説明

非接触搬送装置

【課題】ワークの外側上面に旋回流を発生させてワークの中央部を負圧にして、ワークを非接触状態で吸引保持する際のワークの回転を防止する非接触搬送装置を提供する。
【解決手段】ワーク11の外側上面に旋回流を発生させて、ワーク11の中央部を負圧にして、ワーク11を非接触状態で吸引保持する保持手段13と、保持手段13の上部に固定された移動手段16と、保持手段13に取付けられ、保持手段13の上側及び周囲を覆って下方に開口したカバー手段17とを備えた非接触搬送装置10において、ワーク11は矩形であって、カバー手段17は、保持手段13の上側に配置され、複数本のガイド部材62によって保持手段13に対して上下動可能に設けられ、平面視して矩形の上遮蔽板55と、各ガイド部材62に装着されて上遮蔽板55を下方に付勢するバネ54と、上遮蔽板55の周囲に設けられ内側にワーク11が嵌入可能な側壁材56とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェハ等の脆い薄板状のワーク(物品)を非接触状態で搬送する非接触搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、太陽電池の製造工程において、シリコンウェハの表裏面にそれぞれ設ける集電用の電極をスクリーン印刷により形成する場合、シリコンウェハを順次スクリーン印刷機に供給して電極を印刷すると共に、電極が印刷されたシリコンウェハをスクリーン印刷機から順次取出している。
このとき、シリコンウェハのスクリーン印刷機への供給、シリコンウェハのスクリーン印刷機からの取出しを、接触式保持装置を用いて行う場合、接触式保持装置の保持部が接触するシリコンウェハの接触部に亀裂が発生し易いという問題がある。更に、シリコンウェハをスクリーン印刷機から接触式保持装置を用いて取出す場合、印刷された電極が乾燥する前に保持部が電極に接触すると電極が損傷を受けるため、電極が十分に乾燥するまで待機した後でなければスクリーン印刷機からシリコンウェハを取出すことができない。このため、シリコンウェハの印刷処理速度が電極の乾燥に要する時間に律速され、シリコンウェハの印刷処理を効率的に行うことができないという問題もある。
そこで、下方に開口した凹部の上部に設けたノズルから気流を噴出させ、凹部の壁面に沿って旋回させて凹部の下部に導きながら、水平配置されたシリコンウェハの上面に接近させて、凹部の周囲に設けた環状の平坦面とシリコンウェハの上面との間の隙間から気流を高速で通過させることにより凹部の静圧を低下させて(負圧にして)、シリコンウェハを吸引し非接触状態で保持する非接触保持装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許開2002−64130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された非接触保持装置を使用する場合、シリコンウェハと平坦面との間を旋回流が通過するため、シリコンウェハを保持する際にシリコンウェハが回転するという問題が生じる。このため、シリコンウェハの方向を常に揃えてスクリーン印刷機に供給することが困難になる。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、薄板状のワークの外側上面に旋回流を発生させてワークの中央部を負圧にして、ワークを非接触状態で吸引保持する際のワークの回転を防止することが可能な非接触搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う本発明に係る非接触搬送装置は、薄板状のワークの外側上面に旋回流を発生させて、該ワークの中央部を負圧にして、該ワークを非接触状態で吸引保持する保持手段と、前記保持手段の上部に固定された移動手段と、前記保持手段に取付けられ、該保持手段の上側及び周囲を覆って下方に開口したカバー手段とを備えた非接触搬送装置において、
前記ワークは矩形であって、
前記カバー手段は、前記保持手段の上側に配置され、複数本のガイド部材によって前記保持手段に対して上下動可能に設けられ、平面視して矩形の上遮蔽板と、前記各ガイド部材に装着されて前記上遮蔽板を下方に付勢するバネと、前記上遮蔽板の周囲に設けられ内側に前記ワークが嵌入可能な側壁材とを有し、前記保持手段に隙間を有して吸着された前記ワークの回転を防止している。
ここで、矩形とは、長方形及び正方形を含む。
【0007】
本発明に係る非接触搬送装置において、前記保持手段は、1)前記カバー手段の内側に隙間を有して配置され、下部中央には円形の開口部を備えたハウジングと、2)該ハウジングの中央に設けられ、前記移動手段の連結部を備え、前記開口部に圧縮空気を注入する空気口を有する取付け部材と、3)前記ハウジングの内壁とで周囲に環状空気室を形成する切欠きと、下側に開口となって前記環状空気室より半径方向内側位置に形成された環状溝と、前記空気口から前記環状空気室に圧縮空気を導く空気路と、前記環状空気室の圧縮空気を前記環状溝に対して噴き出し、前記環状溝の内側に負圧を該環状溝の外側に正圧を発生させる複数のノズルとを備えて前記開口部に固定配置される吸引機構とを有する構成とすることができる。
【0008】
本発明に係る非接触搬送装置において、前記ノズルは前記環状溝の半径線に対して直角も含む斜めに形成されていることが好ましい。
また、前記空気路の出口は前記ノズルの傾斜側に傾き、前記環状空気室に旋回流を形成していることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る非接触搬送装置においては、カバー手段が、保持手段の上側に配置され、複数本のガイド部材によって保持手段に対して上下動可能に設けられ、平面視して矩形の上遮蔽板と、各ガイド部材に装着されて上遮蔽板を下方に付勢するバネとを有するので、カバー手段をワークに接近させて、上遮蔽板の周囲に設けられた側壁材がワークを載置している支持台の上面に当接すると、上遮蔽板を保持手段に対して相対的に上方に移動させながら、保持手段のみをワークに更に接近させることができる。これにより、側壁材の内側に矩形のワークを嵌入させた状態で、保持手段によりワークを非接触状態で吸引保持できる。その結果、吸引保持されたワークが水平面内で回転しようとしても、矩形のワークの各辺がそれぞれ対向する側壁材に接触して回転が阻止され、ワークの方向を常に揃えて吸引保持することができる。
【0010】
本発明に係る非接触搬送装置において、保持手段が、1)カバー手段の内側に隙間を有して配置され、下部中央には円形の開口部を備えたハウジングと、2)ハウジングの中央に設けられ、移動手段の連結部を備え、開口部に圧縮空気を注入する空気口を有する取付け部材と、3)ハウジングの内壁とで周囲に環状空気室を形成する切欠きと、下側に開口となって環状空気室より半径方向内側位置に形成された環状溝と、空気口から環状空気室に圧縮空気を導く空気路と、環状空気室の圧縮空気を環状溝に対して噴き出し、環状溝の内側に負圧を環状溝の外側に正圧を発生させる複数のノズルとを備えて開口部に固定配置される吸引機構とを有する場合、吸引機構を交換することで、ワークに応じた旋回流を形成することができる。
【0011】
本発明に係る非接触搬送装置において、ノズルが環状溝の半径線に対して直角も含む斜めに形成されている場合、環状溝内に圧縮空気の旋回流を効率的に形成することができる。
【0012】
本発明に係る非接触搬送装置において、空気路の出口がノズルの傾斜側に傾き、環状空気室に旋回流を形成している場合、環状空気室に形成された圧縮空気の旋回流の中から、ノズルの傾斜方向に沿った方向に旋回する圧縮空気を環状溝内に噴出させることができ、環状溝内で旋回流を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係る非接触搬送装置の使用状態の説明図である。
【図2】同非接触搬送装置の一部切欠き側断面図である。
【図3】同非接触搬送装置の平面図である。
【図4】同非接触搬送装置の底面図である。
【図5】(A)、(B)は、それぞれ嵌入部材の平面図、側面図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る非接触搬送装置のガイド手段の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る非接触搬送装置10は、太陽電池の製造工程において、太陽電池用のシリコンウェハ11(ワークの一例)の一面に集電用の電極を印刷するスクリーン印刷機(図示せず)にシリコンウェハ11を供給するウェハ用ステージ12にシリコンウェハ11をセットする際に使用するものである。ここで、シリコンウェハ11は、例えば、1辺の長さが120〜160mmの正方形であり、厚みは0.15〜0.25mmである。そして、非接触搬送装置10は、シリコンウェハ11の外側上面に旋回流を発生させて、シリコンウェハ11の中央部を負圧にして、シリコンウェハ11を非接触状態で吸引保持する保持手段13と、保持手段13の上部に固定された移動手段16と、保持手段13に取付けられ、保持手段13の上側及び周囲を覆って下方に開口したカバー手段17とを備えている。なお、移動手段16は、シリコンウェハ11の払い出し場所14と、ウェハ用ステージ12がシリコンウェハ11を受け取るために待機する受け入れ場所15との間で往復移動する。以下、詳細に説明する。
【0015】
ウェハ用ステージ12は、シリコンウェハ11の上面側を吸引してシリコンウェハ11を保持した保持手段13が下降した際に、シリコンウェハ11の下面を吸着保持(固定)するものである。そして、ウェハ用ステージ12は、シリコンウェハ11の下面側を真空吸引してシリコンウェハ11を上面に吸着する板状の通気性部材18と、中央部に通気性部材18が嵌挿され、通気性部材18の周囲側面を覆って空気の流通を防止する側部材19と、側部材19の下部に取付けられ、嵌挿された通気性部材18を載置して通気性部材18の下面側から空気を吸引する台座部材(図示せず)と、台座部材に真空ホースを介して接続する図示しない吸引手段(例えば、真空ポンプ)とを備えている。ここで、通気性部材18は、シリコンウェハ11と相似形状であって、その断面積はシリコンウェハ11の断面積より若干小さく、ステンレス等の金属粉末を焼結して製造した多孔質金属、あるいは、アルミナ等のセラミック粉末を焼結して製造したポーラスセラミックスにより形成されている。
【0016】
更に、ウェハ用ステージ12は、通気性部材18の上面が水平になるように台座部材を載置し、シリコンウェハ11を保持する保持手段13がウェハ用ステージ12の待機場所の上方に移動して停止した際に、保持手段13の停止位置に対して、通気性部材18の水平面内の位置及び水平面内の回転角度位置をそれぞれ調整する位置調整機構(図示せず)を有している。これによって、保持手段13を下降させて、シリコンウェハ11を保持手段13からウェハ用ステージ12に受け渡した際に、ウェハ用ステージ12上でのシリコンウェハ11の位置(水平面内の位置及び水平面内の回転角度位置)を常に一定にすることができ、スクリーン印刷機でシリコンウェハ11に形成する電極のパターンを一定にすることができる。
【0017】
図2に示すように、保持手段13は、カバー手段17の内側に隙間を有して配置され、下部中央には円形の開口部を備えたハウジング25と、ハウジング25の中央に設けられ、移動手段16の連結部49を備え、開口部に圧縮空気を注入する空気口35を有する取付け部材22とを有している。更に、保持手段13は、ハウジング25の内壁とで周囲に環状空気室46を形成する切欠きと、下側に開口となって環状空気室46より半径方向内側位置に形成された環状溝30と、空気口35から環状空気室46に圧縮空気を導く空気路26と、環状空気室46の圧縮空気を環状溝30に対して噴き出し、環状溝30の内側に負圧を環状溝30の外側に正圧を発生させる複数のノズル47とを備えて開口部に固定配置される吸引機構29を有している。
ここで、ノズル47は、環状溝30の半径線に対して直角も含む斜めに形成されている。これによって、環状溝30の内周面に沿った方向、又はほぼ沿った方向から環状溝30内に圧縮空気を吹込むことができ、環状溝30内に圧縮空気の旋回流を効率的に形成することができる
【0018】
ハウジング25は、取付け部材22が上面中央部に立設された上部材23と、上部材23の外周部に下方に向けて設けられた側壁部材24とを備え、取付け部材22には空気口35と開口部を連通する空気流入路36が設けられている。また、取付け部材22の外側には、取付け部材22を内装する補強部材65が、締結部材の一例であるボルト66を用いて上部材23の上面に固定されている。
吸引機構29の下面で環状溝30の内側には、環状空気室46から圧縮空気を環状溝30に対して噴き出した際に負圧となる(シリコンウェハ11を非接触状態で吸引保持する)吸引面20が形成され、環状溝30の外側には、側壁部材24の下端とOリング27を介して上面が当接し、下面が吸引面20より下方に、例えば、0.2〜0.3mm突出するフランジ部28が設けられている。
【0019】
図2、図4に示すように、環状溝30は、吸引面20に平行に形成された底面31と、底面31の半径方向内側及び半径方向外側にそれぞれ形成された第1、第2の傾斜面32、33を備え、環状溝30の幅は、開口側が底面31側より拡大している。
また、図2、図5(A)、(B)に示すように、吸引機構29の中央には、吸引機構29をハウジング25の開口部に固定配置した際に、取付け部材22に形成された空気流入路36と連通するように上面に開口し平面視して正方形の凹部34が形成されている。そして、凹部34の各角部からは、吸引機構29の上面に開口し、角部の一方の辺の延長線に沿って吸引機構29の外周側に向けて断面矩形の溝37が延びている。
【0020】
更に、吸引機構29の上面において、凹部34及び溝37が形成されていない領域38、39、40、41には、周方向に沿って複数(本実施の形態では2)のねじ孔42がそれぞれ形成され、各ねじ孔42の開口の外側にはOリング43を収容するOリング溝44が形成されている。一方、上部材23には、吸引機構29をハウジング25の開口部に固定配置した際に、各ねじ孔42に連通するように、上部材23の上面側の開口部が拡径した貫通孔67(図6参照)が設けられている。これによって、Oリング溝44にOリング43をセットして、吸引機構29をハウジング25の開口部に挿入し、締結部材の一例であるボルト45を貫通孔67に挿入してねじ孔42にねじ込むことにより、ハウジング25と吸引機構29を固着して一体化することができる。
【0021】
以上の構成とすることによって、吸引機構29に形成した凹部34と、ハウジング25の上部材23の下面により囲まれて、空気口35に注入した圧縮空気が流入する空気流入部68を形成することができる。また、ハウジング25の内壁(上部材23の下面及び側壁部材24の内周面)と、吸引機構29の周囲に形成された切欠きにより囲まれて、環状溝30と同心で環状溝30の半径方向外側に環状空気室46を形成することができる。更に、溝37と上部材23の下面により囲まれて、空気流入部に流入した圧縮空気ガスを環状空気室46に流入させる複数(本実施の形態では4つ)の空気路26を形成することができる。
【0022】
ここで、図4、図5(A)、(B)に示すように、各空気路26の出口は、ノズル47の傾斜側に傾いているので、環状空気室46内に、ノズル47の傾斜方向に沿った方向から圧縮空気を噴出させることができ、環状空気室46に圧縮空気の旋回流を容易に形成することができる。そして、環状空気室46内で旋回流を形成している圧縮空気の一部を、ノズル47を介して環状溝30内に、環状溝30の半径線に対して直角も含む斜め方向から噴出させるので、環状溝30内に圧縮空気の旋回流を容易に形成することができる。
このため、保持手段13に圧縮空気を供給し、環状溝30内に圧縮空気の旋回流を形成させながら、保持手段13をシリコンウェハ11の上面に近接させると、シリコンウェハ11の外側上面と環状溝30の間に発生した旋回流を、環状溝30の第2の傾斜面33の外周部とシリコンウェハ11の外周部との間に形成される隙間から、半径方向外側へ向けて旋回させながら流出させることができる。
【0023】
図1〜図3に示すように、移動手段16は、ハウジング25の上部材23に立設された取付け部材22の上部に設けられた連結部49に締結部材の一例であるボルト50を介して先側が固定されるアーム部材51と、アーム部材51の基側が固定された回動軸52と、回動軸52を駆動させて、アーム部材51の先側に取付けられた保持手段13を、シリコンウェハ11の払い出し場所14の上方の受入れ位置と、払い出し場所14に対向配置されたウェハ用ステージ12の受け入れ場所15の上方の払出し位置との間で往復動する機能と、シリコンウェハ11の払い出し場所14と受入れ位置の間で、又はウェハ用ステージ12の受け入れ場所15と払出し位置の間で保持手段13を昇降する機能を備えた駆動機構53とを備えている。
【0024】
図3、図6に示すように、カバー手段17は、保持手段13の上側に配置され、複数本(本実施の形態では4本)のガイド部材62によって保持手段13に対して上下動可能に設けられ、平面視して矩形の上遮蔽板55と、各ガイド部材62に装着されて上遮蔽板66を下方に付勢するバネ54と、上遮蔽板55の周囲に設けられ内側にシリコンウェハ11が嵌入可能な側壁材56とを有している。ここで、上遮蔽板55の周囲に設けられた側壁材56の内側にシリコンウェハ11が嵌入した際、側壁材56とシリコンウェハ11の端面との間には、例えば0.05〜0.15mmの隙間が形成されるように、側壁材56は、締結部材の一例であるボルト56aを用いて上遮蔽板55の周囲に固定されている。なお、上遮蔽板55の中央部には、補強部材65が貫通可能な寸法の挿通孔が設けられ、四隅側には貫通孔56bがそれそれ形成されている。
【0025】
図5、図6に示すように、吸引機構29のねじ孔42が形成されている各領域38、39、40、41には、それぞれ周囲にOリング57を収容するOリング溝58を備えた円形穴59が形成されている。また、上部材23には、各円形穴59に連通し、下側(円形穴59と連通する側)が円形穴59と同径で上側が縮径した貫通孔60が形成されている。更に、円形穴59と貫通孔60の下側で構成される空間部には円筒体61がそれそれ装入され、円筒体61内にはバネ54が下部に外装されたガイド部材62が挿入され、ガイド部材62の上部側は貫通孔60を貫通して、先側の縮径部63を上部材23の上面から突出させている。そして、各縮径部63は、上遮蔽板55に形成された貫通孔60内に収容され、上遮蔽板55の上面側から挿入した締結部材の一例であるボルト64が縮径部63の上部にねじ込まれている。
【0026】
このような構成とすることにより、ボルト64をガイド部材62の縮径部63に上遮蔽板55を介してねじ込むことにより、上遮蔽板55を上部材23の上面に当接させて取付けることができる。そして、上遮蔽板55に取付けられた側壁材56の下端が、シリコンウェハ11の払い出し場所14の上面又はウェハ用ステージ12に当接して側壁材56が上方に押圧されると、側壁材56が取付けられている上遮蔽板55が上方に向けて移動し、ボルト64を介して連結しているガイド部材62が円筒体61内で上方に移動する。これにより、上部材23に対して上遮蔽板55を上方に移動させることができる。なお、ガイド部材62が円筒体61内で上方に移動すると、ガイド部材62に外装されたバネ54は圧縮状態となる。このため、側壁材56の下端が払い出し場所14の上面又はウェハ用ステージ12に当接する状態が解除されると、バネ54の圧縮状態が解放されてバネ54が伸びるため、ガイド部材62が円筒体61内で下方に移動することにより、上遮蔽板55が下方に付勢される。その結果、上遮蔽板55が下方に移動し上部材23の上面に当接することができる。
【0027】
続いて、本発明の一実施の形態に係る非接触搬送装置10の作用について説明する。
非接触搬送装置10を、太陽電池の製造工程において、太陽電池用のシリコンウェハ11の一面に集電用の電極を印刷するスクリーン印刷機にシリコンウェハ11を供給するウェハ用ステージにシリコンウェハ11をセットする際に使用する場合、移動手段16を操作して、保持手段13をシリコンウェハ11の払い出し場所14の上方の受入れ位置に移動する。次いで、保持手段13を受入れ位置からシリコンウェハ11の払い出し場所14に、例えば吸着固定されているシリコンウェハ11に向けて下降させながら、保持手段13の空気口35に図示しない空気供給ホースを介して、ガスの一例である空気を供給する。
【0028】
供給した空気は、保持手段13の取り付け部材22に形成された空気流入路36を経由して空気流入部に流入し、空気流入部に連通する複数の空気路26を介して環状空気室46に流入する。ここで、各空気路26の出口は、ノズル47の傾斜側に傾いているので、環状空気室46内には、空気路26を介して流入させる圧縮空気により旋回流が形成される。そして、環状空気室46内で旋回流を形成している空気の一部は、ノズル47を介して環状溝30内に、環状溝30の半径線に対して直角も含む斜め方向から流入するので、環状溝30内に旋回流が容易に形成される。
【0029】
保持手段13に圧縮空気を供給し、環状溝30内に圧縮空気の旋回流を形成させながら、保持手段13をシリコンウェハ11の上面に接近させると、保持手段13の外側を覆う側壁材56が上遮蔽板55を介して保持手段13に対して下方に付勢して設けられているので、側壁材56の下端の高さ位置がシリコンウェハ11の下面の高さ位置に一致した(側壁材56の下端がシリコンウェハ11の払い出し場所14の上面に当接した)時点で、側壁材56を上方向に移動させながら、吸引面20をシリコンウェハ11の上面に接近させることができ、上遮蔽板55の周囲に設けられた側壁材56の内側にシリコンウェハ11を嵌入させることができる。
【0030】
側壁材56の内側にシリコンウェハ11が嵌入すると、環状溝30内に噴出した圧縮空気により、シリコンウェハ11の外側上面と環状溝30の間に旋回流が発生し、旋回流は環状溝30の第2の傾斜面33の外周部とシリコンウェハ11の外周部との間に形成される隙間から、半径方向外側へ向けて旋回しながら流出する。このため、第2の傾斜面33とシリコンウェハ11との間の隙間から半径方向外側へ向けて旋回しながら流出する圧縮空気の流れによって、吸引面20とシリコンウェハ11の上面との間の隙間に存在する空気が吸引されて、吸引面20とシリコンウェハ11の上面との間の隙間内の圧力が低下する(負圧になる)。なお、第2の傾斜面33とシリコンウェハ11との間の隙間から流出した圧縮空気は、上遮蔽板55の四隅側に形成された貫通孔56bを介して、外部に放出される。
【0031】
その結果、吸引面20とシリコンウェハ11との間に吸引力が発生することになって、払い出し場所14に吸着固定されているシリコンウェハ11に対する吸着力を解除すると、シリコンウェハ11は吸引面20に吸引され、シリコンウェハ11は保持手段13に非接触状態で吸引保持されることになる。ここで、シリコンウェハ11の外側上面と環状溝30の間には旋回流が発生しているので、シリコンウェハ11を非接触状態で吸引面20に吸引保持させると、シリコンウェハ11には水平面内で回転しようとする力が作用する。しかし、シリコンウェハ11は側壁材56の内側に嵌入しているため、シリコンウェハ11が回転しようとすると、シリコンウェハ11の端部が側壁材56に接触し、シリコンウェハ11の回転が防止される。
【0032】
シリコンウェハ11が保持手段13に吸引保持されると、移動手段16を操作して、保持手段13をシリコンウェハ11の払い出し場所14の上方の受入れ位置まで上昇させる。保持手段13が上昇して、カバー手段17の側壁材56の下端が払い出し場所14の上面から離脱すると、ガイド部材62に外装されたバネ54の圧縮状態が解除される。これにより、バネ54が伸びてガイド部材62が円筒体61内で下方に移動し(上遮蔽板55が下方に付勢され)、上遮蔽板55が下方に移動して上部材23の上面に当接する。その結果、保持手段13の上側及び外側がカバー手段17で覆われて、シリコンウェハ11の保持手段13による吸引保持の安定化が図られる。
【0033】
保持手段13が受入れ位置まで上昇すると、移動手段16を更に操作して、保持手段13をウェハ用ステージ12が待機する受け入れ場所15の上方の払出し位置に移動する。次いで、ウェハ用ステージ12の位置調整機構を操作して、保持手段13の停止位置に対して、ウェハ用ステージ12の通気性部材18の水平面内の位置及び水平面内の回転角度位置をそれぞれ調整する。そして、保持手段13を払出し位置からウェハ用ステージ12に向けて下降しながら、ウェハ用ステージ12の通気性部材18の下面側からの空気の吸引を開始する。保持手段13に吸引保持されたシリコンウェハ11の下面とウェハ用ステージ12の上面との間の距離が徐々に減少して、側壁材56の下端の高さ位置がウェハ用ステージ12の上面の高さ位置に一致した時点で、側壁材56を上方向に移動させながら、シリコンウェハ11の下面とウェハ用ステージ12の上面との間の距離を更に縮めて、例えば、シリコンウェハ11の下面とウェハ用ステージ12の上面との間の距離を、シリコンウェハ11を吸着面20に非接触状態で保持した際に形成されている隙間と同程度の距離にすることができる。
【0034】
シリコンウェハ11の下面とウェハ用ステージ12の上面との間の距離が、シリコンウェハ11を吸着面20に非接触状態で吸引保持した際の隙間と同程度の距離に到達した時点で、空気口35への空気の供給を停止すると、保持手段13によるシリコンウェハ11の吸引保持が解除され、シリコンウェハ11はウェハ用ステージ12に吸着される。ここで、シリコンウェハ11が保持手段13からウェハ用ステージ12に受け渡される際に、シリコンウェハ11の回転が側壁材56により防止されているので、ウェハ用ステージ12上でのシリコンウェハ11の方向を常に一定にして、ウェハ用ステージ12に吸着保持することができる。
【0035】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
例えば、本実施の形態では、非接触搬送装置を、太陽電池用のシリコンウェハを電極を印刷するスクリーン印刷機に供給する際に使用するウェハ用ステージに、シリコンウェハを載置する場合に使用したが、電極が印刷されたシリコンウェハをウェハ用ステージから取外す場合に使用することもできる。
【符号の説明】
【0036】
10:非接触搬送装置、11:シリコンウェハ、12:ウェハ用ステージ、13:保持手段、14:払い出し場所、15:受け入れ場所、16:移動手段、17:カバー手段、18:通気性部材、19:側部材、20:吸引面、22:取付け部材、23:上部材、24:側壁部材、25:ハウジング、26:空気路、27:Oリング、28:フランジ部、29:吸引機構、30:環状溝、31:底面、32:第1の傾斜面、33:第2の傾斜面、34:凹部、35:空気口、36:空気流入路、37:空気路、38、39、40、41:領域、42:ねじ孔、43:Oリング、44:Oリング溝、45:ボルト、46:環状空気室、47:ノズル、49:連結部、50:ボルト、51:アーム部材、52:回動軸、53:駆動機構、54:バネ、55:上遮蔽板、56:側壁材、56a:ボルト、56b:貫通孔、57:Oリング、58:Oリング溝、59:円形穴、60:貫通孔、61:円筒体、62:ガイド部材、63:縮径部、64:ボルト、65:補強部材、66:ボルト、67:貫通孔、68:空気流入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板状のワークの外側上面に旋回流を発生させて、該ワークの中央部を負圧にして、該ワークを非接触状態で吸引保持する保持手段と、前記保持手段の上部に固定された移動手段と、前記保持手段に取付けられ、該保持手段の上側及び周囲を覆って下方に開口したカバー手段とを備えた非接触搬送装置において、
前記ワークは矩形であって、
前記カバー手段は、前記保持手段の上側に配置され、複数本のガイド部材によって前記保持手段に対して上下動可能に設けられ、平面視して矩形の上遮蔽板と、前記各ガイド部材に装着されて前記上遮蔽板を下方に付勢するバネと、前記上遮蔽板の周囲に設けられ内側に前記ワークが嵌入可能な側壁材とを有し、前記保持手段に隙間を有して吸着された前記ワークの回転を防止することを特徴とする非接触搬送装置。
【請求項2】
請求項1記載の非接触搬送装置において、前記保持手段は、1)前記カバー手段の内側に隙間を有して配置され、下部中央には円形の開口部を備えたハウジングと、2)該ハウジングの中央に設けられ、前記移動手段の連結部を備え、前記開口部に圧縮空気を注入する空気口を有する取付け部材と、3)前記ハウジングの内壁とで周囲に環状空気室を形成する切欠きと、下側に開口となって前記環状空気室より半径方向内側位置に形成された環状溝と、前記空気口から前記環状空気室に圧縮空気を導く空気路と、前記環状空気室の圧縮空気を前記環状溝に対して噴き出し、前記環状溝の内側に負圧を該環状溝の外側に正圧を発生させる複数のノズルとを備えて前記開口部に固定配置される吸引機構とを有することを特徴とする非接触搬送装置。
【請求項3】
請求項2記載の非接触搬送装置において、前記ノズルは前記環状溝の半径線に対して直角も含む斜めに形成されていることを特徴とする非接触搬送装置。
【請求項4】
請求項2又は3記載の非接触搬送装置において、前記空気路の出口は前記ノズルの傾斜側に傾き、前記環状空気室に旋回流を形成していることを特徴とする非接触搬送装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−30940(P2012−30940A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172443(P2010−172443)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 平成22年6月30日〜7月2日 SEMIジャパン、一般社団法人太陽光発電協会共同主催の「PVJapan 2010」に出品
【出願人】(597168228)日本ファインテック株式会社 (7)
【Fターム(参考)】