説明

露出制御装置および露出制御方法

【課題】露出制御装置は、広い露出調整範囲において、高い応答性でかつ高い精度で目標の露出値へ制御すること。
【解決手段】露出制御装置は、輝度信号による露出評価値EV(pv)と露出目標値EV(sp)とを用いて、複数の露出調整部により露出調整範囲ERにて露出制御する。露出目標値EV(sp)と露出評価値EV(pv)との偏差EV(err)を求め、偏差EV(err)が所定以下の定常状態でありかつゲイン露出制御範囲ER−gで露出制御しているときに、ゲイン露出調整部62が主制御量Ci−mにて露出制御するとともに、絞り露出調整部61の絞り補正量Ci−sも加わる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動的に露出を調整するカメラの露出制御装置および露出制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のスチルカメラやビデオカメラは、自動的に露出を調整する、いわゆる自動露出機能を備えるものが多い。こうした自動露出機能として、例えば、複数の露出調整部を被写体の明るさに応じて切り換えることで広い露出調整範囲に対応するとともに、撮影した画像の輝度値から算出される評価値が露出目標値となるようにフィードバック制御する機構が知られている(特許文献1,2参照)。複数の露出調整部として、レンズを通る光量を絞る絞り露出調整部、撮像素子からの信号を増幅するゲイン露出調整部、および撮像素子に蓄積する電荷の蓄積時間を変更する電子シャッタ調整部などが用いられている。
【0003】
しかし、従来の複数の露出調整部を用いた構成では、各々の露出調整部の特性を十分に活かすことができず、つまり被写体の明るさに対応した広い露出調整範囲において、高い応答性でかつ高い精度で目標の露出値へ制御することが難しいという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−129025
【特許文献2】特開2003−241248
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の技術の問題点を解決することを踏まえ、広い露出調整範囲において、高い応答性でかつ高い精度で目標露出値へ制御することができる露出制御装置および露出制御方法を簡単な構成で提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
適用例1は、被写体を撮像し、輝度信号を含む映像信号を出力する撮像素子と、上記輝度信号に基づいて算出された露出評価値と該露出評価値に対して目標露出とする露出目標値とを用いて、露出調整をする第1露出調整部、および該第1露出調整部より大きい露出調整速度でかつ低い分解能で露出調整する第2露出調整部により露出制御する露出制御手段と、を備えた露出制御装置であって、
上記露出制御手段は、
上記輝度信号に応じて露出調整される露出調整範囲を、第1露出制御範囲および第2露出制御範囲に分けて設定する露出領域設定部と、
上記第1露出調整部により露出調整可能である露出制御量を、主調整量と補正量とに設定する露出制御量設定部と、
上記露出目標値と上記露出評価値との偏差を求め、上記偏差が所定以下であり、上記第2露出制御範囲で露出制御しているときに、上記第2露出調整部による露出制御に加えて、上記第1露出調整部が上記補正量にて露出制御する露出補正制御部と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
適用例1にかかる露出制御装置では、被写体を撮像する撮像素子からの輝度信号に基づいて算出された露出評価値と露出目標値とを用いて、第1露出調整部および該第1露出調整部より露出調整速度の大きくかつ分解能の低い第2露出調整部により露出制御する。こうした露出制御は、被写体の明るさに対応した露出調整範囲を、第1露出制御範囲および第2露出制御範囲に分けて第1および第2露出調整部により実行される。第1露出調整部は、露出調整可能である露出調整量を、主調整量および補正量に分けて設定されている。露出目標値が第2露出制御範囲にあり、露出目標値と露出評価値との偏差が所定以下の定常状態であるときに、第2露出調整部による露出制御に加えて、第1露出調整部は、その補正量で露出制御する。したがって、第2露出制御範囲にて、分解能の低い第2露出調整部による露出制御に加えて、分解能の高い第1露出調整部による露出制御も行なわれるから、露出目標値へ露出値を小さい誤差で収束させることができる。
【0009】
[適用例2]
適用例2の第1および第2露出調整部は、上記撮像素子への光量を制御する絞り露出調整部、上記撮像素子の映像信号を増幅するゲイン露出調整部、または上記撮像素子に蓄積される電荷の蓄積時間を変更する電子シャッタ調整部のいずれかである構成をとることができる。
【0010】
[適用例3]
適用例3は、被写体を撮像する撮像素子からの輝度信号に基づいて算出された露出評価値と該露出評価値に対して目標露出とする露出目標値とを用いて、露出調整する第1露出調整部、および該第1露出調整部より大きい露出調整速度でかつ低い分解能で露出調整する第2露出調整部により露出制御する露出制御方法において、
上記輝度信号に応じて露出調整される露出調整範囲を、第1露出制御範囲および第2露出制御範囲に分けて設定し、
上記第2露出調整部により露出調整可能である露出制御量を、主調整量と補正量とに分けて設定し、
上記露出目標値と上記露出評価値との偏差を求め、上記偏差が所定以下であり、上記第2露出制御範囲で露出制御しているときに、上記第2露出調整部による露出制御に加えて、上記第1露出調整部が上記補正量にて露出制御することを特徴とする露出制御方法である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例にかかる露出制御装置を備えたビデオカメラの概略構成を示す説明図である。
【図2】マイクロコンピュータに備えられたビデオカメラの露出制御装置を説明するブロック図である。
【図3】複数の露出調整部を用いた場合における露出制御量と露出調整範囲との関係を説明する説明図である。
【図4】露出調整部による露出値の時間的変化を説明する説明図である。
【図5】露出制御処理を説明する説明図である。
【図6】マイクロコンピュータにより実行される応答領域判定処理を説明するフローチャートである。
【図7】過渡状態露出値分配処理を説明するフローチャートである。
【図8】定常状態露出値分配処理を説明するフローチャートである。
【図9】絞り露出制御範囲における露出制御処理を説明する説明図である。
【図10】ゲイン露出制御範囲における露出制御処理を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、上述した本発明の作用・効果を一層明らかにするため、本発明の実施の形態を実施例に基づき次の順序で説明する。
【0013】
(1)ビデオカメラの構成:
図1は本発明の実施例としてのビデオカメラ10の概略構成を示す説明図である。図示するように、ビデオカメラ10は、レンズユニット20と、撮像素子30と、AGC回路32と、画像処理DSP(Digital Signal Processor)34と、マイクロコンピュータ40とを備えている。
【0014】
レンズユニット20は、被写体側の最前面から順に、ユニット内に固定された第1レンズ21と、光軸方向に移動して変倍動作を行うズームレンズ22と、ユニット内を透過する光量を調整するアイリス機構23と、ユニット内に固定された第3レンズ24と、光軸方向に移動して焦点位置を調整するフォーカスレンズ25とを備えている。また、インナーフォーカス式のレンズユニットにおいては、ズームレンズのことをバリエータレンズと、フォーカスレンズのことをコンペンセータレンズと呼ぶ場合がある。
【0015】
ズームレンズ22には、ズームレンズ22を光軸方向に往動あるいは復動させるリードスクリューを備えたズームモータ22Mが接続されている。ズームモータ22Mはステッピングモータであり、当該ズームモータ22Mの駆動を行うズームドライバ22Dを介して、マイクロコンピュータ40に接続されている。したがって、ズームレンズ22は、マイクロコンピュータ40から指定されたステップ数に応じて、レンズユニット20内を光軸方向に移動し、変倍動作を行なうことができる。
【0016】
フォーカスレンズ25には、フォーカスレンズ25を光軸方向に往動あるいは復動させるリードスクリューを備えたフォーカスモータ25Mが接続されている。フォーカスモータ25Mは、ステッピングモータであり、当該フォーカスモータ25Mの駆動を行うフォーカスドライバ25Dを介して、マイクロコンピュータ40に接続されている。したがって、フォーカスレンズ25は、マイクロコンピュータ40から指定されたステップ数に応じて、レンズユニット20内を光軸方向に移動し、焦点位置を調整することができる。
【0017】
アイリス機構23には、当該アイリス機構23の絞りを調整するアイリスモータ23Mが接続されている。アイリスモータ23Mは、ガルバノメータであり、当該アイリスモータ23Mの駆動を行うアイリスドライバ23Dを介して、マイクロコンピュータ40に接続されている。したがって、アイリス機構23は、マイクロコンピュータ40からの指示に応じて、レンズユニット20を透過する光量を調整することができる。なお、本実施例では、ズームモータ22Mやフォーカスモータ25Mはステッピングモータであるとし、アイリスモータ23Mは、ガルバノメータであるとしたが、直流モータなど他の形式のモータを採用してもよい。
【0018】
上述したように、ズームレンズ22とフォーカスレンズ25とは、レンズユニット20内を光軸方向に移動する。そのため、レンズユニット20は、これらのレンズが予め定めた基準位置である原点に移動したかを検出するために、第1原点センサ22Sと、第2原点センサ25Sとを備えている。第1原点センサ22Sと第2原点センサ25Sとは、フォトインタラプタによって構成されており、マイクロコンピュータ40に接続されている。また、アイリス機構23は、開口面積を変更することにより絞りを調節するよう駆動される。このため、絞り量を検出するためにアイリス用位置センサ23Sを備え、マイクロコンピュータ40に接続されている。
【0019】
撮像素子30は、レンズユニット20を透過した光を受光し、この光を電気信号に変換するイメージセンサである。AGC回路32は、撮像素子30から出力される電気信号を入力し、この電気信号の出力を適切な出力に増幅する回路である。画像処理DSP34は、AGC回路32から電気信号を入力し、この信号に対してA/D変換を施すことで画像データを生成する。画像処理DSP34は、こうして生成された画像データを、コンポジットビデオ信号やSビデオ信号に変換し、これを出力端子36を介して、テレビモニタや録画装置等の外部機器に出力する。さらに、画像処理DSP34は、A/D変換によって生成した画像データから、輝度信号を抽出し、これをマイクロコンピュータ40に出力する機能を備えている。画像処理DSP34は、他にも、画像データに対してガンマ補正やアパーチャ補正、ホワイトバランスの調整など、種々の画像処理を施す機能を備えている。
【0020】
図2はマイクロコンピュータ40に備えられたビデオカメラ10の露出制御装置を説明するブロック図である。露出制御装置は、画像処理DSP34(図1)から出力される輝度信号に基づいて作成された露出評価値EV(pv)と、使用者による設定値やマイクロコンピュータ40にて設定されている露出目標値EV(sp)とを入力とし、それらの誤差が最小となるようにフィードバック制御するものであり、露出値算出部51、露出値分配部52、絞り露出調整部61(本発明にかかる第1露出調整部)、ゲイン露出調整部62(本発明にかかる第2露出調整部)および電子シャッタ調整部63を備えている。
【0021】
露出値算出部51は、露出目標値EV(sp)と露出評価値EV(pv)との差分から求められた偏差EV(err)を入力し、偏差EV(err)をゼロとする露出制御量Cを算出し、つまり、露出評価値EV(pv)が露出目標値EV(sp)へ収束する露出制御量Cを算出する。露出値分配部52は、露出値算出部51から出力される露出制御量Cおよび露出評価値EV(pv)に基づいて、絞り露出調整部61に送る絞り露出制御量Ci、ゲイン露出調整部62に送るゲイン露出制御量Cg、および電子シャッタ調整部63に送るシャッタ露出制御量Csを算出する。絞り露出調整部61は、上述したアイリスドライバ23D、アイリスモータ23Mおよびアイリス機構23から構成される機構であり、露出値分配部52からの絞り露出制御量Ciにより、アイリス機構23の絞りを開閉することで露出値を調節する。ゲイン露出調整部62は、露出値分配部52からのゲイン露出制御量Cgにより、撮像素子30の出力レベルを増減することで露出値を調節する。電子シャッタ調整部63は、露出値分配部52からのシャッタ露出制御量Csにより、撮像素子30の電荷蓄積時間を増減することで露出値を調節する。
【0022】
図3は複数の露出調整部を用いた場合における露出制御量Cと露出調整範囲ERとの関係を説明する説明図である。ここでは、図2に示すように、複数の露出調整部として、絞り露出調整部61、ゲイン露出調整部62および電子シャッタ調整部63を用いた場合について説明する。露出調整範囲ERは、被写体の明るさに応じて、4つの範囲に分けられ、つまり、低速シャッタ露出制御範囲ER−sL、ゲイン露出制御範囲ER−g、絞り露出制御範囲ER−iおよび高速シャッタ露出制御範囲ER−sHに分けられている。
【0023】
低速シャッタ露出制御範囲ER−sLは、被写体が最も暗い状態にて、電子シャッタ調整部63により露出調整される範囲であり、シャッタ露出制御量Csによる制御、つまり、電子シャッタ調整部63の電荷蓄積時間を1フレームの時間より長い時間で変更することにより調節される。このとき、ゲイン露出調整部62によるゲイン露出制御量Cgは最大値に、絞り露出調整部61による絞り露出制御量Ciは全開になっている。
【0024】
ゲイン露出制御範囲ER−gは、被写体が比較的暗い状態にて、ゲイン露出調整部62により主に露出調整される範囲であり、ゲイン露出制御量Cgの制御、つまり、映像信号のゲインを増減することにより調整され、さらに、後述する定常状態にて、絞り露出調整部61により副次的に絞り補正量Ci−sで調整される。このとき、電子シャッタ調整部63は、シャッタ露出制御量Csが一定値になっている。
【0025】
絞り露出制御範囲ER−iは、被写体が通常の明るさの状態にて、絞り露出調整部61により主に露出調整される範囲であり、絞り露出制御量Ciの制御、つまり、光学的な絞り量を変更することにより調整され、さらに、後述する過渡状態にて、ゲイン露出調整部62により副次的にゲイン補正量Cg−sで調整される。このとき、電子シャッタ調整部63は、シャッタ露出制御量Csが一定値になっている。
【0026】
高速シャッタ露出制御範囲ER−sHは、被写体が最も明るい状態にて、電子シャッタ調整部63により露出調整される範囲であり、シャッタ露出制御量Csによる制御、つまり、電子シャッタ調整部63の電荷蓄積時間を1フレームの時間より短い時間で変更することにより調整される。このとき、ゲイン露出調整部62は最小値、絞り露出調整部61は、最小の絞り量になっている。
【0027】
図4は露出調整部による露出値の時間的変化を説明する説明図であり、実線が絞り露出調整部61の絞り露出制御量Ciの時間的変化を示し、破線がゲイン露出調整部62のゲイン露出制御量Cgの時間的変化を示している。ここで、露出評価値EV(pv)から所定の露出値EV0に達するまでの時間を時定数で定義すると、絞り露出調整部61およびゲイン露出調整部62の時定数は、Ti、Tgでそれぞれ表される。このとき、Tg<Tiであるから、ゲイン露出調整部62により露出制御されるゲイン露出制御量Cgは、絞り露出調整部61より露出制御される絞り露出制御量Ciより、露出目標値EV(sp)へ速く収束することが分かる。また、露出値EVは、フレーム単位毎に所定制御量で制御され、絞り露出調整部61の絞り露出制御量Ciが小さく、高い分解能で制御され、一方、ゲイン露出調整部62のゲイン露出制御量Cgは、デジタル量で低い分解能で制御されている。よって、露出値EVが露出目標値EV(sp)に向けて制御された場合に、ゲイン露出調整部62のゲイン露出制御量Cgによる最終的な誤差ΔEVgとなり、一方、絞り露出調整部61の絞り露出制御量Ciとによる最終的な誤差ΔEViとなり、ΔEVg>ΔEViであることが分かる。すなわち、絞り露出調整部61およびゲイン露出調整部62は、露出目標値EV(sp)への応答性、分解能で制御特性がそれぞれ異なっている。なお、電子シャッタ調整部63の特性については、ここでは省略するが、シャッタ露出制御量Csは、ゲイン露出制御量Cgと同様にデジタル的な値でかつ異なった特性に設定されている。
【0028】
(2) 露出制御処理:
図5は露出制御処理を説明する説明図である。露出制御は、露出調整範囲ERにおいて、絞り露出調整部61、ゲイン露出調整部62および電子シャッタ調整部63により、それぞれ領域を分けて、露出評価値EV(pv)が露出目標値EV(sp)に収束するように実行され、つまり、通常の明るさである絞り露出制御範囲ER−iにて、光学的な調整手段である絞り露出調整部61により露出調整することにより、自然な映像を作成し、それより暗いゲイン露出制御範囲ER−gおよび低速シャッタ露出制御範囲ER−sLにてゲイン露出調整部62および電子シャッタ調整部63により電気的な露出調整を行い、また、絞り露出制御範囲ER−iより明るい高速シャッタ露出制御範囲ER−sHにて、電子シャッタ調整部63により電気的な露出調整を行なっている。
【0029】
図6はマイクロコンピュータ40により実行される応答領域判定処理を説明するフローチャートである。図6に示すように、絞り露出制御範囲ER−iおよびゲイン露出制御範囲ER−gにて、応答領域判定処理が実行される。すなわち、露出目標値EV(sp)との偏差EV(err)が算出され(ステップS101)、偏差EV(err)が所定の閾値th以上または以下であるかの判定が実行され(ステップS102)、肯定判定の場合に過渡状態露出値分配処理が実行され(ステップS110)、否定判定の場合に定常状態露出値分配処理が実行される(ステップS120)。
【0030】
図7に示す過渡状態露出値分配処理において、露出制御量Cが算出され(ステップS112)、その後、露出評価値EV(pv)に基づいて、露出調整範囲ERが決定される(ステップS114)。続くステップS116にて、露出補正手段が選択される。すなわち、露出評価値EV(pv)が絞り露出制御範囲ER−iにあれば、ゲイン露出調整部62を露出補正手段として選択する。さらにステップS118にて、露出補正手段のゲイン補正量Cg−sを算出する。すなわち、図5に示すように、絞り露出制御範囲ER−iにて、露出評価値EV(pv1)と露出目標値EV(sp1)との偏差EV(err)が所定の閾値th以上であるときには、絞り露出制御量Ciの主制御量Ci−mに加えて、ゲイン露出調整部62によりゲイン補正量Cg−sで露出制御される。
【0031】
図8に示す定常状態露出値分配処理において、露出制御量Cが算出され(ステップS122)、その後、露出評価値EV(pv)に基づいて、露出調整範囲ERが決定される(ステップS124)。続くステップS126にて、露出補正手段を選択する。すなわち、露出調整範囲ERがゲイン露出制御範囲ER−gであれば、絞り露出調整部61を露出補正手段として選択する。さらにステップS128にて、露出補正手段の絞り補正量Ci−sを算出する。すなわち、図5に示すように、ゲイン露出制御範囲ER−gにて、露出評価値EV(pv2)と露出目標値EV(sp2)との偏差EV(err)が所定の閾値th以下であるときには、ゲイン露出制御量Cgの主制御量Cg−mに加えて、絞り露出調整部61により絞り補正量Ci−sで露出制御される。
【0032】
図9は絞り露出制御範囲ER−iにおける露出制御処理を説明する説明図であり、縦軸が露出値を示し、横軸が時間を示す。本制御処理は、時刻t1から、露出評価値EV(pv1)が露出目標値EV(sp1)へ収束している場合を示している。露出目標値EV(sp1)と露出評価値EV(pv1)との偏差EV(err)が所定の閾値thを越えたと判定されると、過渡状態露出値分配処理が実行され、すなわち、絞り露出制御量Ciに加えて、ゲイン補正量Cg−sも露出制御量Cに加えられ、補正後の露出制御量Cは、(Ci + Cg)の値になる。したがって、絞り露出調整部61による露出制御によるなだらかな値に加えて、ゲイン露出調整部62による大きな値の変化を有するゲイン補正量Cg−sも加わり、露出評価値EV(pv1)は、速やかに露出目標値EV(sp1)に近づく。そして、時刻t2にて、偏差EV(err)が所定の閾値th以下と判定されると、定常状態露出値分配処理が実行され、つまり、絞り露出制御量Ciによる露出制御だけが実行され、露出目標値EV(sp1)に誤差の小さい値で収束していく。
【0033】
図10はゲイン露出制御範囲ER−gにおける露出制御処理を説明する説明図である。本制御処理は、時刻t1から、露出評価値EV(pv2)が露出目標値EV(sp2)へ収束している場合を示している。すなわち、露出目標値EV(sp2)と露出評価値EV(pv2)との偏差EV(err)が所定の閾値thを越えて過渡状態と判定されると、応答性の高いゲイン露出調整部62が選択されて、ゲイン露出制御量Cgにより制御される。そして、偏差EV(err)が閾値th以下と判定されると(時刻t2)、定常状態露出値分配処理が実行される。定常状態露出値分配処理では、ゲイン露出制御量Cgに加えて、絞り補正量Ci−sも露出制御量Cに加えられ、補正後の露出制御量Cは、(Ci+Cg)の値になる。したがって、ゲイン露出調整部62による応答性の高い露出制御に加えて、絞り露出調整部61による分解能の高い絞り補正量Ci−sも加わり、露出評価値EV(pv2)は、速やかに露出目標値EV(sp2)に収束する。
【0034】
(3) 実施例の作用・効果
上記実施例の構成により、以下の作用・効果を奏する。
(3)−1 図9に示すように、絞り露出制御範囲ER−iにて、絞り露出調整部61により高い分解能で露出制御が実行されるが、露出調整速度Vsの遅い応答性能を補うために、露出調整速度が大きいゲイン露出調整部62による露出制御も加わり、露出目標値EV(sp)への迅速な露出制御を行なうことができる。
【0035】
(3)−2 図10に示すように、ゲイン露出制御範囲ER−gにて、ゲイン露出調整部62により速い露出調整速度が実行されるが、分解能の低い特性を補うために、分解能の高い絞り露出調整部61による露出制御も加わり、露出目標値EV(sp)へ高い精度で収束させることができる。
【0036】
(3)−3 図5に示すように、露出調整範囲ERの広い範囲にて、絞り露出調整部61およびゲイン露出調整部62のそれぞれの補正値を用い、切り換えることにより、迅速かつ高精度での露出制御を行なうことができる。
【0037】
(3)−4 本実施例の絞り露出調整部61およびゲイン露出調整部62は、汎用の絞り露出調整手段であり、従来の露出調整部に特殊な機構を加える必要がなく、応答特性の改善および高い露出調整精度を得ることができる。
【0038】
(4) 他の実施例
この発明は上記実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0039】
(4)−1 上記実施例では、絞り露出調整部61、ゲイン露出調整部62および電子シャッタ調整部63の特性につき、絞り露出調整部61およびゲイン露出調整部62の分解能と応答性とを補う構成としたが、露出調整部の特徴に応じて、他の露出範囲の特性を補う手法であれば、種々設定することができ、また補正する露出制御範囲についても、複数の範囲にわたってもよい。また、これらの露出調整部は、同じ種類のものを、分解能や応答性を異なった特性として構成に適用してもよく、例えば、絞り露出調整部61で露出制御される範囲を複数に分けて、それらの分解能や応答性を変更するように構成してもよい。
【0040】
(4)−2 上記実施例では、露出調整範囲を補正する補正量を一定とした場合について説明したが、偏差の大小に応じて変化させたり、その補正量自体に中間値を設定するように適宜設定してもよい。
【0041】
(4)−3 上記実施例では、露出調整部として、絞り露出調整部、ゲイン露出調整部および電子シャッタ調整部について説明したが、これに限らず、ニュートラルデンシティフィルタ、メカニカルシャッタ、液晶シャッタなどの露出調整することができる手段であれば特に限定されない。
【符号の説明】
【0042】
10…ビデオカメラ
20…レンズユニット
21…第1レンズ
22…ズームレンズ
22D…ズームドライバ
22M…ズームモータ
22S…第1原点センサ
23…アイリス機構
23D…アイリスドライバ
23M…アイリスモータ
23S…アイリス用位置センサ
24…第3レンズ
25…フォーカスレンズ
25D…フォーカスドライバ
25M…フォーカスモータ
25S…第2原点センサ
30…撮像素子
34…画像処理DSP
36…出力端子
40…マイクロコンピュータ
51…露出値算出部
52…露出値分配部
61…絞り露出調整部
62…ゲイン露出調整部
63…電子シャッタ調整部
Cg…ゲイン露出制御量
Cg−s…ゲイン補正量
Ci…絞り露出制御量
Ci−m…主制御量
Ci−s…絞り補正量
Cs…シャッタ露出制御量
ER…露出調整範囲
ER−g…ゲイン露出制御範囲
ER−i…絞り露出制御範囲
ER−sH…高速シャッタ露出制御範囲
ER−sL…低速シャッタ露出制御範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮像し、輝度信号を含む映像信号を出力する撮像素子と、上記輝度信号に基づいて算出された露出評価値と該露出評価値に対して目標露出とする露出目標値とを用いて、露出調整をする第1露出調整部、および該第1露出調整部より大きい露出調整速度でかつ低い分解能で露出調整する第2露出調整部により露出制御する露出制御手段と、を備えた露出制御装置であって、
上記露出制御手段は、
上記輝度信号に応じて露出調整される露出調整範囲を、第1露出制御範囲および第2露出制御範囲に分けて設定する露出領域設定部と、
上記第1露出調整部により露出調整可能である露出制御量を、主調整量と補正量とに設定する露出制御量設定部と、
上記露出目標値と上記露出評価値との偏差を求め、上記偏差が所定以下であり、上記第2露出制御範囲で露出制御しているときに、上記第2露出調整部による露出制御に加えて、上記第1露出調整部が上記補正量にて露出制御する露出補正制御部と、
を備えたことを特徴とする露出制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の露出制御装置において、
上記第1および第2露出調整部は、上記撮像素子への光量を制御する絞り露出調整部、上記撮像素子の映像信号を増幅するゲイン露出調整部、または上記撮像素子に蓄積される電荷の蓄積時間を変更する電子シャッタ調整部のいずれかである露出制御装置。
【請求項3】
被写体を撮像する撮像素子からの輝度信号に基づいて算出された露出評価値と該露出評価値に対して目標露出とする露出目標値とを用いて、露出調整する第1露出調整部、および該第1露出調整部より大きい露出調整速度でかつ低い分解能で露出調整する第2露出調整部により露出制御する露出制御方法において、
上記輝度信号に応じて露出調整される露出調整範囲を、第1露出制御範囲および第2露出制御範囲に分けて設定し、
上記第2露出調整部により露出調整可能である露出制御量を、主調整量と補正量とに分けて設定し、
上記露出目標値と上記露出評価値との偏差を求め、上記偏差が所定以下であり、上記第2露出制御範囲で露出制御しているときに、上記第2露出調整部による露出制御に加えて、上記第1露出調整部が上記補正量にて露出制御すること
を特徴とする露出制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−8442(P2012−8442A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146068(P2010−146068)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000000424)株式会社エルモ社 (104)
【Fターム(参考)】