはあくまで例示であって、本発明は、下記実施形態に限定されるものではない。
【0019】
図1に示すように、ロールスクリーン1は、空間(例えば、部屋)30と、空間(例えば、部屋)40との間に配置されて空間30を空間40から開閉可能に間仕切る電波遮蔽性仕切面材である。
【0020】
ロールスクリーン1は、可撓性の面材11と、面材11の一方の面11b上に形成された電波遮蔽層12と、支持部材10とを備えている。支持部材10は細長形状(例えば、棒状又は筒状等)に形成されており、空間30と空間40との境界の上部に回動可能に架橋されている。詳細には、例えば、空間30が部屋であり、空間40が室外であり、部屋としての空間30に空間40に開口するように設けられた窓にロールスクリーン1が設けられる場合、その窓の上部の壁又は天井等に回動可能に架橋されて固定されていてもよい。また、空間30と空間40とが同一の部屋内に属する場合、例えば、天井に支持部材10を回動可能に固定してもよい。尚、支持部材10は着脱可能に取り付けられていてもよい。また、支持部材10を、天井や壁等に回動不能に取り付けられた棒状部材と、その棒状部材が挿通され、棒状部材に対して回動可能な筒状部材とにより構成してもよい。つまり、支持部材10を複数の部材により構成してもよい。
【0021】
可撓性の面材11は、その先端が支持部材10に固定(接着、粘着、又は係止等)されており、支持部材10に巻回されている。そして、面材11の他方の先端部11aを引っ張ることにより、巻回された支持部材10は引きだし(開閉)可能に構成されている。さらに、その任意の引き出し位置にて面材11を固定可能に構成されている。すなわち、面材11の全部を巻回させた状態として、空間30と空間40とを面材11により隔離しない態様とすることもできるし、一方、巻回された面材11の一部又は全部を引き出して、空間30と空間40との境界の全部又は一部を面材11によって覆って空間30と空間40とを隔離するような態様とすることもできる。尚、本明細書において、巻回された面材11を引き出した状態(閉状態という)は、空間30と空間40との境界の全体がロールスクリーン1によって完全に覆い区画されている状態のみをいうのではない。電波の使用状況や使用する電波の強度等によっては、閉状態であっても空間30と空間40とがロールスクリーン1によって覆われていなくともよい。
【0022】
面材11の材質は特に限定されるものではなく、例えば、ウレタン樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリスチロール樹脂等の樹脂、織布(例えば、平織等)や不織布等の布状体、紙、ゴム等からなるものであってもよい。また、面材11は、単に基材としての役割だけでなく、様々な特性(光透過性、不燃性、難燃性、非ハロゲン性、柔軟性、耐衝撃性、耐熱性等)をロールスクリーン1に付与する役割を果たすものであってもよい。また、面材11の色も特に限定されるものではなく、例えば、空間30と空間40との間の視界を妨げないようにする場合は面材11を透明なものとしてもよい。逆に空間30と空間40との間で視界を遮りたいような場合は、面材11を不透明なものとしてもよい。その場合、例えば、周囲の壁や天井と同系色としてもよい。
【0023】
面材11の一方の表面11bには、表面11bを覆うように,電波を遮蔽する電波遮蔽層12が設けられている。このため、例えば、空間30と空間40とで異なる無線LANを使用し、両無線LAN間の混線をさけたいような場合には、図1に示すように、表面に電波遮蔽層12が形成された面材11を引き出して(つまり、空間30と空間40との境界に対して電波遮蔽層12が占める面積の割合を比較的大きくして)、空間30と空間40とを電波遮蔽層12によって区画することによって、空間30と空間40との間の電波の入出を規制することができる。このようにすることによって、例えば、空間30からの電波Rは、電波遮蔽層12によって反射されて空間40への入射が規制される。
【0024】
一方、空間30と空間40とで同じ無線LANを使用する場合には、図3に示すように、表面に電波遮蔽層12が形成された面材11を支持部材10に巻回して(つまり、空間30と空間40との境界に対して電波遮蔽層12が占める面積の割合を比較的小さくして)空間30と空間40との間の電波の入出を許容するようにすることもできる。このようにすることによって、空間30からの電波Rが空間40にも入射するようになる。
【0025】
すなわち、本実施形態1に係るロールスクリーン1は、開閉可能であり、必要に応じて電波の遮蔽状態を自在に調節することができる。
【0026】
また、例えば、ひとつの部屋内で異なる無線LANを使用する場合、本実施形態1のロールスクリーン1を用いて異なる無線LANを使用する領域間を区画可能なように、例えば、部屋の略中央部を横断するように天井にロールスクリーン1を取り付けて、面材11を引き出すことによって複数の電波遮蔽空間を区画形成することができる。すなわち、本実施形態1のロールスクリーン1は、既設のビルや部屋にも容易に取り付けて、ひとつの部屋の中に複数の電波遮蔽空間を形成することができ、また、不要になれば取り外すことができ、より自由且つ容易に電波環境の整備を行うことが可能となる。尚、区画形成したい電波遮蔽空間の形状によっては、支持部材10を湾曲させたり、屈曲させた態様としてもよい。
【0027】
本実施形態1において、電波遮蔽層12は、特定の周波数の電波を選択的に遮蔽するものである。具体的には、電波遮蔽層12は、特定の周波数の電波を選択的に反射させる複数のアンテナ13が規則的に配列されてなるものである。このため、例えば、空間30と空間40とで相互に異なる無線LANを使用するために、表面に電波遮蔽層12が形成された面材11を引き出して空間30と空間40とを電波遮蔽層12によって区画して、空間30において使用されている無線LANと空間40において使用されている無線LANとの混線を抑制する一方、無線LAN以外の電波(例えば、携帯電話やPHS等の電波)の入出が許容された電波遮蔽空間を区画形成することができる。例えば、空間30と空間40との間における無線LANの混線を抑制しつつ、携帯電話やビル内で使用されるPHS等を空間30と空間40との間で使用することも可能となる。従って、本実施形態1に係るロールスクリーン1を用いることによって、より自由な電波環境の整備が可能となるので特に好ましい。
【0028】
尚、アンテナ13の形態は特に限定されるものではないが、例えば、図1に示すような形態とすることができる。以下、アンテナ13の形態について、図1及び図4を参照してさらに詳細に説明する。
【0029】
図4はアンテナ13の平面図である。
【0030】
図4に示すように、本実施形態1における各アンテナ13は、3本の第1エレメント部13aと、3本の第2エレメント部13bとを有する(以下、この形態のアンテナを「T−Y型アンテナ」とすることがある。)。3本の第1エレメント部13aは、相互に120°の角度をなしてアンテナ中心C1から外方に延びている。各第2エレメント部13bは第1エレメント部13aの外側端に結合されている。
【0031】
各第1エレメント部13aの長さは相互に略同一であることが好ましい。また、各第2エレメント部13bの長さも相互に略同一であることが好ましい。そうすることによって、電波遮蔽層12の周波数選択性をより高くすることができる。
【0032】
尚、第1エレメント部13aの長さ(L1)と第2エレメント部13bの長さ(L2)とは相互に異なっていてもよく、また同一であってもよい。特に、第1エレメント部13aの長さ(L1)と第2エレメント部13bの長さ(L2)とは、0<L2<2(3)1/2/L1という関係式を満たすことが好ましい。(L2)が2(3)1/2/L1以上である場合は、隣接する第2エレメント部13b同士が接触してしまい、所望の電波遮蔽効果が得られなくなるからである。また、特定周波数の高い遮蔽率を実現する観点から、第2エレメント部13bの長さ(L2)は第1エレメント部13aの長さ(L1)の0.5倍以上2倍以下であることが好ましい。さらに好ましくは、0.75倍以上2倍以下である。
【0033】
また、第1エレメント部13aの幅と第2エレメント部13bの幅とは相互に異なっていてもよく、また、同一であってもよい。本実施形態においては、第1エレメント部13aの幅と第2エレメント部13bの幅とは略同一の幅(L3)とする。
【0034】
上述のように、各アンテナ13は、各第1エレメント部13aの外側端に結合された3本の第2エレメント部13bを有する。このため、アンテナ13は「Y」字形の線状アンテナ(アンテナ中心から放射状に延びる3本の第1エレメント部のみにより構成され、第2エレメント部を有さない線状アンテナ)や、所謂エルサレムクロス型アンテナ(各々、アンテナ中心から相互に90°の角度をなして放射状に略同一長さでもって延びる4本の線分状の第1エレメント部と、該各第1エレメント部の外側端に結合された線分状の第2エレメント部とを有するアンテナ)よりも高い周波数選択性を有する。従って、本実施形態1に係るロールスクリーン1は高い周波数選択性を有するものであり、遮蔽しようとする電波のみを的確に遮蔽させることができる。
【0035】
また、アンテナ13は第2エレメント部13bを有するため、第2エレメント部13b同士を対向させて(好ましくは、緊密に対向させて)複数のアンテナ13を配置することが容易である。第2エレメント部13b同士を対向させて(より好ましくは、第2エレメント部13b同士を緊密に対向させて)複数のアンテナ13を配置することによって、特定周波数の電波に対する電波遮蔽率をより向上することができる。
【0036】
第2エレメント部13b同士を対向させると共に、単位面積あたりにより多くのアンテナ13を配置する観点から、第2エレメント部13bはその中心において第1エレメント部13aの外側端に結合され、且つ第2エレメント部13bと第1エレメント部13aとが直角をなすことが好ましい。
【0037】
次に、第1エレメント部13aの長さ(L1)と第2エレメント部13bの長さ(L2)とが同一である場合(ここでは、(L1)と(L2)を総称してエレメント長Lとする。)のロールスクリーン1の電波遮蔽特性について図5及び図6を参照しながら詳細に説明する。
【0038】
図5はロールスクリーン1に入射する電波の周波数と透過減衰量との関係を表すグラフである。
【0039】
図6はエレメント長Lとアンテナ13によって反射される電波の周波数との関係を表すグラフである。
【0040】
尚、図5において、長さ(L1)及び(L2)はそれぞれ10.6mm、幅(L3)が0.7mmである。
【0041】
図5に示すように、ロールスクリーン1に入射した電波のうち特定周波数(約2.7GHz)の電波の透過率が選択的に減衰する。換言すれば、ロールスクリーン1により、ロールスクリーン1に入射した電波のうち特定周波数(約2.7GHz)の電波が選択的に遮蔽される。これは、ロールスクリーン1の電波遮蔽層12、詳細には電波遮蔽層12に含まれる複数のアンテナ13のそれぞれが、入射した電波のうち特定周波数の電波を選択的に反射するためである。ここで、図6に示すように、第1エレメント部13aの長さ及び第2エレメント部13bの長さ(エレメント長L)と、アンテナ13に反射させようとする電波の周波数(特定周波数)とは相関する。具体的に、エレメント長Lが長くなるほど、アンテナ13によって反射される電波の周波数は低くなる。逆に、エレメント長Lが短くなるほど、アンテナ13によって反射される電波の周波数は高くなる。このため、第1エレメント部13aの長さと第2エレメント部13bの長さとは、遮蔽させようとする電波の周波数(特定周波数)に応じて適宜決定することができる。例えば、第1エレメント部13aの長さと第2エレメント部13bの長さとが同一である場合は、第1エレメント部13a及び第2エレメント部13bの長さを長くすることによって特定周波数を低下させることができる。一方、第1エレメント部13a及び第2エレメント部13bの長さを短くすることによって特定周波数を高くすることができる。具体的には、周波数5GHzの電波を遮蔽させるロールスクリーン1を作成する場合は、図6より、第1エレメント部13aの長さ(L1)と第2エレメント部13bの長さ(L2)とをそれぞれ約6mmと設定することができる。
【0042】
それに対して、反射される電波の周波数は幅(L3)と大きく相関しない。すなわち、反射される電波の周波数は、主として、エレメント長Lによって決定される。
【0043】
また、例えば、第1エレメント部13aの長さ(L1)を固定し、第2エレメント部13bの長さ(L2)を調整することにより特定周波数を調整することも可能である。具体的には、第2エレメント部13bの長さ(L2)を長くすることにより特定周波数を低くすることができる。一方、第2エレメント部13bの長さ(L2)を短くすることにより特定周波数を高くすることが可能である。
【0044】
アンテナ13は、導電性を有するものであることが好ましい。すなわち、導電性材料を含むものであることが好ましい。導電材料としては、アルミニウム、銀、銅、金、白金、鉄、カーボン、黒鉛、酸化インジウムスズ(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、これらの混合物又は合金等が挙げられる。アンテナ13は、これらの中でも、高い導電率を有し、比較的安価な銅、アルミニウム、銀のうち少なくともいずれかを含むものであることが好ましい。
【0045】
アンテナ13の厚さは10μm以上20μm以下であることが好ましい。アンテナ13の厚さが10μmより小さいとアンテナ13の導電性が低下すると共に、アンテナ13の電波反射率も低下する傾向にある。アンテナ13の厚さが20μmより大きいと、アンテナ13の形成性が低下する傾向にある。
【0046】
尚、アンテナ13は、例えば、メッシュ状であってもよい。すなわち、多数の開口部を有するものであってもよい。アンテナ13をメッシュ状にすることによって、比較的アンテナ13を目立たなくすることができる。従って、特に面材11が透明である場合などに有効である。さらに、アンテナ13をメッシュ状とする場合、アンテナ13の周囲にアンテナ13のメッシュパターンと同じパターンで、且つ導電性を有さないメッシュ状の模様を形成しておくことがより好ましい。そうすることによって、アンテナ13をより目立たないものとすることができる。
【0047】
アンテナ13は、例えば、面材11の表面11b上に、スパッタ法等の成膜方法により導電膜(例えば、アルミニウム膜、銅膜、銀膜等)を成膜し、成膜した導電膜をフォトリソグラフィー等のパターニング方法により所定の形状寸法にパターニングすることにより作製してもよい。また、所定の形状寸法にパターニングされたアルミニウム等の薄膜を面材11に粘着又は貼着することによりアンテナ13を形成しても構わない。
【0048】
また、例えば、粉末状の導電材料をバインダーに含ませたペースト(以下、「導電性ペースト」とすることがある。)を面材11に均一に所定パターンで塗布し、その後乾燥させることにより作製してもよい。具体的には、ペーストを所定のパターンに形成した後、例えば100℃以上200℃以下の雰囲気中で10分以上5時間以下乾燥させることによりアンテナ13を作製してもよい。アンテナ13を作製するための導電性ペーストは、粉末状の導電性材料(例えば、銀)をポリエステル樹脂中に分散混入させたものであってもよい。この場合、導電性材料の含有率は40重量パーセント以上80重量パーセント以下であることが好ましい。導電性材料の含有率は50重量パーセント以上70重量パーセント以下であることがより好ましい。導電性材料の含有率が40重量パーセント未満であるとアンテナ13の導電性が低下する傾向となる。一方、導電性材料の含有率が80重量パーセントより多いと樹脂中に均一に分散混入させることが困難となる傾向がある。尚、ポリエステル樹脂は導電性材料と面材11とを接着させる接着剤の役割をなす。
【0049】
面材11が多数の微細孔及び/又は凹凸を有するようなものの場合、具体的には、布状体(織布及び不織布を含む)やコンクリートや発泡性樹脂等からなる多孔質体であるような場合には、ペーストが面材11に滲むこと、意図せず凹部に流れ込んでしまうこと等により形成されるアンテナ13の形状寸法にばらつきが発生することを抑制するために、アンテナ13の形成に先立って、面材11を予めコーティング膜でコートして、表面11bを平坦化すると共に、全体の厚み(面材11の厚みとコーティング膜の厚み)を均一化しておくことが好ましい。コーティング膜の材質は特に限定されるものではないが、例えば、樹脂(具体的には、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等)、ゴム等の有機材料、又はガラス等の無機材料が挙げられる。それらの中でも、ペースト等のアンテナ13の形成材料(例えば、液状の形成材料)に対する膨潤性が低いものであることが好ましい。コーティング膜の形成は、ロールコーター法、スリットダイコーター法、ドクターナイフコーター法、グラビアコーター法等により行うことができる。
【0050】
その他、アンテナ13は、例えば、スピンコート法、ドクターブレード法、吐出コート法、スプレーコート法、インクジェット法、凸版印刷法、凹版印刷法、スクリーン印刷法、マイクログラビアコート法、シルク印刷法、パターン圧着法、エッチング加工法、スパッタ法、蒸着法(例えば、化学気相蒸着法(CVD法))、ミスト塗装法、型の嵌め込みによる埋め込み法等によっても形成することができる。
【0051】
尚、本実施形態1では、電波遮蔽層12が面材11の一方の表面(11b)上に形成されている例について説明したが、電波遮蔽層12が面材11の両面に形成されていてもよい。この場合、一方の表面に形成する電波遮蔽層と他方の表面に形成する電波遮蔽層との形態を異ならせてもよい。具体的には、例えば、一方の表面に形成したアンテナとは反射させる電波の周波数が異なるアンテナを他方の面に形成してもよい。そうすることによって、複数種類の電波を遮蔽させることができるようになる。具体的には、無線LANの送信用電波の周波数と受信用電波の周波数とが相互に異なるような場合、一方の面に送信用電波を反射させるアンテナを複数形成してなる電波遮蔽層を形成すると共に、他方の面に受信用電波を反射させるアンテナを複数形成してなるさらなるもう一つの電波遮蔽層を形成して、送信用電波及び受信用電波の両方を遮蔽する態様とすることが好ましい。また、一方の表面と他方の表面との両方に同形態のアンテナからなる電波遮蔽層12を形成してもよい。そうすることによって、特定周波数の電波のより高い遮蔽が可能となる。
【0052】
さらに高い電波遮蔽性を実現する観点から、空間30と空間40との間に複数の電波遮蔽性仕切面材を相互に離間するように多重に設けることが好ましい。具体的には、例えば、電波遮蔽性仕切面材としての遮光カーテンや遮光ロールスクリーン、ブラインド、シャッター等と、電波遮蔽性仕切面材としてのレースカーテン、ブラインド等とを多重(2重又は3重以上)に設けてもよい。この場合においても、上述した面材11の両面に電波遮蔽層12を設ける場合と同様に、複数の電波遮蔽層相互間で異なる形態であってもよいし、同形態であってもよい。
【0053】
また、電波遮蔽層12の上に、電波遮蔽層12を物理的、又は化学的に保護するための保護膜(例えば樹脂膜)等を設けてもよい。具体的には、例えば電波遮蔽層が銀等の比較的酸化されやすい金属によってできているような場合には、電波遮蔽層の酸化を抑制するための参加防止膜を設けてもよい。また、比較的強度が弱い金属により電波遮蔽層が形成されている場合は、電波遮蔽層を構成する材料よりも高強度な材料により形成した保護膜を設けて、ロールスクリーン1の機械的耐久性を向上するようにしてもよい。
【0054】
また、電波遮蔽層12を面材11の内部に設けてもよい。すなわち、電波遮蔽層12は、面材11の表面方向に広がるものである限り、特にその形態、配置は限定されるものではない。
【0055】
本実施形態1では、電波遮蔽層12が規則的に配列された複数のアンテナ13により構成されている例について説明したが、例えば、周波数にかかわらず、入射する電波を遮蔽する場合は、電波遮蔽層12を、1又は複数の導電膜(例えば、銀薄膜、銅薄膜、アルミニウム薄膜等)により構成してもよい。具体的には、ロールスクリーン11の表面11bを導電膜で被覆するようにしてもよい。
【0056】
以上、本実施形態1では、本発明を実施した,電波遮蔽性仕切面材としてのロールスクリーン1を例に挙げて本発明例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、窓や垂れ幕等であってもよい。また、カーテン、シャッター、ブラインド、パーティション等の他の仕切面材であってもよい。
【0057】
(実施形態2)
図7は本実施形態2に係るカーテン2の斜視図である。
【0058】
図8は開状態にあるカーテン2の斜視図である。
【0059】
本実施形態2では、本発明を実施した,電波遮蔽性仕切面材としてのカーテン2を例に挙げて本発明例について説明する。尚、本実施形態2の説明において、実質的に同じ機能を有する構成要素を実施形態1と共通の参照符号で説明し、説明を省略する。
【0060】
カーテン2は、空間30と空間40との間に架橋された支持部材10に複数のリングを介して開閉可能に取り付けられた面材11と、面材11の上に形成された電波遮蔽層12とを備えている。このカーテン2を用いることによって、上記実施形態1に係るロールスクリーン1と同様に、図7に示すようにカーテン2を閉めることによって、空間30と空間40との間の電波の入出を規制する状態と、図8に示すようにカーテン2を開けることによって、空間30と空間40との間の電波の入出を許容する状態とを自由に選択形成することができる。すなわち、本実施形態2に係るカーテン2を用いることによっても、必要に応じた電波環境の自由な調整が可能となる。
【0061】
さらに、カーテン2は既存の建物、部屋等にも容易に取り付けることができるため、本実施形態2に係るカーテン2を用いることによって、既存の建物、部屋の電波環境も自在に調整することができる。
【0062】
また、より高い電波遮蔽性を実現する観点から、空間30と空間40との間にカーテン2を多重に設けてもよい。例えば、所謂2重カーテンのようにカーテン2を設けてもよい。
【0063】
また、上記実施形態1と同様に、空間30と空間40との間の特定周波数の電波の入出のみを規制し、それ以外の周波数の電波の入出を許容する場合には、電波遮蔽層12を規則的に配列された複数のアンテナ13からなるものとすることが好ましい。
【0064】
(実施形態3)
本発明を実施した電波遮蔽性仕切面材は、例えば、所謂縦型ブラインドであってもよい。本実施形態3では、電波遮蔽性仕切面材としてのブラインド3を例に挙げて本発明例について説明する。尚、本実施形態3の説明において、実質的に同じ機能を有する構成要素を実施形態1、2と共通の参照符号で説明し、説明を省略する。
【0065】
図9は本実施形態3に係るブラインド3の斜視図である。
【0066】
図10は開状態にあるブラインド3の斜視図である。
【0067】
図11は面材11が略水平となっているブラインド3の斜視図である。
【0068】
本実施形態3に係るブラインド3は、空間30と空間40との間に架橋された支持部材10と、一端が支持部材10に固定された複数の紐状部材51と、紐状部材51によって相互に連結されており、相互に並行に位置する横長矩形状の複数の面材11とを備えている。さらに、各紐状部材51に連結されており、支持部材10の端部に設けられた調節手段50を備えており、この調節手段50により、紐状部材51によって相互に連結された複数の面材11の回転操作及びブラインド3の上げ下げ操作をすることができるようになっている。
【0069】
本実施形態3において、各面材11の少なくとも一方の表面には電波遮蔽層12が形成されている。このため、例えば、図9のように、調節手段50を操作することによってブラインド3を下げ、且つ各面材11を閉状態(略鉛直な状態)にして空間30と空間40との境界を電波遮蔽層12によって覆うことによって、空間30と空間40との間の電波の入出を規制することができる。一方、空間30と空間40との間の電波の入出を許容する場合には、図10に示すように、調節手段50を操作してブラインド3を上げた状態とするか、又は、図11に示すように、ブラインド3を下げた状態で各面材11を略水平となるように回転させて開状態にすることができる。
【0070】
このように、本実施形態3に係るブラインド3を用いることによっても、必要に応じた電波環境の自由な調整が可能となる。
【0071】
また、ブラインド3も、カーテン2と同様に、既存の建物、部屋等にも容易に取り付けることができるため、本実施形態3に係るブラインド3を用いることによって、既存の建物、部屋の電波環境も自在に調整することができる。
【0072】
また、より高い電波遮蔽性を実現する観点から、ブラインド3を多重に設けてもよいし、上記ロールスクリーン1やカーテン2、又は電波遮蔽層を備えたシャッターや窓等を併設してもよい。
【0073】
また、上記実施形態1と同様に、空間30と空間40との間の特定周波数の電波の入出のみを規制し、それ以外の周波数の電波の入出を許容する場合には、電波遮蔽層12を規則的に配列された複数のアンテナ13からなるものとすることが好ましい。
【0074】
(実施形態4)
上記実施形態3では所謂縦型のブラインド3について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば横型のブラインドであってもよい。本実施形態4では、電波遮蔽性仕切面材としての横型のブラインド4を例に挙げて本発明例について説明する。尚、本実施形態4の説明において、実質的に同じ機能を有する構成要素を実施形態1〜3と共通の参照符号で説明し、説明を省略する。
【0075】
図12は本実施形態4に係るブラインド4の斜視図である。
【0076】
図13は開状態にあるブラインド4の斜視図である。
【0077】
図14は面材11が空間30と空間40との境界に対して略垂直となっているブラインド4の斜視図である。
【0078】
ブラインド4は、空間30と空間40との間に架橋された棒状の支持部材10と、一端が支持部材10に固定された複数の紐状部材52と、各紐状部材52の他端に接続されており、相互に並行に位置する縦長矩形状の複数の面材11と、複数の面材11を相互に連結する紐状の連結部材53とを備えている。さらに紐状部材52、53に連結されており、支持部材10の端部に設けられた調節手段50を備えており、この調節手段50により、複数の面材11の回転操作及びブラインド4の開閉操作をすることができるようになっている。
【0079】
本実施形態4において、各面材11の少なくとも一方の表面には電波遮蔽層12が形成されている。このため、例えば、図12に示すように、調節手段50を操作することによって、ブラインド4を閉め、且つ各面材11を閉状態(空間30と空間40との境界に沿った状態)にして空間30と空間40との境界を電波遮蔽層12によって覆うことによって、空間30と空間40との間の電波の入出を規制することができる。一方、空間30と空間40との間の電波の入出を許容する場合には、図13に示すように、調節手段50を操作してブラインド4を開けた状態とするか、又は、図14に示すように、ブラインド4を閉めた状態で各面材11を空間30と空間40との境界に対して略垂直となるように回転させて開状態にすることができる。
【0080】
このように、本実施形態4に係るブラインド4を用いることによっても、必要に応じた電波環境の自由な調整が可能となる。
【0081】
また、ブラインド4も、カーテン2やブラインド3と同様に、既存の建物、部屋等にも容易に取り付けることができるため、本実施形態4に係るブラインド4を用いることによって、既存の建物、部屋の電波環境も自在に調整することができる。
【0082】
また、より高い電波遮蔽性を実現する観点から、ブラインド4を多重に設けてもよいし、上記ロールスクリーン1やカーテン2、ブラインド3、又は電波遮蔽層を備えたシャッターや窓等を併設してもよい。
【0083】
また、上記実施形態1と同様に、空間30と空間40との間の特定周波数の電波の入出のみを規制し、それ以外の周波数の電波の入出を許容する場合には、電波遮蔽層12を規則的に配列された複数のアンテナ13からなるものとすることが好ましい。
【0084】
(実施形態5)
本実施形態5では、本発明を実施した電波遮蔽性仕切面材の例として、開閉可能に構成されたパーティション5を説明する。尚、本実施形態5の説明において、実質的に同じ機能を有する構成要素を実施形態1〜4と共通の参照符号で説明し、説明を省略する。
【0085】
図15は本実施形態5に係るパーティション5の背面図である。
【0086】
図16はパーティション5の正面図である。
【0087】
図17はパーティション5を開放した状態を表す背面図である。
【0088】
本実施形態5に係るパーティション5は、床及び天井に対応して設けられたパーティション変位用レール54(レール54は天井又は床のみに設けられていてもよい)に変位可能に取り付けられた縦長矩形状の複数の面材11と、その各面材11の少なくとも一方の面に形成された電波遮蔽層12とを備えている。
【0089】
レール54は、例えば、ひとつの部屋内に位置する空間30と空間40との間に(例えば、部屋の中央部を横切るように)設けられており、図15及び図16に示すように、レール54に沿って複数の面材11を配列させて空間30と空間40との境界を電波遮蔽層12により覆うことによって、空間30と空間40とを電波的に区画することができるようになっている。すなわち、本実施形態5に係るパーティション5を用いることによってひとつの部屋に複数の電波遮蔽空間を区画形成することができる。また、空間30と空間40とで共通した無線LANを使用する場合には、図17に示すように、レール54に沿って面材11を隅に移動させて、空間30と空間40とを連通させるようにすればよい。こうすることによって、空間30と空間40との間の電波の入出が許容された状態が形成される。
【0090】
このように、本実施形態5に係るパーティション5を用いることによっても、必要に応じた電波環境の自由な調整が可能となる。
【0091】
また、パーティション5も、カーテン2やブラインド3、4と同様に、既存の建物、部屋等にも容易に取り付けることができるため、本実施形態5に係るパーティション5を用いることによって、既存の建物、部屋の電波環境も自在に調整することができる。
【0092】
また、より高い電波遮蔽性を実現する観点から、パーティション5を多重に設けてもよいし、上記ロールスクリーン1やカーテン2、ブラインド3、4、又は電波遮蔽層を備えたシャッターや窓等を併設してもよい。
【0093】
また、上記実施形態1と同様に、空間30と空間40との間の特定周波数の電波の入出のみを規制し、それ以外の周波数の電波の入出を許容する場合には、電波遮蔽層12を規則的に配列された複数のアンテナ13からなるものとすることが好ましい。
【0094】
(実施形態6)
図18は本実施形態6に係るプレーンシェード6の平面図である。
【0095】
上記実施形態2では、本発明を実施した,左右に開く所謂横開きカーテンについて説明した。しかしながら、本発明は、この所謂横開きカーテンに限定されるものではない。例えば、上下に開閉されるカーテンの一種であるプレーンシェードであってもよい。本実施形態6では、本発明を実施したプレーンシェードについて説明する。尚、本実施形態6の説明において、実質的に同じ機能を有する構成要素を実施形態1〜5と共通の参照符号で説明し、説明を省略する。
【0096】
図18に示すように、本実施形態6に係るプレーンシェード6は、レースやプリント地等からなる可撓性の面材60と、面材60の上に形成された電波遮蔽層12と、調整手段50とを備えている。そして、調整手段50を操作することによって、表面に電波遮蔽層12が形成された面材60を折りたたみながら上げたり下げたりできるように構成されている。
【0097】
このプレーンシェード6を用いることによっても、上記カーテン2と同様に、このプレーンシェード6を挟んで隣接する空間相互間の電波の入出を規制する状態と許容する状態とを自由に選択形成することができる。すなわち、隣接する空間相互間の電波の入出を規制したい場合には、調整手段50を操作してプレーンシェード6を下げて隣接する空間を相互に遮蔽することができる。一方、隣接する空間相互間の電波の入出を許容したい場合には、調整手段50を操作してプレーンシェード6を挙げればよい。従って、本実施形態6に係るプレーンシェード6によっても、必要に応じた電波環境の自由な調整が可能となる。
【0098】
さらに、プレーンシェード6は、既存の建物、部屋等にも容易に取り付け可能なものである。このため、プレーンシェード6を用いることによって、既存の建物や部屋の電波環境の自在な調整が可能となる。
【0099】
勿論、プレーンシェード6と共に、カーテン2やロールスクリーン1、ブラインド3、4等を多重に設けても構わない。
【0100】
(実施形態7)
図19は本実施形態7に係るダブルロールスクリーン7の側面図である。
【0101】
本実施形態7に係るダブルロールスクリーン7は、上記実施形態1で説明したロールスクリーン1と、ロールスクリーン8とを備えている。ロールスクリーン8は、棒状の支持部材80と、その支持部材80に巻回されており、引き出し可能に構成されている可撓性の面材81とを備えている。尚、ロールスクリーン1とは異なり、面材81の表面には電波遮蔽層12が形成されていない。そして、ダブルロールスクリーン7は、電波遮蔽層12を備えたロールスクリーン1が室外側に位置し、電波遮蔽層12を備えていないロールスクリーン8が室内側に位置するように取り付けて使用されるものである。すなわち、本実施形態7に係るダブルロールスクリーン7は、実施形態1のロールスクリーン1のさらに室内側に電波遮蔽層12を有さない通常のロールスクリーン8を配置してなるものである。
【0102】
このため、ダブルロールスクリーン7を用いることによっても、上記実施形態1で説明したのと同様に、必要に応じた電波環境の自由な調整が可能となる。また、既存の建物や部屋の電波環境の自在な調整が可能となる。
【0103】
さらに、本実施形態7では、室内側に通常のロールスクリーン8が設けられている。このため、例えば室内への電波の入出を規制すべく、ロールスクリーン1の面材11を引き出した状態であっても、ロールスクリーン8の面材81もまた引き出した状態とすることによって電波遮蔽層12が室内から視認されないようにすることができる。また、ロールスクリーン8は電波環境の整備に何ら寄与しない部材であるため、自由なデザインとすることができる。例えば、部屋に合わせたデザイン、色調とすることができる。従って、本実施形態7に係るダブルロールスクリーン7を用いることによって、自在な電波環境の整備が可能となるのみならず、デザイン的にも調和のとれた室内空間を形成することが可能となる。
【0104】
例えば、無地単色の壁及び天井を有する室内の窓部に上記実施形態1のロールスクリーン1を配した場合、ロールスクリーン1のアンテナ13が非常に目立ってしまい、部屋のデザイン的な調和を損ねることとなる虞がある。しかしながら、壁や天井と同系色である無地の面材81を備えたダブルロールスクリーン7を配した場合は、例えば、アンテナ13が室内からは視認されず、壁や天井と同系色の面材81のみが視認されるようになる。従って、室内空間のデザイン的調和が保持される。
【0105】
(変形例1)
以上、上記実施形態1〜7において、1種類のT−Y型アンテナ13が相互に等間隔に離間してマトリクス状に複数配列されてなる電波遮蔽層12を備えた電波遮蔽性仕切面材の例について説明してきたが、本発明において、電波遮蔽層12の構成はこの構成に限定されない。以下、変形例1〜11として、本発明における電波遮蔽層12の他の形態(電波遮蔽層12a〜12k)について説明する。
【0106】
図20は本変形例1における電波遮蔽層12aの平面図である。
【0107】
図21は電波遮蔽層12aの一部分を拡大した平面図である。
【0108】
本変形例1では、電波遮蔽層12は、複数のアンテナ13が、所定間隔でマトリクス状に配列された複数のアンテナ集合体15を構成しており、そのアンテナ集合体15が規則的に(例えば、マトリクス状に)配列されてなる。具体的には、複数のアンテナ13は、各々、第2エレメント部13b同士が対向するように配設された一対からなる複数のアンテナユニット14を構成しており、さらに、その複数のアンテナユニット14は、第2エレメント部13b同士が対向するように配設されて二次元に連続展開した六角形状の複数のアンテナ集合体15を構成している。すなわち、各アンテナ集合体15は、第2エレメント部13b同士を対向させて環状に配置された3つのアンテナユニット14からなる。言い換えれば、アンテナ集合体15は、第2エレメント部13b同士を対向させて環状に配置された6つのアンテナ13からなる。
【0109】
本変形例1では、アンテナ集合体15を構成する18本の第2エレメント部13bのうち12本の第2エレメント部13bが相互に略平行に緊密に対向するように設けられている。このように、比較的多くの第2エレメント部13b同士が緊密に対向するようにアンテナ13を配置構成することによって、アンテナ13の特定周波数の電波に対する電波反射率(電波遮蔽率)をより向上することができる。従って、特定周波数の電波に対する高い電波遮蔽率を有する電波遮蔽性仕切面材を実現することができる。
【0110】
尚、対向する第2エレメント部13b間の距離(X1、図21参照)を短くするほどアンテナ13の電波反射率(電波遮蔽性仕切面材の電波遮蔽率)が高くなる。具体的には、対向する第2エレメント部13b間の距離(X1)が0.4mm以上3mm以下であることが好ましい。より好ましい範囲は0.6mm以上1mm以下である。距離Xを0.4mmより短くすると、対向する第2エレメント部13b同士が不所望に接触する虞がある。一方、距離Xが3mmより長いと電波遮蔽率が低下する傾向にある。
【0111】
また、種々の入射角で入射する電波に対して一定した電波遮蔽性を実現する観点から、アンテナ集合体15は六角形状(好ましくは略正六角形状)であることが好ましい。従って、第1エレメント部13aと第2エレメント部13bとが直角をなしていることが好ましい。また、第2エレメント部13bがその中心において第1エレメント部13aと結合していることが好ましい。
【0112】
(変形例2)
図22は本変形例2における電波遮蔽層12bの平面図である。
【0113】
本変形例2では、アンテナ集合体15がさらに第2エレメント部13b同士が対向するように(所謂ハニカム状に)配置されている。このため、変形例2においては、ほぼすべての第2エレメント部13b同士が対向している。このように、アンテナ13を配置することによって、変形例1よりもさらに、相互に対向するように設けられた第2エレメント部13bを多くすることができる。このため、さらに高い電波遮蔽率を有する電波遮蔽性仕切面材を実現することができる。
【0114】
(変形例3)
図23は本変形例3における電波遮蔽層12cの平面図である。
【0115】
上記実施形態及び変形例では、電波遮蔽層12は1種類のアンテナのみにより構成されているのに対して、本変形例3では、図23に示すように、電波遮蔽層12cは複数種類のアンテナにより構成されている。具体的には、電波遮蔽層12cは、比較的大きな複数のアンテナ16と、比較的小さな複数のアンテナ17とにより構成されている。アンテナ16及びアンテナ17のそれぞれは、上述のアンテナ13と同形態の所謂T−Y型アンテナである。
【0116】
複数のアンテナ16及び複数のアンテナ17は、交番状に、且つ相互に干渉しないようにマトリクス状に離間して配置されている。アンテナ16とアンテナ17とは相互に相似形であってもよく、また、非相似形であってもよい。さらに、電波遮蔽層12cはアンテナ16及びアンテナ17以外のアンテナをさらに含むものであってもよい。
【0117】
比較的大きなアンテナ16と比較的小さなアンテナ17とは、相互に異なる周波数選択性を有する。すなわち、アンテナ16とアンテナ17とは反射する電波の周波数が相互に異なるものである。このため、本変形例3によれば、相互に周波数が異なる2種の電波を選択的に遮蔽することができる電波遮蔽性仕切面材を実現することができる。
【0118】
本変形例3に係る電波遮蔽性仕切面材は、例えば、無線LANが使用される環境のような,2.4GHz帯の周波数の電波と、5.2GHz帯の周波数の電波との2種の周波数の電波が使用される環境等の複数種類の周波数の電波が使用される環境に特に有用である。
【0119】
また、3種類以上の周波数の電波が使用されるような環境においては、相互に大きさの異なる3種類以上のアンテナにより電波遮蔽層12cを構成してもよい。
【0120】
(変形例4)
図24は本変形例4における電波遮蔽層12dの平面図である。
【0121】
本変形例4においても、上記変形例3と同様に、電波遮蔽層12dは、複数のアンテナ16と複数のアンテナ17とにより構成されている。尚、アンテナ16及びアンテナ17は、それぞれ変形例3におけるアンテナ16及びアンテナ17と同形態のアンテナである。
【0122】
本変形例4では、複数のアンテナ16は、変形例2における複数のアンテナ13と同様に、各々、第2エレメント部16b同士が対向するように配設された一対からなる複数のアンテナユニット18を構成している。さらに、その複数のアンテナユニット18は、第2エレメント部16b同士が対向するように配設されて二次元に連続展開した六角形状の複数のアンテナ集合体19を構成している。すなわち、各アンテナ集合体19は、第2エレメント部16b同士を対向させて環状に配置された3つのアンテナユニット18からなる。言い換えれば、アンテナ集合体19は、第2エレメント部16b同士を対向させて環状に配置された6つのアンテナ13からなる。そして、アンテナ集合体19がさらに第2エレメント部13b同士が対向するように(所謂ハニカム状に)配置されている。
【0123】
一方、複数のアンテナ17は、変形例1における複数のアンテナ13と同様に、各々、第2エレメント部17b同士が対向するように配設された一対からなる複数のアンテナユニット20を構成しており、さらに、その複数のアンテナユニット20は、第2エレメント部17b同士が対向するように配設されて二次元に連続展開した六角形状の複数のアンテナ集合体21を構成している。そして、各アンテナ集合体21はアンテナ集合体19により包囲されるように配置されている。
【0124】
このような配列によれば、アンテナ16の第2エレメント部16b同士、アンテナ17の第2エレメント部17b同士をそれぞれ高い確率で対向させて、且つ両アンテナ16及び17をほぼ同様の密度で配置することができる。従って、アンテナ16が反射する電波及びアンテナ17が反射する電波の両方を、より高い周波数選択性で、且つより高い遮蔽率で遮蔽することができる。
【0125】
本変形例4では、第2エレメント部16b、17bの長さが比較的短いことが好ましい。そうすることによって、アンテナ16とアンテナ17との接触を抑制することができる。従って、アンテナ集合体19に包囲されるアンテナ集合体21を構成するアンテナ17の寸法自由度をより大きくすることができる。その結果、例えば比較的周波数の近い2種の電波を選択的に遮蔽可能な電波遮蔽性仕切面材が実現可能となる。
【0126】
(変形例5)
図25は本変形例5における電波遮蔽層12eの平面図である。
【0127】
本変形例5は上記変形例4のさらなる変形例である。本変形例5では、アンテナ集合体19とアンテナ集合体21とは、相互に異なる対称軸(詳細には、アンテナ16、17の配列方向に延びる線対称軸)を有するように、相互に傾斜するように配置されている。
【0128】
アンテナ集合体19によりアンテナ集合体21を包囲させるためには、アンテナ集合体21を構成するアンテナ17の寸法を、アンテナ集合体19を構成するアンテナ16の寸法より小さくする必要がある。変形例4に示すように、アンテナ集合体19とアンテナ集合体21とを傾斜させることなく配置させた場合、アンテナ16とアンテナ17とが相互に干渉しないようにアンテナ17をアンテナ16に対して非常に小さくしなければならず、アンテナ16とアンテナ17との設計自由度が低くなる。
【0129】
それに対して、本変形例5に示すように、アンテナ集合体19とアンテナ集合体21とを傾斜(例えば図25では、θ=10°)させて配列した場合は、相互に対向する第2エレメント部16bと、相互に対向する第2エレメント部17bとの相対位置がずれる。このため、本変形例5では、変形例4に示す場合と比較して、アンテナ16に対するアンテナ17の相対大きさを比較的大きくすることができる。従って、アンテナ16とアンテナ17との形状寸法の設計自由度を広げることができる。この結果、周波数の近い(第1周波数との第2周波数との比(第1周波数<第2周波数)が0.45以上)2波に対する電波遮蔽が可能となる。
【0130】
また、図25では、略六角形状のアンテナ集合体19、アンテナ集合体21を最密に配置しているが、所望の電波遮蔽率によっては、最密に配置せず、略六角形状のアンテナ集合体19、21の数をそれぞれ適宜調整することができる。
【0131】
(変形例6)
上記実施形態及び変形例1〜5では、1種類又は複数種類の周波数の電波を選択的に遮蔽可能な電波遮蔽性仕切面材について説明してきたが、本発明に係る電波遮蔽性仕切面材は、1種又は複数種類の周波数帯域の電波を選択的に遮蔽可能なものであってもよい。本変形例6では、特定の周波数帯域の電波を選択的に遮蔽可能なように、それぞれ異なる特定の周波数の電波を選択的に反射させる複数種類のアンテナにより電波遮蔽層を構成した例について説明する。具体的には、3種類のアンテナ22a、22b、22cにより電波遮蔽層12fを構成した例について説明する。
【0132】
尚、「周波数帯域」とは比帯域が10%を超える周波数の領域のことをいう。また、「特定の周波数帯域の電波を選択的に遮蔽する」電波遮蔽性仕切面材とは、10dBの比帯域(好ましくは20dBの比帯域、さらに好ましくは30dBの比帯域)が10%を超える電波遮蔽性仕切面材のことをいう。それに対して、「特定の周波数の電波を選択的に遮蔽する」電波遮蔽性仕切面材とは、10dBの比帯域が10%以下である電波遮蔽性仕切面材のことをいう。尚、10dBの比帯域は、10dB以上遮蔽される電波の周波数の最大値をFmaxとし、10dB以上遮蔽される電波の周波数の最小値をFminとした場合、2(Fmax−Fmin)/(Fmax+Fmin)で表される。
【0133】
以下、図26を参照しながら本変形例6における電波遮蔽層12fの構成について詳細に説明する。
【0134】
図26は本変形例6における電波遮蔽層12fの平面図である。
【0135】
電波遮蔽層12fは、相互に異なる特定の周波数の電波を選択的に反射させる複数種類のアンテナ22、具体的には、複数の第1アンテナ22a、複数の第2アンテナ22b、及び複数の第3アンテナ22cの3種類のアンテナによって構成されている。第1アンテナ22a、第2アンテナ22b、及び第3アンテナ22cは、それぞれの電波反射スペクトルピークが相互に独立していないものである。言い換えれば、それぞれの電波反射スペクトルピークが連続しているものである。このため、本変形例に係る電波遮蔽層12fは所定の幅を持った周波数帯域(例えば、815MHz以上925MHz以下の周波数帯域)の電波を選択的に反射させることができる。例えば、電波遮蔽層12fは図27で示されるような電波遮蔽特性(電波の透過減衰特性)を有する。電波反射スペクトルピークのより高い連続性を実現する観点から、電波遮蔽層12fに含まれる各アンテナ22の寸法は、アンテナ22のうち基準となる種類のアンテナ22の寸法の±15%(好ましくは±10%、より好ましくは±5%)以内であることが好ましい。
【0136】
図27は電波遮蔽層12fの電波遮蔽量(電波の透過減衰量)と周波数との相関を例示するグラフである。
【0137】
図27に示すように、第1アンテナ22aのスペクトルピークP2と、第2アンテナ22bのスペクトルピークP3と、第3アンテナ22cのスペクトルピークP1とは相互に独立しておらず、連続している。すなわち、最も大きなピークであるP1のベースラインBLからの深さH1に対する、谷部のベースラインBLからの深さH2との比が50%以下(3dB以上)である。そして、電波遮蔽層12fによれば、ピークP1〜P3の間の周波数帯域の全域の電波が10dB以上という高い遮蔽率で遮蔽(反射)される。また、10dBの比帯域が10%よりも大きいことが好ましい。
【0138】
尚、「電波反射スペクトルピークが相互に独立していない(連続している)」とは、電波遮蔽性仕切面材の有する電波反射(遮蔽)スペクトルのうち最も大きなスペクトルの山部(ピーク)の電波反射(遮蔽)率に対するスペクトルピーク間の谷部における最小の電波反射(遮蔽)率の比が50%より大きい(最も大きなスペクトルの山部(ピーク)の電波反射(遮蔽)率と谷部における最小の電波反射(遮蔽)率との差が3dBより小さい)ことをいう。一方、「電波反射スペクトルピークが相互に独立している(連続していない)」とは、電波遮蔽性仕切面材の有する電波遮蔽スペクトル(電波反射スペクトル)のうち最も大きなスペクトルの山部(ピーク)の電波反射(遮蔽)率に対するスペクトルピーク間の谷部における最小の電波反射(遮蔽)率の比が50%以下(最も大きなスペクトルの山部(ピーク)の電波反射(遮蔽)率と谷部における最小の電波反射(遮蔽)率との差が3dB以上)であることをいう。
【0139】
本変形例6では、第1アンテナ22a、第2アンテナ22b、及び第3アンテナ22cのそれぞれは、実施形態において説明したアンテナ13と同形態の所謂T−Y型アンテナである。しかし、第1アンテナ22a、第2アンテナ22b、及び第3アンテナ22cのそれぞれは、例えば「Y」字状のアンテナ、所謂エルサレムクロス型のアンテナ等であってもよい。また、第1アンテナ22a、第2アンテナ22b、及び第3アンテナ22cは、相互に異なる形状のアンテナであってもよく、また、相互に相似形のアンテナであってもよい。
【0140】
次に、本変形例6におけるアンテナ22a、22b、22cの配置について、図26を参照しながら詳細に説明する。
【0141】
図26に示すように、電波遮蔽層12fには、複数の第1アンテナ22a、複数の第2アンテナ22b、及び複数の第3アンテナ22cが、それぞれ第1アンテナ22a、第2アンテナ22b、及び第3アンテナ22cが一方向にこの順で交番状に配列されてなる複数のアンテナ列23を構成するように二次元配列されている。言い換えれば、電波遮蔽層12fは、それぞれ第1アンテナ22a、第2アンテナ22b、及び第3アンテナ22cが一方向にこの順で交番状に配列されたアンテナ列23が複数、略並行に配置されてなるものである。
【0142】
電波遮蔽層12fにおいて、各第1アンテナ22aはその第1アンテナ22aが属するアンテナ列23の隣のアンテナ列23に属する第2アンテナ22b及び第3アンテナ22cに隣接している。同様に、各第2アンテナ22bはその第2アンテナ22bが属するアンテナ列23の隣のアンテナ列23に属する第1アンテナ22a及び第3アンテナ22cに隣接している。各第3アンテナ22cはその第3アンテナ22cが属するアンテナ列23の隣のアンテナ列23に属する第2アンテナ22b及び第1アンテナ22aに隣接している。言い換えれば、第1アンテナ22aと、その第1アンテナ22aが属するアンテナ列23の両側に位置するアンテナ列23に属する、その第1アンテナ22aに隣接する第1アンテナ22aとのアンテナ中心が三角形(好ましくは正三角形)を構成するように配置されている。且つ、第1アンテナ22aと、その第2アンテナ22bが属するアンテナ列23の両側に位置するアンテナ列23に属する、その第2アンテナ22bに隣接する第2アンテナ22bとのアンテナ中心が三角形(好ましくは正三角形)を構成するように配置されている。且つ、第1アンテナ22aと、その第3アンテナ22cが属するアンテナ列23の両側に位置するアンテナ列23に属する、その第3アンテナ22cに隣接する第3アンテナ22cとのアンテナ中心が三角形(好ましくは正三角形)を構成するように配置されている。
【0143】
このような配置にすることによって、例えば、第1アンテナ22aの第2エレメント部が隣のアンテナ列23に属する第2アンテナ22bと第3アンテナ22cとの間に入り込むように、複数のアンテナ列23を行方向に密に配列することが可能となる。言い換えれば、図26に示すように、第2アンテナ22bが配置された領域R内に隣接するアンテナ22の第2エレメント部が入り込むような態様で密にアンテナ22を配置することが可能となる。よって、単位面積あたりにより多くのアンテナ22a、22b、22cを密に配置することができる。
【0144】
ここで、電波の遮蔽率は単位面積あたりのアンテナ22の数量と相関し、単位面積あたりのアンテナ22の数量が増加すると電波の遮蔽率も増加するため、本変形例6におけるアンテナ22の配置によればさらに高い電波遮蔽率を実現することが可能となる。また、第1アンテナ22a、第2アンテナ22b、及び第3アンテナ22cの単位面積あたりに含まれる個数を略同一にすることができるため、周波数帯域における電波遮蔽ムラを抑制することができる。尚、より単位面積あたりのアンテナ22の数量を多くする観点から、第2エレメント部は第1エレメント部よりも短い方が好ましい(L2>L1)。
【0145】
また、本変形例6におけるアンテナ22の配列では、複数のアンテナ22が第2エレメント部同士が平行に対向しないように配列されている。このため、アンテナ22の周波数選択性を比較的低く保つことができる。言い換えれば、アンテナ22の比帯域を比較的広く保つことができる。従って、特定の周波数帯域全域の電波に対する偏りの少ない良好な電波遮蔽率を実現することができる。
【0146】
(変形例7)
以上、T−Y型アンテナ(アンテナ13、16、17)により構成された電波遮蔽層12の例について説明してきたが、電波遮蔽層12はT−Y型アンテナ以外のアンテナにより構成されていてもよい。例えば、図28に示すように、電波遮蔽層12gは、マトリクス状に配列された複数の「Y」字状のアンテナ24により構成されていてもよい。尚、「Y」字状のアンテナ24とは、具体的には、各々、アンテナ中心から相互に120°の角度をなして放射状に略同一長さでもって延びる3本の線分状の第1エレメント部24aにより構成されたもののことをいう。
【0147】
(変形例8)
本変形例8は、上記変形例7のさらなる変形例である。上記変形例7では、電波遮蔽層12gが1種類のアンテナ24のみにより構成されているのに対し、本変形例8では、電波遮蔽層12hは、相互に大きさの異なる2種類の「Y」字状アンテナ25、26により構成されている。この構成によれば、相互に周波数の異なる複数種類の電波の遮蔽が可能な電波遮蔽性仕切面材を実現することができる。
【0148】
図29に示すように、本変形例8では、比較的大きなアンテナ25が、第1エレメント部同士を対向させるように配列されている。具体的には、あるアンテナ25の3本の第1エレメント部のそれぞれに異なるアンテナ25の第1エレメント部が平行に且つ密に対向するように配列されている。そして、比較的大きなアンテナ25により区画形成された六角形状の領域のそれぞれに、比較的小さなアンテナ24がひとつずつ配置されている。このような配列にすることによって、アンテナ25の特定周波数の電波に対する電波遮蔽率を向上することができる。
【0149】
(変形例9)
図30は、本変形例9における電波遮蔽層12iの平面図である。
【0150】
本実施例10では、電波遮蔽層12iは、所謂エルサレムクロス型の複数のアンテナ27により構成されている。各アンテナ27は、各々、アンテナ中心から相互に90°の角度をなして放射状に略同一長さでもって延びる4本の線分状の第1エレメント部27aと、各第1エレメント部の外側端に(典型的には垂直に)結合された線分状の第2エレメント部27bとを有するものである。このような形状のアンテナ27により電波遮蔽層12iを構成することによって、上記変形例7、8で説明した「Y」字状のアンテナにより電波遮蔽層を構成する場合よりも高い周波数選択性(但し、所謂T−Y型アンテナにより電波遮蔽層を構成した場合よりは低い周波数選択性)を実現することができる。
【0151】
複数のアンテナ27は、隣接するアンテナ27の第2エレメント部27b同士が対向するように(好ましくは、平行に且つ密に対向するように)マトリクス状に配列されている。この配列によれば、アンテナ27の特定周波数の電波に対する電波遮蔽率をさらに向上することができる。
【0152】
(変形例10)
図31は、本変形例10における電波遮蔽層12jの平面図である。
【0153】
本変形例10は、上記変形例9のさらなる変形例である。上記変形例9では、電波遮蔽層12iが1種類のアンテナ27のみにより構成されているのに対し、本変形例10では、電波遮蔽層12jは、相互に大きさの異なる2種類のエルサレムクロス型アンテナ28、29により構成されている。この構成によれば、相互に周波数の異なる複数種類の電波の遮蔽が可能な電波遮蔽性仕切面材を実現することができる。
【0154】
図31に示すように、本変形例10では、複数のアンテナ28が、隣接して配置されたアンテナ28の第2エレメント部28b同士が対向するように(好ましくは、平行に且つ密に対向するように)マトリクス状に配列されている。そして、比較的大きなアンテナ28により区画形成された領域のそれぞれに、比較的小さなアンテナ29がひとつずつ配置されている。
【0155】
このような配列にすることによって、アンテナ28の特定周波数の電波に対する電波遮蔽率を向上することができる。
【0156】
(変形例11)
図32は、本変形例11における電波遮蔽層12kの平面図である。
【0157】
本変形例11は、アンテナ28、29の配列のみを異にする上記変形例10のさらなる変形例である。
【0158】
本変形例11では、図32において横方向に第2エレメント部28b同士が対向する(好ましくは、平行に且つ密に対向する)ように配列されたアンテナ28の列と、同方向に第2エレメント部29b同士が対向する(好ましくは、平行に且つ密に対向する)ように配列されたアンテナ29の列とが、図32において縦方向に交互に配列されている。このように配列することによって、アンテナ28、29それぞれの特定周波数の電波に対する電波遮蔽率を向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0159】
以上説明したように、本発明に係る電波遮蔽性仕切面材は、シャッター、カーテン、ブラインド、窓、間仕切り、ロールスクリーン又は垂れ幕等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】実施形態1に係るロールスクリーン1の斜視図である。
【図2】図1中の切り出し線II−IIで切り出された部分の断面図である。
【図3】ロールスクリーン1の使用態様を表す斜視図である。
【図4】図4はアンテナ13の平面図である。
【図5】ロールスクリーン1に入射する電波の周波数と透過減衰量との関係を表すグラフである。
【図6】エレメント長Lとアンテナ13によって反射される電波の周波数との関係を表すグラフである。
【図7】実施形態2に係るカーテン2の斜視図である。
【図8】開状態にあるカーテン2の斜視図である。
【図9】実施形態3に係るブラインド3の斜視図である。
【図10】開状態にあるブラインド3の斜視図である。
【図11】面材11が略水平となっているブラインド3の斜視図である。
【図12】実施形態4に係るブラインド4の斜視図である。
【図13】開状態にあるブラインド4の斜視図である。
【図14】面材11が空間30と空間40との境界に対して略垂直となっているブラインド4の斜視図である。
【図15】実施形態5に係るパーティション5の背面図である。
【図16】パーティション5の正面図である。
【図17】パーティション5を開放した状態を表す背面図である。
【図18】実施形態6に係るプレーンシェード6の平面図である。
【図19】実施形態7に係るダブルロールスクリーン7の側面図である。
【図20】変形例1における電波遮蔽層12aの平面図である。
【図21】電波遮蔽層12aの一部分を拡大した平面図である。
【図22】変形例2における電波遮蔽層12bの平面図である。
【図23】変形例3における電波遮蔽層12cの平面図である。
【図24】変形例4における電波遮蔽層12dの平面図である。
【図25】変形例5における電波遮蔽層12eの平面図である。
【図26】変形例6における電波遮蔽層12fの平面図である。
【図27】電波遮蔽層12fの電波遮蔽量(電波の透過減衰量)と周波数との相関を例示するグラフである。
【図28】変形例7における電波遮蔽層12gの平面図である。
【図29】変形例8における電波遮蔽層12hの平面図である。
【図30】変形例9における電波遮蔽層12iの平面図である。
【図31】変形例10における電波遮蔽層12jの平面図である。
【図32】変形例11における電波遮蔽層12kの平面図である。
【符号の説明】
【0161】
1、8 ロールスクリーン
2 カーテン
3、4 ブラインド
5 パーティション
7 ダブルロールスクリーン
10、80 支持部材
11、60、81 面材
12 電波遮蔽層
13、16、17、22、24、25、26、27、28、29 アンテナ
13a、27a 第1エレメント部
13b、16b、17b、27b、28b、29b 第2エレメント部
14、18、20 アンテナユニット
15、19、21 アンテナ集合体
23 アンテナ列
30、40 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を遮蔽する電波遮蔽層を備えた,空間を開閉可能に仕切る電波遮蔽性仕切面材。
【請求項2】
請求項1に記載された電波遮蔽性仕切面材において、
上記電波遮蔽層は特定の周波数の電波を選択的に遮蔽するものである電波遮蔽性仕切面材。
【請求項3】
請求項1に記載された電波遮蔽性仕切面材において、
上記電波遮蔽層は特定の周波数の電波を選択的に反射する複数のアンテナを有する電波遮蔽性仕切面材。
【請求項4】
請求項3に記載された電波遮蔽性仕切面材において、
上記各アンテナは、各々、アンテナ中心から相互に120°の角度をなして放射状に略同一長さでもって延びる3本の線分状の第1エレメント部と、該各第1エレメント部の外側端に結合された線分状の第2エレメント部とを有する電波遮蔽性仕切面材。
【請求項5】
請求項1に記載された電波遮蔽性仕切面材において、
上記電波遮蔽層は導電膜により構成されている電波遮蔽性仕切面材。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載された電波遮蔽性仕切面材において、
シャッター、カーテン、プレーンシェード、ブラインド、窓、間仕切り、ロールスクリーン又は垂れ幕であることを特徴とする電波遮蔽性仕切面材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2007−319504(P2007−319504A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−154366(P2006−154366)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】