説明

露光装置

【課題】フォトマスクおよび基板を水平状態で重ねて露光する方式の露光装置において、フォトマスクおよびその関連部材の保守点検を容易に行えるようにする。
【解決手段】露光装置は、固定フレーム3と、フォトマスク9を水平に支持するフォトマスク支持ベース4とを備える。フォトマスク支持ベース4は、枢軸5によって、固定フレーム3に対して枢動可能に取り付けられる。基板10を水平に支持する基板支持台13が露光位置Eから作業位置Wへと退避したのち、フォトマスク支持ベース4は枢軸5の軸線の回りを水平位置から垂直位置まで枢動可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターンが描かれたフォトマスクと、表面に感光層が形成された基板とを互いに対向させて配置し、フォトマスクを通して基板に光を照射することにより、フォトマスクに描かれたパターンを基板に転写する露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の露光装置においては、フォトマスクと基板との双方を水平状態にして重ねて露光する方式が一般的である。
露光装置は露光ステーションと作業ステーションとを備える。フォトマスクを水平に支持するフォトマスク支持ベースは露光ステーションに位置付けられる。基板を水平に支持する基板支持台は、露光ステーションにおける露光位置と、作業ステーションにおける作業位置との間を往復移動可能である。
【0003】
作業ステーションにて基板をセットされた基板支持台は、露光ステーションまで移動する。露光ステーションでは、基板とフォトマスクとの位置合わせが行われたのち、露光が行われる。
【0004】
露光処理された基板を載せた基板支持台は、作業ステーションまで移動し、そこで処理済み基板が取り外され、未露光基板が新たに基板支持台に載せられる。以降、同様にして露光作業が行われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、フォトマスクおよび基板を水平状態にして露光を行う露光装置においては、フォトマスクは下方を向いた状態でフォトマスク支持ベースに支持されているので、保守点検作業を行う場合には、基板支持台を作業ステーションの作業位置に退避させたのち、フォトマスク支持ベースの下から無理な姿勢でフォトマスクを見上げるようにしなければならなかった。
【0006】
また、基板とフォトマスクとの位置合わせに必要なCCDカメラのように、フォトマスク支持ベースの上面に取り付けられた関連部材にも、保守点検時に十分に近づけるようにしたいとの要請がある。
【0007】
そこで本発明は、フォトマスクおよび基板を水平状態で重ねて露光する方式の露光装置において、フォトマスクおよびその関連部材の保守点検を容易に行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明によれば、
パターンが描かれたフォトマスクと、表面に感光層が形成された基板とを互いに対向させて配置し、フォトマスクを通して基板に光を照射することにより、フォトマスクに描かれたパターンを基板に転写する露光装置であって、
固定フレームと、
フォトマスクを水平に支持するフォトマスク支持ベースと、
前記フォトマスク支持ベースを前記固定フレームに対して枢動可能に取り付けるための枢軸と、
基板を水平に支持する基板支持台にして、前記フォトマスク支持ベースの下方における露光位置と、該露光位置から離間した作業位置との間を移動可能な基板支持台と、
を備え、
前記基板支持台が前記作業位置へと退避したのち、前記フォトマスク支持ベースが前記枢軸の軸線の回りを水平位置から垂直位置まで枢動可能となされている、
露光装置が提供される。
【0009】
前記枢軸の前記軸線は、前記フォトマスク支持ベースの重心またはその近傍を通っていることが好ましい。
前記枢軸の前記軸線は、前記基板支持台の移動方向に直交する方向に延びるものとすることができる。
【0010】
あるいはまた、前記枢軸の前記軸線が、前記基板支持台の移動方向に平行に延びているようにすることもできる。
前記フォトマスク支持ベースをその水平位置および垂直位置にそれぞれ保持するための保持装置を前記固定フレームに設けてもよい。
【0011】
前記フォトマスク支持ベースが前記枢軸の前記軸線の回りを枢動するよう前記フォトマスク支持ベースを駆動する駆動装置をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基板支持台を退避させたのちにフォトマスク支持ベースを枢動して垂直状態にすることができるので、フォトマスク支持ベースの下面に取り付けられたフォトマスクを楽な姿勢で容易に保守点検することができる。
【0013】
また、フォトマスク支持ベースの上面に取り付けられたカメラ等の関連部材にも近づきやすくなるので、これらの部材の保守点検も容易になる。
枢軸の軸線がフォトマスク支持ベースの重心またはその近傍を通るようにすれば、小さい力でフォトマスク支持ベースを枢動させることができる。
【0014】
基板支持台の移動方向と枢軸の軸線方向との関係は、露光装置の設置スペースを考慮して、使い勝手の良い状態を選択することができる。
フォトマスク支持ベースを水平位置および垂直位置にそれぞれ保持するための保持装置を設けることにより、露光時および保守点検時の作業を安全確実に行うことができる。
【0015】
駆動装置を利用することにより、フォトマスク支持ベースを楽に枢動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は本発明による露光装置の一実施態様の側面図、図2は図1におけるII−II方向矢視図である。露光装置は、床面1にレベルフット2によって支持された固定フレーム3を備える。固定フレーム3が占める空間は、露光ステーションEと、該露光ステーションEから離間した作業ステーションWとに区分される。
【0017】
露光ステーションEにはフォトマスク支持ベース4が配置される。フォトマスク支持ベース4は、その長さまたは幅方向の中央位置で、一対の枢軸5を介して固定フレーム3に枢動可能に取り付けられている。図2からよく理解できるように、一対の枢軸5のそれぞれは、フォトマスク支持ベース4の縁部に設けた軸受6と固定フレーム3に設けた軸受7とによって支持されている。
【0018】
フォトマスク支持ベース4は額縁形状をしており、その中央部には透明なガラス板8が取り付けられている。ガラス板8の下面に、フィルム状のフォトマスク9が貼り付けられるようにして水平に支持されている。なお、フォトマスク自体がガラス板状に形成されている場合には、ガラス板8に代えてガラス板状のフォトマスクがフォトマスク支持ベース4に直接取り付けられる。
フォトマスク支持ベース4の上面には、フォトマスク9と基板10との位置合わせを行う際に位置合わせマークを読みとるためのカメラ11とその移動機構12が搭載されている。
【0019】
また、フォトマスク支持ベース4には、位置合わせの際に基板10に対してフォトマスク9をXYθ方向に移動させるための機構(図示せず)が搭載されることもある。さらに、位置合わせの際にフォトマスク9のスケールを変化させるべく該フォトマスク9の外周に張力を加える機構(図示せず)が搭載されることもある。
【0020】
基板10は、基板支持台13のテーブル14上に水平状態で支持されている。基板10は、テーブル14の上面に開口する負圧吸着孔(図示せず)を介して行われる負圧吸引によってテーブル14上に保持される。テーブル14は、上下動可能である。
【0021】
基板支持台13は、露光ステーションEにおける露光位置と作業ステーションWにおける作業位置との間を移動可能である。基板支持台13のかかる移動は、固定フレーム3の下部にて露光ステーションEと作業ステーションWとの間を延びるように設けられたガイドレール15を含むリニア駆動機構によって行われる。
【0022】
動作について説明する。基板支持台13は、作業ステーションWにて未露光の基板10を載せ、露光ステーションEへと移動する。必要に応じてテーブル14を上昇させることにより、基板10をフォトマスク9に近づける。カメラ11等を用いて基板10とフォトマスク9との位置合わせを行ったのち、さらにテーブル14を上昇させて基板10をフォトマスク9に接近または接触させる。この時点でフォトマスク9を通して光束16を基板10に照射することにより、フォトマスク9に描かれたパターンを基板10に転写する。
【0023】
このようにして基板10が露光処理されたのち、基板10を載せた基板支持台13は露光ステーションEから作業ステーションWへと移動する。作業ステーションWでは、露光済みの基板10が取り外され、代わりに未露光の基板が基板支持台13に載せられる。以降、同様にして基板が次々と露光処理される。
【0024】
かかる露光作業が行われている間、フォトマスク支持ベース4はその水平位置を確実に保持されるため、保持部材18,19と係合している。保持部材18,19は、互いに協働してフォトマスク支持ベース4の縁部を挟持する静止アーム18と可動アーム19とを有しており、可動アーム19の動きによって、フォトマスク支持ベースはその保持状態を解除可能とされる。
【0025】
フォトマスクの保守点検時には、まず基板支持台13を作業ステーションWにおける作業位置へと退避させる。その後、保持部材18,19を解除し、フォトマスク支持ベース4を枢動させて図3に示すような垂直位置にする。枢軸5の軸線がフォトマスク支持ベース4の重心またはその近傍を通るように設計されていれば、小さな力で枢動させることができる。しかしながら、駆動装置を利用して枢動させるようにしてもよい。
【0026】
固定フレーム3の上部には、保持部材18,19と同様の保持部材20,21が設けられている。静止アーム20と可動アーム21とからなる保持部材は、フォトマスク支持ベース4を垂直状態に保持することができる。可動アーム21を動かすことにより、フォトマスク支持ベース4は保持状態を解除されることができる。
【0027】
図3から明らかなように、垂直状態となったフォトマスク支持ベース4の前後には保守点検作業に十分な空間S1,S2が確保される。作業員は、楽な姿勢でフォトマスク9やカメラ11などの関連部材を点検することができる。
【0028】
なお、本願明細書および特許請求の範囲において、「垂直位置」および「垂直状態」の意味するところは、フォトマスク支持ベースに取り付けられた部材、特にフォトマスクを保守点検するときに作業員が作業しやすい程度にまで枢動したフォトマスク支持ベースの位置および状態である。したがって、「垂直位置」および「垂直状態」の語は、厳密な「垂直」の概念に限定されるべきではなく、発明の趣旨に基づいて、厳密な垂直からある程度の角度範囲に含まれるものも「垂直位置」および「垂直状態」と解釈されるべきである。
【0029】
図示実施態様においては、枢軸5の軸線が基板支持台13の移動方向に対して直交する方向に延びているが、レイアウトの都合上、枢軸5の軸線が基板支持台13の移動方向と平行となるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による露光装置の一実施態様の側面図。
【図2】図1におけるII−II矢視図。
【図3】図1と同様の側面図であるが、フォトマスク支持ベースが垂直位置にある状態を示す。
【符号の説明】
【0031】
1 床面、2 レベルフット、3 固定フレーム、4 フォトマスク支持ベース、5 枢軸、6 軸受、7 軸受、8 ガラス板、9 フォトマスク、10 基板、11 カメラ、12 カメラの移動機構、13 基板支持台、14 テーブル、15 ガイドレール、16 光束、18 静止アーム(保持部材)、19 可動アーム(保持部材)、20 静止アーム(保持部材)、21 可動アーム(保持部材)、E 露光ステーション、S1,S2 空間、W 作業ステーション。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンが描かれたフォトマスクと、表面に感光層が形成された基板とを互いに対向させて配置し、フォトマスクを通して基板に光を照射することにより、フォトマスクに描かれたパターンを基板に転写する露光装置であって、
固定フレームと、
フォトマスクを水平に支持するフォトマスク支持ベースと、
前記フォトマスク支持ベースを前記固定フレームに対して枢動可能に取り付けるための枢軸と、
基板を水平に支持する基板支持台にして、前記フォトマスク支持ベースの下方における露光位置と、該露光位置から離間した作業位置との間を移動可能な基板支持台と、
を備え、
前記基板支持台が前記作業位置へと退避したのち、前記フォトマスク支持ベースが前記枢軸の軸線の回りを水平位置から垂直位置まで枢動可能となされている、
露光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の露光装置において、
前記枢軸の前記軸線が、前記フォトマスク支持ベースの重心またはその近傍を通っている、露光装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の露光装置において、
前記枢軸の前記軸線が、前記基板支持台の移動方向に直交する方向に延びている、露光装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の露光装置において、
前記枢軸の前記軸線が、前記基板支持台の移動方向に平行に延びている、露光装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の露光装置において、
前記フォトマスク支持ベースをその水平位置および垂直位置にそれぞれ保持するための保持装置が前記固定フレームに設けられている、露光装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の露光装置において、
前記フォトマスク支持ベースが前記枢軸の前記軸線の回りを枢動するよう前記フォトマスク支持ベースを駆動する駆動装置をさらに備えている、露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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