靴中敷
【課題】 歩行時に履き物の中底に固定できて履き物内で位置ずれするのを防止できるとともに、歩行後に中底から取り外す際に、中底が履き物から剥がれるおそれのない靴中敷を提供する。
【解決手段】 履き物の中底上の所定箇所に装着して使用される靴中敷1である。靴中敷1は粘着性有するシート状の弾性体からなり、履き物の中底と当接する側の当接面2には、所定の大きさの複数の窪み部21が形成されている。当接面2の各窪み部21以外の領域には、窪み部21よりも微細な凹凸24が形成されている。各窪み部21の内面22には、複数の微細な凹凸25が形成されている。
【解決手段】 履き物の中底上の所定箇所に装着して使用される靴中敷1である。靴中敷1は粘着性有するシート状の弾性体からなり、履き物の中底と当接する側の当接面2には、所定の大きさの複数の窪み部21が形成されている。当接面2の各窪み部21以外の領域には、窪み部21よりも微細な凹凸24が形成されている。各窪み部21の内面22には、複数の微細な凹凸25が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、履き物の中底上の所定箇所に装着して使用される靴中敷に関し、特に粘着性を有する弾性体からなる靴中敷に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、歩行時に足裏に加わる衝撃を低減したり、足裏の形状を矯正して正しく保つようにしたり、足裏をマッサージしたりなどするために、靴やサンダルなどの履き物の中底上の所定箇所(例えば、土踏まず部や踵部など)に、クッション性を有する靴中敷(インソール)を装着することが一般的に行われている。
【0003】
このような靴中敷は、歩行中に、例えば足裏からの荷重などによって履き物内で動いて、その装着位置がずれてしまうと、足裏に効果的に作用しなくなるなどの不具合が生じるため、中底に固定して履き物内の所定箇所にとどめておく必要がある。そこで、靴中敷を、粘着性を有する弾性体によって形成することで、その粘着性により靴中敷が履き物内で位置ずれするのを防止するようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1では、粘着性を有するゲル状のシートにより靴中敷を形成しており、靴中敷の下面を履き物の中底上に貼着することにより、靴中敷自体の粘着性によって、接着剤などを用いることなく履き物に対して固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−223209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の靴中敷は、履き物の中底と当接する下面が平坦な面に形成されているため、靴中敷に荷重がかかると、その下面全域で履き物の中底に接触して粘着する。その結果、靴中敷と履き物の中底とが強固に固定されるので、靴中敷の位置ずれ防止には効果的である。ところで、履き物の中底は、古くなったら新しい中底と貼り替えることができるように、合成皮革や合成樹脂性シートを履き物の上面に貼り付けるようにしたものが一般的である。そのため、特許文献1に記載の靴中敷のように、その下面を平坦面に形成してその全域で履き物の中底に粘着させる場合、その粘着力が強力であると、歩行後に、靴中敷を履き物から取り外そうとする際に、靴中敷とともに中底まで強く引っ張られてしまうために、中底が履き物から剥がれてしまうという、不具合が生じる。
【0007】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、歩行時に履き物の中底に固定できて履き物内で位置ずれするのを防止できるとともに、歩行後に中底から取り外す際に、中底が履き物から剥がれるおそれのない靴中敷を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の靴中敷は、履き物の中底上の所定箇所に装着して使用されるものであって、粘着性を有するシート状の弾性体からなり、前記弾性体の履き物の中底と当接する側の当接面には、所定の大きさの複数の窪み部が形成されていることを特徴としている。
【0009】
上記した構成の靴中敷を履き物の中底上に装着すると、靴中敷は、靴中敷自体の粘着性により中底上に粘着するが、靴中敷の、中底に装着される側の当接面では、各窪み部と中底との間に空間が形成されて、各窪み部は中底と非接触の状態となっている。この状態から、使用者が履き物を使用することで靴中敷に足裏の踏みつけによる荷重がかかると(以下、「荷重時」という。)、靴中敷が弾性体からなるため、前記当接面では、各窪み部が押しつぶされるようにして圧縮変形する。これにより、各窪み部の内面が中底に接触して粘着するため、当接面がそのほぼ全域で中底に粘着する結果、中底との間の粘着力が増大する。これと同時に、荷重時には、各窪み部と中底との間の前記空間が狭くなって、窪み部内に存在する空気が外部に放出されて窪み部内部が減圧状態となる結果、吸盤作用により靴中敷が中底に吸着される。これにより、靴中敷は中底と強固に粘着し、履き物に対して固定されるので、靴中敷の履き物内での位置ずれを防止することができる。
【0010】
また、使用者が履き物の使用を終えることで靴中敷に足裏の荷重がかからなくなると、各窪み部には、元の形状に戻ろうとする弾性復元力が作用する。ここで、靴中敷を周縁部から捲るように剥がすと、窪み部内部に空気が入り込み、窪み部内部の減圧状態が開放される結果、上記した吸盤作用による吸着力が低下するため、前記窪み部は弾性復元力により元の形状に戻るようになって、中底との接触面積が減少する。そのため、前記窪み部においては、靴中敷と中底との粘着力が低下するので、靴中敷を小さい力で中底から剥がすことができるようになる。すなわち、靴中敷を中底から剥がす際に、中底を引っ張る力が小さくなるので、中底が履き物から剥がれるという不具合が生じなくなる。
【0011】
このように、上記した構成の靴中敷によると、使用時には、履き物の中底と強固に粘着するために履き物内での位置ずれを防止可能である一方、使用後に靴中敷を取り外す際には、靴中敷と中底との間の粘着力が低下して、中底から無理なく剥がすことができる。すなわち、中底が引っ張られて履き物から剥れるおそれがない。
【0012】
本発明の好ましい実施態様においては、前記当接面の前記窪み部以外の領域には、前記窪み部よりも微細な凹凸が形成されていることを特徴としている。
【0013】
本実施態様によると、前記当接面の各窪み部以外の領域(以下、「当接部」という。)では、微細な凹凸が形成されているために、荷重時には、この微細な凹凸の凹部が押しつぶされるように圧縮変形して、前記凹部の内面が中底に接して粘着する結果、当接部が平坦となっている場合と同程度の、中底との接触面積を担保できる。さらに、前記凹部内部が減圧状態となることで、吸盤作用による吸着力が前記凹部に生じるため、前記窪み部の吸盤作用による吸着力と相俟って、当接部が平坦となっている場合と比べて、靴中敷全体としてより強固な粘着性を発揮する。
【0014】
一方、非荷重時には、押しつぶされた前記凹部が微細であり、前記凹部に作用する弾性復元力が小さくて吸盤作用が発揮されつづけるために、元の形状に戻り難く、靴中敷と中底との接触面積が大きくなったまま維持される(すなわち、靴中敷と中底の強固な粘着が維持される)。しかし、靴中敷を周縁部から捲るように剥すと、前記凹部と捲られて中底と接触していない部分との境界部分から、前記凹部の内部へと空気が入り込み、前記凹部の減圧状態が開放される結果、前記凹部は弾性復元力により元の形状に戻ろうとして、中底との接触面積が減少する。そのため、この凹部周辺においては、当接部と中底との粘着力が低下するので、当接部が平坦で、粘着力が一様となっている場合と比べると、靴中敷を中底からより小さい力で剥がすことが可能となる。
【0015】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記窪み部の内面には、複数の微細な凹凸が形成されていることを特徴としている。
【0016】
本実施態様によると、荷重時には、各窪み部は押しつぶされて、その内面が中底と接触するが、各窪み部の内面に微細な凹凸が形成されているので、この微細な凹凸の凹部が押しつぶされるように圧縮変形して、前記凹部の内面が中底に接着して粘着する結果、各窪み部の内面が平坦となっている場合と同程度の、中底との接触面積を担保できる。さらに、前記凹部内部が減圧状態となることで、吸盤作用による吸着力が前記凹部に生じるため、各窪み部の内面が平坦となっている場合と比べてより強固な粘着性を発揮する。
【0017】
一方、非荷重時には、押しつぶされた前記凹部が微細であることから、前記凹部に作用する弾性復元力が小さく吸盤作用が発揮されつづけるために、元の形状に戻り難く、窪み部は中底との接触面積が大きくなったまま維持される(すなわち、窪み部と中底の強固な粘着が維持される)。しかし、靴中敷を周縁部から捲るように剥して窪み部内部へと空気が入り込むと、前記凹部と、捲られて中底と接触していない部分との境界部分から、前記凹部の内部にも空気が入り込み、前記凹部の減圧状態が開放される。この時、前記凹部が存在する窪み部の吸盤作用も低下し、窪み部が元の状態に戻ることから、中底との接触面積を減少させることができる。ここで、前記窪み部には弾性復元力が作用していることから、前記窪み部における微細な凹凸の吸盤作用は、前記窪み部以外の領域における微細な凹凸のそれに比べると強くなく、前記窪み部における前記凹部の減圧状態は容易に開放することができる。このように、この凹部周辺においては、窪み部の内面と中底との接着力が低下するので、各窪み部の内面が平坦で、粘着力が一様となっている場合と比べると、各窪み部の内面が中底から剥がれやすくなる。すなわち、このような構成によれば、各窪み部の内面が平坦で、粘着力が一様となっている場合と比べると、荷重時は各窪み部において強固な粘着性を発揮し、一方、非荷重時、減圧状態を開放することで、その粘着性を容易に低下させることが可能であり、靴中敷を中底からより小さい力で剥がすことが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の靴中敷によると、履き物の使用により、靴中敷に荷重がかかる場合には、各窪み部が圧縮変形して、その内面が履き物の中底に接触することにより、中底と強固に粘着するので、靴中敷の履き物内での位置ずれが防止可能となる。一方、靴中敷に荷重がかからなくなると、各窪み部が弾性復元力により元の状態に戻ろうとするため、中底を周縁部から捲って剥がす際に、各窪み部では中底との間の粘着力が低下して、中底から無理なく剥がすことができるので、この際に中底が引っ張られて履き物から剥れるおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例である靴中敷の背面図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】荷重時の靴中敷の状態を示す要部断面図である。
【図4】靴中敷を履き物の中底に装着した例を示す平面図である。
【図5】中底を靴中敷から剥がしている途中の状態を示す要部断面図である。
【図6】本発明の他の実施例である靴中敷の背面図である。
【図7】図5の要部断面図である。
【図8】本発明の他の実施例である靴中敷の背面図である。
【図9】図7の要部断面図である。
【図10】窪み部の写真である。スケールバーは、5mmを示す。
【図11】微細な凹凸の写真である。スケールバーは、1mmを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1および図2は、本発明の一実施例である靴中敷1の構成を示している。本実施例の靴中敷1は、図4に示すように、例えば人の足裏の踵部や土踏まず部などに接するように、履き物10の中底11上に装着して使用されることにより、歩行時に足裏に加わる衝撃を低減したり、足裏をマッサージしたりすることができる。
【0021】
履き物10としては、靴、サンダル、ミュール、パンプス、ハイヒールなど、種々の履き物に対して使用することができるが、合成皮帯や合成樹脂性シートなど、中底11が履き物10に対して貼り替え可能となっている履き物10について使用するのが特に有効である。
【0022】
この靴中敷1は、図1および図2に示すように、外形が長円状をなし、所定の厚みを有するシート状のものであって、粘着性を有する柔軟な弾性体により形成されている。ここで、「粘着性」とは、接着剤や粘着材などを用いなくても被貼着部(本実施例では、履き物10の中底11)に貼着できる性質をいう。これにより、靴中敷1は、その下面、すなわち、履き物10の中底11と当接する側の面(以下、「当接面」という。)2を、中底11上に載置するだけで、その粘着性により履き物10に対して着脱可能になっている。本実施例において、弾性体の粘着性は特に限定されないが、KES−G5ハンディー圧縮試験機(カトーテック株式会社製)を用いて、シート状の弾性体を2cm2の円形加圧板(500gf)で圧縮した後に、この加圧板を引き上げる際にかかる力(粘着力)が、−60〜−5gf・cm/cm2とすることが好ましく、−40〜−10gf・cm/cm2とすることがより好ましい。この範囲とすることで、靴中敷1を中底11にしっかりと固定することができる。なお、上記した粘着性は、加えて、貼着と剥離とを繰り返しても粘着性が喪失しにくい耐久性を有していることが好ましい。
【0023】
前記弾性体としては、本実施例では、適度な粘着性を有するとともに、水洗粘着復帰性(塵埃などの付着により粘着力が低下した場合に、水洗いすることで粘着性が復帰する性質)を有する熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。これにより、靴中敷1を長時間連続して使用することにより、靴中敷1が汚れてその粘着性が低下した場合においても、水洗いして汚れを落とすことで再利用が可能となる。
【0024】
上記した熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系エラストマー、アクリル系エラストマー、ウレタン系エラストマーなどを例示することができる。また、前記弾性体として、熱可塑性エラストマーの他にも、ゴムなどの弾力性、粘着性を有する素材を用いることも可能である。
【0025】
また、靴中敷1の厚みは、靴中敷1の履き物10に対する装着位置(靴中敷1を当てる足裏の箇所)に応じて適宜調整可能であるが、例えば、足裏の踵部に接するように装着する場合には、1〜10mmの範囲から選択することが好ましく、1〜5mmの範囲から選択することがより好ましく、1.5〜3mmの範囲から選択することがさらに好ましく、1.5〜2mmの範囲から選択することがとくに好ましい。このような範囲とすることで、歩行によって足裏に加わる衝撃を吸収しつつ、履き物10を履いた際に、異物感や違和感を覚えることがなく良好な履き心地を維持できる。
【0026】
本実施例の靴中敷1は、弾性体として熱可塑性エラストマーを金型(図示せず)に射出成形することにより成型されており、その下面の当接面2には、水平かつ平坦な当接部20と、所定の大きさを有する複数の窪み部21とが形成されている。
【0027】
前記当接部20は、靴中敷1に足裏からの荷重がかかっていない非荷重時において、履き物10の中底11と接触している。一方、各窪み部21は、断面形状が弓形状に形成されており、その開口周縁において前記当接部20と連続している。この各窪み部21は、非荷重時には、履き物10の中底11との間に空間Sが形成されて、その内面22が中底11とは非接触の状態となっている。このように、非荷重時においては、前記当接面2では、当接部20でのみ中底11と接触し、例えば当接面2を平坦形状とした場合と比べると、中底11と粘着する領域の面積が減少しているため、靴中敷1が中底11と過度に粘着しないようになっている。
【0028】
図3に示すように、靴中敷1に足裏12の踏みつけによって上方から荷重がかかると(以下、「荷重時」という。)、靴中敷1の当接面2では、各窪み部21が圧縮変形して、その径が拡張する向きに押しつぶされることにより、次第にその内面22が中底11と接触するようになる。これにより、当接面2は、当接部20だけでなく各窪み部21も中底11と接触して、そのほぼ全域で中底11に粘着する結果、靴中敷1と中底11との間の粘着力が増大する。これと同時に、荷重時には、各窪み部21と中底11との間の空間Sが狭くなって、各窪み部21内に存在する空気が外部に放出されて各窪み部21内部は減圧状態となることから、この減圧による吸着力が靴中敷1に対して作用(吸盤作用)するため、靴中敷1は中底11に吸着される。その結果、靴中敷1は中底11と強固に粘着して、履き物10に対して固定されるので、使用時においてその位置ずれが防止される。
【0029】
この状態から、靴中敷1に足裏からの荷重がかからなくなると、各窪み部21には、元の形状に戻ろうとする弾性復元力が作用する。ここで、靴中敷1を周縁部23から捲るように剥がせば、図5に示すように、窪み部21と当接部20との境界部分Zから窪み部21内部に空気が入り込み、窪み部21の内部の減圧状態が開放される結果、上記した吸盤作用による吸着力が低下するため、窪み部21は弾性復元力により元の形状に容易に戻るようになる。そのため、窪み部21においては、中底11との接触面積が減少して、中底11との粘着力が低下するので、靴中敷1を小さい力で中底11から剥がすことができるようになる。すなわち、靴中敷1を中底11から剥がす際に、中底11を引っ張る力が小さくなるので、中底11が履き物10から剥がれるという不具合が生じなくなる。
【0030】
ここで、窪み部21の大きさは、特に制限されないが、荷重時に、その内面22が中底11に広く接触して粘着するとともに、荷重が取り除かれた非荷重時、減圧状態が開放されると、その弾性復元力によって中底11との間の粘着力に抗して内面22が中底11から剥離して、窪み部21が元の状態に復帰できる程度の大きさに形成されているのが望ましい。
【0031】
ここで、窪み部21の大きさ(面積)は、非常に小さく微細なものであると、減圧状態が開放された場合でも、その粘着力の低下する面積が限られるため、中底11を引っ張る力を効果的に低下させることができない。よって、本実施例の靴中敷1では、窪み部21は、図10に示すように、目視で確認できないような微細なものではなく、適度な大きさ(面積)に形成しており、その径rを1〜5mmの範囲から選択することが好ましく、本実施例では、約2.5mmに設定している。
【0032】
また、窪み部21の深さdは、特に制限されないが、窪み部21が深すぎると、荷重時に窪み部21の内面22が中底11と接触する面積が小さくなって、十分な粘着効果が得られなくなる。そのため、窪み部21の深さdは、前記窪み部21の径rに対して、荷重時に、各窪み部21が押しつぶされてその内面22が中底11に十分接触する程度の深さに形成されているのが望ましい。また、靴中敷1の硬度などに応じて適宜調整され得るが、窪み部21が深すぎると、窪み部21と上面10との間の厚みが小さくなり、窪み部21の弾性復元力が十分に得られなくなる。そのため、窪み部21の深さdは、、例えば、後述するように靴中敷1の硬度が5〜40度である場合、靴中敷1の厚みに対して1/2以下となるように形成されるのが望ましく、1/3以下となるように形成されているのがより望ましい。窪み部21の具体的な深さdとしては、例えば、0.2〜1.5mmの範囲から選択され、本実施例では約0.5mmに設定されている。
【0033】
各窪み部21は、本実施例では断面弓形状に形成されているが、必ずしもこれに限られるものではなく、断面視において、頂部が平坦なバスタブ形状や半球状など、種々の形状に形成することができる。また、各窪み部21は、当接面2の長手方向もしくは幅方向に沿って複数列に、一方の側縁から他方の側縁に向かって当接面2を横断するようにして延びる溝状のものであっても構わない。
【0034】
靴中敷1の硬度は、特に制限されないが、5〜40度の範囲から選択することが好ましい。この範囲内であると、荷重によって圧縮変形された窪み部21を弾性復元力によってもとの形状に戻り易くすることができる。この硬度は、SRIS0101に準じて、アスカー硬度計C型(高分子計器株式会社製)により測定される。
【0035】
なお、当接面2の周縁部23は、履き物10の中底11と当接するように平坦面に形成して、この周縁部23には前記窪み部21を形成しないようにするのが好ましい。具体的には、周縁部23から窪み部21までの距離は窪み部21の径r以上であることが好ましく、径2r以上であることがより好ましい。これにより、当接面2の周縁部22は中底11に粘着し、この周縁部23から靴中敷1が捲れて剥離するのを防止することができるため、荷重時の窪み部21の減圧状態を担保しやすい一方で、窪み部23周辺の弾性力を確保できることから、窪み部23の減圧状態の開放および弾性回復を首尾よく行うことができる。本実施例では、当接面2の外周縁から約5mm〜8mmの幅を有する領域を前記周縁部23としている。
【0036】
靴中敷1の上面3、すなわち、足裏と接する側の面は、図示例では、下面の当接面2と水平でかつ平坦な平坦面に形成されている。これにより、荷重時には、靴中敷1に足裏からの荷重が均一にかかって、各窪み部21が均等に押しつぶされることで、その内面22が中底11に接触して粘着するようになっている。しかし、この上面10の形状は、これに限らず、種々の形状にして従来公知の靴中敷と同様の効果を奏するようにしてもよく、例えば、上面10に多数の突起(図示せず)を設けることで、各突起によって足裏を適度に押圧刺激する足裏マッサージ効果を得られるようにしてもよい。
【0037】
また、上面3を、足裏の土踏まず部の凹みの形状に沿った緩やかなアーチ形状とすることで、歩行時に足裏の土踏まず部のアーチ形状を維持して、足裏全体のバランスを整えることができるようにしてもよい。
【0038】
さらに、上面3にも、下面の当接面2と同様に、適度な大きさの窪み部21を複数形成することで、足裏と靴中敷1とを強固に粘着し、靴中敷1を介して足裏を履き物10に対して固定して、足が履き物10の前方に向かって滑って移動するのを防止するようにしてもよい。これは、特にミュール、パンプス、ハイヒール、サンダルなど、踵が高かったり、裸足で履くことが覆い履き物10に対して使用した場合に顕著な効果が得られる。
【0039】
上記した構成の靴中敷1を履き物10の中底11上に装着すると、靴中敷1の中底11に装着される側の当接面2では、当接部20が中底11に接触して粘着する一方、各窪み部21は中底11との間に空間Sが形成されて中底11とは非接触の状態となっている。
【0040】
この状態から、使用者が履き物10を使用することで、靴中敷1に足裏の踏みつけによる荷重がかかると、靴中敷1の当接面2では、図3に示すように、各窪み部21は押しつぶされるようにして圧縮変形し、それによって、その内面22が中底11に接触して粘着する。これにより、当接面2は、そのほぼ全域で中底11に粘着する結果、靴中敷1と中底11との間の粘着力が増大する。これと同時に、荷重時には、各窪み部21と中底11との間の空間Sが狭くなり、各窪み部21内に存在する空気が外部に放出されて各窪み部21内部は減圧状態となる結果、吸盤作用により靴中敷1が中底11に吸着される。これにより、靴中敷1は中底11と強固に粘着して、履き物10に対して固定されるので、靴中敷1の履き物10内での位置ずれを確実に防止することができる。
【0041】
また、履き物10の使用が終わることで、靴中敷1に足裏の荷重がかからなくなると、各窪み部21は、弾性復元力により元の形状に戻ろうとする。ここで、靴中敷1を周縁部23から捲るように剥がせば、図5に示すように、窪み部21と当接部20との境界部分Zから窪み部21内部に空気が入り込み、窪み部21の内部の減圧状態が開放される結果、上記した吸盤作用による吸着力が低下するため、窪み部21は弾性復元力により元の形状に容易に戻るようになる。そのため、窪み部21においては、中底11との接触面積が減少して、中底11との粘着力が低下する。これにより、靴中敷1を小さい力で中底11から剥がすことが可能となる結果、靴中敷1を中底11から剥がす際に、中底11を引っ張る力が小さくなるので、中底11が履き物10から剥がれるという不具合が生じなくなる。
【0042】
図6は、本発明の他の実施例である靴中敷1の構成を示している。また、図7は、この靴中敷1の断面図を示している。なお、この実施例の靴中敷1の基本的な構成は、図1に示した実施例の構成と同様であり、ここでは対応する構成に同一の符号を付している。
【0043】
図6および図7に示す靴中敷1では、前記当接面2の各窪み部21を除く当接部20の表面に、図11に示すような、径および深さが前記窪み部21の径rおよび深さdよりも小さい微細な凹凸24が形成されている。
【0044】
この微細な凹凸24の形成方法としては、例えば当接部20にあたる面がブラスト加工(極小の傷をつける加工)された金型を使用する方法や、特開平4−75602号公報などに開示されているような方法で凹凸を形成する方法などがあげられる。なかでも、本実施例のようにブラスト加工された金型を使用して形成することが簡便であり、かつ、後述するように、凹凸24の凹部が網目状に張り巡らされるようになることから、優れた吸着力を発揮するとともに、靴中敷1を中底11から剥がしやすくなるため好ましい。
【0045】
この実施例によると、前記当接面2の当接部20の表面に微細な凹凸24が形成されているために、荷重時には、この微細な凹凸24の凹部(図示せず)が押しつぶされるように圧縮変形して、前記凹部の内面が中底11に接着して粘着する結果、当接部20の表面が平坦となっている場合と同程度の、中底11との接触面積を担保できる。さらに、前記凹部内部が減圧状態となることで、吸盤作用による吸着力が前記凹部に生じ、窪み部21の吸盤作用による吸着力と相俟って、当接部20の表面が平坦となっている場合と比べて、靴中敷全体としてより強固な粘着性を発揮する。
【0046】
一方、非荷重時には、押しつぶされた前記凹部が微細であり、前記凹部に作用する弾性復元力が小さくて吸盤作用が発揮されつづけるために、元の形状に戻り難く、靴中敷1と中底11との接触面積が大きくなったまま維持される(すなわち、靴中敷1と中底11の強固な粘着が維持される)。しかし、前記凹凸24は、図11に示されるように、前記凹部が網目状に張り巡らされるようになっているため、靴中敷1を周縁部23から捲るように剥すと、前記凹部と捲られて中底11と接触していない部分との境界部分(図示せず)から、前記凹部の内部へと空気が入り込み、前記凹部の減圧状態が開放される結果、前記凹部は弾性復元力により元の形状に戻ろうとして、中底との接触面積が減少する。そのため、この凹部においては、中底との粘着力が低下するので、当接部20が平坦で、粘着力が一様となっている場合と比べると、靴中敷1を中底11からより小さい力で剥がすことが可能となる。
【0047】
前記凹凸24の前記凹部の面積は、平面視で20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましく、40〜70%の範囲であることがとくに好ましい。この範囲内であれば、圧縮変形された前記凹部の減圧状態を担保しやすい一方で、前記凹部周辺の弾性力を確保できることから前記凹部の減圧状態の開放および弾性回復を首尾よく行うことができる。
【0048】
図8は、本発明の他の実施例である靴中敷1の構成を示している。また、図9は、この靴中敷1の断面図を示している。なお、この実施例の靴中敷1の基本的な構成も、図1に示した実施例の構成と同様であり、ここでは対応する構成に同一の符号を付している。
【0049】
図8および図9に示す靴中敷1では、前記当接面2の当接部20の表面に、上記した微細な凹凸24が形成されているとともに(図10参照)、各窪み部21の内面22にも、径および深さが前記窪み部21の径rおよび深さdよりも小さい微細な凹凸25が形成されている。なお、この微細な凹凸25の形成方法は、上記した微細な凹凸24と同様である。
【0050】
この実施例によると、荷重時には、各窪み部21は押しつぶされて、その内面22が中底11と接触するが、各窪み部21の内面22に微細な凹凸25が形成されているので、この微細な凹凸25の凹部(図示せず)が押しつぶされるように圧縮変形して、前記凹部の内面が中底11に接着して粘着する結果、各窪み部21の内面22が平坦となっている場合と同程度の、中底11との接触面積を担保できる。さらに、前記凹部の内部が減圧状態となることで、吸盤作用による吸着力が前記凹部に生じるため、各窪み部21の内面22が平坦となっている場合と比べてより強固な粘着性を発揮する。
【0051】
一方、非荷重時には、押しつぶされた前記凹部が微細であることから、前記凹部に作用する弾性復元力が小さく吸盤作用が発揮されつづけるために、元の形状に戻り難く、窪み部21は中底11との接触面積が大きくなったまま維持される(すなわち、窪み部21と中底11の強固な粘着が維持される)。しかし、靴中敷1を周縁部23から捲るように剥して、窪み部21内部に空気が入り込むと、前記凹凸25は、前記凹部が網目状に張り巡らされるようになっているため(図示せず)、前記凹部と、捲られて中底11と接触していない部分との境界部分(図示せず)から、前記凹部の内部へと空気が入り込み、前記凹部の減圧状態が開放される。
【0052】
この時、前記凹部が存在する窪み部21の吸盤作用も低下し、窪み部21が元の状態に戻ることから、中底11との接触面積を減少させることができる。ここで、窪み部21には弾性復元力が作用していることから、窪み部21における微細な凹凸25の吸盤作用は、前記窪み部21以外の領域における微細な凹凸24のそれに比べると強くなく、窪み部21における前記凹部の減圧状態は容易に開放することができる。このように、この凹部周辺においては、窪み部21の内面22と中底11との粘着力が低下するので、窪み部21の内面22が平坦で、粘着力が一様となっている場合と比べると、各窪み部21の内面22が中底11から剥がれやすくなる。すなわち、このような構成によれば、各窪み部21の内面22が平坦で、粘着力が一様となっている場合と比べると、荷重時は各窪み部21において強固な粘着性を発揮する一方、非荷重時、減圧状態を開放することで、その粘着性を容易に低下させることが可能であり、靴中敷1を中底11からより小さい力で剥がすことが可能となる。
【符号の説明】
【0053】
1 靴中敷
2 当接面
10 履き物
11 中底
21 窪み部
22 窪み部の内面
24,25 微細な凹凸
Z 境界部分
【技術分野】
【0001】
本発明は、履き物の中底上の所定箇所に装着して使用される靴中敷に関し、特に粘着性を有する弾性体からなる靴中敷に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、歩行時に足裏に加わる衝撃を低減したり、足裏の形状を矯正して正しく保つようにしたり、足裏をマッサージしたりなどするために、靴やサンダルなどの履き物の中底上の所定箇所(例えば、土踏まず部や踵部など)に、クッション性を有する靴中敷(インソール)を装着することが一般的に行われている。
【0003】
このような靴中敷は、歩行中に、例えば足裏からの荷重などによって履き物内で動いて、その装着位置がずれてしまうと、足裏に効果的に作用しなくなるなどの不具合が生じるため、中底に固定して履き物内の所定箇所にとどめておく必要がある。そこで、靴中敷を、粘着性を有する弾性体によって形成することで、その粘着性により靴中敷が履き物内で位置ずれするのを防止するようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1では、粘着性を有するゲル状のシートにより靴中敷を形成しており、靴中敷の下面を履き物の中底上に貼着することにより、靴中敷自体の粘着性によって、接着剤などを用いることなく履き物に対して固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−223209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の靴中敷は、履き物の中底と当接する下面が平坦な面に形成されているため、靴中敷に荷重がかかると、その下面全域で履き物の中底に接触して粘着する。その結果、靴中敷と履き物の中底とが強固に固定されるので、靴中敷の位置ずれ防止には効果的である。ところで、履き物の中底は、古くなったら新しい中底と貼り替えることができるように、合成皮革や合成樹脂性シートを履き物の上面に貼り付けるようにしたものが一般的である。そのため、特許文献1に記載の靴中敷のように、その下面を平坦面に形成してその全域で履き物の中底に粘着させる場合、その粘着力が強力であると、歩行後に、靴中敷を履き物から取り外そうとする際に、靴中敷とともに中底まで強く引っ張られてしまうために、中底が履き物から剥がれてしまうという、不具合が生じる。
【0007】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、歩行時に履き物の中底に固定できて履き物内で位置ずれするのを防止できるとともに、歩行後に中底から取り外す際に、中底が履き物から剥がれるおそれのない靴中敷を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の靴中敷は、履き物の中底上の所定箇所に装着して使用されるものであって、粘着性を有するシート状の弾性体からなり、前記弾性体の履き物の中底と当接する側の当接面には、所定の大きさの複数の窪み部が形成されていることを特徴としている。
【0009】
上記した構成の靴中敷を履き物の中底上に装着すると、靴中敷は、靴中敷自体の粘着性により中底上に粘着するが、靴中敷の、中底に装着される側の当接面では、各窪み部と中底との間に空間が形成されて、各窪み部は中底と非接触の状態となっている。この状態から、使用者が履き物を使用することで靴中敷に足裏の踏みつけによる荷重がかかると(以下、「荷重時」という。)、靴中敷が弾性体からなるため、前記当接面では、各窪み部が押しつぶされるようにして圧縮変形する。これにより、各窪み部の内面が中底に接触して粘着するため、当接面がそのほぼ全域で中底に粘着する結果、中底との間の粘着力が増大する。これと同時に、荷重時には、各窪み部と中底との間の前記空間が狭くなって、窪み部内に存在する空気が外部に放出されて窪み部内部が減圧状態となる結果、吸盤作用により靴中敷が中底に吸着される。これにより、靴中敷は中底と強固に粘着し、履き物に対して固定されるので、靴中敷の履き物内での位置ずれを防止することができる。
【0010】
また、使用者が履き物の使用を終えることで靴中敷に足裏の荷重がかからなくなると、各窪み部には、元の形状に戻ろうとする弾性復元力が作用する。ここで、靴中敷を周縁部から捲るように剥がすと、窪み部内部に空気が入り込み、窪み部内部の減圧状態が開放される結果、上記した吸盤作用による吸着力が低下するため、前記窪み部は弾性復元力により元の形状に戻るようになって、中底との接触面積が減少する。そのため、前記窪み部においては、靴中敷と中底との粘着力が低下するので、靴中敷を小さい力で中底から剥がすことができるようになる。すなわち、靴中敷を中底から剥がす際に、中底を引っ張る力が小さくなるので、中底が履き物から剥がれるという不具合が生じなくなる。
【0011】
このように、上記した構成の靴中敷によると、使用時には、履き物の中底と強固に粘着するために履き物内での位置ずれを防止可能である一方、使用後に靴中敷を取り外す際には、靴中敷と中底との間の粘着力が低下して、中底から無理なく剥がすことができる。すなわち、中底が引っ張られて履き物から剥れるおそれがない。
【0012】
本発明の好ましい実施態様においては、前記当接面の前記窪み部以外の領域には、前記窪み部よりも微細な凹凸が形成されていることを特徴としている。
【0013】
本実施態様によると、前記当接面の各窪み部以外の領域(以下、「当接部」という。)では、微細な凹凸が形成されているために、荷重時には、この微細な凹凸の凹部が押しつぶされるように圧縮変形して、前記凹部の内面が中底に接して粘着する結果、当接部が平坦となっている場合と同程度の、中底との接触面積を担保できる。さらに、前記凹部内部が減圧状態となることで、吸盤作用による吸着力が前記凹部に生じるため、前記窪み部の吸盤作用による吸着力と相俟って、当接部が平坦となっている場合と比べて、靴中敷全体としてより強固な粘着性を発揮する。
【0014】
一方、非荷重時には、押しつぶされた前記凹部が微細であり、前記凹部に作用する弾性復元力が小さくて吸盤作用が発揮されつづけるために、元の形状に戻り難く、靴中敷と中底との接触面積が大きくなったまま維持される(すなわち、靴中敷と中底の強固な粘着が維持される)。しかし、靴中敷を周縁部から捲るように剥すと、前記凹部と捲られて中底と接触していない部分との境界部分から、前記凹部の内部へと空気が入り込み、前記凹部の減圧状態が開放される結果、前記凹部は弾性復元力により元の形状に戻ろうとして、中底との接触面積が減少する。そのため、この凹部周辺においては、当接部と中底との粘着力が低下するので、当接部が平坦で、粘着力が一様となっている場合と比べると、靴中敷を中底からより小さい力で剥がすことが可能となる。
【0015】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記窪み部の内面には、複数の微細な凹凸が形成されていることを特徴としている。
【0016】
本実施態様によると、荷重時には、各窪み部は押しつぶされて、その内面が中底と接触するが、各窪み部の内面に微細な凹凸が形成されているので、この微細な凹凸の凹部が押しつぶされるように圧縮変形して、前記凹部の内面が中底に接着して粘着する結果、各窪み部の内面が平坦となっている場合と同程度の、中底との接触面積を担保できる。さらに、前記凹部内部が減圧状態となることで、吸盤作用による吸着力が前記凹部に生じるため、各窪み部の内面が平坦となっている場合と比べてより強固な粘着性を発揮する。
【0017】
一方、非荷重時には、押しつぶされた前記凹部が微細であることから、前記凹部に作用する弾性復元力が小さく吸盤作用が発揮されつづけるために、元の形状に戻り難く、窪み部は中底との接触面積が大きくなったまま維持される(すなわち、窪み部と中底の強固な粘着が維持される)。しかし、靴中敷を周縁部から捲るように剥して窪み部内部へと空気が入り込むと、前記凹部と、捲られて中底と接触していない部分との境界部分から、前記凹部の内部にも空気が入り込み、前記凹部の減圧状態が開放される。この時、前記凹部が存在する窪み部の吸盤作用も低下し、窪み部が元の状態に戻ることから、中底との接触面積を減少させることができる。ここで、前記窪み部には弾性復元力が作用していることから、前記窪み部における微細な凹凸の吸盤作用は、前記窪み部以外の領域における微細な凹凸のそれに比べると強くなく、前記窪み部における前記凹部の減圧状態は容易に開放することができる。このように、この凹部周辺においては、窪み部の内面と中底との接着力が低下するので、各窪み部の内面が平坦で、粘着力が一様となっている場合と比べると、各窪み部の内面が中底から剥がれやすくなる。すなわち、このような構成によれば、各窪み部の内面が平坦で、粘着力が一様となっている場合と比べると、荷重時は各窪み部において強固な粘着性を発揮し、一方、非荷重時、減圧状態を開放することで、その粘着性を容易に低下させることが可能であり、靴中敷を中底からより小さい力で剥がすことが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の靴中敷によると、履き物の使用により、靴中敷に荷重がかかる場合には、各窪み部が圧縮変形して、その内面が履き物の中底に接触することにより、中底と強固に粘着するので、靴中敷の履き物内での位置ずれが防止可能となる。一方、靴中敷に荷重がかからなくなると、各窪み部が弾性復元力により元の状態に戻ろうとするため、中底を周縁部から捲って剥がす際に、各窪み部では中底との間の粘着力が低下して、中底から無理なく剥がすことができるので、この際に中底が引っ張られて履き物から剥れるおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例である靴中敷の背面図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】荷重時の靴中敷の状態を示す要部断面図である。
【図4】靴中敷を履き物の中底に装着した例を示す平面図である。
【図5】中底を靴中敷から剥がしている途中の状態を示す要部断面図である。
【図6】本発明の他の実施例である靴中敷の背面図である。
【図7】図5の要部断面図である。
【図8】本発明の他の実施例である靴中敷の背面図である。
【図9】図7の要部断面図である。
【図10】窪み部の写真である。スケールバーは、5mmを示す。
【図11】微細な凹凸の写真である。スケールバーは、1mmを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1および図2は、本発明の一実施例である靴中敷1の構成を示している。本実施例の靴中敷1は、図4に示すように、例えば人の足裏の踵部や土踏まず部などに接するように、履き物10の中底11上に装着して使用されることにより、歩行時に足裏に加わる衝撃を低減したり、足裏をマッサージしたりすることができる。
【0021】
履き物10としては、靴、サンダル、ミュール、パンプス、ハイヒールなど、種々の履き物に対して使用することができるが、合成皮帯や合成樹脂性シートなど、中底11が履き物10に対して貼り替え可能となっている履き物10について使用するのが特に有効である。
【0022】
この靴中敷1は、図1および図2に示すように、外形が長円状をなし、所定の厚みを有するシート状のものであって、粘着性を有する柔軟な弾性体により形成されている。ここで、「粘着性」とは、接着剤や粘着材などを用いなくても被貼着部(本実施例では、履き物10の中底11)に貼着できる性質をいう。これにより、靴中敷1は、その下面、すなわち、履き物10の中底11と当接する側の面(以下、「当接面」という。)2を、中底11上に載置するだけで、その粘着性により履き物10に対して着脱可能になっている。本実施例において、弾性体の粘着性は特に限定されないが、KES−G5ハンディー圧縮試験機(カトーテック株式会社製)を用いて、シート状の弾性体を2cm2の円形加圧板(500gf)で圧縮した後に、この加圧板を引き上げる際にかかる力(粘着力)が、−60〜−5gf・cm/cm2とすることが好ましく、−40〜−10gf・cm/cm2とすることがより好ましい。この範囲とすることで、靴中敷1を中底11にしっかりと固定することができる。なお、上記した粘着性は、加えて、貼着と剥離とを繰り返しても粘着性が喪失しにくい耐久性を有していることが好ましい。
【0023】
前記弾性体としては、本実施例では、適度な粘着性を有するとともに、水洗粘着復帰性(塵埃などの付着により粘着力が低下した場合に、水洗いすることで粘着性が復帰する性質)を有する熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。これにより、靴中敷1を長時間連続して使用することにより、靴中敷1が汚れてその粘着性が低下した場合においても、水洗いして汚れを落とすことで再利用が可能となる。
【0024】
上記した熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系エラストマー、アクリル系エラストマー、ウレタン系エラストマーなどを例示することができる。また、前記弾性体として、熱可塑性エラストマーの他にも、ゴムなどの弾力性、粘着性を有する素材を用いることも可能である。
【0025】
また、靴中敷1の厚みは、靴中敷1の履き物10に対する装着位置(靴中敷1を当てる足裏の箇所)に応じて適宜調整可能であるが、例えば、足裏の踵部に接するように装着する場合には、1〜10mmの範囲から選択することが好ましく、1〜5mmの範囲から選択することがより好ましく、1.5〜3mmの範囲から選択することがさらに好ましく、1.5〜2mmの範囲から選択することがとくに好ましい。このような範囲とすることで、歩行によって足裏に加わる衝撃を吸収しつつ、履き物10を履いた際に、異物感や違和感を覚えることがなく良好な履き心地を維持できる。
【0026】
本実施例の靴中敷1は、弾性体として熱可塑性エラストマーを金型(図示せず)に射出成形することにより成型されており、その下面の当接面2には、水平かつ平坦な当接部20と、所定の大きさを有する複数の窪み部21とが形成されている。
【0027】
前記当接部20は、靴中敷1に足裏からの荷重がかかっていない非荷重時において、履き物10の中底11と接触している。一方、各窪み部21は、断面形状が弓形状に形成されており、その開口周縁において前記当接部20と連続している。この各窪み部21は、非荷重時には、履き物10の中底11との間に空間Sが形成されて、その内面22が中底11とは非接触の状態となっている。このように、非荷重時においては、前記当接面2では、当接部20でのみ中底11と接触し、例えば当接面2を平坦形状とした場合と比べると、中底11と粘着する領域の面積が減少しているため、靴中敷1が中底11と過度に粘着しないようになっている。
【0028】
図3に示すように、靴中敷1に足裏12の踏みつけによって上方から荷重がかかると(以下、「荷重時」という。)、靴中敷1の当接面2では、各窪み部21が圧縮変形して、その径が拡張する向きに押しつぶされることにより、次第にその内面22が中底11と接触するようになる。これにより、当接面2は、当接部20だけでなく各窪み部21も中底11と接触して、そのほぼ全域で中底11に粘着する結果、靴中敷1と中底11との間の粘着力が増大する。これと同時に、荷重時には、各窪み部21と中底11との間の空間Sが狭くなって、各窪み部21内に存在する空気が外部に放出されて各窪み部21内部は減圧状態となることから、この減圧による吸着力が靴中敷1に対して作用(吸盤作用)するため、靴中敷1は中底11に吸着される。その結果、靴中敷1は中底11と強固に粘着して、履き物10に対して固定されるので、使用時においてその位置ずれが防止される。
【0029】
この状態から、靴中敷1に足裏からの荷重がかからなくなると、各窪み部21には、元の形状に戻ろうとする弾性復元力が作用する。ここで、靴中敷1を周縁部23から捲るように剥がせば、図5に示すように、窪み部21と当接部20との境界部分Zから窪み部21内部に空気が入り込み、窪み部21の内部の減圧状態が開放される結果、上記した吸盤作用による吸着力が低下するため、窪み部21は弾性復元力により元の形状に容易に戻るようになる。そのため、窪み部21においては、中底11との接触面積が減少して、中底11との粘着力が低下するので、靴中敷1を小さい力で中底11から剥がすことができるようになる。すなわち、靴中敷1を中底11から剥がす際に、中底11を引っ張る力が小さくなるので、中底11が履き物10から剥がれるという不具合が生じなくなる。
【0030】
ここで、窪み部21の大きさは、特に制限されないが、荷重時に、その内面22が中底11に広く接触して粘着するとともに、荷重が取り除かれた非荷重時、減圧状態が開放されると、その弾性復元力によって中底11との間の粘着力に抗して内面22が中底11から剥離して、窪み部21が元の状態に復帰できる程度の大きさに形成されているのが望ましい。
【0031】
ここで、窪み部21の大きさ(面積)は、非常に小さく微細なものであると、減圧状態が開放された場合でも、その粘着力の低下する面積が限られるため、中底11を引っ張る力を効果的に低下させることができない。よって、本実施例の靴中敷1では、窪み部21は、図10に示すように、目視で確認できないような微細なものではなく、適度な大きさ(面積)に形成しており、その径rを1〜5mmの範囲から選択することが好ましく、本実施例では、約2.5mmに設定している。
【0032】
また、窪み部21の深さdは、特に制限されないが、窪み部21が深すぎると、荷重時に窪み部21の内面22が中底11と接触する面積が小さくなって、十分な粘着効果が得られなくなる。そのため、窪み部21の深さdは、前記窪み部21の径rに対して、荷重時に、各窪み部21が押しつぶされてその内面22が中底11に十分接触する程度の深さに形成されているのが望ましい。また、靴中敷1の硬度などに応じて適宜調整され得るが、窪み部21が深すぎると、窪み部21と上面10との間の厚みが小さくなり、窪み部21の弾性復元力が十分に得られなくなる。そのため、窪み部21の深さdは、、例えば、後述するように靴中敷1の硬度が5〜40度である場合、靴中敷1の厚みに対して1/2以下となるように形成されるのが望ましく、1/3以下となるように形成されているのがより望ましい。窪み部21の具体的な深さdとしては、例えば、0.2〜1.5mmの範囲から選択され、本実施例では約0.5mmに設定されている。
【0033】
各窪み部21は、本実施例では断面弓形状に形成されているが、必ずしもこれに限られるものではなく、断面視において、頂部が平坦なバスタブ形状や半球状など、種々の形状に形成することができる。また、各窪み部21は、当接面2の長手方向もしくは幅方向に沿って複数列に、一方の側縁から他方の側縁に向かって当接面2を横断するようにして延びる溝状のものであっても構わない。
【0034】
靴中敷1の硬度は、特に制限されないが、5〜40度の範囲から選択することが好ましい。この範囲内であると、荷重によって圧縮変形された窪み部21を弾性復元力によってもとの形状に戻り易くすることができる。この硬度は、SRIS0101に準じて、アスカー硬度計C型(高分子計器株式会社製)により測定される。
【0035】
なお、当接面2の周縁部23は、履き物10の中底11と当接するように平坦面に形成して、この周縁部23には前記窪み部21を形成しないようにするのが好ましい。具体的には、周縁部23から窪み部21までの距離は窪み部21の径r以上であることが好ましく、径2r以上であることがより好ましい。これにより、当接面2の周縁部22は中底11に粘着し、この周縁部23から靴中敷1が捲れて剥離するのを防止することができるため、荷重時の窪み部21の減圧状態を担保しやすい一方で、窪み部23周辺の弾性力を確保できることから、窪み部23の減圧状態の開放および弾性回復を首尾よく行うことができる。本実施例では、当接面2の外周縁から約5mm〜8mmの幅を有する領域を前記周縁部23としている。
【0036】
靴中敷1の上面3、すなわち、足裏と接する側の面は、図示例では、下面の当接面2と水平でかつ平坦な平坦面に形成されている。これにより、荷重時には、靴中敷1に足裏からの荷重が均一にかかって、各窪み部21が均等に押しつぶされることで、その内面22が中底11に接触して粘着するようになっている。しかし、この上面10の形状は、これに限らず、種々の形状にして従来公知の靴中敷と同様の効果を奏するようにしてもよく、例えば、上面10に多数の突起(図示せず)を設けることで、各突起によって足裏を適度に押圧刺激する足裏マッサージ効果を得られるようにしてもよい。
【0037】
また、上面3を、足裏の土踏まず部の凹みの形状に沿った緩やかなアーチ形状とすることで、歩行時に足裏の土踏まず部のアーチ形状を維持して、足裏全体のバランスを整えることができるようにしてもよい。
【0038】
さらに、上面3にも、下面の当接面2と同様に、適度な大きさの窪み部21を複数形成することで、足裏と靴中敷1とを強固に粘着し、靴中敷1を介して足裏を履き物10に対して固定して、足が履き物10の前方に向かって滑って移動するのを防止するようにしてもよい。これは、特にミュール、パンプス、ハイヒール、サンダルなど、踵が高かったり、裸足で履くことが覆い履き物10に対して使用した場合に顕著な効果が得られる。
【0039】
上記した構成の靴中敷1を履き物10の中底11上に装着すると、靴中敷1の中底11に装着される側の当接面2では、当接部20が中底11に接触して粘着する一方、各窪み部21は中底11との間に空間Sが形成されて中底11とは非接触の状態となっている。
【0040】
この状態から、使用者が履き物10を使用することで、靴中敷1に足裏の踏みつけによる荷重がかかると、靴中敷1の当接面2では、図3に示すように、各窪み部21は押しつぶされるようにして圧縮変形し、それによって、その内面22が中底11に接触して粘着する。これにより、当接面2は、そのほぼ全域で中底11に粘着する結果、靴中敷1と中底11との間の粘着力が増大する。これと同時に、荷重時には、各窪み部21と中底11との間の空間Sが狭くなり、各窪み部21内に存在する空気が外部に放出されて各窪み部21内部は減圧状態となる結果、吸盤作用により靴中敷1が中底11に吸着される。これにより、靴中敷1は中底11と強固に粘着して、履き物10に対して固定されるので、靴中敷1の履き物10内での位置ずれを確実に防止することができる。
【0041】
また、履き物10の使用が終わることで、靴中敷1に足裏の荷重がかからなくなると、各窪み部21は、弾性復元力により元の形状に戻ろうとする。ここで、靴中敷1を周縁部23から捲るように剥がせば、図5に示すように、窪み部21と当接部20との境界部分Zから窪み部21内部に空気が入り込み、窪み部21の内部の減圧状態が開放される結果、上記した吸盤作用による吸着力が低下するため、窪み部21は弾性復元力により元の形状に容易に戻るようになる。そのため、窪み部21においては、中底11との接触面積が減少して、中底11との粘着力が低下する。これにより、靴中敷1を小さい力で中底11から剥がすことが可能となる結果、靴中敷1を中底11から剥がす際に、中底11を引っ張る力が小さくなるので、中底11が履き物10から剥がれるという不具合が生じなくなる。
【0042】
図6は、本発明の他の実施例である靴中敷1の構成を示している。また、図7は、この靴中敷1の断面図を示している。なお、この実施例の靴中敷1の基本的な構成は、図1に示した実施例の構成と同様であり、ここでは対応する構成に同一の符号を付している。
【0043】
図6および図7に示す靴中敷1では、前記当接面2の各窪み部21を除く当接部20の表面に、図11に示すような、径および深さが前記窪み部21の径rおよび深さdよりも小さい微細な凹凸24が形成されている。
【0044】
この微細な凹凸24の形成方法としては、例えば当接部20にあたる面がブラスト加工(極小の傷をつける加工)された金型を使用する方法や、特開平4−75602号公報などに開示されているような方法で凹凸を形成する方法などがあげられる。なかでも、本実施例のようにブラスト加工された金型を使用して形成することが簡便であり、かつ、後述するように、凹凸24の凹部が網目状に張り巡らされるようになることから、優れた吸着力を発揮するとともに、靴中敷1を中底11から剥がしやすくなるため好ましい。
【0045】
この実施例によると、前記当接面2の当接部20の表面に微細な凹凸24が形成されているために、荷重時には、この微細な凹凸24の凹部(図示せず)が押しつぶされるように圧縮変形して、前記凹部の内面が中底11に接着して粘着する結果、当接部20の表面が平坦となっている場合と同程度の、中底11との接触面積を担保できる。さらに、前記凹部内部が減圧状態となることで、吸盤作用による吸着力が前記凹部に生じ、窪み部21の吸盤作用による吸着力と相俟って、当接部20の表面が平坦となっている場合と比べて、靴中敷全体としてより強固な粘着性を発揮する。
【0046】
一方、非荷重時には、押しつぶされた前記凹部が微細であり、前記凹部に作用する弾性復元力が小さくて吸盤作用が発揮されつづけるために、元の形状に戻り難く、靴中敷1と中底11との接触面積が大きくなったまま維持される(すなわち、靴中敷1と中底11の強固な粘着が維持される)。しかし、前記凹凸24は、図11に示されるように、前記凹部が網目状に張り巡らされるようになっているため、靴中敷1を周縁部23から捲るように剥すと、前記凹部と捲られて中底11と接触していない部分との境界部分(図示せず)から、前記凹部の内部へと空気が入り込み、前記凹部の減圧状態が開放される結果、前記凹部は弾性復元力により元の形状に戻ろうとして、中底との接触面積が減少する。そのため、この凹部においては、中底との粘着力が低下するので、当接部20が平坦で、粘着力が一様となっている場合と比べると、靴中敷1を中底11からより小さい力で剥がすことが可能となる。
【0047】
前記凹凸24の前記凹部の面積は、平面視で20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましく、40〜70%の範囲であることがとくに好ましい。この範囲内であれば、圧縮変形された前記凹部の減圧状態を担保しやすい一方で、前記凹部周辺の弾性力を確保できることから前記凹部の減圧状態の開放および弾性回復を首尾よく行うことができる。
【0048】
図8は、本発明の他の実施例である靴中敷1の構成を示している。また、図9は、この靴中敷1の断面図を示している。なお、この実施例の靴中敷1の基本的な構成も、図1に示した実施例の構成と同様であり、ここでは対応する構成に同一の符号を付している。
【0049】
図8および図9に示す靴中敷1では、前記当接面2の当接部20の表面に、上記した微細な凹凸24が形成されているとともに(図10参照)、各窪み部21の内面22にも、径および深さが前記窪み部21の径rおよび深さdよりも小さい微細な凹凸25が形成されている。なお、この微細な凹凸25の形成方法は、上記した微細な凹凸24と同様である。
【0050】
この実施例によると、荷重時には、各窪み部21は押しつぶされて、その内面22が中底11と接触するが、各窪み部21の内面22に微細な凹凸25が形成されているので、この微細な凹凸25の凹部(図示せず)が押しつぶされるように圧縮変形して、前記凹部の内面が中底11に接着して粘着する結果、各窪み部21の内面22が平坦となっている場合と同程度の、中底11との接触面積を担保できる。さらに、前記凹部の内部が減圧状態となることで、吸盤作用による吸着力が前記凹部に生じるため、各窪み部21の内面22が平坦となっている場合と比べてより強固な粘着性を発揮する。
【0051】
一方、非荷重時には、押しつぶされた前記凹部が微細であることから、前記凹部に作用する弾性復元力が小さく吸盤作用が発揮されつづけるために、元の形状に戻り難く、窪み部21は中底11との接触面積が大きくなったまま維持される(すなわち、窪み部21と中底11の強固な粘着が維持される)。しかし、靴中敷1を周縁部23から捲るように剥して、窪み部21内部に空気が入り込むと、前記凹凸25は、前記凹部が網目状に張り巡らされるようになっているため(図示せず)、前記凹部と、捲られて中底11と接触していない部分との境界部分(図示せず)から、前記凹部の内部へと空気が入り込み、前記凹部の減圧状態が開放される。
【0052】
この時、前記凹部が存在する窪み部21の吸盤作用も低下し、窪み部21が元の状態に戻ることから、中底11との接触面積を減少させることができる。ここで、窪み部21には弾性復元力が作用していることから、窪み部21における微細な凹凸25の吸盤作用は、前記窪み部21以外の領域における微細な凹凸24のそれに比べると強くなく、窪み部21における前記凹部の減圧状態は容易に開放することができる。このように、この凹部周辺においては、窪み部21の内面22と中底11との粘着力が低下するので、窪み部21の内面22が平坦で、粘着力が一様となっている場合と比べると、各窪み部21の内面22が中底11から剥がれやすくなる。すなわち、このような構成によれば、各窪み部21の内面22が平坦で、粘着力が一様となっている場合と比べると、荷重時は各窪み部21において強固な粘着性を発揮する一方、非荷重時、減圧状態を開放することで、その粘着性を容易に低下させることが可能であり、靴中敷1を中底11からより小さい力で剥がすことが可能となる。
【符号の説明】
【0053】
1 靴中敷
2 当接面
10 履き物
11 中底
21 窪み部
22 窪み部の内面
24,25 微細な凹凸
Z 境界部分
【特許請求の範囲】
【請求項1】
履き物の中底上の所定箇所に装着して使用される靴中敷であって、
粘着性を有するシート状の弾性体からなり、前記弾性体の、履き物の中底と当接する側の当接面には、所定の大きさの複数の窪み部が形成されていることを特徴とする靴中敷。
【請求項2】
前記当接面の前記窪み部以外の領域には、前記窪み部よりも微細な凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の靴中敷。
【請求項3】
前記窪み部の内面には、複数の微細な凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の靴中敷。
【請求項1】
履き物の中底上の所定箇所に装着して使用される靴中敷であって、
粘着性を有するシート状の弾性体からなり、前記弾性体の、履き物の中底と当接する側の当接面には、所定の大きさの複数の窪み部が形成されていることを特徴とする靴中敷。
【請求項2】
前記当接面の前記窪み部以外の領域には、前記窪み部よりも微細な凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の靴中敷。
【請求項3】
前記窪み部の内面には、複数の微細な凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の靴中敷。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−279447(P2010−279447A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133561(P2009−133561)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】
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