説明

電磁波シールドフィルム及びその製造方法

【課題】メッキ法のような環境負荷の大きな手段を用いることなく、簡便に作製しうる電磁波シールドフィルムの製造方法、及び、前記製造方法により作製された電磁波シールドフィルムを提供する。
【解決手段】透明支持体上に、金属微粒子を含有する幾何学パターンを形成し、形成された幾何学パターンを熱処理して、該幾何学パターンの表面抵抗率を10Ω/□以下にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイ表示装置に用いられる電磁波シールドフィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイ表示装置では、表示装置前面から漏洩する電磁波を遮蔽する目的で、表示装置前面に電磁波シールドフィルムを装着することが行われている。電磁波シールドフィルムは表示装置の表示品位を保つため、透明基材の表面に導電性を有する格子状のパターン(以降「メッシュ」という場合がある。)を形成したものが用いられる。
格子状のパターンとしては、電磁波遮蔽のために充分な導電性が必要であり、さらに表示品位のために線幅が小さいことが要求されている。
【0003】
このような格子状パターンを形成するため、導電性メッシュを透明基材に貼り付ける方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。導電性メッシュは、導電性繊維が格子状に編まれたものであり、導電性繊維としては、例えば、ポリエステル繊維などの表面に金属薄膜が形成されたものが使用されている。
しかし、このような導電性メッシュを使用した電磁波シールド板は、その製造工程において、編み物である導電性メッシュを使用する必要があるが、この導電性メッシュは伸び縮みしやすいため、取扱いが容易でないという問題があった。また、電磁波シールド板を前面保護板として使用する場合、その可視光の透過率を高くする必要があるが、そのためには、導電性メッシュの格子間隔を大きくするとともに繊維径を小さくしなければならず、したがって、より伸び縮みしやすく、より取扱いが困難な導電性メッシュを使用する必要があった。さらに、このような伸び縮みしやすい導電性メッシュは、透明基材に貼合する際に、格子間隔のずれや格子パターンの歪みを伴いやすいという問題もあった。
【0004】
かかる問題を解決するものとして、金属箔が格子状にエッチングされたエッチングシートを透明基材の表面に貼合する方法も知られている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、プラズマディスプレイや大型陰極線管(CRT)のような画面サイズの大きいディスプレイに適用される前面板を、エッチングシートを用いて製造するには、画面サイズに応じた大面積の金属箔を格子状にエッチングする必要があり、そのためには大型の成膜装置(スパッタ装置等)や大型のエッチング装置等が必要となることから、簡便に製造し得る方法とはいえなかった。
【0005】
また、導電性塗料を用いて印刷法により格子パターンを形成した後、メッキ法を用いて充分な導電性を付与する方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。この方法は充分な導電性があり、かなり線幅の小さい格子パターンを得られるものである。
【0006】
さらに、銀塩写真の技術を用いて微細な格子パターンを形成し、これにメッキ法を用いて充分な導電性を付与する方法が知られている(例えば、特許文献4参照)。この方法は非常に優れた導電性と線幅を得ることができる技術である。
【特許文献1】特開平10−241578号公報
【特許文献2】特開2000−137442号公報
【特許文献3】特開2004−87904号公報
【特許文献4】特開2004−221565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記メッキ法を用いる方法は、工程が煩雑であり、また、廃液が発生するため環境負荷が大きい。
【0008】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、メッキ法のような環境負荷の大きな手段を用いることなく簡便に作製しうる電磁波シールドフィルムの製造方法、及び、前記製造方法により作製された電磁波シールドフィルムを提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を達成するための具体的手段は以下のとおりである。
<1> 透明支持体上に、金属微粒子を含有する幾何学パターンを形成し、形成された幾何学パターンを熱処理して、該幾何学パターンの表面抵抗率を10Ω/□以下にすることにより作製された電磁波シールドフィルムである。
【0010】
<2> 前記金属微粒子の平均粒径が、5nm〜500nmであることを特徴とする<1>に記載の電磁波シールドフィルムである。
<3> 前記透明支持体が、ポリエステル支持体であることを特徴とする<1>又は<2>に記載の電磁波シールドフィルムである。
【0011】
<4> 透明支持体上に、金属微粒子を含有する幾何学パターンを形成する幾何学パターン形成工程と、形成された幾何学パターンを熱処理することにより、該幾何学パターンの表面抵抗率を10Ω/□以下にする熱処理工程とを有する電磁波シールドフィルムの製造方法である。
【0012】
<5> 前記幾何学パターン形成工程が、金属微粒子を含有する感光層を透明支持体上に形成する感光層形成工程と、形成された感光層を露光する露光工程と、露光後の感光層をアルカリ現像する現像工程とを有することを特徴とする<4>に記載の電磁波シールドフィルムの製造方法である。
<6> 前記感光層が、更に、バインダー(好ましくは、アルカリ可溶性ポリマー、モノマー、及びオリゴマーの少なくとも1種を含む)、並びに光重合開始剤及び/又は光重合開始剤系を含有することを特徴とする<5>に記載の電磁波シールドフィルムの製造方法である。
【0013】
<7> 前記幾何学パターン形成工程が、金属微粒子を含有するインクを用いて、透明支持体上に印刷する印刷工程を有することを特徴とする<4>に記載の電磁波シールドフィルムの製造方法である。
<8> 前記インクが、更に、バインダーを含有することを特徴とする<7>に記載の電磁波シールドフィルムの製造方法である。
【0014】
<9> 前記金属微粒子の平均粒径が、5nm〜500nmであることを特徴とする<4>〜<8>のいずれか1つに記載の電磁波シールドフィルムの製造方法である。
<10> 前記透明支持体が、ポリエステル支持体であることを特徴とする<4>〜<9>のいずれか1つに記載の電磁波シールドフィルムの製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、メッキ法のような環境負荷の大きな手段を用いることなく、簡便に作製しうる電磁波シールドフィルムの製造方法、及び、前記製造方法により作製された電磁波シールドフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の電磁波シールドフィルム及びその製造方法について詳細に説明する。
≪電磁波シールドフィルム及びその製造方法≫
本発明の電磁波シールドフィルムの製造方法は、透明支持体上に、金属微粒子を含有する幾何学パターンを形成する幾何学パターン形成工程と、形成された幾何学パターンを熱処理することにより、該幾何学パターンの表面抵抗率を10Ω/□以下にする熱処理工程とを有して構成される。
また、本発明の電磁波シールドフィルムは上記製造方法により作製される。
以下、幾何学パターンの表面抵抗率、幾何学パターン形成工程、熱処理工程等について詳細に説明する。
【0017】
<幾何学パターンの表面抵抗率>
本発明において表面抵抗率とは、物質の表面を流れる電流に対する抵抗値を、試料幅1cm、長さ1cmあたりに換算したものである。表面抵抗率の測定法等については、例えば「静電気ハンドブック、静電気学会編、オーム社発行、平成10年」に記載されている。
なお、本発明においては、試料の「長さ」の方向は、試料の面内において、表面抵抗率の測定に用いる2点を結ぶ直線に対し平行な方向を指し、試料の「幅」の方向は、試料の面内において、前記「長さ」の方向に対し直交する方向を指す。
【0018】
本発明における幾何学パターンの表面抵抗率は、例えば、幾何学パターンと同一の材質からなる表面抵抗率測定用のベタ試料を用いて測定できる。ここで、ベタ試料としては、長さ110cm、幅40cm、膜厚0.4μmに形成されたベタ膜(パターニングされていない薄膜)を用いる。
表面抵抗率の測定においては、まず、幅2mm*長さ1mmの長方形の底面形状を持つ銅製の電極を2本、100cmの間隔で500gの圧力でベタ試料表面に押し付ける。次に、2本の電極に100Vの電圧を印加した時の電流値を測定し、オーム則を用いて抵抗値を求める。得られた抵抗値に1/500を乗じることにより、本発明における表面抵抗率を得ることができる。
なお、上記の測定は、予め表面抵抗率測定用のベタ試料を、25℃、30%RHの雰囲気下で保管しておき、24時間保管した後、同雰囲気下で行うものとする。
【0019】
本発明において、後述の熱処理工程後の幾何学パターンの表面抵抗率としては、10Ω/□以下であることが必要であるが、10Ω/□以下であることが好ましく、さらには、10Ω/□以下であることがより好ましい。表面抵抗率が10Ω/□を超えると静電気を漏洩させたり、電磁波を遮蔽する能力が不十分になる場合がある。
また、表面抵抗率を10Ω/□以下とすることで、線幅の小さい幾何学パターン(例えば、後述の好ましい格子状パターン)を有する電磁波シールドフィルムの作製が可能となる。
【0020】
<幾何学パターン形成工程>
本発明の電磁波シールドフィルムの製造方法は、透明支持体上に、金属微粒子を含有する幾何学パターンを形成する幾何学パターン形成工程を有する。
前記幾何学パターンとしては、透明支持体上に形成される幾何学模様状のパターンであれば特に制限はないが、表示装置の透過率低下を抑え、表示品位を良好に保つ観点からは、例えば、線幅3〜100μm、格子間隔40〜1000μmの格子状パターンが好ましい。
幾何学パターンは、金属微粒子の少なくとも1種を含有するが、他の成分として、バインダーを含有することが好ましい。さらに、必要に応じて光重合開始剤及び/又は光重合開始剤系、界面活性剤、分散剤等を含んでもよい。なお、ここでいうバインダーとはポリマー、重合してポリマーとなるモノマー及び重合してポリマーとなるオリゴマーをいう。
【0021】
(金属微粒子)
本発明における「金属微粒子」とは、金属又は合金の微粒子である。金属及び合金については、それぞれ岩波理化学辞典第四版(1987年岩波書店発行)の327ページと417ページに記載されている。
本発明で好ましく用いることができる金属微粒子、合金微粒子としては白金、金、銀、パラジウム、銅、ニッケル、錫、チタン、白金/金合金、金/銀合金、銀/パラジウム合金、銀/錫合金、銀/銅合金などがある。これらのなかで、パラジウム、銀、銅、銀/パラジウム合金、銀/銅合金は特に好ましい。
本発明で用いる金属微粒子の形状には特に制限はなく、球形、不定形、棒状、板状のものなどを用いることができる。この中で不定形のものは熱処理の効果がでやすい点で好ましい。
本発明で用いる金属微粒子の粒径は5〜500nmの範囲が好ましいが、10〜150nmの範囲がより好ましい。金属微粒子の粒径が前記範囲内であれば、熱処理したときにより高い導電性を安定して得ることができる。
なお、形状が球形以外の場合は電子顕微鏡撮影した画像と同面積の円を考えてこの直径を粒子の粒径とする。
【0022】
本発明の幾何学パターンが、更に、バインダーを含む場合、幾何学パターンにおける金属微粒子/バインダーの比は、体積比で0.4/0.6から0.9/0.1の範囲が好ましく、0.5/0.5から0.75/0.25の範囲がより好ましい。体積比が前記範囲内であれば、より効果的に導電性を得ることができ、幾何学パターンの強度をより高く保つことができる。
ここでの金属微粒子の体積は、質量及び比重より算出する。
【0023】
(透明支持体)
本発明における透明支持体としては特に制限はなく、ポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネートなどの公知の支持体を用いることができる。
ここで、「透明」とは、300nmから600nmの波長の光透過率の最低値が80%以上であることをいう。
これらのうちポリエステルは好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレートなどを用いることができる。これらの中でコストや機械的強度の観点からポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
本発明のポリエステルは機械的強度を向上させるため、延伸を行ったものであることが好ましく、二軸延伸したものは特に好ましい。延伸倍率には特に制限はないが1.5〜7倍、より好ましくは2〜5倍程度が好ましい。例えば縦横方向にそれぞれ2〜5倍程度延伸した二軸延伸品は好ましい。延伸倍率が前記範囲内であれば、より高い機械的強度を得ることができ、厚みの均一性をより良好に保つことができる。
本発明の透明支持体の厚みは30〜400μm、より好ましくは35〜350μm程度が望ましい。透明支持体の厚みが前記範囲内であれば、寸法安定性をより良好に保つことができ、コストの点でも有利である。
【0024】
(下塗り層)
本発明においては、幾何学パターンとの接着性を良化させる観点から、透明支持体と幾何学パターンとの間に、下塗り層を設けることが好ましい。
下塗り層としてはSBR等のゴム系、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系などのポリマーをバインダーとするものが好ましい。
下塗り層には必要に応じてイソシアネート系、エポキシ系、オキサゾリン系、カルボジイミド系などの架橋剤、シリカ、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンなどの微粒子、ノニオン系、アニオン系、ベタイン系、カチオン系の界面活性剤、その他公知のすべり剤、帯電調整剤、染料などを添加してもよい。
下塗り層は、例えば、支持体上に塗布等して設けることができる。下塗り層を設ける方法には特に限定はなく、後述の感光層の形成方法と同様の方法を用いることができる。
【0025】
幾何学パターンの形成方法としては、特に制限はないが、金属微粒子を含有する感光層を用いてフォトリソ法により形成する方法や、金属微粒子を含有するインクを用いて印刷法により形成する方法等が挙げられる。上記のうち、フォトリソ法による幾何学パターンの形成方法は、微細なパターンを簡便に形成できる点で特に好ましい。
以下、フォトリソ法により幾何学パターンを形成する方法及び印刷法により幾何学パターンを形成する方法についてそれぞれ説明する。
【0026】
(フォトリソ法による幾何学パターンの形成)
フォトリソ法により幾何学パターンを形成する場合、幾何学パターン形成工程は、金属微粒子を含有する感光層を透明支持体上に形成する感光層形成工程と、形成された感光層を露光する露光工程と、露光後の感光層をアルカリ現像する現像工程とを有して構成される。
【0027】
〜感光層形成工程〜
感光層形成工程としては、特に限定はないが、例えば、金属微粒子の少なくとも1種を含有する感光性組成物を、公知の塗布方法により透明支持体上に塗布し、乾燥することによって感光層を形成することができる。本発明においては、液が吐出する部分にスリット状の穴を有するスリット状ノズルによって塗布することが好ましい。具体的には、特開2004−89851号公報、特開2004−17043号公報、特開2003−170098号公報、特開2003−164787号公報、特開2003−10767号公報、特開2002−79163号公報、特開2001−310147号公報等に記載のスリット状ノズル、及びスリットコータが好適に用いられる。
【0028】
感光層(又は感光性組成物)は、金属微粒子に加えて、更に、バインダー、並びに光重合開始剤及び/又は光重合開始剤系を含有することが好ましい。感光層(又は感光性組成物)に含有することができるバインダーとしては、アルカリ可溶性ポリマー、モノマー、及びオリゴマーの少なくとも1種を含むことがより好ましい。
以下、上記各成分について説明する。
【0029】
(1)アルカリ可溶性ポリマー
アルカリ可溶性ポリマーとしては、側鎖にカルボン酸基やカルボン酸塩基などの極性基を有するポリマーが好ましい。その例としては、特開昭59−44615号公報、特公昭54−34327号公報、特公昭58−12577号公報、特公昭54−25957号公報、特開昭59−53836号公報、及び特開昭59−71048号公報に記載されているようなメタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等を挙げることができる。また側鎖にカルボン酸基を有するセルロース誘導体も挙げることができる。この他に水酸基を有するポリマーに環状酸無水物を付加したものも好ましく使用することができる。また、特に好ましい例として、米国特許第4139391号明細書に記載のベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体や、ベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸と他のモノマーとの多元共重合体を挙げることができる。これらの極性基を有するポリマーは、単独で用いてもよく、或いは通常の膜形成性のポリマーと併用する組成物の状態で使用してもよい。
【0030】
(2)モノマー及び/又はオリゴマー
モノマー及び/又はオリゴマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有し、光の照射によって付加重合するモノマー及び/又はオリゴマーであることが好ましい。そのようなモノマー及び/又はオリゴマーとしては、分子中に少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上の化合物を挙げることができる。その例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの単官能アクリレートや単官能メタクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンやグリセリン等の多官能アルコールにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを付加した後(メタ)アクリレート化したもの等の多官能アクリレートや多官能メタクリレートを挙げることができる。
【0031】
更に、特公昭48−41708号公報、特公昭50−6034号公報及び特開昭51−37193号公報に記載されているウレタンアクリレート類;特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報及び特公昭52−30490号公報に記載されているポリエステルアクリレート類;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレー卜やメタクリレートを挙げることができる。
これらの中で、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジぺンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジぺンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合性化合物B」も好適なものとして挙げることができる。
【0032】
これらのモノマー及び/又はオリゴマーは、単独でも、二種類以上を混合して用いてもよく、感光層(又は、感光性組成物)の全固形分に対する含有量は、5〜50質量%が一般的であり、10〜40質量%が好ましい。また、該モノマー及び/又はオリゴマーと、前記アルカリ可溶性ポリマーとの合計含有量は、感光層(又は、感光性組成物)の全固形分に対して、30〜90質量%であることが好ましく、40〜80質量%がより好ましく、50〜70質量%が特に好ましい。尚、(モノマー及び/又はオリゴマー)/(アルカリ可溶性ポリマー)の比は、0.5〜1.2が好ましく、0.55〜1.1がより好ましく、0.6〜1.0が特に好ましい。
【0033】
(3)光重合開始剤及び/又は光重合開始剤系
本発明における光重合開始剤及び/又は光重合開始剤系としては、米国特許第2367660号明細書に開示されているビシナルポリケタルドニル化合物、米国特許第2448828号明細書に記載されているアシロインエーテル化合物、米国特許第2722512号明細書に記載のα−炭化水素で置換された芳香族アシロイン化合物、米国特許第3046127号明細書及び同第2951758号明細書に記載の多核キノン化合物、米国特許第3549367号明細書に記載のトリアリールイミダゾール二量体とp−アミノケトンの組み合わせ、特公昭51−48516号公報に記載のベンゾチアゾール化合物とトリハロメチル−s−トリアジン化合物、米国特許第4239850号明細書に記載されているトリハロメチル−トリアジン化合物、米国特許第4212976号明細書に記載されているトリハロメチルオキサジアゾール化合物等を挙げることができる。特に、トリハロメチル−s−トリアジン、トリハロメチルオキサジアゾール及びトリアリールイミダゾール二量体が好ましい。
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合開始剤C」も好適なものとして挙げることができる。
これらの光重合開始剤及び/又は光重合開始剤系は、単独でも、2種類以上を混合して用いてもよいが、特に2種類以上を用いることが好ましい。少なくとも2種の光重合開始剤を用いると、より効果的に重合を促進できる。
また、感光層(又は感光性組成物)の全固形分に対する光重合開始剤及び/又は光重合開始剤系の含有量は、0.5〜20質量%が一般的であり、1〜15質量%が好ましい。
【0034】
尚、該光重合開始剤としては前記のものが用いられるが、これらの中で、露光感度が高い例としては、ジアゾール系光重合開始剤と、トリアジン系光重合開始剤の組み合わせが挙げられ、中でも、2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルメチル)−1,3,4−オキサジアゾールと、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4−(N,N−ジエトキシカルボニルメチル)−3−ブロモフェニル]−s−トリアジンの組み合わせが最もよい。これらの光重合開始剤の比率は、ジアゾール系/トリアジン系の質量比率で、好ましくは95/5〜20/80、より好ましくは90/10〜30/70、最も好ましくは80/20〜60/40である。
これらの光重合開始剤は特開平1−152449号公報、特開平1−254918号公報、特開平2−153353号公報に記載されている。
また、上記光重合開始剤に、クマリン系化合物を混合することによっても同様の効果が得られる。クマリン系化合物としては、7−[2−[4−(3−ヒドロキシメチルピペリジノ)−6−ジエチルアミノ]トリアジニルアミノ]−3−フェニルクマリンが最もよい。これらの光重合開始剤とクマリン系化合物の比率は、光重合開始剤/クマリン系化合物の質量比率で、好ましくは20/80〜80/20、より好ましくは30/70〜70/30、最も好ましくは40/60〜60/40である。
【0035】
(4)その他の添加剤
上記感光層は、更に、公知の分散剤や、特開2006−23696号公報に記載の他の添加剤(溶媒、界面活性剤、熱重合防止剤、紫外線吸収剤、等)を含有してもよい。
【0036】
〜露光工程及び現像工程〜
露光工程は、前記感光層形成工程で透明支持体上に形成された感光層を露光する工程である。
具体的には、透明支持体上に形成された感光層の上方に所定のマスクを配置し、該マスクを介してマスク上方から感光層を露光する。露光の光源としては、感光層を硬化しうる波長域の光(例えば、365nm、405nmなど)を照射できるものであれば適宜選定して用いることができる。具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。露光量としては、通常5〜5000mJ/cm程度であり、好ましくは10〜1000mJ/cm程度である。
【0037】
現像工程は、前記露光工程において露光された感光層を、(例えば、現像液を用いて)アルカリ現像する工程である。
前記現像液としては、透明支持体の溶解性が低い液であれば特に制約はなく用いることができ、例えば、特開平5−72724号公報に記載のものなど、公知の現像液を使用することができる。尚、現像液は感光層が溶解型の現像挙動をするものが好ましく、例えば、pKa=7〜13の化合物を0.05〜5mol/Lの濃度で含むものが好ましいが、更に水と混和性を有する有機溶剤を少量添加してもよい。
水と混和性を有する有機溶剤としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ベンジルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、乳酸エチル、乳酸メチル、ε−カプロラクタム、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。該有機溶剤の濃度は0.1質量%〜30質量%が好ましい。
また、上記現像液には、更に公知の界面活性剤を添加することができる。界面活性剤の濃度は0.01質量%〜10質量%が好ましい。
【0038】
現像の方式としては、パドル現像、シャワー現像、シャワー&スピン現像、ディプ現像等のいずれでもよい。
ここで、上記シャワー現像について説明すると、露光後の感光層に現像液をシャワーにより吹き付けることにより、未硬化部分を除去することができる。また、現像の後に、洗浄剤などをシャワーにより吹き付け、ブラシなどで擦りながら、現像残渣を除去することが好ましい。
現像液の液温度は20℃〜40℃が好ましく、また、現像液のpHは8〜13が好ましい。
【0039】
前記現像工程の後であって、熱処理工程の前には、重合度をより高める観点等から、ポスト露光を行ってもよい。
ポスト露光は、透明支持体の面のうち、幾何学パターンが形成された面のさらに上方から、超高圧水銀灯等を用いて全面露光することにより行うことができる。また、透明支持体の両面から露光してもよい。
この際のポスト露光量としては、100〜800mJ/cmが好ましい。
【0040】
(印刷法による幾何学パターンの形成)
印刷法により幾何学パターンを形成する場合、幾何学パターン形成工程は、金属微粒子(及び、好ましくはバインダー)を含有するインクを用いて、透明支持体上に印刷する印刷工程を有して構成される。
印刷の方法としては、特に限定はなく、公知の印刷方法を用いることができるが、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などが好適である。
【0041】
インク中に、含有することができるバインダーとしては、例えば、前記「〜感光層形成工程〜」で説明したポリマーを好適に用いることができる。
また、インク中には、更に、公知の分散剤や、特開2006−23696号公報に記載の他の添加剤(溶媒、界面活性剤、熱重合防止剤、紫外線吸収剤、等)を含有してもよい。
【0042】
<熱処理工程>
本発明においては、幾何学パターンに導電性を付与し、表面抵抗率を10Ω/□以下とするために、前述の幾何学パターン形成工程によって透明支持体上に形成された幾何学パターンを熱処理する熱処理工程が必要である。
【0043】
本発明における熱処理は、赤外線ヒーターや加熱ロールによる方法、加熱された雰囲気にさらす方法などの公知の方法を用いることができる。
熱処理の条件は、支持体の材質や金属微粒子の種類等によって異なるが、150から450℃、より好ましくは180℃から350℃の範囲で、10秒から20分間、より好ましくは20秒から5分間行うことが好ましい。熱処理の条件が前記範囲内であれば、より効果的に導電性を発現でき、熱による支持体の損傷をより抑制することができ、電磁波シールドフィルムの作製時間をより短縮することができる。
【0044】
また、本発明では少なくとも、金属微粒子を含むパターンが熱処理されればよいので、透明支持体の熱損傷を防止するため、バック面(透明支持体の面のうち、幾何学パターンが形成された面の反対側の面)から透明支持体を冷却しながら幾何学パターンの熱処理を行ってもよい。
【0045】
上記した条件のうち、より効果的に透明支持体の熱損傷を抑える観点からは、
透明支持体として、厚さ35〜350μmのポリエステル支持体、特にポリエチレンテレフタレート支持体を用い、熱処理工程の処理として、0〜40℃に冷却された冷却ロールに透明支持体のバック面(透明支持体の面のうち、幾何学パターンが形成された面の反対側の面)が接するように密着させた状態で、180〜350℃の恒温槽に入れて10秒間〜20分間熱処理を行う態様が好ましい。
【0046】
<その他>
本発明の電磁波シールドフィルム及びその製造方法においては、本発明による効果をより効果的に奏する観点から、上述した条件、材料を適宜選択して用いることができる。
【0047】
例えば、より効果的に、透明支持体の熱損傷を抑え、幾何学パターンの強度を保持し、表面抵抗率を低下させる観点からは、透明支持体として厚さ35〜350μmのポリエステル支持体とくにポリエチレンテレフタレート支持体を用い、金属微粒子として粒径10〜150nmの銀粒子を用い、バインダーとしてアルカリ可溶性アクリルポリマーを用い、金属微粒子/バインダーの体積比を0.5/0.5〜0.75/0.25として、前記透明支持体上に幾何学パターンを形成し、熱処理工程の処理として、0〜40℃に冷却された冷却ロールに透明支持体のバック面(透明支持体の面のうち、幾何学パターンが形成された面の反対側の面)が接するように密着させた状態で、180〜350℃の恒温槽に入れて10秒間〜20分間熱処理を行う態様が特に好ましい。
【0048】
また、幾何学パターン上には、保護層を設けてもよい。
保護層としては、例えばポリビニルアルコールをバインダーとする層を用いることができる。
【0049】
本発明の電磁波シールドフィルムは、種々の大きさのプラズマディスプレイ表示装置に用いることができる。
中でも、32インチ以上の大型の表示装置の用途に好適であり、さらには、40インチ以上のプラズマディスプレイの用途に、特に好適である。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「%」は質量基準である。
【0051】
〔実施例1〕
厚さ100μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート支持体の片面に、下記組成からなる下塗り層用塗布液を4.4cc/mのウェット塗布で塗布し、180℃で5分間乾燥して下塗り層を形成した。
【0052】
<下塗り層用塗布液の組成>
・ポリエステル樹脂バインダー(大日本インキ化学工業(株)製、ファインテックス ES−650、固形分29%) ・・・ 40.5質量部
・界面活性剤A(三洋化成工業(株)、サンデットBL、固形分10%、アニオン性) ・・・ 9.0質量部
・界面活性剤B(三洋化成工業(株)、ナロアクティー HN−100、固形分5%、ノニオン性) ・・・ 15.5質量部
・シリカ微粒子分散液(日本アエロジル(株)製、OX−50の水分散物、固形分10%) ・・・ 2.3質量部
・コロイダルシリカ分散液(日産化学(株)製、スノーテックス−XL、固形分10%) ・・・ 3.0質量部
・すべり剤(中京油脂(株)製、カルナバワックス分散物セロゾール524、固形分3%) ・・・ 7.6質量部
・蒸留水 ・・・922.1質量部
【0053】
前記で形成された下塗り層上に、下記組成からなる感光層用塗布液を、乾燥膜厚が0.4μmとなるように塗布した後、100℃で5分間乾燥させて感光層を形成し、透明支持体上に下塗り層と感光層とをこの順に有する感光材料を得た。
【0054】
<感光層用塗布液の組成>
・モノマー(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート) ・・・ 15質量部
・ポリマー(スチレン/メタクリル酸=70/30(モル比)、重量平均分子量1.8万) ・・・ 15質量部
・銀ナノ粒子(平均粒径15nmの不定形粒子)のアセトン溶液(固形分60質量%)
・・・1225質量部
・開始剤(2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔4−(N,N−ジエトキシカルボニルメチル)−3−ブロモフェニル〕−s−トリアジン) ・・・0.45質量部
・フッ素系界面活性剤(大日本インキ化学工業(株)製、メガファックF780F、メチルエチルケトン30質量%溶液) ・・・ 1.0質量部
【0055】
このようにして得られた感光材料の感光層を、マスクを介して超高圧水銀灯で500mJ/cmの露光量で露光した。次いで、アルカリ現像液(富士写真フイルム(株)製CD−1)を用いて35℃で20秒間現像して、線幅7μm、格子間隔50μmの格子状のパターン(幾何学パターン)を形成した。
この後、幾何学パターンが形成された試料を、25℃に冷却された冷却ロールに試料のバック面(格子状パターンが形成された面の反対側の面)が接するように密着させた状態で、280℃の恒温槽に入れて5分間熱処理を行い、電磁波シールドフィルムを得た。
【0056】
別途、マスクを介さずに露光(全面露光)する以外は、上記電磁波シールドフィルムの作製方法と同様にして、表面抵抗率測定用のベタ試料を作製して、下記の方法で表面抵抗率を測定した。ベタ試料中のベタ膜は、長さ110cm、幅40cm、膜厚0.4μmであった。
まず、幅2mm*長さ1mmの長方形の底面形状を持つ銅製の電極を2本、100cmの間隔で500gの圧力で試料表面に押し付けた。次に、2本の電極に100Vの電圧を印加した時の電流値を測定し、オーム則を用いて抵抗値を求めた。
ただし、測定雰囲気は25℃、30%RHであり、ベタ試料としては、測定前に24時間この温湿度で保管しておいたものを用いた。このようにして得られた値を1/500して表面抵抗率とした。
以上により求めた表面抵抗率は7.1Ω/□であった。
【0057】
〔実施例2〕
実施例1において、感光層用塗布液に含有させた「銀ナノ粒子(平均粒径15nmの不定形粒子)のアセトン溶液(固形分60質量%)1225質量部」に代えて、「銀ナノ粒子(平均粒径13nmの不定形粒子)のアセトン溶液(固形分54質量%)1558質量部」を用いた以外は実施例1と同様にして、電磁波シールドフィルムを作製した。得られた電磁波シールドフィルムの表面抵抗率を、実施例1と同様の方法によって測定したところ、9.8Ω/□であった。
【0058】
〔比較例1〕
実施例1において、格子状のパターン形成後の熱処理を行わなかった以外は実施例1と同様にして、電磁波シールドフィルムを作製した。得られた電磁波シールドフィルムの表面抵抗率を、実施例1と同様の方法によって測定を試みたところ、測定装置の測定限界である(1014Ω/□)を超えており、測定できなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体上に、金属微粒子を含有する幾何学パターンを形成し、形成された幾何学パターンを熱処理して、該幾何学パターンの表面抵抗率を10Ω/□以下にすることにより作製された電磁波シールドフィルム。
【請求項2】
前記金属微粒子の平均粒径が、5nm〜500nmであることを特徴とする請求項1に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項3】
前記透明支持体が、ポリエステル支持体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項4】
透明支持体上に、金属微粒子を含有する幾何学パターンを形成する幾何学パターン形成工程と、形成された幾何学パターンを熱処理することにより、該幾何学パターンの表面抵抗率を10Ω/□以下にする熱処理工程とを有する電磁波シールドフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記幾何学パターン形成工程が、金属微粒子を含有する感光層を透明支持体上に形成する感光層形成工程と、形成された感光層を露光する露光工程と、露光後の感光層をアルカリ現像する現像工程とを有することを特徴とする請求項4に記載の電磁波シールドフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記感光層が、更に、バインダー並びに光重合開始剤及び/又は光重合開始剤系を含有することを特徴とする請求項5に記載の電磁波シールドフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記幾何学パターン形成工程が、金属微粒子を含有するインクを用いて、透明支持体上に印刷する印刷工程を有することを特徴とする請求項4に記載の電磁波シールドフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記インクが、更に、バインダーを含有することを特徴とする請求項7に記載の電磁波シールドフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記金属微粒子の平均粒径が、5nm〜500nmであることを特徴とする請求項4〜8のいずれか1項に記載の電磁波シールドフィルムの製造方法。
【請求項10】
前記透明支持体が、ポリエステル支持体であることを特徴とする請求項4〜9のいずれか1項に記載の電磁波シールドフィルムの製造方法。

【公開番号】特開2008−66574(P2008−66574A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−244132(P2006−244132)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】