説明

駆動装置、レンズ鏡筒及びカメラ

【課題】小さな駆動力を適切に出力すると共に、そのときの消費電力を抑制する。
【解決手段】駆動装置は、圧電素子を用いて構成されたアクチュエータ本体4を有し、アクチュエータ本体4の振動によって駆動力を出力する超音波アクチュエータ2と、圧電素子に複数の交流電圧を印加してアクチュエータ本体4に振動を発生させる制御部7とを備えている。制御部7は、第1及び第2交流電圧の位相差を調節することで駆動力を制御する位相制御と、各交流電圧において所定のバースト周期中に含まれる波数を調節することで駆動力を制御する波数制御とを組み合わせて行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動型アクチュエータを備えた駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、振動型アクチュエータを備えた駆動装置が知られている。例えば、特許文献1に係る駆動装置の振動型アクチュエータは、圧電素子を用いて構成され、圧電素子に2つの交流電圧を印加することによって、圧電素子に振動を誘起させ、駆動力を出力している。
【0003】
この駆動装置においては、振動型アクチュエータの駆動力を制御するために、2つの交流電圧の周波数を変更する周波数制御と、2つの交流電圧の電圧値を変更する電圧制御とを組み合わせて行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−191669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前述の如く、周波数制御や電圧制御による駆動力の制御においては、必要な駆動力が小さい領域で不感帯が大きくなる。つまり、圧電素子の振動を小さくすべく、2つの交流電圧の周波数を圧電素子の共振周波数から大きくずらしたり、2つの交流電圧の電圧値を小さくし過ぎると、圧電素子が十分に振動しなくなり、小さな駆動力を適切に出力することができない。
【0006】
それに対して、2つの交流電圧の位相差を変化させることで駆動力を制御する位相制御は、交流電圧の周波数が圧電素子の共振周波数から大きくはずれることもなく、電圧値も十分に確保されるため、駆動力の小さな領域における不感帯が小さく、小さな駆動力を適切に出力することができる。
【0007】
しかしながら、位相制御においては、小さな駆動力しか出力しないときであっても、交流電圧の電圧値は、大きな駆動力を出力するときと変わらないため、駆動力の割りに消費電力が大きいという問題がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、小さな駆動力を適切に出力すると共に、そのときの消費電力を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る駆動装置は、圧電素子を用いて構成されたアクチュエータ本体を有し、該アクチュエータ本体の振動によって駆動力を出力する振動型アクチュエータと、前記圧電素子に複数のパルス信号を印加して前記アクチュエータ本体に振動を発生させる制御部とを備え、前記制御部は、前記複数のパルス信号の位相差を調節することで駆動力を制御する位相制御と、前記各交流電圧において所定のバースト周期中に含まれるパルス数を調節することで駆動力を制御する波数制御とを組み合わせて行うようにしたものである。
【0010】
あるいは、本発明に係る駆動装置は、圧電素子を用いて構成されたアクチュエータ本体を有し、該アクチュエータ本体の振動によって駆動力を出力する振動型アクチュエータと、前記圧電素子に単相のパルス信号を印加して前記アクチュエータ本体に振動を発生させる制御部とを備え、前記制御部は、前記単相のパルス信号のデューティ比を調整することで駆動力を制御するデューティ制御と、前記各交流電圧において所定のバースト周期中に含まれるパルス数を調節することで駆動力を制御する波数制御とを組み合わせて行うようにしたものである。
【0011】
また、本発明に係るレンズ鏡筒は、レンズと、該レンズを駆動する前記駆動装置とを備えたものとする。
【0012】
さらに、本発明に係るカメラは、レンズと、該レンズを駆動する前記駆動装置とを備えたものとする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、必要な駆動力が小さな場合であっても、位相制御又はデューティ制御により所望の駆動力を適切に出力することができると共に、波数制御により消費電力を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る駆動装置を搭載したカメラの構成を示すブロック図である。
【図2】フォーカスレンズ駆動部の概略構成を示す正面図である。
【図3】超音波アクチュエータのアクチュエータ本体の分解斜視図である。
【図4】アクチュエータ本体の概略的な平面図である。
【図5】アクチュエータ本体の1次モードの伸縮振動による変形を示す正面図である。
【図6】アクチュエータ本体の2次モードの屈曲振動による変形を示す正面図である。
【図7】アクチュエータ本体の合成振動による変形を示す正面図である。
【図8】パルス数が最大のときの駆動電圧の波形図である。
【図9】パルス数をパルス5個につき3つ減らしたときの駆動電圧の波形図である。
【図10】駆動電圧のバースト率と消費電力との関係を表すグラフである。
【図11】駆動電圧のバースト率と駆動力との関係を表すグラフである。
【図12】バースト周期を変更した場合の駆動電圧の波形図である。
【図13】休止期間に狭小パルスを出力する場合の駆動電圧の波形図である。
【図14】休止期間の終盤にだけ狭小パルスを出力する場合の駆動電圧の波形図である。
【図15】波数制御のフローチャートである。
【図16】位相制御部及び可変遅延回路のブロック図である。
【図17】始動制御における駆動電圧の波形図である。
【図18】実施形態1の変形例1に係るカメラの構成を示すブロック図である。
【図19】実施形態1の変形例2に係るカメラの構成を示すブロック図である。
【図20】実施形態1の変形例3に係る波数制御のフローチャートである。
【図21】実施形態2に係る駆動装置における、監視パラメータとパルス数との関係を規定するマップである。
【図22】実施形態2の変形例1に係る監視パラメータとパルス数との関係を規定するマップである。
【図23】バースト制御部及びパルス生成部のブロック図である。
【図24】実施形態2の変形例2に係る監視パラメータとパルス数との関係を規定するマップであって、(A)が監視パラメータとパルス数とのマップで、(B)が監視パラメータとパルス幅とのマップである。
【図25】通常パルスと可変パルスとを組み合わせた駆動電圧の波形図である。
【図26】実施形態3に係るカメラのレンズ機構の一部の斜視図である。
【図27】超音波アクチュエータの概略図であって、(A)は側面図、(B)は(A)のb−b線における断面図である。
【図28】待機時の状態を示すグラフであって、(A)は駆動信号を、(B)は駆動シャフトの位置を示す。
【図29】駆動時の状態を示すグラフであって、(A)は駆動信号を、(B)は駆動シャフトの位置を示す。
【図30】駆動時における駆動シャフトとレンズ枠の摩擦部材の位置の時間変化を示す模式図である。
【図31】待機時の波数制御を示すグラフであって、(A)は駆動信号を、(B)は駆動シャフトの位置を示す。
【図32】駆動時の波数制御を示すグラフであって、(A)は駆動信号を、(B)は駆動シャフトの位置を示す。
【図33】待機時の、狭小パルスを出力する波数制御を示すグラフであって、(A)は駆動信号を、(B)は駆動シャフトの位置を示す。
【図34】駆動時の、狭小パルスを出力する波数制御を示すグラフであって、(A)は駆動信号を、(B)は駆動シャフトの位置を示す。
【図35】始動制御を示すグラフであって、(A)は駆動信号を、(B)は駆動シャフトの位置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1に係る駆動装置が搭載されたカメラシステム1について、図1を参照して説明する。図1は、カメラの構成を示すブロック図を示す。
【0017】
カメラシステム1は、撮像素子11と、被写体像を該撮像素子11に結ぶための撮像光学系12と、撮像素子11と撮像光学系12との間の光軸上に設けられた反射ミラー13と、該反射ミラー13によって導かれた光を受光して視差を検出する視差検出部14と、撮像光学系12中の後述するフォーカスレンズ駆動部16を制御する制御部7とを備えている。
【0018】
撮像素子11は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)で構成されており、撮像面に結像した被写体像を光電変換によって電気信号に変換する。
【0019】
撮像光学系12は、少なくとも1つのフォーカスレンズ15を含むレンズ群と、フォーカスレンズ15を駆動するフォーカスレンズ駆動部16とを有する。フォーカスレンズ駆動部16の詳しい構成については後述する。
【0020】
反射ミラー13は、撮像素子11と撮像光学系12との間の光軸上に位置して、撮像光学系12から入射する光を反射して、視差検出部14へ導く反射状態と、該光軸上から退避した退避状態との間で切換可能に構成されている。つまり、反射ミラー13は、オートフォーカスのために被写体像の視差を検出するときには反射状態となる一方、撮像素子11を露光するときには退避状態となる。
【0021】
視差検出部14は、被写体像の視差を検出する。例えば、視差検出部14は、コンデンサレンズ、セパレータレンズ及びラインセンサを有している。コンデンサレンズに入力された光は、コンデンサレンズによって集光されて、セパレータレンズに入射する。該光はセパレータレンズで瞳分割され、ラインセンサ上の2箇所に結像する。こうして、視差検出部14からは、ラインセンサの出力信号が出力される。
【0022】
制御部7は、撮像素子11及び視差検出部14からの出力信号に基づいて、撮像光学系12のフォーカスレンズ駆動部16を制御して、被写体像を撮像素子11の撮像面上に合焦させる。制御部7の詳しい構成については、後述する。
【0023】
−フォーカスレンズ駆動部の構成−
以下に、フォーカスレンズ駆動部16の詳しい構成について、図2を参照しながら説明する。図2は、フォーカスレンズ駆動部16の概略構成を示す。
【0024】
フォーカスレンズ駆動部16は、超音波アクチュエータ2と、レンズ保持機構8と、位置検出部84とを有している。超音波アクチュエータ2と制御部7とが駆動装置を構成する。
【0025】
レンズ保持機構8は、ガイドポール81と、超音波アクチュエータ2が取り付けられると共にガイドポール81に対して移動可能に構成された可動ケース82と、フォーカスレンズ15を保持すると共に該可動ケース82に一体的に取り付けられた保持枠83とを有している。このレンズ保持機構8は、図示省略のレンズ群ホルダに配設されている。
【0026】
ガイドポール81は、撮像光学系12の光軸と平行に延びるように、レンズ群ホルダに対して固定的に設けられている。ガイドポール81には、超音波アクチュエータ2の後述する駆動子49,49が当接する当接部材81aが固定的に取り付けられている。また、ガイドポール81は、図2では、1本だけ図示しているが、複数本設けられていてもよい。
【0027】
可動ケース82は、超音波アクチュエータ2を収容するように構成されている。また、可動ケース82は、ガイドポール81に対してスライド可能に取り付けられている。つまり、可動ケース82は、レンズ群ホルダに対して相対的に移動する。
【0028】
保持枠83は、可動ケース82に一体的に取り付けられていて、フォーカスレンズ15をその光軸が撮像光学系12の光軸と一致する状態で保持する。この保持枠83は、可動ケース82と共にガイドポール81に沿って移動する。つまり、保持枠83に保持されたフォーカスレンズ15は、可動ケース82の移動に従って、撮像光学系12の光軸に沿って移動する。
【0029】
位置検出部84は、磁気センサ84aと磁気スケール84bとで構成されている。磁気スケール84bは、可動ケース82に取り付けられている。磁気センサ84aは、磁気スケール84bと対向し且つ磁気スケール84bと所定間隔を保った状態でレンズ群ホルダに取り付けられている。磁気センサ84aは、磁気スケール84bを検出するMRセンサなどで構成されている。
【0030】
−超音波アクチュエータの構成−
以下に、超音波アクチュエータの詳しい構成について、図2〜7を参照しながら説明する。図3は、超音波アクチュエータのアクチュエータ本体の分解斜視図で、図4は、アクチュエータ本体の概略的な平面図で、図5は、アクチュエータ本体の1次モードの伸縮振動による変形を示す正面図で、図6は、アクチュエータ本体の2次モードの屈曲振動による変形を示す正面図で、図7は、アクチュエータ本体の合成振動による変形を示す正面図である。
【0031】
前記超音波アクチュエータ2は、図2に示すように、振動を発生させるアクチュエータ本体4と、該アクチュエータ本体4の駆動力を出力する駆動子49,49と、該アクチュエータ本体4を収容するケース5と、アクチュエータ本体4とケース5との間に介設されてアクチュエータ本体4を弾性的に支持する支持ゴム61,61と、アクチュエータ本体4をガイドポール81の当接部材81aに付勢するための付勢ゴム62とを備えている。この超音波アクチュエータ2が振動型アクチュエータを構成する。
【0032】
前記アクチュエータ本体4は、略長方形状の互いに対向する一対の主面と、この主面と直交して該主面の長手方向に延びる、互いに対向する一対の長辺側面と、これら主面及び長辺側面の両方と直交して該主面の短手方向に延びる、互いに対向する一対の短辺側面とを有する略直方体状をしている。
【0033】
このアクチュエータ本体4は、圧電素子であって、図3に示すように、5つの圧電体層41,41,…と4つの内部電極層42,44,43,44とを交互に積層して構成される。内部電極層42,44,43,44は、積層方向に圧電体層41を介して交互に配された、第1給電電極層42と共通電極層44と第2給電電極層43と共通電極層44とで構成される。これら第1給電電極層42、第2給電電極層43及び共通電極層44,44のそれぞれは、各圧電体層41の主面上に印刷されている。
【0034】
前記各圧電体層41は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛などのセラミック材料からなる絶縁体層であって、前記アクチュエータ本体4と同様に、一対の主面と、一対の長辺側面と、一対の短辺側面とを有する略直方体状をしている。また、各圧電体層41には、その長辺側面のうち一方の長辺側面の長手方向中央部に外部電極45aが、一方の短辺側面の短手方向中央部に外部電極46aが、他方の短辺側面の短手方向中央部に外部電極47aがそれぞれ形成されている。
【0035】
前記各共通電極層44は、圧電体層41の主面の略全面に亘って設けられた略長方形状をしている。また、各共通電極層44の一方の長辺部には、その長手方向中央部から圧電体層41の前記外部電極45aまで延びる引出電極44aが形成されている。
【0036】
前記第1給電電極層42は、図4に示すように、圧電体層41の主面をその長手方向及び短手方向にそれぞれ2等分してなる4つの領域のうち該主面の対角線方向に位置する2対の領域のうち一方の対の領域にそれぞれ形成された第1電極42a,42bと、これら第1電極42a,42bを連結して導通させる導通電極42cとを有する。各第1電極42a(42b)は略矩形状の電極であり、積層方向に見て共通電極層44と重なっている。また、第1電極42a,42bのうちの一方の第1電極42aには、圧電体層41の前記外部電極46aまで延びる引出電極42dが設けられている。
【0037】
前記第2給電電極層43は、圧電体層41の主面の対角線方向に位置する前記2対の領域のうち他方の対の領域にそれぞれ形成された第2電極43a,43bと、これら第2電極43a,43bを連結して導通させる導通電極43cとを有する。各第2電極43a(43b)は略矩形状の電極であり、積層方向に見て共通電極層44と重なっている。また、第2電極43a,43bのうちの一方の第2電極43bには、圧電体層41の前記外部電極47aまで延びる引出電極43dが設けられている。
【0038】
これら圧電体層41,41,…と内部電極層42,44,43,44とを交互に積層することで構成されたアクチュエータ本体4においては、その一方の長辺側面の前記長手方向中央部に、各圧電体層41の外部電極45aが積層方向に並んで一まとまりの外部電極45が形成されている。つまり、この外部電極45は、前記共通電極層44,44に形成された引出電極44a,44aと電気的に接続されている。同様に、アクチュエータ本体4の一方の短辺側面の前記短手方向中央部には、各圧電体層41の外部電極46aが積層方向に並んで一まとまりの外部電極46が形成されている。つまり、この外部電極46は、前記第1給電電極層42の引出電極42dと電気的に接続されている。また、アクチュエータ本体4の他方の短辺側面の前記短手方向中央部には、各圧電体層41の外部電極47aが積層方向に並んで一まとまりの外部電極47が形成されている。つまり、この外部電極47は、前記第2給電電極層43の引出電極43dと電気的に接続されている。
【0039】
そして、アクチュエータ本体4の長辺側面のうち前記外部電極45aが設けられていない側の長辺側面には、前記駆動子49,49が前記長手方向に互いに間隔を空けて設けられている。駆動子49,49は、該長手方向において、該長辺側面の全長の30〜35%距離だけその長手方向両端部から内側に入った位置に配設されている。この位置は、後述するアクチュエータ本体4の屈曲振動の2次モードの腹の位置であって、振動が最も大きくなる位置である。駆動子49は、アクチュエータ本体4に取り付けられた基端側が円柱状に形成される一方、先端側が半円形状に形成されている。駆動子49は、セラミック等の硬質部材で形成されている。
【0040】
前記ケース5は、樹脂製であって、前記アクチュエータ本体4に対応した略直方体状の概略箱形状をしている。ケース5は、アクチュエータ本体4の駆動子49,49が設けられた長辺側面に対応する部分には側壁が設けられておらず、駆動子49,49に対応する側面が開口した形状となっている。
【0041】
このように構成されたケース5内に前記アクチュエータ本体4が収容されている。このとき、駆動子49,49はケース5から突出している。また、アクチュエータ本体4の一方の短辺側面とケース5との間およびアクチュエータ本体4の他方の短辺側面とケース5との間にはそれぞれ支持ゴム61,61が介設されている。このアクチュエータ本体4の両短辺側面は縦振動の腹の部分であるが、支持ゴム61,61は弾性体であるため、アクチュエータ本体4の縦振動を阻害することなく、該アクチュエータ本体4を支持することができる。また、アクチュエータ本体4の一方の長辺側面とケース5との間には付勢ゴム62が介設されている。
【0042】
前記各支持ゴム61は、シリコーンゴムに金属粒子を混入した導電性ゴムで構成され、略直方体状をしている。これら支持ゴム61,61は、アクチュエータ本体4をその長手方向に付勢した状態で弾性的に支持する。それと共に、支持ゴム61,61は、アクチュエータ本体4の外部電極46,47とケース5に設けられた電極(図示省略)とを導通させている。
【0043】
また、前記付勢ゴム62も、支持ゴム61と同様に、シリコーンゴムに金属粒子を混入した導電性ゴムで構成され、略直方体状をしている。この付勢ゴム62は、アクチュエータ本体4をその短手方向(即ち、短手方向が付勢方向に相当する)に付勢するためのものである。それと共に、付勢ゴム62は、アクチュエータ本体4の外部電極45とケース5に設けられた電極(図示省略)とを導通させている。
【0044】
つまり、ケース5に設けられた端子電極(図示省略)に給電することによって、支持ゴム61,61及び付勢ゴム62を介してアクチュエータ本体4に給電することができる。
【0045】
このように構成された超音波アクチュエータ2は、駆動子49,49がガイドポール81の当接部材81aに当接するようにして、前記可動ケース82に取り付けられる。このとき、超音波アクチュエータ2は、付勢ゴム62が圧縮変形した状態で可動ケース82に取り付けられている。すなわち、アクチュエータ本体4は当接部材81aに向かって付勢され、駆動子49,49は当接部材81aに押し付けられている。
【0046】
この状態で、超音波アクチュエータ2は、制御部7から給電される。詳しくは、ケース5の端子電極には、制御部7から延びる信号線が接続される。そして、前記支持ゴム61,61及び付勢ゴム62を介して、アクチュエータ本体4の外部電極45がグランドに接続され、外部電極46,47には別々の交流電圧(以下、「駆動電圧」ともいう)が印加される。このとき、外部電極46,47に印加される2つの駆動電圧の位相をずらすことによって、圧電体層41の主面の対角線方向に位置する一方の対の第1電極42a,42bと、他方の対の第2電極43a,43bとに互いに位相がずれた駆動電圧が印加され、アクチュエータ本体4には、その長手方向への伸縮振動(所謂、縦振動)とその短手方向への屈曲振動(所謂、横振動)とが誘起される。
【0047】
ここで、アクチュエータ本体4を効率良く振動させるためには、アクチュエータ本体4に印加する駆動電圧の周波数は、アクチュエータ本体4の伸縮振動や屈曲振動の共振周波数又は反共振周波数であることが好ましい。アクチュエータ本体4の共振周波数又は反共振周波数は、アクチュエータ本体4の材料及び形状等、並びにアクチュエータ本体4を支持する力及び支持する箇所によって影響を受ける。つまり、所望のモードの伸縮振動の共振周波数又は反共振周波数と、所望のモードの屈曲振動の共振周波数又は反共振周波数とが一致するようにアクチュエータ本体4の形状等を設定し、該共振周波数又は反共振周波数の駆動電圧をアクチュエータ本体4に印加する。例えば、伸縮振動の1次モード(図5参照)の共振周波数と屈曲振動の2次モード(図6参照)の共振周波数とが一致するようにアクチュエータ本体4の形状等を設計して、該共振周波数近傍の2つの駆動電圧を位相をずらしてアクチュエータ本体4の外部電極46,47に印加することによって、アクチュエータ本体4には、伸縮振動の1次モードと屈曲振動の2次モードとが調和的に誘起され、図7(a)、(b)、(c)、(d)に示す形状の変化を順番に起こす。
【0048】
その結果、各駆動子49が該アクチュエータ本体4の主面と平行な平面、即ち、長手方向と短手方向とを含む平面(図7における紙面と平行な面)内で周回運動、具体的には、略楕円運動を行う。このとき、駆動子49,49は、ガイドポール81の当接部材81aに当接しているため、各駆動子49は、周回運動において、ガイドポール81の長手方向の一側へ移動しているときには、当接部材81aとの間の摩擦力を増大させる一方、ガイドポール81の長手方向の他側へ移動しているときには、当接部材81aとの間の摩擦力を減少させる。つまり、駆動子49と当接部材81aとの摩擦力が増大するときに、駆動子49から当接部材81aに駆動力が出力されて、超音波アクチュエータ2と当接部材81aとが相対移動する。本実施形態では、超音波アクチュエータ2が可動ケース82と共にガイドポール81に沿って移動する。このガイドポール81の長手方向が駆動方向に相当する。
【0049】
また、2つの駆動子49,49は、位相が180°ずれた状態で周回運動する。すなわち、2つの駆動子49,49から交互に駆動力が出力されて、超音波アクチュエータ2が移動する。
【0050】
尚、2つの駆動電圧の位相をずらす際に、一方の駆動電圧の位相に対して他方の駆動電圧の位相を進めるか、遅らせるかを切り替えることによって、駆動子49,49が出力する駆動力を逆向きにすることができる。
【0051】
−制御部の構成−
次に、制御部7について説明する。制御部7は、目標位置設定部71と、減算器72と、位置制御部73と、バースト制御部74と、パルス生成部75と、位相制御部76と、可変遅延回路77と、第1及び第2増幅部78a,78bとを有している。制御部7は、フォーカスレンズ駆動部16を制御すべく、超音波アクチュエータ2に印加する2つの駆動電圧の位相差を変化させる位相制御を行うと共に、該駆動電圧に含まれる電圧波の波数(即ち、パルス数)を変化させる波数制御を行う。
【0052】
目標位置設定部71は、視差検出部14の出力信号が入力される位相差算出部71aと、撮像素子11の出力信号が入力されるコントラスト評価部71bと、位相差算出部71aとコントラスト評価部71bの出力信号が入力される焦点誤差算出部71cと、焦点誤差算出部71cの出力信号が入力されるAFアルゴリズム実行部71dとを有する。目標位置設定部71は、視差検出部14の出力信号か撮像素子11の出力信号の何れかを用いて、被写体像を撮像素子11に合焦させるためのフォーカスレンズ15の目標位置を算出する。
【0053】
まず、視差検出部14の出力信号に基づいてフォーカスレンズ15の目標位置を算出する場合について説明する。この場合には、いわゆる位相差検出方式のオートフォーカス(以下、「AF」ともいう)が行われる。
【0054】
位相差算出部71aは、視差検出部14からの出力信号に基づいて、位相差を算出する。具体的には、位相差算出部71aは、被写体像が撮像素子11に合焦している場合にラインセンサ上に結像される2つの被写体像の間隔である基準間隔と、ラインセンサからの出力信号から得られた、実際にラインセンサ上に結像された2つの被写体像の間隔との偏差を求める。
【0055】
焦点誤差算出部71cは、位相差算出部71aの出力信号(即ち、前述の偏差)に基づいて、焦点位置が前ピンか後ピンか、及び、フォーカスレンズ15が焦点位置からどれだけずれているかを求める。
【0056】
AFアルゴリズム実行部71dは、焦点誤差算出部71cの出力信号に基づいて、フォーカスレンズ15の目標位置を算出して出力する。
【0057】
次に、撮像素子11の出力信号に基づいてフォーカスレンズ15の目標位置を算出する場合について説明する。この場合には、いわゆるコントラスト検出方式のAFが行われる。
【0058】
コントラスト評価部71bは、撮像素子11の出力信号に基づいて、被写体像のコントラスト値を算出する。
【0059】
焦点誤差算出部71cは、コントラスト評価部71bで算出したコントラスト値を記憶すると共に、フォーカスレンズ15を所定の微小量だけ移動させるための出力信号をAFアルゴリズム実行部71dに出力する。AFアルゴリズム実行部71dは、前述の如く、焦点誤差算出部71cの出力信号に基づいて、フォーカスレンズ15の目標位置を算出して出力する。
【0060】
コントラスト検出方式のオートフォーカスでは、このように、フォーカスレンズ15を微小量ずつ移動させては、そのときのコントラスト値を算出、記憶して、コントラスト値のピークを探す。そして、コントラスト値のピークが検出されると、焦点誤差算出部71cは、フォーカスレンズ15の、現在の位置とコントラスト値のピークが検出された位置との誤差をAFアルゴリズム実行部71dに出力する。AFアルゴリズム実行部71dは、該出力信号に基づいて、フォーカスレンズ15の目標位置を算出して出力する。
【0061】
このように位相差検出方式AF及びコントラスト検出方式AFの何れを行う場合であっても、焦点誤差算出部71cからは、フォーカスレンズ15の目標位置が出力される。
【0062】
減算器72には、焦点誤差算出部71cからフォーカスレンズ15の目標位置が入力されると共に、位置検出部84で検出されたフォーカスレンズ15の実際の位置である現在位置が入力される。減算器72は、フォーカスレンズ15の目標位置と現在位置との偏差を求め、位置制御部73へ出力する。
【0063】
位置制御部73は、フォーカスレンズ15の目標位置と現在位置の偏差から、駆動電圧に与える位相制御量を算出して、それに応じた出力信号を位相制御部76に出力する。詳しくは、位置制御部73は、比例演算部73pと、積分演算部73iと、微分演算部73dとを有し、PID制御によって前記偏差から位置制御量を算出している。詳しくは、比例演算部73pで演算された比例項と、積分演算部73iで演算された積分項とは第1加算器73aで加算され、その加算値は第2加算器73bへ入力される。第2加算器73bには、微分演算部73dで演算された微分項も入力されており、比例項と積分項と微分項とを加算したPID値が第2加算器73bから出力され、位相制御部76に入力される。また、第1加算器73aからの加算値は、バースト制御部74にも入力される。尚、バースト制御部74へは、第1加算器73aからの加算値ではなく、比例演算部73pからの比例項や、積分演算部73iからの積分項だけを入力するようにしてもよい。
【0064】
バースト制御部74は、位置制御部73からの比例項と積分項との加算値、即ち、駆動電圧の位相差に関連するパラメータに基づいて、所定の周期(以下、「バースト周期」ともいう)中に含まれるパルス数を決定する。このバースト制御部74における制御内容については後述する。
【0065】
パルス生成部75は、所定のパルス周波数のパルス信号を出力するように構成されている。このとき、パルス生成部75は、バースト制御部74からの出力信号に応じた個数のパルスを前記バースト周期ごとに出力する。つまり、パルス生成部75は、1又は複数のパルスを含んで構成されたバースト周期に相当する時間幅のパルス群を1つのバースト信号として、該バースト信号をバースト周期で連続的に出力する。例えば、パルス生成部75は、バースト周期をパルス5個分とすると、バースト制御部74からの出力信号に応じて、5個全てのパルスを出力するときもあれば、5個のうち2個だけパルスを出力するときもある。尚、前述の如くバースト周期の全期間でパルスを出力する場合もあるが、その場合も含めて、便宜上、バースト信号と称する。また、パルス周波数(即ち、バースト信号に含まれる各パルスの周期)は、前述のアクチュエータ本体4の伸縮振動及び屈曲振動の共振周波数の近傍の値に設定されている。パルス生成部75は、同じバースト信号を、第1バースト信号として第1増幅部78aに出力すると共に、第2バースト信号として可変遅延回路77に出力する。
【0066】
可変遅延回路77に入力された第2バースト信号は、該可変遅延回路77によって位相がシフトされて出力される。
【0067】
詳しくは、可変遅延回路77には、位相制御部76からの出力信号も入力されている。位相制御部76は、位置制御部73からの出力信号に基づいて、第2バースト信号の位相を、第1バースト信号の位相に対して、どれだけずらすかを決定する。そして、位相制御部76は、その位相差に関する出力信号を可変遅延回路77に入力する。可変遅延回路77は、位相制御部76からの出力信号に基づいて、第2バースト信号の位相をシフトして、第2増幅部78bへ出力する。
【0068】
第1及び第2増幅部78a,78bでは、それぞれ入力された第1及び第2バースト信号を増幅して、第1及び第2駆動電圧として、超音波アクチュエータ2に印可する。第1及び第2駆動電圧はそれぞれ、アクチュエータ本体4の外部電極46,47に印加される。
【0069】
こうして、アクチュエータ本体4に第1及び第2駆動電圧が印可されると、アクチュエータ本体4は伸縮振動と屈曲振動との合成振動を行い、駆動子49,49を周回運動させる。そして、この駆動子49,49の周回運動によって、保持枠83に保持されたフォーカスレンズ15が可動ケース82と共にガイドポール81に沿って移動する。移動後のフォーカスレンズ15の位置は、位置検出部84によって検出され、前記減算器72へフィードバックされる。
【0070】
このようにして超音波アクチュエータ2に印可される第1及び第2駆動電圧は、例えば、図8,9に示すようになる。図8に示す第1及び第2駆動電圧(図中のA相が第1駆動電圧を示し、B相が第2駆動電圧を示す)は、バースト周期の全期間においてパルスが連続的に出力されており、全体としては連続波となる。第2駆動電圧は、第1駆動電圧に対して位相が270°遅れている。本実施形態では、第1駆動電圧と第2駆動電圧の位相差が180°のときに、アクチュエータ本体4は屈曲振動だけを行って、駆動子49,49がガイドポール81に沿った方向に振動しない。そこで、第1駆動電圧と第2駆動電圧の位相差が180°のときを基準位相として、第1駆動電圧と第2駆動電圧の位相差の、該基準位相からのずれ量を調節することによって、超音波アクチュエータ2の駆動力を調節する。すなわち、基準位相を基準とすると、第2駆動電圧は、第1駆動電圧に対して位相が90°遅れている。
【0071】
また、図9に示す第1及び第2駆動電圧は、バースト周期中に2つのパルスが出力され、全体としてはバースト周期ごとに2つのパルスが出力されるバースト波となる。詳しくは、第1及び第2駆動電圧は、バースト周期中において、始めにパルスを2つ出力し、残りはパルスを出力しない休止期間となっている。第2駆動電圧は、第1駆動電圧に対して位相が基準位相から45°遅れている。尚、本実施形態においては、凸状のパルスと凹状のパルスとを合わせて、1つのパルスとして計数する。
【0072】
このように、制御部7は、フォーカスレンズ15の現在位置と目標位置との偏差に応じて、第1及び第2駆動電圧の位相差を変化させる位相制御を行うと共に、第1及び第2駆動電圧に含まれるパルス数を変化させる波数制御を行うことによって、駆動力を調節している。尚、フォーカスレンズ15の位置ではなく、速度等の別の運動状態に基づいて位相制御及び波数制御を行ってもよい。
【0073】
ここで、位相制御について詳しく説明すると、本実施形態におけるアクチュエータ本体4の構成においては、第1及び第2駆動電圧の位相差を略90°とすることによって、駆動力は最大となる。つまり、位相差が略90°のときに、駆動子49,49の周回運動のうち、ガイドポール81の当接部材81aとの摩擦力を増大させる方向への成分と、ガイドポール81の長手方向への成分とのバランスが最もよくなり、大きな駆動力が出力される。一方、位相差が180°に近づくにつれて、駆動子49,49の周回運動のうち、当接部材81aとの摩擦力を増大させる方向への成分が大きくなるものの、ガイドポール81の長手方向への成分が小さくなるため、駆動子49,49の、ガイドポール81の長手方向への移動量が小さくなり、駆動力は小さくなる。また、位相差が0°に近づくと、駆動子49,49の周回運動のうち、ガイドポール81の長手方向への成分が大きくなるものの、当接部材81aとの摩擦力を増大させる方向への成分が小さくなるため、駆動子49,49の周回運動が当接部材81aに伝わり難くなり、駆動力は小さくなる。そこで、制御部7は、第1及び第2駆動電圧の位相差を180°を基準として、90°〜270°の間で調節することによって、駆動力を調節している。尚、位相差を0°を基準として、−90°〜90°の間で調節してもよい。
【0074】
尚、本明細書においては、位相差を大きくするとは、位相差を駆動力が最大となる位相差(本実施形態では90°又は270°)に近づけることを意味し、位相差を小さくするとは、位相差を駆動力が最小となる位相差(本実施形態では180°)に近づけることを意味する。
【0075】
この位相制御では、制御範囲の全域に亘って、駆動電圧の周波数は、アクチュエータ本体4の共振周波数に応じて設定された周波数のままであると共に、駆動電圧の電圧値は、一定の値に維持されている。そのため、小さな駆動力を出力する場合であっても、所望の駆動力を適切に出力することができる。しかしながら、位相差が0°近傍であって、駆動力が小さいときであっても、駆動電圧の電圧値は一定の値に維持されているため、駆動力の割りに消費電力が大きくなってしまう。
【0076】
そこで、制御部7は、位相制御に波数制御を組み合わせて駆動力を制御している。駆動電圧に含まれるパルス数を減らすと、図10に示すように、消費電力を低減することができる。ここで、図中のバースト率とは、バースト周期を、バースト周期中に含まれる全パルスの合計の時間幅で除した値である。つまり、バースト周期がパルス5個分に設定されているときに、バースト周期中に5個のパルスを含むときにはバースト率は100%となり、1個のパルスを含むときにはバースト率20%となる。つまり、制御部7は、第1及び第2駆動電圧の位相制御をしつつ、波数制御をすることによって、消費電力を低減している。特に、必要な駆動力が小さいときには、駆動電圧に含まれるパルス数を減らしても、アクチュエータ本体4を適切に振動させることができる。ただし、図11に示すように、バースト周期中に含まれるパルス数を減らしていくと、パルス数が零(即ち、バースト率が零)となる前に駆動力が零となってしまう。つまり、波数制御だけでは、小さな駆動力を適切に出力することができない。そのため、波数制御においては、バースト周期中に含まれる最小のパルス数は、可動ケース82、保持枠83及びフォーカスレンズ15等の駆動対象を駆動できる最小の値(本実施形態では、2個)に設定さている。本実施形態では、制御部7は、必要な駆動力が比較的大きな領域では、連続波の駆動信号を用いた位相制御によって駆動力を制御し、必要な駆動力が比較的小さな領域では、波数制御により波数を調節しつつ位相制御をすることによって駆動力を制御している。
【0077】
尚、本実施形態では、バースト周期中に含まれるパルスの最小値を2個に設定しているが、これに限られるものではない。つまり、バースト周期を調節することによって、パルスの最小値を変更することができる。例えば、図12に示すように、バースト周期をパルス3個分に設定することによって、バースト周期中のパルスの最小値を1個にしても、前記駆動対象を駆動することができる。
【0078】
ただし、アクチュエータ本体4を停止状態から振動をさせる場合と、アクチュエータ本体4が振動を開始し、その振動を維持させる場合とで、バースト周期中に含まれる最小のパルス数や、バースト周期を変更してもよい。つまり、アクチュエータ本体4の振動を維持させるために必要な電力は、アクチュエータ本体4に振動を開始させるために必要な電力よりも小さい。そこで、アクチュエータ本体4が一旦、振動を開始した後は、バースト周期中のパルスの最小値を、アクチュエータ本体4の振動開始時よりも小さくしたり、又は、バースト周期中のパルスを1個としたときのバースト周期を短くしたりすることができる。こうすることによって、消費電力をより低減することができる。
【0079】
換言すれば、バースト周期中においてパルスを出力していない休止期間の最大値は、アクチュエータ本体4の振動を維持できる期間に設定されている。つまり、所定の個数のパルスを出力してアクチュエータ本体4を振動させた後、所定の休止期間を挟んで、該アクチュエータ本体4の振動が減衰し切る前に次のパルスが出力されるように構成してもよい。アクチュエータ本体4の振動を停止させてしまうと、アクチュエータ本体4を再度、振動させるためには或る程度大きな電圧及び時間を要する。そこで、休止期間の最大値を前記の如く設定することによって、アクチュエータ本体4を振動させ続けることができ、超音波アクチュエータ2の動作を安定させることができる。
【0080】
また、可動ケース82を減速させるときには、可動ケース82を駆動するときのバースト周期中に含まれるパルスの最小値よりも少ないパルス数としてもよい。こうすることで、可動ケース82、即ち、フォーカスレンズ15の減速度を調節しつつ、そのときの消費電力を抑制することができる。
【0081】
尚、第1及び第2駆動電圧は、休止期間においては、パルスを出力しないように構成されているが、これに限られるものではない。例えば、図13に示すように、休止期間においても、パルス幅を通常波形のパルス(即ち、パルス周期に応じた所定のパルス幅を有するパルス(以下、「通常パルス」ともいう))のパルス幅よりも狭くした狭小パルスを前記パルス周期で出力するようにしてもよい。こうして、休止期間においても、パルスを全く出力しないのではなく、狭小パルスを出力することによって、アクチュエータ本体4に僅かではあっても駆動電圧を印加することができる。その結果、アクチュエータ本体4の振動を維持させることができ、ひいては、駆動子49,49の周回運動を維持させることができる。このように、休止期間に狭小パルスを出力する構成であっても、狭小パルスはパルス幅が狭いため、通常パルスを出力し続ける連続波と比較して、消費電力を抑制することができる。また、休止期間に狭小パルスを出力しない構成と比較して、バースト周期を長くすることができるため、場合によっては、消費電力を抑制することができる。
【0082】
また、休止期間に狭小パルスを出力する構成であっても、図14に示すように、休止期間の全期間で狭小パルスを出力しなくてもよい。すなわち、駆動子49,49の周回運動を維持するために必要な個数だけ狭小パルスを出力すればよい。このとき、図14に示すように、休止期間のうち、始めは狭小パルスを出力せず、終盤にだけ所定個数の狭小パルスを出力する(即ち、休止期間の終期よりも所定時間(前記所定個数の狭小パルスの出力時間に相当する時間)前から狭小パルスを出力する)ことが好ましい。つまり、アクチュエータ本体4の振動は休止期間の終期に向かって減衰していくため、休止期間の終盤に狭小パルスを出力することによって、アクチュエータ本体4の振動が或る程度減衰したタイミングで駆動電圧を印加することができる。その結果、狭小パルスがより効果的に、アクチュエータ本体4の振動を持続させることができ、消費電力をさらに抑制することができる。尚、このように休止期間の終盤に狭小パルスを出力する構成であっても、休止期間が、アクチュエータ本体の振動が十分に維持される程度に短いときには、狭小パルスを出力しなくてもよい。
【0083】
−波数制御−
続いて、制御部7による具体的な波数制御について、図15のフローチャートを参照しながら詳しく説明する。この波数制御は、具体的にはバースト制御部74によって実行される。
【0084】
まず、ステップSa1において、監視パラメータを取り込む。具体的には、位置制御部73の第1加算器73aから出力される、比例項と積分項との加算値を監視パラメータとして取り込む。この加算値は、第1及び第2駆動信号の位相差に関連するパラメータである。
【0085】
ステップSa2では、監視パラメータが所定の第1閾値よりも大きいか否かを判定する。この第1閾値は、パルス数を増加させるか否かの指標となる値である。監視パラメータが第1閾値よりも大きいときには、Sa5へ進む一方、監視パラメータが第1閾値以下であるときには、ステップSa3へ進む。ステップSa3では、監視パラメータが所定の第2閾値よりも小さいか否かを判定する。この第2閾値は、パルス数を減少させるか否かの指標となる値であって、第1閾値よりも小さな値である。監視パラメータが第2閾値よりも小さいときには、Sa10へ進む一方、監視パラメータが第2閾値以上であるときには、ステップSa4へ進む。ステップSa4では、アップタイマ及びダウンタイマのカウント値をクリアして(即ち、零にして)、ステップSa1へ戻る。
【0086】
つまり、ステップSa2,Sa3では、監視パラメータが第1閾値と第2閾値との間に入っているか否かを判定し、監視パラメータが第1閾値を超えているときには、ステップSa5へ進む一方、監視パラメータが第2閾値を超えているときには、ステップSa10へ進んで、それぞれ後に続く制御を行う。また、監視パラメータが第1閾値と第2閾値の間に入っているときには、アップタイマ及びダウンタイマのカウント値をクリアする。
【0087】
続いて、監視パラメータが第1閾値よりも大きいときについて説明する。まず、ステップSa5では、アップタイマのカウント値をカウントアップすると共に、ダウンタイマをクリアする。次に、ステップSa6において、アップタイマのカウント値を取り込む。そして、ステップSa7において、アップタイマのカウント値が所定の第3閾値よりも大きいか否かを判定する。カウント値が第3閾値以下のときには、ステップSa1へ戻る一方、カウント値が第3閾値よりも大きいときには、ステップSa8へ進む。
【0088】
ここで、カウント値が第3閾値以下であっても、監視パラメータが第1閾値よりも大きい状態が継続されているときには、ステップSa1へ戻った後、ステップSa2,Sa5,Sa6を経て、再びステップSa7まで進んでくる。その際、ステップSa5を経ているため、アップタイマのカウント値は1つカウントアップされている。こうして、監視パラメータが第1閾値よりも大きい状態が継続している限り、ステップSa1,Sa2,Sa5〜Sa7を繰り返し、アップタイマのカウント値がやがて第3閾値よりも大きくなり、ステップSa8へ進むことになる。つまり、ステップSa7は、監視パラメータが、ノイズのように瞬間的に第1閾値を超えたのか、あるいは、第3閾値に対応する所定の第1継続時間よりも長く継続して第1閾値を超えているのかを判定している。前記第1継続時間は、瞬間的ではないと判断できる時間に設定され、第3閾値は、該第1継続時間に相当する値に設定されている。
【0089】
尚、監視パラメータが第1閾値を超えた状態が瞬間的である場合には、ステップSa1,Sa2,Sa5〜Sa7を繰り返している途中で(具体的には、監視パラメータが第1閾値以下となった状態でステップSa2を実行するときに)、ステップSa2においてNoと判定されて、ステップSa3へ進むことになる。そして、アップタイマは、ステップSa3以降のステップSa4又はステップSa10においてクリアされる。
【0090】
ステップSa8では、監視パラメータが第1閾値よりも大きい状態が瞬間的ではなく、或る程度継続しているとして、駆動パルス数を1つ増やす。その後、ステップSa9で、アップタイマのカウント値をクリアして、ステップSa1へ戻る。
【0091】
尚、ステップSa5において、ダウンタイマを、監視パラメータが第1閾値よりも大きいときには使用しないけれども、クリアすることによって、監視パラメータが、制御周期(フローチャートの繰り返し周期)ごとに第1閾値より大きくなったり、第2閾値よりも小さくなったりを繰り返す場合であっても、監視パラメータが第2閾値よりも小さくなったときには、後述の手順でダウンタイマを必ず零からカウントアップすることができる。つまり、監視パラメータが次に第2閾値よりも小さくなった状態の継続時間を正確に計数することができる。
【0092】
次に、監視パラメータが第2閾値よりも小さいときについて説明する。ステップSa4で監視パラメータが第2閾値よりも小さいと判定されたときには、ステップSa10へ進む。ステップSa10では、ダウンタイマのカウント値をカウントアップすると共に、アップタイマをクリアする。
【0093】
ここで、アップタイマを、監視パラメータが第2閾値よりも小さいときには使用しないけれども、クリアすることによって、監視パラメータが、制御周期ごとに第1閾値より大きくなったり、第2閾値よりも小さくなったりを繰り返す場合であっても、監視パラメータが第1閾値よりも大きくなったときには、アップタイマを必ず零からカウントアップすることができる。つまり、監視パラメータが次に第1閾値よりも大きくなった状態の継続時間を正確に計数することができる。
【0094】
次に、ステップSa11において、ダウンタイマのカウント値を取り込む。そして、ステップSa12において、ダウンタイマのカウント値が所定の第4閾値よりも大きいか否かを判定する。カウント値が第4閾値以下のときには、ステップSa1へ戻る一方、カウント値が第4閾値よりも大きいときには、ステップSa13へ進む。
【0095】
ここで、カウント値が第4閾値以下であっても、監視パラメータが第2閾値よりも小さい状態が継続されているときには、ステップSa1へ戻った後、ステップSa2,Sa3,Sa10,Sa11を経て、再びステップSa12まで進んでくる。その際、ステップSa10を経ているため、ダウンタイマのカウント値は1つカウントアップされている。こうして、監視パラメータが第2閾値よりも小さい状態が継続している限り、ステップSa1〜Sa3,Sa10〜Sa12を繰り返し、ダウンタイマのカウント値がやがて第4閾値よりも大きくなり、ステップSa13へ進むことになる。つまり、ステップSa12は、監視パラメータが、ノイズのように瞬間的に第2閾値よりも小さくなったのか、あるいは、第4閾値に対応する所定の第2継続時間よりも長く継続して第2閾値よりも小さくなっているのかを判定している。前記第2継続時間は、瞬間的ではないと判断できる時間に設定され、第4閾値は、該第2継続時間に相当する値に設定されている。
【0096】
尚、この第4閾値は、第3閾値よりも大きな値に設定されている。つまり、第3閾値は、監視パラメータが大きくなるとき、即ち、大きな駆動力が必要なときに用いる値である。大きな駆動力が必要なときには、パルス数を応答性良く増加させて、駆動力を迅速に増大させる必要がある。そのため、第3閾値は相対的に小さな値に設定されている。一方、第4閾値は、監視パラメータが小さくなるとき、即ち、小さな駆動力が必要なときに用いる値である。駆動力を小さくするときには、駆動力を大きくするときほど迅速性が要求されない。そのため、第4閾値を相対的に大きな値に設定して、監視パラメータが第2閾値よりも小さくなった状態が瞬間的でないか否かをより正確に判断している。ただし、前記第3閾値と第4閾値とが同じ値であってもよい。
【0097】
尚、監視パラメータが第2閾値よりも小さい状態が瞬間的である場合には、ステップSa1〜Sa3,Sa10〜Sa12を繰り返している途中で(具体的には、監視パラメータが第2閾値以上となった状態でステップSa3を実行するときに)、ステップSa3においてNoと判定されて、ステップSa4へ進むことになる。ステップSa4では、ダウンタイマがクリアされる。
【0098】
ステップSb13では、監視パラメータが第2閾値よりも小さい状態が瞬間的ではなく、或る程度継続しているとして、駆動パルス数を1つ減らす。その後、ステップSb14で、ダウンタイマのカウント値をクリアして、ステップSb1へ戻る。
【0099】
こうして、波数制御においては、監視パラメータが上側の閾値である第1閾値よりも大きい状態が第1継続時間よりも長く継続するとパルス数を1つ増やす。パルス数を増やすことによって駆動力が増大する。パルス数を増やしても、監視パラメータが第1閾値よりも大きい状態が第1継続時間よりも長く継続する場合には、パルス数をさらに増やす。こうして、監視パラメータが第1閾値よりも大きい状態が第1継続時間よりも長く継続しなくなるまで、あるいは、パルス数が最大値となる(即ち、駆動電圧が連続波となる)までパルス数を増やす。一方、監視パラメータが下側の閾値である第2閾値よりも小さい状態が第2継続時間よりも長く継続するとパルス数を1つ減らす。パルス数を減らすことによって駆動力が減少する。パルス数を減らしても、監視パラメータが第2閾値よりも小さい状態が第2継続時間よりも長く継続する場合には、パルス数をさらに減らす。こうして、監視パラメータが第2閾値よりも小さい状態が第2継続時間よりも長く継続しなくなるまで、あるいは、パルス数が最小値(アクチュエータ本体4を適切に振動させることができる最小のパルス数)となるまでパルス数を減らす。
【0100】
このように、第1及び第2駆動信号の位相差に関連するパラメータに基づいてパルス数を制御することによって、必要な駆動力を推定して消費電力を低減することができる。
【0101】
また、位相差に関連するパラメータとして、PID制御のPID値を用いるのではなく、比例項と積分項との加算値だけを用いることによって、パルス数を安定して制御することができる。つまり、PID値のうち微分項は、高周波成分を含むため、微分項を含んだPID値に基づいてパルス数を制御すると、パルス数の変動が激しくなってしまう虞がある。それに対して、比例項と積分項との加算値に基づいてパルス数を制御することによって、パルス数の変動を緩やかにすることができ、パルス数を安定して制御することができる。
【0102】
−始動制御−
このように構成された駆動装置においては、アクチュエータ本体4の始動直後は、該アクチュエータ本体4の振動が安定せず、駆動力を適切に出力できない場合がある。特に、波数制御によってパルス数を減らした状態で始動するときには、アクチュエータ本体4の振動を安定させるまでに時間を要する。そこで、制御装置は、以下に説明する始動制御を行う。この始動制御は、制御部7の位相制御部76で実行される。図16は、位相制御部76及び可変遅延回路77のブロック図を示し、図17は、始動制御によって出力される駆動電圧の波形図を示す。
【0103】
位相制御部76は、始動タイマ76aと、遮断スイッチ76bと、加算器76cとを有している。
【0104】
始動タイマ76aは、アクチュエータ本体4の始動と同時に計時を開始し、始動後、所定時間経過したときに遮断スイッチ76bに出力信号を出力する。
【0105】
遮断スイッチ76bには、始動タイマ76aからの出力信号に加えて、位置制御部73からのPID値が入力されている。この遮断スイッチ76bは、始動タイマ76aからの出力信号に応じて、ON/OFFを切り換えるように構成されている。詳しくは、遮断スイッチ76bは、始動タイマ76aから所定時間が経過したことを示す出力信号が入力されたときにはON状態となり、PID値を加算器76cに出力する一方、該出力信号が入力されていないときにはOFF状態となり、PID値の加算器76cへの出力を遮断する。
【0106】
加算器76cには、PID値に加えて、駆動オフセット補正量が入力される。そして、加算器76cでは、PID値に駆動オフセット補正量を加算して、第2バースト信号を遅延させる遅延量を算出する。加算器76cは、その算出結果を可変遅延回路77へ出力する。この補正オフセット補正量は、メモリ等に記憶された値であって、アクチュエータ本体4に伸縮振動を発生させず、屈曲振動だけを発生させるために必要な、第1及び第2駆動信号の位相差に対応する値である。
【0107】
可変遅延回路77は、多段シフト回路77aと、出力タップ切換部77bと、タップ変換部77cとを有している。
【0108】
パルス生成部75から可変遅延回路77に出力された第2バースト信号は、多段シフト回路77aに入力される。多段シフト回路77aに入力された第2バースト信号は、出力タップ切換部77bによって選択された出力タップから出力されることで、位相がシフトした状態で出力される。
【0109】
タップ変換部77cは、入力された遅延量に基づいて、多段シフト回路77aの何れの出力タップから信号を出力するかを求め、その結果を出力信号として出力タップ切換部77bに出力する。
【0110】
出力タップ切換部77bは、タップ変換部77cからの出力信号に基づいて、多段シフト回路77aの出力タップを切り換えて、所定の位相遅延量をもった第2バースト信号を出力する。
【0111】
このように構成された位相制御部76で始動制御が行われた結果、第1及び第2駆動電圧は図17に示すようになる。すなわち、アクチュエータ本体4の始動後、所定の待機時間の間は、位相差が略180°に設定され、該待機時間経過後に、所定の位相差が付与された位相制御が開始される。
【0112】
詳しくは、位相制御部76では、アクチュエータ本体4の始動後、所定の待機時間が経過するまでの間は、遮断スイッチ76bがOFF状態となっている。このとき、加算器76cには駆動オフセット補正量のみが入力され、タップ変換部77cには、駆動オフセット補正量のみに基づく遅延量が出力される。その結果、出力タップ切換部77bからは、駆動オフセット補正量に応じた位相遅延量を有する第2バースト信号が出力される。第1及び第2バースト信号は、それぞれ第1及び第2増幅部78a,78bで増幅され、駆動オフセット補正量に相当する位相差(アクチュエータ本体4の構成等によっては、この位相差が零となる場合もある)を有する第1及び第2駆動電圧としてアクチュエータ本体4の外部電極46,47(図では、「A相」と「B相」とで示す)に印可される。アクチュエータ本体4には屈曲振動だけが誘起され、駆動子49,49はガイドポール81の当接部材81aを押圧する方向(即ち、ガイドポール81に直交する方向)に往復運動を行う。その結果、駆動力は出力されず、可動ケース82、即ち、フォーカスレンズ15は移動しない。
【0113】
一方、アクチュエータ本体4の始動後、所定の待機時間が経過した後は、遮断スイッチ76bがON状態となり、加算器76cには、位置制御部73からのPID値が入力される。加算器76cは、該PID値と駆動オフセット補正量とを加算し、その加算値に基づく遅延量をタップ変換部77cに入力する。その結果、出力タップ切換部77bからは、該遅延量に応じた位相遅延量を有する第2バースト信号が出力される。こうして、パルス生成部75から第1増幅部78aに直接入力される第1バースト信号と、パルス生成部75から可変遅延回路77を経て第2増幅部78bに入力される第2バースト信号との間には所定の位相差が生じる。第1及び第2バースト信号は、それぞれ第1及び第2増幅部78a,78bで増幅され、所定の位相差を有する第1及び第2駆動電圧としてアクチュエータ本体4の外部電極46,47に印可される。アクチュエータ本体4には伸縮振動と屈曲振動とが調和的に誘起され、駆動子49,49が周回運動を行って駆動力を出力する。その結果、可動ケース82と共にフォーカスレンズ15が移動する。
【0114】
このように、始動制御によって、アクチュエータ本体4の始動後、所定の待機時間が経過するまでの間は、駆動力が出力されず、待機時間が経過すると、駆動力が出力され始める。ここで、前記待機時間は、アクチュエータ本体4の振動が安定するまでの時間に設定されている。こうすることで、アクチュエータ本体4の始動後、アクチュエータ本体4の振動が安定するまでの間は、フォーカスレンズ15の駆動には影響を与えない屈曲振動だけを行わせている。こうすることによって、駆動子49,49の周回運動が不安定なまま、フォーカスレンズ15の駆動が行われることを防止することができる。
【0115】
尚、始動制御は、必ずしもパルス数を減らした状態で行う必要はなく、連続波である第1及び第2駆動電圧を用いて行ってもよい。ただし、バースト周期中に含まれるパルス数を最小値に設定して始動制御を行うことによって、振動振幅を徐々に増加させることができるため、駆動開始初期の不安定な振動状態による予期できない動作を防止することができる。
【0116】
−実施形態1の効果−
したがって、本実施形態1によれば、位相制御と波数制御とを組み合わせて駆動力を制御することによって、必要な駆動力が小さな場合であっても、駆動力を適切に出力することができると共に、そのときの消費電力を抑制することができる。
【0117】
また、バースト周期中に含まれるパルス数を、位相制御における位相差に関連するパラメータである、位置制御部73の第1加算器73aから出力される比例項と積分項との加算値に基づいてパルス数を調節することによって、必要とする駆動力を推定してパルス数を調節することができる。すなわち、位相制御における位相差は、駆動力の大きさに対応して変化する。そのため、位相差の大きさから駆動力を推定することができ、駆動力に応じてパルス数を調節することができる。
【0118】
さらに、位相差に関連するパラメータとして、位置制御部73における比例項と積分項との加算値を用いることによって、高周波成分を有する微分項が含まれていないため、パルス数を安定して制御することができる。
【0119】
また、波数制御においては、監視パラメータが第1閾値よりも大きいときにはパルス数を増やす一方、監視パラメータが第2閾値よりも小さいときにはパルス数を減らしている。こうすることで、監視パラメータが上側の閾値である第1閾値と下側の閾値である第2閾値との間で変動している間は、パルス数が変更されずに維持されるため、波数制御を安定させることができる。
【0120】
さらに、監視パラメータが第1閾値よりも大きい状態が第1継続時間よりも長く継続したときにパルス数を増やす一方、監視パラメータが第2閾値よりも小さい状態が第2継続時間よりも長く継続したときにパルス数を減らしている。こうすることで、監視パラメータが第1閾値又は第2閾値を超える状態が瞬間的に生じたとしても、パルス数が変更されないため、波数制御をより安定させることができる。
【0121】
また、アクチュエータ本体4の始動後、所定の待機時間が経過するまでの間は、アクチュエータ本体4に屈曲振動だけさせて、駆動力を出力せず、待機時間が経過すると、アクチュエータ本体4に伸縮振動と屈曲振動を行わせて。駆動力を出力している。こうすることによって、駆動子49,49の周回運動が不安定なまま、フォーカスレンズ15の駆動が行われることを防止することができる。
【0122】
−変形例1−
次に、前記実施形態1の変形例1について、図18を参照して説明する。図18は、変形例1に係る制御部のブロック図を示す。
【0123】
変形例1は、制御部の構成が前記実施形態1と異なる。そこで、前記実施形態1と同様の構成については同様の符号を付し、説明を省略する。
【0124】
変形例1に係る制御部207における位置制御部273は、前記実施形態1と異なり、PID制御によって演算したPID値をバースト制御部74と位相制御部76とにそれぞれ入力する。
【0125】
このような構成であっても、バースト制御部74は、第1及び第2駆動電圧の位相差に関連するパラメータに基づいてパルス数を制御することができる。その結果、必要な駆動力が小さい場合であっても、駆動力を適切に出力することができると共に、そのときの消費電力を抑制することができる。
【0126】
ただし、PID値には高周波成分を有する微分項が含まれるため、パルス数を安定して制御する観点からは、比例項と積分項とを用いてパルス数を制御する前記実施形態1の方が好ましい。
【0127】
−変形例2−
次に、前記実施形態1の変形例2について、図19を参照して説明する。図19は、変形例2に係る制御部のブロック図を示す。
【0128】
変形例2は、制御部の構成が前記実施形態1と異なる。そこで、前記実施形態1と同様の構成については同様の符号を付し、説明を省略する。
【0129】
変形例2に係る制御部307における位置制御部373は、変形例1と同様に、PID制御により演算したPID値を出力する。
【0130】
また、制御部307は、フォーカスレンズ15、レンズ保持機構8及び超音波アクチュエータ2のモデルに基づいて設計されたオブザーバ379を有している。オブザーバ379には、位置検出部84からのフォーカスレンズ15の現在位置と、位置制御部373からのPID値とが入力される。オブザーバ379は、PID値とフォーカスレンズ15の現在位置とから、該モデルによるフォーカスレンズ15の動作と実際のフォーカスレンズ15の動作とを比較して、実際のフォーカスレンズ15がモデルと同様の動作を行うように、PID値を補正する補正値を演算している。すなわち、実際のフォーカスレンズ15がモデルに比べて移動しすぎている場合には、駆動力を小さくするように補正値を出力し、実際のフォーカスレンズ15がモデルに比べて移動していない場合には、駆動力が大きくなるように補正値を出力する。
【0131】
そして、位置制御部373からのPID値とオブザーバ379からの補正値が加算器379aに入力され、これらの加算値、即ち、補正されたPID値が位相制御部76に入力される。
【0132】
ここで、バースト制御部74には、オブザーバ379からの補正値が入力されるように構成されている。このオブザーバ379からの補正値も、第1及び第2駆動電圧の位相差に関連するパラメータであって且つ、変動が緩やかな値である。そのため、バースト制御部74は、パルス数を安定して制御することができる。
【0133】
−変形例3−
次に、本実施形態1の変形例3について、図20を参照して説明する。図20は、変形例3に係る波数制御のフローチャートを示す。
【0134】
変形例3は、波数制御の内容が前記実施形態1と異なる。
【0135】
変形例3に係る波数制御においては、監視パラメータが所定の閾値を超えた状態が所定の継続時間よりも長く継続するとパルス数を暫定的に増減させるものの、所定の保持時間経過すると、パルス数を元に戻し、監視パラメータが再度、閾値を超えた状態が所定の継続時間よりも継続するとパルス数を正式に増減させる。
【0136】
詳しくは、変形例3に係る波数制御では、ステップSb1〜Sb9において、監視パラメータが所定の第1閾値よりも大きい状態が所定の第1継続時間(第3閾値に対応)よりも長く継続するか否かを判定し、継続するときにはパルス数を1つ増やして、アップタイマをクリアする。これらステップSb1〜Sb9は、実施形態1のステップSa1〜Sa9と同様である。ただし、ここでのパルス数の増加は暫定的であり、所定の保持期間の経過後、元に戻す。
【0137】
詳しくは、アップタイマをクリアした後、ステップSb10において、保持タイマのカウント値が零か否かを判定する。カウント値が零のときには、ステップSb11へ進む一方、カウント値が零でないときには、ステップSb15へ進む。ステップSb15では、保持タイマをクリアして、ステップSb1へ戻る。
【0138】
ステップSb11では、保持タイマのカウント値をカウントアップする。そして、ステップSb12で、保持タイマのカウント値を取り込み、ステップSb13で、該カウント値が第5閾値よりも大きいか否かを判定する。カウント値が第5閾値以下のときには、ステップSb11〜Sb13を繰り返す一方、カウント値が第5閾値よりも大きいときには、ステップSb14へ進んで、パルス数を1つ減らす(即ち、パルス数を元に戻す)。その後、ステップSb1へ戻る。
【0139】
つまり、ステップSb11〜Sb14では、駆動パルス数をステップSb8で1つ増やした状態を、第5閾値に対応する所定の第1保持時間だけ保持し、該第1保持時間経過すると、パルス数を元に戻す。
【0140】
ここで、監視パラメータが大きくなる、即ち、大きな駆動力が必要となる状況は、超音波アクチュエータ2によって駆動される可動ケース82が何かに引っ掛かる場合や、駆動子49,49とガイドポール81の当接部材81aとの間に異物が挟まる場合や、駆動子49,49及び当接部材81aのばらつきによって摩擦力が瞬間的に増大する場合等であって、一時的であることがよくある。そこで、該第1保持時間だけパルス数を増やすことによって駆動力を大きくして、第1保持時間経過後はパルス数を元に戻す。大きな駆動力が必要な状況が一時的である場合には、第1保持時間経過後には、必要な駆動力が小さくなっているため、パルス数を元に戻したとしても、監視パラメータは第1閾値以下となる。すなわち、元のパルス数で且つ第1閾値以下の監視パラメータに対応する位相差によって、必要な駆動力を出力することができる。尚、第1保持時間は、必要な駆動力が一時的に大きくなる場合に、必要な駆動力が大きくなる状況が継続すると想定される時間に設定され、第5閾値は、該第1保持時間に相当する値に設定されている。
【0141】
一方、大きな駆動力が必要となる状況が一時的ではなく、継続する場合もあり得る。そのような場合には、パルス数を増やすことで監視パラメータが小さくなって第1閾値以下となったとしても、パルス数を元に戻すと、再び監視パラメータが第1閾値よりも大きくなる。その結果、ステップSb14からステップSb1へ戻った後、前述のステップSb1,Sb2,Sb5〜Sb7を繰り返して、ステップSb8へ進み、パルス数を再び1つ増やす。その後、ステップSb9を経て、ステップSb10へ進む。このとき、保持タイマは、先程のステップSb11〜Sb13の繰り返しで計上されたままであるため、ステップSb10においては、保持タイマが零でないと判定され、ステップSb15へ進む。そして、ステップSb15において、保持タイマがクリアされ、ステップSb1へ戻る。
【0142】
つまり、大きな駆動力が必要となる状況が継続する場合には、監視パラメータが第1閾値よりも大きくなるため、ステップSb1,Sb2,Sb5〜Sb7を経て、ステップSb8でパルス数が1つ増やされるが、その後、ステップSb11〜Sb14へ進むことなく、ステップSb1へ戻る。この場合、ステップSb14を通過しないため、パルス数が1つ増やされたままとなる。つまり、パルス数を暫定的に1つ増やした後、元に戻し、再び監視パラメータが第1閾値よりも大きい状態が第1継続時間よりも長く継続する状態となったときには、パルス数を正式に1つ増やし、元には戻さない。その結果、パルス数が1つ増えることによって駆動力が大きくなり、その駆動力が必要な駆動力よりも大きい場合には、位相差が小さく制御され、監視パラメータが小さくなる。そして、パルス数が増えることによって駆動力が大きくなってもなお、監視パラメータが第1閾値を超えている場合には、ステップSb15において保持タイマがクリアされているため、前述の如く、パルス数の暫定的な増加を経た後、場合によっては、パルス数の正式な増加が実行される。このパルス数の暫定的及び正式な増加は、監視パラメータが第1閾値よりも大きい状態が第1継続時間よりも長く継続しなくなるまで、あるいは、パルス数が最大値となる(即ち、駆動電圧が連続波となる)まで繰り返される。
【0143】
尚、ここでいう「元には戻さない」とは、ステップSb14のようにパルス数を意図的には元に戻さないということを意味し、その後、監視パラメータが減少したとしても、パルス数を減らさないということを意味するものではない。つまり、その後、監視パラメータが減少したときには、後述するステップSb16以降のフローによってパルス数を減らすことはあり得る。
【0144】
ここまでは、監視パラメータが大きくなる場合について説明したが、監視パラメータが小さくなる場合も同様にしてパルス数が制御される。
【0145】
詳しくは、ステップSb1〜Sb3,Sb16〜Sb20において、監視パラメータが所定の第2閾値よりも小さい状態が所定の第2継続時間(第4閾値に対応)よりも長く継続するか否かを判定し、継続するときにはパルス数を1つ減らして、ダウンタイマをクリアする。これらステップSb1〜Sb3,Sb16〜Sb20は、実施形態のステップSa1〜Sa3,Sa10〜Sa14と同様である。ただし、ここでのパルス数の減少は暫定的であり、所定の保持期間の経過後に、元に戻す。
【0146】
つまり、ダウンタイマをクリアした後、ステップSb21において、保持タイマのカウント値が零か否かを判定する。カウント値が零のときには、ステップSb22へ進む一方、カウント値が零でないときには、ステップSb26へ進む。ステップSb26では、保持タイマをクリアして、ステップSb1へ戻る。
【0147】
ステップSb22では、保持タイマのカウント値をカウントアップする。そして、ステップSb23で、保持タイマのカウント値を取り込み、ステップSb24で、該カウント値が第6閾値よりも大きいか否かを判定する。カウント値が第6閾値以下のときには、ステップSb22〜Sb24を繰り返す一方、カウント値が第6閾値よりも大きいときには、ステップSb25へ進んで、パルス数を1つ増やす(即ち、パルス数を元に戻す)。その後、ステップSb1へ戻る。
【0148】
つまり、ステップSb22〜Sb25では、パルス数をステップSb19で1つ減らした状態を、第6閾値に対応する所定の第2保持時間だけ保持し、該第2保持時間経過すると、パルス数を元に戻す。
【0149】
ここで、監視パラメータが小さくなる、則ち、必要な駆動力が小さくなる状況としては、超音波アクチュエータ2によって駆動される可動ケース82が何かに引っ掛かた後、引っ掛かりが消えて、負荷が急に軽くなる場合や、駆動子49,49及び当接部材81aのばらつきによって摩擦力が瞬間的に減少する場合等であって、一時的であることがよくある。そこで、該第2保持時間だけパルス数を減らすことによって駆動力を小さくして、第2保持時間経過後はパルス数を元に戻す。必要な駆動力が小さくなる状況が一時的である場合には、第2保持時間経過後には、必要な駆動力が大きくなっているため、パルス数を元に戻したとしても、監視パラメータは第2閾値以上となる。すなわち、元のパルス数で且つ第2閾値以上の監視パラメータに対応する位相差によって、必要な駆動力を出力することができる。尚、第2保持時間は、必要な駆動力が一時的に小さくなる場合に、必要な駆動力が小さくなる状況が継続すると想定される時間に設定され、第6閾値は、該第2保持時間に相当する値に設定されている。
【0150】
一方、必要な駆動力が小さくなる状況が一時的ではなく、継続する場合もあり得る。そのような場合には、パルス数を減らすことで監視パラメータが大きくなって第2閾値以上となったとしても、パルス数を元に戻すと、再び監視パラメータが第2閾値よりも小さくなる。その結果、ステップSb25からステップSb1へ戻った後、前述のステップSb1〜Sb3,Sb16〜Sb18を繰り返して、ステップSb19へ進み、パルス数を再び1つ減らす。その後、ステップSb20を経て、ステップSb21へ進む。このとき、保持タイマは、先程のステップSb22〜Sb24の繰り返しで計上されたままであるため、ステップSb21においては、保持タイマが零でないと判定され、ステップSb26へ進む。そして、ステップSb26において、保持タイマがクリアされ、ステップSb1へ戻る。
【0151】
つまり、必要な駆動力が小さくなる状況が継続する場合には、監視パラメータが第2閾値よりも小さくなるため、ステップSb1〜Sb3,Sb16〜Sb18を経て、ステップSb19でパルス数が1つ減らされるが、その後、ステップSb22〜Sb25へ進むことなく、ステップSb1へ戻る。この場合、ステップSb25を通過しないため、パルス数が1つ減らされたままとなる。つまり、パルス数を暫定的に1つ減らした後、元に戻し、再び監視パラメータが第2閾値よりも小さい状態が第2継続時間よりも長く継続する状態となったときには、パルス数を正式に1つ減らし、元には戻さない(ここでいう「元には戻さない」とは、前述の如く、パルス数を意図的には元に戻さないということを意味する)。その結果、パルス数が1つ減ることによって駆動力が小さくなり、その駆動力が必要な駆動力よりも小さい場合には、位相差が大きく制御され、監視パラメータが大きくなる。そして、パルス数が減ることによって駆動力が小さくなってもなお、監視パラメータが第2閾値よりも小さい場合には、ステップSb26において保持タイマがクリアされているため、前述の如く、パルス数の暫定的な減少を経た後、場合によっては、パルス数の正式な減少が実行される。このパルス数の暫定的及び正式な減少は、監視パラメータが第2閾値よりも小さい状態が第2継続時間よりも長く継続しなくなるまで、あるいは、パルス数が最小値となるまで繰り返される。
【0152】
このように、変形例3では、パルス数を増減する必要があるときには、パルス数を暫定的に増減させた後、元に戻して様子を見て、再びパルス数を増減する必要があるようであれば、パルス数を正式に増減させる。こうすることで、パルス数を増減する必要がある状況が一時的であることによって、パルス数の制御が発振してしまうことを防止することができる。
【0153】
《発明の実施形態2》
続いて、本発明の実施形態2について説明する。
【0154】
実施形態2は、波数制御の方法が実施形態1と異なる。そこで、実施形態1と同様の構成については、同様の符号を付して説明を省略する。
【0155】
実施形態2では、バースト制御部74は、監視パラメータとパルス数との関係が規定されたマップを有している。そして、バースト制御部74は、入力された監視パラメータと、該マップとに基づいてパルス数を決定し、該パルス数に応じた出力信号をパルス生成部75に出力する。
【0156】
詳しくは、マップでは、図21に示すように、監視パラメータは、その大きさに応じて複数の領域に分割され、該領域ごとにパルス数が割り当てられている。このとき、監視パラメータが大きくなるほど、パルス数が大きくなるように、パルス数が割り当てられている。例えば、バースト制御部は、監視パラメータが第2領域IIの値であるときにはパルス数を3に設定して、監視パラメータが第3領域IIIの値であるときにはパルス数を4に設定して、それぞれに応じた出力信号を出力する。
【0157】
このように、監視パラメータの大きさに対応したパルス数のマップを備えておくことによって、監視パラメータとパルス数とを同じタイミングで迅速に切り換えることができる。特に、必要な駆動力が小さいときには、消費電力を速やかに低下させることができる。
【0158】
尚、必ずしもマップを有する必要はない。後述の変形例2のように、監視パラメータを所定の分割領域幅で除して、その値に応じてパルス数を決定する等、監視パラメータの大きさに応じてパルス数を決定する構成であれば、任意の構成を採用することができる。
【0159】
−変形例1−
尚、図22に示すように、監視パラメータが増加しているときと、監視パラメータが減少しているときとで、異なるマップを用いるようにしてもよい。
【0160】
例えば、第2領域II内の値であった監視パラメータが増加して、第3領域III内に入ると、パルス数が3から4に増加する。こうして、パルス数が増加すると、出力できる駆動力が、パルス数が増加した分だけ大きくなるため、必要な駆動力が同じであれば、必要な位相差が小さくなり、それに伴って監視パラメータが減少する。ここで、監視パラメータが第2領域IIまで減少すると、パルス数が4から3に減少する。こうして、パルス数が減少すると、出力できる駆動力が、パルス数が減少した分だけ小さくなる。そのため、必要な駆動力がパルス数の減少前と同じであっても、必要な位相差が大きくなり監視パラメータが増加する。監視パラメータが第3領域IIIまで増加すると、前述の如く、パルス数が3から4に増加する。このように、パルス数が異なる領域の境目では、パルス数が増減を繰り返して、監視パラメータ及びパルス数の制御が発振してしまう虞がある。
【0161】
そこで、監視パラメータが減少しているときのマップでは、各パルス数が割り当てられた領域の監視パラメータの下限値を、監視パラメータが増加しているときのマップにおける下限値よりも低く設定している。こうすることで、パルス数が増加することで、位相差の減少に伴って監視パラメータが少し減少しても、監視パラメータが減少するときのマップでは監視パラメータの領域の下限値が相対的に低く設定されているため、監視パラメータはパルス数が1つ少ない隣りの領域には入らず、増加後のパルス数が割り当てられた領域に入ったままとなる。同様に、パルス数が減少することで、位相差の増大に伴って監視パラメータが少し増大しても、監視パラメータが増大するときのマップでは監視パラメータの領域の上限値が相対的に高く設定されていることになるため、監視パラメータはパルス数が1つ多い隣りの領域には入らず、減少後のパルス数が割り当てられた領域に入ったままとなる。こうして、監視パラメータ及びパルス数の制御が発振してしまうことを防止することができる。
【0162】
−変形例2−
次に、変形例2に係る制御装置について、図23を参照して説明する。図23は、バースト制御部及びパルス生成部のブロック図を示す。
【0163】
変形例2に係る波数制御は、監視パラメータの大きさに応じて、パルス数を決定すると共に、監視パラメータの大きさに応じて、出力する少なくとも1つのパルスのパルス幅を調節する。すなわち、この波数制御では、通常パルスと、該通常パルスのパルス幅よりもパルス幅を狭く調節したパルス(以下、「可変パルス」ともいう)とを組み合わせて出力する。
【0164】
変形例2に係るバースト制御部474は、パルス数演算部474aと、パルス数決定部474bと、パルス幅換算部474cとを有している。
【0165】
パルス数演算部474aには、監視パラメータと、メモリに記憶している領域分割幅が入力される。この領域分割幅は、前記マップ(図21参照)において各パルス幅が割り当てられた監視パラメータの領域幅に相当するものである。パルス数演算部474aは、監視パラメータを領域分割幅で除して、その演算結果のうち整数部分をパルス数決定部474bへ出力し、小数部分をパルス幅換算部474cへ出力する。
【0166】
パルス数決定部474bは、パルス数演算部474aから入力された整数部分に基づいて、パルス数を決定する。具体的には、パルス数決定部474bは、整数部分に1を足した値をパルス数とする。
【0167】
パルス幅換算部474cは、パルス数演算部474aから入力された小数部分に基づいて、可変パルスのパルス幅を決定する。具体的には、パルス幅換算部474cは、通常パルスのパルス幅を1として、小数部分に比例したパルス幅を決定する。例えば、パルス幅換算部474cは、小数部分の値が0.5のとき、パルス幅を通常パルスのパルス幅の1/2に設定する。尚、小数部分とパルス幅との関係は比例関係に限られるものではない。
【0168】
こうして、パルス数決定部474bから出力される出力信号と、パルス幅換算部474cから出力される出力信号とは、パルス生成部475に入力される。
【0169】
尚、本変形例2では、監視パラメータを領域分割幅で除した値の整数部分と小数部分とに基づいて、それぞれパルス数と可変パルスのパルス幅とを求めているが、これに限られるものではない。例えば、図24に示すように、監視パラメータに応じてパルス数が規定されたマップ(図(A)参照)と、監視パラメータに応じてパルス幅が規定されたマップ(図(B)参照)とを有し、両方のマップを用いて、パルス数と可変パルスのパルス幅とを決定してもよい。
【0170】
パルス生成部475は、パルス信号生成部475aと、波数カウンタ475bと、バーストゲート475cと、ゲート信号生成部475dと、パルス幅信号生成部475eと、パルスゲート475fとを有している。
【0171】
パルス信号生成部475aは、パルス周期が入力され、パルス周期で出力されるパルスの連続波を生成する。パルス信号生成部475aから出力されるパルスの連続波は、波数カウンタ475bとバーストゲート475cとに入力される。
【0172】
波数カウンタ475bには、パルスの連続波に加えて、バースト周期が入力される。波数カウンタ475bは、連続波のパルス数をカウントし、パルスをカウントするごとに出力信号をゲート信号生成部475dと、パルス幅信号生成部475eとへ出力する。このとき、波数カウンタ475bは、バースト周期ごとの1個目のパルスをカウントしたときは、他のパルスをカウントしたときとは異なる出力信号を出力する。
【0173】
ゲート信号生成部475dは、波数カウンタ475bからの出力信号に加えて、パルス数決定部474bからの出力信号が入力されていて、バーストゲート475cを制御するための出力信号を生成して出力する。ゲート信号生成部475dは、バースト周期ごとの1個目のパルスから、パルス数決定部474bの出力信号に応じた個数のパルスがカウントされるまでの間、バーストゲート475cをONにさせる信号を出力する。
【0174】
バーストゲート475cは、入力されたゲート信号生成部475dからの出力信号に応じた期間だけ、パルス信号生成部475aから入力された連続波を出力する。その結果、バーストゲート475cからは、パルス数決定部474bで決定された個数のパルスがバースト周期ごとに出力されることになる。
【0175】
パルス幅信号生成部475eは、波数カウンタ475bからの出力信号に加えて、パルス数決定部474bからの出力信号及びパルス幅換算部474cからの出力信号が入力されていて、パルスゲート475fを制御するための出力信号を生成して出力する。パルス幅信号生成部475eは、バースト周期ごとの最後のパルスが出力されるタイミングを、波数カウンタ475bの出力信号とパルス数決定部474bからの出力信号とから求め、そのタイミングで、パルス幅換算部474cからの出力信号に応じたパルス幅に相当する時間だけパルスゲート475fをONにさせる信号を出力する。
【0176】
パルスゲート475fは、パルス幅信号生成部475eからの出力信号に加えて、バーストゲート475cからの出力信号が入力され、バーストゲート475cからの出力信号のパルス幅を調節して出力する。詳しくは、パルスゲート475fは、バーストゲート475cから入力されたパルス群のうち、パルス幅信号生成部475eからの出力信号に応じたタイミングで通過するパルスのパルス幅を該出力信号に応じたパルス幅に調節する。その結果、パルスゲート475fからは、最後のパルスのパルス幅が調節された、パルス数決定部474bで決定された個数のパルスがバースト周期ごとに出力される。
【0177】
こうして、パルス生成部475からは、図25に示すように、監視パラメータの大きさに応じて、1又は複数の通常パルスとパルス幅が調節された1つの可変パルスとを組み合わせたバースト信号がバースト周期ごとに出力される。このようにして出力されるバースト信号に含まれるパルスのパルス幅の和は、監視パラメータの大きさに比例している。尚、可変パルスは、必ずしも、通常パルスの後に出力される必要はなく、通常パルスの前や、通常パルスの間で出力されてもよい。
【0178】
このように、監視パラメータの大きさに応じてパルス数及びパルス幅を決定することによって、監視パラメータとパルス数及びパルス幅とを同じタイミングで迅速に切り換えることができる。特に、必要な駆動力が小さいときには、消費電力を速やかに低下させることができる。また、監視パラメータの大きさに応じてパルス数を変化させるだけでなく、パルス幅を変更することによって、駆動力を連続的に調節することができる。つまり、パルス数は離散的にしか変更することができないが、パルス幅は連続的に変更することができるため、パルス数とパルス幅とを組み合わせて調節することによって、駆動力を連続的に調節することができる。
【0179】
《発明の実施形態3》
続いて、本発明の実施形態3に係る駆動装置ついて、図26,27を参照しながら説明する。図26は、カメラのレンズ機構300の一部の斜視図であり、図27は、超音波アクチュエータ302の概略的な側面図である。
【0180】
実施形態3は、超音波アクチュエータ302の構成が実施形態1と異なる。そこで、実施形態1と同様の構成については、同様の符号を付して説明を省略する。
【0181】
レンズ機構300は、レンズ枠310と、レンズ枠310に保持されたレンズ311と、レンズ枠310の取付部312に設けられた超音波アクチュエータ302とを備えている。レンズ枠310は、超音波アクチュエータ302により、光軸方向へ駆動される。
【0182】
超音波アクチュエータ302は、振動を発生させるアクチュエータ本体304と、アクチュエータ本体304の一端部に取り付けられたアンカーウェイト305と、アクチュエータ本体4の他端部に取り付けられた駆動シャフト349とを備えている。
【0183】
アクチュエータ本体304は、圧電素子であって、圧電体層341と内部電極層(図示省略)とを交互に積層して構成されている。内部電極層は、第1電極層と第2電極層とを有している。第1電極層と第2電極層とは、圧電体層341と積層された状態において交互に並んでいる。つまり、各圧電体層341は、厚み方向において第1電極層と第2電極層とに挟持されている。圧電体層341は、厚み方向、例えば、第1電極層から第2電極層の方向へ分極されている。つまり、隣り合う圧電体層341,341の間では、分極の向きが厚み方向において逆向きになっている。第1電極層と第2電極層とに電圧を印加することによって、各圧電体層341が厚み方向に伸縮する。このとき、隣り合う圧電体層341,341間で、第1電極層と第2電極層との位置関係が反対になっているが、分極の向きも反対になっている。そのため、第1電極層と第2電極層とに電圧を印加したときに、アクチュエータ本体304において伸びる圧電体層341と縮む圧電体層341とが混在することはなく、アクチュエータ本体304全体として圧電体層341の積層方向に一律に伸び、一律に縮む。
【0184】
アンカーウェイト305は、駆動シャフト349に対して十分大きな質量を有している。アンカーウェイト305は、固定されており、アクチュエータ本体304が伸縮振動を発生させても、動くことはない。すなわち、アクチュエータ本体304の伸縮変位のほとんど全てが駆動シャフト349の変位となる。
【0185】
駆動シャフト349は、その軸線が、アクチュエータ本体304の積層方向、即ち、伸縮方向と一致するようにして、該アクチュエータ本体304に取り付けられている。つまり、駆動シャフト349は、アクチュエータ本体304が伸縮すると、アクチュエータ本体304の伸縮変位に伴って、その軸方向に変位する。駆動シャフト349には、レンズ枠310の取付部312に設けられた摩擦部材313,313を摩擦により保持している。
【0186】
レンズ枠310の取付部312には、一組の摩擦部材313,313が設けられている。摩擦部材313,313は、バネ314,314によって、互いに押し合う方向に付勢されている。各摩擦部材313における、他方の摩擦部材313と対向する面には、断面V字状の溝315が形成されている。駆動シャフト349は、溝315,315に嵌った状態で摩擦部材313,313に挟持されている。このとき、各摩擦部材313は、バネ314により駆動シャフト349へ付勢されており、摩擦部材313と駆動シャフト349との間には摩擦力が作用している。こうして、レンズ枠310は、駆動シャフト349に対して相対移動することなく、該駆動シャフト349に保持された状態となっている。
【0187】
このように構成された超音波アクチュエータ302には、実施形態1と同様の制御部(図示省略)が接続されている。超音波アクチュエータ302は、制御部からの駆動電圧により制御される。駆動信号は、交流信号であって、さらに詳しくは、パルス信号である。実施形態3では、制御部は、超音波アクチュエータ302に印加する駆動電圧のデューティ比(パルス周期(凸状(Highレベル)のパルスと凹状(Lowレベル)のパルスとのパルス幅の合計)に対する凸状パルスのパルス幅の比)を変化させるデューティ制御を行うと共に、該駆動電圧に含まれるパルス数を変化させる波数制御を行う。アクチュエータ本体304に駆動電圧を印加して作動させると、駆動シャフト349がその軸方向へ振動する。このとき、駆動シャフト349には、振動の加速度に応じた慣性力が作用する。慣性力が駆動シャフト349と摩擦部材313,313との間の摩擦力よりも小さいときには、摩擦部材313,313、即ち、レンズ枠310は、駆動シャフト349と共に変位する。一方、加速度が大きくなって慣性力が駆動シャフト349と摩擦部材313,313との間の摩擦力よりも大きくなると、駆動シャフト349が摩擦部材313,313に対して滑って、駆動シャフト349だけが変位する。
【0188】
本実施形態の制御部の基本構成は、図示を省略するが、実施形態1の制御部7と同様である。詳しくは、制御部は、実施形態1と同様に、目標位置設定部と、減算器と、位置制御部と、バースト制御部と、パルス生成部とを備える。それに加えて、制御部は、デューティ比制御部と、増幅部とを有している。
【0189】
本実施形態における位置制御部は、フォーカスレンズ15の目標位置と現在位置の偏差から、パルス信号に与えるデューティ比制御量を算出して、それに応じた出力信号をデューティ比制御部に出力する点で、実施形態1の位置制御部73と異なる。位置制御部は、該偏差から比例項、積分項及び微分項を求め、それらを加算することでデューティ比制御量を算出している。すなわち、位置制御部は、PID制御によってデューティ比制御量を算出している。
【0190】
バースト制御部は、位置制御部からの比例項と積分項との加算値に基づいて、バースト周期中に含まれるパルスの数を決定する。この比例項と積分項との加算値は、パルス信号のデューティ比に関連するパラメータである。そして、バースト制御部は、そのパルス数に関する出力信号をパルス生成部に出力する。
【0191】
デューティ比制御部は、位置制御部からの出力信号に基づいて、パルスのデューティ比を決定する。そして、デューティ比制御部は、そのデューティ比に関する出力信号をパルス生成部に出力する。
【0192】
パルス生成部は、デューティ比制御部からの出力信号に応じたデューティ比のパルスを、バースト制御部からの出力信号に応じた個数だけバースト周期中に含んだバースト信号を連続的に出力する。このパルス生成部から出力されるバースト信号は、増幅部に入力される。
【0193】
増幅部では、入力されたバースト信号を増幅して、パルス信号として超音波アクチュエータ302に印加する。
【0194】
このように、実施形態1の制御部と実施形態3の制御部とでは、実施形態1では2相の駆動電圧を出力するのに対して、実施形態3では単相の駆動電圧を出力する点、および、実施形態1では2相の駆動電圧の位相差を制御するのに対し、実施形態3では単相の駆動電圧のデューティ比を制御する点で異なる。また、実施形態1の変形例や実施形態2及びその変形例において位相差に関連するパラメータを用いて制御を行っている部分については、デューティ比に関連するパラメータを用いて制御を行うことによって、実施形態3に適用することができる。すなわち、実施形態3では、監視パラメータとして、デューティ比に関連するパラメータ(例えば、PID制御の比例項と積分項など)を用いる。
【0195】
続いて、超音波アクチュエータ302の動作について、図28〜30を参照しながら、さらに詳しく説明する。図28は、待機時の状態であって、(A)は駆動信号を、(B)は駆動シャフト349の位置を示す。図29は、駆動時の状態であって、(A)は駆動信号を、(B)は駆動シャフト349の位置を示す。図30は、駆動時における駆動シャフト349とレンズ枠(図示省略)の摩擦部材313の位置の時間変化を示す。本実施形態では、説明の便宜上、駆動信号がHighレベルのときにアクチュエータ本体304が伸び、駆動信号がLowレベルのときにアクチュエータ本体304が縮むものとする。
【0196】
超音波アクチュエータ302の電源がオンされると、図28に示す、待機時の駆動信号がアクチュエータ本体304に印加される。待機時の駆動信号は、デューティ比が50%となっている。このとき、アクチュエータ本体304は、伸びるときも、縮むときも、急峻に変位するため、駆動シャフト349が摩擦部材313,313、即ち、レンズ枠310に対して滑る。その結果、駆動シャフト349だけ進退変位して、レンズ枠310はその位置に留まっている。
【0197】
それに対し、駆動時には、図29に示すような駆動信号がアクチュエータ本体304に印加される。駆動時の駆動信号は、デューティ比が50%からずらされている。例えば、図29では、デューティ比が30%に設定されている。このような駆動信号が印加されると、アクチュエータ本体304は、駆動信号がHighレベルのとき(即ち、伸びるとき)には急峻に変位する一方、駆動信号がLowレベルのとき(即ち、縮むとき)には緩慢に変位する。その結果、図30に示すように、アクチュエータ本体304が伸びるときには、駆動シャフト349と摩擦部材313,313とが滑り、レンズ枠310は移動せず、アクチュエータ本体304が縮むときには、摩擦部材313,313が摩擦力を介して駆動シャフト349と係合した状態となり、レンズ枠310が駆動シャフト349と共に駆動シャフト349の基端側へ変位する。つまり、レンズ枠310は、停止、基端側への変位、停止、基端側への変位、…を繰り返しながら、基端側へ移動していく。
【0198】
尚、以上の説明では、駆動シャフトが軸方向の一方へ変位するときには、摩擦部材313,313との間で滑りが生じ、駆動シャフトが軸方向の他方へ変位するときには、摩擦部材313,313との間で滑りが生じない場合について説明したが、これに限られるものではない。すなわち、駆動シャフトが軸方向の一方へ変位するときも、他方へ変位するときも、摩擦部材313,313との間で滑りが生じる場合がある。そのような場合でも、摩擦部材313,313、即ち、レンズ枠310を移動させることができる。これは、摩擦部材313,313への動摩擦力の作用する時間が、駆動シャフトの軸方向の一方への変位と軸方向の他方への変位とで異なるためである。
【0199】
上記の例では、デューティ比を30%としているが、デューティ比を調整することによってレンズ枠310の速度を調整することができる。また、上記の例では、デューティ比を50%より小さく変更したが、デューティ比を50%よりも大きく変更してもよい。デューティ比を50%よりも大きく変更することによって、レンズ枠310を駆動シャフト349の先端側へ移動させることができる。
【0200】
このように駆動信号のデューティ比を調整することによって、レンズ枠310の移動方向及び移動速度を調整することができる。例えば、デューティ比を50%に近づけることによって、レンズ枠310の移動速度を遅くすることができる一方、デューティ比を50%から遠ざけることによって、レンズ枠310の移動速度を速くすることができる。
【0201】
このデューティ制御では、制御範囲の全域に亘って、駆動電圧の周波数が、アクチュエータ本体304の共振周波数に応じて設定された周波数のままであると共に、駆動電圧の電圧値が、一定の値に維持されている。そのため、小さな駆動力を出力すべくデューティ比を50%に近づけた場合であっても、共振周波数に応じた周波数であって且つ十分な電圧値が維持された駆動電圧が印加されるため、所望の駆動力を適切に出力することができる。しかしながら、駆動力が小さいにもかかわらず、駆動電圧の電圧値は一定の値に維持されているため、駆動力の割りに消費電力が大きくなってしまう。
【0202】
そこで、制御部は、デューティ制御に波数制御を組み合わせて駆動力を制御している。つまり、制御部は、駆動電圧のデューティ制御をしつつ、波数制御をすることによって、消費電力を低減している。特に、必要な駆動力が小さいときには、駆動電圧に含まれるパルス数を減らしても、アクチュエータ本体304を適切に振動させることができる。ただし、バースト周期中に含まれるパルス数を減らしていくと、パルス数が零(即ち、バースト率が零)となる前に駆動力が零となってしまう。そのため、波数制御においては、バースト周期中に含まれる最小のパルス数は、レンズ枠310等の駆動対象を駆動できる最小の値(本実施形態では、3個)に設定さている。本実施形態では、制御部は、必要な駆動力が比較的大きな領域では、連続波の駆動信号を用いたデューティ制御によって駆動力を制御し、必要な駆動力が比較的小さな領域では、波数制御によりパルス数を調節しつつデューティ制御をすることによって駆動力を制御している。
【0203】
具体的には、制御部は、待機時には、図31に示すようなパルス信号をアクチュエータ本体304に印加する。待機時は、摩擦部材313,313を駆動する必要はないが、駆動状態に即座に移行できるように、アクチュエータ本体304に共振振動を発生させておく必要がある。待機時のパルス信号では、バースト周期をパルス6個分に設定し、バースト周期中の前半に3個のパルスを出力し、後半のパルス3個分の期間はパルスを出力しない休止期間としている。休止期間中は、アクチュエータ本体304の圧電体層341の変位が中立位置となるような電圧を印加している。パルス出力中は、駆動シャフト349は、パルスに応じた振動を発生させる。休止期間になると、駆動シャフト349の振動は減衰していく。このとき、駆動シャフト349の振動は小さくなるものの、駆動シャフト349と摩擦部材313,313との間では滑りが生じており、摩擦部材313,313は、ほとんど動かない。仮に、摩擦部材313,313が摩擦力を介して駆動シャフト349と共に振動したとしても、そのような場合には駆動シャフト349の振動もかなり減衰しているため、振幅が小さく、移動量は小さい。この休止期間は、アクチュエータ本体304の共振振動が減衰しきらない期間に設定されている。
【0204】
そして、制御部は、駆動時には、図32に示すようなパルス信号をアクチュエータ本体304に印加する。このパルス信号では、デューティ比が30%に設定されている。さらに、このパルス信号は、バースト周期中の前半に3個のパルスを出力し、後半にパルス3個分の休止期間を設けている。パルスの出力中は、駆動シャフト349は、パルスがHighレベルのときに急峻に変位する一方、パルスがLowレベルのときに緩慢に変位する。その結果、摩擦部材313,313が、駆動シャフト349の基端側へ移動する。そして、休止期間中は、アクチュエータ本体304の振動が減衰しつつ、その振動が基端側と先端側とで対称になっていく。その結果、摩擦部材313,313と駆動シャフト349とは、軸方向の一方へも他方へも均等に滑るようになり、摩擦部材313,313はほとんど動かなくなる。ただし、その場合でも、アクチュエータ本体304の共振振動は、維持されている。その後、次のパルスが出力されると、アクチュエータ本体304の急峻な振動と緩慢な振動とが再開され、摩擦部材313,313が移動を再開する。
【0205】
尚、休止期間においては、図33,34に示すように、実施形態1と同様の狭小パルスを出力してもよい。狭小パルスは、HighレベルとLowレベルの両方に出力される。さらには、狭小パルスは、通常時のパルス出力期間のうち略真ん中のタイミングで出力される。その結果、休止期間中における、狭小パルスの周期は、待機時であっても、駆動時であっても、パルス周期(デューティ比50%のときの凸状のパルス及び凹状のパルスの出力周期)と同じになる。こうして、休止期間においても、パルスを全く出力しないのではなく、狭小パルスを出力することによって、アクチュエータ本体304に僅かではあっても駆動電圧を印加することができる。その結果、アクチュエータ本体304の共振振動を維持させることができる。狭小パルスを出力しない場合と比較しても(図31,32参照)、休止期間において、駆動シャフト349の振動があまり減衰していない。このように、休止期間に狭小パルスを出力する構成であっても、狭小パルスはパルス幅が狭いため、通常パルスを出力し続ける連続波と比較して、消費電力を抑制することができる。また、休止期間に狭小パルスを出力しない構成と比較して、バースト周期を長くすることができるため、場合によっては、消費電力を抑制することができる。
【0206】
また、本実施形態においても、図35に示すように、実施形態1と同様の始動制御が行われる。つまり、制御部は、アクチュエータ本体304の始動後、所定の待機時間が経過するまでの間は、デューティ比が50%のパルス信号を出力する。このとき、波数制御が行われており、バースト周期における後半には休止期間が設けられている。すなわち、待機時間中は、3個のパルスの出力と休止期間とが繰り返され、アクチュエータ本体304に共振振動が励起される。このとき、アクチュエータ本体304は、駆動シャフト349の軸方向の両側へ均等に振動しているため、摩擦部材313,313をほとんど移動しない。そして、待機時間が経過すると、制御部は、デューティ比を50%からずらしたパルス信号をアクチュエータ本体304に出力する。その結果、アクチュエータ本体304には、駆動シャフト349の軸方向の一方と他方とで移動速度が異なる振動が生じ、摩擦部材313,313がその非対称性に応じて移動していく。ここで、始動時の駆動力が小さい場合には、波数制御が実行される。図35では、待機時間経過後のパルス信号にも休止期間が設けられている。尚、始動制御は、必ずしもパルス数を減らした状態で行う必要はなく、連続波であるパルス信号を用いて行ってもよい。さらには、待機期間中だけ(即ち、デューティ比50%のパルス信号を出力するときだけ)、休止期間を設けてもよい。
【0207】
《その他の実施形態》
本発明は、前記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0208】
前記超音波アクチュエータ2の構成は、前記の構成に限られるものではない。例えば、前記実施形態では、アクチュエータ本体4の長辺側面に駆動子49,49が設けられ、アクチュエータ本体4の伸縮振動の方向が駆動力が出力される方向と一致し、屈曲振動の方向が駆動子49,49を当接部材81aに押圧する方向と一致するように構成しているが、これに限られるものではない。アクチュエータ本体4の短辺側面に駆動子49を設け、アクチュエータ本体4の伸縮振動の方向が駆動子49,49を当接部材81aに押圧する方向と一致し、屈曲振動の方向が駆動力が出力される方向と一致するように構成してもよい。
【0209】
また、前記実施形態では、駆動子49,49が固定側の部材である当接部材81aに当接する状態で、超音波アクチュエータ2が可動側の部材である可動ケース82に取り付けられ、超音波アクチュエータ2自体も移動するように構成されているが、これに限られるものではない。つまり、駆動子49,49が可動側の部材に当接する状態で、超音波アクチュエータ2が固定側の部材に取り付けられ、超音波アクチュエータ2自体を移動しないように構成してもよい。
【0210】
さらに、前記実施形態では、アクチュエータ本体4に1次モードの伸縮振動と2次モードの屈曲振動とを発生させているが、それ以外のモード又は振動を発生させてもよい。
【0211】
さらにまた、前記実施形態では、平面視長方形状の圧電体層41の主面を、前記のように4分割して、対角線方向に位置する対の電極ごとに異なる駆動電圧を印加しているが、これに限られるものではない。圧電体層41に設けられた4つの電極に別々に駆動電圧を印加してもよいし、電極の配置を異ならせてもよい。その場合は、電極に印加する複数の駆動電圧の位相差も前記の構成とは異なる。つまり、前記の構成では、平面視長方形状の圧電体層41の主面を、前記のように4分割して対角線方向に位置する対の電極ごとに異なる駆動電圧を印加しているため、2つの駆動電圧の位相差を90°としたときに、駆動力が最大となり、位相差を0°又は180°としたときに駆動力が最小となったが、圧電体層41の形状、電極の配置等によっては、駆動力が最大又は最小となる位相差は異なる。
【0212】
また、前記実施形態では、駆動電圧の位相制御又はデューティ制御と、波数制御とを組み合わせて駆動力を制御しているが、これは駆動電圧の周波数制御や電圧値制御等を排除するものではない。つまり、位相制御又はデューティ制御と、波数制御とを組み合わせて駆動力を制御している限りにおいては、それに加えて、駆動電圧の周波数制御や電圧値制御を行ってもよい。
【0213】
さらに、前記実施形態では、可動側の部材(即ち、可動ケース82)が直進運動をするように構成されているが、可動側の部材が回転運動する構成であってもよい。すなわち、駆動子49,49を円盤体の側周面に当接させて、円盤体を可動側の部材として回動させる、又は、所定の回転軸周りに回動可能な可動側の部材に超音波アクチュエータ2が取り付けられ、超音波アクチュエータ2が可動側の部材と共に回動する構成であってもよい。
【0214】
また、前記実施形態では、アクチュエータ本体4が圧電素子で構成されているが、これに限られるものではない。例えば、金属製の共振器を形成し、圧電素子を該共振器に取り付けて、圧電素子を振動させることで、共振器全体を振動させる構成であってもよい。この場合、共振器がアクチュエータ本体を構成する。
【0215】
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0216】
以上説明したように、本発明は、振動型アクチュエータを備えた駆動装置について有用である。
【符号の説明】
【0217】
2,302 超音波アクチュエータ(振動型アクチュエータ)
4,304 アクチュエータ本体
7 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子を用いて構成されたアクチュエータ本体を有し、該アクチュエータ本体の振動によって駆動力を出力する振動型アクチュエータと、
前記圧電素子に複数又は単相のパルス信号を印加して前記アクチュエータ本体に振動を発生させる制御部とを備え、
前記制御部は、前記複数のパルス信号の位相差を調節することで駆動力を制御する位相制御又は前記単相のパルス信号のデューティ比を調整することで駆動力を制御するデューティ制御と、前記各交流電圧において所定のバースト周期中に含まれるパルス数を調節することで駆動力を制御する波数制御とを組み合わせて行う駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動装置において、
前記制御部は、前記波数制御において、前記位相制御における前記位相差に関連するパラメータ又は前記デューティ制御における前記デューティ比に関連するパラメータに基づいて、前記バースト周期中に含まれるパルス数を調節する駆動装置。
【請求項3】
請求項2に記載の駆動装置において、
前記制御部は、
前記パラメータが所定の第1閾値よりも大きい状態が所定の第1継続時間よりも長く継続したときは前記バースト周期中に含まれるパルス数を1つ増やす一方、
前記パラメータが該第1閾値よりも小さな第2閾値よりも小さい状態が所定の第2継続時間よりも長く継続したときは前記バースト周期中に含まれるパルス数を1つ減らす駆動装置。
【請求項4】
請求項2に記載の駆動装置において、
前記制御部は、
前記パラメータが所定の第1閾値よりも大きい状態が所定の第1継続時間よりも長く継続したときは、前記バースト周期中に含まれるパルス数を暫定的に1つ増やした後、所定の第1保持時間経過後に該パルス数を元に戻し、再び、該パラメータが該第1閾値よりも大きい状態が該第1継続時間よりも長く継続したときは該パルス数を正式に1つ増やす一方、
前記パラメータが該第1閾値よりも小さな第2閾値よりも小さい状態が所定の第2継続時間よりも長く継続したときは、前記バースト周期中に含まれるパルス数を暫定的に1つ減らした後、所定の第2保持時間経過後に該パルス数を元に戻し、再び、該パラメータが該第2閾値よりも小さい状態が該第2継続時間よりも長く継続したときは該パルス数を正式に1つ減らす駆動装置。
【請求項5】
請求項2に記載の駆動装置において、
前記制御部は、前記パラメータをその大きさに基づいて複数の領域に分割し、該領域ごとに前記バースト周期中に含まれるパルス数を割り当てる駆動装置。
【請求項6】
請求項5に記載の駆動装置において、
前記制御部は、前記パラメータが減少しているときには、各パルス数が割り当てられた前記領域の下限値を、該パラメータが増大しているときの下限値よりも小さく設定している駆動装置。
【請求項7】
請求項2に記載の駆動装置において、
前記制御部は、前記パラメータの大きさに応じて、前記バースト周期中に含まれるパルス数を調節すると共に該バースト周期中に含まれる少なくとも1つのパルスのパルス幅を調節する駆動装置。
【請求項8】
請求項7に記載の駆動装置において、
前記制御部は、前記バースト周期中に含まれるパルスのパルス幅の和が前記パラメータの大きさに比例するように、前記バースト周期中に含まれるパルス数と該パルスのパルス幅を調節する駆動装置。
【請求項9】
請求項2乃至8の1つに記載の駆動装置において、
前記制御部は、前記振動型アクチュエータにより駆動される駆動対象の実運転状態と目標運転状態との偏差に基づくPID制御によって前記位相差の制御量又は前記デューティ比の制御量を求めており、
前記波数制御における前記パラメータは、前記PID制御における積分項及び比例項の少なくとも一方である駆動装置。
【請求項10】
請求項2乃至8の1つに記載の駆動装置において、
前記制御部は、前記振動型アクチュエータにより駆動される駆動対象の実運転状態と目標運転状態との偏差に基づくフィードバック制御によって前記位相差の制御量又は前記デューティ比の制御量を求めると共に、該駆動対象及び該振動型アクチュエータのモデルに基づいて設計されたオブザーバを有し、該オブザーバからの補正量によって該位相差の制御量又は該デューティ比の制御量を補正しており、
前記波数制御における前記パラメータは、前記オブザーバからの補正量である駆動装置。
【請求項11】
請求項1に記載の駆動装置において、
前記制御部は、前記位相制御を行うものであって、前記アクチュエータ本体の振動を開始させるときには、所定の待機時間の間、前記複数のパルス信号の位相差を制御して、該アクチュエータ本体に、前記振動型アクチュエータによって駆動される駆動対象の駆動方向への振動成分を含まない振動だけを行わせ、該待機時間経過後に、該アクチュエータ本体に該駆動方向への振動成分を含む振動を行わせる駆動装置。
【請求項12】
請求項1に記載の駆動装置において、
前記制御部は、前記デューティ制御を行うものであって、前記アクチュエータ本体の振動を開始させるときには、所定の待機時間の間、前記パルス信号のデューティ比を50%に制御して、前記振動型アクチュエータによって駆動される駆動対象を駆動方向へ移動させない一方、該待機時間経過後に、前記パルス信号のデューティ比を50%からずらして該駆動対象を該駆動方向へ移動させる駆動装置。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の駆動装置において、
前記制御部は、前記待機時間の間は、前記バースト周期中に含まれるパルス数を前記アクチュエータ本体の振動を維持できる最小値に設定する駆動装置。
【請求項14】
請求項1乃至13の何れか1つに記載の駆動装置において、
前記波数制御において、前記バースト周期中に含まれるパルス信号の最小値又は前記バースト周期中においてパルス信号を出力しない休止期間の最大値は、前記アクチュエータ本体の振動を維持できる値に設定されている駆動装置。
【請求項15】
請求項1乃至14の何れか1つに記載の駆動装置において、
前記制御部は、前記振動型アクチュエータによって駆動される駆動対象を減速させるときには、前記バースト周期中に含まれるパルス数を該駆動対象を駆動できる最小値よりも小さな値に調節する駆動装置。
【請求項16】
請求項1乃至15の何れか1つに記載の駆動装置において、
前記制御部は、前記波数制御において、前記バースト周期中に含まれる、所定のパルス幅を有する通常波形のパルスのパルス数を調節すると共に、該バースト周期のうち該通常波形のパルスを出力しない休止期間においては、該通常波形のパルスよりもパルス幅が狭い狭小パルスを出力する駆動装置。
【請求項17】
請求項16に記載の駆動装置において、
前記制御部は、前記狭小パルスを前記休止期間の終盤にだけ出力する駆動装置。
【請求項18】
レンズと、
前記レンズを駆動する、請求項1乃至16の何れか1つに記載の駆動装置とを備えたレンズ鏡筒。
【請求項19】
レンズと、
前記レンズを駆動する、請求項1乃至16の何れか1つに記載の駆動装置とを備えたカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2010−233443(P2010−233443A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16565(P2010−16565)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】