説明

電源装置および照明装置

【課題】簡単な構成で、負荷の出力を一定に保ちながら、雑音強度を低減できる電源装置を提供する。
【解決手段】電源装置10は、交流電源Eを整流する整流回路15と、電源電圧変換部16とを備える。電源電圧変換部16は、整流回路15とそれぞれLED素子11a,11bが接続される複数の出力部13a,13bとの間に設けられた複数の電源電圧変換回路16a,16bを有している。各電源電圧変換回路16a,16bには整流回路15で整流された電源電圧を変換して各LED素子11a,11bに供給するスイッチング素子Q1,Q2を設ける。各電源電圧変換回路16a,16bのスイッチング素子Q1,Q2は、少なくとも2つ以上の異なるスイッチング周波数であるとともにそれぞれのスイッチング周波数を一定としてオンオフ動作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、負荷に電力を供給する電源装置、およびこの電源装置を備えた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばLED素子を負荷とする電源装置では、交流電源を整流回路で整流し、整流された直流電圧を電源電圧変換回路のスイッチング素子のオンオフ動作により変換してLED素子に供給し、LED素子を点灯させている。
【0003】
また、スイッチング素子のスイッチング動作に伴って電源電圧に重畳する雑音が交流電源側に漏洩し、交流電源に接続されている他の電気機器に影響することが知られている。そのため、交流電源と整流回路との間に雑音を低減する雑音防止用のフィルタ回路が設けられていることが多い。
【0004】
また、複数のランプ毎に整流回路および電源電圧変換回路を個別に設け、少なくとも1つの電源電圧変換回路のスイッチング素子をオンオフ動作させるスイッチング周波数をランダムに変化させることにより、全体としての雑音強度を低くするようにした提案がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−82275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
LED素子を用いた照明装置においては高出力化が進んでいるが、この高出力化によって電源装置の電源電圧変換回路で変換する電力が大きくなり、電源装置から交流電源側に漏洩する雑音も増加する傾向にある。
【0007】
そのため、雑音防止用のフィルタ回路の場合には、大形の雑音防止用のフィルタ回路を用いなければ、雑音防止効果が不十分になってしまう。
【0008】
また、スイッチング素子のスイッチング周波数をランダムに変化させる場合には、それを構成する回路が複雑になり、スイッチング周波数の変化に応じて出力である明るさが変化してしまう虞がある。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、簡単な構成で、負荷の出力を一定に保ちながら、雑音強度を低減できる電源装置、およびこの電源装置を備えた照明装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態の電源装置は、交流電源を整流する整流回路と、電源電圧変換部とを備える。電源電圧変換部は、整流回路とそれぞれ負荷が接続される複数の出力部との間に設けられた複数の電源電圧変換回路を有している。複数の電源電圧変換回路には整流回路で整流された電源電圧を変換して各負荷に供給するスイッチング素子を設ける。複数の電源電圧変換回路のスイッチング素子は、少なくとも2つ以上の異なるスイッチング周波数であるとともにそれぞれのスイッチング周波数を一定としてオンオフ動作する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電源電圧変換部をそれぞれ負荷が接続されるとともにスイッチング素子が設けられた複数の電源電圧変換回路に分け、複数の電源電圧変換回路のスイッチング素子を少なくとも2つ以上の異なるスイッチング周波数であるとともにそれぞれのスイッチング周波数を一定としてオンオフ動作させることにより、簡単な構成で、負荷の出力を一定に保ちながら、雑音強度を低減することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施形態を示す電源装置の回路図である。
【図2】同上電源装置を備えた照明装置の斜視図である。
【図3】同上電源装置の電源電圧に重畳する雑音の波形図を示し、(a)は複数のスイッチング素子の周波数が異なる場合の波形図、(b)は複数のスイッチング素子の周波数が同じ場合の波形図である。
【図4】同上電源装置の各制御手段が出力するPWM信号の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0014】
図1において、電源装置10は、商用交流電源である交流電源Eに接続され、複数に分割された負荷としてのLED素子11a,11bに電力を供給し、各LED素子11a,11bを点灯させるものである。この電源装置10は、例えば、ベースライトやダウンライトなどで、多数のLED素子11a,11bを用いて光束の高出力化を図った照明装置に適用できる。
【0015】
電源装置10は、交流電源Eに接続される共通の入力部12、各LED素子11a,11bが接続される複数の出力部13a,13b、入力部12に接続される共通のフィルタ回路14、このフィルタ回路14に接続される共通の整流回路15、この整流回路15の出力側と各出力部13a,13bとの間に接続される複数の電源電圧変換回路16a,16bを有する電源電圧変換部16を具備している。
【0016】
なお、本実施形態では、LED素子11a,11b、出力部13a,13b、電源電圧変換回路16a,16bをそれぞれ2組ずつ備えており、第1のLED素子11aおよび第2のLED素子11b、第1の出力部13aおよび第2の出力部13b、第1の電源電圧変換回路16aおよび第2の電源電圧変換回路16bとなっている。
【0017】
そして、フィルタ回路14は、一対の入力部12に並列に接続されるコンデンサC1、インダクタL1およびコンデンサC2を有し、交流電源E側から入力する雑音成分および交流電源E側に出る雑音成分を低減する。
【0018】
また、整流回路15は、全波整流器RECが用いられ、この全波整流器RECの入力端がフィルタ回路14の出力端に接続され、全波整流器RECの出力端に各電源電圧変換回路16a,16bの入力端が並列に接続されている。
【0019】
また、各電源電圧変換回路16a,16bは、基本的な構成を共通としており、整流後の電源電圧を降圧して各LED素子11a,11bに出力する降圧チョッパ回路などのDC−DCコンバータで構成されている。すなわち、各電源電圧変換回路16a,16bは、全波整流器RECの出力端に並列に接続された平滑コンデンサC3,C4、この平滑コンデンサC3,C4の両端に並列に接続されたダイオードD1,D2とMOSFETなどのスイッチング素子Q1,Q2と抵抗R1,R2との直列回路、ダイオードD1,D2とスイッチング素子Q1,Q2のドレインとの間に入力端が接続されたインダクタL2,L3、およびインダクタL2,L3の出力端に接続されるとともに出力部13a,13bに並列に接続された平滑コンデンサC7,C8をそれぞれ備えている。
【0020】
平滑コンデンサC3,C4と並列に制御手段21a,21b(第1の制御手段21a、第2の制御手段21b)に接続され、この制御手段21a,21bにスイッチング素子Q1,Q2のゲート、およびスイッチング素子Q1,Q2のソースと抵抗R1,R2との接続点が接続されている。そして、制御手段21a,21bは、例えばICで構成されており、スイッチング素子Q1,Q2のソースに出力する信号により、スイッチング素子Q1,Q2を所定のスイッチング周波数でオンオフ動作させる。すなわち、制御手段21a,21bは、外部から調光信号を入力し、スイッチング素子Q1,Q2をPWM制御するもので、スイッチング素子Q1,Q2のオンとオフとの比率を制御することにより、LED素子11a,11bに流れる電流を制御してLED素子11a,11bが発光する明るさを調整するように構成されている。
【0021】
制御手段21a,21bと平滑コンデンサC3,C4の負極側との間にはスイッチング周波数設定手段22a,22bが接続されている。このスイッチング周波数設定手段22a,22bは、コンデンサC9,C10および抵抗R3,R4を有し、これらコンデンサC9,C10の容量や抵抗R3,R4の抵抗値に応じて制御手段21a,21bによるスイッチング周波数が設定されるように構成されている。
【0022】
そして、スイッチング周波数設定手段22a,22bにより、第1の制御手段21aがスイッチング素子Q1をオンオフ動作させるスイッチング周波数f1と、第2の制御手段21bがスイッチング素子Q2をオンオフ動作させるスイッチング周波数f2とは、それぞれ一定の周波数に設定されているが、いずれか一方の周波数が高く、他方の周波数が一方の周波数より低いというように、異なる周波数に設定されている。
【0023】
また、外部に配置される調光器25からの調光信号が調光制御回路26を通じて各制御手段21a,21bに入力される。
【0024】
次に、図2には、電源装置10を備えた照明装置30を示す。この照明装置30は、高出力タイプの埋込形のダウンライトであり、下面を開口した円筒状に設けられた器具本体31を備えている。この器具本体31内には、LED素子11a,11bを有するLEDモジュールが取り付けられているとともに、LED素子11a,11bが発生する光の配光を制御する反射体およびこの反射体の下面を覆う透光性カバー32などが配置されている。
【0025】
電源装置10は、ケース33に収納されており、器具本体31に対して別設置タイプで、LEDモジュールとはケーブル34によって電気的に接続されている。
【0026】
次に、電源装置10の動作を説明する。
【0027】
交流電源Eが投入されると、フィルタ回路14を通じて全波整流器RECで整流された電源電圧が各電源電圧変換回路16a,16bに入力される。各電源電圧変換回路16a,16bに入力された電源電圧は、平滑コンデンサC3,C4で平滑されて各電源電圧変換回路16a,16b中に供給され、各電源電圧変換回路16a,16bが起動する。
【0028】
起動した各電源電圧変換回路16a,16bでは、各制御手段21a,21bにより各スイッチング素子Q1,Q2をそれぞれ予め設定されたスイッチング周波数でオンオフ動作させる。これにより、各電源電圧変換回路16a,16bに入力された電源電圧が降圧されて各LED素子11a,11bに供給され、各LED素子11a,11bが点灯する。
【0029】
このとき、第1の制御手段21aがスイッチング素子Q1をオンオフ動作させるスイッチング周波数f1と、第2の制御手段21bがスイッチング素子Q2をオンオフ動作させるスイッチング周波数f2とが異なっているが、それぞれの周波数は一定に保たれている。
【0030】
また、各スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング動作に伴って電源電圧に重畳する雑音が交流電源E側に漏洩するのをフィルタ回路14によって低減する。雑音は、スイッチング周波数に依存して発生する。
【0031】
図3(b)に示すように、仮に、スイッチング周波数f1とスイッチング周波数f2とが同じであった場合を考えると、雑音成分が重なって雑音レベルのピーク(P)が大きくなることがあり、このようなピーク(P)の大きい雑音をフィルタ回路14によって交流電源Eに接続される他の電気機器への影響をしない十分に小さな雑音レベルまで低減させるためには、フィルタ回路14に容量の大きいコンデンサC1、コンデンサC2、インダクタL1を用いる必要があり、フィルタ回路14が大型化してしまい電源装置10の小型化を妨げる虞がある。なお、スイッチング周波数f1とスイッチング周波数f2とが同じである場合とは、両LED素子11a,11bに対して1つの電源電圧変換回路のみで電力供給する場合に相当する。
【0032】
それに対して、図3(a)に示すように、スイッチング周波数f1とスイッチング周波数f2とを異ならせることにより、それぞれの雑音成分のピークが異なることにより、雑音成分が重なって図3(b)に示されるようなピーク(P)が発生することを避けることができ、このようなピークの小さい雑音であればフィルタ回路14によって交流電源Eに接続される他の電気機器への影響をしない十分に小さな雑音レベルまで低減することができる。
【0033】
また、調光器25を操作することにより、調光器25からの調光信号が調光制御回路26を通じて各制御手段21a,21bに入力される。各制御手段21a,21bでは、入力された調光信号に基づいて、スイッチング素子Q1,Q2に出力するPWM信号のオンとオフとの比率を制御する。これにより、LED素子11a,11bを調光する。
【0034】
この場合、例えば、図4に示すように、第1の制御手段21aから出力するPWM信号のスイッチング周波数が高く、第2の制御手段21bから出力するPWM信号のスイッチング周波数が低く、スイッチング周波数が異なる場合でも、各PWM信号のオンとオフとの比率は同じとなる。すなわち、t1:t2=t3:t4の関係にある。これにより、スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング周波数に関係なく、LED素子11a,11bを調光制御できる。
【0035】
このように、本実施形態の電源装置10によれば、電源電圧変換部16をそれぞれLED素子11a,11bが接続されるとともにスイッチング素子Q1,Q2が設けられた複数の電源電圧変換回路16a,16bに分け、複数の電源電圧変換回路16a,16bのスイッチング素子Q1,Q2を、少なくとも2つ以上の異なるスイッチング周波数であるとともにそれぞれのスイッチング周波数を一定としてオンオフ動作させることにより、簡単な構成で、LED素子11a,11bの明るさを一定に保ちながら、雑音強度を低減することができる。
【0036】
さらに、複数の電源電圧変換回路16a,16bに分けても、フィルタ回路14および整流回路15は共通としているため、構成が複雑になるのを抑制できる。
【0037】
また、制御手段21a,21bによりスイッチング素子Q1,Q2をオンオフ動作させるスイッチング周波数を設定するスイッチング周波数設定手段22a,22bを備えるため、簡単な構成で、各電源電圧変換回路16a,16bのスイッチング素子Q1,Q2を、少なくとも2つ以上の異なるスイッチング周波数であるとともにそれぞれのスイッチング周波数を一定としてオンオフ動作させることができる。
【0038】
なお、本実施形態では、LED素子11a,11b、出力部13a,13b、電源電圧変換回路16a,16bを2組ずつに分けたが、より高出力化する照明装置の場合にはそれらを3組以上に分けてもよい。
【0039】
また、負荷としては、LED素子11a,11bに限らず、EL素子などの他の光源でもよい。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
10 電源装置
11a,11b 負荷としてのLED素子
13a,13b 出力部
15 整流回路
16 電源電圧変換部
16a,16b 電源電圧変換回路
21a,21b 制御手段
22a,22b スイッチング周波数設定手段
30 照明装置
31 器具本体
E 交流電源
Q1,Q2 スイッチング素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源を整流する整流回路と;
整流回路とそれぞれ負荷が接続される複数の出力部との間に設けられた複数の電源電圧変換回路を有し、複数の電源電圧変換回路には整流回路で整流された電源電圧を変換して複数の負荷に供給するスイッチング素子を備え、少なくとも2つ以上の異なるスイッチング周波数であるとともにそれぞれのスイッチング周波数を一定として複数の電源電圧変換回路のスイッチング素子がオンオフ動作する電源電圧変換部と;
を具備していることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
各電源電圧変換回路は、スイッチング素子をオンオフ動作させる制御手段、および制御手段によりスイッチング素子をオンオフ動作させるスイッチング周波数を設定するスイッチング周波数設定手段を有している
ことを特徴とする請求項1記載の電源装置。
【請求項3】
器具本体と;
請求項1または2記載の電源装置と;
電源装置の負荷としての光源と;
を具備していることを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−70488(P2013−70488A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206294(P2011−206294)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】