説明

高周波回路基板

【課題】高周波用途における電気信号の伝送損失を低減すると共に、熱可塑性液晶ポリマーと金属箔回路との密着性が高い、高周波回路基板を提供することを目的とする。
【解決手段】上記の課題は、表面に凹凸を有する金属箔であって、表面粗度(Rz)が1〜5μmの範囲内にあり、かつ表面粗度(Rz)と表面の凹凸間の間隔(Sm)との比(Rz/Sm)が、1.5〜3.5の範囲内にある表面を有する金属箔(好ましくは、銅箔)に、熱可塑性液晶ポリマーフィルムを積層した積層体からなる高周波回路基板により解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波伝送特性に優れ、かつフィルムとの密着性が十分な高周波回路基板に関し、特に、高周波伝送特性に優れ、かつフィルムとの密着性が十分な熱可塑性液晶ポリマーを絶縁層とする高周波回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高速伝送の普及に伴い、高速伝送時の伝送損失の小さい材料が求められる。熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、高速伝送時の伝送損失の小さい材料として知られているが(特許文献1)、伝送線路となる金属箔の形状、特に金属箔表面の凹凸が大きいと熱可塑性液晶ポリマーフィルムの高速伝送時の伝送損失が小さいという特性が十分に発揮されないことになり、表面粗度が小さい低粗度の金属箔が望ましいということになる(特許文献2)。しかしながら、低粗度の金属箔を用いると金属箔と熱可塑性液晶ポリマーフィルムとの密着性が不十分となるので、伝送損失と密着性の両者の特性を満足させるために種々の試みがなされてきているが、いまだ十分な解決を見ていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−179609号公報
【特許文献2】WO2005−037538号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、高周波回路における電気信号の伝送損失を低減することができると共に金属箔と樹脂との密着性が高い、高周波回路基板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、金属箔表面の粗度(Rz)、すなわち凹凸の高さだけでなく、粗度(Rz)と凹凸間の間隔(Sm)の両面から、金属箔表面の特性を見ることが重要であることを見出し、粗度が特定範囲内にあるとともに、粗度(Rz)と間隔(Sm)との比(Rz/Sm)が特定範囲内にあるとき、伝送損失が少なく、かつ、熱可塑性液晶ポリマーと金属箔(回路)との密着性の優れた高周波回路基板が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0006】
すなわち、本発明により、表面に凹凸を有する金属箔であって、表面粗度(Rz)が0.5〜5μmの範囲内にあり、表面粗度(Rz)と表面の凹凸間の間隔(Sm)との比(Rz/Sm)が、1.5〜3.5の範囲内にある表面を有する金属箔に、熱可塑性液晶ポリマーフィルムを積層した積層体からなる高周波回路基板が提供される。なお、本発明において表面粗度(Rz)および凹凸間の間隔(Sm)は、JIS B601−1994に準拠して求められる値であり、測定方法の詳細は後述する。
【0007】
上記高周波回路基板において、表面粗度(Rz)と表面の凹凸間の間隔(Sm)との比(Rz/Sm)が、1.5〜2.5の範囲内にあることが好ましく、金属箔は銅箔であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、特定範囲の表面粗度(Rz)を有し、かつ、表面粗度(Rz)と凹凸間の間隔(Sm)との比率(Rz/Sm)が特定範囲内にある金属箔を用いることにより、熱可塑性液晶ポリマーフィルムと金属箔との接着力が高く、かつ、高周波伝送損失の少ない高周波回路基板を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(金属箔)
本発明において用いられる金属箔として導電性を有するものであれば特に限定されないが、金、銀、銅、ステンレス、ニッケル、アルミニウムなどが例示される。好ましく用いられる金属箔としては、銅箔が挙げられる。銅箔としては、圧延法や電解法によって製造されるいずれのものでも使用することができる。金属箔の好ましい厚さ範囲は、5〜150μmであり、より好ましくは6〜70μm、特に好ましくは9〜35μmの範囲である。
【0010】
(金属箔表面の表面粗度と凹凸間の間隔)
本発明において用いられる金属箔としては、表面粗度(Rz)が0.5〜5μmの範囲内にあることが必要であり、1〜4μmの範囲内にあることが好ましい。表面粗度が0.5μm未満であると、金属箔と熱可塑性液晶ポリマー層との接着性が不十分となる。また、表面粗度が5μmを超えると伝送損失が大きくなり、実用性能を満足しないことがある。
また、本発明において用いられる金属箔としては、表面粗度(Rz)と表面の凹凸間の間隔(Sm)との比(Rz/Sm)が、1.5〜3.5の範囲内にあることが必要であり、1.5〜2.5の範囲内にあることが好ましい。この比が1.5未満の場合には、伝送損失の点では実用性があっても、接着性に乏しくなるので実用的な回路基板を形成することができなくなり、一方、この比が3.5を超えると、接着強度の点では実用性があっても伝送損失が大きくなり、実用的な回路基板を得ることができない。
【0011】
(金属箔表面の粗面化)
本発明において用いられる、表面粗度(Rz)が0.5〜5μmの範囲内にあり、かつ、表面粗度(Rz)と表面の凹凸間の間隔(Sm)との比(Rz/Sm)が1.5〜3.5の範囲内にある金属箔は、金属箔形成過程において表面を細かい凹凸が形成されるように製造されてもよいが、金属箔形成後、金属箔表面を粗化処理することにより得ることも出来る。粗化処理は、金属箔の元箔に金属粒子をめっきで付着させたり、または酸洗浄等により凹凸形成したりすることにより、粒子の大きさ、粒子間の間隔の調節を行って、表面粗度(Rz)、および表面粗度(Rz)と表面の凹凸間(Sm)の間隔との比(Rz/Sm)を充足する金属箔表面を得ることができる。めっきで付着させる粒子としては、Cuからなる粒子だけでなく、CuとMoの合金粒子、またはCuとNi、Co、Fe、C、V、Wの群から選ばれる少なくとも1種の元素からなる合金粒子によって形成されていてもよい。本発明で用いられる銅箔としては、三井金属鉱業(株)製のSQ−VLP、日鉱金属(株)製のBHY、STCS、古河電工(株)製のFWJ-WS、F3−WSなどの市販品を用いることもできる。
【0012】
(熱可塑性液晶ポリマーフィルム)
熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、溶融成形できる液晶性ポリマー(または溶融時における光学的異方性を有する液晶性ポリマー)から形成され、この熱可塑性液晶ポリマーは、溶融成形できる液晶性ポリマーであればその化学的構成については特に限定されるものではないが、例えば、熱可塑性液晶ポリエステル、又はこれにアミド結合が導入された熱可塑性液晶ポリエステルアミドなどを挙げることができる。
【0013】
また熱可塑性液晶ポリマーは、芳香族ポリエステルまたは芳香族ポリエステルアミドに、更にイミド結合、カーボネート結合、カルボジイミド結合やイソシアヌレート結合などのイソシアネート由来の結合等が導入されたポリマーであってもよい。
【0014】
本発明に用いられる熱可塑性液晶ポリマーの具体例としては、以下に例示する(1)から(4)に分類される化合物およびその誘導体から導かれる公知の熱可塑性液晶ポリエステルおよび熱可塑性液晶ポリエステルアミドを挙げることができる。ただし、光学的に異方性の溶融相を形成し得るポリマーを形成するためには、種々の原料化合物の組合せには適当な範囲があることは言うまでもない。
【0015】
(1)芳香族または脂肪族ジヒドロキシ化合物(代表例は表1参照)
【表1】

【0016】
(2)芳香族または脂肪族ジカルボン酸(代表例は表2参照)
【表2】

【0017】
(3)芳香族ヒドロキシカルボン酸(代表例は表3参照)
【表3】

【0018】
(4)芳香族ジアミン、芳香族ヒドロキシアミンまたは芳香族アミノカルボン酸(代表例は表4参照)
【表4】

【0019】
これらの原料化合物から得られる液晶ポリマーの代表例として表5および6に示す構造単位を有する共重合体を挙げることができる。
【0020】
【表5】

【0021】
【表6】

【0022】
これらの共重合体のうち、p―ヒドロキシ安息香酸および/または6−ヒドロシキ−2−ナフトエ酸を少なくとも繰り返し単位として含む重合体が好ましく、特に、(i)p−ヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロシキ−2−ナフトエ酸との繰り返し単位を含む重合体、(ii)p−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロシキ−2−ナフトエ酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族ヒドロキシカルボン酸と、4,4’−ジヒドロキシビフェニルおよびヒドロキノンからなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族ジオールと、テレフタル酸、イソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族ジカルボン酸との繰り返し単位を含む重合体が好ましい。
【0023】
例えば、(i)の重合体では、熱可塑性液晶ポリマーが、少なくともp−ヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロシキ−2−ナフトエ酸との繰り返し単位を含む場合、繰り返し単位(A)のp−ヒドロキシ安息香酸と、繰り返し単位(B)の6−ヒドロシキ−2−ナフトエ酸とのモル比(A)/(B)は、液晶ポリマー中、(A)/(B)=10/90〜90/10程度であるのが望ましく、より好ましくは、(A)/(B)=50/50〜85/15程度であってもよく、さらに好ましくは、(A)/(B)=60/40〜80/20程度であってもよい。
【0024】
また、(ii)の重合体の場合、p−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロシキ−2−ナフトエ酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族ヒドロキシカルボン酸(C)と、4,4’−ジヒドロキシビフェニルおよびヒドロキノンからなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族ジオール(D)と、テレフタル酸、イソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族ジカルボン酸(E)の、液晶ポリマーにおける各繰り返し単位のモル比は、芳香族ヒドロキシカルボン酸(C):前記芳香族ジオール(D):前記芳香族ジカルボン酸(E)=30〜80:35〜10:35〜10程度であってもよく、より好ましくは、(C):(D):(E)=35〜75:32.5〜12.5:32.5〜12.5程度であってもよく、さらに好ましくは、(C):(D):(E)=40〜70:30〜15:30〜15程度であってもよい。
【0025】
また、芳香族ジカルボン酸に由来する繰り返し構造単位と芳香族ジオールに由来する繰り返し構造単位とのモル比は、(D)/(E)=95/100〜100/95であることが好ましい。この範囲をはずれると、重合度が上がらず機械強度が低下する傾向がある。
【0026】
なお、本発明にいう溶融時における光学的異方性とは、例えば試料をホットステージにのせ、窒素雰囲気下で昇温加熱し、試料の透過光を観察することにより認定できる。
【0027】
熱可塑性液晶ポリマーとして好ましいものは、融点(以下、Mpと称す)が260〜360℃の範囲のものであり、さらに好ましくはMpが270〜350℃のものである。なお、Mpは示差走査熱量計((株)島津製作所DSC)により主吸熱ピークが現れる温度を測定することにより求められる。
【0028】
前記熱可塑性液晶ポリマーには、本発明の効果を損なわない範囲内で、ポリエチレンテレフタレート、変性ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエステルエーテルケトン、フッ素樹脂等の熱可塑性ポリマーを添加してもよい。
【0029】
本発明に使用される熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、熱可塑性液晶ポリマーを押出成形して得られる。熱可塑性液晶ポリマーの剛直な棒状分子の方向を制御できる限り、任意の押出成形法が適用できるが、周知のTダイ法、ラミネート体延伸法、インフレーション法などが工業的に有利である。特にインフレーション法やラミネート体延伸法では、フィルムの機械軸方向(以下、MD方向と略す)だけでなく、これと直交する方向(以下、TD方向と略す)にも応力が加えられ、MD方向とTD方向における誘電特性を制御したフィルムが得られる。
【0030】
押出成形では、配向を制御するために、延伸処理を伴うのが好ましく、例えば、Tダイ法による押出成形では、Tダイから押出した溶融体シートを、フィルムの機械軸方向(以下、MD方向と略す)だけでなく、これと直交する方向(以下、TD方向と略す)の双方に対して同時に延伸してもよいし、またはTダイから押出した溶融体シートを一旦MD方向に延伸し、ついでTD方向に延伸してもよい。
【0031】
また、インフレーション法による押出成形では、リングダイから溶融押出された円筒状シートに対して、所定のドロー比(MD方向の延伸倍率に相当する)およびブロー比(TD方向の延伸倍率に相当する)で延伸してもよい。
【0032】
このような押出成形の延伸倍率は、MD方向の延伸倍率(またはドロー比)として、例えば、1.0〜10程度であってもよく、好ましくは1.2〜7程度、さらに好ましくは1.3〜7程度であってもよい。また、TD方向の延伸倍率(またはブロー比)として、例えば、1.5〜20程度であってもよく、好ましくは2〜15程度、さらに好ましくは2.5〜14程度であってもよい。
【0033】
そして、MD方向とTD方向とのそれぞれの延伸倍率の比(TD方向/MD方向)は、例えば、2.6以下、好ましくは0.4〜2.5程度であってもよい。
【0034】
また、必要に応じて、押出成形された原反シートに対して、公知または慣用の熱処理(例えば、液晶ポリマーの融点(Mp)以上(例えば、Mp〜Mp+30℃程度、好ましくはMp+10〜Mp+20℃程度)で熱処理を行い、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの融点や熱膨張係数を調整してもよい。
【0035】
また、熱可塑性液晶ポリマーフィルムには、押出成形した後に、必要に応じて延伸を行ってもよい。延伸方法自体は公知であり、二軸延伸、一軸延伸のいずれを採用してもよいが、分子配向度を制御することがより容易であることから、二軸延伸が好ましい。また、延伸は、公知の一軸延伸機、同時二軸延伸機、逐次二軸延伸機などが使用できる。
【0036】
以上のようにして得られた熱可塑性液晶ポリマーフィルムでは、剛直な棒状分子の方向性が制御された結果、分子配向度を示すSOR(Segment Orientation Ratio)が、例えば、SOR≦1.20(例えば、1.02〜1.20程度)であってもよく、好ましくは1.05〜1.19、さらに好ましくは1.07〜1.19であってもよい。ここで、分子配向度SORとは、分子配向の度合いを与える指標をいい、従来のMOR(Molecular Orientation Ratio)とは異なり、物体の厚さを考慮した値である。本発明で使用する熱可塑性液晶ポリマーフィルムのSORは、MD方向の誘電特性を改善し且つMD方向とTD方向との間における機械的性質および熱的性質のバランスが良好を考慮する必要があり、SORは、後述する実施例に記載された方法により測定された値を示す。
【0037】
本発明において使用される熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、任意の厚みであってもよく、そして、5mm以下の板状またはシート状のものをも包含する。ただし、高周波伝送線路に使用する場合は、厚みが厚いほど伝送損失が小さくなるので、できるだけ厚みを厚くする必要がある。しかしながら電気絶縁層として熱可塑性液晶ポリマーフィルムを単独で用いる場合、そのフィルムの膜厚は、10〜500μmの範囲内にあることが好ましく、15〜200μmの範囲内がより好ましい。フィルムの厚さが薄過ぎる場合には、フィルムの剛性や強度が小さくなることから、フィルム膜厚10〜200μmの範囲のフィルムを積層させて任意の厚みを得る方法を使用してもよい。
【0038】
(回路基板)
本発明の高周波回路基板は、電気絶縁層である熱可塑性液晶ポリマーフィルムの両面に銅などの金属を電気導電層として形成した積層体からなるものである。熱可塑性液晶ポリマーフィルム面への金属層の形成は、金属箔を真空熱プレス装置や加熱ロール積層設備等を用いて熱圧着することにより行うことができる。熱可塑性液晶ポリマーフィルム層と金属箔との積層体を複数層積層して多層化した回路基板を形成することもできる。熱圧着後、エッチングなどの方法により、金属箔に回路パターンを形成して、配線回路基板を得ることができる。
【0039】
本発明の積層体は、熱可塑性液晶ポリマーフィルムと銅箔との2層構造に限られるものではない。すなわち、積層体は、少なくとも1層の熱可塑性液晶ポリマーフィルムと少なくとも1層の銅箔を含むものであればよく、例えば、下記I)〜III)に示した積層体を例示することができる。
なお、フィルム層は、フィルム1枚からなる単層だけでなく、数枚のフィルムを積層した
フィルム積層体であってもよい。
I) 銅箔/フィルム/銅箔
II) フィルム/銅箔/フィルム
III) 銅箔/フィルム/銅箔/フィルム/銅箔
【0040】
本発明において回路基板とは、熱可塑性液晶ポリマーフィルム層からなる基板の片面又は両面に導体層(導電体回路層)が形成されたものをいう。また、導体層と絶縁層とが交互に層形成してなる多層プリント配線板において、該多層プリント配線板の最外層の片面又は両面が導体層(導電体回路層)となっているものも本発明にいう回路基板に含まれる。上記導体層は、パターン加工されて配線回路基板となる。
【0041】
本発明の高周波回路基板にスルーホールを形成する方法としては、ドリルによる加工法や、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザーなどのレーザーによる加工法を採用することができる。スルーホール形成時の発熱で、孔内に付着した熱可塑性液晶ポリマーの切削クズ(スミヤ)は、汎用の市販薬剤を用いて、化学的に溶解除去することが好ましい。
【0042】
また、本発明の高周波回路基板のスルーホールにめっきを施す方法としては、従来周知の方法を採用することができ、無電解銅めっきと電解銅めっきによるパターンめっきおよび/またはパネルめっきを順次施せばよい。
【0043】
(高周波回路)
本発明において高周波回路とは、単に高周波信号のみを伝送する回路からなるものだけでなく、高周波信号を低周波信号に変換して、生成された低周波信号を外部へ出力する伝送路や、高周波対応部品の駆動のために供給される電源を供給するための伝送路等、高周波信号ではない信号を伝送する伝送路も同一平面上に併設された回路も含まれる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0045】
(銅箔表面の粗度と凹凸間隔の測定方法)
形状測定顕微鏡(キーエンス(株)製、型式:VK−810) を用い、測定倍率1000倍で銅箔の表面粗度(Rz)および凹凸間の間隔(Sm)を測定した。測定はJIS B0601―1994に準拠した方法により行った。表面粗度(Rz)は、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さを抜き取り、最高から5番目までの山頂(凸の頂点)の標高の平均値と、最深から5番目までの谷底(凹の底点)の標高の平均値との差をμmで表わしたもので、十点平均粗さを示している。また、凹凸間の間隔(Sm)は、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さを抜き取り、一つの凸部及びそれに隣り合う一つの凹部に対応する平均線の長さの和(凹凸の間隔)を求め、この多数の凹凸間隔の算術平均値をμmで表わしたものである。
【0046】
(接着強度の測定方法)
JIS C5016−1994に準拠して、毎分50mmの速度で銅箔を銅箔除去面に対して90°の方向に引きはがしながら、引っ張り試験機[日本電産シンポ(株)製、デジタルフォースゲージFGP-2] により、銅箔の引きはがし強さを測定し、得られた値を接着強度とした。
【0047】
(伝送損失の測定方法)
マイクロ波ネットワークアナライザー[アジレント(Agilent)社製、型式:8722ES]とプローブ(カスケードマイクロテック社製、型式:ACP40−250)を用いて、測定周波数40GHzで測定した。
【0048】
(銅箔)
表7に示す銅箔について、上記の測定方法に従って、各銅箔の表面粗度(Rz)および凹凸間の間隔(S)を測定し、表8および表9に示した。
【0049】
【表7】

【0050】
(熱可塑性液晶ポリマーフィルム)
p−ヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の共重合物で、融点が280℃である熱可塑性液晶ポリマーを溶融押出し、インフレーション成形することにより得られた、膜厚が50μmの熱可塑性液晶ポリマーフィルム(分子配向度:1.05)を用いた。
【0051】
(回路基板)
上記の熱可塑性液晶ポリマーフィルムの上下に、表7に示す銅箔を重ね合わせ、真空熱プレス装置を用いて、加熱盤を295℃に設定し、4MPaの圧力下、10分間、圧着して、電解銅箔/熱可塑性液晶ポリマーフィルム/電解銅箔の構成の積層体(A)を作製した。得られた積層体の銅箔面に回路パターンを化学エッチング法により作製し、回路パターンを有する積層体(B)を得た。
【0052】
表7に示す各銅箔を用いて作製した積層板について、積層板(A)を用いて接着強度、積層板(B)を用いて伝送損失を測定し、その結果を表8及び表9に示した。
【0053】
【表8】

【0054】
【表9】

【0055】
上記の実施例及び比較例の結果から明らかであるように、Rz/Sm比が、1.5〜3.5の範囲内にある各実施例の結果は、接着強度が、0.5kgf以上であり、かつ、伝送損失が、−0.35よりも損失が少ない値であり、接着強度と伝送損失の両面の点でバランスが取れた積層回路基板であることが分かる。
一方、比較例1,2,5では、伝送損失が−0.35よりも損失が低くても接着強度が0.5kgfより低く実用的に受け入れられない値を示し、また、比較例3,4では、接着強度が0.5kgf以上の高い値を示していても、伝送損失が−0.35よりも損失が大きく、実用的でない結果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、伝送損失が少なく、密着性の高い高周波回路基板が得られるので、高速伝送用の各種高周波回路基板として有用であるので、産業上の利用可能性は高い。
【0057】
以上、本発明の好ましい実施態様を例示的に説明したが、当業者であれば、特許請求の範囲に開示した本発明の範囲及び精神から逸脱することなく多様な修正、付加および置換ができることが理解可能であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凹凸を有する金属箔であって、表面粗度(Rz)が0.5〜5μmの範囲内にあり、表面粗度(Rz)と表面の凹凸間の間隔(Sm)との比(Rz/Sm)が、1.5〜3.5の範囲内にある表面を有する金属箔に、熱可塑性液晶ポリマーフィルムを積層した積層体からなる高周波回路基板。
【請求項2】
請求項1において、表面粗度(Rz)と表面の凹凸間の間隔(Sm)との比(Rz/Sm)が、1.5〜2.5の範囲内にある高周波回路基板。
【請求項3】
請求項1において、金属箔が銅箔である高周波回路基板。

【公開番号】特開2011−216598(P2011−216598A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82100(P2010−82100)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】