説明

駆動装置、画像取得装置、及び電子機器

【課題】付加的な回路素子を含めて駆動回路を構成する場合であっても、意図した駆動装置の動作特性を簡易に実現すること。
【解決手段】ピエゾ素子50の駆動に基づいて筐体20に対してレンズホルダ31を変位させる駆動装置であって、筐体20には、ピエゾ素子50の駆動に応じてレンズホルダ31が変位可能な状態でレンズホルダ31が取り付けられ、かつピエゾ素子50が有する一組の電極端子50a、50bを個別に外部へ接続する一組の引出端子81、82が設けられており、一組の電極端子50a、50bと一組の引出端子81、82間に形成される一組の配線の少なくとも一方には、ピエゾ素子50に対して駆動電圧波形を供給する回路に含まれる回路素子(コイルチップ95)が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は駆動装置、画像取得装置、及び電子機器に関する。本発明は、特に、圧電素子の駆動に基づいて移動対象物を変位させる駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラは、多種多様な製品に組み込まれている。携帯電話、ノートパソコン等といった小型な電子機器にカメラを実装する場合、カメラ自体の小型化も強く要求される。
【0003】
カメラ内にはオートフォーカスレンズが組み込まれる場合がある。この場合、レンズを変位させるアクチュエータの小型化が強く望まれている。小型なアクチュエータとしては、圧電素子を駆動することで移動対象物を変位させるものが知られている。
【0004】
特許文献1には、固定側部材から圧電素子が離間した状態で、圧電素子および駆動軸が移動対象物に対して同調して移動する駆動装置で開示されている。これによって、固定側部材の共振を考慮せずに、圧電素子に印加される駆動波形の周波数を簡易に設定することが可能になる。
【0005】
特許文献2には、突入電流を少なくして、消費電力を低く抑えるとともに、固着状態から容易に脱出させることができるように、高い電圧を印加可能な圧電アクチュエータが開示されている。特許文献2に開示されている駆動回路では、圧電素子に対して誘導性素子が直列に接続されている。
【0006】
特許文献3には、容量性負荷に電圧を印加して駆動する際の突入電流が小さくなる駆動装置が開示されている。この駆動装置は、負荷性容量の両端に誘導性素子が接続される放電回路を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許4372206号
【特許文献2】特開2005−237144号公報
【特許文献3】特開2003−153560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、カメラモジュールの購入者にてピエゾ素子の駆動回路を組み込む場合、カメラモジュールの供給者が提示するカメラモジュールの動作特性を調整することが容易ではない場合がある。カメラモジュールの動作特性は、カメラモジュールの筐体内に配置されているピエゾ素子を駆動する駆動回路の動作特性にも当然依存し、ピエゾ素子を駆動する駆動回路自体の動作特性とカメラモジュール自体の動作特性とを切り離して考えることはできないためである。
【0009】
例えば、インダクタ等の付加的な回路素子を駆動回路内に接続するとき、選定するインダクタによって、カメラモジュールの供給者が提示するカメラモジュールの動作特性を購入者側にて実現することが容易ではない場合もある。インダクタの種類も多数あるため、どのインダクタを採用すれば意図したカメラモジュールの動作特性を確保することができるかは、試行錯誤の動作検証を通じてでなければ分からないことも多い。
【0010】
上述の説明から明らかなように、付加的な回路素子を含めて駆動回路を構成する場合であっても、意図した駆動装置の動作特性を簡易に実現することが強く望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る駆動装置は、圧電素子の駆動に基づいて固定側部材に対して移動対象物を変位させる駆動装置であって、前記固定側部材には、前記圧電素子の駆動に応じて前記移動対象物が変位可能な状態で前記移動対象物が取り付けられ、かつ前記圧電素子が有する一組の電極端子を個別に外部へ接続する一組の引出端子が設けられており、一組の前記電極端子と一組の前記引出端子間に形成される一組の配線の少なくとも一方には、前記圧電素子に対して駆動電圧波形を供給する回路に含まれる回路素子が含まれる。この構成を採用することによって、付加的な回路素子を含めて駆動回路を構成する場合であっても、意図した駆動装置の動作特性を簡易に実現することが可能になる。
【0012】
前記回路素子は、チップ状又は配線パターンから成るコイルである、と良い。
【0013】
前記コイルを具備する実装基板を更に備える、と良い。
【0014】
前記固定側部材は、前記移動対象物を外囲する外囲器を含み、前記外囲器は、一組の前記引出端子を備え、前記実装基板は、前記外囲器の内側に配置されている、と良い。
【0015】
前記実装基板は、一組の前記引出端子に接続される一組の接続端子を備え、前記外囲器内に前記実装基板が配置されたとき、一組の前記引出端子と一組の前記接続端子は、互いに対向配置される、と良い。
【0016】
前記外囲器は、複数の側壁を備える多角形状の箱状部材であり、前記実装基板は、前記外囲器の第1側壁に沿って延在する第1基板部、および前記外囲器の第2側壁に沿って延在する第2基板部を備え、前記第1基板部及び前記第2基板部には、前記配線パターンが形成されている、と良い。
【0017】
前記圧電素子に対して駆動電圧波形を供給する前記回路としての駆動電圧生成回路を更に備える、と良い。
【0018】
前記駆動電圧生成回路は、前記圧電素子の一方側電極から駆動電圧を印加する第1駆動回路と、前記圧電素子の他方側から駆動電圧を印加する第2駆動回路と、を備え、前記第1駆動回路と前記第2駆動回路とを切り替えることで前記圧電素子を伸縮動作させる交流の駆動電圧を生成するものであって、前記第1駆動回路および前記第2駆動回路は、それぞれ前記回路素子として誘導性素子を備え、
【0019】
前記駆動電圧波形の周波数は、前記第1および第2駆動回路に含まれるスイッチ抵抗、前記圧電素子の容量、および、前記誘導性素子のインダクタンス、の相互作用によって利得がゼロdBより大きくなる周波数レンジから選定される、と良い。
【0020】
前記駆動電圧波形の周波数は、前記第1および第2駆動回路に含まれるスイッチ抵抗、前記圧電素子の容量、および、前記誘導性素子のインダクタンス、の相互作用によって利得が2dBより大きくなる周波数レンジから選定される、と良い。
【0021】
前記駆動電圧波形の周波数は、前記第1および第2駆動回路に含まれるスイッチ抵抗、前記圧電素子の容量、および、前記誘導性素子のインダクタンス、の相互作用によって利得がゼロより大きくなる周波数レンジであって、かつ、共振点の周波数の前後10%は除外した周波数レンジから選定される、と良い。
【0022】
前記駆動電圧波形の周波数は、前記第1および第2駆動回路に含まれるスイッチ抵抗、前記圧電素子の容量、および、前記誘導性素子のインダクタンス、の相互作用によって利得がゼロより大きくなる周波数レンジであって、かつ、共振点の周波数より小さい周波数レンジから選定される、と良い。
【0023】
本発明に係る駆動装置は、一組の電極端子を有する圧電素子と、前記圧電素子の駆動に応じて前記圧電素子から伝わる振動を受ける駆動軸と、前記圧電素子の駆動に応じて変位する移動対象物と、前記圧電素子の駆動に応じて前記移動対象物が変位可能な状態で前記移動対象物が取り付けられ、かつ一組の前記電極端子を個別に外部へ接続する一組の引出端子を備える固定側部材と、前記圧電素子に対して駆動電圧波形を供給する回路内に含まれ、かつ一組の前記電極端子と一組の前記引出端子間に形成される一組の配線の一方に含まれる第1回路素子と、を備える。
【0024】
前記圧電素子に対して駆動電圧波形を供給する前記回路内に含まれ、かつ一組の前記電極端子と一組の前記引出端子間に形成される一組の前記配線の他方に含まれる第2回路素子を更に備える、と良い。
【0025】
前記第1及び第2回路素子は、チップ状又は配線パターンから成るコイルである、と良い。
【0026】
前記コイルを具備する実装基板を更に備える、と良い。
【0027】
前記固定側部材は、前記移動対象物を外囲する外囲器を含み、前記外囲器は、一組の前記引出端子を備え、前記実装基板は、前記外囲器の内側に配置されている、と良い。前記移動対象物は、レンズを具備するレンズ保持体を含む、と良い。
【0028】
本発明に係る画像取得装置は、上記した駆動装置と、前記レンズを介して入力する像を撮像する撮像素子と、を備える。本発明に係る電子機器は、上記した画像取得装置を備える。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、付加的な回路素子を含めて駆動回路を構成する場合であっても、意図した駆動装置の動作特性を簡易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるカメラモジュールの概略的な分解斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる構成部品の概略的な斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかるカメラモジュールの概略的な斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかるレンズユニットの概略的な斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態にかかるレンズユニットの概略的な断面構成を示す模式図である。
【図6】本発明の第1実施形態にかかるコイル実装基板の配置前のカメラモジュールの概略的な部分斜視図である。
【図7】本発明の第1実施形態にかかるコイル実装基板の配置後のカメラモジュールの概略的な部分斜視図である。
【図8】本発明の第1実施形態にかかるカメラモジュールの概略的な部分上面図である。
【図9】本発明の第1実施形態にかかるカメラモジュールの概略的な部分上面図である。
【図10】本発明の第1実施形態にかかるカメラモジュールの概略的な断面構成を示す模式図である。
【図11】本発明の第1実施形態にかかる端子板の取り付け方法を示す概略的な模式図である。
【図12】本発明の第1実施形態にかかる端子板の取り付け方法を示す概略的な模式図である。
【図13】本発明の第1実施形態にかかる筐体の概略的な斜視図である。
【図14】本発明の第1実施形態にかかるカメラモジュールの概略的な断面模式図である。
【図15】本発明の第1実施形態にかかる筐体内の配線関係を示す説明図である。
【図16】本発明の第1実施形態にかかる駆動回路の回路図である。
【図17】本発明の第1実施形態にかかる駆動回路の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図18】本発明の第1実施形態にかかる駆動回路の回路図である。
【図19】本発明の第1実施形態にかかる駆動回路の回路図である。
【図20】本発明の第1実施形態にかかる駆動電圧波形とレンズホルダの変位との関係を示す説明図である。
【図21】本発明の第1実施形態にかかるピエゾ素子の伸縮とレンズホルダの変位との関係を示す説明図である。
【図22】本発明の第1実施形態にかかる第1及び第2駆動回路それぞれの等価回路図である。
【図23】本発明の第1実施形態にかかる駆動回路の回路動作のシミュレーション結果を示す図である。
【図24】図23において利得が共振点ピークに向けて上昇していく途中の領域を抜き出した図である。
【図25】本発明の第1実施形態にかかる駆動回路の回路動作のシミュレーション結果を示す図である。
【図26】本発明の第1実施形態にかかる駆動回路の回路動作のシミュレーション結果を示す図である。
【図27】駆動信号の高調波成分を抑圧できることを説明するための図である。
【図28】電源ラインノイズがのってしまった駆動電圧の例を示す図である。
【図29】フィルタ効果によって電源ラインノイズを抑圧した駆動電圧の例を示す図である。
【図30】本発明の第1実施形態の駆動回路の第1変形例に係る回路図である。
【図31】本発明の第1実施形態の駆動回路の第2変形例に係る回路図である。
【図32】第2変形例に係る回路の動作を説明するための説明図である。
【図33】第2変形例に係る回路の動作を説明するための説明図である。
【図34】本発明の第1実施形態にかかる携帯電話の概略的な模式図である。
【図35】本発明の第1実施形態にかかるシステム構成を示すブロック図である。
【図36】本発明の第2実施形態にかかるカメラモジュールの概略的な分解斜視図である。
【図37】本発明の第2実施形態にかかるコイル実装基板の配置前のカメラモジュールの概略的な部分斜視図である。
【図38】本発明の第2実施形態にかかるコイル実装基板の配置後のカメラモジュールの概略的な部分斜視図である。
【図39】本発明の第2実施形態にかかるコイル実装基板の概略的な斜視図である。
【図40】本発明の第2実施形態にかかるコイル実装基板上に形成された配線パターンを示す模式図である。
【図41】本発明の第2実施形態の変形例に係るコイル実装基板である。
【図42】本発明の第3実施形態にかかるカメラモジュールの概略的な分解斜視図である。
【図43】本発明の第3実施形態にかかるコイル実装基板の配置前のカメラモジュールの概略的な部分斜視図である。
【図44】本発明の第3実施形態にかかるコイル実装基板の配置後のカメラモジュールの概略的な部分斜視図である。
【図45】本発明の第3実施形態にかかるコイル実装基板の概略的な斜視図である。
【図46】本発明の第3実施形態の変形例に係るコイル実装基板である。
【図47】本発明の第4実施形態に係るカメラモジュールの概略的な構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。なお、各実施の形態は、説明の便宜上、簡略化されている。図面は簡略的なものであるから、図面の記載を根拠として本発明の技術的範囲を狭く解釈してはならない。図面は、もっぱら技術的事項の説明のためのものであり、図面に示された要素の正確な大きさ等は反映していない。同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略するものとする。上下左右といった方向を示す言葉は、図面を正面視した場合を前提として用いるものとする。各実施形態は、相互に完全に独立したものではなく、組み合わせをすることが可能である。また、各実施形態の組み合わせに基づく効果も主張可能なものとする。
【0032】
〔第1実施形態〕
以下、図1乃至図35を参照して本発明の第1実施形態について説明する。図1は、カメラモジュールの概略的な分解斜視図である。図2は、配線基板等の概略的な斜視図である。図3は、カメラモジュールの概略的な斜視図である。図4は、レンズユニットの概略的な斜視図である。図5は、レンズユニットの概略的な断面構成を示す模式図である。図6は、コイル実装基板の配置前のカメラモジュールの概略的な部分斜視図である。図7は、コイル実装基板の配置後のカメラモジュールの概略的な部分斜視図である。図8は、カメラモジュールの概略的な部分上面図である。図9は、カメラモジュールの概略的な部分上面図である。図10は、カメラモジュールの概略的な断面模式図である。図11及び図12は、端子板の取付方法を示す概略的な模式図である。図13は、筐体の概略的な斜視図である。図14は、カメラモジュールの概略的な断面模式図である。図15は、筐体内の配線関係を示す説明図である。図16は、駆動回路の回路図である。図17は、駆動回路の動作を説明するためのタイミングチャートである。図18及び図19は、駆動回路の回路図である。図20は、駆動電圧波形とレンズホルダの変位との関係を示す説明図である。図21は、ピエゾ素子の伸縮とレンズホルダの変位との関係を示す説明図である。図22は、駆動回路に含まれる第1及び第2駆動回路それぞれの等価回路図である。図23は、駆動回路の回路動作のシミュレーション結果を示す図である。図24は、図23において利得が共振点ピークに向けて上昇していく途中の領域を抜き出した図である。図25は、駆動回路の回路動作のシミュレーション結果を示す図である。図26は、駆動回路の回路動作のシミュレーション結果を示す図である。図27は、駆動信号の高調波成分を抑圧できることを説明するための図である。図28は、電源ラインノイズがのってしまった駆動電圧の例を示す図である。図29は、フィルタ効果によって電源ラインノイズを抑圧した駆動電圧の例を示す図である。図30は、駆動回路の第1変形例に係る回路図である。図31は、駆動回路の第2変形例に係る回路図である。図32は、第2変形例に係る回路の動作を説明するための説明図である。図33は、第2変形例に係る回路の動作を説明するための説明図である。図34は、携帯電話の概略的な模式図である。図35は、システム構成を示すブロック図である。
【0033】
図1乃至図4に示すように、カメラモジュール(画像取得装置)100は、配線基板10、イメージセンサ(撮像素子)12、透明基板13、筐体(外囲器)20、レンズユニット(レンズ部品)30、蓋60、及びコイル実装基板90を有する。なお、筐体20には、引出端子(接続端子、端子板、端子部、電極端子)81、82が取り付けられている。イメージセンサ12は、撮像領域(画素配置領域)12aを有する。撮像領域12aには、画素がマトリクス状に配置されている。
【0034】
カメラモジュール100は、レンズユニット30が保持するレンズを介して物体側から到来する光束をイメージセンサ12にて受けて撮像する。カメラモジュール100は、オートフォーカス機能を具備し、該カメラモジュール100にはレンズ駆動装置が内蔵されている。
【0035】
図1に示すように、配線基板10上には、イメージセンサ12、透明基板13、筐体20、コイル実装基板90、レンズユニット30、及び蓋60が配置される。筐体20は、移動対象物であるレンズユニット30からみて移動しない固定側部材として機能する。コイル実装基板90、蓋60、イメージセンサ12、透明基板13、及び配線基板10も、同様に、固定側部材として機能する。
【0036】
配線基板10の一端には筐体20が配置され、配線基板10の他端にはコネクタ10pが配置される(図2参照)。配線基板10は、可撓性を有するシート状の配線基板(フレキシブル配線基板)である。配線基板10は、イメージセンサ12に入力する制御信号、及びイメージセンサ12から出力されるビデオ信号の伝送路として機能する。配線基板10は、ピエゾ素子50に入力する駆動電圧の伝送路として機能する。
【0037】
配線基板10の上面には、引出端子81、82に対応して、凹部11a、11bが設けられている。配線基板10に対して筐体20を実装するとき、凹部11aには引出端子81が載置され、凹部11bには引出端子82が載置される。例えば、凹部11a、11bに配線を施しておくことで、配線基板10に対する筐体20の実装に応じて、引出端子81、82と配線基板10内の配線間の電気的な接続を確保することができる。その後、半田付け等によって引出端子81、82と配線基板10間を電気的に接続させると良い。
【0038】
透明基板13は、入力光に対して実質的に透明な板状部材である。透明基板13の上面視形状は方形である。透明基板13の背面には、イメージセンサ12がバンプ接続している。透明基板13の背面上に形成された配線パターンを介して、イメージセンサ12と配線基板10とが電気的に接続される。具体的には、透明基板13の背面上に、イメージセンサ12のパッド群に対してバンプ接続される第1パッド群、配線基板10のパッド群に対してバンプ接続される第2パッド群、および第1パッド群に含まれる各パッドと第2パッド群に含まれる各パッド間をそれぞれ接続する配線群が形成されているものとする。この場合、イメージセンサ12のパッド群は、複数のバンプを介して、透明基板13の背面に設けられた第1パッド群に接続される。配線基板10の設けられているパッド群は、複数のバンプを介して、透明基板13の背面に設けられた第2パッド群に接続される。
【0039】
イメージセンサ12は、CCD(Charge Coupled Device)センサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサといった一般的な固体イメージセンサである。イメージセンサ12の撮像領域12aには、XZ平面にてマトリクス状に配置された複数の画素を有する。各画素は、光電変換によって、入力光の光量に応じた電荷を蓄積する。各画素に蓄積された電荷は、転送制御によって各画素から読み出されて、後続の回路に供給される。なお、図2に示すように、イメージセンサ12のサイズは、透明基板13に比べて十分に小さく、透明基板13に対してイメージセンサ12を貼り合せることに適している。
【0040】
筐体20は、配線基板10上に実装される。筐体20の下端面には、複数の凸部が設けられている。これに対応して、配線基板10には、複数の凹部が設けられている。凸部と凹部間の嵌めあいによって、筐体20は配線基板10上に好適に位置決め固定される。
【0041】
筐体20は、イメージセンサ12及び透明基板13を下部空間(下部収納室)で収納し、コイル実装基板90及びレンズユニット30を上部空間(上部収納室)で収納する。筐体20の採用により、カメラ機能のモジュール化を図ることができる。筐体20の下端面は、黒色の接着剤を介して配線基板10に固定されている。これによって、筐体20の内部に外来光が侵入することを抑制することができる。なお、筐体20は、例えば、黒色樹脂の成型により製造される。好適には、耐熱性・摺動性が良い黒色樹脂がよく、チタン酸カリウム繊維と樹脂との複合材が好ましい。
【0042】
蓋60は、レンズの光軸に対応する位置に開口を有する平板状部材である。例えば、蓋60は、黒色樹脂の成型により製造される。筐体20に対して蓋60を取り付けることによって、レンズユニット30は筐体20内に閉じ込められる。蓋60は、好適には、ネジによって筐体20に取り付けられる。蓋60を筐体20に対して接着固定するのではなく、ネジで固定することによって、筐体20に対する蓋60の着脱が可能になる。これによって、動作テストで不良と判定されたカメラモジュール100の不良原因をテスト後に取り除くこと等が可能になる。例えば、イメージセンサ12の撮像領域上に入り込んだゴミを動作テスト後に取り除くことでカメラモジュールの歩留まりを向上させることができる。なお、蓋60は、例えば、樹脂がモールド成形されて製造される。筐体20に対して蓋60を接着固定しても良い。
【0043】
図4に示すように、レンズユニット30は、レンズホルダ(レンズ保持体)31、ピエゾ素子(圧電素子、振動素子、振動源)50、伝達軸(駆動軸、軸体)51、及び軸保持部40を有する。
【0044】
レンズホルダ31は、円筒状部材であり、レンズOL1〜OL3を保持している(図14参照)。レンズホルダ31の上板部には、開口OP1が設けられている。レンズホルダ31の上板部は、光学的に絞りとして機能する。レンズホルダ31の外周には、伝達軸51が連結した連結部32が設けられている。連結部32は、支持板32a、32bから構成される。支持板32a、32bは、伝達軸51を固定支持する。なお、軸保持部40を含めないで、レンズユニット30と把握しても良い。レンズホルダ31は、例えば、黒色樹脂の成型により製造される。好適には、耐熱性・摺動性が良い黒色樹脂がよく、チタン酸カリウム繊維と樹脂との複合材が好ましい。
【0045】
レンズユニット30は、ピエゾ素子50の駆動に応じて、y軸(レンズOL1〜OL3の光軸に対して平行な軸線)に沿って移動可能である。但し、軸保持部40は、筐体20に対して固定されており、ピエゾ素子50の駆動に応じて移動することはない。イメージセンサ12の撮像領域12aに対するレンズOL1〜OL3の配置高さを調整することで、意図したように被写体像をイメージセンサ12の撮像領域に結像させることができる。
【0046】
ピエゾ素子50及び伝達軸51は、接着剤70(図14参照)によって互いに固着している。伝達軸51は、レンズホルダ31に対して連結部32を介して連結されている。具体的には、伝達軸51は、連結部32の支持板32a、32bの開口に対して圧入されている。
【0047】
レンズホルダ31に対してではなく、筐体20に対して直接又は間接的にピエゾ素子50を固定する他の駆動方式採用の場合、ピエゾ素子50が載置される筐体20の載置面に対してピエゾ素子50が傾斜して配置されてしまう場合がある。また、伝達軸51を筐体20に対して固定する場合も同様である。本実施形態では、レンズホルダ31に対して伝達軸51を固定し、レンズホルダ31に対して伝達軸51を介してピエゾ素子50を固定する。従って、筐体20に対するピエゾ素子50及び伝達軸51の配置誤差が問題となることはない。
【0048】
レンズホルダ31、ピエゾ素子50、及び伝達軸51は、これらの相対的な位置関係が固定されている。また、これらは、固定側部材として機能する軸保持部40(筐体20)に対して相対的に移動可能となっている。
【0049】
ピエゾ素子50は、セラミックス層(圧電層)が積層された一般的な圧電素子である。ピエゾ素子50は、一組の電極端子50a、50bを有する。各電極端子50a、50bにはリード線(導電線)50が接続される。具体的には、電極端子50aには、リード線52aが接続される。電極端子50bには、リード線52bが接続される。一組の電極端子50a、50b間にノコギリ歯状の電圧波形を連続的に供給することによって、ピエゾ素子50はY軸方向に連続的に伸縮する。
【0050】
伝達軸51は、y軸方向を長手方向とする棒状体である。伝達軸51は、接着剤70によって、ピエゾ素子50の上面に固定されている。なお、接着剤以外の方法で、伝達軸51をピエゾ素子50に対して固定しても構わない。ピエゾ素子50と伝達軸51を連結させる方法は任意であり、伝達軸51とピエゾ素子50とを嵌め合いにより互いに連結させても良い。
【0051】
伝達軸51は、ピエゾ素子50で生じた振動を軸保持部40に伝達する。軸保持部40は、摺動可能な状態で伝達軸51を保持し、かつ筐体20に対して固定されている。従って、ピエゾ素子50で生じた振動によって、ピエゾ素子50、伝達軸51、及びレンズホルダ31が、筐体20及び軸保持部40に対して変位する。
【0052】
伝達軸51は、軽量でかつ剛性が高いことが望ましい。伝達軸51は、比重2.1以下の材料からなる。より好ましくは、伝達軸51は、比重2.1以下であり、弾性率20GPa以上の材料からなる。更に好ましくは、伝達軸51は、比重2.1以下であり、弾性率30GPa以上の材料からなる。これによって、共振周波数を高周波側へシフトさせることができ、連続した使用可能周波数帯域を得ることができる。
【0053】
伝達軸51は、ガラス状炭素、繊維強化樹脂、エポキシ樹脂から成型すると良い。特に黒鉛を含有するガラス状炭素複合材、カーボンを含有する繊維強化樹脂やガラス、カーボンを含有するエポキシ樹脂複合材が特に好ましい。
【0054】
レンズホルダ31の外周面には、レール受け部(回転抑止部)35が設けられている。レール受け部35は、筐体20に設けられたレール25(図8参照)を受け入れる。レール受け部35は、一組の突起部35a、35bから構成される。なお、レール受け部35とレール25間には、所定の間隔が設けられている。また、レール25は、y軸方向を長手方向とする長尺な柱状部であり、筐体20の角部に設けられている。
【0055】
本実施形態では、レール受け部35(すなわち、突起部35a、35b)は、レンズホルダ31から離間する方向(レンズホルダ31の移動方向に対して交差する方向)へ延在するに応じて、y軸(レンズホルダ31の移動方向に対して平行な軸線)に沿う幅が狭くなる。この構成を採用することによって、ピエゾ素子50の駆動に応じて、レンズホルダ31がy軸に沿って移動しているとき、仮にレンズホルダが回転して、レール受け部35とレール25とが接触したとしても、両者間に生じる摩擦によってレンズホルダ31の移動が阻害されないようになっている。つまり、レンズホルダ31と筐体20間に生じる摩擦量が増大して、レンズホルダ31の変位が阻害されることを効果的に抑制することができる。
【0056】
例えば、レンズホルダ31がy軸に直交するxz平面にて揺動すると、レール受け部35とレール25とが接触状態になる場合がある。この場合、レール受け部35とレール25間の接触面積が小さいほうが好ましい。本実施形態では、上述のように、レール受け部35は、レンズホルダ31から離間する方向へ延在するに応じて、y軸に沿う幅が狭くなる。これによって、仮に、レール受け部35とレール25間が接触状態となったとしても、両者間に生じる摩擦量を小さくすることができる。
【0057】
レンズホルダ31の外周面には、支持板32a、32bが一体的に設けられている。支持板32a、32bは、レンズホルダ31の外周面から外側へ延出する。また、支持板32a、32bは、y軸方向において所定の間隔をあけて配置されている。支持板32a、32bには、伝達軸51が挿入される開口が形成されている。なお、支持板32a、32bは、レンズホルダ31と別体として接着剤等で固定しても良い。
【0058】
支持板32aは、伝達軸51を固定支持する。支持板32aに形成された開口は、伝達軸51の径よりも僅かに狭い。支持板32aに形成された開口に圧力をかけて伝達軸51を嵌め込むことによって、支持板32aに対して伝達軸51を固定することができる。支持板32bの孔径も、支持板32aと同様である。
【0059】
上述の構成を採用することによって、支持板32a、32bで伝達軸51をきつく保持することができる。換言すれば、伝達軸51と支持板32a、32b夫々間の振動伝達度を高くすることができる。このようにして、レンズホルダ31を効率的に変位させることが可能になる。
【0060】
圧入以外の方法を採用する場合、接着剤を適切に選定することで上述の場合と同様の効果を得ることができる。例えば、熱硬化性のエポキシ系接着剤を採用すると良い。
【0061】
支持板32a、32b間には、軸保持部40が配置されている。これらの組立て方法は任意である。例えば、支持板32a、32b間に軸保持部40を配置した状態で、これらの部材に対して伝達軸51を挿入しても良い。
【0062】
支持板32a、32b間に軸保持部40を配置することで、レンズホルダ31の移動範囲を規制することができる。但し、このような2点支持に限らず、支持板32a及び支持板32bの一方で伝達軸51を支持しても良い。
【0063】
軸保持部40は、y軸に沿って摺動可能な状態で伝達軸51を保持している。軸保持部40と伝達軸51とは、互いに摩擦係合状態にある。
【0064】
図5に示すように、軸保持部40は、本体部41、押え板(板状部材)42、ばね(弾性体)43、及び押え板(板状部材)44を有する。伝達軸51から離間する方向に、押え板42、バネ43、押え板44がこの順で配置される。本体部41は、伝達軸51を受け入れる空間を有する。また、本体部41は、押え板42、バネ43、及び押さえ板44を収納する空間を有する。
【0065】
押え板42は、矩形状の平板状部材である。バネ43は、一般的なコイル状バネである。押え板44は、矩形状の平板状部材である。
【0066】
本体部41に対して、押え板42、バネ43、及び押え板44が順に押し込まれる。本体部41に対して押え板44を接着固定することで、押え板42、バネ43、及び押え板44が位置決めされる。具体的には、バネ43は、押え板44によって本体部41の空間内に閉じ込められ、抑え板42を伝達軸51側へ付勢する。押え板42は、バネ43によって伝達軸51側へ付勢される。伝達軸51は、押え板42を介してバネ43により内側へ付勢され、本体部41と押え板42との間に挟持された状態になる。換言すると、伝達軸51と軸保持部40とが摩擦係合した状態になる。
【0067】
押え板42は、好ましくは、金属材料からなる。例えば、亜鉛合金、アルミ合金等の金属材料で、押え板42を形成すると良い。これによって、伝達軸51と押え板42間の摩擦により、押え板42から磨耗粉が生じることを効果的に抑制できる。
【0068】
バネ43の径は、押え板42の幅と略同一又は若干小さい。なお、バネ43の具体的な構成は任意であり、他の種類の弾性体(板ばね、樹脂製ゴム等)を利用しても良い。本体部41は、樹脂が金型で成形されて製造される。押え板42、44は、金属板又は樹脂板のプレス成型によって製造される。
【0069】
本体部41は、好適には、金属材料からなる。本体部41が樹脂の場合、伝達軸51との摩擦により磨耗粉が発生する場合がある。このような問題が生じることを回避するために、ここでは、亜鉛合金の成形により本体部41を製造している。なお、亜鉛合金に限らず、アルミ合金、その他の金属材料を採用しても良い。
【0070】
図5に示すように、押え板44の軸線Lx1に沿う幅は、押え板42の軸線Lx1に沿う幅よりも狭い。これによって、筐体20の内側面に対してより近い位置にバネ43を配置することが可能となり、カメラモジュール100の小型化を図ることができる。
【0071】
バネ43は、レンズホルダ31から見た伝達軸51の配置方向に対して90度を成す方向へ押え板42を付勢する。換言すると、バネ43は、レンズホルダ31から見た伝達軸51の配置方向に一致する軸線Lx1に対して90度を成す軸線Lx2に沿って押え板42を付勢する。これによって、軸保持部40の配置スペースを効果的に小さくすることができ、カメラモジュール100の小型化を図ることができる。なお、軸線Lx1と軸線Lx2とが成す角度は90度には限られない。軸線Lx1と軸線Lx2とが成す角度を、45〜135度としても良い。
【0072】
図6乃至図8を参照して更に説明する。
【0073】
図6に示すように、コイル実装基板90は、実装基板91、及び一組のコイルチップ(誘導性素子)95を有する。
【0074】
実装基板91は、平板状部材である。実装基板91の実装面には、上述のように一組のコイルチップ95が実装されている。実装基板91は、例えば、エポキシ基板、フレキシブル配線基板等である。実装基板91は、筐体20に対して取り付けられる(この点は、図8を参照して後述する)。
【0075】
実装基板91の一辺には、一組の接続端子92、および一組の接続端子93が設けられている。なお、各接続端子は、実装基板91上に形成された導電パターン(例えば、金属パターン)である。
【0076】
一組のコイルチップ95(95a、95b)は、実装基板91の実装面上に実装されている。コイルチップ95は、電子素子であるコイル(インダクタ、誘導性素子)を内蔵するチップである。
【0077】
コイルチップ95は、接続端子92と接続端子93間に接続される。具体的には、接続端子92aは、実装基板91上の配線(配線パターン)を介してコイルチップ95aの一端に接続される。コイルチップ95aの他端は、実装基板91上の配線を介して接続端子93aに接続される。コイルチップ95bも、同様にして、接続端子92bと接続端子93b間に接続される。
【0078】
実装基板91は、接続端子92a、92bに対応して、上方(筐体20の上端側、物体側)へ凸状に突出した突出部91a、91bを有する。接続端子92aは、突出部91aに設けられている。接続端子92bは、突出部91bに設けられている。各突出部91a、91bには、開口が設けられている。各突出部91a、91bの各開口が設けられている部分には、接続端子92a、92bとして機能する導電パターンが形成されている。突出部91aの開口部に対して、リード線52aの先端を巻き付けることによって、接続端子92aとリード線52aとが電気的に接続される。同様に、突出部91bの開口部に対して、リード線52bの先端を巻き付けることによって、リード線52bと接続端子92b間の電気的コンタクトが確保される。なお、リード線52の先端では、被膜から導電線が露出しているものとする。リード線52と接続端子92間の電気的コンタクトをとる具体的な方法は任意である。半田付けによって両者を固着させても良い。
【0079】
図6に示すコイル実装基板90は、図7に示すように筐体20内に収納される。図7に示すように、コイル実装基板90が筐体20内に収納されたとき、次の状態になる。範囲P1には、引出端子82、および接続端子93bが配置される。範囲P2には、接続端子92bが配置される。範囲P3には、引出端子81、および接続端子93aが配置される。範囲P4には、接続端子92aが配置される。なお、範囲P1〜P4は、Z軸上において順次設定された範囲である。
【0080】
筐体20に対するコイル実装基板90の取り付けに応じて、接続端子93aと引出端子81とが対向配置される。これによって、両者間の電気的な接続を簡易に確保することが可能になる。例えば、接続端子93aと引出端子81間の電気的コンタクトは、両者の物理的な接触によって確保される。接続端子93bと引出端子82間の電気的コンタクトも、同様に、両者の物理的な接触によって確保される。なお、接続端子93aと引出端子81間を半田等の導電性材料を介して固着させても良い。接続端子93bと引出端子82間についても同様である。これによって、衝撃等に対する電気的接続の耐性を高めることができる。
【0081】
筐体20に対するコイル実装基板90の取り付けに応じて、引出端子81、82と接続端子92a、92bとが交互に配置される。これによって、引出端子81、82と接続端子92a、92b間が直接的に接続されて短絡状態になることが効果的に抑制される。具体的には、上述のように、Z軸方向において、引出端子82、接続端子93b、引出端子81、および接続端子93aがこの順で配置されている。引出端子81と接続端子92a間の短絡を防止することによって、両者間の電気的経路上にコイルチップ95aをより確実に介在させることが可能になる。
【0082】
図8に示すように、コイル実装基板90は、筐体20内に収納される。筐体20は、側壁21(21a〜21d)を有する箱状部材である。筐体20の側壁21cの内側面には、コイル実装基板90が収納される基板収納部20pが設けられている。基板収納部20pは、コイル実装基板90が内側(レンズホルダ31側)へ倒れることを防止する壁部20p1を有する。壁部20p1と側壁21c間の間隔は、コイル実装基板90の実装基板91の基板厚みに対応して設定されている。
【0083】
なお、筐体20に対するコイル実装基板90の取り付け位置は任意である。ピエゾ素子50とコイル実装基板90間をリード線52で接続する点を考慮すると、ピエゾ素子50と同様、筐体20の上部収納空間にコイル実装基板90を配置すると良い。
【0084】
図8に示すように、側壁21bと側壁21cとが連結する角部には、レール25が設けられる。レール25は、筐体20側からレンズホルダ31側へ延在する。レール25の筐体20側の端部は幅狭であり、レール25のレンズホルダ31側の端部は幅広である。つまり、レール25は、幅狭部25a、および幅広部25bを有する。
【0085】
レール受け部35は、レンズホルダ31側の中心部(光軸)から外周へ向かう方向でレンズホルダ31外周から筐体20側へ延在する。レール受け部35は、一対の突起部35a及び突起部35bを有する。この例では、レンズホルダ31に固定された伝達軸51とレンズホルダ31の中心を介して対向する位置に突起部35a、35bが設けられている。突起部35a、35bの内側面は互いに平行である。カメラモジュール100を上面視したとき、突起部35aは、略一定の幅を保ちながらレンズホルダ31から離間する方向へ延在する。突起部35bについても同様である。
【0086】
レール25は、レール受け部35に所定の間隔をあけて受け入れられる。具体的には、レール25の先端部は、突起部35aと突起部35b間に所定の間隔をあけて配置される。
【0087】
図8に示すように、レンズホルダ31の移動方向から見て、レンズホルダ半径方向におけるレール25とレール受け部35とが重なり合う幅W15は、レール25とレンズホルダ31間の幅W16よりも狭い。このように幅W15、W16を設定することによって、レンズホルダ31と筐体20間に生じる摩擦量を極力小さなものにすることが可能になる。なお、幅W15は、外側(筐体20側)から内側(レンズホルダ31側)へ延在するレール25の先端面(レンズホルダ31の外周面に対向する面)と、内側から外側へ延在するレール受け部35の先端面(筐体20の内側面に対向する面)との間の間隔に相当する。また、幅W16は、レンズホルダ31の外周面とレール25の上記先端面間の間隔に相当する。W15は、0.05以上0.3mm以下が好ましい。0.3mm以上となると接触時の接触面積増大につながり、0.05以下では、落下時などにレールとレール受け部が圧接状態となる恐れがあるからである。筐体20の側壁21aと側壁21b間の角部には、強度保持用の梁部26が設けられている。この梁部26を設けることによって、筐体20の強度を確保することが可能になる。
【0088】
図9にカメラモジュール100の概略的な上面図を示す。図9に示すように、筐体20の上面視形状は、略正方形である。筐体20のz軸に沿う幅W11は、筐体20のx軸に沿う幅W12と略等しい。レンズホルダ31は、筐体20の略中心に配置されている。
【0089】
図10に、図9の点線に沿うカメラモジュール100の概略的な断面模式図を示す。図10に示すように、筐体20の基板収納部20pに対してコイル実装基板90が挿し込まれ、筐体20によってコイル実装基板90が保持されると、コイル実装基板90の実装基板91と筐体20の側壁21cとが面接触する。これによって、コイル実装基板90の接続端子93a、93bを、それぞれ、引出端子81、82に対して接触させることが可能になる。また、これによって、接続端子93a、93bを、それぞれ、引出端子81、82に対して半田付け等によって固着する場合にも、その作業を簡易化することができる。
【0090】
図11及び図12を参照して、引出端子81、82を筐体20に対して取り付ける方法について説明する。
【0091】
図11に示すように、金属板(導電板)80は、引出端子81となる部分81、電極端子となる部分82、線状の窪み84、及び部分81と部分82とが連結した離脱部85を有する。
【0092】
部分81は、胴部81b、および基部81cを有する。部分82は、胴部81b、および基部81cを有する。胴部81bは、基部81cに対して起立状態にある。胴部82bも、同様、基部82cに対して起立状態にある。部分81、82の肉厚は、離脱部85の肉厚よりも十分に薄い。これによって、線状の窪み84を切断ラインとして、部分81、82と離脱部85とを簡易に分離可能である。
【0093】
図11に模式的に示すように、金属板80は、筐体20に対して取り付けられる。筐体20には、金属板80を受け入れる受け部が設けられている。筐体20に対して金属板80を取り付けた後、図12に模式的に示すように、離脱部85は、その他の部分から切り離される。このようにして、筐体20に対して簡易に引出端子81、82を取り付けることが可能である。
【0094】
図13に示すように、筐体20の内周面には、引出端子81、82の受け入れ部22が設けられている。具体的には、図13に模式的に示すように、受け入れ部22aは、引出端子82を受け入れる。受け入れ部22bは、引出端子81を受け入れる。
【0095】
なお、筐体20の隔壁21eには、引出端子81、82が挿通される開口が設けられている。図13に示すように、隔壁21eは、筐体20の上部空間と下部空間とを隔てる板状部分である。隔壁21eは、レンズOL1〜OL3の光軸AXに対応する位置に光学的な開口を有する。より具体的には、隔壁21eは、イメージセンサ12の撮像領域12aに対応する矩形状の開口OP2を有する。
【0096】
なお、引出端子81、82を筐体20に対して取り付けるタイミングは任意である。また、コイル実装基板90を筐体20に対して取り付けるタイミングは任意である。
【0097】
例えば、次のようにカメラモジュールを組み立てると良い。まず、筐体20に対して金属板80を取り付ける。次に、金属板80の離脱部85を切除する。次に、筐体20に対してコイル実装基板90を取り付ける。次に、筐体20に対してレンズユニット30を取り付ける。次に、実装基板91とピエゾ素子50間の電気的コンタクトを確保する。具体的には、実装基板91の接続端子92aとピエゾ素子50の電極端子50aとの間をリード線52aで接続する。また、実装基板91の接続端子92bとピエゾ素子50の電極端子50bとの間をリード線52bで接続する。次に、必要に応じて、実装基板91の一組の接続端子93を、それぞれ、引出端子81、82に対して固着させる。具体的には、実装基板91の接続端子93aを、引出端子81に対して半田付けする。同様に、実装基板91の接続端子93bを、引出端子82に対して半田付けする。次に、配線基板10に対して筐体20を実装する。なお、配線基板10に対して筐体20を実装する前、配線基板10上には、イメージセンサ12及び透明基板13の積層体が配置されているものとする。上述のステップの順番は、適宜、変更可能である。
【0098】
本実施形態では、コイル実装基板90を筐体20に対して取り付ける。これによって、ピエゾ素子50の電極端子50a(50b)と筐体20に設けられた引出端子81(82)間にコイルを簡易に接続することが可能になる。
【0099】
筐体20に対するコイル実装基板90の取り付けによって、コイル実装基板90の接続端子93a、92bを、筐体20に予め設けられた引出端子81、82に対して対向配置させることができる。これによって、両者間の電気的な接続を簡易に確保することが可能になる。
【0100】
筐体20に対して保持された状態のコイル実装基板90の上辺部分には、リード線52が巻き付け可能な突出部91a、91bが設けられている。これによって、リード線52と実装基板91間の電気的な接続を簡易に確保することができる。
【0101】
図14にカメラモジュール100の概略的な断面構成図を示す。図14に示すように、レンズホルダ31は、レンズOL1〜OL3を保持する。レンズOL1は、調芯工程を経てレンズホルダ31内に配置されている。レンズOL2、OL3は、調芯工程を経ることなく、レンズホルダ31内に配置される。つまり、レンズOL1は、レンズOL2、OL3と比較して、高い位置精度が要求されるレンズである。
【0102】
レンズホルダ31に対するレンズOL1〜OL3の組み込み方法は任意である。例えば、レンズOL3、及びレンズOL2をこの順で積層し、レンズOL2上にてレンズOL1を調芯し、レンズOL3、レンズOL2、及びレンズOL1を接着固定し、その後、レンズOL1〜OL3の積層体をレンズホルダ31内に圧入すると良い。なお、圧入以外の方法でレンズホルダ31に対してレンズOL1〜OL3を組み入れても良い。
【0103】
図14に示す各幅は、次のとおりである。W41:1mm、W42:1mm、W43:2mm、W44:6mm、W45:3mm。ピエゾ素子50は、一辺1mm程度の直方体である。ピエゾ素子50のサイズに関しては、伝達軸51の長さの1/2以下とすると良い。
【0104】
図15を参照して、筐体内における電気的な配線関係について説明を補足する。図15に示すように、ピエゾ素子50の電極端子50aは、リード線52aを介して実装基板91の接続端子92aに接続される。接続端子92aは、コイルチップ95aの一端に接続される。コイルチップ95aの他端は、接続端子93aに接続される。接続端子93aは、引出端子81に接続される。ピエゾ素子50の電極端子50bは、リード線52bを介して実装基板91の接続端子92bに接続される。接続端子92bは、コイルチップ95bの一端に接続される。コイルチップ95bの他端は、接続端子93bに接続される。接続端子93bは、引出端子82に接続される。
【0105】
上述の説明から明らかなように、本実施形態では、筐体20に設けられた引出端子81とピエゾ素子50の電極端子50a間にコイルチップ95aが接続される。同様に、筐体20に設けられた引出端子82とピエゾ素子50の電極端子50b間にコイルチップ95bが接続される。
【0106】
この構成を採用することによって、カメラモジュール100の製造者側にて適切な特性のコイルチップ95を組み込むことが可能になる。換言すると、カメラモジュールの製造者側にてピエゾ素子50の駆動回路を組み込まなく、その購入者側にてピエゾ素子50の駆動回路を組み込む場合であっても、その購入者側が過度なコイル選定作業を負うことがない。これによって、ユーザーフレンドリーであり、かつ高性能な動作特性を有するカメラモジュールを実現することが可能になる。
【0107】
後述の説明から明らかなように、ピエゾ素子50に対してコイルチップ95を接続することによって、カメラモジュール100の動作特性が向上する。しかしながら、カメラモジュール100の駆動回路を適切に構成しなければ、意図したようなカメラモジュール100の動作特性を確保することは難しい。
【0108】
冒頭で説明したように、インダクタ等の付加的な回路素子をピエゾ素子に対して接続する場合には、選定するインダクタによって、カメラモジュールの製造者が提示するカメラモジュールの動作特性を得ることが容易ではない場合もある。インダクタの種類も多数あるため、どのインダクタを採用すれば意図したカメラモジュールの動作特性を確保することができるかは、試行錯誤の動作検証を通じてでなければ分からないことも多い。また、個々のインダクタの特性に限らず、回路素子間の相性に応じて、駆動回路の全体特性が変動してしまう場合もありうる。
【0109】
本実施形態では、上述のように、筐体20に設けられた引出端子81とピエゾ素子50の電極端子50a間にコイルチップ95aが接続される。同様に、筐体20に設けられた引出端子82とピエゾ素子50の電極端子50b間にコイルチップ95bが接続される。この構成を採用することによって、カメラモジュールの製造者側にて適切な特性のコイルを組み込むことが可能になり、カメラモジュールの購入者側にて、別途、コイルを選定して実装する必要がなくなる。
【0110】
カメラモジュールの動作特性に大きな影響を与えうる回路素子を予め組み込んでカメラモジュールを出荷可能とすることによって、カメラモジュールの購入者は、カメラモジュールの駆動回路の残りの部分を用意すれば良いだけになる。これによって、カメラモジュールの購入者側にて、カメラモジュールの製造者側で提示するカメラモジュールの動作特性を簡易に実現することが可能になる。
【0111】
以下、図16乃至図29を参照して、カメラモジュールの駆動回路について説明する。
【0112】
図16に示すように、駆動回路200は、コントローラ201、トランジスタ(スイッチ、スイッチング部、スイッチング素子、回路素子)Q1〜Q4、コイル(誘導性素子、インダクタ、回路素子)L1、L2、及びピエゾ素子PZを有する。なお、ピエゾ素子PZは、ピエゾ素子50に相当する。コイルL1、L2は、コイルチップ95に相当する。
【0113】
トランジスタQ1、Q3は、PチャネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。トランジスタQ2、Q4は、NチャネルMOSFETである。
【0114】
トランジスタQ1、Q4は、電源電位VDDとグランド電位GND間に直列に接続されている。トランジスタQ3、Q2は、電源電位VDDとグランド電位GND間に直列に接続されている。
【0115】
電源電位VDDから駆動電圧+Eが供給されるノードをノードaとし、グランド電位GNDからグランド電位が供給されるノードをノードbとすると、次のような接続関係になる。
【0116】
トランジスタQ1のソース端子は、ノードaに接続される。トランジスタQ1のドレイン端子は、トランジスタQ4のドレイン端子に接続される。トランジスタQ4のソース端子は、ノードbに接続される。
【0117】
トランジスタQ3のソース端子は、ノードaに接続される。トランジスタQ3のドレイン端子は、トランジスタQ2のドレイン端子に接続される。トランジスタQ2のソース端子は、ノードbに接続される。
【0118】
電源電位VDDとグランド電位GND間に直列接続されたトランジスタQ1、Q4に対して、電源電位VDDとグランド電位GND間に直列接続されたトランジスタQ3、Q2は、並列接続されている。
【0119】
なお、トランジスタQ1のソース端子とトランジスタQ3のソース端子とはノードaに接続されている。トランジスタQ4のソース端子とトランジスタQ2のソース端子とはノードbに接続されている。
【0120】
トランジスタQ1のドレイン端子とトランジスタQ4のドレイン端子との間のノードをノードc(第1の出力端子)とする。トランジスタQ3のドレイン端子とトランジスタQ2のドレイン端子との間のノードをノードd(第2の出力端子)とする。ノードcは、コイルL1を介して、ピエゾ素子PZの一方の電極端子に接続されている。ノードdは、コイルL2を介して、ピエゾ素子PZの他方の電極端子に接続されている。
【0121】
ノードcとノードdとを接続する配線を結合線とする。駆動回路200は、いわゆるHブリッジ回路になっている。
【0122】
トランジスタQ1のドレイン端子からピエゾ素子PZに至る経路を第1出力段とする。第1出力段には、コイルL1が設けられている。コイルL1の第1端子はトランジスタQ1のドレイン端子及びトランジスタQ4のドレイン端子に接続され、コイルL1の第2端子はピエゾ素子PZの第1端子に接続されている。
【0123】
トランジスタQ3のドレイン端子からピエゾ素子PZに至る経路を第2出力段とする。第2出力段には、コイルL2が設けられている。コイルL2の第1端子は、トランジスタQ3のドレイン端子及びトランジスタQ2のドレイン端子に接続され、コイルL2の第2端子はピエゾ素子PZの第2端子に接続されている。なお、コイルL1のインダクタンスは、コイルL2のインダクタンスに等しい。
【0124】
トランジスタQ1のゲート端子(制御端子)は、コントローラ201の出力端子CT2が接続される。トランジスタQ2のゲート端子は、コントローラ201の出力端子CT4が接続される。トランジスタQ3のゲート端子は、コントローラ201の出力端子CT1が接続される。トランジスタQ4のゲート端子は、コントローラ201の出力端子CT3が接続される。
【0125】
コントローラ201は、トランジスタQ1〜Q4の動作状態(オン・オフ)を制御する。コントローラ201は、トランジスタQ1のゲート端子に対して制御信号Sc1を出力する。コントローラ201は、トランジスタQ2のゲート端子に対して制御信号Sc2を出力する。コントローラ201は、トランジスタQ3のゲート端子に対して制御信号Sc3を出力する。コントローラ201は、トランジスタQ4のゲート端子に対して制御信号Sc4を出力する。
【0126】
トランジスタQ1、Q3は、コントローラ201からHレベル(ハイレベル)の制御信号が供給されたときオフ状態になり、コントローラ201からLレベル(ローレベル)の制御信号が供給されたときオン状態になる。トランジスタQ2、Q4は、コントローラ201からHレベル(ハイレベル)の制御信号が供給されたときオン状態になり、コントローラ201からLレベル(ローレベル)の制御信号が供給されたときオフ状態になる。
【0127】
トランジスタQ1、コイルL1、およびトランジスタQ2は、ピエゾ素子PZの一方側から駆動電圧を印加する第1駆動回路を構成する。トランジスタQ3、コイルL2、およびトランジスタQ4は、ピエゾ素子PZの他方側から(すなわち逆方向から)駆動電圧を印加する第2駆動回路を構成する。
【0128】
図17に、駆動回路200の動作シーケンスを示すタイミングチャートを示す。期間Aでは、制御信号Sc3と制御信号Sc2とがHレベルであり、制御信号Sc1と制御信号Sc4とがLレベルである。このとき、トランジスタQ1とトランジスタQ2とがオン状態となり、トランジスタQ3とトランジスタQ4とがオフ状態となる。このとき、図18に模式的に示すように、ピエゾ素子PZには電圧が一方向から印加される。より具体的には、トランジスタQ1、及びコイルL1を介して、電源電位VDDからピエゾ素子PZに電流が流れ込み、ピエゾ素子PZは充電される。また、ピエゾ素子PZに蓄積されていた電荷は、コイルL2、及びトランジスタQ2を介して、接地電位GNDへ放出される。
【0129】
期間Bでは、制御信号Sc1と制御信号Sc4とがハイレベルであり、制御信号Sc3と制御信号Sc2とがロウレベルである。トランジスタQ3とトランジスタQ4とがオン状態となり、トランジスタQ1とトランジスタQ2とがオフ状態となる。このとき、図19に模式的に示すように、ピエゾ素子PZには電圧が逆方向から印加される。より具体的には、トランジスタQ3、及びコイルL2を介して、電源電位VDDからピエゾ素子PZに電流が流れ込み、ピエゾ素子PZは充電される。また、ピエゾ素子PZに蓄積されていた電荷は、コイルL1、及びトランジスタQ4を介して、接地電位GNDへ放出される。なお、期間Aは、期間Bよりも短く設定されている。
【0130】
図20、図21を参照して、レンズホルダ31の変位について説明する。図20に示すように、ピエゾ素子PZ(ピエゾ素子50)の両端電圧Vsが正負で変化するのに応じて、レンズホルダ31は順方向に変位する。図20では、レンズホルダ31の変位を矢印で示している。すなわち、レンズホルダ31は、時刻t1−t2間に変位し、時刻t2−t3間には変位しない。他の期間についても同様である。
【0131】
図21を示すように、ピエゾ素子50の伸縮とレンズホルダ31の変位とが連関している。時刻t1−t2間は、ピエゾ素子50の両端電圧Vsは急峻に立ち上がる。電圧の急激な立ち上がりに応じて、ピエゾ素子50は急激に伸張する。ピエゾ素子50が急激に変化するとき、伝達軸51が軸保持部40に対して摺動する。これにより、ピエゾ素子50、伝達軸51、及びレンズホルダ31が軸保持部40に対して変位する。
【0132】
一方、時刻t2−t3間では、ピエゾ素子50の両端電圧Vsは緩慢に立ち下がる。電圧の緩慢な立ち下がりに応じて、ピエゾ素子50は、比較的緩慢に収縮する。このとき、ピエゾ素子50の変化は伝達軸51を変位させる力を発生させず、伝達軸51はその場に留まる。伝達軸51とともにレンズホルダ31もその場に留まる。
【0133】
このように、ピエゾ素子50が急激に伸張するとき、レンズホルダ31が軸保持部40に対して変位する。換言すると、ピエゾ素子50が緩慢に収縮するとき、レンズホルダ31は、軸保持部40に対して変位しない。
【0134】
この場合、レンズホルダ31を効率的に変位させるためには、コントローラ201からトランジスタQ1〜Q4に供給される制御信号に相当するスイッチングパルスSPのパルス幅を狭めることによって、ピエゾ素子PZを短時間に伸張させると良いと言える。
【0135】
ピエゾ素子PZに蓄積された電流の放電時間を確保することが必要である点を考慮すれば、スイッチング信号のデューティー比を小さく設定すると良いと言える。
【0136】
本実施形態では、第1出力段(ノードcとピエゾ素子PZとの間)にコイルL1を接続し、第2出力段(ノードdとピエゾ素子PZとの間)にコイルL2を接続しているので、第1駆動回路(トランジスタQ1、コイルL1、トランジスタQ2)でピエゾ素子PZの一方側から駆動電圧を印加する場合も、第2駆動回路(トランジスタQ3、コイルL2、トランジスタQ4)でピエゾ素子PZの他方側から(すなわち逆方向から)駆動電圧を印加する場合でも利得が得られ、擬似的に駆動信号レベルを電源電圧レベルEよりも高くすることができる。その理由を次に説明する。
【0137】
本実施形態における第1および第2の出力段には誘導性素子(コイルL1、L2)が設けられているので、第1駆動回路および第2駆動回路はそれぞれ図22に示す等価回路で表わされる。図22において、R0は、トランジスタQ1−Q4のオン抵抗を表す。各トランジスタQ1−Q4のオン抵抗は、素子特性にもよるが、概ね1[Ω]以下である。Lは、誘導性素子(91、92)のインダクタンスを表す。Cpはピエゾ素子PZの静電容量値を表す。
【0138】
この等価回路は、共振点にピークを持つフィルタ回路の構成であり、いわゆる二次型のLPF(Low Pass Filter:低域通過フィルタ)を構成している。LPFの共振点およびfc(カットオフ周波数)はLおよびCpの共振で決定される。そして、R0、Cpに合わせて駆動周波数およびLを選定することにより、駆動周波数帯域の範囲内で数dBの利得が得られ、擬似的に駆動信号レベルを高めることができる。
【0139】
図23は、Ro=0.1(Ω)、Cp=30(nF)、L=6.8(uH)とした場合のシミュレーション結果である。図23では、周波数レンジを1kHzから10MHzの範囲で示している。図23に示されるように、駆動周波数が100kHzあたりまでは利得がゼロであるが、100kHzを超えてくると利得が上がりはじめ、300kHzと400kHzとの間で共振により最も高い利得が得られる。そして、共振点を過ぎると急速に利得は減少し始め、500kHzあたりで利得ゼロになり、さらに駆動周波数が上がると利得はマイナスになっていく。
【0140】
駆動周波数帯域としては、利得がゼロより大きくなるように選定することが好ましい。図23の例でいうと、図中の区間f1で示すように、100kHzから500kHzの間で駆動周波数を選定することが好ましい。
【0141】
これにより、ピエゾ素子PZを小型化し、さらに、電源電圧Eを低電圧化した場合であっても、擬似的に高い電圧をピエゾ素子PZに掛けることができ、圧電アクチュエータの変位振動特性を向上させることができる。
【0142】
圧電素子を小型化して圧電素子の容量値が小さくなった場合には、それに合わせてインダクタンスLの値および駆動周波数を選定し直すことにより、小型かつ低電圧の圧電アクチュエータであっても動作能力を維持することができる。
【0143】
また、駆動周波数としては、利得がゼロ以上であるが、さらに、共振点の周波数の前後は除くことが好ましい。共振点の前後の駆動周波数を選定した場合、周波数がわずかでもずれると利得が大きく違ってくることになる。すると、製品ごとに動作特性のバラツキが非常に大きくなってしまう恐れがある。したがって、選定する駆動周波数としては、図23中の区間f4を避けて、区間f2とf3とから選定することが好ましい。例えば、避けるべき周波数範囲f4としては、共振点周波数の前後10%にしてもよく、さらには、共振点周波数の前後30%にしてもよい。
【0144】
また、共振点の周波数よりも低い周波数であって利得が0より大きくなる駆動周波数を選定することが好ましい。図24は、図23において利得が共振点ピークに向けて上昇していく途中の領域を抜き出した図である。図24では周波数レンジを1kHzから300kHzとしている。図24中の丸で囲んだ領域のように、利得が共振点ピークに向けて上昇していく途中の領域で駆動周波数を選定することが好ましい。共振点ピークを過ぎたところ(例えば図23中の区間f3)でも利得はゼロより大きいが、減少カーブが急峻であるので、駆動周波数が設定値から少しでもずれると利得が大きく変わってしまう。
【0145】
この点、利得が共振点ピークに向けて上昇していく途中の領域(図24中の区間f5)であれば、カーブが緩やかであるので、製品ごとのバラツキを抑制することができる。図24に示されるように、駆動周波数を150kHzとすると、2dB程度の利得が得られる。
【0146】
図25および図26は、誘導性素子のインダクタンスLを変えてシミュレーションした結果である。図25および図26においては、利得が共振点ピークに向けて上昇していく途中の領域を丸で囲み、この丸囲みの範囲で駆動周波数を選定することが例として挙げられる。図25において、駆動周波数を150kHzとすると、3dB程度の利得が得られる。また、図26において、駆動周波数を150kHzとすると、6dB程度の利得が得られる。
【0147】
上記のように駆動周波数を選定することにより、擬似的に高い電圧をピエゾ素子PZに掛けることができ、圧電アクチュエータの変位振動特性を向上させることができる。
【0148】
圧電素子または駆動軸が固定側部材に対して固着されていたタイプの駆動装置においては、固定側部材との共振を回避するように駆動周波数の選定する必要があった。駆動周波数帯域を広く設定することができず、固定側部材との共振が確実に回避できる狭い範囲でしか駆動周波数を選定できなかった。
【0149】
この点、本実施形態ではピエゾ素子50および伝達軸51は、固定側部材に対して直接的に固定されていないので、固定側部材との共振を考慮することなく、ピエゾ素子50および伝達軸51から導かれる固有の共振を考慮するだけで、ピエゾ素子PZに対する駆動周波数を適切に設定することができる。したがって、上記のように、利得が得られる範囲から駆動周波数を選定することができる。
【0150】
また、図27に示されるように、駆動信号の高調波成分については抑圧することができる。例えば、400kHzの高調波成分については−10dB程度の抑圧が効いており、さらにそれ以上の高調波成分はさらに抑圧されていることが分かる。すなわち、駆動信号に混入する高周波成分を十分に抑圧できることがわかる。
【0151】
例えば、駆動電圧には電源ラインを経由して高周波ノイズが混入することがある。図28は、電源ラインノイズがのってしまった駆動電圧の例である。このようなノイズが入ってしまうと、圧電アクチュエータの動きが間欠的に止まってしまったりするので、動作が不安定になってしまう問題が生じる。この点、本実施形態の駆動回路200では、フィルタ効果によって、図29に示すように高調波ノイズを抑えることができ、圧電アクチュエータの動作を安定させることができる。
【0152】
また、製品に圧電アクチュエータを実際に組み込む場合には、出力段の配線長(ノードc、dからピエゾ素子PZまでの配線)が長くなってしまう場合がある。また、製品によっても出力段の配線長は異なってくる場合がある。この場合、配線長の違いにより配線インダクタンスも異なってくるので、予期しない共振によって動作にバラツキが生じる恐れがある。
【0153】
本実施形態では、予め誘導性素子としてのコイルチップ95(コイルL1、L2)を出力段に設けている。コイルチップ95のインダクタンスは配線インダクタンスよりも十分に大きい。したがって、配線長が異なったとしてもコイルチップ95の効果を超えるインダクタンスは保有していないので、カメラモジュールの駆動制御を安定化することが可能になる。例えば、予期しない共振によって圧電アクチュエータの動作にバラツキが生じる恐れがなくなり、カメラモジュールの動作安定性を向上させることができる。
【0154】
また、本実施形態では、第1駆動回路で電圧を印加する場合も、第2駆動回路で電圧を印加する場合もピエゾ素子PZを間にして2つのコイルL1、L2が動作する構成になっている。これにより、正側にも負側にも逆起電力が作用するようになり、駆動電圧を正側にも負側にも増幅する作用が得られ、効率よく大きな増幅効果を得ることができる。
【0155】
(変形例1)
上記実施形態の変形例として、コイルL1、L2の配設位置を変えた例を説明する。図30に示す駆動回路200を変形例1として説明する。図30において、トランジスタQ1のドレイン端子とトランジスタQ4のドレイン端子との接続ノードをノードcとする。ノードcは、ピエゾ素子PZの第1電極に接続されている。トランジスタQ3のドレイン端子とトランジスタQ2のドレイン端子との接続ノードをノードdとする。ノードdは、ピエゾ素子PZの第2電極に接続されている。
【0156】
変形例1においては、トランジスタQ1のドレイン端子とノードcとの間にコイルL1を設け、トランジスタQ3のドレイン端子とノードdとの間にコイルL2を設けている。この構成においても、コイルL1は第1出力段にあり、コイルL2は第2出力段にある。したがって、上記第1実施形態と同様に、第1駆動回路(トランジスタQ1、コイルL1、トランジスタQ2)でピエゾ素子PZの一方側から駆動電圧を印加する場合も、第2駆動回路(トランジスタQ3、コイルL2、トランジスタQ4)でピエゾ素子PZの他方側から(すなわち逆方向から)駆動電圧を印加する場合でも利得が得られ、擬似的に駆動信号レベルを電源電圧レベルEよりも高くすることができる。
【0157】
(変形例2)
図31を参照して、変形例2を説明する。変形例2は、駆動回路200のピエゾ素子PZ以外の部分をワンチップで構成した場合を想定した変形例である。
【0158】
変形例2に係る駆動回路200は、上述の実施形態に示した回路素子に加えて、トランジスタQ5、トランジスタQ6を更に有する。トランジスタQ5、Q6は、NチャネルMOSFETである。
【0159】
トランジスタQ5のドレイン端子はピエゾ素子PZの第1電極端子に接続され、トランジスタQ5のソース端子はグランド電位GND(接地電源)に接続されている。トランジスタQ6のドレイン端子は、ピエゾ素子PZの第2電極端子に接続されており、トランジスタQ6のソース端子はグランド電位GND(接地電源)に接続されている。
【0160】
トランジスタQ5のゲート端子には、トランジスタQ4と共通の制御信号Sc4が供給される。トランジスタQ6のゲート端子には、トランジスタQ2と共通の制御信号Sc2が供給される。
【0161】
すなわち、トランジスタQ5とトランジスタQ4とは同じ動作をし、トランジスタQ6とトランジスタQ2とは同じ動作をすることになる。
【0162】
この構成において、図17に示したタイミングチャートで制御信号Sc1−Sc4を送ると、その主な動作は第1実施形態で説明したものと同様になり、同様の効果が得られる。
【0163】
第1実施形態に示した駆動回路200では、第1駆動回路(トランジスタQ1、コイルL1、トランジスタQ2)でピエゾ素子PZの一方側から駆動電圧を印加する場合、トランジスタQ2を介してピエゾ素子PZにGND電位をかけていた。他方、変形例2では、トランジスタQ2と同じ動作をするトランジスタQ6を介して圧電素子にGND電位をかけている(図32参照)。
【0164】
そして、この場合、コイルL2は電流経路に含まれなくなるが、電圧印加側にあるコイルL1が経路に含まれることによって上記に説明した作用は十分に得られ、擬似的に駆動信号レベルを高めることができる。
【0165】
同様に、第1実施形態に示した駆動回路200では、第2駆動回路(トランジスタQ3、コイルL2、トランジスタQ4)でピエゾ素子PZの他方側から(すなわち逆方向から)駆動電圧を印加する場合、トランジスタQ4を介してピエゾ素子PZにGND電位をかけていた。他方、変形例2では、トランジスタQ4と同じ動作をするトランジスタQ5を介してピエゾ素子PZにGND電位をかけている(図33)。
【0166】
そして、この場合、コイルL1は電流経路に含まれなくなるが、電圧印加側にあるコイルL2が経路に含まれることによって上記に説明した作用は十分に得られ、擬似的に駆動信号レベルを高めることができる。
【0167】
次に、図34、図35を参照して更に説明する。
【0168】
カメラモジュール100は、図34に示す携帯電話190内に搭載される。携帯電話190は、上側本体191、下側本体192、及びヒンジ193を有する。上側本体191と下側本体192とは、共にプラスチック製の平板部材であって、ヒンジ193を介して連結される。上側本体191と下側本体192とはヒンジ193によって開閉自在に構成される。上側本体191と下側本体192とが閉じた状態のとき、携帯電話190は上側本体191と下側本体192とが重ね合わされた平板状の部材になる。
【0169】
上側本体191は、その内面に表示部194を有する。表示部194には、着信相手を特定する情報(名前、電話番号)、携帯電話190の記憶部に格納されたアドレス情報等が表示される。表示部194の下には液晶表示装置が組み込まれている。
【0170】
下側本体192は、その内面に複数のボタン195を有する。携帯電話190の操作者は、ボタン195を操作することによって、アドレス帳を開いたり、電話を掛けたり、マナーモードに設定したりし、携帯電話190を意図したように操作する。携帯電話190の操作者は、このボタン195を操作することに基づいて、携帯電話190内のカメラモジュール100を起動する。
【0171】
図35を参照して、カメラモジュール100を動作させるためのシステム構成(アクチュエータの駆動部の構成)について説明する。図35に示すように、画像取得部180の出力は、コントローラ181に接続される。コントローラ181の出力は、駆動電圧生成回路(駆動電圧供給部)182に接続される。駆動電圧生成回路182の出力は、振動源183に接続される。なお、画像取得部180は、上述のイメージセンサ12に等しい。振動源183は、上述のピエゾ素子50に等しい。上述の駆動回路200は、駆動電圧生成回路182と振動源183とを含めた回路に相当する。
【0172】
コントローラ181は、携帯電話190内に組み込まれたCPUであり、プログラムを実行して様々な指令を生成する。コントローラ181は、操作者による携帯電話190の操作に応じて、カメラモジュールの機能を活性化する。
【0173】
コントローラ181は、レンズホルダ31の移動速度を調整する機能を有する。コントローラ181は、画像取得部180から伝送される画像に対する処理に基づいて、レンズホルダ31が合焦位置にあるか否かを判断し、また、レンズホルダ31を合焦状態とするために、レンズホルダ31の移動方向、移動量を算出する。コントローラ181は、合焦位置から離れた位置から合焦位置へレンズホルダ31を移動させる場合、レンズホルダ31が高速に移動するように駆動電圧生成回路182を制御する。コントローラ181は、合焦位置に近い距離内で合焦位置へレンズホルダ31を移動させる場合、レンズホルダ31が低速で移動するように駆動電圧生成回路182を制御する。駆動電圧生成回路182は、コントローラ181から供給される制御信号に応じて、振動源183に対してノコギリ波形状の駆動電圧を供給する。なお、駆動電圧生成回路182の具体的な構成は任意である。振動源183は、駆動電圧生成回路182から供給されるノコギリ波形状の駆動電圧に応じて伸縮し、振動を生じさせる。振動源183で生じる振動に応じて、レンズホルダ31は、光軸AXに沿って物体側又は撮像素子側へ変位する。なお、レンズOL1〜OL3の光軸AXは、イメージセンサ12の前面に対して垂直に交差している。
【0174】
[第2実施形態]
図36乃至図41を参照して第2実施形態について説明する。図36は、カメラモジュール100の概略的な分解斜視図である。図37は、コイル実装基板90の配置前のカメラモジュール100の概略的な部分斜視図である。図38は、コイル実装基板90の配置後のカメラモジュール100の概略的な部分斜視図である。図39は、コイル実装基板90の概略的な斜視図である。図40は、コイル実装基板90上に形成された配線パターンを示す模式図である。図41は、変形例に係るコイル実装基板90である。
【0175】
本実施形態では、上述の実施形態とは異なり、実装基板91上に導電パターンを形成し、これによってコイルを形成する。このような場合であっても、上述の実施形態で説明してものと同様の効果を得ることができる。本実施形態では、コイルチップ95分の自由空間を筐体20内に確保することができる。これによって、筐体20のサイズを小型化することが簡易になる。
【0176】
図36乃至図38に示すように、実装基板91は、上述の実施形態と同様、筐体20の側壁21cの内側側面に対して面接触するように筐体20内に配置される。筐体20に対するコイル実装基板90の取付によって、第1実施形態で説明したように、引出端子81、82と接続端子93a、93bらが対向配置され、両者の電気的な接続を簡易に確保することができる。また、実装基板91の一辺に沿って、接続端子93b、接続端子92b、接続端子93a、接続端子93aが順次配置されているので、第1実施形態で説明したように、互いに隣り合う接続端子92と接続端子93間の短絡を抑制することができる。
【0177】
z軸方向における実装基板91の幅は、筐体20の側壁21bと側壁21d間の間隔よりも若干狭い。従って、コイル実装基板90を簡易に筐体20内に配置することができる。
【0178】
コイル実装基板90は、梁部26が設けられていない筐体20の側壁21に対して取り付けると良い。これによって、コイル実装基板90の面積をより広く確保することができ、十分なインダクタンスを確保することが容易になる。
【0179】
コイル実装基板90は、ピエゾ素子50が近傍に配置されていない筐体20の側壁21に対して取り付けると良い。筐体20内にて空間的に余裕がある場所にコイル実装基板90を取り付けることによって、z軸方向における筐体20のサイズが大きくなってしまうことを効果的に抑制することができる。
【0180】
なお、筐体20に対してコイル実装基板90を固定する方法は任意である。例えば、コイル実装基板90が内側へ倒れることを抑止する構造を筐体20に設けると良い。引出端子81、82と接続端子93間の半田付けによって、筐体20に対してコイル実装基板90を固定しても良い。
【0181】
図39に示すように、コイル実装基板90の実装基板91の主面には、パターン配線領域90pが設けられている。図40に示すように、パターン配線領域90p内では、導電層がパターニングされている。図面を正面視すると、導電線90qは、接続端子92aを基点として実装基板の右横方向に延在する。次に、導電線90qは、縦下方向に延在する。次に、導電線90qは、折り返して、隣り合う導電線に対して一定の間隔をあけて、縦上方向に延在する。次に、導電線90qは、折り返して、隣り合う導電線に対して一定の間隔をあけて、縦下方向に延在する。導電線90qは、延在、折り返しを繰り返し、全体として巻き線を構成する。このようにして、実装基板91には配線パターンから成るコイルが実装される。
【0182】
なお、導電線90qは、実装基板91の内層に形成されても良いし、実装基板91の表面上に形成されても良い。実装基板91の内層にて導電線90qを引き回すことによって、実装基板91内にてコイルを保護することが可能になる。これによって、ゴミ等の影響によって、コイルの機能が損なわれたりすることを効果的に抑制することができる。
【0183】
なお、接続端子92bと接続端子93b間にも、接続端子92aと接続端子93a間と同様に、導電線によってコイルが接続されているものとする。例えば、実装基板91の一方の主面上に、接続端子92aと接続端子93a間に接続されるコイルを配線パターンで構成し、実装基板91の他方の主面上に、接続端子92bと接続端子93b間に接続されるコイルを配線パターンで構成すれば良い。
【0184】
実装基板91内の配線層でコイルを形成する場合には、配線基板10の一方の主面側に、接続端子92aと接続端子93a間に接続されるコイルを配線パターンで構成し、実装基板91の他方の主面側に、接続端子92bと接続端子93b間に接続されるコイルを配線パターンで構成すれば良い。
【0185】
図41に変形例に係るコイル実装基板90を示す。図41に示すように接続端子93を配置しても良い。この場合も、本実施形態と同様の効果を得ることができる。接続端子93の配置位置は、引出端子81、82の配置位置に対応していれば良い。図41を正面視して、接続端子93を実装基板の下辺側へ設ける場合、接続端子92と接続端子93間の短絡を防止するため、引出端子81の胴部81bの高さ(胴部81bのy軸方向の長さ)を低くすると良い。本変形例から明らかなように、接続端子92、93を設ける位置は適宜変更可能である。
【0186】
[第3実施形態]
図42乃至図46を参照して第3実施形態について説明する。図42は、カメラモジュール100の概略的な分解斜視図である。図43は、コイル実装基板90の配置前のカメラモジュール100の概略的な部分斜視図である。図44は、コイル実装基板90の配置後のカメラモジュール100の概略的な部分斜視図である。図45は、コイル実装基板90の概略的な斜視図である。図46は、変形例に係るコイル実装基板90である。
【0187】
本実施形態では、第2実施形態とは異なり、コイル実装基板90の実装基板91は、板状部材が屈曲して構成される。このような場合であって、第1及び第2実施形態で説明したものと同様の効果を得ることができる。本実施形態においても、コイルチップ95分の自由空間を筐体20内に確保することができる。これによって、筐体20のサイズを小型化することが簡易になる。
【0188】
図42乃至図44に示すように、コイル実装基板90の実装基板91は、板状部材が屈曲した形状を有する。コイル実装基板90は、上述の実施形態と同様の態様によって筐体20内に収納される。端子間の電気接続が確保される点は、上述の実施形態と同様である。
【0189】
実装基板91は、z軸方向に延在する平板部91m、x軸方向に延在する平板部91n、及び平板部91mと平板部91n間を連結する連結部91zを有する。平板部91mは、筐体20の側壁21cの内側面に対して面接触する。平板部91nは、筐体の側壁21bの内側面に対して面接触する。
【0190】
図45に示すように、実装基板91の内側面には、パターン配線領域90pが形成されている。パターン配線領域90pには、第2実施形態で説明したものと同様の態様により導電線が引き回されている。
【0191】
上述の説明から明らかなように、本実施形態では、筐体20が有する4面に含まれる隣り合う2面に対応して、実装基板91を屈曲させている。これによって、より広い範囲で導電線を引き回すことが可能になり、より十分なインダクタンスを得ることが可能になる。
【0192】
なお、接続端子92aと接続端子93a間を接続する配線パターンを実装基板91上に形成するか実装基板91内の配線層に形成するかどうかは任意である。接続端子92bと接続端子93b間を接続する配線パターンについても同様である。
【0193】
実装基板91の屈曲形状は、次のように表現することも可能である。実装基板91は、梁部26が設けられている筐体20の角部に対向する角部を基点として、梁部26が設けられている角部側へ、筐体20の内側面に沿って延在する。これにより、実装基板91は、筐体20の側壁21cと側壁21bの各内面に沿って延在する。これによって、実装基板91上にて十分なサイズのインダクタンスを確保することが可能/容易になる。
【0194】
本実施形態でも、第2実施形態と同様、コイル実装基板90は、ピエゾ素子50が近傍に配置されていない筐体20の側壁21に対して取り付けられる。筐体20内にて空間的に余裕がある場所にコイル実装基板90を取り付けることによって、z軸方向における筐体20のサイズが大きくなってしまうことを効果的に抑制することができる。
【0195】
図46に変形例に係るコイル実装基板90を示す。図46に示すように接続端子93を配置しても良い。この場合も、本実施形態と同様の効果を得ることができる。接続端子93の配置位置は、引出端子81、82の配置位置に対応していれば良い。図46を正面視して、接続端子93を実装基板の下辺側へ設ける場合、接続端子92と接続端子93間の短絡を防止するため、引出端子81の胴部81bの高さ(胴部81bのy軸方向の長さ)を低くすると良い。本変形例から明らかなように、接続端子92、93を設ける位置は適宜変更可能である。
【0196】
[第4実施形態]
図47を参照して第4実施形態について説明する。図47に示すカメラモジュール100では、上述の実施形態で説明した駆動方式とは異なる駆動方式に基づいてレンズホルダ31を変位させる。この場合であっても、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0197】
図47に示すように、筐体20に対してピエゾ素子50が位置的に固定されている。透明基板13上にピエゾ素子50が載置されることによって、ピエゾ素子50は、筐体20との関係において位置的に固定されている。伝達軸51は、ピエゾ素子50の上面に対して接着剤70を介して固定されている。また、蓋60に対して伝達軸51の上端部分が固定されている。
【0198】
レンズホルダ31は、軸保持部40を介して、伝達軸51に対して上下移動可能な状態で係合している。軸保持部40は、軸保持部40が伝達軸51上を摺動可能な状態で伝達軸51に対して係合している。ピエゾ素子50の駆動に応じて、レンズホルダ31は、伝達軸51上をy軸に沿って移動する。なお、透明基板13は、バンプBPを介して、配線基板10に対して電気的に接続されている。
【0199】
ピエゾ素子50に対してノコギリ歯状の駆動電圧波形を印加すると、レンズホルダ31は、上述の実施形態とは異なる挙動を示す。具体的には、緩慢に駆動電圧が降下するとき、レンズホルダ31は変位し、急峻に駆動電圧が上昇するとき、レンズホルダ31は変位しない。このようにレンズホルダ31の駆動方式が異なる場合であっても、上述の実施形態に開示された発明を適用することができる。なお、本実施形態の場合にも、上述の実施形態と同様の駆動電圧生成回路を用いることができる。発明者らの検討によれば、本実施形態の場合にも、若干の利得(ゲイン)が得られることが確認されている。本実施形態では、駆動動作を反転させる時の突入電流を防止するためのコイルが必要になる場合がある。この場合であっても、上述の実施形態に開示された発明を適用することが可能である。
【0200】
なお、筐体20に対してピエゾ素子50のみを直接的に固定してもよい。筐体20に対して伝達軸51のみを直接的に固定してもよい。シート状ゴム等の弾性部材を介して、ピエゾ素子50を筐体20に対して固定してもよい。同様に、弾性部材を介して、伝達軸51を筐体20に対して固定してもよい。
【0201】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。駆動装置の動作方式は任意である。固定側部材に対して、ピエゾ素子50又は伝達軸51を固定し、固定側部材に対して固定状態の伝達軸51上をレンズホルダ31が摺動するタイプの駆動装置に本発明を適用しても良い。この方式では、ピエゾ素子と伝達軸51も固定側部材となる。
【0202】
パターン配線にてコイルを形成する具体的な態様は任意である。渦巻き状に導電パターンを形成しても良い。
【符号の説明】
【0203】
100 カメラモジュール

10 配線基板
12 イメージセンサ
13 透明基板

20 筐体

30 レンズユニット
31 レンズホルダ
32 連結部
35 レール受け部
40 軸保持部

50 ピエゾ素子
51 伝達軸
52 リード線

60 蓋

81 引出端子
82 引出端子
85 離脱部

90 コイル実装基板
91 実装基板
92 接続端子
93 接続端子
95 コイルチップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子の駆動に基づいて固定側部材に対して移動対象物を変位させる駆動装置であって、
前記固定側部材には、前記圧電素子の駆動に応じて前記移動対象物が変位可能な状態で前記移動対象物が取り付けられ、かつ前記圧電素子が有する一組の電極端子を個別に外部へ接続する一組の引出端子が設けられており、
一組の前記電極端子と一組の前記引出端子間に形成される一組の配線の少なくとも一方には、前記圧電素子に対して駆動電圧波形を供給する回路に含まれる回路素子が含まれる、駆動装置。
【請求項2】
前記回路素子は、チップ状又は配線パターンから成るコイルであることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記コイルを具備する実装基板を更に備えることを特徴とする請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記固定側部材は、前記移動対象物を外囲する外囲器を含み、
前記外囲器は、一組の前記引出端子を備え、
前記実装基板は、前記外囲器の内側に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記実装基板は、一組の前記引出端子に接続される一組の接続端子を備え、
前記外囲器内に前記実装基板が配置されたとき、一組の前記引出端子と一組の前記接続端子は、互いに対向配置されることを特徴とする請求項4に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記外囲器は、複数の側壁を備える多角形状の箱状部材であり、
前記実装基板は、前記外囲器の第1側壁に沿って延在する第1基板部、および前記外囲器の第2側壁に沿って延在する第2基板部を備え、
前記第1基板部及び前記第2基板部には、前記配線パターンが形成されていることを特徴とする請求項4に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記圧電素子に対して駆動電圧波形を供給する前記回路としての駆動電圧生成回路を更に備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記駆動電圧生成回路は、
前記圧電素子の一方側電極から駆動電圧を印加する第1駆動回路と、前記圧電素子の他方側から駆動電圧を印加する第2駆動回路と、を備え、前記第1駆動回路と前記第2駆動回路とを切り替えることで前記圧電素子を伸縮動作させる交流の駆動電圧を生成するものであって、
前記第1駆動回路および前記第2駆動回路は、それぞれ前記回路素子として誘導性素子を備え、
前記駆動電圧波形の周波数は、前記第1および第2駆動回路に含まれるスイッチ抵抗、前記圧電素子の容量、および、前記誘導性素子のインダクタンス、の相互作用によって利得がゼロdBより大きくなる周波数レンジから選定されることを特徴とする請求項7に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記駆動電圧波形の周波数は、前記第1および第2駆動回路に含まれるスイッチ抵抗、前記圧電素子の容量、および、前記誘導性素子のインダクタンス、の相互作用によって利得が2dBより大きくなる周波数レンジから選定されることを特徴とする請求項8に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記駆動電圧波形の周波数は、前記第1および第2駆動回路に含まれるスイッチ抵抗、前記圧電素子の容量、および、前記誘導性素子のインダクタンス、の相互作用によって利得がゼロより大きくなる周波数レンジであって、かつ、共振点の周波数の前後10%は除外した周波数レンジから選定されることを特徴とする請求項9に記載の駆動装置。
【請求項11】
前記駆動電圧波形の周波数は、前記第1および第2駆動回路に含まれるスイッチ抵抗、前記圧電素子の容量、および、前記誘導性素子のインダクタンス、の相互作用によって利得がゼロより大きくなる周波数レンジであって、かつ、共振点の周波数より小さい周波数レンジから選定されることを特徴とする請求項10に記載の駆動装置。
【請求項12】
一組の電極端子を有する圧電素子と、
前記圧電素子の駆動に応じて前記圧電素子から伝わる振動を受ける駆動軸と、
前記圧電素子の駆動に応じて変位する移動対象物と、
前記圧電素子の駆動に応じて前記移動対象物が変位可能な状態で前記移動対象物が取り付けられ、かつ一組の前記電極端子を個別に外部へ接続する一組の引出端子を備える固定側部材と、
前記圧電素子に対して駆動電圧波形を供給する回路内に含まれ、かつ一組の前記電極端子と一組の前記引出端子間に形成される一組の配線の一方に含まれる第1回路素子と、
を備える駆動装置。
【請求項13】
前記圧電素子に対して駆動電圧波形を供給する前記回路内に含まれ、かつ一組の前記電極端子と一組の前記引出端子間に形成される一組の前記配線の他方に含まれる第2回路素子を更に備えることを特徴とする請求項12に記載の駆動装置。
【請求項14】
前記第1及び第2回路素子は、チップ状又は配線パターンから成るコイルであることを特徴とする請求項13に記載の駆動装置。
【請求項15】
前記コイルを具備する実装基板を更に備えることを特徴とする請求項14に記載の駆動装置。
【請求項16】
前記固定側部材は、前記移動対象物を外囲する外囲器を含み、
前記外囲器は、一組の前記引出端子を備え、
前記実装基板は、前記外囲器の内側に配置されていることを特徴とする請求項15に記載の駆動装置。
【請求項17】
前記移動対象物は、レンズを具備するレンズ保持体を含むことを特徴とする請求項1乃至16のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項18】
請求項17に記載の駆動装置と、
前記レンズを介して入力する像を撮像する撮像素子と、
を備える画像取得装置。
【請求項19】
請求項18に記載の画像取得装置を備える電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【公開番号】特開2012−5957(P2012−5957A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144193(P2010−144193)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(391002775)マクセルファインテック株式会社 (40)
【Fターム(参考)】