説明

静電容量変化検出回路及び半導体装置

【課題】静電容量型センサが形成された半導体チップとその容量変化を検出する検出回路が形成された半導体チップとからなるハイブリッドICにおいて、両チップ間に必要なボンディングワイヤーの数を減らす。
【解決手段】センサチップ50の裏面を、それが載置された支持基板の表面の電極に接続し、センサのキャパシタCmの一方端子Ncbを基準電位に設定する。センサチップ50の表面には他方端子Ncdのパッドを形成する。検出回路チップ52には、Cmとの接続端子Ndとなるパッドと、Ndに接続され、Cmを充電するバイアス電圧を出力するバイアス回路54と、NdにキャパシタCcを介して接続され、Cmの端子Ncdの電位変化を電気信号として検出する検出回路56とが形成される。両チップ50,52は端子Ndのパッドと端子Ncdのパッドとの間のボンディングワイヤーで接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量型センサの容量変化を検出する静電容量変化検出回路及び、当該センサと当該静電容量変化検出回路とからなる半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサマイクロホンの一種として、近年、MEMSマイクが注目されている。このMEMSマイクの基本的な構造は、ダイアフラムとバックプレートという2枚の近接して対向配置される電極板からなるキャパシタであり、当該構造がMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いてシリコン基板に形成される。このMEMSマイクは、例えば、共通の支持基板上に、MEMSマイクの半導体チップと静電容量変化検出回路の半導体チップとを載置したハイブリッドIC(Integrated Circuit)として構成することができる。
【0003】
図3は、従来のコンデンサマイクロホン装置の回路図である。また、図4は、ハイブリッドICとして構成した従来のコンデンサマイクロホン装置の模式的な斜視図である。この装置は、MEMSマイクであるキャパシタCmと、キャパシタCmの容量変化を検出する静電容量変化検出回路であるバイアス回路2及び検出回路4とからなる。
【0004】
バイアス回路2は、キャパシタCmの一方端子にバイアス電圧Vbiasを印加する。検出回路4は、オペアンプ6及び帰還抵抗Rfを含んで構成される反転増幅回路であり、キャパシタCmの他方端子に接続される。検出回路4は、キャパシタCmが音声に応じて発生する電位変化を入力信号として端子Vinに入力され、当該入力信号を増幅し端子Voutから出力する。
【0005】
MEMSマイクは半導体チップ10上に形成され、静電容量変化検出回路は半導体チップ12上に形成される。それら両半導体チップ10,12は1つのICパッケージの支持基板14にマウントされ、ハイブリッドICを構成する。
【0006】
図4に示すように、半導体チップ10の上面には、キャパシタCmの電極を構成するダイヤフラムとバックプレートとにそれぞれ接続されるボンディングパッド16,18が配置される。また、半導体チップ12の上面には、それぞれバイアス回路2の出力端子Vbias、検出回路4の入力端子Vinとなるボンディングパッド20,22が配置される。この他、半導体チップ12には、回路の電源Vdd,Vss、及び検出回路の出力端子Voutに対応するボンディングパッド24,26,28も配置される。
【0007】
半導体チップ10,12間には、キャパシタCmのバックプレートにVbiasを印加するためにボンディングパッド18,20間を接続するボンディングワイヤー30が設けられ、また、キャパシタCmのダイヤフラムにの電位変化をVinに入力するためにボンディングパッド16,22間を接続するボンディングワイヤー32が設けられる。
【0008】
半導体チップ12の基準電位Vssは接地電位GNDに設定される。このVssの設定は、例えば、ボンディングパッド24とICパッケージに設けられ外部のGNDに接続されるボンディングパッド34とをワイヤー接続することで実現できる。また、Vssの設定は、支持基板14の表面に電極を設け、導電性ペースト等を用いて半導体チップ12の裏面を当該電極に接着することでも実現できる。
【0009】
ここで、キャパシタCmのバックプレートは半導体チップ10のシリコン基板により構成され、基本的に半導体チップ10の裏面と電気的につながっている。上述のようにバックプレートはVbiasを印加されるので、半導体チップ10裏面は、支持基板14のVssを供給する表面電極との間の絶縁を保つ必要がある。そのため、半導体チップ10は、絶縁性ペースト36を用いて支持基板14上に接着することが行われている。
【特許文献1】特開平11−23609号公報
【特許文献2】特開2003−148906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
静電容量型センサが構成された半導体チップ10と静電容量変化検出回路が構成された半導体チップ12との間に必要なボンディングワイヤーの数が多いほど、組立の工数・コストが増加する一方、結線箇所の増加に伴って信頼性が低下する可能性があるという問題がある。
【0011】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、チップ間のボンディングワイヤーの数の削減を可能とする静電容量変化検出回路及び、当該回路と静電容量型センサとからなる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る静電容量変化検出回路は、静電容量型のセンサに接続され、当該センサを構成するキャパシタ部の静電容量の変化を電気信号として検出するものであって、前記キャパシタ部の一方端に接続される端子と、前記端子に接続され、前記キャパシタ部を充電するバイアス電圧を出力するバイアス回路と、前記端子にDCカットキャパシタを介して接続され、前記キャパシタ部の前記一方端の電位変化を前記電気信号として検出する検出回路と、を有するものである。
【0013】
本発明に係る半導体装置は、静電容量型のセンサを形成された第1の半導体素子と、前記センサのキャパシタ部の静電容量の変化を電気信号として検出する第2の半導体素子と、が共通の支持基板上に載置され、前記第2の半導体素子が、前記第1の半導体素子との間のワイヤー接続により、前記キャパシタ部の一方端に接続されるボンディングパッドと、前記ボンディングパッドに接続され、前記キャパシタ部を充電するバイアス電圧を出力するバイアス回路と、前記ボンディングパッドにDCカットキャパシタを介して接続され、前記キャパシタ部の前記一方端の電位変化を前記電気信号として検出する検出回路と、を有し、前記第1の半導体素子が、その裏面を前記支持基板の表面に設けられた表面電極に電気的に接続され、当該表面電極から前記キャパシタ部の他方端に対する基準電位を供給されるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、静電容量変化検出回路を構成する半導体チップ(検出回路チップ)から、静電容量型センサを構成する半導体チップ(センサチップ)へバイアス電圧を供給する信号経路と、センサチップから検出回路チップへセンサの出力信号を伝達する信号経路とが共通化される。すなわち、それら信号経路を1本のボンディングワイヤーで構成することができ、それらを別々のボンディングワイヤーで接続する従来の構成に比べて、ボンディングワイヤーの本数が削減される。これにより、組立の工数・コストの削減が可能となると共に、結線箇所の減少による信頼性の向上が図られる。また、ボンディングパッドも減少するので、各チップのサイズ縮小が図られる。よって、センサチップ及び検出回路チップからなる半導体装置の小型化が図れる。また、センサチップは、検出回路チップと同じくチップ裏面から基準電位を取得し利用する。すなわち、センサチップの裏面の絶縁が不要となるので、検出回路チップとの間隔を狭めることが可能となる。この点でも半導体装置の小型化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)について、図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、実施形態に係るコンデンサマイクロホン装置の概略の回路図である。本装置はコンデンサマイクロホンとしてMEMSマイクを用い、当該MEMSマイクが形成された半導体素子であるセンサチップ50と、MEMSマイクの静電容量変化を検出する回路が形成された半導体素子である検出回路チップ52とが1つのパッケージに搭載されたハイブリッドICである。
【0017】
センサチップ50に形成されるMEMSマイクは、ダイアフラム及びバックプレートを電極板とするキャパシタ部を有する。回路図である図1において、当該キャパシタ部はキャパシタCmで表されている。Cmのバックプレート側の端子Ncbは、GNDに接地され、ダイアフラム側の端子Ncdは検出回路チップ52の端子Ndに接続される。
【0018】
検出回路チップ52に形成される静電容量変化検出回路は、端子Ndに接続され、Cmを充電するバイアス電圧Vbiasを出力するバイアス回路54と、端子NdにDCカットキャパシタCcを介して接続され、Cmの端子Ncdの電位変化を電気信号として検出する検出回路56とを有する。
【0019】
バイアス回路54は、例えば、チャージポンプ回路を含んで構成され、検出回路チップ52に供給される基準電源Vddから昇圧動作により、MEMSマイクの駆動に必要な高電圧であるVbiasを生成する。生成されたVbiasは抵抗Rbを介して端子Ndに印加される。このVbiasは、検出回路チップ52からCmの端子Ncdに印加される。キャパシタCmは、Ncdと、接地電位GNDを印加される端子Ncbとの間の電圧に応じて充電される。
【0020】
検出回路56は、オペアンプ58及び帰還抵抗Rfを含んで構成される反転増幅回路であり、オペアンプ58の反転入力端子がキャパシタCcを介して端子Ndに接続される。音声に応じてMEMSマイクのダイアフラムが変位するとCmの容量値が変化し、充電されたCmの端子間電圧Vmが変化する。端子NcbがGNDに固定されていることから、端子Ncdの電位がVmとなり、VmはMEMSマイクの出力信号として検出回路チップ52の端子Ndに伝達される。ダイアフラムの変位に応じた電圧信号Vmの時間的な変化、すなわち交流成分はCcを通過しオペアンプ58の反転入力端子に伝達される。検出回路56は、このVmの交流成分を増幅した電圧信号Voutを音声信号として、端子Noutから後段の信号処理回路へ出力する。
【0021】
ちなみに、バイアス回路54と端子Ndとの間に直列接続される抵抗Rbは、高抵抗に設定され、Vmの変化に応じて端子Ndとバイアス回路54との間に流れる電流を抑制する。これにより、Ccを介してオペアンプ58へ伝達される交流信号のゲインが低下することが防止される。
【0022】
図2は、ハイブリッドICとして構成される本装置の模式的な斜視図である。それぞれシリコン基板からなるセンサチップ50及び検出回路チップ52は、共通の支持基板70の上に載置される。センサチップ50のバックプレートはシリコン基板を介して、当該チップの裏面と電気的につながっており、当該裏面がCmの端子Ncbとして機能する。これに対応して、センサチップ50の上面にはNcbは設けられていない。支持基板70の表面にはGNDに接続された表面電極が形成される。センサチップ50は導電性ペースト74を用いて支持基板70に接着され、表面電極からセンサチップ50の裏面にGNDが印加される。これにより端子Ncbの電位はGNDに設定される。
【0023】
センサチップ50の表面には、ダイヤフラムが形成されると共に、それにつながる端子Ncdとしてボンディングパッド76が形成される。
【0024】
検出回路チップ52の表面には、図1に示したバイアス回路54、検出回路56等の回路が形成される。図2の検出回路チップ52の表面には、当該回路の端子を構成するボンディングパッド80〜86が示されている。ボンディングパッド80は端子Ndを構成し、ボンディングパッド76,80間はボンディングワイヤー90で接続される。これにより、センサチップ50と検出回路チップ52との間が接続され、バイアス回路54からCmへVbiasを印加すること、及びCmの電圧Vmの変動を検出回路56で検知、増幅することが可能とされる。
【0025】
ボンディングパッド82,84はそれぞれ、回路へ電源Vdd,Vssを供給する端子である。例えば、ボンディングパッド84は、ボンディングワイヤー92で支持基板70上のボンディングパッド94に接続され、支持基板70上の表面電極からVssとしてGNDの供給を受ける。なお、検出回路チップ52もセンサチップ50と同様、その裏面からVssとしてGNDの供給を受ける構成とすることができる。その場合、支持基板70にはセンサチップ50及び検出回路チップ52それぞれの裏面が接続される表面電極を形成し、検出回路チップ52も、センサチップ50と同様に、導電性ペーストで表面電極に裏面が接続される構成とすることができる。
【0026】
また、ボンディングパッド82は、図示しないボンディングワイヤーを介してパッケージのピン等に接続され、外部回路から当該ピンに供給される電圧Vddを印加される。また、ボンディングパッド86は、検出回路56の出力端子Noutを構成し、図示しないボンディングワイヤーを介してパッケージのピン等に接続され、当該ピンから後段回路へのVoutの出力を可能とする。
【0027】
なお、本実施形態では、MEMSマイクを用いた構成を説明したが、本発明は、他の静電容量型センサを用いた構成にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係るコンデンサマイクロホン装置の概略の回路図である。
【図2】本発明の実施形態に係るコンデンサマイクロホン装置であるハイブリッドICの模式的な斜視図である。
【図3】従来のコンデンサマイクロホン装置の回路図である。
【図4】従来のコンデンサマイクロホン装置であるハイブリッドICの模式的な斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
50 センサチップ、52 検出回路チップ、54 バイアス回路、56 検出回路、58 オペアンプ、70 支持基板、74 導電性ペースト、76,80〜86 ボンディングパッド、 90,92 ボンディングワイヤー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量型のセンサに接続され、当該センサを構成するキャパシタ部の静電容量の変化を電気信号として検出する静電容量変化検出回路であって、
前記キャパシタ部の一方端に接続される端子と、
前記端子に接続され、前記キャパシタ部を充電するバイアス電圧を出力するバイアス回路と、
前記端子にDCカットキャパシタを介して接続され、前記キャパシタ部の前記一方端の電位変化を前記電気信号として検出する検出回路と、
を有することを特徴とする静電容量変化検出回路。
【請求項2】
静電容量型のセンサを形成された第1の半導体素子と、前記センサのキャパシタ部の静電容量の変化を電気信号として検出する第2の半導体素子と、が共通の支持基板上に載置された半導体装置において、
前記第2の半導体素子は、
前記第1の半導体素子との間のワイヤー接続により、前記キャパシタ部の一方端に接続されるボンディングパッドと、
前記ボンディングパッドに接続され、前記キャパシタ部を充電するバイアス電圧を出力するバイアス回路と、
前記ボンディングパッドにDCカットキャパシタを介して接続され、前記キャパシタ部の前記一方端の電位変化を前記電気信号として検出する検出回路と、
を有し、
前記第1の半導体素子は、その裏面を前記支持基板の表面に設けられた表面電極に電気的に接続され、当該表面電極から前記キャパシタ部の他方端に対する基準電位を供給されること、
を特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体装置において、
前記第1及び第2の半導体素子は共に、導電性ペーストを用いて前記表面電極に接着されること、を特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−211421(P2008−211421A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−45011(P2007−45011)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(506227884)三洋半導体株式会社 (1,155)
【Fターム(参考)】