説明

駐車場用シート

【課題】ゴム汚染や白化現象によって美感が損なわれない駐車場用塩化ビニル樹脂製シート。
【解決手段】駐車場の床面に敷設される駐車場用シート10であって、塩化ビニル樹脂を主材料とする表面層1及び裏面層3と、両層1、3間に介在し、ガラス繊維からなる織布又は不織布からなる、中間層2と、を少なくとも含んでおり、表面層1が、着色剤を0.1〜20重量%含有しており、且つ、マンセル表色系において2〜9の明度及び7以下の彩度を有する色を呈している、塩化ビニル樹脂製シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車場の床面に敷設される駐車場用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の駐車場の多くは、モルタルやコンクリートの打ち放し、又は、塗り床、によって、床面が形成されている。塗り床を示す先行技術文献としては、下記のようなものが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3163447号公報
【特許文献2】特開2005−273147号公報
【特許文献3】特開2004−183388号公報
【特許文献4】特開2004−176448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来の駐車場では、次のような問題があった。
(1)塗り床の場合では、同一の塗布剤を塗布するので、床面に、所望の模様を付与することが困難である。したがって、高い意匠性を付与できない。打ち放しの場合では、更に、色彩の付与もできない。
(2)塗り床の床面では、下地面への付着力が弱いために膨れを生じる場合や、柔軟性が低いためにクラックを生じる場合があった。一方、打ち放しの場合では、微細な穴が生じ、その穴に、雨水が染みこんで汚れが固着することがある。施工後1年も経つと、雨水の流れた跡に、道のような筋状の汚れが付着し、すなわち、所謂「水の道」と呼ばれる汚れができる。それ故、床面が黒くなり、非常に見苦しくなる。
(3)タイヤ表面のゴムが削れてゴムの微小片が生じ、その微小片が、塗り床の場合には表面に発生したクラックに入り込み、打ち放しの場合には微細な穴の中に入り込む。それ故、床面が黒くなり、非常に見苦しくなる。
【0005】
そこで、本発明者は、塩化ビニル樹脂製シートを駐車場の床面に敷設することを検討した。これによれば、次のような利点がある。
(1)床面に、色彩及び模様を付与できるので、高い意匠性を付与できる。
(2)塩化ビニル樹脂製シートの表面は、打ち放しや塗り床の床面に比して、微細な穴が少なく、撥水性も高い。それ故、雨水の染み込みを防止して、雨水に起因した汚れの発生を防止できる。
(3)タイヤ表面のゴムが削れてゴムの微小片が生じても、その微小片が微細穴に入り込んで固着することは、殆ど無い。このため、生じたゴムの微小片を掃除によって簡単に除去でき、それ故、駐車場の美観を向上できる。
【0006】
しかしながら、塩化ビニル樹脂製シートを敷設後約1週間経過すると、シートに所謂「ゴム汚染」が発生し、シートの、タイヤと接する箇所が、茶褐色に変色し、それ故、美感が損なわれる、という問題が生じた。また、シートの、雨水が溜まった箇所では、白化現象が生じ、これによっても、美感が損なわれる、という問題が生じた。
【0007】
そこで、本発明者は、上記問題点について検討して、次の知見を得た。すなわち、ゴム汚染の原因は、タイヤに含有されている老化防止剤が、シートに染み込み、太陽光が当たることによって茶褐色に変色することである。また、白化現象は、シート表面の色が濃いほど目立ちやすい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、駐車場の床面に敷設される駐車場用シートであって、塩化ビニル樹脂を主材料とする表面層及び裏面層と、両層間に介在し、ガラス繊維からなる織布又は不織布からなる、中間層と、を少なくとも含んでおり、表面層が、着色剤を0.1〜20重量%含有しており、且つ、マンセル表色系において2〜9の明度及び7以下の彩度を有する色を呈している、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の駐車場用シートによれば、表面層が着色剤を含有しているので、シートの深部まで太陽光が届くのを遮ることできる。それ故、深部における老化防止剤の変色を防止でき、また、深部における変色がシートの表面に見えるのを遮り、隠蔽することができる。したがって、ゴム汚染による変色を、防止でき且つ隠蔽できる。また、表面層がマンセル表色系において2〜9の明度及び7以下の彩度を有する色を呈しているので、ゴム汚染による変色及び白化現象があっても、それを隠蔽できる。したがって、本発明の駐車場用シートは、汚れが目立たない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態の駐車場用シートの断面略図である。
【図2】第2実施形態の駐車場用シートの断面略図である。
【図3】第3実施形態の駐車場用シートの断面略図である。
【図4】第4実施形態の駐車場用シートの断面略図である。
【図5】第5実施形態の駐車場用シートの断面略図である。
【図6】第6実施形態の駐車場用シートの断面略図である。
【図7】第7実施形態の駐車場用シートの断面略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
図1は、本発明の一実施形態の駐車場用シートの断面略図である。このシート10は、表面層1と中間層2と裏面層3とが積層されて一体となった3層構造を、有している。
【0012】
(表面層1について)
表面層1は、塩化ビニル樹脂を主材料として用いて形成されている。そして、表面層1は、着色剤を0.1〜20重量%含有しており、且つ、マンセル表色系において2〜9の明度及び7以下の彩度を有する色を呈している。
【0013】
着色剤としては、無機顔料のみ、又は、無機顔料と有機顔料との組み合わせ、を使用できる。無機顔料としては、酸化チタン、カーボンブラック、黄鉛、カドミウムイエローペール、カドミウムイエローミドル、カドミウムレッド、弁柄、酸化クロムグリーン、マーキュリーレッド、ミネラルバイオレット、パーマネントレッド、ベンジジンイエロー、群青などを、使用できる。有機顔料としては、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン、ポリアゾ系レッド、ポリアゾ系イエロー、キナクリドン系顔料などを、使用できる。
【0014】
表面層1は、駐車場の床面を覆い且つタイヤの動きに耐えることができる、耐久性を、必要とする。したがって、表面層1の厚さは、好ましくは0.1〜5mm、より好ましくは0.2〜3mmである。表面層1が薄すぎる場合には、表面層1に必要とされる耐久性が得られず、また、付着したゴムを削って除去するという、清掃作業による消耗が、早いために、長期の使用が不可能となる。表面層1が厚過ぎる場合には、裏面層3とのバランスが崩れてシート10が反り、駐車場に必要な平面性が損なわれる。
【0015】
また、表面層1の硬度は、JISデュロメータータイプA硬度計によって測定した場合において、好ましくは60〜100、より好ましくは75〜90である。表面層1の硬度が低すぎる場合には、表面層1がタイヤの回転に追随して剥がれる恐れがある。表面層1の硬度が高すぎる場合には、衝撃によって表面層1に割れが生じる恐れがある。
【0016】
また、シート10は屋外で使用するので、表面層1は、好ましくは、耐候剤(紫外線吸収剤)を含有している。耐候剤としては、以下の化合物が挙げられる。
(i)ベンゾフェノン系:
・2−4−ジヒドロキシベンゾフェノン、
・2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、
・2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、
・2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン−5−スルホン酸。
(ii)ベンゾトリアゾール系:
・2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、
・2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、
・2−(2’−ヒドロキシ−3−5’−ジ−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、
・2−(2’−ヒドロキシ−3−5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、
・2−(2’−ヒドロキシ−3’−5−ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、
・2−(2’−ヒドロキシ−3’−ドデシル−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、
・2−2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]。
(iii)アクリレート系:
・エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、
・2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート。
(iv)サリシレート系:
・フェニルサリシレート、
・4−t−ブチルフェニルサリシレート。
(v)オキザニド系:
・2−エトキシ−2’−エチルオキザリックアシドビスアニリド、
・2−エトキシン−5−t−ブチル−2’−エチルオキザリックアシドビスアニリド。
(vi)粒径0.2μm以下の微粒子状の無機系:
・酸化チタン、
・酸化亜鉛、
・酸化セリウム。
【0017】
耐候剤の含有量は、好ましくは0.1〜2重量%である。0.1重量%未満では、満足できる耐候性を得ることができない。一方、2重量%を越えても、耐候性の更なる向上は見られず、特に、有機系紫外線吸収剤の場合には、経時的に又は熱加工時に、表面にブリードし易くなる。
【0018】
更に、表面層1の表面は、好ましくは、任意の柄パターンを有している。柄パターンとしては、例えば、磁器タイルを敷き詰めたような且つ水が流れやすい溝構造、割り石を敷き詰めたような溝構造などを、採用できるが、これらに限らない。
【0019】
また、表面層1の表面は、好ましくは、マーブル模様を有している。マーブル模様は、幾つかの色調がランダムに配置された模様であるので、汚れが目立ちにくく、しかも、美観が高く、したがって、本発明に好適に用いることができる。マーブル模様を作る方法としては、2つのバンバリーを使って2色のリボンを出し、カレンダーロール上で2色のリボンを混ぜて作る方法、ミルロールに巻きつけた樹脂上に、予め作った異色のモツルを練り込んで作る方法、があるが、これらに限らない。更に、具体的な方法は、特許第3069763号公報、特開2002−234116号公報、特開2008−023970号公報などに、記載されている。
【0020】
(中間層2について)
中間層2は、ガラス繊維からなる織布又は不織布であり、好ましくはネット構造を有している。ガラス繊維としては、例えば、Tex番手が5〜500g/1000mの糸を使用できる。中間層2の面密度は、例えば、1〜50×10−3gである。ネット構造の織り方としては、交互直交布、平織、絡み織、綾織などを、使用できる。シート10において、表面層1と裏面層3とは、共に中間層2を厚さ方向に通り抜けて、接合している。ネット構造の織り方として交互直交布を用いる場合には、床材表面の均一性が向上するため、所謂「床材の膨れ」が生じにくく、タイヤの押圧に対する耐久性が向上する。また、絡み織又は綾織を用いる場合には、ネット構造が強固となるため、引き裂きに対するシートの強度を向上でき、したがって、タイヤの旋回などの急激な動作に対するシートの強度を向上できる。
【0021】
(裏面層3について)
裏面層3は、塩化ビニル樹脂を主材料として用いて形成されている。裏面層3の裏面は、平滑である。
【0022】
(シート10の敷設方法)
シート10は、次の工程を経ることにより、駐車場の床面に敷設される。
・駐車場の床面を箒などで十分清掃する。その際、床面の、クラックや凹み跡は、市販のパテやモルタルで補修する。また、床面から突き出ている部分は、後に膨れの原因となるので、サンダーなどで削り取る。
・シート10の裏面の全面に接着剤を塗布し、一定時間放置した後、シート10を、床面上に設置し、空気を押し出すようにタイルローラーで圧着する。特に、車の出入り口部分に敷設する場合は、念入りに圧着する。なお、接着剤としては、耐水系接着剤(エポキシ系又はウレタン系の接着剤)を使用する。その際、将来の張替えを考慮して、裏面の周縁部だけに耐水性接着剤を塗布し、裏面の中央部にはアクリル系接着剤を塗布してもよい。
・そして、シート10同士の連結部分を、熱溶接又はシーム材で完全に接合する。
【0023】
(シート10の作用効果)
本実施形態のシート10は、上記のような表面層1を有しているので、次のような作用効果を発揮できる。
【0024】
(a)表面層1が着色剤を含有しているので、シート10の深部まで太陽光が届くのを遮ることができる。それ故、深部における老化防止剤の変色を防止でき、また、深部における変色がシート10の表面に見えるのを遮り、隠蔽することができる。したがって、ゴム汚染による変色を、防止でき且つ隠蔽できる。なお、着色剤の含有量が0.1重量%より少ない場合には、これらの効果を十分に発揮できない。一方、着色剤の含有量が20重量%より多い場合には、ブリーディングやマイグレーションという好ましくない現象が、生じやすくなる。「ブリーディング」とは、液状物質がシート表面に吐出する現象である。「マイグレーション」とは、シート表面に吐出した物質が、シート表面に接する他の物に、吸収される現象である。特に、ブリーディングは、シート表面を液で塗られたような状態にしてしまい、意匠性を低下させるので、好ましくない。また、着色剤として無機顔料を使用する場合には、着色剤によって太陽光を強く遮蔽することができ、しかも、着色剤が劣化して遮光性が低下するのを防止できる。
【0025】
(b)表面層1がマンセル表色系において2〜9の明度及び7以下の彩度を有する色を呈しているので、ゴム汚染による変色及び白化現象があっても、それを隠蔽できる。すなわち、明度が2より小さい場合には、表面層1が黒くなるので、ゴム汚染による変色は殆ど目立たないが、白化現象が目立つ。逆に、明度が9より大きい場合には、表面層1が白くなるので、ゴム汚染による変色が目立つ。本発明では、表面層1の色が2〜9の明度を有しているので、ゴム汚染による変色及び白化現象の両方を隠蔽できる。一方、ゴム汚染による変色は、黄色の色調である。そのため、表面層1の彩度が5より大きい場合には、一部の色相の床材において、黄色の色調が目立ち、7より大きい場合には、全ての色相の床材において、黄色の色調が目立つ。本発明では、表面層1の色が7以下の彩度を有しているので、黄色の色調が目立つのを防止でき、したがって、ゴム汚染による変色を隠蔽できる。
【0026】
[第2〜第7実施形態]
(1)図2は、第2実施形態の駐車場用シートの断面略図である。このシート10では、表面層1の構成が第1実施形態とは異なっている。すなわち、表面層1は、上記着色剤を含有したPETチップ11を、塩化ビニル樹脂に練り込んで、形成されている。このシート10によれば、表面層1にPETチップ11による意匠を付与できる。
【0027】
(2)図3は、第3実施形態の駐車場用シートの断面略図である。このシート10では、表面層1の構成が第1実施形態とは異なっている。すなわち、表面層1は、上記着色剤を含有したセルロース繊維12を、塩化ビニル樹脂に練り込んで、形成されている。このシート10によれば、表面層1にセルロース繊維12による意匠を付与できる。
【0028】
なお、第2及び第3実施形態において、PETチップ11及びセルロース繊維12のそれぞれの含有量は、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは1〜8重量%である。0.1重量%より少ない場合には、意匠効果を殆ど発揮できない。10重量%より多い場合には、シート10の穴あきやササクレの原因になる。
【0029】
(3)図4は、第4実施形態の駐車場用シートの断面略図である。このシート10では、表面層1の構成が第1実施形態とは異なっている。すなわち、表面層1は、上記着色剤を含有した塩化ビニル樹脂製チップ15であって、2色以上の該チップ15を、混合して固めて形成されている。このシート10によれば、表面層1にチップ15による意匠を付与できる。なお、使用するチップ15の色数は、好ましくは2〜10色、より好ましくは2〜5色である。2色より少ない場合には、無地となり、意匠効果を発揮できない。10色より多い場合には、多色になりすぎて、意匠効果を十分に発揮できず、また、混合が面倒である。
【0030】
(4)図5は、第5実施形態の駐車場用シートの断面略図である。このシート10では、表面層1の構成が第1実施形態とは異なっている。すなわち、表面層1の表面は、エンボス加工によって形成された凹部191及び凸部192を有しており、表面層1の表面には、この凹凸によって、周縁に向けた水の流路が形成されている。このシート10によれば、タイヤがシート10上でスリップするのを防止できる。また、このシート10によれば、シート10上に雨水などが溜まるのを防止でき、これにより、白化現象が起こるのを防止できる。なお、エンボス加工としては、深い凹凸を形成する加工が好ましく、凹凸の深さは、0.2〜1.0mmが好ましい。
【0031】
(5)図6は、第6実施形態の駐車場用シートの断面略図である。このシート10では、裏面層3の裏面の構成が第1実施形態とは異なっている。すなわち、裏面層3の裏面には、織布31が貼り付けられている。このシート10によれば、裏面層3の裏面が、接着剤と馴染みやすいので、床面への敷設作業を容易に行うことができる。
【0032】
(6)図7は、第7実施形態の駐車場用シートの断面略図である。このシート10では、裏面層3の裏面の構成が第1実施形態とは異なっている。すなわち、裏面層3の裏面には、エンボス加工によって凹凸32が形成されている。このシート10によれば、裏面層3の裏面が、接着剤と馴染みやすいので、床面への敷設作業を容易に行うことができる。なお、凹凸32は、裏面の周縁に抜ける溝を構成するように、形成されるのが好ましい。これによれば、裏面から接着剤の溶剤が抜けやすいので、敷設作業の効率を向上できる。
【0033】
[別の実施形態]
シート10は、図1に破線で示されるように、シート上端の角部101を斜めに切断して取り除くのが好ましい。特に駐車場の入り口側の端部をこのように処理した場合には、タイヤが乗り上げて最も捲れ易い角部101が無いので、タイヤの往来によってシート10が捲れるのを防止できる。なお、切断角度Rは、10〜70度が好ましい。10度より小さい場合には、切断作業が困難である。70度より大きい場合には、捲れ防止効果が不十分である。切断は、カンナ又はエッヂトリマーを使用して行うことができる。角部101を取り除いた後の端部分の厚さTは、0.1〜1.5mmが好ましい。なお、切断が困難な場合には、シート10の端部分にシール材を塗布し、これによって、シート10の端部分をなだらかにし、タイヤが端部分に引っ掛からないようにすればよい。
【実施例】
【0034】
[実施例1]
本実施例の駐車場用シートは、図5の構成を有している。このシート10は、次のようにして作製した。
・まず、表面層1を、次のようにして形成した。すなわち、まず、表1に示される成分及び配合からなるコンパウンド(A)と、着色剤と、を混合した。着色剤としては、酸化チタンを用いた。そして、得られた混合物を、逆Lカレンダーロールを用いてシート状に成形した。これにより、厚さ0.5mm及び幅1900mmの表面層1が得られた。
・次に、表1に示される成分及び配合からなるコンパウンド(B)を、押出機を用いてシート状に成形した。これにより、厚さ2mm及び幅1900mmの裏面層3が得られた。その際、裏面層3を得ながら、裏面層3の上に、中間層2と表面層3とを同時に加熱しながら積層した。これにより、表面層1と中間層2と裏面層3とが積層されて一体となった3層構造のシート10が得られた。なお、中間層2は、ガラス繊維の交互直行布であり、ガラス繊維のTex番手は300g/1000mであり、中間層2の面密度は5×10−3である。
・そして、表面層1の表面を加熱しながら、エンボスロールを用いて、表面層1の表面に凹凸を形成した。これにより、図5のシート10が得られた。
【0035】
【表1】

【0036】
[実施例2〜5及び比較例1、2]
コンパウンド(A)と着色剤との配合割合を、それぞれ、表2に示されるように設定し、その他は実施例1と同様にして、実施例2〜5及び比較例1、2の駐車場用シートを作製した。
【0037】
【表2】

【0038】
[比較例3]
表3に示されるように、1種類の着色剤を用い且つ着色剤の配合割合を1重量%とし、その他は実施例1と同様にして、比較例3の駐車場用シートを作製した。
【0039】
【表3】

【0040】
[実施例6〜10]
表3に示されるように、2種類以上の着色剤を用い且つ着色剤全体の配合割合を1重量%とし、その他は実施例1と同様にして、実施例6〜10の駐車場用シートを作製した。
【0041】
[試験]
実施例及び比較例の駐車場用シートが、ゴム汚染による変色を防止・隠蔽する効果、ブリーディングを防止する効果、及び白化現象を防止する効果を、どの程度発揮するか、について、試験により評価した。なお、各実施例及び比較例の、色相、明度、彩度は、色彩色差計CR−200(コニカミノルタセンシング株式会社製)によって測定した。
【0042】
(試験A:ゴム汚染による変色を防止・隠蔽する効果についての試験)
・試験方法
駐車場用シートの表面層の表面に、タイヤ(住友ゴム工業株式会社製)の切片を1ヶ月間押し当てた後、表面層の表面を、太陽光に1週間晒した。
・評価方法
表面層の表面を、蛍光灯の下で、1〜2m離れて、目視し、変色の程度に基づいて、表4に示されるように評価した。
【0043】
【表4】

【0044】
(試験B:ブリーディングを防止する効果についての試験)
・試験方法
駐車場用シートを、40℃のオーブンに1週間入れた後、常温に戻し、表面層の表面を、乾いた綿によって拭いた。
・評価方法
綿の汚れ具合に基づいて、表5に示されるように評価した。
【0045】
【表5】

【0046】
(試験C:白化現象を防止する効果についての試験)
・試験方法
駐車場用シートを、水の中に1週間入れた後、取り出して1日放置し、水の中に入れなかった場合と、比較した。
・評価方法
試験Aと同じである。
【0047】
(試験1)
実施例1〜5及び比較例1、2について、試験A及び試験Bを行った。表6は、その結果を示す。
【0048】
【表6】

【0049】
表6からわかるように、実施例1〜5は、両方の効果を満足できる程度に発揮できる。すなわち、着色剤の配合割合が0.1〜20重量%であると、ゴム汚染による変色を防止・隠蔽する効果、及び、ブリーディングを防止する効果、の両方を、満足できる程度に発揮できる。また、特に、実施例2〜4のように、着色剤の配合割合が1〜5重量%であると、両方の効果を、より良好に発揮できる。
【0050】
(試験2)
実施例6〜10及び比較例3について、試験A及び試験Cを行った。表7は、その結果を示す。
【0051】
【表7】

【0052】
表7からわかるように、駐車場用シートの表面層が白以外の色を呈している場合には、ゴム汚染による変色を防止・隠蔽する効果、及び、白化現象を防止する効果の両方を、満足できる程度に発揮できる。
【0053】
(試験3)
試験2の結果を受けて、白以外の全ての色の場合について、下記の関係X、Y、Zを調べた。
・関係X:明度とゴム汚染による変色を防止・隠蔽する効果との関係。
・関係Y:明度と白化現象を防止する効果との関係。
・関係Z:彩度とゴム汚染による変色を隠蔽する効果との関係。
【0054】
・試験方法及び評価方法
表面層が白い場合のゴム汚染による変色と同じ色である、黄色の、透明フィルムを用意した。そして、その透明フィルムと、マンセル表色系の各色と、を対比させることにより、各色について、試験A及び試験Cの場合と同様の評価を行った。関係X、Y、Zの試験結果をそれぞれ表8、9、10に示す。
【0055】
【表8】

【0056】
関係Xを示す表8からわかるように、明度が9以下であれば、ゴム汚染による変色を防止する効果を満足できる程度に発揮できる。
【0057】
【表9】

【0058】
関係Yを示す表9からわかるように、明度が2以上であれば、白化現象を防止する効果を満足できる程度に発揮できる。
【0059】
【表10】

【0060】
関係Zを示す表10からわかるように、彩度が7以下であれば、ゴム汚染による変色を目立たなくして隠蔽する効果を得ることができ、更に、彩度が5以下であれば、ゴム汚染による変色を目立たなくして隠蔽する効果を、全色相領域において、得ることができる。
【0061】
なお、上記評価からは、更に、次のことがわかる。すなわち、ゴム汚染の黄色に対して同系色(25〜35)付近の色相と、黄色に対して補色関係の紫(85〜90)付近の色相とでは、色がかなり違って見えるので、充分な隠蔽効果を得ることができる彩度の領域は狭い。したがって、この付近の色相では、彩度5以下が好ましい。また、その中間の、緑(40〜50)、青紫(75〜80)、赤紫(100〜5)、黄赤(20)付近の、色相では、彩度6以下が好ましい。更に、赤から黄赤(10〜15)、青緑から青(55〜70)付近の、色相では、彩度7以下が好ましく、最も広い彩度領域を使用できる。このため、この色相を本発明に用いた場合には、充分な隠蔽効果を得ることができる彩度の幅が広いので、仮に経年変化によって床材の彩度が変化したとしても、ゴム汚染が目立つことを防止できる。したがって、本発明においては、10〜15又は55〜70の色相を選択することが最も好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の駐車場用シートは、汚れが目立たないので、産業上の利用価値が大である。
【符号の説明】
【0063】
1 表面層 2 中間層 3 裏面層 10 駐車場用シート 11 PETチップ 12 セルロース繊維 15 塩化ビニル樹脂製チップ 191 凹部 192 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駐車場の床面に敷設される駐車場用シートであって、
塩化ビニル樹脂を主材料とする表面層及び裏面層と、
両層間に介在し、ガラス繊維からなる織布又は不織布からなる、中間層と、
を少なくとも含んでおり、
表面層が、着色剤を0.1〜20重量%含有しており、且つ、マンセル表色系において2〜9の明度及び7以下の彩度を有する色を呈している、
ことを特徴とする駐車場用シート。
【請求項2】
彩度が5以下である、
請求項1記載の駐車場用シート。
【請求項3】
表面層の表面が、凹凸を有しており、
表面層の表面には、上記凹凸によって、周縁に向けた水の流路が形成されている、
請求項1記載の駐車場用シート。
【請求項4】
表面層が、上記着色剤を含有した、PETチップ又はセルロース繊維を、塩化ビニル樹脂に練り込んで、形成されている、
請求項1記載の駐車場用シート。
【請求項5】
表面層が、上記着色剤を含有した塩化ビニル樹脂製チップであって、2色以上の該チップを、混合して固めて形成されている、
請求項1記載の駐車場用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−275830(P2010−275830A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132071(P2009−132071)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(000222495)東リ株式会社 (94)
【Fターム(参考)】