説明

非常用照明装置および非常用照明器具

【課題】二次電池の異常の有無だけでなく二次電池の劣化具合まで評価可能な非常用照明装置および非常用照明器具を提供する。
【解決手段】点検開始部12は、点検端末4から点検開始指示を受けると、二次電池33の充電電流を遮断し、二次電池33から点灯回路34への電力供給により光源2を点灯させ、二次電池33の点検を開始する。電圧計測部13は、二次電池33の両端電圧値を電池電圧値として計測する。計時部14は、点検開始時点から電池電圧値が所定の規定値に至るまでに要する時間を、持続時間として計測する。評価部15は、計時部13で計測された持続時間の長さに基づいて、二次電池33の異常の有無を評価するとともに、持続時間と基準時間との差分値を基準時間に対する持続時間の余裕度として評価する。点検端末4提示部43は評価部15の評価結果を提示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常用電源の停電時に二次電池の出力によって光源を点灯させる非常用照明装置および非常用照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、非常用照明器具として、建造物等に備え付けられ、商用電源等の常用電源の停電時に光源を点灯させる非常灯や誘導灯などの器具が普及している。この種の非常用照明器具においては、二次電池の出力によって光源が点灯することを確認するために、通常、主要部品である二次電池の点検が定期的に実施されている。点検作業としては、非常用照明器具に備わっている点検スイッチを人が操作して二次電池の出力によって光源を点灯させて点検を開始し、点検開始から所定時間経過後に二次電池の電圧値が規定値以上であるか否かを判断する方法が一般的である。
【0003】
また、近年では、非常用照明器具(誘導灯装置)とは別体で点検端末(リモコン端末)を備え、点検結果を点検端末で確認できるように構成された非常用照明装置も提案されている(たとえば特許文献1参照)。特許文献1に記載の非常用照明装置は、点検開始から所定時間経過後の二次電池(バッテリ)の電圧値および光源(ランプ)の点灯状況を、非常用照明器具から点検端末に送信することで点検作業の省力化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−92013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述したように点検開始から所定時間経過後の二次電池の電圧値に基づいて異常の有無を判断する点検方法では、単なる合否(つまり異常の有無)の評価しかできず、二次電池の劣化具合などは評価することができない。たとえば、全く劣化していない二次電池と、点灯開始から所定時間経過後すぐに光源が消灯する程に劣化した二次電池とがあっても、点検開始から所定時間経過後の二次電池の電圧値が規定値以上であればどちらも一様に正常と判断され、劣化具合は評価されない。
【0006】
本発明は上記事由に鑑みて為されており、二次電池の異常の有無だけでなく二次電池の劣化具合まで評価可能な非常用照明装置および非常用照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の非常用照明装置は、光源を点灯させる点灯回路と、常用電源の停電時に前記点灯回路に電力供給する二次電池と、前記常用電源の通電時に前記常用電源からの電力供給を受けて前記二次電池を充電する充電回路と、前記二次電池の点検を行う点検部とを備え、前記点検部は、前記充電回路から前記二次電池への電力供給を停止させて前記二次電池から前記点灯回路への電力供給により前記光源を点灯させ前記点検を開始する点検開始部と、前記二次電池の両端電圧値を計測する電圧計測部と、前記点検の開始時点から前記電圧計測部の計測値が予め定められている規定値に至るまでに要する時間を持続時間として計測する計時部と、前記持続時間の長さに基づいて、少なくとも前記二次電池の異常の有無を含む前記二次電池の状態を評価する評価部と、当該評価部の評価結果を提示する提示部とを有することを特徴とする。
【0008】
この非常用照明装置において、前記点検部は、前記持続時間を記憶する記憶部を有し、前記評価部は、前記記憶部に記憶されている過去の複数回分の前記持続時間から、時間経過に伴う前記持続時間の変化を求め、当該変化と直近の前記点検時の前記持続時間とに基づいて前記二次電池の寿命時期を前記二次電池の状態として評価することが望ましい。
【0009】
この非常用照明装置において、前記光源を保持する装置本体と、前記提示部を具備する点検端末とが別体として設けられており、前記光源は半導体発光素子からなり、前記装置本体は、前記持続時間と前記評価部の評価結果との少なくとも一方を含むデータを前記点検端末に送信する通信部を有し、当該通信部は、前記光源から放射される可視光を媒体とする可視光通信により前記点検端末に前記データを送信することがより望ましい。
【0010】
この非常用照明装置において、前記光源は半導体発光素子からなり、前記点検部は、前記点検時に前記光源の両端電圧値と前記光源を流れる電流との少なくとも一方を計測する光源計測部をさらに有し、前記評価部は、前記光源計測部の計測値に基づいて前記光源の異常の有無を評価することがより望ましい。
【0011】
本発明の非常用照明器具は、上記非常用照明装置に用いられ、前記点灯回路と前記二次電池と前記充電回路とを前記光源と共に器具本体に備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、評価部が持続時間の長さに基づいて二次電池の状態を評価することにより、二次電池の異常の有無だけでなく二次電池の劣化具合まで評価することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態1の概略構成を示すブロック図である。
【図2】同上の動作の説明図である。
【図3】実施形態2の動作の説明図である。
【図4】実施形態3の概略構成を示すブロック図である。
【図5】同上の動作の説明図である。
【図6】同上の動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態1)
本実施形態の非常用照明装置1は、図1に示すように、光源2を保持する装置本体3と、装置本体3とは別体の点検端末4とを備えている。装置本体3は、光源2と共に器具本体(図示せず)に設けられ光源2と共に非常用照明器具5を構成している。本実施形態では、非常用照明器具5は、ビル等の建造物に設置され、常用電源の通電時には光源2が消灯し、常用電源の停電時に光源2が点灯するように構成された非常灯である。なお、光源2はハロゲンランプからなる。
【0015】
装置本体3は、常用電源である商用電源6を全波整流する整流器31と、整流器31の出力端に接続された充電回路32と、充電回路32の出力端に接続された二次電池33と、二次電池33に接続された点灯回路34とを有している。点灯回路34は、その出力端に光源2が接続されており、二次電池33からの電力供給を受けて光源2を点灯させる。充電回路32は、商用電源6の通電時に、整流器31を介して商用電源6からの電力供給を受け、二次電池33に充電電流を流すことにより二次電池33を充電する。
【0016】
さらに、装置本体3は、二次電池33と点灯回路34との間に挿入されているスイッチ35をオンオフ制御する制御回路10を備えている。制御回路10は、商用電源6の停電時に、スイッチ35をオンにして二次電池33から点灯回路34への電力供給により光源2を点灯させる。停電検出部11は、充電回路32から二次電池33へ供給される充電電流を監視することにより、商用電源6の通電・停電の別を監視する停電検出部11を有している。制御回路10は、定常時にはスイッチ35をオフしており、停電検出部11にて商用電源4の停電が検出されている間に亘ってスイッチ35をオンにする。制御回路10の停電検出部11以外の構成については後述する。
【0017】
点検端末4は、内蔵バッテリ(図示せず)によって動作し、非常用照明装置1の二次電池33の点検作業を行う作業者に携帯される。点検端末4は、装置本体3と通信する送受信部41と、作業者からの操作入力を受け付ける操作部42と、点検結果を提示する提示部43と、各部を制御する制御部44とを有している。
【0018】
送受信部41は、本実施形態では赤外線通信により装置本体3との間で双方向に通信可能に構成されている。制御部44は、操作部42に対して所定の操作が為されると、点検開始指示を装置本体3に送信するように送受信部41を制御する。また、送受信部41が装置本体3から点検結果を受信すると、制御部44は、この点検結果が作業者に提示されるように提示部43を制御する。提示部43は、点検結果を表示することにより作業者に提示する構成であってもよいし、音声等により点検結果を作業者に提示する構成であってもよい。
【0019】
すなわち、本実施形態では、作業者は、点検端末4を操作することにより二次電池33の点検を開始することができ、且つその点検結果を点検端末4にて確認することができる。そのため、非常用照明器具5が天井などの手が届きにくい場所に設置されている場合でも、作業者は容易に点検を行ってその結果を知ることが可能になる。
【0020】
ところで、本実施形態においては、装置本体3の制御回路10は、停電を検出する停電検出部11の他、二次電池32の点検を行うための点検開始部12と電圧計測部13と計時部14と評価部15と記憶部16と通信部17とを有している。これら点検開始部12、電圧計測部13、計時部14、評価部15、記憶部16、通信部17は、点検端末4と共に、非常用照明装置1の主要部品である二次電池33の点検を行う点検部を構成する。以下、点検部の構成について詳しく説明する。
【0021】
点検開始部12は、外部(ここでは点検端末4)から点検開始指示を受けると、充電回路32と二次電池33との間に挿入されている点検用スイッチ36をオフにして、二次電池33の充電電流を遮断する。このとき、制御回路10は停電検出部11にて充電電流の停止を検出するので、スイッチ35をオンして二次電池33から点灯回路34への電力供給を開始する。すなわち、点検開始部12は、外部からの点検開始指示を受けて強制的に商用電源6の停電時と同じ状態とすることにより、スイッチ35をオンさせて二次電池33から点灯回路34への電力供給により光源2を点灯させ、二次電池33の点検を開始する。
【0022】
電圧計測部13は、二次電池33の両端電圧値を電池電圧値として計測する。電圧計測部13で計測された電池電圧値は、計時部14および評価部15に出力される。計時部14は、点検開始部12により二次電池33の点検が開始した時点から、図2に示すように電圧計測部13(図1参照)の計測値(電池電圧値)が所定の規定値V0に至るまでに要する時間を、持続時間T1として計測する。ここでいう規定値V0は、少なくとも点灯回路34が光源2を点灯させることができるように予め定められた二次電池33の両端電圧値である。なお、図2では点検開始時点からの経過時間を横軸、電池電圧値を縦軸として、時間経過に伴う電池電圧値の変化を表している。
【0023】
二次電池33の点検が開始すると、二次電池33の両端電圧値(電池電圧値)は時間経過に伴って徐々に低下しいずれは規定値V0に至るが、二次電池33の劣化具合によって電池電圧値が規定値V0に至るまでの時間(持続時間T1)の長さは様々である。そこで、評価部15は、計時部13で計測された持続時間T1の長さに基づいて、少なくとも二次電池33の異常の有無を含む二次電池33の状態を評価する。
【0024】
具体的には、評価部15は、二次電池33の異常の有無の判定基準となる基準時間T0(図2参照)と持続時間T1を比較し、持続時間T1が基準時間T0以上であれば正常(異常無し)、持続時間がT1基準時間T0未満であれば異常有りと判定する。つまり、持続時間T1が基準時間T0以上の場合、そのことは点灯装置34が二次電池33からの電力供給によって光源2を基準時間T0以上は点灯させ続けられることを意味するので、評価部15は二次電池33が正常であると判定する。一方、持続時間T1が基準時間T0未満であることは、点灯回路34が二次電池33からの電力供給によって光源2を点灯させると基準時間T0以内に二次電池33の両端電圧値が規定値V0まで低下することを意味する。そのため、持続時間T1が基準時間T0未満の場合、評価部15は二次電池33が異常であると判定する。要するに、評価部15は、図2において基準時間T0と規定値V0とで規定される領域に電池電圧値が入った場合には、異常有りと判定する。
【0025】
評価部15は、上述したようにして判定される二次電池33の異常の有無の他、持続時間T1と基準時間T0との差分値を基準時間T0に対する持続時間T1の余裕度として求め、この余裕度についても二次電池33の状態として評価する。評価部15の評価結果(異常の有無および余裕度)は記憶部16に記憶される。なお、点検開始部12は、点検用スイッチ36をオンすることにより二次電池33の点検動作を終了させることができる。点検開始部12が点検動作を終了させるタイミングは、基準時間T0よりも十分に長い一定時間が経過した時点でもよいし、電池電圧値が規定値V0を下回った時点(持続時間T1の終了時点)でもよい。
【0026】
通信部17は点検端末4の送受信部41との間で双方向に通信可能に構成されており、点検端末4から通信により点検開始指示を受けるとともに、記憶部16に記憶されている評価部15の評価結果を点検端末4へと送信する。ここで、通信部17から評価結果を点検端末4へ送信するタイミングは、二次電池33の点検動作の終了後であってもよいし、点検動の途中であってもよい。
【0027】
装置本体3から点検結果(評価部15の評価結果)を受信した点検端末4は、この点検結果を提示部43にて提示する。これにより、評価部15の評価結果である異常の有無および基準時間T0に対する持続時間T1の余裕度が、提示部43から作業者に提示されることになる。なお、点検端末4で得られた点検結果は、さらに点検端末4から中央装置(図示せず)に送られて中央装置に集約されてもよい。
【0028】
以上説明した構成によれば、作業者は、二次電池33の点検結果として二次電池33の異常の有無に加えて持続時間T1の余裕度を知ることができるので、二次電池33の異常の有無だけでなく二次電池33の劣化具合まで評価することが可能になる。すなわち、作業者は、単なる合否(つまり異常の有無)の評価に加え、二次電池33が正常と判定された場合には基準時間T0に対する持続時間T1の余裕度の大きさから二次電池33の劣化具合を知ることができる。
【0029】
たとえば、全く劣化していない二次電池33と、点灯開始から基準時間経過後すぐに光源2が消灯する程に劣化した二次電池33とでは、いずれも正常と判定されつつも、持続時間T1は前者の方が後者よりも長くなる。要するに、全く劣化していない二次電池33では持続時間T1は十分に長く基準時間T0に対する余裕度(T1−T0)も十分な大きさであるのに対し、劣化した二次電池33では持続時間T1が短くなり基準時間T0に対する余裕度も小さくなる。そのため、二次電池33の劣化具合は、基準時間T0に対する持続時間T1の余裕度、つまり持続時間T1と基準時間T0との差分値の大きさによって表され、当該余裕度が小さくなる程、劣化が進んでいることになる。このように、基準時間T0に対する持続時間T1の余裕度の大きさから二次電池33の劣化具合を評価することが可能である。
【0030】
ここにおいて、基準時間T0に対する持続時間T1の余裕度は、評価部15にて二次電池33の劣化具合を表す指標に置き換えられ、当該指標が二次電池33の状態として評価されてもよい。また、基準時間T0に対する持続時間T1の余裕度は、装置本体3から評価結果として持続時間T1を得た点検端末4にて求められもよく、さらに点検端末4にて二次電池33の劣化具合を表す指標に置き換えられてもよい。
【0031】
さらに、本実施形態の構成によれば、点検結果は点検端末4の提示部43にて提示されるので、装置本体3を含む非常用照明器具5自体には点検結果を提示する提示部が不要となり、非常用照明器具5の小型化、低コスト化を図れるという利点もある。
【0032】
ところで、本実施形態の変形例として、非常用照明器具5を構成する装置本体3自体に、点検結果を提示する提示部(図示せず)や、点検開始部12に点検開始指示を与えるための操作スイッチ(図示せず)を備える非常用照明装置1も考えられる。この構成では、作業者は、非常用照明器具5に備わる操作スイッチを操作することで二次電池33の点検を開始でき、その結果が非常用照明器具5の提示部から提示されるので、点検端末4が不要になる。
【0033】
(実施形態2)
本実施形態の非常用照明装置1は、評価部15が二次電池33の寿命時期を二次電池33の状態として評価する点が実施形態1の非常用照明装置1と相違する。なお、以下では実施形態1と同様の構成については、実施形態1と同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
【0034】
本実施形態では、記憶部16には複数回の点検で得られた持続時間T1が時系列に記憶される。評価部15は、記憶部16に記憶された過去の複数回分の持続時間T1から、時間経過に伴う持続時間T1の変化を求め、当該変化と直近の点検時の持続時間T1とに基づいて二次電池33の寿命時期を予測する。評価部15で評価された二次電池33の寿命時期は、二次電池33の異常の有無や基準時間T0に対する持続時間T1の余裕度と共に、評価部15の評価結果として提示部43にて提示される。
【0035】
以下、寿命時期の予測方法について図3を参照して説明する。図3では、点検開始時点からの経過時間を横軸、電池電圧値を縦軸とし、一例として使用開始から3年程度が経過した二次電池33について3回繰り返して点検を行った際の結果を、1回目を「C1」、2回目を「C2」、3回目を「C3」として示している。ここでは、3回の点検が30日間隔で行われており、2回目の点検時から3回目の点検時までに持続時間が時間t12だけ短くなり、1回目の点検時から3回目の点検時までに持続時間が時間t11(>t12)だけ短くなった場合を例示する。
【0036】
評価部15は、まず記憶部16に記憶される複数回分の持続時間の中で、最も悪い(最も短い)持続時間T1の長さに基づいて、二次電池33の状態(異常の有無や基準時間T0に対する持続時間T1の余裕度)を評価する。図3の場合では、最新(3回目)の点検時の持続時間T1が最も短いので、評価部15は、この持続時間T1と基準時間T0との差分値(T1−T0)を基準時間T0に対する持続時間T1の余裕度t10とする。
【0037】
さらに、評価部15は、3回目の持続時間T1と過去2回分の持続時間とをそれぞれ比較して二次電池33の性能劣化に伴う持続時間の変化を求め、この変化に基づいて、二次電池33の寿命時期(つまり持続時間T1が規定時間T0まで低下する時期)を求める。図3の場合、評価部15は、2回目の点検時から3回目の点検時にかけての1日当たりの持続時間の変化率(t12/30)と、1回目の点検時から3回目の点検時にかけての1日当たりの持続時間の変化率(t11/60)とをそれぞれ求める。次に、評価部15は、求めた2つの変化率を比較し、大きい方の変化率と余裕度t10(=T1−T0)とを用いて、二次電池33の寿命時期を算出する。つまり、評価部15は、余裕度t10を変化率で除することによって、二次電池33の寿命までの日数を算出する。
【0038】
以上説明した本実施形態の非常用照明装置1によれば、毎点検ごとに記憶した複数回分の持続時間を用いることにより、評価部15は二次電池33の寿命時期の予測が可能となり、より詳細な二次電池33の管理が可能となる。すなわち、作業者は、提示された寿命時期を二次電池33の交換時期の目安とすることができ、二次電池33の手配等の管理が容易になるという利点がある。
【0039】
また、記憶部16は、非常用照明器具5を構成する装置本体3内になくてもよく、たとえば点検端末4に設けられていてもよい。この場合、記憶部16を備えることにより非常用照明器具5が大型化したり、高コスト化したりすることを回避できる。
【0040】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0041】
(実施形態3)
本実施形態の非常用照明装置1は、図4に示すように光源2がLED(発光ダイオード)からなるとともに、点検結果を点検端末4に送信する通信部17が光源2からの光を伝送媒体に利用した可視光通信を行う点が実施形態1の非常用照明装置1と相違する。
【0042】
本実施形態の通信部17は、光源2の明滅を制御することにより、光源2から放射される可視光の振幅を変調して所望のデータを伝送する可視光通信を実現する。通信部17には評価部15から評価結果(異常の有無および基準時間T0に対する持続時間T1の余裕度)が入力されており、通信部17は、この評価結果を可視光通信により点検端末4の送受信部41に対して送信する。さらに、本実施形態では持続時間T1そのものについても、通信部17から可視光通信により点検端末4の送受信部41に対して送信される。点検端末4は、送受信部41にて光源2からの可視光を受光し復調することによって、装置本体3から点検結果(評価部15の評価結果および持続時間T1)を表すデータを取得する。
【0043】
本実施形態では、通信部17は、たとえば持続時間T1については図5に示すように6桁(6ビット)の2進数のデータとして送信する。なお、図5では持続時間(単位:分)と、2進数のデータ(信号)との対応関係を表している。これにより、通信部17から点検端末4へは、0〜60分の範囲の持続時間T1を1分刻みで表すデータを伝送することができる。
【0044】
このように、光源2としてのLEDを用いた可視光通信を採用すれば、LEDから放射される可視光は白熱灯などから放射される光に比べて指向性が高いため、反射による可視光の波長変化が生じず、安定した可視光通信が可能になるという利点がある。しかも、非常用照明器具5の光源2としてのLEDが点検端末4との通信用に兼用されているので、光源とは別に通信用のLEDが必要な場合に比べて、非常用照明器具5の構成の簡略化を図ることができる。また、光源2はLEDであるから白熱灯などに比べて超寿命であり、光源2の交換の手間を軽減することができる。なお、図4の例では通信部17は装置本体3から点検端末4への単方向の通信にのみ用いられ、点検端末4から送信されるデータ(点検開始指示)の受信には受信部18が用いられているが、通信部17は点検端末4からのデータの受信にも用いられてもよい。
【0045】
ところで、本実施形態の非常用照明装置1では、評価部15は、二次電池33の異常の有無に加えて、光源2としてのLEDの異常の有無も評価する。そのため、装置本体3には、二次電池33の点検時に光源2の両端電圧値である光源電圧値V1と、光源2を流れる電流値である光源電流値I1との少なくとも一方を計測する光源計測部(図示せず)が点検部の構成要素として付加されている。なお、光源電流値I1は、たとえば光源2と直列に接続される抵抗の両端電圧から算出される。
【0046】
評価部15は、光源2の正常点灯時における光源2の両端電圧値が基準電圧値として予め設定されており、二次電池33の点検時に測定される光源電圧値V1を基準電圧値と比較することにより、光源2の異常の有無を判定する。評価部15において判断される光源2の異常は、光源2としてのLEDのオープン(開放)モードの故障と、ショート(短絡)モードの故障とがある。すなわち、光源電圧値V1と基準電圧値との差が所定の閾値を上回るような場合、評価部15は、光源2の異常(故障)と判断する。なお、複数個のLEDが直列に接続されて光源2を構成している場合、評価部15は、光源電圧値V1を個々のLEDごとに基準電圧値と比較してもよいし、複数個のLEDの直列回路の両端電圧値を光源電圧値V1として基準電圧値と比較してもよい。
【0047】
また、評価部15は、二次電池33の点検時に測定される光源電流値I1の挙動を光源電圧値V1に加味して光源2の異常を判断してもよい。この場合、評価部15は、たとえば光源2としてのLEDの電圧−電流特性と、点検時に測定された光源電圧値V1および光源電流値I1とを比較して、光源2の異常の有無を判断する。あるいは、評価部15は、光源電圧値V1に代えて、二次電池33の点検時に測定される光源電流値I1の挙動から光源2の異常を判断してもよい。
【0048】
さらに、本実施形態では、計時部14は持続時間T1とは別に光源2の累積点灯時間も計測しており、この累積点灯時間に基づいて評価部15が光源2の寿命時期を評価する機能を有している。ここで、計時部14は、スイッチ35がオンして点灯回路34へ電力供給されている時間の累積値を光源2の累積点灯時間として計測している。図6は、横軸を時間経過として光源2の累積点灯時間を表しており、図中「t21」、「t22」で示す期間はスイッチ35がオフの期間である。
【0049】
評価部15は、光源2の定格寿命となる累積点灯時間が寿命時間として予め設定されており、この寿命時間と計時部14にて計測された累積点灯時間とを比較することにより、光源2の寿命時期を判断する。具体的には、評価部15は、図6に示すように寿命時間T10の90%に設定された警告時間T11に累積点灯時間が到達した時点で、光源2の寿命末期にあると判断し、寿命末期にある旨を通信部17から点検端末4に送信させる。このとき、通信部17から点検端末4には、寿命時間T10と累積点灯時間との差、つまり光源2の残り寿命を表すデータが送信されてもよい。
【0050】
以上説明した構成によれば、二次電池33の異常の有無に加えて、光源2についての異常の有無、さらに寿命時期の管理もされるので、作業者は、光源2あるいは非常用照明器具5全体の交換などの措置を迅速にとることができるという利点がある。そのため、非常用照明装置1は、商用電源6の停電時に光源2を確実に点灯させることができるとともに、点検時に点検結果を可視光通信により点検端末4に確実に送信することができる。
【0051】
なお、本実施形態では光源2がLEDからなる例を示したが、光源2はLEDに限らず半導体発光素子であればよく、たとえば有機EL(Electro Luminescence)素子などであってもよい。
【0052】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0053】
なお、上記各実施形態では、非常用照明器具1として非常灯を例示したが、非常用照明器具1は非常灯に限らず常用電源の停電時に二次電池33の出力によって光源2を点灯させる照明器具であればよい。つまり、ここでいう非常用照明器具1は、たとえば常用電源の通電時には常用電源からの電力供給により光源2を点灯させ、常用電源の停電時に二次電池33からの電力供給により光源2を点灯させる誘導灯などでもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 非常用照明装置
2 光源
3 装置本体
4 点検端末
5 非常用照明器具
6 商用電源(常用電源)
12 点検開始部
13 電圧計測部
14 計時部
15 評価部
16 記憶部
17 通信部
32 充電回路
33 二次電池
34 点灯回路
43 提示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源を点灯させる点灯回路と、常用電源の停電時に前記点灯回路に電力供給する二次電池と、前記常用電源の通電時に前記常用電源からの電力供給を受けて前記二次電池を充電する充電回路と、前記二次電池の点検を行う点検部とを備え、前記点検部は、前記充電回路から前記二次電池への電力供給を停止させて前記二次電池から前記点灯回路への電力供給により前記光源を点灯させ前記点検を開始する点検開始部と、前記二次電池の両端電圧値を計測する電圧計測部と、前記点検の開始時点から前記電圧計測部の計測値が予め定められている規定値に至るまでに要する時間を持続時間として計測する計時部と、前記持続時間の長さに基づいて、少なくとも前記二次電池の異常の有無を含む前記二次電池の状態を評価する評価部と、当該評価部の評価結果を提示する提示部とを有することを特徴とする非常用照明装置。
【請求項2】
前記点検部は、前記持続時間を記憶する記憶部を有し、前記評価部は、前記記憶部に記憶されている過去の複数回分の前記持続時間から、時間経過に伴う前記持続時間の変化を求め、当該変化と直近の前記点検時の前記持続時間とに基づいて前記二次電池の寿命時期を前記二次電池の状態として評価することを特徴とする請求項1に記載の非常用照明装置。
【請求項3】
前記光源を保持する装置本体と、前記提示部を具備する点検端末とが別体として設けられており、前記光源は半導体発光素子からなり、前記装置本体は、前記持続時間と前記評価部の評価結果との少なくとも一方を含むデータを前記点検端末に送信する通信部を有し、当該通信部は、前記光源から放射される可視光を媒体とする可視光通信により前記点検端末に前記データを送信することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の非常用照明装置。
【請求項4】
前記光源は半導体発光素子からなり、前記点検部は、前記点検時に前記光源の両端電圧値と前記光源を流れる電流との少なくとも一方を計測する光源計測部をさらに有し、前記評価部は、前記光源計測部の計測値に基づいて前記光源の異常の有無を評価することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の非常用照明装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の非常用照明装置に用いられ、前記点灯回路と前記二次電池と前記充電回路とを前記光源と共に器具本体に備えることを特徴とする非常用照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−113877(P2012−113877A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260351(P2010−260351)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】