露光方法および露光マスク
【課題】回折光の存在によって、露光領域の端面が垂直になるように露光対象物を露光することができないという課題がある。
【解決手段】液晶材料15を露光できる光量を有する傾斜角度θの回折光を、集光レンズ80によって開口部8aに入射する露光光と同じ垂直方向の光に変換する。もとより、傾斜角度がθ以下の回折光は、液晶材料15に対する照射方向が集光レンズ80の中心方向に向くことになる。この結果、液晶材料15は、図示するように垂直方向に変換された回折光が照射されることによって、露光領域の端面は斜めにならず、垂直方向となるように露光される。
【解決手段】液晶材料15を露光できる光量を有する傾斜角度θの回折光を、集光レンズ80によって開口部8aに入射する露光光と同じ垂直方向の光に変換する。もとより、傾斜角度がθ以下の回折光は、液晶材料15に対する照射方向が集光レンズ80の中心方向に向くことになる。この結果、液晶材料15は、図示するように垂直方向に変換された回折光が照射されることによって、露光領域の端面は斜めにならず、垂直方向となるように露光される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光方法および露光マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
所定の波長(例えばi線やg線など)を有する平行光を用いて、レジストなどの露光対象物を露光マスクを介して露光し、所定の形状をパターニングする露光方法が、従来から多く用いられている。例えば、特許文献1では、平行光線を遮光マスク(露光マスク)を介して光硬化性樹脂に照射してマイクロレンズを形成する方法が提案されている。特許文献1に開示された技術は、光透過窓(開口部)を通る光の回折を利用して、露光光の光量を変更することによって、マイクロレンズを形成しようとするものである。
【0003】
【特許文献1】特開平6−130205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているように、光透過窓つまり露光マスクにおける開口部を通る光は、露光対象物を照射するまでの間に回折が生ずる。そして回折した光(回折光)は、所謂ホイヘンスの原理として周知なように、開口部の端部において、その開口部の端部を中心とした円状であって、その開口部の外側に向かって広がりながら進む。この結果、露光光が露光対象物を照射する領域は、露光マスクと露光対象物との距離が遠いほど露光領域が広がり、開口部の輪郭形状よりも広がった大きな領域形状になることがある。
【0005】
そこで、露光マスクに形成した開口部の形状で露光対象物をパターニングする場合は、露光対象物と露光マスクを密着あるいは接近させて露光することによって、露光マスクに形成した開口部の形状が広がらないように抑制する。
【0006】
しかしながら、露光マスクを露光対象物に密着させた場合においても、開口部の端部において回折光は発生する。そして、発生した回折光は、露光光の照射方向に対するその傾き方向が所定の範囲内において露光対象物を露光する光量を有する。このため、露光対象物は、露光領域の広がりは少ないものの、露光された領域の端部は、開口部で生ずる回折光によって露光光の照射方向に対して斜めに露光されてしまうことになる。
【0007】
ところで、露光マスクを用いて露光光を照射して露光対象物を露光する露光方法において、露光光の照射方向と同じ方向に露光領域を形成したい場合が存在する。言い換えれば、露光領域の端面を斜めではなく垂直にしたい場合である(後述する)。このような場合、上述したように回折光の存在によって、露光領域の端面が垂直になるように露光対象物を露光することができないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]露光光が透過する開口部を備えた露光マスクを用いて、露光対象物を前記露光光で露光する露光方法であって、前記開口部と前記露光対象物との間に、前記開口部の端部で生ずる前記露光光の回折光を、前記開口部の内側に向けて屈折させる集光レンズを配置して、前記露光対象物を露光することを特徴とする。
【0010】
この露光方法によれば、開口部を透過し回折によって広がった光を、開口部の内側に向けて屈折させることによって、もとの露光光と同じ方向の光に変換することができる。この結果、露光対象物をその端面が垂直となる露光領域を形成することができる。
【0011】
[適用例2]上記露光方法であって、前記露光マスクには複数の前記開口部を備え、前記集光レンズは複数の前記開口部毎に配置されていることを特徴とする。
【0012】
この露光方法によれば、露光マスクに形成された総ての開口部において、集光レンズを配置するので、形成される露光領域は、その端面が総て垂直方向になる。
【0013】
[適用例3]上記露光方法であって、前記集光レンズは、一方のレンズ面が平面で形成された平凸レンズ形状を有していることを特徴とする。
【0014】
この露光方法によれば、集光レンズの一方の面を平面とするので、露光マスクに集光レンズを一体化することが容易となる。また、一方の面が平面であことから、集光レンズの形成が容易となる。
【0015】
[適用例4]上記露光方法であって、前記集光レンズは、前記平面が前記露光対象物に対向するように配置されていることを特徴とする。
【0016】
この露光方法によれば、集光レンズの平面と露光対象物とが対向するので、集光レンズと露光対象物との間を一定間隔にすることができる。この結果、集光レンズと露光対象物との間における露光光の光路長が同じになるので、露光対象物は露光領域において均一に露光されることが期待できる。
【0017】
[適用例5]上記露光方法であって、前記集光レンズによって集光された前記露光光が、当該集光レンズの光軸方向における投影領域内で前記露光対象物を照射するように露光することを特徴とする。
【0018】
この露光方法によれば、集光レンズによって集光された露光光が、集光レンズの光軸方向における投影領域内を照射するので、形成される露光領域は、その端面が垂直方向になる。
【0019】
[適用例6]上記露光方法に用いる露光マスクであって、前記露光光が透過する基板上に設けられた遮光膜によって前記開口部が形成され、前記集光レンズが、連結部材によって当該基板と一体化されていることを特徴とする。
【0020】
この露光マスクによれば、開口部と集光レンズが一体化されるので、露光処理において集光レンズの開口部に対する配置位置精度が向上し、回折光を集光レンズによってより確実に平行光へ変換することができる。
【0021】
[適用例7]上記露光マスクであって、前記集光レンズは、前記露光光が透過する略平板状の第1の材料に当該第1の材料の屈折率よりも高い屈折率を有する第2の材料が埋設されて前記集光レンズが形成されていることを特徴とする。
【0022】
この露光マスクによれば、集光レンズを平板状で形成することができる。従って、開口部が形成された基板との一体化が容易となる。
【0023】
[適用例8]上記露光方法に用いる露光マスクであって、前記露光光が透過する基板の一方の面に遮光膜が設けられて前記開口部が形成され、前記基板の他方の面に当該基板の材料の屈折率よりも高い屈折率を有する材料が埋設されて前記集光レンズが形成されていることを特徴とする。
【0024】
この露光マスクによれば、開口部と集光レンズとを一枚の基板で形成するので、開口部と集光レンズの形成後の機械的な位置ずれが生じない。従って、露光マスクの取り扱いが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、以降の説明において用いる図面は、説明のために誇張して図示している場合もあり、必ずしも実際の大きさや長さを示すものでないことは言うまでもない。
【0026】
<液晶表示装置>
本発明を適用した一実施例として、露光対象物としての光重合性液晶材料を露光して形成した位相差層を有する液晶表示装置100について説明する。図1は、本実施例の液晶表示装置100の表示領域の一部を示す平面図である。図2は、液晶表示装置100の概略構成を示す断面図であり、図1のA−A線に沿った断面図である。本実施例の液晶表示装置100は、FFS(Fringe-Field Switching)方式の半透過反射型の液晶装置である。
【0027】
図1に示すように、液晶表示装置100の表示領域には、赤、緑、青の表示に寄与する画素20R,20G,20B(以下では、対応する色について区別しない場合には単に画素20とも呼ぶ)が複数配置されている。画素20は、液晶表示装置100の表示の最小単位であり、隣り合う画素20同士の間に間隔が空くように、X軸およびY軸に沿ってマトリクス状に配置されている。なお、X軸は画素20の行方向を示し、Y軸は画素20の列方向を示している。
【0028】
それぞれの画素20は、反射表示に寄与する反射表示領域Rと、透過表示に寄与する透過表示領域Tと、を有している。X軸に沿った方向には反射表示領域R同士または透過表示領域T同士が対向するように配列され、Y軸に沿った方向には反射表示領域Rと透過表示領域Tとが互いに対向するように配列されている。
【0029】
次に、図2に示すように、液晶表示装置100は、素子基板30と、対向基板10と、液晶層40と、を備えている。液晶層40は、対向基板10と素子基板30との間に位置している。
【0030】
対向基板10は、第1の基板11を基体とし、液晶層40側の面上に、順にカラーフィルタ層12と配向膜14と位相差層16とが設けられている。第1の基板11は、透明な材料からなり、例えばガラスからなる。カラーフィルタ層12は、赤、緑、青の3色の色要素を含んでいる。配向膜14には、位相差層16を形成する重合性液晶材料の配向を規制するための処理、例えばラビング処理が施されている。
【0031】
位相差層16は、それぞれの画素20の反射表示領域Rと、複数の画素20の間のうち反射表示領域R同士が隣り合う領域と、に配置されている(図1参照)。位相差層16は、複屈折性を有しており、光硬化性材料または熱硬化性材料の分子が配向膜14により配向された状態で、後述する露光方法により硬化されて形成されている。露光対象物としての位相差層16の材料は、例えば光反応性のアクリル基を分子末端に有する所謂光重合性液晶材料である。位相差層16は入射される可視光の波長に対し所定の位相差、例えば1/2波長分の位相差を付与する。
【0032】
対向基板10の液晶層40側には、位相差層16および配向膜14を覆うように配向膜18が設けられている。対向基板10の液晶層40とは反対側、すなわち観察側には、偏光板46が配置されている。
【0033】
素子基板30は、第2の基板31を基体とし、液晶層40側に、回路素子層33と、反射層34と、共通電極35と、絶縁層36と、画素電極37と、を備えている。第2の基板31は、透明な材料からなり、例えばガラスからなる。回路素子層33は、図示しないが、液晶層40を駆動するための素子、各種配線、接続部、層間絶縁層等を含んで構成されている。反射表示領域Rに位置する回路素子層33の上面には、図示しないが、外光を散乱させるための凹凸形状が形成されている。反射層34は、回路素子層33上のうち反射表示領域Rに設けられている。
【0034】
共通電極35は、反射表示領域Rと透過表示領域Tとに亘って形成されており、反射表示領域Rにおいては反射層34上に形成され、透過表示領域Tにおいては回路素子層33上に形成されている。共通電極35は、例えばITO(Indium Tin Oxide)からなる。共通電極35上には、その上面を覆うように絶縁層36が形成されている。さらに、絶縁層36上には、複数のスリット状の開口部37aを有する画素電極37が形成されている。画素電極37は、例えばITOからなる。
【0035】
また図2に示すように、素子基板30の液晶層40側には、絶縁層36と画素電極37とを覆うように配向膜38が設けられている。素子基板30の液晶層40とは反対側には、偏光板48が配置されている。そして、偏光板48に対向する位置には、バックライト49が配置されている。
【0036】
さて、本実施例の液晶表示装置100において、液晶層40は、反射表示領域Rと透過表示領域Tとで層厚が異なっている。より詳細には、液晶層40の反射表示領域Rにおける層厚は、液晶層40の透過表示領域Tにおける層厚のほぼ1/2となっている。つまり、位相差層16は液晶層40の層厚を調整する調整層として機能する。そして、液晶層40は、入射される可視光の波長に対して、反射表示領域Rにおいて1/4波長分の位相差を付与し、透過表示領域Tにおいて1/2波長分の位相差を付与する。
【0037】
このような半透過反射型の液晶表示装置100では、光学設計上、反射表示領域Rにおいて暗表示を行う際に反射層34に到達する外光がすべての可視光の波長域でほぼ円偏光である必要がある。反射層34に到達した外光が楕円偏光であると暗表示の際に光漏れが生じ、高コントラストな反射表示を得ることが困難になるからである。
【0038】
本実施例では、反射表示領域Rに液晶層40の層厚調整層としても機能する位相差層16を配置することで、液晶層40は、入射される可視光の波長に対して、反射表示領域Rにおいて1/4波長分の位相差を付与し、透過表示領域Tにおいて1/2波長分の位相差を付与する。これにより、偏光板48と位相差層16と反射表示領域R内の液晶層40とで広帯域円偏光を作り出せるようにして、反射層34に到達する外光を可視光の波長域で円偏光に近づけているのである。
【0039】
従って、1/2波長分の位相差を付与する位相差層16は、反射表示領域R内において一様に形成される必要がある。つまり、位相差層16がその端面において第1の基板11に対して略垂直に形成される必要がある。そうでない場合、例えば、図2において太い破線で示した端面Maのように、位相差層16が斜めに形成され、透過表示領域Tに位相差層16が侵入して存在する場合は、透過表示領域Tに入射する可視光の波長に対して、液晶層40による1/2波長分の位相差以外の位相差が付与されてしまう。あるいは、同じく太い破線で示した端面Mbのように、位相差層16が斜めに形成され反射表示領域Rに位相差層16の斜めの端面Mbが侵入して存在する場合は、反射表示領域Rのうち、この領域部分に入射する可視光の波長に対して、1/2波長分の位相差を正しく付与することが出来ないことになってしまう。
【0040】
また、形成される斜めの端面Maあるいは端面Mbによって、反射表示領域Rあるいは透過表示領域Tにおける液晶層40の厚さが一定にならず、厚さにムラが生じてしまう。この結果、各画素は反射表示領域Rと透過表示領域Tとが互いに対向する領域において色づきや色ムラのない高品質な表示を行えなくなってしまうからである。
【0041】
<露光方法>
それでは、位相差層16をその端面において第1の基板11に対して略垂直な方向(以降、単に「垂直方向」)に形成する露光方法について、図3〜図7を参照して説明する。図3は、対向基板10のマザー基板を示す図である。図4は、対向基板10に形成する位相差層16の製造に用いる露光マスクを説明する図である。図5は、従来の露光方法における露光の様子を説明する説明図、図6は、本実施例における露光方法を説明する説明図である。図7は、本実施例における露光方法において用いる露光マスクの構成を説明する説明図である。
【0042】
まず図3に示したように、対向基板10の製造は、マザー基板10aの状態で行われる。図3は、マザー基板10aに含まれる対向基板10のそれぞれにおいて、位相差層16が形成される領域(図中グレー色部分)を示している。位相差層16が形成される領域は、図1に示したように、反射表示領域Rと、画素20の間のうち反射表示領域R同士が隣り合う領域と、で構成される。
【0043】
図4は、位相差層16を形成するために用いる露光マスク8を示す。露光マスク8は、開口部8aと遮光部8bとを有している。開口部8aは、遮光部8bによって区画形成され、図3に示すマザー基板10a上の位相差層16が形成される領域に対応して、X軸方向に長手方向を有するスリット状に配置されている。本実施例では、露光マスク8は、ガラス板に、クロムなどの遮光性を有する金属膜を蒸着して形成した遮光膜を遮光部8bとして備えている。
【0044】
次に、露光マスク8を通して紫外光を照射することにより、開口部8aを通過(透過)した紫外光で、光重合性液晶材料のうち反射表示領域Rと画素20の間の反射表示領域R同士が隣り合う領域とに位置する部分のみを露光する。これにより、露光された部分の液晶分子のアクリル基が光重合により硬化されて、位相差層16が形成される。なお、光重合性液晶材料のうち位相差層16が形成された領域以外の部分は硬化されず、露光処理後有機溶剤等で除去される。
【0045】
さて、本実施例の露光方法は、露光マスクの開口部8aに対応して集光レンズを配置することによって、前述するように、位相差層16の端部において、その端面が第1の基板11に対して略垂直になるように形成するものである。そこで、以降の説明においては、まず図5を用いて集光レンズを配置しない状態における露光の様子について説明し、次に、図6を用いて集光レンズを配置した状態における露光の様子説明する。
【0046】
図5は、集光レンズを配置しない状態において、露光マスク8に形成された開口部8aによって、光重合性を有する液晶材料15を、紫外光を露光光として用いて露光する状態を、X軸方向から見た状態で模式的に示した説明図である。なお、液晶材料15は、光反応性のアクリル基を分子末端に有する液晶と反応開始剤を含む有機溶媒とからなる光重合性液晶材料であり、例えばスピンコート法を用いて配向膜14上に塗布して配置される。
【0047】
図5に示すように、垂直方向であって略平行光束を有する露光光(図中矢印)によって、第1の基板11の配向膜14上に配置された液晶材料15を照射して露光する。このとき、所謂ホイヘンスの原理として周知なように、遮光部8bで区画された開口部8aを通過する露光光のうち、遮光部8bと隣接する開口部8aの端部において、光の回折現象によって回折する露光光(以降、これを「回折光」と称す)が生ずる。
【0048】
そして、生じた回折光のうち、回折角度が所定の範囲の回折光が、液晶材料15を照射して露光する。これは、開口部8aを垂直方向に通過する露光光に近い回折光ほど、露光光に近い光量を有しており、回折角度が所定の範囲を越える回折光は、液晶材料15を露光できる光量を有しないと考えられるからである。
【0049】
本実施例では、図示するように、開口部8aの端部において、垂直方向に対して角度θ以内の方向を有する回折光が、液晶材料15を実際に露光するものとする。もとより、角度θは、露光光の強度や開口部の大きさ、あるいは液晶材料などに依存することが想定されるため、予め実験によって実際の露光状態を確かめることによって、角度θの大きさを調べておくことが好ましい。
【0050】
従って、液晶材料15は、開口部8aを垂直方向に透過する露光光によって露光されて形成される本来の位相差層16に加えて、開口部8aにおいて生ずる回折光によって、垂直方向に対して角度θの斜めの端面を有する位相差層16a(図5、網掛け部)が形成されることになる。この結果、反射表示領域Rにおいて本来形成すべき位相差層のY軸方向の長さ(つまり開口部8aのY軸方向の長さ)D1は、図示するように長さD2に広がるとともに、位相差層の端面が第1の基板11に対して垂直方向ではなく斜めに形成されてしまう。
【0051】
そこで、本実施例の露光方法では、露光マスクの開口部8aに対応して集光レンズを配置することによって、位相差層16の端部において、その端面が第1の基板11に対して略垂直になるように形成する。これを図6を用いて説明する。
【0052】
図示するように、本実施例の露光方法は、遮光部8bで区画されて形成された開口部8aに対応して、開口部8aを通過する露光光を集光する集光レンズ80を配置し、集光レンズ80を通過する露光光を用いて液晶材料15を露光する。
【0053】
集光レンズ80は、光透過性を有する材料から形成され、液晶材料15と対向する側の面が平面であって、開口部8aと対向する側に凸面の形状を有している。従って、本実施例では、開口部8aはX軸方向に長手方向を有するスリット形状であることから、集光レンズ80は、所謂円筒型平凸レンズ形状を有する。そして、前述した液晶材料15を露光できる光量を有する傾斜角度θの回折光が、集光レンズ80の端部に入射するように、開口部8aに対して所定の間隔および平面位置に調節されて配置されている。
【0054】
また、集光レンズ80は、回折光が集光レンズ80を通過(透過)したのち、露光光と同じ方向(つまり垂直方向)の光に変換されるように、凸面を形成する曲率半径Rが設定されている。曲率半径Rは、集光レンズ80の焦点距離をFdとし集光レンズ80の材料の屈折率をNとすると、周知の公式1/Fd=(N−1)/Rの関係から求めることができる。ここで、Fdは、集光レンズ80の端部に入射する回折光が垂直方向の光となることから、集光レンズ80の長手方向と直交する幅方向の長さをD3とすると、Fd×tanθ=D3/2の関係から求めることができる。
【0055】
本実施例では、このように、液晶材料15を露光できる光量を有する傾斜角度θの回折光を、集光レンズ80によって開口部8aに入射する露光光と同じ垂直方向の光に変換する。もとより、傾斜角度がθ以下の回折光は、液晶材料15に対する照射方向が集光レンズ80の中心方向に向くことになる。この結果、液晶材料15は、図示するように、露光領域の端面は垂直方向に変換された回折光が照射されることによって斜めにならず、垂直方向となるように露光される。
【0056】
また、集光レンズ80の平面部分を、露光対象物としての液晶材料15と対向させる構成とすることによって、集光レンズ80と液晶材料15との間を一定間隔にすることができる。この結果、この間における露光光の光路長が同じになるので、液晶材料15は露光領域において均一に露光されることが期待できる。
【0057】
ところで、開口部8aで回折せず、そのまま通過した露光光は、平行光のまま集光レンズ80に入射する。すると、これらの露光光は、集光レンズ80の焦点Fに向かってそれぞれ進むことになり、焦点Fを源点とする放射状の光となる。従って、本実施例では、この放射状の露光光が、集光レンズ80の長手方向と直交する幅方向の長さD3の範囲内において、液晶材料15を照射するようにする。こうすることによって、液晶材料15の露光領域の端面は垂直方向の状態で保持される。
【0058】
具体的には、集光レンズ80と第1の基板11上に塗布配置された液晶材料15と配向膜14との界面までの距離Rdが所定の距離以下となるようにする。つまり、図から明らかなように、「D1×(Rd−Fd)/Fd」の値が、D3以下を満たすように距離Rdを設定するのである。このように設定された距離Rdにおいて、液晶材料15を露光することによって、図示するように、端面が垂直方向となる位相差層16を光重合によって形成することが可能となる。
【0059】
なお、本実施例において、液晶材料15の露光範囲、つまり反射表示領域Rに形成される位相差層16の形成範囲は、図示するように集光レンズ80の幅D3となる。もとより、上述の説明から明らかなように幅D3は、露光マスク8に形成された開口部8aの幅D1よりも幅広い。従って、露光マスク8の開口部8aの開口幅D1を調節する(狭める)ことによって、実際に露光形成される露光範囲幅D3を調節することが好ましい。
【0060】
<露光マスク>
次に、本実施例の露光方法において用いる露光マスク8について、図7を用いて説明する。図7の上側の図は、露光マスク8の断面構成を示している。図示するように、本実施例における露光マスク8は、前述したように、クロムなどの遮光性を有する金属膜を、ガラス基板85に蒸着して遮光部8bを形成している。そして、形成された遮光部8bの面側に連結部材87によって別のガラス基板86が所定の間隔で貼り合わされて一体化された構成を有している。連結部材87はガラス基板85とガラス基板86とを接合できる材料(例えば樹脂材料)からなる。
【0061】
ガラス基板86には、ガラス基板85と対向する側と反対側の表面の一部を形成する平面と、所定の曲率半径の凸面と、を有するシリンドリカル形状の樹脂材料が埋設されている。また、樹脂材料は、ガラス基板86よりも高い屈折率を有している。従って、埋設された樹脂材料は、集光レンズ80の役割を果たす。なお、ガラス基板86が請求項記載の第1の材料であり、樹脂材料が請求項記載の第2の材料に相当する。
【0062】
ガラス基板86に樹脂材料を埋設して集光レンズ80を形成する方法としては、例えば、ガラス基板86をマスクエッチングや機械加工、あるいはガラス成型や熱プレスによって、シリンドリカル形状の凹部を形成し、形成した凹部に樹脂材料を流し込んで固める。そして固まった樹脂材料のうちガラス基板86の表面から吐出する部分をカットすることによって形成する方法が考えられる。従って、集光レンズ80の形状を平凸レンズ形状とすることによって、このような形成方法が採用できる。
【0063】
図7の下側の図は、露光マスク8を平面的に見た状態で示している。そして約上半分はガラス基板85の上方から見た状態で示し、約下半分は、ガラス基板85を除去して、ガラス基板86を同じ上方から見た状態で示している。樹脂材料で形成された集光レンズ80は、開口部8aとY軸方向における中心位置が同じになるようにして配置されている。
【0064】
このように、本実施例における露光マスク8によれば、開口部8aと集光レンズ80が一体化されるので、露光処理において集光レンズ80の開口部8aに対する配置位置精度が向上し、回折光の平行光への変換をより確実に行うことができる。また、集光レンズ80をガラス基板86に形成するので、開口部8aが形成されたガラス基板85との一体化が容易となる。
【0065】
上述したように、露光マスク8を用いて行う本実施例の露光方法は、開口部8aに入射する露光光の回折光を垂直方向に変換して、集光レンズ80の幅寸法つまり反射表示領域Rに相当する範囲を、端面が垂直となる状態で露光することができるのである。
【0066】
以上、本発明の実施の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。以下、変形例を挙げて説明する。
【0067】
(第1変形例)
上記実施例では、露光マスク8において、集光レンズ80の平面部分を液晶材料15に対向させたが、必ずしもこれに限るものでないことは勿論である。例えば、集光レンズ80の平面部分が、液晶材料15と反対側の遮光部8bと対向するように集光レンズ80をガラス基板86に埋設形成することとしてもよい。
【0068】
本変形例の露光マスク8を、図8に示した。図示するように、本変形例においては、集光レンズ80の凸面が上下反転することから、集光レンズ80の平面部分が開口部8aに近くなる。従って、液晶材料15を露光できる光量を有する傾斜角度θの回折光を上記実施例と同様に変換するためには、集光レンズの端部を遮光部8bから離す必要がある。そこで、上記実施例の連結部材87よりも厚くした連結部材87aを用いてガラス基板85とガラス基板86とを一体化する。
【0069】
本変形例の露光マスク8によれば、集光レンズ80を通過後の露光光の光路長は同じにならないものの、樹脂材料からなる集光レンズ80が露出しないので、集光レンズ80が衝撃などによって破損する虞がないという効果を奏する。従って、露光マスク8のハンドリングも容易となる。
【0070】
(第2変形例)
上記実施例では、露光マスク8を2枚のガラス基板85とガラス基板86とによって構成したが、必ずしもこれに限るものでないことは勿論である。例えば、露光マスク8を一枚のガラス基板で形成することとしてもよい。
【0071】
本変形例の露光マスク8を、図9に示した。図示するように、本変形例においては、一枚のガラス基板88の一方の面に遮光部8bを形成し、他方の面に、この面を平面部分とする円筒型平凸レンズを構成する樹脂材料を埋設する。そしてガラス基板88の厚さを、開口部8aを通過して液晶材料15を露光できる光量を有する傾斜角度θの回折光が、上記実施例と同様に変換される厚さとするのである。
【0072】
本変形例の露光マスク8によれば、開口部8aと集光レンズ80とを一枚の基板で形成するので、開口部8aと集光レンズ80の形成後の機械的な位置ずれが生じない。従って、露光マスクの取り扱いが容易となる。
【0073】
(第3変形例)
上記実施例において、集光レンズ80は、片側が平面で片側が凸面の円筒型平凸レンズ形状であるものとしたが、必ずしもこれに限るものでないことは勿論である。例えば、集光レンズ80の凸面を、平面と平行な面でカットした形状としてもよい。
【0074】
本変形例の集光レンズの一例を、図10に示した。図示するように、本変形例の集光レンズ81は、図中二点鎖線で示した上記実施例の集光レンズ80に対して、開口部8aと平面的に重なる面が形成される位置でカットした形状を有している。このように形成した集光レンズ81では、図示するように、傾斜角度θ以内の回折光は、集光レンズ81の中心方向に曲げられるが、開口部8aで回折せずそのまま通過した露光光は、集光レンズ81によって集光されることなく元の平行光のまま進むことになる。従って、本変形例では、集光レンズ81から図示しない液晶材料15までの距離にかかわらず、開口部8aと平面的に重なる領域において、上記実施例よりも均一な露光を行うことが可能である。
【0075】
本変形例の集光レンズ81を、上記第2変形例の露光マスクに適用した場合を、図11に示した。図示するように、本変形例における露光マスク8は、集光レンズ81の厚さが二点鎖線で示した上記実施例における集光レンズ80よりも薄くなるので、ガラス基板88において埋設された集光レンズ81の領域における最薄部の厚さKtを厚くすることができる。この結果、露光マスク8の強度が向上し、露光マスク8の変形を抑制するなど取り扱い性が向上する。
【0076】
(第4変形例)
また、集光レンズを、中央部分は平坦面であって端部において凸面を形成する形状としてもよい。本変形例の集光レンズ82を、図12に示した。図示するように、本変形例の集光レンズ82は、開口部8aを回折せずそのまま通過する露光光が入射する領域は平坦面であって、傾斜角度θ以内の回折光が入射する面が凸面83である平凸レンズ形状を有している。
【0077】
ここで、本変形例の集光レンズ82は、凸面83によって形成される平凸レンズの焦点fが、図示するように遮光部8bにおいて、開口部8a側の面と集光レンズ82側の面とがなす交線上に位置するように、その凸面83の曲率半径が定められている。つまり、開口部8aにおいて生ずる回折光の基点と想定される位置に、凸面83によって形成される平凸レンズの焦点fを設定するのである。
【0078】
この結果、図示するように、凸面83に入射する傾斜角度θ以内の回折光は、集光レンズ82を透過後、露光光と同じ方向の平行として射出される。また、開口部8aで回折せずそのまま通過した露光光は、集光レンズ82によって集光されることなく元の平行光のまま射出されることになる。従って、本変形例によれば、集光レンズ82から射出される露光光を総て同じ方向、すなわち、開口部を通過した平行光に沿う方向(露光マスクの法線方向)に変換することができる。これにより、露光マスク8と液晶材料15までの距離にかかわらず、液晶材料15の露光領域の端面が垂直であって、上記実施例よりも均一な露光を行うことが可能となる。
【0079】
(その他の変形例)
上記実施例および変形例では、集光レンズを、片側が平面で片側が凸面形状を有する所謂平凸レンズ形状としたが、両側に凸面形状を有する両凸レンズ形状としてもよい。あるいは、片側が凸面で片側が凹面の凸凹レンズ形状であってもよい。要は、回折光を平行光に変換できる構成を有する形状であれば、平凸レンズ以外の形状であっても何ら差し支えない。
【0080】
また、上記実施例ではFFS方式の液晶表示装置において位相差層を露光形成する場合を例にあげて説明したが、これに限定されず、例えば、配線パターンを形成するためのレジストの露光など、端面を垂直に形成する必要がある露光において、本発明の露光方法を適用してもよい。もとより、上記実施例において、液晶表示装置はFFS方式に限らず、例えば、IPS方式の液晶表示装置であってもよいし、VA方式の液晶表示装置であってもよい。
【0081】
また、上記実施例では特に言及しなかったが、集光レンズの凸面の曲率半径Rを求める場合に用いる上述の公式は、集光レンズが空気中に存在する場合で成り立つ。従って、集光レンズがガラス基板に埋設された樹脂材料で形成される場合は、空気ではなくガラスが介在することを考慮して曲率半径を求めるようにすることが好ましい。
【0082】
また、上記実施例では、スリット形状を有する開口部が形成された露光マスクを用いたため、集光レンズの形状が円筒型平凸レンズであることとして説明したが、これに限るものでないことは勿論である。例えば、開口部の形状が円形や楕円形、あるいはひし形など他の形状であってもよい。もとより、集光レンズの形状は開口部の形状に応じた形状となり、例えば開口部の形状が円形であれば、集光レンズの形状も円形となる。
【0083】
また、上記実施例では、露光マスク8を構成する基板をガラス基板であることとして説明したが、特にこれに限るものでないことは勿論である。例えば、石英基板や樹脂基板であってもよい。露光光が透過する材料であれば、いずれも採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本実施例の液晶表示装置の表示領域の一部を示す平面図。
【図2】液晶表示装置の概略構成を示す断面図。
【図3】対向基板のマザー基板を示す図。
【図4】対向基板に形成する位相差層の製造に用いる露光マスクを説明する図。
【図5】従来の露光方法における露光の様子を説明する説明図。
【図6】本実施例における露光方法を説明する説明図。
【図7】本実施例における露光方法において用いる露光マスクの構成を説明する説明図。
【図8】第1変形例における露光マスクの構成を説明する説明図。
【図9】第2変形例における露光マスクの構成を説明する説明図。
【図10】第3変形例における集光レンズを説明する説明図。
【図11】第3変形例における露光マスクの構成を説明する説明図。
【図12】第4変形例における集光レンズを説明する説明図。
【符号の説明】
【0085】
8…露光マスク、8a…開口部、8b…遮光部、10…対向基板、10a…マザー基板、11…第1の基板、12…カラーフィルタ層、14…配向膜、15…液晶材料、16…位相差層、16a…位相差層、18…配向膜、20…画素、30…素子基板、31…第2の基板、33…回路素子層、34…反射層、35…共通電極、36…絶縁層、37…画素電極、37a…開口部、38…配向膜、40…液晶層、46…偏光板、48…偏光板、49…バックライト、80…集光レンズ、81…集光レンズ、82…集光レンズ、83…凸面、85…ガラス基板、86…ガラス基板、87…連結部材、87a…連結部材、88…ガラス基板、100…液晶表示装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光方法および露光マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
所定の波長(例えばi線やg線など)を有する平行光を用いて、レジストなどの露光対象物を露光マスクを介して露光し、所定の形状をパターニングする露光方法が、従来から多く用いられている。例えば、特許文献1では、平行光線を遮光マスク(露光マスク)を介して光硬化性樹脂に照射してマイクロレンズを形成する方法が提案されている。特許文献1に開示された技術は、光透過窓(開口部)を通る光の回折を利用して、露光光の光量を変更することによって、マイクロレンズを形成しようとするものである。
【0003】
【特許文献1】特開平6−130205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているように、光透過窓つまり露光マスクにおける開口部を通る光は、露光対象物を照射するまでの間に回折が生ずる。そして回折した光(回折光)は、所謂ホイヘンスの原理として周知なように、開口部の端部において、その開口部の端部を中心とした円状であって、その開口部の外側に向かって広がりながら進む。この結果、露光光が露光対象物を照射する領域は、露光マスクと露光対象物との距離が遠いほど露光領域が広がり、開口部の輪郭形状よりも広がった大きな領域形状になることがある。
【0005】
そこで、露光マスクに形成した開口部の形状で露光対象物をパターニングする場合は、露光対象物と露光マスクを密着あるいは接近させて露光することによって、露光マスクに形成した開口部の形状が広がらないように抑制する。
【0006】
しかしながら、露光マスクを露光対象物に密着させた場合においても、開口部の端部において回折光は発生する。そして、発生した回折光は、露光光の照射方向に対するその傾き方向が所定の範囲内において露光対象物を露光する光量を有する。このため、露光対象物は、露光領域の広がりは少ないものの、露光された領域の端部は、開口部で生ずる回折光によって露光光の照射方向に対して斜めに露光されてしまうことになる。
【0007】
ところで、露光マスクを用いて露光光を照射して露光対象物を露光する露光方法において、露光光の照射方向と同じ方向に露光領域を形成したい場合が存在する。言い換えれば、露光領域の端面を斜めではなく垂直にしたい場合である(後述する)。このような場合、上述したように回折光の存在によって、露光領域の端面が垂直になるように露光対象物を露光することができないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]露光光が透過する開口部を備えた露光マスクを用いて、露光対象物を前記露光光で露光する露光方法であって、前記開口部と前記露光対象物との間に、前記開口部の端部で生ずる前記露光光の回折光を、前記開口部の内側に向けて屈折させる集光レンズを配置して、前記露光対象物を露光することを特徴とする。
【0010】
この露光方法によれば、開口部を透過し回折によって広がった光を、開口部の内側に向けて屈折させることによって、もとの露光光と同じ方向の光に変換することができる。この結果、露光対象物をその端面が垂直となる露光領域を形成することができる。
【0011】
[適用例2]上記露光方法であって、前記露光マスクには複数の前記開口部を備え、前記集光レンズは複数の前記開口部毎に配置されていることを特徴とする。
【0012】
この露光方法によれば、露光マスクに形成された総ての開口部において、集光レンズを配置するので、形成される露光領域は、その端面が総て垂直方向になる。
【0013】
[適用例3]上記露光方法であって、前記集光レンズは、一方のレンズ面が平面で形成された平凸レンズ形状を有していることを特徴とする。
【0014】
この露光方法によれば、集光レンズの一方の面を平面とするので、露光マスクに集光レンズを一体化することが容易となる。また、一方の面が平面であことから、集光レンズの形成が容易となる。
【0015】
[適用例4]上記露光方法であって、前記集光レンズは、前記平面が前記露光対象物に対向するように配置されていることを特徴とする。
【0016】
この露光方法によれば、集光レンズの平面と露光対象物とが対向するので、集光レンズと露光対象物との間を一定間隔にすることができる。この結果、集光レンズと露光対象物との間における露光光の光路長が同じになるので、露光対象物は露光領域において均一に露光されることが期待できる。
【0017】
[適用例5]上記露光方法であって、前記集光レンズによって集光された前記露光光が、当該集光レンズの光軸方向における投影領域内で前記露光対象物を照射するように露光することを特徴とする。
【0018】
この露光方法によれば、集光レンズによって集光された露光光が、集光レンズの光軸方向における投影領域内を照射するので、形成される露光領域は、その端面が垂直方向になる。
【0019】
[適用例6]上記露光方法に用いる露光マスクであって、前記露光光が透過する基板上に設けられた遮光膜によって前記開口部が形成され、前記集光レンズが、連結部材によって当該基板と一体化されていることを特徴とする。
【0020】
この露光マスクによれば、開口部と集光レンズが一体化されるので、露光処理において集光レンズの開口部に対する配置位置精度が向上し、回折光を集光レンズによってより確実に平行光へ変換することができる。
【0021】
[適用例7]上記露光マスクであって、前記集光レンズは、前記露光光が透過する略平板状の第1の材料に当該第1の材料の屈折率よりも高い屈折率を有する第2の材料が埋設されて前記集光レンズが形成されていることを特徴とする。
【0022】
この露光マスクによれば、集光レンズを平板状で形成することができる。従って、開口部が形成された基板との一体化が容易となる。
【0023】
[適用例8]上記露光方法に用いる露光マスクであって、前記露光光が透過する基板の一方の面に遮光膜が設けられて前記開口部が形成され、前記基板の他方の面に当該基板の材料の屈折率よりも高い屈折率を有する材料が埋設されて前記集光レンズが形成されていることを特徴とする。
【0024】
この露光マスクによれば、開口部と集光レンズとを一枚の基板で形成するので、開口部と集光レンズの形成後の機械的な位置ずれが生じない。従って、露光マスクの取り扱いが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、以降の説明において用いる図面は、説明のために誇張して図示している場合もあり、必ずしも実際の大きさや長さを示すものでないことは言うまでもない。
【0026】
<液晶表示装置>
本発明を適用した一実施例として、露光対象物としての光重合性液晶材料を露光して形成した位相差層を有する液晶表示装置100について説明する。図1は、本実施例の液晶表示装置100の表示領域の一部を示す平面図である。図2は、液晶表示装置100の概略構成を示す断面図であり、図1のA−A線に沿った断面図である。本実施例の液晶表示装置100は、FFS(Fringe-Field Switching)方式の半透過反射型の液晶装置である。
【0027】
図1に示すように、液晶表示装置100の表示領域には、赤、緑、青の表示に寄与する画素20R,20G,20B(以下では、対応する色について区別しない場合には単に画素20とも呼ぶ)が複数配置されている。画素20は、液晶表示装置100の表示の最小単位であり、隣り合う画素20同士の間に間隔が空くように、X軸およびY軸に沿ってマトリクス状に配置されている。なお、X軸は画素20の行方向を示し、Y軸は画素20の列方向を示している。
【0028】
それぞれの画素20は、反射表示に寄与する反射表示領域Rと、透過表示に寄与する透過表示領域Tと、を有している。X軸に沿った方向には反射表示領域R同士または透過表示領域T同士が対向するように配列され、Y軸に沿った方向には反射表示領域Rと透過表示領域Tとが互いに対向するように配列されている。
【0029】
次に、図2に示すように、液晶表示装置100は、素子基板30と、対向基板10と、液晶層40と、を備えている。液晶層40は、対向基板10と素子基板30との間に位置している。
【0030】
対向基板10は、第1の基板11を基体とし、液晶層40側の面上に、順にカラーフィルタ層12と配向膜14と位相差層16とが設けられている。第1の基板11は、透明な材料からなり、例えばガラスからなる。カラーフィルタ層12は、赤、緑、青の3色の色要素を含んでいる。配向膜14には、位相差層16を形成する重合性液晶材料の配向を規制するための処理、例えばラビング処理が施されている。
【0031】
位相差層16は、それぞれの画素20の反射表示領域Rと、複数の画素20の間のうち反射表示領域R同士が隣り合う領域と、に配置されている(図1参照)。位相差層16は、複屈折性を有しており、光硬化性材料または熱硬化性材料の分子が配向膜14により配向された状態で、後述する露光方法により硬化されて形成されている。露光対象物としての位相差層16の材料は、例えば光反応性のアクリル基を分子末端に有する所謂光重合性液晶材料である。位相差層16は入射される可視光の波長に対し所定の位相差、例えば1/2波長分の位相差を付与する。
【0032】
対向基板10の液晶層40側には、位相差層16および配向膜14を覆うように配向膜18が設けられている。対向基板10の液晶層40とは反対側、すなわち観察側には、偏光板46が配置されている。
【0033】
素子基板30は、第2の基板31を基体とし、液晶層40側に、回路素子層33と、反射層34と、共通電極35と、絶縁層36と、画素電極37と、を備えている。第2の基板31は、透明な材料からなり、例えばガラスからなる。回路素子層33は、図示しないが、液晶層40を駆動するための素子、各種配線、接続部、層間絶縁層等を含んで構成されている。反射表示領域Rに位置する回路素子層33の上面には、図示しないが、外光を散乱させるための凹凸形状が形成されている。反射層34は、回路素子層33上のうち反射表示領域Rに設けられている。
【0034】
共通電極35は、反射表示領域Rと透過表示領域Tとに亘って形成されており、反射表示領域Rにおいては反射層34上に形成され、透過表示領域Tにおいては回路素子層33上に形成されている。共通電極35は、例えばITO(Indium Tin Oxide)からなる。共通電極35上には、その上面を覆うように絶縁層36が形成されている。さらに、絶縁層36上には、複数のスリット状の開口部37aを有する画素電極37が形成されている。画素電極37は、例えばITOからなる。
【0035】
また図2に示すように、素子基板30の液晶層40側には、絶縁層36と画素電極37とを覆うように配向膜38が設けられている。素子基板30の液晶層40とは反対側には、偏光板48が配置されている。そして、偏光板48に対向する位置には、バックライト49が配置されている。
【0036】
さて、本実施例の液晶表示装置100において、液晶層40は、反射表示領域Rと透過表示領域Tとで層厚が異なっている。より詳細には、液晶層40の反射表示領域Rにおける層厚は、液晶層40の透過表示領域Tにおける層厚のほぼ1/2となっている。つまり、位相差層16は液晶層40の層厚を調整する調整層として機能する。そして、液晶層40は、入射される可視光の波長に対して、反射表示領域Rにおいて1/4波長分の位相差を付与し、透過表示領域Tにおいて1/2波長分の位相差を付与する。
【0037】
このような半透過反射型の液晶表示装置100では、光学設計上、反射表示領域Rにおいて暗表示を行う際に反射層34に到達する外光がすべての可視光の波長域でほぼ円偏光である必要がある。反射層34に到達した外光が楕円偏光であると暗表示の際に光漏れが生じ、高コントラストな反射表示を得ることが困難になるからである。
【0038】
本実施例では、反射表示領域Rに液晶層40の層厚調整層としても機能する位相差層16を配置することで、液晶層40は、入射される可視光の波長に対して、反射表示領域Rにおいて1/4波長分の位相差を付与し、透過表示領域Tにおいて1/2波長分の位相差を付与する。これにより、偏光板48と位相差層16と反射表示領域R内の液晶層40とで広帯域円偏光を作り出せるようにして、反射層34に到達する外光を可視光の波長域で円偏光に近づけているのである。
【0039】
従って、1/2波長分の位相差を付与する位相差層16は、反射表示領域R内において一様に形成される必要がある。つまり、位相差層16がその端面において第1の基板11に対して略垂直に形成される必要がある。そうでない場合、例えば、図2において太い破線で示した端面Maのように、位相差層16が斜めに形成され、透過表示領域Tに位相差層16が侵入して存在する場合は、透過表示領域Tに入射する可視光の波長に対して、液晶層40による1/2波長分の位相差以外の位相差が付与されてしまう。あるいは、同じく太い破線で示した端面Mbのように、位相差層16が斜めに形成され反射表示領域Rに位相差層16の斜めの端面Mbが侵入して存在する場合は、反射表示領域Rのうち、この領域部分に入射する可視光の波長に対して、1/2波長分の位相差を正しく付与することが出来ないことになってしまう。
【0040】
また、形成される斜めの端面Maあるいは端面Mbによって、反射表示領域Rあるいは透過表示領域Tにおける液晶層40の厚さが一定にならず、厚さにムラが生じてしまう。この結果、各画素は反射表示領域Rと透過表示領域Tとが互いに対向する領域において色づきや色ムラのない高品質な表示を行えなくなってしまうからである。
【0041】
<露光方法>
それでは、位相差層16をその端面において第1の基板11に対して略垂直な方向(以降、単に「垂直方向」)に形成する露光方法について、図3〜図7を参照して説明する。図3は、対向基板10のマザー基板を示す図である。図4は、対向基板10に形成する位相差層16の製造に用いる露光マスクを説明する図である。図5は、従来の露光方法における露光の様子を説明する説明図、図6は、本実施例における露光方法を説明する説明図である。図7は、本実施例における露光方法において用いる露光マスクの構成を説明する説明図である。
【0042】
まず図3に示したように、対向基板10の製造は、マザー基板10aの状態で行われる。図3は、マザー基板10aに含まれる対向基板10のそれぞれにおいて、位相差層16が形成される領域(図中グレー色部分)を示している。位相差層16が形成される領域は、図1に示したように、反射表示領域Rと、画素20の間のうち反射表示領域R同士が隣り合う領域と、で構成される。
【0043】
図4は、位相差層16を形成するために用いる露光マスク8を示す。露光マスク8は、開口部8aと遮光部8bとを有している。開口部8aは、遮光部8bによって区画形成され、図3に示すマザー基板10a上の位相差層16が形成される領域に対応して、X軸方向に長手方向を有するスリット状に配置されている。本実施例では、露光マスク8は、ガラス板に、クロムなどの遮光性を有する金属膜を蒸着して形成した遮光膜を遮光部8bとして備えている。
【0044】
次に、露光マスク8を通して紫外光を照射することにより、開口部8aを通過(透過)した紫外光で、光重合性液晶材料のうち反射表示領域Rと画素20の間の反射表示領域R同士が隣り合う領域とに位置する部分のみを露光する。これにより、露光された部分の液晶分子のアクリル基が光重合により硬化されて、位相差層16が形成される。なお、光重合性液晶材料のうち位相差層16が形成された領域以外の部分は硬化されず、露光処理後有機溶剤等で除去される。
【0045】
さて、本実施例の露光方法は、露光マスクの開口部8aに対応して集光レンズを配置することによって、前述するように、位相差層16の端部において、その端面が第1の基板11に対して略垂直になるように形成するものである。そこで、以降の説明においては、まず図5を用いて集光レンズを配置しない状態における露光の様子について説明し、次に、図6を用いて集光レンズを配置した状態における露光の様子説明する。
【0046】
図5は、集光レンズを配置しない状態において、露光マスク8に形成された開口部8aによって、光重合性を有する液晶材料15を、紫外光を露光光として用いて露光する状態を、X軸方向から見た状態で模式的に示した説明図である。なお、液晶材料15は、光反応性のアクリル基を分子末端に有する液晶と反応開始剤を含む有機溶媒とからなる光重合性液晶材料であり、例えばスピンコート法を用いて配向膜14上に塗布して配置される。
【0047】
図5に示すように、垂直方向であって略平行光束を有する露光光(図中矢印)によって、第1の基板11の配向膜14上に配置された液晶材料15を照射して露光する。このとき、所謂ホイヘンスの原理として周知なように、遮光部8bで区画された開口部8aを通過する露光光のうち、遮光部8bと隣接する開口部8aの端部において、光の回折現象によって回折する露光光(以降、これを「回折光」と称す)が生ずる。
【0048】
そして、生じた回折光のうち、回折角度が所定の範囲の回折光が、液晶材料15を照射して露光する。これは、開口部8aを垂直方向に通過する露光光に近い回折光ほど、露光光に近い光量を有しており、回折角度が所定の範囲を越える回折光は、液晶材料15を露光できる光量を有しないと考えられるからである。
【0049】
本実施例では、図示するように、開口部8aの端部において、垂直方向に対して角度θ以内の方向を有する回折光が、液晶材料15を実際に露光するものとする。もとより、角度θは、露光光の強度や開口部の大きさ、あるいは液晶材料などに依存することが想定されるため、予め実験によって実際の露光状態を確かめることによって、角度θの大きさを調べておくことが好ましい。
【0050】
従って、液晶材料15は、開口部8aを垂直方向に透過する露光光によって露光されて形成される本来の位相差層16に加えて、開口部8aにおいて生ずる回折光によって、垂直方向に対して角度θの斜めの端面を有する位相差層16a(図5、網掛け部)が形成されることになる。この結果、反射表示領域Rにおいて本来形成すべき位相差層のY軸方向の長さ(つまり開口部8aのY軸方向の長さ)D1は、図示するように長さD2に広がるとともに、位相差層の端面が第1の基板11に対して垂直方向ではなく斜めに形成されてしまう。
【0051】
そこで、本実施例の露光方法では、露光マスクの開口部8aに対応して集光レンズを配置することによって、位相差層16の端部において、その端面が第1の基板11に対して略垂直になるように形成する。これを図6を用いて説明する。
【0052】
図示するように、本実施例の露光方法は、遮光部8bで区画されて形成された開口部8aに対応して、開口部8aを通過する露光光を集光する集光レンズ80を配置し、集光レンズ80を通過する露光光を用いて液晶材料15を露光する。
【0053】
集光レンズ80は、光透過性を有する材料から形成され、液晶材料15と対向する側の面が平面であって、開口部8aと対向する側に凸面の形状を有している。従って、本実施例では、開口部8aはX軸方向に長手方向を有するスリット形状であることから、集光レンズ80は、所謂円筒型平凸レンズ形状を有する。そして、前述した液晶材料15を露光できる光量を有する傾斜角度θの回折光が、集光レンズ80の端部に入射するように、開口部8aに対して所定の間隔および平面位置に調節されて配置されている。
【0054】
また、集光レンズ80は、回折光が集光レンズ80を通過(透過)したのち、露光光と同じ方向(つまり垂直方向)の光に変換されるように、凸面を形成する曲率半径Rが設定されている。曲率半径Rは、集光レンズ80の焦点距離をFdとし集光レンズ80の材料の屈折率をNとすると、周知の公式1/Fd=(N−1)/Rの関係から求めることができる。ここで、Fdは、集光レンズ80の端部に入射する回折光が垂直方向の光となることから、集光レンズ80の長手方向と直交する幅方向の長さをD3とすると、Fd×tanθ=D3/2の関係から求めることができる。
【0055】
本実施例では、このように、液晶材料15を露光できる光量を有する傾斜角度θの回折光を、集光レンズ80によって開口部8aに入射する露光光と同じ垂直方向の光に変換する。もとより、傾斜角度がθ以下の回折光は、液晶材料15に対する照射方向が集光レンズ80の中心方向に向くことになる。この結果、液晶材料15は、図示するように、露光領域の端面は垂直方向に変換された回折光が照射されることによって斜めにならず、垂直方向となるように露光される。
【0056】
また、集光レンズ80の平面部分を、露光対象物としての液晶材料15と対向させる構成とすることによって、集光レンズ80と液晶材料15との間を一定間隔にすることができる。この結果、この間における露光光の光路長が同じになるので、液晶材料15は露光領域において均一に露光されることが期待できる。
【0057】
ところで、開口部8aで回折せず、そのまま通過した露光光は、平行光のまま集光レンズ80に入射する。すると、これらの露光光は、集光レンズ80の焦点Fに向かってそれぞれ進むことになり、焦点Fを源点とする放射状の光となる。従って、本実施例では、この放射状の露光光が、集光レンズ80の長手方向と直交する幅方向の長さD3の範囲内において、液晶材料15を照射するようにする。こうすることによって、液晶材料15の露光領域の端面は垂直方向の状態で保持される。
【0058】
具体的には、集光レンズ80と第1の基板11上に塗布配置された液晶材料15と配向膜14との界面までの距離Rdが所定の距離以下となるようにする。つまり、図から明らかなように、「D1×(Rd−Fd)/Fd」の値が、D3以下を満たすように距離Rdを設定するのである。このように設定された距離Rdにおいて、液晶材料15を露光することによって、図示するように、端面が垂直方向となる位相差層16を光重合によって形成することが可能となる。
【0059】
なお、本実施例において、液晶材料15の露光範囲、つまり反射表示領域Rに形成される位相差層16の形成範囲は、図示するように集光レンズ80の幅D3となる。もとより、上述の説明から明らかなように幅D3は、露光マスク8に形成された開口部8aの幅D1よりも幅広い。従って、露光マスク8の開口部8aの開口幅D1を調節する(狭める)ことによって、実際に露光形成される露光範囲幅D3を調節することが好ましい。
【0060】
<露光マスク>
次に、本実施例の露光方法において用いる露光マスク8について、図7を用いて説明する。図7の上側の図は、露光マスク8の断面構成を示している。図示するように、本実施例における露光マスク8は、前述したように、クロムなどの遮光性を有する金属膜を、ガラス基板85に蒸着して遮光部8bを形成している。そして、形成された遮光部8bの面側に連結部材87によって別のガラス基板86が所定の間隔で貼り合わされて一体化された構成を有している。連結部材87はガラス基板85とガラス基板86とを接合できる材料(例えば樹脂材料)からなる。
【0061】
ガラス基板86には、ガラス基板85と対向する側と反対側の表面の一部を形成する平面と、所定の曲率半径の凸面と、を有するシリンドリカル形状の樹脂材料が埋設されている。また、樹脂材料は、ガラス基板86よりも高い屈折率を有している。従って、埋設された樹脂材料は、集光レンズ80の役割を果たす。なお、ガラス基板86が請求項記載の第1の材料であり、樹脂材料が請求項記載の第2の材料に相当する。
【0062】
ガラス基板86に樹脂材料を埋設して集光レンズ80を形成する方法としては、例えば、ガラス基板86をマスクエッチングや機械加工、あるいはガラス成型や熱プレスによって、シリンドリカル形状の凹部を形成し、形成した凹部に樹脂材料を流し込んで固める。そして固まった樹脂材料のうちガラス基板86の表面から吐出する部分をカットすることによって形成する方法が考えられる。従って、集光レンズ80の形状を平凸レンズ形状とすることによって、このような形成方法が採用できる。
【0063】
図7の下側の図は、露光マスク8を平面的に見た状態で示している。そして約上半分はガラス基板85の上方から見た状態で示し、約下半分は、ガラス基板85を除去して、ガラス基板86を同じ上方から見た状態で示している。樹脂材料で形成された集光レンズ80は、開口部8aとY軸方向における中心位置が同じになるようにして配置されている。
【0064】
このように、本実施例における露光マスク8によれば、開口部8aと集光レンズ80が一体化されるので、露光処理において集光レンズ80の開口部8aに対する配置位置精度が向上し、回折光の平行光への変換をより確実に行うことができる。また、集光レンズ80をガラス基板86に形成するので、開口部8aが形成されたガラス基板85との一体化が容易となる。
【0065】
上述したように、露光マスク8を用いて行う本実施例の露光方法は、開口部8aに入射する露光光の回折光を垂直方向に変換して、集光レンズ80の幅寸法つまり反射表示領域Rに相当する範囲を、端面が垂直となる状態で露光することができるのである。
【0066】
以上、本発明の実施の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。以下、変形例を挙げて説明する。
【0067】
(第1変形例)
上記実施例では、露光マスク8において、集光レンズ80の平面部分を液晶材料15に対向させたが、必ずしもこれに限るものでないことは勿論である。例えば、集光レンズ80の平面部分が、液晶材料15と反対側の遮光部8bと対向するように集光レンズ80をガラス基板86に埋設形成することとしてもよい。
【0068】
本変形例の露光マスク8を、図8に示した。図示するように、本変形例においては、集光レンズ80の凸面が上下反転することから、集光レンズ80の平面部分が開口部8aに近くなる。従って、液晶材料15を露光できる光量を有する傾斜角度θの回折光を上記実施例と同様に変換するためには、集光レンズの端部を遮光部8bから離す必要がある。そこで、上記実施例の連結部材87よりも厚くした連結部材87aを用いてガラス基板85とガラス基板86とを一体化する。
【0069】
本変形例の露光マスク8によれば、集光レンズ80を通過後の露光光の光路長は同じにならないものの、樹脂材料からなる集光レンズ80が露出しないので、集光レンズ80が衝撃などによって破損する虞がないという効果を奏する。従って、露光マスク8のハンドリングも容易となる。
【0070】
(第2変形例)
上記実施例では、露光マスク8を2枚のガラス基板85とガラス基板86とによって構成したが、必ずしもこれに限るものでないことは勿論である。例えば、露光マスク8を一枚のガラス基板で形成することとしてもよい。
【0071】
本変形例の露光マスク8を、図9に示した。図示するように、本変形例においては、一枚のガラス基板88の一方の面に遮光部8bを形成し、他方の面に、この面を平面部分とする円筒型平凸レンズを構成する樹脂材料を埋設する。そしてガラス基板88の厚さを、開口部8aを通過して液晶材料15を露光できる光量を有する傾斜角度θの回折光が、上記実施例と同様に変換される厚さとするのである。
【0072】
本変形例の露光マスク8によれば、開口部8aと集光レンズ80とを一枚の基板で形成するので、開口部8aと集光レンズ80の形成後の機械的な位置ずれが生じない。従って、露光マスクの取り扱いが容易となる。
【0073】
(第3変形例)
上記実施例において、集光レンズ80は、片側が平面で片側が凸面の円筒型平凸レンズ形状であるものとしたが、必ずしもこれに限るものでないことは勿論である。例えば、集光レンズ80の凸面を、平面と平行な面でカットした形状としてもよい。
【0074】
本変形例の集光レンズの一例を、図10に示した。図示するように、本変形例の集光レンズ81は、図中二点鎖線で示した上記実施例の集光レンズ80に対して、開口部8aと平面的に重なる面が形成される位置でカットした形状を有している。このように形成した集光レンズ81では、図示するように、傾斜角度θ以内の回折光は、集光レンズ81の中心方向に曲げられるが、開口部8aで回折せずそのまま通過した露光光は、集光レンズ81によって集光されることなく元の平行光のまま進むことになる。従って、本変形例では、集光レンズ81から図示しない液晶材料15までの距離にかかわらず、開口部8aと平面的に重なる領域において、上記実施例よりも均一な露光を行うことが可能である。
【0075】
本変形例の集光レンズ81を、上記第2変形例の露光マスクに適用した場合を、図11に示した。図示するように、本変形例における露光マスク8は、集光レンズ81の厚さが二点鎖線で示した上記実施例における集光レンズ80よりも薄くなるので、ガラス基板88において埋設された集光レンズ81の領域における最薄部の厚さKtを厚くすることができる。この結果、露光マスク8の強度が向上し、露光マスク8の変形を抑制するなど取り扱い性が向上する。
【0076】
(第4変形例)
また、集光レンズを、中央部分は平坦面であって端部において凸面を形成する形状としてもよい。本変形例の集光レンズ82を、図12に示した。図示するように、本変形例の集光レンズ82は、開口部8aを回折せずそのまま通過する露光光が入射する領域は平坦面であって、傾斜角度θ以内の回折光が入射する面が凸面83である平凸レンズ形状を有している。
【0077】
ここで、本変形例の集光レンズ82は、凸面83によって形成される平凸レンズの焦点fが、図示するように遮光部8bにおいて、開口部8a側の面と集光レンズ82側の面とがなす交線上に位置するように、その凸面83の曲率半径が定められている。つまり、開口部8aにおいて生ずる回折光の基点と想定される位置に、凸面83によって形成される平凸レンズの焦点fを設定するのである。
【0078】
この結果、図示するように、凸面83に入射する傾斜角度θ以内の回折光は、集光レンズ82を透過後、露光光と同じ方向の平行として射出される。また、開口部8aで回折せずそのまま通過した露光光は、集光レンズ82によって集光されることなく元の平行光のまま射出されることになる。従って、本変形例によれば、集光レンズ82から射出される露光光を総て同じ方向、すなわち、開口部を通過した平行光に沿う方向(露光マスクの法線方向)に変換することができる。これにより、露光マスク8と液晶材料15までの距離にかかわらず、液晶材料15の露光領域の端面が垂直であって、上記実施例よりも均一な露光を行うことが可能となる。
【0079】
(その他の変形例)
上記実施例および変形例では、集光レンズを、片側が平面で片側が凸面形状を有する所謂平凸レンズ形状としたが、両側に凸面形状を有する両凸レンズ形状としてもよい。あるいは、片側が凸面で片側が凹面の凸凹レンズ形状であってもよい。要は、回折光を平行光に変換できる構成を有する形状であれば、平凸レンズ以外の形状であっても何ら差し支えない。
【0080】
また、上記実施例ではFFS方式の液晶表示装置において位相差層を露光形成する場合を例にあげて説明したが、これに限定されず、例えば、配線パターンを形成するためのレジストの露光など、端面を垂直に形成する必要がある露光において、本発明の露光方法を適用してもよい。もとより、上記実施例において、液晶表示装置はFFS方式に限らず、例えば、IPS方式の液晶表示装置であってもよいし、VA方式の液晶表示装置であってもよい。
【0081】
また、上記実施例では特に言及しなかったが、集光レンズの凸面の曲率半径Rを求める場合に用いる上述の公式は、集光レンズが空気中に存在する場合で成り立つ。従って、集光レンズがガラス基板に埋設された樹脂材料で形成される場合は、空気ではなくガラスが介在することを考慮して曲率半径を求めるようにすることが好ましい。
【0082】
また、上記実施例では、スリット形状を有する開口部が形成された露光マスクを用いたため、集光レンズの形状が円筒型平凸レンズであることとして説明したが、これに限るものでないことは勿論である。例えば、開口部の形状が円形や楕円形、あるいはひし形など他の形状であってもよい。もとより、集光レンズの形状は開口部の形状に応じた形状となり、例えば開口部の形状が円形であれば、集光レンズの形状も円形となる。
【0083】
また、上記実施例では、露光マスク8を構成する基板をガラス基板であることとして説明したが、特にこれに限るものでないことは勿論である。例えば、石英基板や樹脂基板であってもよい。露光光が透過する材料であれば、いずれも採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本実施例の液晶表示装置の表示領域の一部を示す平面図。
【図2】液晶表示装置の概略構成を示す断面図。
【図3】対向基板のマザー基板を示す図。
【図4】対向基板に形成する位相差層の製造に用いる露光マスクを説明する図。
【図5】従来の露光方法における露光の様子を説明する説明図。
【図6】本実施例における露光方法を説明する説明図。
【図7】本実施例における露光方法において用いる露光マスクの構成を説明する説明図。
【図8】第1変形例における露光マスクの構成を説明する説明図。
【図9】第2変形例における露光マスクの構成を説明する説明図。
【図10】第3変形例における集光レンズを説明する説明図。
【図11】第3変形例における露光マスクの構成を説明する説明図。
【図12】第4変形例における集光レンズを説明する説明図。
【符号の説明】
【0085】
8…露光マスク、8a…開口部、8b…遮光部、10…対向基板、10a…マザー基板、11…第1の基板、12…カラーフィルタ層、14…配向膜、15…液晶材料、16…位相差層、16a…位相差層、18…配向膜、20…画素、30…素子基板、31…第2の基板、33…回路素子層、34…反射層、35…共通電極、36…絶縁層、37…画素電極、37a…開口部、38…配向膜、40…液晶層、46…偏光板、48…偏光板、49…バックライト、80…集光レンズ、81…集光レンズ、82…集光レンズ、83…凸面、85…ガラス基板、86…ガラス基板、87…連結部材、87a…連結部材、88…ガラス基板、100…液晶表示装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光光が透過する開口部を備えた露光マスクを用いて、露光対象物を前記露光光で露光する露光方法であって、
前記開口部と前記露光対象物との間に、前記開口部の端部で生ずる前記露光光の回折光を、前記開口部の内側に向けて屈折させる集光レンズを配置して、前記露光対象物を露光することを特徴とする露光方法。
【請求項2】
請求項1に記載の露光方法であって、
前記露光マスクは複数の前記開口部を備え、
前記集光レンズは複数の前記開口部毎に配置されていることを特徴とする露光方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の露光方法であって、
前記集光レンズは、一方のレンズ面が平面で形成された平凸レンズ形状を有していることを特徴とする露光方法。
【請求項4】
請求項3に記載の露光方法であって、
前記集光レンズは、前記平面が前記露光対象物に対向するように配置されていることを特徴とする露光方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の露光方法であって、
前記集光レンズによって集光された前記露光光が、当該集光レンズの光軸方向における投影領域内で前記露光対象物を照射するように露光することを特徴とする露光方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の露光方法に用いる露光マスクであって、
前記露光光が透過する基板上に設けられた遮光膜によって前記開口部が形成され、前記集光レンズが、連結部材によって当該基板と一体化されていることを特徴とする露光マスク。
【請求項7】
請求項6に記載の露光マスクであって、
前記集光レンズは、前記露光光が透過する略平板状の第1の材料に当該第1の材料の屈折率よりも高い屈折率を有する第2の材料が埋設されて前記集光レンズが形成されていることを特徴とする露光マスク。
【請求項8】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の露光方法に用いる露光マスクであって、
前記露光光が透過する基板の一方の面に遮光膜が設けられて前記開口部が形成され、前記基板の他方の面に当該基板の材料の屈折率よりも高い屈折率を有する材料が埋設されて前記集光レンズが形成されていることを特徴とする露光マスク。
【請求項1】
露光光が透過する開口部を備えた露光マスクを用いて、露光対象物を前記露光光で露光する露光方法であって、
前記開口部と前記露光対象物との間に、前記開口部の端部で生ずる前記露光光の回折光を、前記開口部の内側に向けて屈折させる集光レンズを配置して、前記露光対象物を露光することを特徴とする露光方法。
【請求項2】
請求項1に記載の露光方法であって、
前記露光マスクは複数の前記開口部を備え、
前記集光レンズは複数の前記開口部毎に配置されていることを特徴とする露光方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の露光方法であって、
前記集光レンズは、一方のレンズ面が平面で形成された平凸レンズ形状を有していることを特徴とする露光方法。
【請求項4】
請求項3に記載の露光方法であって、
前記集光レンズは、前記平面が前記露光対象物に対向するように配置されていることを特徴とする露光方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の露光方法であって、
前記集光レンズによって集光された前記露光光が、当該集光レンズの光軸方向における投影領域内で前記露光対象物を照射するように露光することを特徴とする露光方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の露光方法に用いる露光マスクであって、
前記露光光が透過する基板上に設けられた遮光膜によって前記開口部が形成され、前記集光レンズが、連結部材によって当該基板と一体化されていることを特徴とする露光マスク。
【請求項7】
請求項6に記載の露光マスクであって、
前記集光レンズは、前記露光光が透過する略平板状の第1の材料に当該第1の材料の屈折率よりも高い屈折率を有する第2の材料が埋設されて前記集光レンズが形成されていることを特徴とする露光マスク。
【請求項8】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の露光方法に用いる露光マスクであって、
前記露光光が透過する基板の一方の面に遮光膜が設けられて前記開口部が形成され、前記基板の他方の面に当該基板の材料の屈折率よりも高い屈折率を有する材料が埋設されて前記集光レンズが形成されていることを特徴とする露光マスク。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図7】
【公開番号】特開2010−85957(P2010−85957A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258123(P2008−258123)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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