説明

【課題】 足をしっかりと保持できるとともに、着脱が容易な靴を提供する。
【解決手段】 靴10は、足の裏を載置する靴底11と、踵のほぼ全体を露出する形状を有し、靴底11上に位置するアッパー部12と、靴底11の後端部に突出して設けられ、踵を位置決めする踵位置決め部15と、踵位置決め部15の後部に接続され、足を靴底に載置した後に、足首を後から取り囲んで保持する足首保持部材20とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は靴に関し、特に、履きやすい靴に関する。
【背景技術】
【0002】
履きやすさを考慮した靴が、たとえば特開平11−113609号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された靴においては、靴のヒール部分に、外側後端部と、内側後端部によって覆われる踵覆い部を設け、外側後端部には留め具と、その留め具掛けを有したバンドを設け、これが内側後端部に設けたバンド通しを通って、折り返されることで、ちょうど留め具で固定できる位置に来るようになっている。
【特許文献1】特開平11−113609号公報(段落番号0004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の、履きやすさを考慮した靴は、上記のように構成されていた。靴の脱ぎ履きの際に、ベルトを緩めたり、締めたりすることで、靴の着脱を容易にしていた。
【0005】
しかしながら、このような構成では、靴の脱ぎ履きの際に、ベルトを緩めたり、締めたりする必要があり、靴の着脱が容易であるとはいえなかった。
【0006】
この発明は、足をしっかりと保持できるとともに、着脱が容易な靴を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかる靴は、足の裏を載置する靴底と、踵のほぼ全体を露出する形状を有し、靴底上に位置するアッパー部と、靴底の後端部に突出して設けられ、踵を位置決めする踵位置決め部と、踵位置決め部の後部に接続され、足を靴底に載置した後に、足首を後から取り囲んで保持する足首保持部材とを含む。
【0008】
踵位置決め部で踵を位置決めした状態で靴底に足を載置し、その後、足首保持部材で足首を後から取り囲んで保持できるため、踵をしっかり保持した後で足首を保持できる。その結果、足をしっかり保持できるとともに、着脱の容易な靴を提供できる。
【0009】
好ましくは、足首保持部材は、踵位置決め部の後部において、足の幅方向に左右に張り出して延びる第1部分および第2部分を含み、第1部分および第2部分の先端部を相互に重ねて接続する。
【0010】
さらに好ましくは、第1部分および第2部分は、踝を覆う高さを有している。こうすれば、靴と足とは、より一体化される。
【0011】
なお、足首保持部材は、靴を履く前は、前記靴底と同じ平面上に延在するのが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、この発明の一実施形態にかかる靴(右足用)を、乳幼児用靴に利用した場合の、幼児が足を入れる前の状態を示す斜視図である。なお、左足用も同様の構成である。
【0013】
図1参照して、乳幼児用靴10は、幼児が足を載置する靴底11と、靴底11に連続して靴底上に位置し、幼児の足の甲の部分等を覆うとともに、踵のほぼ全体を露出する形状を有する、アッパー部12と、アッパー部12の上部に設けられ、幼児の足の甲の上部を覆う上皮部13と、靴底11の後端部に、靴底11から突出して設けられた踵位置決め部15と、踵位置決め部15の後部に接続され、足の幅方向に左右に張り出して延びる、足首保持部材20とを含む。
【0014】
踵位置決め部15が設けられるため、幼児が靴を履くときに、足を靴底11の上に載置したときに、踵の位置決めが容易にできるようになっている。なお、図1においては、踵位置決め部15に連続して、足の後部全体を保持する立上がり部14が設けられている。
【0015】
足首保持部材20は、靴底11に対して外方向に延びる外方向保持部材21と、靴底11に対して内方向に延びる内方向保持部材22とを含む。外方向保持部材21の端部には、一方側の平面ファスナ23が設けられ、内方向保持部材22の裏面側の端部には、一方側の平面ファスナ23に接続する他方側の平面ファスナ24が設けられている。
【0016】
図1に示すように、幼児が靴を履くために足を載置する前は、足首保持部材20は、靴底11と同じレベルに存在し、靴10の後端部は大きく開いている。この状態で幼児は、踵位置決め部15に踵を合わせて足を靴底11の上に置く。靴10の後端部が大きく開いた状態で、かつ、踵をしっかり位置決めした状態で、足を靴底11の上に置くことができるため、幼児は、靴底11に容易に足を載置することができる。
【0017】
図2は、幼児が足を靴底に置いた後で、足首保持部材20を用いて、幼児の足首の周囲を、後から取り囲んで覆った状態を示す図である。幼児が足を靴底11の上に置いた後、図2における2点鎖線で示すように、足首保持部材20を幼児の足の後部に沿って垂直方向に立上げ、踵の両側から外方向保持部材21と、内方向保持部材22とで幼児の足首を覆う。このとき、外方向保持部材21と、内方向保持部材22とのそれぞれの先端部に設けられた一対の平面ファスナ23、24を重ねることによって、両保持部材21,22を接続して一体化する。
【0018】
なお、足首保持部材21,22は、足の踝を覆う高さを有してもよい。そうすれば、より靴と足とが一体化される。
【0019】
図3は、上記のようにして組み立てられた幼児用靴10の一部断面図である。図3に示すように、靴底11と、アッパー部12と、踵位置決め部15を含む立上がり部14とで囲まれた空間に幼児の足の下部が保持され、足首部を含む足の上部が足首保持部材20で保持される。
【0020】
なお、図3に示した実施の形態では、靴底11の上に厚い上部靴底16が設けられている。このように、厚い上部靴底16を靴底11の上に設けることにより、靴10の底の強度を上げることができる。その結果、靴底11のみを設けた靴10は室内用として用い、上部靴底16を設けた場合は屋外用として用いるようにしてもよい。
【0021】
また、靴底11の上に上部靴底16を設けるのではなく、靴底11の厚さや材質を変えることにより強度を変えるようにしてもよい。
【0022】
一方、幼児が靴10を脱ぐときは、上記の反対の動作を行なう。すなわち、相互に重ねられた一対の平面ファスナ23、24を外し、靴底11と同じレベルに足首保持部材20を広げる。すると、靴の踵部分が大きく開き、幼児の踵部分が解放されるため、幼児は容易に靴から足を出す、すなわち、靴を脱ぐことができる。
【0023】
その結果、幼児にとって着脱の容易な靴が提供できる。
【0024】
上記実施の形態においては、足首保持部材20を構成する、一対の外方向保持部材21と内方向保持部材22との両端部のみを平面ファスナ23、24で接続しているが、幼児の足の甲の上部を覆う上皮部13も含めて、一緒に平面ファスナで接続してもよい。
【0025】
なお、上記実施の形態においては、この発明を幼児用の靴に利用した場合を例にあげて説明したが、これに限らず、大人用や老人用の靴にも同様に適用が可能である。
【0026】
また、上記実施の形態においては、靴底の後端部の両側に延びる、外方向保持部材と内方向保持部材とで足首保持部材が構成される場合について説明したが、これに限らず、靴底の後端部から一方方向のみに延びる足首保持部材としてもよい。
【0027】
上記実施の形態においては、靴底の後部全体にわたって、立上がり部を設けたが、これに限らず、踵の下部に相当する位置に踵位置決め部のみを設けてもよい。
【0028】
図面を参照してこの発明の一実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態に限定されるものではない。本発明と同一の範囲内において、または均等の範囲内において、図示した実施形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
この発明にかかる、靴は、踵を位置決めした状態で足を靴底に載置した後で、足首保持部材で足首を後方向から保持できるため、靴の着脱が容易な靴として有利に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の一実施の形態にかかる靴において、足首保持部材を展開した状態を示す斜視図である。
【図2】足首保持部材を組み立てた状態を示す靴の外観図である。
【図3】足首保持部材を組み立てた状態を示す靴の一部断面図である。
【符号の説明】
【0031】
10 幼児用靴、11 靴底、12 アッパー部、13 上皮部、14 立上がり部、15 踵位置決め部、16 上部靴底、20 足首保持部材、21 外方向保持部材、22 内方向保持部材、23、24 平面ファスナ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
足の裏を載置する靴底と、
踵のほぼ全体を露出する形状を有し、前記靴底上に位置するアッパー部と、
前記靴底の後端部に突出して設けられ、踵を位置決めする踵位置決め部と、
前記踵位置決め部の後部に接続され、足を前記靴底に載置した後に、足首を後から取り囲んで保持する足首保持部材とを含む、靴。
【請求項2】
前記足首保持部材は、前記踵位置決め部の後部において、足の幅方向に左右に張り出して延びる第1部分および第2部分を含み、前記第1部分および第2部分の先端部を相互に重ねて接続する、請求項1に記載の靴。
【請求項3】
前記第1部分および第2部分は、踝を覆う高さを有している、請求項1または2に記載の靴。
【請求項4】
前記足首保持部材は、靴を履く前は、前記靴底と同じ平面上に延在する、請求項1から3のいずれかに記載の靴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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