非常用トイレ
【課題】 構成を簡略化することができるとともに、便器への取付作業が容易であり、複数回使用することができる非常用トイレを提供する。
【解決手段】 便器本体2と便座3との間に挾持可能とした枠状の台座4と、複数の気密性の袋10を1枚ずつ分離可能に重ね合わせるとともに、複数の袋10を開口した状態で、開口縁部11を台座4の上面12に取外し可能に止着し、かつ複数の袋10における底部13を、台座4の開口10から便器本体2内に挿入可能とした排泄物蓄積部9とを備えるものとする。
【解決手段】 便器本体2と便座3との間に挾持可能とした枠状の台座4と、複数の気密性の袋10を1枚ずつ分離可能に重ね合わせるとともに、複数の袋10を開口した状態で、開口縁部11を台座4の上面12に取外し可能に止着し、かつ複数の袋10における底部13を、台座4の開口10から便器本体2内に挿入可能とした排泄物蓄積部9とを備えるものとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存のトイレの機能停止時に、該トイレに装着して使用する非常用トイレに関する。
【背景技術】
【0002】
地震等の災害時に、上水道や下水道が機能停止した場合、水洗トイレを使用することはできなくなる。そのため、上下水道が機能停止した場合でも、便器に取付けて使用することができるようにした非常用トイレが公知である(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1に記載の発明においては、ほぼ倒立四角錐とした袋の開口縁部における4箇所の角に把持部を設け、この袋を複数枚重ね合わせて、袋集合体を形成している。
使用時には、袋集合体における袋の開口縁部を水洗トイレの便器本体の開口縁部に被せて、把持部を便器本体の外側面に貼着し、かつ袋の底部を便器本体内に挿入し、その上から便座を被せる。
使用後は、便座を持ち上げて、袋集合体における最上位の袋の把持部を、他の袋の把持部と分離して持ち上げることにより、最上位の袋を他の袋から分離して、排泄物と一緒に廃棄することができる。
【0004】
特許文献2に記載の発明においては、袋の両端に、互いに対向するポケットを形成し、このポケットに、中央に孔を設けた長方形の便座シートにおける長手方向の両端部を差し込むことにより、便座シートを袋に取付けるようにしている。
使用時には、便座シートを便器本体の上にセットし、袋の底部を便器本体内に挿入する。
使用後は、便座シートを中央から折り曲げ、折り曲げた部分同士を端部に設けたシール部によって接合することにより、袋の開口部を閉じた状態で、排泄物と一緒に廃棄することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−83538号公報
【特許文献2】実用新案登録第3144187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されているものは、各袋が特殊な形状をしているので、製造が面倒であり、しかも便器への取付作業が面倒で、手間がかかるだけでなく、便器に安定して装着することができず、便器内に落下するおそれがある。
特許文献2に記載されているものにおいても、袋にポケットを形成したり、そこに便座シートの端部を挿入したりしなければならないため、製造や取付作業が面倒であり、しかも複数回使用することができず、災害時等に、多数の人が使用するには不適である。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、構成を簡略化することができるとともに、便器へ簡単に取付けることができ、かつ複数回使用することができるようにした非常用トイレを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1) 便器本体上に設けた便座の着座面に載置可能とするか、または便器本体と便座との間に挾持可能とした枠状の台座と、複数の気密性の袋を一枚ずつ分離可能に重ね合わせるとともに、複数の袋を開口した状態で、開口縁部を台座の上面に取外し可能に止着し、かつ複数の袋における底部を、台座の開口から便器本体内に挿入可能とした排泄物蓄積部とを備える。
【0009】
このような構成とすると、台座を便座上に載置するか、または便器本体と便座との間に挾持し、袋の底部を台座の開口から便器本体内に挿入するだけで、トイレに簡単にかつ安定よく取付けることができる。
また、複数枚の袋を、使用する毎に1枚ずつ持ち上げるだけで他の袋と簡単に分離することができるので、複数回使用することができる。
さらに、構造が簡単で、袋や台座を簡単に製造できる。
【0010】
(2) 上記(1)項において、前記台座の後部に左右方向の折り曲げ案内線を設け、着座時に台座の後端部が、前記便座または便器本体の上面後部に設けた隆起部によって、前記折り曲げ案内線から上方に折り曲げられるようにする。
【0011】
このような構成とすると、使用者が着座したとき、台座の後端部が、便座または便器本体の後端部の温水設備、送風設備等を覆う隆起部により、折り曲げ案内線から上方に容易に折り曲げられるため、台座全体が便座または便器本体の上面になじみ、安定よく取付けることができる。
【0012】
(3) 上記(1)または(2)項において、前記複数の袋を、互いに連続する2辺から開口可能とするとともに、他の2辺を閉塞し、閉じた状態においてほぼ四角形となるように形成し、開口可能な2辺を開いた状態で、当該2辺の開口縁部を、前記座板の上面に取外し可能に止着し、さらに閉塞された2辺が前記便器本体内において前後方向を向くようにする。
【0013】
このような構成とすると、合成樹脂製の袋等を開口から底部に至る中心線で二等分したものを複数枚重ね合わせて、台座に取付けるだけで簡単に製造することができる。
【0014】
(4) 上記(3)項において、前記複数の袋を、閉じた状態においてほぼ長方形となるように形成し、閉塞された長辺および短辺が、短辺を後位として、前記便器本体内において前後方向を向くようにして、複数の袋の底部を便器本体内に挿入可能とする。
【0015】
このような構成とすると、排泄物の落下位置と袋の最低部とが一致し、排泄物を安定よく受け止めることができる。
【0016】
(5) 上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、前記複数の袋における開口縁部の前端部および後端部を、前記台座の着座面に取外し可能に止着し、それ以外の部分を、台座の上面に止着することなく載置する。
【0017】
このような構成とすると、排泄物蓄積部の袋を台座に簡単に取付けることができる。また、台座を便座上に載置した場合でも、袋の止着部が着座者に接触しないため、着座者が不快感を感じないようにすることができる。
【0018】
(6) 上記(1)〜(5)項のいずれかにおいて、前記複数の袋の開口縁部を、前記台座の下面から打ち込まれたコ形のステープルによって前記台座の上面に止着する。
【0019】
このような構成とすると、袋の開口縁部が、ステープルにおける両側片によって、中間部があいた状態で止着されるので、使用後に、最上位の袋を簡単に分離させることができる。
【0020】
(7) 上記(1)〜(6)項のいずれかにおいて、前記複数の袋における開口可能な2辺の角部を、他の袋から引き剥がすための把手とする。
【0021】
このような構成とすると、袋に把手を特別に設ける必要がなく、しかも、袋における開口可能な2辺の角部をもって、最上位の袋を1枚ずつ簡単に引き剥がすことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、構成を簡略化することができるとともに、便器へ簡単に取付けることができ、かつ複数回使用することができるようにした非常用トイレを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る非常用トイレの一実施形態を、水洗便器における便器本体と便座との間に取り付けた状態において、右斜め前上方から見た斜視図である。
【図2】台座と排泄物蓄積部とを、左斜め前上方から見た分解斜視図である。
【図3】台座に排泄物蓄積部を取付ける要領を説明する斜視図である。
【図4】便器に取付ける前の本発明の非常用トイレを、右斜め前上方から見た斜視図である。
【図5】便座を上げた状態において、便器本体に取り付けた本発明の非常用トイレを、右斜め前上方から見た斜視図である。
【図6】本発明に係る非常用トイレを、水洗便器に装着された便座の上に取り付けた状態において、右斜め前上方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る非常用トイレの一実施形態を、水洗便器における便器本体と便座との間に取り付けた状態において、右斜め前上方から見た斜視図である。
【0025】
台座4は、図2に示すように、段ボール等の厚紙にポリマーを含浸させたもの、或いは合成樹脂製の板材等によって、便座3における着座面5(図1参照)とほぼ同程度の大きさで、前端縁が円弧状に、後端縁が直線状に形成され、中央に、長径が前後方向を向く楕円形の開口6が設けられている。
台座4の後部には、開口6の後端縁7より僅かに前方に位置する左右方向の折り曲げ案内線8が、他の部分より折り曲げ易くなるようにして設けられている。この折り曲げ案内線8は、例えばV溝、薄肉片、または、破線状の切込み等とすることができる。
【0026】
図1に示すように、台座4には、袋状の排泄物蓄積部9が取付けられている。この排泄物蓄積部9は、複数の気密性の袋10を重ね合わせるとともに、複数の袋10を開口した状態で、その開口縁部11を台座4の上面12に取外し可能に止着し、かつ複数の袋10における底部13を、台座4の開口6から便器本体2内に挿入可能としてある。
【0027】
排泄物蓄積部9の袋10は、図2に示すように、開口を閉じた状態で長方形となるように形成され、一方の長辺14および短辺15が開口され、他の長辺16および短辺17が閉塞されている。袋10の長辺14、16は、台座4の開口6の長径より大とし、短辺15、17は、短径より大としてある。
【0028】
袋10は、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニール等の水密薄片からなる一辺が開口された四角形の袋を、開口から底辺に至る中心軸線で2等分したものを使用することができる。
【0029】
台座4に排泄物蓄積部9を取付けるには、重ね合わせた複数の袋10を閉じた状態で、開口された長辺14および短辺15を斜め上方へ向け、閉塞された短辺17が後方に位置し、かつ閉塞された長辺16が前方を向くようにして袋10を傾け、底部13を台座4の上方から開口6に挿入する。
このようにすると、図3に示すように、閉塞された長辺16および短辺17の中間部が、台座4の開口6における長径部の縁に掛止される。
【0030】
この状態で、図4に示すように、排泄物蓄積部9における各袋10の開口された長辺14および短辺15を、台座4の開口6に沿って開口させると、これらの長辺14および短辺15の閉塞端18、19間に形成される開口縁部11が、台座4の上面12に当接する。
【0031】
この状態で、開口縁部11における前後端部を、台座4の下面から打ち込んだコ形のステープル20によって台座4に止着し、開口縁部11の前後端部以外の部分は、台座4に止着することなく載置するだけとする。
各袋10における開口縁部11より外側の三角部分の角部は、台座4の外周縁より外側に突出しているため、把手21として使用することができる。
【0032】
この非常用トイレAを水洗便器1に取付けるには、図5に示すように、便座3を上げた状態において、台座4を、折り曲げ案内線8が後方に位置するようにして、便器本体2の開口縁部22上に載置し、排泄物蓄積部9における袋10の底部13を台座4の開口6から便器本体2内に挿入し、便器本体2内に挿入された部分を袋状に広げる。
【0033】
このようにして、便器本体2上に非常用トイレAを取り付けた後、図1に示すように、便座3を便器本体2上に降ろすと、非常用トイレAの台座4、および袋10の開口縁部11が、便器本体2の開口縁部22(図5参照)と便座3とによって挾持され、非常用トイレAが水洗便器1に位置ずれすることなく確実に装着される。
排泄物蓄積部9における袋10の底部13には、吸水材等(図示略)を挿入して使用するのが好ましい。
【0034】
図5に示すように、便器本体2の後端部に、便器本体2の温水設備、送風設備などを覆うため、上方を向く隆起部23が設けられている場合は、非常用トイレAを便器本体2に取り付けた当初において、台座4の後端部が隆起部23に当接して持ち上げられる。
【0035】
この状態で、台座4に便座3の荷重がかかると、台座4の後端部は折り曲げ案内線8から上方に折り曲げられ、台座4は、便器本体2の開口縁部22および隆起部23に当接するため、安定性が良くなる。
【0036】
排泄物蓄積部9の把手21を、台座4および便器本体2の外周縁から下方に折り曲げ、左右の把手21、21により台座4および便器本体2を左右から挟むようにすることにより、さらに安定性が良くなる。
【0037】
非常用トイレAを使用した後は、便座3を持ち上げ、排泄物蓄積部9における最上位の袋10における左右両側の把手21を持ち上げることにより、ステープル20によって台座4に止着されている開口縁部11の前後端部を簡単に外すことができ、この袋10を他の袋10と容易に分離することができるため、排泄物を入れたままで、袋10を簡単に廃棄することができる。
【0038】
この非常用トイレAは、図6に示すように、便器本体2上に装着した便座3の着座面5上に載置して使用することもできる。
この場合は、便座3の着座面5上に台座4を載置し、排泄物蓄積部9の袋10を台座4の開口6から便器本体2内に挿入し、便器本体2内に挿入された部分を開口6に沿って広げるようにする。
【0039】
本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で、例えば次のような変形した態様での実施が可能である。
(1)排泄物蓄積部9における複数の袋10を、閉じた状態においてほぼ正方形となるように形成し、この正方形における連続する2辺を開口するとともに、他の2辺を閉塞し、閉塞された2辺が、便器本体2内において前後方向を向くようにする。
(2)水洗便器1だけでなく、上面が開口する単なる箱体上に、台座4を載置し、袋10における底部13を箱体内に挿入して使用する。
【符号の説明】
【0040】
A 非常用トイレ
1 水洗便器
2 便器本体
3 便座
4 台座
5 着座面
6 開口
7 後端縁
8 折り曲げ案内線
9 排泄物蓄積部
10 袋
11 開口縁部
12 上面
13 底部
14 長辺(開口)
15 短辺(開口)
16 長辺
17 短辺
18 閉塞端
19 閉塞端
20 ステープル
21 把手
22 開口縁部
23 隆起部
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存のトイレの機能停止時に、該トイレに装着して使用する非常用トイレに関する。
【背景技術】
【0002】
地震等の災害時に、上水道や下水道が機能停止した場合、水洗トイレを使用することはできなくなる。そのため、上下水道が機能停止した場合でも、便器に取付けて使用することができるようにした非常用トイレが公知である(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1に記載の発明においては、ほぼ倒立四角錐とした袋の開口縁部における4箇所の角に把持部を設け、この袋を複数枚重ね合わせて、袋集合体を形成している。
使用時には、袋集合体における袋の開口縁部を水洗トイレの便器本体の開口縁部に被せて、把持部を便器本体の外側面に貼着し、かつ袋の底部を便器本体内に挿入し、その上から便座を被せる。
使用後は、便座を持ち上げて、袋集合体における最上位の袋の把持部を、他の袋の把持部と分離して持ち上げることにより、最上位の袋を他の袋から分離して、排泄物と一緒に廃棄することができる。
【0004】
特許文献2に記載の発明においては、袋の両端に、互いに対向するポケットを形成し、このポケットに、中央に孔を設けた長方形の便座シートにおける長手方向の両端部を差し込むことにより、便座シートを袋に取付けるようにしている。
使用時には、便座シートを便器本体の上にセットし、袋の底部を便器本体内に挿入する。
使用後は、便座シートを中央から折り曲げ、折り曲げた部分同士を端部に設けたシール部によって接合することにより、袋の開口部を閉じた状態で、排泄物と一緒に廃棄することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−83538号公報
【特許文献2】実用新案登録第3144187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されているものは、各袋が特殊な形状をしているので、製造が面倒であり、しかも便器への取付作業が面倒で、手間がかかるだけでなく、便器に安定して装着することができず、便器内に落下するおそれがある。
特許文献2に記載されているものにおいても、袋にポケットを形成したり、そこに便座シートの端部を挿入したりしなければならないため、製造や取付作業が面倒であり、しかも複数回使用することができず、災害時等に、多数の人が使用するには不適である。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、構成を簡略化することができるとともに、便器へ簡単に取付けることができ、かつ複数回使用することができるようにした非常用トイレを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1) 便器本体上に設けた便座の着座面に載置可能とするか、または便器本体と便座との間に挾持可能とした枠状の台座と、複数の気密性の袋を一枚ずつ分離可能に重ね合わせるとともに、複数の袋を開口した状態で、開口縁部を台座の上面に取外し可能に止着し、かつ複数の袋における底部を、台座の開口から便器本体内に挿入可能とした排泄物蓄積部とを備える。
【0009】
このような構成とすると、台座を便座上に載置するか、または便器本体と便座との間に挾持し、袋の底部を台座の開口から便器本体内に挿入するだけで、トイレに簡単にかつ安定よく取付けることができる。
また、複数枚の袋を、使用する毎に1枚ずつ持ち上げるだけで他の袋と簡単に分離することができるので、複数回使用することができる。
さらに、構造が簡単で、袋や台座を簡単に製造できる。
【0010】
(2) 上記(1)項において、前記台座の後部に左右方向の折り曲げ案内線を設け、着座時に台座の後端部が、前記便座または便器本体の上面後部に設けた隆起部によって、前記折り曲げ案内線から上方に折り曲げられるようにする。
【0011】
このような構成とすると、使用者が着座したとき、台座の後端部が、便座または便器本体の後端部の温水設備、送風設備等を覆う隆起部により、折り曲げ案内線から上方に容易に折り曲げられるため、台座全体が便座または便器本体の上面になじみ、安定よく取付けることができる。
【0012】
(3) 上記(1)または(2)項において、前記複数の袋を、互いに連続する2辺から開口可能とするとともに、他の2辺を閉塞し、閉じた状態においてほぼ四角形となるように形成し、開口可能な2辺を開いた状態で、当該2辺の開口縁部を、前記座板の上面に取外し可能に止着し、さらに閉塞された2辺が前記便器本体内において前後方向を向くようにする。
【0013】
このような構成とすると、合成樹脂製の袋等を開口から底部に至る中心線で二等分したものを複数枚重ね合わせて、台座に取付けるだけで簡単に製造することができる。
【0014】
(4) 上記(3)項において、前記複数の袋を、閉じた状態においてほぼ長方形となるように形成し、閉塞された長辺および短辺が、短辺を後位として、前記便器本体内において前後方向を向くようにして、複数の袋の底部を便器本体内に挿入可能とする。
【0015】
このような構成とすると、排泄物の落下位置と袋の最低部とが一致し、排泄物を安定よく受け止めることができる。
【0016】
(5) 上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、前記複数の袋における開口縁部の前端部および後端部を、前記台座の着座面に取外し可能に止着し、それ以外の部分を、台座の上面に止着することなく載置する。
【0017】
このような構成とすると、排泄物蓄積部の袋を台座に簡単に取付けることができる。また、台座を便座上に載置した場合でも、袋の止着部が着座者に接触しないため、着座者が不快感を感じないようにすることができる。
【0018】
(6) 上記(1)〜(5)項のいずれかにおいて、前記複数の袋の開口縁部を、前記台座の下面から打ち込まれたコ形のステープルによって前記台座の上面に止着する。
【0019】
このような構成とすると、袋の開口縁部が、ステープルにおける両側片によって、中間部があいた状態で止着されるので、使用後に、最上位の袋を簡単に分離させることができる。
【0020】
(7) 上記(1)〜(6)項のいずれかにおいて、前記複数の袋における開口可能な2辺の角部を、他の袋から引き剥がすための把手とする。
【0021】
このような構成とすると、袋に把手を特別に設ける必要がなく、しかも、袋における開口可能な2辺の角部をもって、最上位の袋を1枚ずつ簡単に引き剥がすことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、構成を簡略化することができるとともに、便器へ簡単に取付けることができ、かつ複数回使用することができるようにした非常用トイレを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る非常用トイレの一実施形態を、水洗便器における便器本体と便座との間に取り付けた状態において、右斜め前上方から見た斜視図である。
【図2】台座と排泄物蓄積部とを、左斜め前上方から見た分解斜視図である。
【図3】台座に排泄物蓄積部を取付ける要領を説明する斜視図である。
【図4】便器に取付ける前の本発明の非常用トイレを、右斜め前上方から見た斜視図である。
【図5】便座を上げた状態において、便器本体に取り付けた本発明の非常用トイレを、右斜め前上方から見た斜視図である。
【図6】本発明に係る非常用トイレを、水洗便器に装着された便座の上に取り付けた状態において、右斜め前上方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る非常用トイレの一実施形態を、水洗便器における便器本体と便座との間に取り付けた状態において、右斜め前上方から見た斜視図である。
【0025】
台座4は、図2に示すように、段ボール等の厚紙にポリマーを含浸させたもの、或いは合成樹脂製の板材等によって、便座3における着座面5(図1参照)とほぼ同程度の大きさで、前端縁が円弧状に、後端縁が直線状に形成され、中央に、長径が前後方向を向く楕円形の開口6が設けられている。
台座4の後部には、開口6の後端縁7より僅かに前方に位置する左右方向の折り曲げ案内線8が、他の部分より折り曲げ易くなるようにして設けられている。この折り曲げ案内線8は、例えばV溝、薄肉片、または、破線状の切込み等とすることができる。
【0026】
図1に示すように、台座4には、袋状の排泄物蓄積部9が取付けられている。この排泄物蓄積部9は、複数の気密性の袋10を重ね合わせるとともに、複数の袋10を開口した状態で、その開口縁部11を台座4の上面12に取外し可能に止着し、かつ複数の袋10における底部13を、台座4の開口6から便器本体2内に挿入可能としてある。
【0027】
排泄物蓄積部9の袋10は、図2に示すように、開口を閉じた状態で長方形となるように形成され、一方の長辺14および短辺15が開口され、他の長辺16および短辺17が閉塞されている。袋10の長辺14、16は、台座4の開口6の長径より大とし、短辺15、17は、短径より大としてある。
【0028】
袋10は、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニール等の水密薄片からなる一辺が開口された四角形の袋を、開口から底辺に至る中心軸線で2等分したものを使用することができる。
【0029】
台座4に排泄物蓄積部9を取付けるには、重ね合わせた複数の袋10を閉じた状態で、開口された長辺14および短辺15を斜め上方へ向け、閉塞された短辺17が後方に位置し、かつ閉塞された長辺16が前方を向くようにして袋10を傾け、底部13を台座4の上方から開口6に挿入する。
このようにすると、図3に示すように、閉塞された長辺16および短辺17の中間部が、台座4の開口6における長径部の縁に掛止される。
【0030】
この状態で、図4に示すように、排泄物蓄積部9における各袋10の開口された長辺14および短辺15を、台座4の開口6に沿って開口させると、これらの長辺14および短辺15の閉塞端18、19間に形成される開口縁部11が、台座4の上面12に当接する。
【0031】
この状態で、開口縁部11における前後端部を、台座4の下面から打ち込んだコ形のステープル20によって台座4に止着し、開口縁部11の前後端部以外の部分は、台座4に止着することなく載置するだけとする。
各袋10における開口縁部11より外側の三角部分の角部は、台座4の外周縁より外側に突出しているため、把手21として使用することができる。
【0032】
この非常用トイレAを水洗便器1に取付けるには、図5に示すように、便座3を上げた状態において、台座4を、折り曲げ案内線8が後方に位置するようにして、便器本体2の開口縁部22上に載置し、排泄物蓄積部9における袋10の底部13を台座4の開口6から便器本体2内に挿入し、便器本体2内に挿入された部分を袋状に広げる。
【0033】
このようにして、便器本体2上に非常用トイレAを取り付けた後、図1に示すように、便座3を便器本体2上に降ろすと、非常用トイレAの台座4、および袋10の開口縁部11が、便器本体2の開口縁部22(図5参照)と便座3とによって挾持され、非常用トイレAが水洗便器1に位置ずれすることなく確実に装着される。
排泄物蓄積部9における袋10の底部13には、吸水材等(図示略)を挿入して使用するのが好ましい。
【0034】
図5に示すように、便器本体2の後端部に、便器本体2の温水設備、送風設備などを覆うため、上方を向く隆起部23が設けられている場合は、非常用トイレAを便器本体2に取り付けた当初において、台座4の後端部が隆起部23に当接して持ち上げられる。
【0035】
この状態で、台座4に便座3の荷重がかかると、台座4の後端部は折り曲げ案内線8から上方に折り曲げられ、台座4は、便器本体2の開口縁部22および隆起部23に当接するため、安定性が良くなる。
【0036】
排泄物蓄積部9の把手21を、台座4および便器本体2の外周縁から下方に折り曲げ、左右の把手21、21により台座4および便器本体2を左右から挟むようにすることにより、さらに安定性が良くなる。
【0037】
非常用トイレAを使用した後は、便座3を持ち上げ、排泄物蓄積部9における最上位の袋10における左右両側の把手21を持ち上げることにより、ステープル20によって台座4に止着されている開口縁部11の前後端部を簡単に外すことができ、この袋10を他の袋10と容易に分離することができるため、排泄物を入れたままで、袋10を簡単に廃棄することができる。
【0038】
この非常用トイレAは、図6に示すように、便器本体2上に装着した便座3の着座面5上に載置して使用することもできる。
この場合は、便座3の着座面5上に台座4を載置し、排泄物蓄積部9の袋10を台座4の開口6から便器本体2内に挿入し、便器本体2内に挿入された部分を開口6に沿って広げるようにする。
【0039】
本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で、例えば次のような変形した態様での実施が可能である。
(1)排泄物蓄積部9における複数の袋10を、閉じた状態においてほぼ正方形となるように形成し、この正方形における連続する2辺を開口するとともに、他の2辺を閉塞し、閉塞された2辺が、便器本体2内において前後方向を向くようにする。
(2)水洗便器1だけでなく、上面が開口する単なる箱体上に、台座4を載置し、袋10における底部13を箱体内に挿入して使用する。
【符号の説明】
【0040】
A 非常用トイレ
1 水洗便器
2 便器本体
3 便座
4 台座
5 着座面
6 開口
7 後端縁
8 折り曲げ案内線
9 排泄物蓄積部
10 袋
11 開口縁部
12 上面
13 底部
14 長辺(開口)
15 短辺(開口)
16 長辺
17 短辺
18 閉塞端
19 閉塞端
20 ステープル
21 把手
22 開口縁部
23 隆起部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体上に設けた便座の着座面に載置可能とするか、または便器本体と便座との間に挾持可能とした枠状の台座と、複数の気密性の袋を1枚ずつ分離可能に重ね合わせるとともに、複数の袋を開口した状態で、開口縁部を台座の上面に取外し可能に止着し、かつ複数の袋における底部を、台座の開口から便器本体内に挿入可能とした排泄物蓄積部とを備えることを特徴とする非常用トイレ。
【請求項2】
前記台座の後部に左右方向の折り曲げ案内線を設け、着座時に台座の後端部が、前記便座または便器本体の上面後部に設けた隆起部によって、前記折り曲げ案内線から上方に折り曲げられるようにした請求項1に記載の非常用トイレ。
【請求項3】
前記複数の袋を、互いに連続する2辺から開口可能とするとともに、他の2辺を閉塞し、閉じた状態においてほぼ四角形となるように形成し、開口可能な2辺を開いた状態で、当該2辺の開口縁部を、前記座板の上面に取外し可能に止着し、さらに閉塞された2辺が前記便器本体内において前後方向を向くようにした請求項1または2に記載の非常用トイレ。
【請求項4】
前記複数の袋を、閉じた状態においてほぼ長方形となるように形成し、閉塞された長辺および短辺が、短辺を後位として、前記便器本体内において前後方向を向くようにして、複数の袋の底部を便器本体内に挿入可能とした請求項3に記載の非常用トイレ。
【請求項5】
前記複数の袋における開口縁部の前端部および後端部を、前記台座の着座面に取外し可能に止着し、それ以外の部分を、台座の上面に止着することなく載置した請求項1〜4のいずれかに記載の非常用トイレ。
【請求項6】
前記複数の袋の開口縁部を、前記台座の下面から打ち込まれたコ形のステープルによって、前記台座の上面に止着した請求項1〜5のいずれかに記載の非常用トイレ。
【請求項7】
前記複数の袋における開口可能な2辺の角部を、他の袋から引き剥がすための把手とした請求項3、またはそれに従属する4〜6のいずれかに記載の非常用トイレ。
【請求項1】
便器本体上に設けた便座の着座面に載置可能とするか、または便器本体と便座との間に挾持可能とした枠状の台座と、複数の気密性の袋を1枚ずつ分離可能に重ね合わせるとともに、複数の袋を開口した状態で、開口縁部を台座の上面に取外し可能に止着し、かつ複数の袋における底部を、台座の開口から便器本体内に挿入可能とした排泄物蓄積部とを備えることを特徴とする非常用トイレ。
【請求項2】
前記台座の後部に左右方向の折り曲げ案内線を設け、着座時に台座の後端部が、前記便座または便器本体の上面後部に設けた隆起部によって、前記折り曲げ案内線から上方に折り曲げられるようにした請求項1に記載の非常用トイレ。
【請求項3】
前記複数の袋を、互いに連続する2辺から開口可能とするとともに、他の2辺を閉塞し、閉じた状態においてほぼ四角形となるように形成し、開口可能な2辺を開いた状態で、当該2辺の開口縁部を、前記座板の上面に取外し可能に止着し、さらに閉塞された2辺が前記便器本体内において前後方向を向くようにした請求項1または2に記載の非常用トイレ。
【請求項4】
前記複数の袋を、閉じた状態においてほぼ長方形となるように形成し、閉塞された長辺および短辺が、短辺を後位として、前記便器本体内において前後方向を向くようにして、複数の袋の底部を便器本体内に挿入可能とした請求項3に記載の非常用トイレ。
【請求項5】
前記複数の袋における開口縁部の前端部および後端部を、前記台座の着座面に取外し可能に止着し、それ以外の部分を、台座の上面に止着することなく載置した請求項1〜4のいずれかに記載の非常用トイレ。
【請求項6】
前記複数の袋の開口縁部を、前記台座の下面から打ち込まれたコ形のステープルによって、前記台座の上面に止着した請求項1〜5のいずれかに記載の非常用トイレ。
【請求項7】
前記複数の袋における開口可能な2辺の角部を、他の袋から引き剥がすための把手とした請求項3、またはそれに従属する4〜6のいずれかに記載の非常用トイレ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2013−81564(P2013−81564A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222416(P2011−222416)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(309022877)株式会社 関東広興 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(309022877)株式会社 関東広興 (3)
【Fターム(参考)】
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