靴下
【課題】 足関節の障害に対する予防や治療、矯正、特に、足部の背屈時に距骨の後方への移動を円滑に行い、足関節の異常な外転を防止し、足関節内の異常運動に起因する骨連鎖によって誘発される下半身の異常運動を矯正することで、下肢アラインメント異常や誘発されるシンスプリントなどの諸障害を、普段から未然に防ぐべく予防処置を講じることができる靴下の提供。
【解決手段】 伸縮強度の異なる編成領域を有し、着用時、踵骨隆起部を覆う領域に伸縮強度の強い編成に編上げた難伸縮性領域を設け、該領域に隣接する踝側及び爪先側に夫々周設した、前記難伸縮性領域より伸縮強度の弱い編成に編上げた準難伸縮性領域が、距骨の上部で連結してなる。
【解決手段】 伸縮強度の異なる編成領域を有し、着用時、踵骨隆起部を覆う領域に伸縮強度の強い編成に編上げた難伸縮性領域を設け、該領域に隣接する踝側及び爪先側に夫々周設した、前記難伸縮性領域より伸縮強度の弱い編成に編上げた準難伸縮性領域が、距骨の上部で連結してなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足関節の障害に対する予防や治療、矯正を目的とし、足関節内の異常運動に起因する骨連鎖がもたらす下肢アラインメント異常、下肢障害を未然に防ぐべく、足部の背屈時に距骨の後方への移動を円滑に行い、足関節の異常な外転防止に適した靴下に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スポーツ等による下半身の障害の多くは、下肢に対して足部が背屈したときに、足関節が外転、即ち脛骨の前後軸に対して足部長軸が外側に向く状態となる異常運動に起因するといわれている。これは、「knee−in toe−out(膝が内側、つま先が外方向を向く)」(図1)という骨格異常運動として表れ、動的アラインメント異常と捉えられている。また、これとは逆の方向に向く「knee−out toe−in(膝が外側、つま先が内方向を向く)」という骨格異常運動(図2)も見られる。
【0003】
特に多いのが前者で、人間の85%以上に無意識に起こっているといわれる。この異常運動の習慣化により発生する障害は、スポーツ障害分野では“toe−out症候群”と呼ばれ、大腿骨から脛骨4、腓骨5、距骨6、踵骨7そして足部にかけての骨連鎖(図4)により広く下半身の異常運動を誘発し、下半身の障害の80%以上は、この異常運動が関与していると考えられている。
【0004】
立位の状態では内側の踝9と外側の踝10との間に距骨6が適正に嵌り込み、関節面が安定する位置で嵌合しているものの(図4)、本来的に前述の筋骨構造上、常に該異常運動を誘発しやすい状態にあるといえる。
【0005】
前記足関節内の背屈時の異常運動について詳述すると、四足歩行から進化した人間の手足は屈筋支配が強い特徴があるところ、腓腹筋3とヒラメ筋4とからなる下腿三頭筋がアキレス腱5に癒合して踵骨に付着している筋骨構造上(図3)、膝屈曲時(背屈時)には踵骨を後方へ引っ張る作用が働く。この作用により踵骨7が体後方へ誘導されると同時に、距骨6は逆に体前方へスライドする(図5)。このとき、舟状骨8らが下降し、足裏アーチの崩れももたらす。
【0006】
前記異常な状態のまま、足首を曲げようとすると、頸骨4と前方へズレた距骨6が干渉することから(図5、破線部K)、無意識に膝を内側に逃がし、干渉を回避する運動を起こす。これが前述の「knee−in toe−out」(図1)という動的アラインメント異常である。
【0007】
上記下半身の異常運動が習慣化すると下肢アラインメント異常を来たし、体軸のズレ、扁平足、回内足、回外足、O脚(内反膝)、X脚(外反膝)、外反拇指などを誘発する。更に、腰痛、股関節炎、シンスプリント、アキレス腱炎、足底筋膜炎、足関節捻挫といった障害を誘発する一因ともなる。
【0008】
かかる状態を放置すれば、痛みの慢性化、障害の再発率アップ、回復能力の低下、関節の変形、競技能力の低下といった悪循環に陥り、改善、回復に長期間を要することとなる。
【0009】
そこで、上記諸障害の根拠となる足関節内の異常運動の予防、障害の治療、矯正を行うための処置としては、現在、テーピングによる関節コントロールが主流となっている。
【0010】
一方、上記下肢アラインメント異常がもたらす一症状である扁平足を捉えて、足裏のアーチ構造確保という点に鑑み、足裏の正常なアーチに沿って、凸部を靴下底部内面に形成した靴下が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−258928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記テーピングによる関節コントロールは、足関節を固定してその動きを拘束するものであるから、足部の可動域を制限するため、十分な運動能力を発揮できないという問題点がある。また、テーピングの措置が面倒であるとともに、効果的なテーピング措置はある程度の熟練者によらなければ効果が期待できないという問題点に加え、使用したテープは使い捨てであるという経済的な理由とも相俟って、軽度のスポーツ練習や日常生活ではあまり使われないのが実情である。しかしながら、足関節の障害を未然に防ぐには、普段から何らかの予防処置を講じておくのが好ましい。
【0012】
また、特許文献1に係る発明は、本来の正常な横アーチ及び縦アーチに沿って、又は何れか一方のアーチに沿って凸部を靴下底部内面に形成したことによって、足裏の凹凸を正常に整えようとするものであるが、かかる構成によっては、扁平足という一症状への対応に留まることから、足関節自体への矯正力は期待できず、下肢アラインメント異常そのものに対する予防、治療といった効果はない。
【0013】
そして、上記下肢アラインメント異常は、下腿部にふくらはぎに拮抗できる強さの筋肉が存在しないために踵骨が後方へ引っ張られる現象であることから、筋力トレーニングや靴底にソールを入れるといった方法では、根本的に治すことができない。
【0014】
そこで、本発明は、足関節の障害に対する予防や治療、矯正、特に、足部の背屈時に距骨の後方への移動を円滑に行い、足関節の異常な外転を防止し、
足関節内の異常運動に起因する骨連鎖によって誘発される下半身の異常運動を矯正することで、下肢アラインメント異常や誘発されるシンスプリントなどの諸障害を、普段から未然に防ぐべく予防処置を講じることができる靴下を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために、本発明は次のように構成した。即ち、請求項1に記載の靴下は、伸縮強度の異なる編成領域を有し、着用時、踵骨隆起部を覆う領域に伸縮強度の強い編成に編上げた難伸縮性領域を設け、該領域に隣接する踝側及び爪先側に夫々周設した、前記難伸縮性領域より伸縮強度の弱い編成に編上げた準難伸縮性領域が、距骨の上部で連結してなることを特徴とした。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の靴下を着用すれば、足関節を背屈させた場合、踵骨部の難伸縮性領域による強度の収縮力を受けて、外踝から内踝にかけての甲側準難伸縮性領域の収縮力が働く結果、踵骨7は、前方の正常な位置に誘導されると同時に、距骨下関節のスライド運動により距骨6が後方へ誘導され(図6)、内踝と外踝との間に適正に嵌り込むこととなる。
【0017】
このように足関節内の異常運動が正常化されることにより、骨連鎖によって誘発される下半身の異常運動も解消されることとなる結果、体軸のズレ、扁平足、回内足、回外足、O脚(内反膝)、X脚(外反膝)、外反拇指といったアラインメント異常や、腰痛、股関節炎、シンスプリント、アキレス腱炎、足底筋膜炎、足関節捻挫といった各種障害が解消されることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の靴下を実現する最良の形態を、実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0019】
本発明の第一の実施例について、図7乃至図10に基づき説明する。図7は、第一の実施例に係る本発明に係る靴下を示す図、図8は力の働きを示す図、図9、図10は本発明に係る靴下を装着時の足関節への作用を示した図
である。
【0020】
図中、1は本発明に係る靴下、20は難伸縮性領域、30は準難伸縮性領域を示す。
【0021】
本発明に係る靴下とは、短靴下のほか、サイハイソックス(太もも中央までの長さ)、オーバーザニー(膝上程度の長さ)、ハイソックス(ほぼ膝下までの長さ)、スリークォーターソックス(ふくらはぎまでの長さ)、ブーツソックス(ふくらはぎ中央までの長さ)、クルーソックス(短靴下よりもやや長い)、スニーカーソックスなど様々な靴下をいう。
【0022】
靴下1は、踵骨部に、伸縮強度の強い編成に編上げた難伸縮性領域20を設け、該領域20に隣接する踝側及び爪先側に夫々周設した、前記難伸縮性領域より伸縮強度の弱い編成に編上げた準難伸縮性領域30を距骨上部で連結してなる構成とする(図7)。その他の部位は通常の靴下と同様の構成である。前記難伸縮性領域は、踵骨隆起部位にフィットさせるべく立体的に編成することとしても良い。
【0023】
靴下1の素材は、天然糸、合成糸など通常の靴下に用いられるもので良い。例えば、綿、アクリル、毛、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、麻、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンなどのほか、これらの組み合せである。
【0024】
難伸縮性領域20及び準難伸縮性領域30の編成は、夫々所望の伸縮強度が得られるのであれば、使用する素材の別によっても良いし、編み方の別によっても良い。
【0025】
図8に示すように、難伸縮性領域20は踵骨隆起部全体を覆い、踵骨先端部c、内外踝下近傍に設けた該難伸縮性領域20の頂点b、距骨の上部で連結した準難伸縮性領域上の点aの夫々を結ぶ線βが示す向き、即ち、難伸縮性領域20及び準難伸縮性領域30により生じる伸縮力の力の向きは、距踵関節面及び距骨下関節面の個人差を考慮して、約45〜約60度の角度となることが好ましい。
【0026】
本発明に係る靴下を着用すると、立位の状態においても、踵骨部の難伸縮性領域20による強度の収縮力を受けて、外踝から内踝にかけての足の甲側準難伸縮性領域30の収縮力が働く(図9、図10)。その結果、踵骨は前方の正常な位置に誘導されると同時に、距骨下関節のスライド運動により距骨が後方へ誘導され内踝と外踝との間に適正に嵌り込む。当該方向以外に力は作用しないので、足関節全体の運動性が損なわれることはない。
【0027】
また、背屈時には、踵骨部にかかる難伸縮性領域20による一層の強度の収縮力を受けて、外踝から内踝にかけての足の甲側準難伸縮性領域30の収縮力が働く(図6)。その結果、踵骨は前方の正常な位置に誘導されると同時に、距骨下関節のスライド運動により距骨が後方へ誘導され内踝と外踝との間に適正に嵌り込む。当該方向以外に力は作用しないので、足関節全体の運動性が損なわれることはない。
【0028】
以上、本発明に係る靴下を着用すれば、足関節の種々の障害を未然に防ぐことができ、足関節内の異常運動が正常化されることにより、骨連鎖によって誘発される下半身の異常運動も解消されることとなる結果、体軸のズレ、扁平足、回内足、回外足、O脚(内反膝)、X脚(外反膝)、外反母趾といったアラインメント異常や、腰痛、股関節炎、シンスプリント、アキレス腱炎、足底筋膜炎、足関節捻挫といった各種障害が解消されることとなる。
【実施例2】
【0029】
本発明の第二の実施例について、図11に基づいて説明する。本実施例は、前記実施例の靴下をストッキングに応用したものである。
【0030】
図11は、本実施例におけるストッキングを示す図である。図中、21は難伸縮性領域、31は準難伸縮性領域を示す。
【0031】
即ち、本実施例におけるストッキングは、伸縮強度の異なる編成領域を有するストッキングであって、着用時、踵骨隆起部を覆う領域に伸縮強度の強い編成に編上げた難伸縮性領域を設け、該領域に隣接する踝側及び爪先側に夫々周設した、前記難伸縮性領域より伸縮強度の弱い編成に編上げた準難伸縮性領域が、距骨の上部で連結してなることを特徴とするストッキングである。
【0032】
本実施例におけるストッキングの素材は、ナイロン、ポリウレタンなど、通常、ストッキングに用いられる素材でよく、難伸縮性領域21及び準難伸縮性領域31の編成は、夫々所望の伸縮強度が得られるのであれば、使用する素材の別によっても良いし、編み方の別によっても良い。
【0033】
本実施例におけるストッキングを着用すれば、前記実施例同様、足関節の種々の障害を未然に防ぐことができ、足関節内の異常運動が正常化されることにより、骨連鎖によって誘発される下半身の異常運動も解消されることとなる結果、体軸のズレ、扁平足、回内足、回外足、O脚(内反膝)、X脚(外反膝)、外反拇指といったアラインメント異常や、腰痛、股関節炎、シンスプリント、アキレス腱炎、足底筋膜炎、足関節捻挫といった各種障害が解消されることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、例えば、靴下の製造メーカー並びに販売業者等により、産業上、利用可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】knee−in toe−outを示す図
【図2】knee−out toe−inを示す図
【図3】下腿三頭筋がアキレス腱に癒合した状態を示す図
【図4】足関節の骨格を示す
【図5】図膝屈曲時の異常な足関節の状態を示す図
【図6】本発明に係る靴下を装着した足関節の状態を示す図
【図7】第一の実施例に係る本発明に係る靴下を示す図
【図8】力の働きを示す図
【図9】本発明に係る靴下を装着時の足関節への作用を示した図
【図10】本発明に係る靴下を装着時の足関節への作用を示した図
【図11】第二の実施例に係る本発明に係るストッキングを示す図
【符号の説明】
【0036】
1 本発明に係る靴下
20、21 難伸縮性素材領域
30、31 準難伸縮性素材領域
4 頸骨
5 腓骨
6 距骨
7 踵骨
8 舟状骨
9 内踝
10 外踝
【技術分野】
【0001】
本発明は、足関節の障害に対する予防や治療、矯正を目的とし、足関節内の異常運動に起因する骨連鎖がもたらす下肢アラインメント異常、下肢障害を未然に防ぐべく、足部の背屈時に距骨の後方への移動を円滑に行い、足関節の異常な外転防止に適した靴下に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スポーツ等による下半身の障害の多くは、下肢に対して足部が背屈したときに、足関節が外転、即ち脛骨の前後軸に対して足部長軸が外側に向く状態となる異常運動に起因するといわれている。これは、「knee−in toe−out(膝が内側、つま先が外方向を向く)」(図1)という骨格異常運動として表れ、動的アラインメント異常と捉えられている。また、これとは逆の方向に向く「knee−out toe−in(膝が外側、つま先が内方向を向く)」という骨格異常運動(図2)も見られる。
【0003】
特に多いのが前者で、人間の85%以上に無意識に起こっているといわれる。この異常運動の習慣化により発生する障害は、スポーツ障害分野では“toe−out症候群”と呼ばれ、大腿骨から脛骨4、腓骨5、距骨6、踵骨7そして足部にかけての骨連鎖(図4)により広く下半身の異常運動を誘発し、下半身の障害の80%以上は、この異常運動が関与していると考えられている。
【0004】
立位の状態では内側の踝9と外側の踝10との間に距骨6が適正に嵌り込み、関節面が安定する位置で嵌合しているものの(図4)、本来的に前述の筋骨構造上、常に該異常運動を誘発しやすい状態にあるといえる。
【0005】
前記足関節内の背屈時の異常運動について詳述すると、四足歩行から進化した人間の手足は屈筋支配が強い特徴があるところ、腓腹筋3とヒラメ筋4とからなる下腿三頭筋がアキレス腱5に癒合して踵骨に付着している筋骨構造上(図3)、膝屈曲時(背屈時)には踵骨を後方へ引っ張る作用が働く。この作用により踵骨7が体後方へ誘導されると同時に、距骨6は逆に体前方へスライドする(図5)。このとき、舟状骨8らが下降し、足裏アーチの崩れももたらす。
【0006】
前記異常な状態のまま、足首を曲げようとすると、頸骨4と前方へズレた距骨6が干渉することから(図5、破線部K)、無意識に膝を内側に逃がし、干渉を回避する運動を起こす。これが前述の「knee−in toe−out」(図1)という動的アラインメント異常である。
【0007】
上記下半身の異常運動が習慣化すると下肢アラインメント異常を来たし、体軸のズレ、扁平足、回内足、回外足、O脚(内反膝)、X脚(外反膝)、外反拇指などを誘発する。更に、腰痛、股関節炎、シンスプリント、アキレス腱炎、足底筋膜炎、足関節捻挫といった障害を誘発する一因ともなる。
【0008】
かかる状態を放置すれば、痛みの慢性化、障害の再発率アップ、回復能力の低下、関節の変形、競技能力の低下といった悪循環に陥り、改善、回復に長期間を要することとなる。
【0009】
そこで、上記諸障害の根拠となる足関節内の異常運動の予防、障害の治療、矯正を行うための処置としては、現在、テーピングによる関節コントロールが主流となっている。
【0010】
一方、上記下肢アラインメント異常がもたらす一症状である扁平足を捉えて、足裏のアーチ構造確保という点に鑑み、足裏の正常なアーチに沿って、凸部を靴下底部内面に形成した靴下が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−258928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記テーピングによる関節コントロールは、足関節を固定してその動きを拘束するものであるから、足部の可動域を制限するため、十分な運動能力を発揮できないという問題点がある。また、テーピングの措置が面倒であるとともに、効果的なテーピング措置はある程度の熟練者によらなければ効果が期待できないという問題点に加え、使用したテープは使い捨てであるという経済的な理由とも相俟って、軽度のスポーツ練習や日常生活ではあまり使われないのが実情である。しかしながら、足関節の障害を未然に防ぐには、普段から何らかの予防処置を講じておくのが好ましい。
【0012】
また、特許文献1に係る発明は、本来の正常な横アーチ及び縦アーチに沿って、又は何れか一方のアーチに沿って凸部を靴下底部内面に形成したことによって、足裏の凹凸を正常に整えようとするものであるが、かかる構成によっては、扁平足という一症状への対応に留まることから、足関節自体への矯正力は期待できず、下肢アラインメント異常そのものに対する予防、治療といった効果はない。
【0013】
そして、上記下肢アラインメント異常は、下腿部にふくらはぎに拮抗できる強さの筋肉が存在しないために踵骨が後方へ引っ張られる現象であることから、筋力トレーニングや靴底にソールを入れるといった方法では、根本的に治すことができない。
【0014】
そこで、本発明は、足関節の障害に対する予防や治療、矯正、特に、足部の背屈時に距骨の後方への移動を円滑に行い、足関節の異常な外転を防止し、
足関節内の異常運動に起因する骨連鎖によって誘発される下半身の異常運動を矯正することで、下肢アラインメント異常や誘発されるシンスプリントなどの諸障害を、普段から未然に防ぐべく予防処置を講じることができる靴下を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために、本発明は次のように構成した。即ち、請求項1に記載の靴下は、伸縮強度の異なる編成領域を有し、着用時、踵骨隆起部を覆う領域に伸縮強度の強い編成に編上げた難伸縮性領域を設け、該領域に隣接する踝側及び爪先側に夫々周設した、前記難伸縮性領域より伸縮強度の弱い編成に編上げた準難伸縮性領域が、距骨の上部で連結してなることを特徴とした。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の靴下を着用すれば、足関節を背屈させた場合、踵骨部の難伸縮性領域による強度の収縮力を受けて、外踝から内踝にかけての甲側準難伸縮性領域の収縮力が働く結果、踵骨7は、前方の正常な位置に誘導されると同時に、距骨下関節のスライド運動により距骨6が後方へ誘導され(図6)、内踝と外踝との間に適正に嵌り込むこととなる。
【0017】
このように足関節内の異常運動が正常化されることにより、骨連鎖によって誘発される下半身の異常運動も解消されることとなる結果、体軸のズレ、扁平足、回内足、回外足、O脚(内反膝)、X脚(外反膝)、外反拇指といったアラインメント異常や、腰痛、股関節炎、シンスプリント、アキレス腱炎、足底筋膜炎、足関節捻挫といった各種障害が解消されることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の靴下を実現する最良の形態を、実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0019】
本発明の第一の実施例について、図7乃至図10に基づき説明する。図7は、第一の実施例に係る本発明に係る靴下を示す図、図8は力の働きを示す図、図9、図10は本発明に係る靴下を装着時の足関節への作用を示した図
である。
【0020】
図中、1は本発明に係る靴下、20は難伸縮性領域、30は準難伸縮性領域を示す。
【0021】
本発明に係る靴下とは、短靴下のほか、サイハイソックス(太もも中央までの長さ)、オーバーザニー(膝上程度の長さ)、ハイソックス(ほぼ膝下までの長さ)、スリークォーターソックス(ふくらはぎまでの長さ)、ブーツソックス(ふくらはぎ中央までの長さ)、クルーソックス(短靴下よりもやや長い)、スニーカーソックスなど様々な靴下をいう。
【0022】
靴下1は、踵骨部に、伸縮強度の強い編成に編上げた難伸縮性領域20を設け、該領域20に隣接する踝側及び爪先側に夫々周設した、前記難伸縮性領域より伸縮強度の弱い編成に編上げた準難伸縮性領域30を距骨上部で連結してなる構成とする(図7)。その他の部位は通常の靴下と同様の構成である。前記難伸縮性領域は、踵骨隆起部位にフィットさせるべく立体的に編成することとしても良い。
【0023】
靴下1の素材は、天然糸、合成糸など通常の靴下に用いられるもので良い。例えば、綿、アクリル、毛、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、麻、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンなどのほか、これらの組み合せである。
【0024】
難伸縮性領域20及び準難伸縮性領域30の編成は、夫々所望の伸縮強度が得られるのであれば、使用する素材の別によっても良いし、編み方の別によっても良い。
【0025】
図8に示すように、難伸縮性領域20は踵骨隆起部全体を覆い、踵骨先端部c、内外踝下近傍に設けた該難伸縮性領域20の頂点b、距骨の上部で連結した準難伸縮性領域上の点aの夫々を結ぶ線βが示す向き、即ち、難伸縮性領域20及び準難伸縮性領域30により生じる伸縮力の力の向きは、距踵関節面及び距骨下関節面の個人差を考慮して、約45〜約60度の角度となることが好ましい。
【0026】
本発明に係る靴下を着用すると、立位の状態においても、踵骨部の難伸縮性領域20による強度の収縮力を受けて、外踝から内踝にかけての足の甲側準難伸縮性領域30の収縮力が働く(図9、図10)。その結果、踵骨は前方の正常な位置に誘導されると同時に、距骨下関節のスライド運動により距骨が後方へ誘導され内踝と外踝との間に適正に嵌り込む。当該方向以外に力は作用しないので、足関節全体の運動性が損なわれることはない。
【0027】
また、背屈時には、踵骨部にかかる難伸縮性領域20による一層の強度の収縮力を受けて、外踝から内踝にかけての足の甲側準難伸縮性領域30の収縮力が働く(図6)。その結果、踵骨は前方の正常な位置に誘導されると同時に、距骨下関節のスライド運動により距骨が後方へ誘導され内踝と外踝との間に適正に嵌り込む。当該方向以外に力は作用しないので、足関節全体の運動性が損なわれることはない。
【0028】
以上、本発明に係る靴下を着用すれば、足関節の種々の障害を未然に防ぐことができ、足関節内の異常運動が正常化されることにより、骨連鎖によって誘発される下半身の異常運動も解消されることとなる結果、体軸のズレ、扁平足、回内足、回外足、O脚(内反膝)、X脚(外反膝)、外反母趾といったアラインメント異常や、腰痛、股関節炎、シンスプリント、アキレス腱炎、足底筋膜炎、足関節捻挫といった各種障害が解消されることとなる。
【実施例2】
【0029】
本発明の第二の実施例について、図11に基づいて説明する。本実施例は、前記実施例の靴下をストッキングに応用したものである。
【0030】
図11は、本実施例におけるストッキングを示す図である。図中、21は難伸縮性領域、31は準難伸縮性領域を示す。
【0031】
即ち、本実施例におけるストッキングは、伸縮強度の異なる編成領域を有するストッキングであって、着用時、踵骨隆起部を覆う領域に伸縮強度の強い編成に編上げた難伸縮性領域を設け、該領域に隣接する踝側及び爪先側に夫々周設した、前記難伸縮性領域より伸縮強度の弱い編成に編上げた準難伸縮性領域が、距骨の上部で連結してなることを特徴とするストッキングである。
【0032】
本実施例におけるストッキングの素材は、ナイロン、ポリウレタンなど、通常、ストッキングに用いられる素材でよく、難伸縮性領域21及び準難伸縮性領域31の編成は、夫々所望の伸縮強度が得られるのであれば、使用する素材の別によっても良いし、編み方の別によっても良い。
【0033】
本実施例におけるストッキングを着用すれば、前記実施例同様、足関節の種々の障害を未然に防ぐことができ、足関節内の異常運動が正常化されることにより、骨連鎖によって誘発される下半身の異常運動も解消されることとなる結果、体軸のズレ、扁平足、回内足、回外足、O脚(内反膝)、X脚(外反膝)、外反拇指といったアラインメント異常や、腰痛、股関節炎、シンスプリント、アキレス腱炎、足底筋膜炎、足関節捻挫といった各種障害が解消されることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、例えば、靴下の製造メーカー並びに販売業者等により、産業上、利用可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】knee−in toe−outを示す図
【図2】knee−out toe−inを示す図
【図3】下腿三頭筋がアキレス腱に癒合した状態を示す図
【図4】足関節の骨格を示す
【図5】図膝屈曲時の異常な足関節の状態を示す図
【図6】本発明に係る靴下を装着した足関節の状態を示す図
【図7】第一の実施例に係る本発明に係る靴下を示す図
【図8】力の働きを示す図
【図9】本発明に係る靴下を装着時の足関節への作用を示した図
【図10】本発明に係る靴下を装着時の足関節への作用を示した図
【図11】第二の実施例に係る本発明に係るストッキングを示す図
【符号の説明】
【0036】
1 本発明に係る靴下
20、21 難伸縮性素材領域
30、31 準難伸縮性素材領域
4 頸骨
5 腓骨
6 距骨
7 踵骨
8 舟状骨
9 内踝
10 外踝
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮強度の異なる編成領域を有する靴下であって、着用時、踵骨隆起部を覆う領域に伸縮強度の強い編成に編上げた難伸縮性領域を設け、
該領域に隣接する踝側及び爪先側に夫々周設した、前記難伸縮性領域より伸縮強度の弱い編成に編上げた準難伸縮性領域が、距骨の上部で連結してなることを特徴とする靴下。
【請求項1】
伸縮強度の異なる編成領域を有する靴下であって、着用時、踵骨隆起部を覆う領域に伸縮強度の強い編成に編上げた難伸縮性領域を設け、
該領域に隣接する踝側及び爪先側に夫々周設した、前記難伸縮性領域より伸縮強度の弱い編成に編上げた準難伸縮性領域が、距骨の上部で連結してなることを特徴とする靴下。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−41162(P2009−41162A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−210550(P2007−210550)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(502100334)有限会社シーシェル (13)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(502100334)有限会社シーシェル (13)
【Fターム(参考)】
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