高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックス及びその製造方法
【課題】 高温耐酸化性に優れ、自己温度調節機能を有し、加工を容易に行うことができる抵抗発熱体として使用可能な導電性快削セラミックス及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
312チタンアルミニウムカーバイド(Ti3AlC2)とチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶体を主成分とする高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックス及びその製造方法であって、312チタンアルミニウムカーバイド(Ti3AlC2)とチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶体におけるチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶量xを特定の範囲とする。
【解決手段】
312チタンアルミニウムカーバイド(Ti3AlC2)とチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶体を主成分とする高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックス及びその製造方法であって、312チタンアルミニウムカーバイド(Ti3AlC2)とチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶体におけるチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶量xを特定の範囲とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックス及びその製造方法に関するものであり、更に詳しくは、高温耐酸化性に優れ、自己温度調節機能を有し、加工を容易に行うことができる導電性快削セラミックス及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
三元系化合物の312チタンアルミニウムカーバイド(以下、Ti3AlC2と表記する)、211チタンアルミニウムカーバイド(以下、Ti2AlCと表記する)、チタンシリコンカーバイド(以下、Ti3SiC2と表記する)、211チタンアルミニウムナイトライド(以下、Ti2AlNと表記する)を主成分とするセラミックスは、金属導電性(電気抵抗の温度係数が正の導電性)を示し、グラファイト並に切削加工できる導電性快削セラミックスであり、機能材及び構造材として期待されている(非特許文献1、2、3、4)。これらは、高温の酸化雰囲気では、表面に緻密で酸素を通さない酸化アルミニウム(以下、Al2O3と表記する)や酸化ケイ素(以下、SiO2と表記する)の被膜が形成されるため、一度被膜が形成されると、それ以上酸化されにくいと言われている。
【0003】
高純度のSiO2の融点は1713℃であるが、金属イオン等の不純物があると融点が低下する。また、574℃、870℃及び1470℃で相変態(結晶構造の変化)が生じ、体積が不連続に変化する。一方、高純度のAl2O3の融点は2050℃とSiO2よりも高く、常圧では相変態もしないため、不純物による融点の低下を考慮しても、SiO2の被膜よりもAl2O3の被膜の方がより高温まで安定である。したがって、高温の酸化雰囲気でAl2O3の被膜を形成するTi3AlC2、Ti2AlC、Ti2AlNを主成分とするセラミックスは、SiO2の被膜を形成するTi3SiC2よりも、より高温まで耐酸化性が優れていると考えられる。
【0004】
実際に、Ti3AlC2を主成分とするセラミックスを合成し、1000℃の空気中で高温耐酸化性を調べたところ、図1に示すように、100時間でも酸化増量は0.01kg/m2以下で、耐酸化性が優れている純クロム材(1000℃90時間で約0.06kg/m2(非特許文献5))より耐酸化性が優れていた。しかし、1200℃の空気中で高温耐酸化性を調べたところ、図2に示すように、20時間までは酸化増量が0.02kg/m2以下と耐酸化性が優れていたが、20時間を超えると酸化増量が急増し始め、60時間で1kg/m2を超え、100時間では試験片全体が酸化することが確認された。これより、1200℃以上では耐酸化性が十分でないことがわかった。
【0005】
上述の三元系化合物を主成分とするセラミックスは、金属導電性(電気抵抗の温度係数が正の導電性)を有することから、温度の上昇に伴って電気抵抗が増加するため、抵抗発熱体(ヒーターエレメント)として使用すると、自己温度調節機能が発現する。すなわち、温度が上昇すると、電気抵抗が増加して電流が流れにくくなり、過度の温度上昇が抑えられる。一方、温度が低下すると電気抵抗が減少して電流が流れやすくなり、過度の温度低下が抑えられる。また、耐熱衝撃性に優れることから、急速昇温、急速冷却が可能である。さらに、快削性を有することから、切削による複雑形状への加工や精密加工が容易で、従来の難加工性セラミックス系抵抗発熱体にはない利点を有する。しかしこれらの利点も、高温での耐酸化性が十分でないと活かすことができない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】M.W.Barsoum,“The MN+1AXN Phases:A New Class of Solids; Thermodynamically Stabel Nanolaminates”,Progress in Solid State Chemistry,Vol.28(2000),pp.201-281.
【非特許文献2】X.H.Wang,Y.C.Zhou,“Microstructure and properties of Ti3AlC2prepared by the solid-liquid reaction synthesis and simultaneous in-situ hot pressing process”,Acta Materialia, Vol.50(2002),pp.3141-3149.
【非特許文献3】V.Gauthier-Brunet,T.Cabioc’h,P.Chartier,M.Jaouen,S.Dubois,“Reaction synthesis of layered ternary Ti2AlC ceramic”,Journal of the European Ceramic Society,Vol.29(2009),pp.187-194.
【非特許文献4】M.W.Barsoum,M.Ali,T.El-Raghy,“Processing and characterization of Ti2AlC,Ti2AlN, and Ti2AlC0.5N0.5”,Metallurgical and Materials Transactions,Vol.31A(2000),pp.1857-1865.
【非特許文献5】Y.P.Jacob、V.A.C.Haanappel、M.F.Stroosnijder、H.Buscail、P.Fielitz、G.Borchardt、“The effect of gas composition on the isothermal oxidation behavior of PM chromium”、CorrosionScience、Vol.44(2002)、pp.2027-2039.
【非特許文献6】Z.M.Sun,Z.F.Zhang,H.Hashimoto,T.Abe,“Ternary compound Ti3SiC2:Part I.Pulse discharge sintering synthesis”,Materials Transactions,Vol.43(2002),pp.428-431.
【非特許文献7】Y.Zou,Z.M.Sun,H.Hashimoto,S.Tada,”Mechanical behavior of Ti3AlC2prepared by pulse discharge sintering method“,Materials Transactions,Vol.48(2007),pp.2431-2435.
【非特許文献8】堂山昌男、矢部正也、「金属間化合物データハンドブック」、サイエンスフォーラム(東京)、1989年、pp.104-107.
【非特許文献9】H.Hashimoto,Z.M.Sun,S.Tada,Y.Zou,“Strengthening of titanium silicon carbide by grain orientation control and silicon carbide whisker dispersion”,Materials Transactions,Vol.48(2007),pp.2427-2431.
【非特許文献10】朴 容浩、厳 泰永、橋本 等、阿部利彦、裴 且憲、金 雨烈、「MA−プラズマ法により作製したMoSi2化合物及びMoSi2/Nb複合焼結体の組織と性質」、粉体及び粉末冶金、第44巻(1997)、79-85ページ.
【非特許文献11】日本金属学会編、「金属データブック」改訂2版、丸善、東京、1984年、13ページ.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、高温耐酸化性に優れ、自己温度調節機能を有し、加工を容易に行うことができる抵抗発熱体として使用可能な導電性快削セラミックス及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)312チタンアルミニウムカーバイド(Ti3AlC2)とチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶体を主成分とすることを特徴とする高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックス。
(2)312チタンアルミニウムカーバイド(Ti3AlC2)とチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶体におけるチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶量xが0<x<0.4の範囲であることを特徴とする前記(1)に記載の高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックス。
(3)空気中、1200℃100時間の酸化試験後の酸化増量が0.1kg/m2未満であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックス。
(4)312チタンアルミニウムカーバイド(Ti3AlC2)とチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶体におけるチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶量xが0<x<0.16の範囲であることを特徴とする前記(1)に記載の高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックス。
(5)空気中、1480℃100時間の酸化試験後の酸化増量が0.2kg/m2未満であることを特徴とする前記(1)又は(4)に記載の高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックス。
(6)チタン、アルミニウム、シリコン、炭化チタンの混合粉末を焼結して、312チタンアルミニウムカーバイド(Ti3AlC2)とチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶体とすることを特徴とする高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックスの製造方法。
(7)モル比が、チタン:アルミニウム:シリコン:炭化チタン=2:(2−y):y:3で、yの値が0<y<0.8の範囲であり、312チタンアルミニウムカーバイド(Ti3AlC2)とチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶体におけるチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶量xを0<x<0.4の範囲とすることを特徴とする前記(6)に記載の高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックスの製造方法。
(8)モル比が、チタン:アルミニウム:シリコン:炭化チタン=2:(2−y):y:3で、yの値が0<y<0.32の範囲であり、312チタンアルミニウムカーバイド(Ti3AlC2)とチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶体におけるチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶量xを0<x<0.16の範囲とすることを特徴とする前記(6)に記載の高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックスの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、次のような効果が奏される。
【0010】
312チタンアルミニウムカーバイド(Ti3AlC2)とチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶体におけるチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶量を特定の範囲とすることにより、1200℃以上の空気中での耐酸化性に優れた導電性快削セラミックスを製造することができる。
【0011】
また、複雑形状への加工や精密加工を切削加工や放電加工により容易に行うことができ、自己温度調節機能があり、高温の酸化雰囲気で長時間使用可能な軽量の抵抗発熱体とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】合成したTi3AlC2を主成分とするセラミックスの1000℃の空気中での酸化増量の試験時間による変化
【図2】合成したTi3AlC2を主成分とするセラミックスの1200℃の空気中での酸化増量の試験時間による変化
【図3】Ti3AlC2又はTi3SiC2の結晶格子モデル
【図4】Ti3SiC2の固溶量(モル分率)x=0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5のTi3AlC2−Ti3SiC2固溶体を主成分とするセラミックスの1000℃の空気中での酸化増量の試験時間による変化
【図5】x=0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5の固溶体を主成分とするセラミックスの空気中1000℃100時間後の酸化増量の比較
【図6】x=0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5の固溶体を主成分とするセラミックスの1200℃の空気中での酸化増量の試験時間による変化
【図7】x=0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5の固溶体を主成分とするセラミックスの空気中1200℃100時間後の酸化増量の比較
【図8】1200℃100時間の酸化試験前後の試験片(x=0、0.1、x=0.5)の外観写真
【図9】模擬空気を毎分0.81リットルの流量で流しながら、1385℃100時間の酸化試験を行った後の酸化増量の比較(x=0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5)
【図10】1385℃100時間の酸化試験後の試験片(x=0、0.1、0.2)の外観写真
【図11】酸化試験後の試験片(x=0、0.1)の断面のエネルギー分散型X線分析装置付きの走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)写真(反射電子像、元素像)
【図12】模擬空気を毎分0.81リットルの流量で流しながら、1484℃100時間の酸化試験を行った後の酸化増量の比較(x=0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5)
【図13】模擬空気を毎分0.81リットルの流量で流しながら、1484℃100時間の酸化試験を行った後の酸化増量の比較(x=0、0.02、0.04、0.12、0.14、0.16、0.18、0.20)
【図14】室温における固溶体(x=0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5)を主成分とするセラミックスの電気伝導率と比抵抗
【図15】固溶体(x=0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5)を主成分とするセラミックスの密度
【図16】2.5mm径の高速度鋼製ドリル刃でボール盤により、穴開け加工を施した(a)x=0.5及び(b)x=0の固溶体を主成分とするセラミックスの外観写真
【図17】x=0,0.1、0.2、0.3、0.4、0.5の固溶体を主成分とするセラミックスの熱膨張率(20〜1000℃の平均値)
【図18】ヒーターエレメント図
【図19】Ti3Al0.9Si0.1C2の固溶体を主成分とするセラミックス製ヒーターエレメントの急速昇温・冷却試験時の温度測定結果
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックスは、Ti3AlC2とTi3SiC2の固溶体を主成分とするものである。
【0014】
Ti3AlC2とTi3SiC2は、図3に示すように、同一の結晶構造で、炭化チタン(TiC)八面体結晶格子からなる層とアルミニウム(Al)またはケイ素(Si)からなる単原子層が結晶のc軸方向に交互に積層している。すなわち、単原子層の構成原子がAlであるかSiであるかの違いだけである。そのため、Ti3AlC2とTi3SiC2は、0〜100%の割合で固溶する。すなわち、Ti3AlC2とTi3SiC2の固溶体は、TiCからなる層とAl及びSiからなる単原子層が交互に積層しており、結晶構造が変わることなく、単原子層内のAlとSiの割合は0〜100%の割合で変わることができる。別の言い方をすると、Ti3AlC2のAl原子のサイトをSi原子で0〜100%の範囲で置換することができる。
【0015】
しかし、Al原子(原子半径1.18Å)に比べてSi原子(原子半径1.11Å)はやや小さいため、Ti3AlC2に0〜50%のTi3SiC2が固溶する。すなわち、Ti3AlC2のAl単原子層のAl原子の0〜50%がサイズの小さいSi原子で置換されることによって、Al単原子層は収縮し、TiC層内には圧縮応力が生じ、単原子層内には逆に引張応力が生じるものと考えられる。
【0016】
Ti3AlC2に含まれるAlの酸化によって、表面にAl2O3の被膜が形成され、形成されたAl2O3は体積が膨張するが、被膜の基材(Ti3AlC2)に拘束され、Al2O3被膜内部には被膜の表面方向に圧縮応力が生じる。この圧縮応力が大きくなると、被膜の一部は基材との界面から剥離して浮き上がる。この際にAl2O3被膜にクラックが入ると、クラックから酸素が侵入し、剥離した部分で基材のTi3AlC2内部でさらに酸化が進行すると考えられる。
【0017】
しかし、Ti3AlC2にTi3SiC2を固溶させることによって、Al単原子層内に引張応力が生じれば、この圧縮応力を緩和でき、その結果、Al2O3被膜が剥離しにくくなり、耐酸化性が向上するものと考えられる。
【0018】
そこで、Ti3AlC2にTi3SiC2を種々のモル分率で固溶させた固溶体を合成し、高温での耐酸化性を評価したところ、Ti3SiC2の固溶量(モル分率)が特定の範囲内にある場合に耐酸化性が著しく改善されることが確認された。また、固溶体について、室温での比抵抗を測定したところ、発熱体として十分に使用可能であることが確認された。更に、高速度鋼製のドリル刃を用いて、穴開け加工が可能であることを確認し、高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックスを合成できることがわかった。本発明は、これらの知見によりなされたものである。
【0019】
本発明に係るTi3AlC2とTi3SiC2の固溶体の最適な合成条件を見出すために以下に示す種々の検証を行った。
<固溶体の合成>
Ti3AlC2に固溶量(モル分率)xのTi3SiC2を固溶させた固溶体は、(Ti3AlC2)1−x(Ti3SiC2)xと表せるが、Ti3AlC2とTi3SiC2は同一結晶構造をとることから、ここでは固溶体をTi3Al1−xSixC2と表す。
【0020】
これまでに、Ti3SiC2の合成には、原料としてチタン(Ti)粉末、ケイ素(Si)粉末、炭化チタン(TiC)粉末を用い、Ti:Si:TiC=2:2:3(モル比)の割合で混合した粉末を用いることにより、高純度のTi3SiC2を合成できることが知られている(非特許文献6)。同様に、Ti3AlC2の合成には、原料としてTi:Al:TiC=2:2:3(モル比)の混合粉末を用いることにより、高純度のTi3AlC2を合成できることが知られている(非特許文献7)。
【0021】
上記の条件を考慮して、Ti3AlC2にTi3SiC2を0〜50%固溶させた固溶体、すなわちTi3Al1−xSixC2(x=0〜0.5)を合成するため、モル比でTi:Al:Si:TiC=2:(2−y):y:3(y=0、0.2、0.4、0.6、0.8、1.0)の6種類の混合粉末を準備し、これを黒鉛製の内径30mmの円筒形焼結型に入れ、真空中で加圧焼結を行うことにより、固溶体の合成を行った。焼結温度は1200℃、1300℃、1400℃、加圧力は50MPa、焼結温度保持時間は15分間とした。
【0022】
一般に、結晶構造が同じ物質AとBの固溶体のX線回折パターンにおいて、ミラー指数が同一、すなわち同一の回折格子面からの回折ピークの位置(回折角度)は、物質AとBの対応する回折ピーク位置の中間にくる。そこで、合成したものについてX線回折パターンを調べたところ、ミラー指数が同一の回折格子面からの回折ピークの位置が、JCPDS粉末回折データベースで調べたTi3AlC2とTi3SiC2の回折ピーク位置の中間になっていたことから、固溶体を合成できたことが確認できた。
<固溶量xの算出方法>
一般に、固溶体の組成(固溶量)と結晶格子間隔の間には直線関係が成り立つ。これをVegardの法則という。結晶格子間隔と回折ピークの位置(回折角度)の関係は、Braggの法則に従うので、固溶体の回折ピークの位置から結晶格子間隔を計算し、JCPDS粉末回折データベースで調べたTi3AlC2とTi3SiC2の結晶格子間隔と比較することにより、Ti3SiC2の固溶量xを計算することができる。
【0023】
本発明では、合成した固溶体の回折ピークの位置からTi3SiC2の固溶量xを計算した。この計算は、回折ピークの位置(回折角度)の測定精度に左右されるので、Ti3AlC2とTi3SiC2の回折ピーク位置(回折角度2θ)の差が0.5°以上の回折ピークだけを選んで計算に用いた。また、固溶体の組成によっては、2つの回折ピークが接近し、互いに重なりあう場合があり、2つのピーク位置を正確に求めることが困難になる場合がある。
【0024】
例えば、回折面が104と008の回折ピークは、Ti3SiC2の固溶量xが0<x<0.28の範囲で重なり合って、2つのピーク位置を正確に求めることが困難になる。また、回折面205と1013の回折ピークも0.08<x<0.20の範囲で重なり合って、2つのピーク位置を正確に求めることが困難になる。さらに、201と1012のピークは0.16<x<0.28の範囲で重なり合って、2つのピーク位置を正確に求めることが困難になる。そこで、これらの組成範囲においては、重なり合うピークは固溶量の計算から除外した。
【0025】
表1に、合成条件(モル比Ti:Al:Si:TiC=2:(2−y):y:3の原料混合粉末中のSiの量y、加圧焼結温度)、X線回折パターンから同定した合成体に含まれる形成相の種類、回折ピークから計算したTi3SiC2の固溶量(モル分率)xの値をまとめて示す。
【0026】
【表1】
【0027】
合成体に含まれる形成相の種類は、回折メインピークの強い順に左から並べて示す。すなわち、左から順に、主成分、第2成分、第3成分、第4成分となっている。表1からわかるように焼結温度1200℃では、固溶体の組成は目標から遠く、また、y=0及びy=0.2の原料組成では、固溶体は主成分ではなく、第2成分となっている。一方、1300℃、1400℃の焼結温度で、ほぼ目標とする組成の固溶体が主成分のセラミックスが合成できることがわかる。
<酸化試験>
次に、固溶体を主成分とするセラミックスの耐酸化性を調べるため、モル比でTi:Al:Si:TiC=2:(2−y):y:3(y=0、0.2、0.4、0.6、0.8、1.0)の6種類の混合粉末を準備し、これを黒鉛製の内径50mmの円筒形焼結型に入れ、真空中で1400℃、50MPa、15分間の条件で加圧焼結を行うことにより固溶体を合成した。表2に、X線回折パターンから同定した合成体に含まれる形成相の種類、固溶体の組成をまとめて示す。
【0028】
【表2】
【0029】
表2から、ほぼ目標固溶量の固溶体を主成分とするセラミックスを合成できていることがわかる。
【0030】
これらの合成体から、5×5×10mmの試験片を放電加工により切り出し、ダイヤモンド研磨盤で表面を研磨し、1μmのダイヤモンドスラリー研磨剤でバフ研磨をして仕上げた。
<酸化試験条件:空気中1000℃>
これらの試験片を用いて、電気炉により、空気中1000℃の温度で酸化試験を行った。1、2、4、6、10、15、20、40、60、80、100時間の各時間で試験片を電気炉から取り出して、室温まで冷却後、重量を測定し、酸化増量を計算した。
【0031】
図4に、試験時間による酸化増量の変化を示す。どの目標組成の固溶体を主成分とするセラミックスも最初の20時間で酸化増量が急激に増加した後、飽和する傾向があることがわかる。
【0032】
図5に、1000℃、100時間後の酸化増量を比較したグラフを示す。どの目標組成の固溶体を主成分とするセラミックスも酸化増量は0.01kg/m2以下であり、純クロム材(1000℃、90時間で約0.06kg/m2(非特許文献5))より耐酸化性が優れていることがわかる。
<酸化試験条件:空気中1200℃>
図6に、1200℃での酸化試験の試験時間による酸化増量の変化を示す。Ti3SiC2の目標固溶量x=0.1、0.2及び0.3の場合は、酸化増量が小さく、酸化が進みにくいが、x=0.4と0.5の場合は、酸化が進行している。一方、x=0すなわちTi3AlC2の場合は、20時間まではx=0.1〜0.3の場合と同様に酸化増量が小さいが、その後急激に増加し、100時間では最も酸化増量が大きいことがわかる。
【0033】
図7に、1200℃、100時間後の酸化増量を比較したグラフを示す。x=0.1、0.2、0.3の場合は、酸化増量は0.02kg/m2以下であるが、x=0.4と0.5の場合は0.5kg/m2を超え、x=0の場合は1.5kg/m2を超えている。
【0034】
上記の検証によって、Ti3SiC2の目標固溶量xを0<x<0.4の範囲とすることにより、空気中、1200℃100時間の酸化試験後の酸化増量が0.1kg/m2未満となることが確認できた。
【0035】
図8に、1200℃100時間の酸化試験前後の試験片(x=0、0.1、0.5)の外観写真を示す。酸化増量が大きなx=0と0.5の試験片では、試験片表面に厚い酸化物が形成されていることがわかる。
<酸化試験条件:模擬空気中1385℃>
図9に、模擬空気(79体積%窒素−21体積%酸素混合ガス)を毎分0.81リットルの流量で流しながら、電気炉中で1385℃、100時間の酸化試験を行った後の酸化増量を比較した結果を示す。x=0.1以外は、すべて酸化増量が0.5kg/m2を超えている。一方、x=0.1の場合の酸化増量は0.052kg/m2であった。
【0036】
図10に、1385℃100時間の酸化試験後の試験片(x=0、0.1、0.2)の外観写真を示す。酸化増量が大きなx=0と0.2の試験片では、試験片表面に厚い酸化皮膜が形成されていることがわかる。
【0037】
図11に、エネルギー分散型X線分析装置付きの走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による酸化試験後の試験片(x=0、0.1)の断面の分析結果(反射電子像、Al元素像、Ti元素像、O元素像)をまとめて示す。x=0の試験片では、試験片表面から内部にかけて、Al,Ti及びOが観察され、試験片内部まで酸化していることがわかる。試験片表面のX線回折パターンを調べたところ、試験片表面には、酸化チタン(TiO2)と複合酸化物(Al2TiO5)の回折ピークが見られた。一方、x=0.1の試験片では、試験片表面にAlとOを含む被膜が見られるが、内部にはOは見られない。試験片表面のX線回折パターンを調べたところ、試験片表面には、酸化アルミニウム(Al2O3)、固溶体Ti3Al0.9Si0.1C2とごくわずかな酸化チタン(TiO2)の回折ピークが見られた。したがって、表面に形成された酸化アルミニウム被膜により、内部への酸化の進行が抑制されたものと考えられる。
<酸化試験条件:模擬空気中1484℃>
固溶体について、模擬空気(79体積%窒素−21体積%酸素混合ガス)を毎分0.81リットルの流量で流しながら、電気炉中で1484℃100時間の酸化試験を行った後の酸化増量を比較した。図12にその結果を示す。x=0.1以外は、すべて酸化増量が1.5kg/m2を超えている。また、一方、x=0.1の場合の酸化増量は0.082kg/m2で、酸化増量が抑えられている。試験片表面のX線回折パターンを調べたところ、試験片表面には、酸化アルミニウム(Al2O3)の回折ピークだけが見られた。
【0038】
これらのことから、1484℃100時間酸化試験後の酸化増量が少ない組成範囲はTi3SiC2の目標固溶量xが、0<x<0.2の間にあると考えられる。そこで、酸化増量が少ない組成の限界値を調べるため、x=0側から、0.02単位でxを増加させながら、また、x=0.2側から0.02単位でxを減少させながら、合成した固溶体を主成分とするセラミックスについて、1484℃100時間の酸化試験を行い、酸化増量を比較した。その結果を図13に示す。
【0039】
図13には、酸化増量0.1と0.2kg/m2を点線で示してある。図13から、1484℃100時間酸化試験後の酸化増量が少ない組成範囲は0<x<0.16の範囲である。特に、0.02<x<0.16の範囲では酸化増量0.1kg/m2以下となることがわかる。x=0.02では、酸化増量が0.104kg/m2となり、わずかに0.1kg/m2を超えている。したがって、0<x<0.16の範囲では、酸化増量0.2kg/m2以下を満たすものと考えられる。
【0040】
上記のx=0.02、0.04、0.12、0.14、0.16、0.18の固溶体を主成分とするセラミックスの合成は、モル比でTi:Al:Si:TiC=2:(2−y):y:3の混合粉末で、y=0.04、0.08、0.24、0.28、0.32、0.36とした混合粉末を真空中で焼結温度1400℃、焼結圧力50MPa、焼結温度保持時間15分間の条件で加圧焼結して行った。
<電気伝導率と比抵抗>
図14に、固溶体を主成分とするセラミックスの室温で測定した電気伝導率と電気抵抗率(比抵抗)を固溶体の組成xに対してプロットしたグラフを示す。これより、どの組成でも比抵抗が2×10−7Ωm〜5×10−7Ωmの範囲にあることがわかる。高温酸化雰囲気で使用可能な公知のセラミックス発熱体として、二ケイ化モリブデン(MoSi2)発熱体があるが、その比抵抗は2.15×10−7Ωm(非特許文献8)であり、本固溶体が発熱体として使用可能であることが確認された。
【0041】
図15に、室温で測定した5×5×10mmの試験片の寸法と重量から計算した固溶体を主成分とするセラミックスの密度をTi3SiC2の固溶量xに対してプロットしたグラフを示す。密度は4.18×103〜4.35×103kg/m3の範囲内にあり、MoSi2の密度6.27×103kg/m3(非特許文献8)の70%以下であり、より軽量の発熱体であることがわかる。文献によれば、端成分であるTi3AlC2の4点曲げ強度が350〜416MPa(非特許文献7)、Ti3SiC2の4点曲げ強度が350MPa(非特許文献9)であり、本発明の固溶体を主成分とするセラミックスは、これらの値と同等、又は固溶強化により若干高めと考えられる。一方、MoSi2の4点曲げ強度は325〜430MPa(非特許文献10)であり、固溶体を主成分とするセラミックスはMoSi2とほぼ同等の強度を持つものと考えられる。
<切削加工性>
図16に、2.5mm径の高速度鋼製ドリル刃でボール盤により、穴開け加工を施した(a)x=0.5及び(b)x=0の固溶体を主成分とするセラミックスの外観写真を示す。穴の周辺には欠けやクラックが見られず、切削加工が容易であることが確認された。
<熱膨張率>
図17は、x=0,0.1,0.2,0.3,0.4,0.5の固溶体を主成分とするセラミックスの熱膨張率を20〜1000℃の温度範囲で測定し、その値をxに対してプロットしたものである。9.7〜10.2×10−6K−1の範囲にあり、セラミックスとしては大きく、金属のチタン(20〜800℃で9.9×10−6K−1(非特許文献11))や白金(20〜1000℃で10.2×10−6K−1(非特許文献11))に近い。
<合成条件>
上記の各種検証の結果から、本発明においてTi3AlC2とTi3SiC2の固溶体原料のモル比は、チタン:アルミニウム:シリコン:炭化チタン=2:(2−y):y:3で、yの値が0<y<0.8の範囲のとすることができる。
【0042】
また、本発明のTi3AlC2にTi3SiC2の固溶体を主成分とするセラミックスの好ましい合成条件としては、空気中で、1200℃100時間の酸化試験後の酸化増量を0.1kg/m2未満とする場合、Ti3SiC2の固溶量xは0<x<0.4の範囲である。
【0043】
また、模擬空気中で、1484℃100時間の酸化試験後の酸化増量を0.2kg/m2未満とする場合、Ti3SiC2の固溶量xは0<x<0.16の範囲であり、酸化増量を0.1kg/m2未満とする場合0.02<x<0.16の範囲である。
<製造方法>
本願発明のTi3AlC2とTi3SiC2の固溶体を主成分とするセラミックスは、各原料粉末を上記の合成条件で混合、焼結して製造することができる。
【0044】
具体的には、Ti3AlC2、Ti3SiC2の固溶体を主成分とするセラミックスの各原料粉末を、本願発明のモル比の範囲内となるように秤量して、粉末混合機等を用いて十分に混合する。この混合粉末を黒鉛焼結型等に充填した後、真空または不活性ガスの雰囲気中で、焼結温度1300〜1400℃、印加圧力30〜70MPa、焼結温度保持時間5〜60分の条件で焼結して焼結体を製造することができる。これらの焼結工程には放電プラズマ焼結装置を好適に用いることができる。上記条件で製造した焼結体は切削加工、放電加工により所望の形状に加工することができる。
【実施例】
【0045】
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。すなわち、本発明は、その技術的思想の範囲である限り、以下の実施例以外の態様あるいは変形を全て包含するものである。
<実施例1>
目標組成がTi3Al0.7Si0.3C2、Ti3Al0.8Si0.2C2、Ti3Al0.9Si0.1C2の固溶体を合成するため、チタン粉末(純度99.9%、粒子径0.045mm以下)、アルミニウム粉末(純度99.9%、粒子径0.105mm以下)、シリコン粉末(純度99.9%、粒子径0.045mm以下)、炭化チタン粉末(純度99%、平均粒子径1.72μm)をモル比がチタン:アルミニウム:シリコン:炭化チタン=2:1.4:0.6:3、2:1.6:0.4:3、2:1.8:0.2:3となるように秤量し、粉末混合機(Willy A. Bachofen製TURBULA)で6時間混合した。
【0046】
これら3種類の混合粉末50gを内径50mmの円筒形黒鉛焼結型に充填し、放電プラズマ焼結装置(ソディック製PAS−V)を用いて、真空中で焼結温度1400℃、印加圧力50MPa、焼結温度保持時間15分間の条件で、加圧焼結(ホットプレス)を行った。
【0047】
焼結体の表面を研削盤で研削して、表面の黒鉛を取り除いた後、X線回折パターンを測定したところ、固溶体と思われるピーク、TiCと、ごくわずかなTi5Si3のピークが検出された。固溶体のピーク位置から、Vegardの法則により、固溶体組成を計算したところ、それぞれ目標組成に近い固溶体Ti3Al0.72Si0.28C2、Ti3Al0.81Si0.19C2、Ti3Al0.91Si0.09C2となっていることがわかった。
【0048】
焼結体から、放電加工機で切り出し、ダイヤモンド研磨盤で表面を研磨し、1μmのダイヤモンド研磨剤スラリーでバフ研磨して、5×5×10mmの試験片を準備した。これを、1200℃に加熱した電気炉に投入し、1、2、4、6、10、15、20、40、60、80、100時間の各時間で試験片を電気炉から取り出して、室温まで冷却後、重量を測定し、酸化増量を計算した。その結果、20時間まで急激に増加した後、飽和する傾向が見られた。100時間後の酸化増量は、それぞれ0.018,0.018,0.019kg/m2であった。文献によれば、耐酸化性が良い金属である純クロム材の酸化増量は1000℃90時間で約0.06kg/m2(非特許文献5)であるから、これよりも良いことがわかった。
<実施例2>
目標組成がTi3Al0.86Si0.14C2、Ti3Al0.88Si0.12C2、Ti3Al0.90Si0.10C2の固溶体を主成分とするセラミックスを合成するため、チタン粉末(実施例1に同じ)、アルミニウム粉末(実施例1に同じ)、シリコン粉末(実施例1に同じ)、炭化チタン粉末(実施例1に同じ)をモル比がチタン:アルミニウム:シリコン:炭化チタン=2:1.72:0.28:3、2:1.76:0.24:3、2:1.80:0.20:3となるように秤量し、粉末混合機(実施例1に同じ)で6時間混合した。
【0049】
それぞれの混合粉末50gを内径50mmの円筒形黒鉛焼結型に充填し、放電プラズマ焼結装置(実施例1に同じ)を用いて、真空中で焼結温度1400℃、加圧力50MPa、焼結温度保持時間15分間の条件で、加圧焼結を行った。
【0050】
焼結体の表面を研削盤で研削して、表面の黒鉛を取り除いた後、X線回折パターンを測定したところ、固溶体と思われるピークとTiCのピークが検出された。固溶体のピーク位置から、Vegardの法則により、固溶体組成を計算したところ、それぞれ目的組成に近い固溶体Ti3Al0.87Si0.13C2、Ti3Al0.89Si0.11C2、Ti3Al0.91Si0.09C2となっていることがわかった。
【0051】
焼結体から、放電加工機で切り出し、ダイヤモンド研磨盤で表面を研磨し、1μmのダイヤモンド研磨剤スラリーでバフ研磨して、5×5×10mmの試験片を準備した。これを、模擬空気(79体積%窒素−21体積%酸素混合ガス)を毎分0.81リットル流した電気炉で、1484℃100時間加熱した。電気炉中で室温まで冷却後、重量を測定し、酸化増量を計算した。その結果、酸化増量はそれぞれ0.076、0.077、0.081kg/m2であった。
<実施例3>
目標組成がTi3Al0.9Si0.1C2の固溶体を主成分とするセラミックスを合成するため、チタン粉末(実施例1に同じ)、アルミニウム粉末(実施例1に同じ)、シリコン粉末(実施例1に同じ)、炭化チタン粉末(実施例1に同じ)をモル比がチタン:アルミニウム:シリコン:炭化チタン=2:1.8:0.2:3となるように秤量し、粉末混合機(実施例1に同じ)で6時間混合した。
【0052】
この混合粉末100gを内径50mmの円筒形黒鉛焼結型に充填し、放電プラズマ焼結装置(実施例1に同じ)を用いて、真空中で焼結温度1400℃、印加圧力50MPa、焼結温度保持時間15分間の条件で、加圧焼結を行った。焼結体から、放電加工機で図18に示した厚さ3mmのヒーターエレメントを切り出し、空気中で通電加熱試験を行った。
【0053】
図19に、急速昇温・冷却試験時の温度測定結果を、設定昇温・冷却速度と実測の昇温速度、冷却速度の最大値とともに示す。温度はエレメントの表面を赤外放射温度計で計測した。試験後もヒーターエレメントにはクラック等は観察されず、毎秒78℃の急速昇温、毎秒45℃の急速冷却を行っても問題ないことが確認された。
<比較例1>
目標組成がTi3Al0.5Si0.5C2、Ti3Al0.6Si0.4C2の固溶体を主成分とするセラミックスを合成するため、チタン粉末(実施例1に同じ)、アルミニウム粉末(実施例1に同じ)、シリコン粉末(実施例1に同じ)、炭化チタン粉末(実施例1に同じ)をモル比がチタン:アルミニウム:シリコン:炭化チタン=2:1.0:1.0:3、2:1.2:0.8:3となるように秤量し、粉末混合機(実施例1に同じ)で6時間混合した。
【0054】
これら2種類の混合粉末50gを内径50mmの円筒形黒鉛焼結型に充填し、放電プラズマ焼結装置(実施例1に同じ)を用いて、真空中で焼結温度1400℃、印加圧力50MPa、焼結温度保持時間15分間の条件で、加圧焼結を行った。
【0055】
焼結体の表面を研削盤で研削して、表面の黒鉛を取り除いた後、X線回折パターンを測定したところ、固溶体と思われるピーク、TiCとごくわずかなTi5Si3のピークが検出された。固溶体のピーク位置から、Vegardの法則により、固溶体組成を計算したところ、それぞれ目標組成に近い固溶体Ti3Al0.53Si0.47C2、Ti3Al0.62Si0.38C2となっていることがわかった。
【0056】
焼結体から、放電加工機で切り出し、ダイヤモンド研磨盤で表面を研磨し、1μmのダイヤモンド研磨剤スラリーでバフ研磨して、5×5×10mmの試験片を準備した。これを、1200℃に加熱した電気炉に投入し、1、2、4、6、10、15、20、40、60、80、100時間の各時間で試験片を電気炉から取り出して、室温まで冷却後、重量を測定し、酸化増量を計算した。その結果、ほぼ直線的に増加する傾向が見られた。100時間後の酸化増量は、それぞれ0.81,0.66kg/m2であった。
<比較例2>
目標組成がTi3AlC2を主成分とするセラミックスを合成するため、チタン粉末(実施例1に同じ)、アルミニウム粉末(実施例1に同じ)、炭化チタン粉末(実施例1に同じ)をモル比がチタン:アルミニウム:炭化チタン=2:2:3となるように秤量し、粉末混合機(実施例1に同じ)で6時間混合した。
【0057】
この混合粉末50gを内径50mmの円筒形黒鉛焼結型に充填し、放電プラズマ焼結装置(実施例1に同じ)を用いて、真空中で焼結温度1400℃、印加圧力50MPa、焼結温度保持時間15分間の条件で、加圧焼結を行った。
【0058】
焼結体の表面を研削盤で研削して、表面の黒鉛を取り除いた後、X線回折パターンを測定したところ、Ti3AlC2とTiCのピークが検出された。焼結体から、放電加工機で切り出し、ダイヤモンド研磨盤で表面を研磨し、1μmのダイヤモンド研磨剤スラリーでバフ研磨して、5×5×10mmの試験片を準備した。
【0059】
これを、1200℃に加熱した電気炉に投入し、1、2、4、6、10、15、20、40、60、80、100時間の各時間で試験片を電気炉から取り出して、室温まで冷却後、重量を測定し、酸化増量を計算した。その結果、20時間までは増加量は0.02kg/m2以下であったが、40時間を超えると急激に増加し、100時間後の酸化増量は、1.91kg/m2であった。
<比較例3>
目標組成がTi3Al0.82Si0.18C2、Ti3Al0.84Si0.16C2の固溶体を主成分とするセラミックスを合成するため、チタン粉末(実施例1に同じ)、アルミニウム粉末(実施例1に同じ)、シリコン粉末(実施例1に同じ)、炭化チタン粉末(実施例1に同じ)をモル比がチタン:アルミニウム:シリコン:炭化チタン=2:1.64:0.36:3、2:1.68:0.32:3となるように秤量し、粉末混合機(実施例1に同じ)で6時間混合した。
【0060】
それぞれの混合粉末50gを内径50mmの円筒形黒鉛焼結型に充填し、放電プラズマ焼結装置(実施例1に同じ)を用いて、真空中で焼結温度1400℃、加圧力50MPa、焼結温度保持時間15分間の条件で、加圧焼結を行った。
【0061】
焼結体の表面を研削盤で研削して、表面の黒鉛を取り除いた後、X線回折パターンを測定したところ、固溶体と思われるピークとごくわずかなTiCのピークが検出された。固溶体のピーク位置から、Vegardの法則により、固溶体組成を計算したところ、それぞれ目的組成に近い固溶体Ti3Al0.83Si0.17C2、Ti3Al0.85Si0.15C2となっていることがわかった。焼結体から、放電加工機で切り出し、ダイヤモンド研磨盤で表面を研磨し、1μmのダイヤモンド研磨剤スラリーでバフ研磨して、5×5×10mmの試験片を準備した。これを、模擬空気(79体積%窒素−21体積%酸素混合ガス)を毎分0.81リットル流した電気炉で、1484℃100時間加熱した。電気炉中で室温まで冷却後、重量を測定し、酸化増量を計算した。その結果、酸化増量はそれぞれ1.59,2.21kg/m2であった。
<比較例4>
目標組成がTi3AlC2を主成分とするセラミックスを合成するため、チタン粉末(実施例1に同じ)、アルミニウム粉末(実施例1に同じ)、炭化チタン粉末(実施例1に同じ)をモル比がチタン:アルミニウム:炭化チタン=2:2:3となるように秤量し、粉末混合機(実施例1に同じ)で6時間混合した。
【0062】
この混合粉末50gを内径50mmの円筒形黒鉛焼結型に充填し、放電プラズマ焼結装置(実施例1に同じ)を用いて、真空中で焼結温度1400℃、印加圧力50MPa、焼結温度保持時間15分間の条件で、加圧焼結を行った。
【0063】
焼結体の表面を研削盤で研削して、表面の黒鉛を取り除いた後、X線回折パターンを測定したところ、Ti3AlC2とTiCのピークが検出された。焼結体から、放電加工機で切り出し、ダイヤモンド研磨盤で表面を研磨し、1μmのダイヤモンド研磨剤スラリーでバフ研磨して、5×5×10mmの試験片を準備した。これを、模擬空気(79体積%窒素−21体積%酸素混合ガス)を毎分0.81リットル流した電気炉で、1484℃100時間加熱した。電気炉中で室温まで冷却後、重量を測定し、酸化増量を計算した。その結果、酸化増量は2.15kg/m2であった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明により、1200℃以上の酸化雰囲気で長時間使用可能な軽量の金属導電性を示す導電性セラミックスを製造することが可能になる。また、この材料は複雑形状への加工や精密加工を切削加工や放電加工により容易に行うことができる。これによって、1200℃以上の酸化雰囲気中で長時間使用可能な自己温度調節機能を備えた軽量の抵抗発熱体(ヒーターエレメント)を開発することができる。しかも、加工コストを抑えることができ、安価に供給することができる。また、切削によるネジ加工も可能で、熱膨張率もセラミックスとしては大きく、チタンや白金等の金属に近いので、ネジによる金属との直接接合も可能になり、ヒーターエレメントと電極の接続、ヒーターエレメントの保持も容易になる。また、熱衝撃に強いため、急速昇温(毎秒78℃)、急速冷却(毎秒45℃)が可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックス及びその製造方法に関するものであり、更に詳しくは、高温耐酸化性に優れ、自己温度調節機能を有し、加工を容易に行うことができる導電性快削セラミックス及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
三元系化合物の312チタンアルミニウムカーバイド(以下、Ti3AlC2と表記する)、211チタンアルミニウムカーバイド(以下、Ti2AlCと表記する)、チタンシリコンカーバイド(以下、Ti3SiC2と表記する)、211チタンアルミニウムナイトライド(以下、Ti2AlNと表記する)を主成分とするセラミックスは、金属導電性(電気抵抗の温度係数が正の導電性)を示し、グラファイト並に切削加工できる導電性快削セラミックスであり、機能材及び構造材として期待されている(非特許文献1、2、3、4)。これらは、高温の酸化雰囲気では、表面に緻密で酸素を通さない酸化アルミニウム(以下、Al2O3と表記する)や酸化ケイ素(以下、SiO2と表記する)の被膜が形成されるため、一度被膜が形成されると、それ以上酸化されにくいと言われている。
【0003】
高純度のSiO2の融点は1713℃であるが、金属イオン等の不純物があると融点が低下する。また、574℃、870℃及び1470℃で相変態(結晶構造の変化)が生じ、体積が不連続に変化する。一方、高純度のAl2O3の融点は2050℃とSiO2よりも高く、常圧では相変態もしないため、不純物による融点の低下を考慮しても、SiO2の被膜よりもAl2O3の被膜の方がより高温まで安定である。したがって、高温の酸化雰囲気でAl2O3の被膜を形成するTi3AlC2、Ti2AlC、Ti2AlNを主成分とするセラミックスは、SiO2の被膜を形成するTi3SiC2よりも、より高温まで耐酸化性が優れていると考えられる。
【0004】
実際に、Ti3AlC2を主成分とするセラミックスを合成し、1000℃の空気中で高温耐酸化性を調べたところ、図1に示すように、100時間でも酸化増量は0.01kg/m2以下で、耐酸化性が優れている純クロム材(1000℃90時間で約0.06kg/m2(非特許文献5))より耐酸化性が優れていた。しかし、1200℃の空気中で高温耐酸化性を調べたところ、図2に示すように、20時間までは酸化増量が0.02kg/m2以下と耐酸化性が優れていたが、20時間を超えると酸化増量が急増し始め、60時間で1kg/m2を超え、100時間では試験片全体が酸化することが確認された。これより、1200℃以上では耐酸化性が十分でないことがわかった。
【0005】
上述の三元系化合物を主成分とするセラミックスは、金属導電性(電気抵抗の温度係数が正の導電性)を有することから、温度の上昇に伴って電気抵抗が増加するため、抵抗発熱体(ヒーターエレメント)として使用すると、自己温度調節機能が発現する。すなわち、温度が上昇すると、電気抵抗が増加して電流が流れにくくなり、過度の温度上昇が抑えられる。一方、温度が低下すると電気抵抗が減少して電流が流れやすくなり、過度の温度低下が抑えられる。また、耐熱衝撃性に優れることから、急速昇温、急速冷却が可能である。さらに、快削性を有することから、切削による複雑形状への加工や精密加工が容易で、従来の難加工性セラミックス系抵抗発熱体にはない利点を有する。しかしこれらの利点も、高温での耐酸化性が十分でないと活かすことができない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】M.W.Barsoum,“The MN+1AXN Phases:A New Class of Solids; Thermodynamically Stabel Nanolaminates”,Progress in Solid State Chemistry,Vol.28(2000),pp.201-281.
【非特許文献2】X.H.Wang,Y.C.Zhou,“Microstructure and properties of Ti3AlC2prepared by the solid-liquid reaction synthesis and simultaneous in-situ hot pressing process”,Acta Materialia, Vol.50(2002),pp.3141-3149.
【非特許文献3】V.Gauthier-Brunet,T.Cabioc’h,P.Chartier,M.Jaouen,S.Dubois,“Reaction synthesis of layered ternary Ti2AlC ceramic”,Journal of the European Ceramic Society,Vol.29(2009),pp.187-194.
【非特許文献4】M.W.Barsoum,M.Ali,T.El-Raghy,“Processing and characterization of Ti2AlC,Ti2AlN, and Ti2AlC0.5N0.5”,Metallurgical and Materials Transactions,Vol.31A(2000),pp.1857-1865.
【非特許文献5】Y.P.Jacob、V.A.C.Haanappel、M.F.Stroosnijder、H.Buscail、P.Fielitz、G.Borchardt、“The effect of gas composition on the isothermal oxidation behavior of PM chromium”、CorrosionScience、Vol.44(2002)、pp.2027-2039.
【非特許文献6】Z.M.Sun,Z.F.Zhang,H.Hashimoto,T.Abe,“Ternary compound Ti3SiC2:Part I.Pulse discharge sintering synthesis”,Materials Transactions,Vol.43(2002),pp.428-431.
【非特許文献7】Y.Zou,Z.M.Sun,H.Hashimoto,S.Tada,”Mechanical behavior of Ti3AlC2prepared by pulse discharge sintering method“,Materials Transactions,Vol.48(2007),pp.2431-2435.
【非特許文献8】堂山昌男、矢部正也、「金属間化合物データハンドブック」、サイエンスフォーラム(東京)、1989年、pp.104-107.
【非特許文献9】H.Hashimoto,Z.M.Sun,S.Tada,Y.Zou,“Strengthening of titanium silicon carbide by grain orientation control and silicon carbide whisker dispersion”,Materials Transactions,Vol.48(2007),pp.2427-2431.
【非特許文献10】朴 容浩、厳 泰永、橋本 等、阿部利彦、裴 且憲、金 雨烈、「MA−プラズマ法により作製したMoSi2化合物及びMoSi2/Nb複合焼結体の組織と性質」、粉体及び粉末冶金、第44巻(1997)、79-85ページ.
【非特許文献11】日本金属学会編、「金属データブック」改訂2版、丸善、東京、1984年、13ページ.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、高温耐酸化性に優れ、自己温度調節機能を有し、加工を容易に行うことができる抵抗発熱体として使用可能な導電性快削セラミックス及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)312チタンアルミニウムカーバイド(Ti3AlC2)とチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶体を主成分とすることを特徴とする高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックス。
(2)312チタンアルミニウムカーバイド(Ti3AlC2)とチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶体におけるチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶量xが0<x<0.4の範囲であることを特徴とする前記(1)に記載の高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックス。
(3)空気中、1200℃100時間の酸化試験後の酸化増量が0.1kg/m2未満であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックス。
(4)312チタンアルミニウムカーバイド(Ti3AlC2)とチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶体におけるチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶量xが0<x<0.16の範囲であることを特徴とする前記(1)に記載の高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックス。
(5)空気中、1480℃100時間の酸化試験後の酸化増量が0.2kg/m2未満であることを特徴とする前記(1)又は(4)に記載の高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックス。
(6)チタン、アルミニウム、シリコン、炭化チタンの混合粉末を焼結して、312チタンアルミニウムカーバイド(Ti3AlC2)とチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶体とすることを特徴とする高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックスの製造方法。
(7)モル比が、チタン:アルミニウム:シリコン:炭化チタン=2:(2−y):y:3で、yの値が0<y<0.8の範囲であり、312チタンアルミニウムカーバイド(Ti3AlC2)とチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶体におけるチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶量xを0<x<0.4の範囲とすることを特徴とする前記(6)に記載の高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックスの製造方法。
(8)モル比が、チタン:アルミニウム:シリコン:炭化チタン=2:(2−y):y:3で、yの値が0<y<0.32の範囲であり、312チタンアルミニウムカーバイド(Ti3AlC2)とチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶体におけるチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶量xを0<x<0.16の範囲とすることを特徴とする前記(6)に記載の高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックスの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、次のような効果が奏される。
【0010】
312チタンアルミニウムカーバイド(Ti3AlC2)とチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶体におけるチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶量を特定の範囲とすることにより、1200℃以上の空気中での耐酸化性に優れた導電性快削セラミックスを製造することができる。
【0011】
また、複雑形状への加工や精密加工を切削加工や放電加工により容易に行うことができ、自己温度調節機能があり、高温の酸化雰囲気で長時間使用可能な軽量の抵抗発熱体とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】合成したTi3AlC2を主成分とするセラミックスの1000℃の空気中での酸化増量の試験時間による変化
【図2】合成したTi3AlC2を主成分とするセラミックスの1200℃の空気中での酸化増量の試験時間による変化
【図3】Ti3AlC2又はTi3SiC2の結晶格子モデル
【図4】Ti3SiC2の固溶量(モル分率)x=0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5のTi3AlC2−Ti3SiC2固溶体を主成分とするセラミックスの1000℃の空気中での酸化増量の試験時間による変化
【図5】x=0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5の固溶体を主成分とするセラミックスの空気中1000℃100時間後の酸化増量の比較
【図6】x=0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5の固溶体を主成分とするセラミックスの1200℃の空気中での酸化増量の試験時間による変化
【図7】x=0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5の固溶体を主成分とするセラミックスの空気中1200℃100時間後の酸化増量の比較
【図8】1200℃100時間の酸化試験前後の試験片(x=0、0.1、x=0.5)の外観写真
【図9】模擬空気を毎分0.81リットルの流量で流しながら、1385℃100時間の酸化試験を行った後の酸化増量の比較(x=0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5)
【図10】1385℃100時間の酸化試験後の試験片(x=0、0.1、0.2)の外観写真
【図11】酸化試験後の試験片(x=0、0.1)の断面のエネルギー分散型X線分析装置付きの走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)写真(反射電子像、元素像)
【図12】模擬空気を毎分0.81リットルの流量で流しながら、1484℃100時間の酸化試験を行った後の酸化増量の比較(x=0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5)
【図13】模擬空気を毎分0.81リットルの流量で流しながら、1484℃100時間の酸化試験を行った後の酸化増量の比較(x=0、0.02、0.04、0.12、0.14、0.16、0.18、0.20)
【図14】室温における固溶体(x=0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5)を主成分とするセラミックスの電気伝導率と比抵抗
【図15】固溶体(x=0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5)を主成分とするセラミックスの密度
【図16】2.5mm径の高速度鋼製ドリル刃でボール盤により、穴開け加工を施した(a)x=0.5及び(b)x=0の固溶体を主成分とするセラミックスの外観写真
【図17】x=0,0.1、0.2、0.3、0.4、0.5の固溶体を主成分とするセラミックスの熱膨張率(20〜1000℃の平均値)
【図18】ヒーターエレメント図
【図19】Ti3Al0.9Si0.1C2の固溶体を主成分とするセラミックス製ヒーターエレメントの急速昇温・冷却試験時の温度測定結果
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックスは、Ti3AlC2とTi3SiC2の固溶体を主成分とするものである。
【0014】
Ti3AlC2とTi3SiC2は、図3に示すように、同一の結晶構造で、炭化チタン(TiC)八面体結晶格子からなる層とアルミニウム(Al)またはケイ素(Si)からなる単原子層が結晶のc軸方向に交互に積層している。すなわち、単原子層の構成原子がAlであるかSiであるかの違いだけである。そのため、Ti3AlC2とTi3SiC2は、0〜100%の割合で固溶する。すなわち、Ti3AlC2とTi3SiC2の固溶体は、TiCからなる層とAl及びSiからなる単原子層が交互に積層しており、結晶構造が変わることなく、単原子層内のAlとSiの割合は0〜100%の割合で変わることができる。別の言い方をすると、Ti3AlC2のAl原子のサイトをSi原子で0〜100%の範囲で置換することができる。
【0015】
しかし、Al原子(原子半径1.18Å)に比べてSi原子(原子半径1.11Å)はやや小さいため、Ti3AlC2に0〜50%のTi3SiC2が固溶する。すなわち、Ti3AlC2のAl単原子層のAl原子の0〜50%がサイズの小さいSi原子で置換されることによって、Al単原子層は収縮し、TiC層内には圧縮応力が生じ、単原子層内には逆に引張応力が生じるものと考えられる。
【0016】
Ti3AlC2に含まれるAlの酸化によって、表面にAl2O3の被膜が形成され、形成されたAl2O3は体積が膨張するが、被膜の基材(Ti3AlC2)に拘束され、Al2O3被膜内部には被膜の表面方向に圧縮応力が生じる。この圧縮応力が大きくなると、被膜の一部は基材との界面から剥離して浮き上がる。この際にAl2O3被膜にクラックが入ると、クラックから酸素が侵入し、剥離した部分で基材のTi3AlC2内部でさらに酸化が進行すると考えられる。
【0017】
しかし、Ti3AlC2にTi3SiC2を固溶させることによって、Al単原子層内に引張応力が生じれば、この圧縮応力を緩和でき、その結果、Al2O3被膜が剥離しにくくなり、耐酸化性が向上するものと考えられる。
【0018】
そこで、Ti3AlC2にTi3SiC2を種々のモル分率で固溶させた固溶体を合成し、高温での耐酸化性を評価したところ、Ti3SiC2の固溶量(モル分率)が特定の範囲内にある場合に耐酸化性が著しく改善されることが確認された。また、固溶体について、室温での比抵抗を測定したところ、発熱体として十分に使用可能であることが確認された。更に、高速度鋼製のドリル刃を用いて、穴開け加工が可能であることを確認し、高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックスを合成できることがわかった。本発明は、これらの知見によりなされたものである。
【0019】
本発明に係るTi3AlC2とTi3SiC2の固溶体の最適な合成条件を見出すために以下に示す種々の検証を行った。
<固溶体の合成>
Ti3AlC2に固溶量(モル分率)xのTi3SiC2を固溶させた固溶体は、(Ti3AlC2)1−x(Ti3SiC2)xと表せるが、Ti3AlC2とTi3SiC2は同一結晶構造をとることから、ここでは固溶体をTi3Al1−xSixC2と表す。
【0020】
これまでに、Ti3SiC2の合成には、原料としてチタン(Ti)粉末、ケイ素(Si)粉末、炭化チタン(TiC)粉末を用い、Ti:Si:TiC=2:2:3(モル比)の割合で混合した粉末を用いることにより、高純度のTi3SiC2を合成できることが知られている(非特許文献6)。同様に、Ti3AlC2の合成には、原料としてTi:Al:TiC=2:2:3(モル比)の混合粉末を用いることにより、高純度のTi3AlC2を合成できることが知られている(非特許文献7)。
【0021】
上記の条件を考慮して、Ti3AlC2にTi3SiC2を0〜50%固溶させた固溶体、すなわちTi3Al1−xSixC2(x=0〜0.5)を合成するため、モル比でTi:Al:Si:TiC=2:(2−y):y:3(y=0、0.2、0.4、0.6、0.8、1.0)の6種類の混合粉末を準備し、これを黒鉛製の内径30mmの円筒形焼結型に入れ、真空中で加圧焼結を行うことにより、固溶体の合成を行った。焼結温度は1200℃、1300℃、1400℃、加圧力は50MPa、焼結温度保持時間は15分間とした。
【0022】
一般に、結晶構造が同じ物質AとBの固溶体のX線回折パターンにおいて、ミラー指数が同一、すなわち同一の回折格子面からの回折ピークの位置(回折角度)は、物質AとBの対応する回折ピーク位置の中間にくる。そこで、合成したものについてX線回折パターンを調べたところ、ミラー指数が同一の回折格子面からの回折ピークの位置が、JCPDS粉末回折データベースで調べたTi3AlC2とTi3SiC2の回折ピーク位置の中間になっていたことから、固溶体を合成できたことが確認できた。
<固溶量xの算出方法>
一般に、固溶体の組成(固溶量)と結晶格子間隔の間には直線関係が成り立つ。これをVegardの法則という。結晶格子間隔と回折ピークの位置(回折角度)の関係は、Braggの法則に従うので、固溶体の回折ピークの位置から結晶格子間隔を計算し、JCPDS粉末回折データベースで調べたTi3AlC2とTi3SiC2の結晶格子間隔と比較することにより、Ti3SiC2の固溶量xを計算することができる。
【0023】
本発明では、合成した固溶体の回折ピークの位置からTi3SiC2の固溶量xを計算した。この計算は、回折ピークの位置(回折角度)の測定精度に左右されるので、Ti3AlC2とTi3SiC2の回折ピーク位置(回折角度2θ)の差が0.5°以上の回折ピークだけを選んで計算に用いた。また、固溶体の組成によっては、2つの回折ピークが接近し、互いに重なりあう場合があり、2つのピーク位置を正確に求めることが困難になる場合がある。
【0024】
例えば、回折面が104と008の回折ピークは、Ti3SiC2の固溶量xが0<x<0.28の範囲で重なり合って、2つのピーク位置を正確に求めることが困難になる。また、回折面205と1013の回折ピークも0.08<x<0.20の範囲で重なり合って、2つのピーク位置を正確に求めることが困難になる。さらに、201と1012のピークは0.16<x<0.28の範囲で重なり合って、2つのピーク位置を正確に求めることが困難になる。そこで、これらの組成範囲においては、重なり合うピークは固溶量の計算から除外した。
【0025】
表1に、合成条件(モル比Ti:Al:Si:TiC=2:(2−y):y:3の原料混合粉末中のSiの量y、加圧焼結温度)、X線回折パターンから同定した合成体に含まれる形成相の種類、回折ピークから計算したTi3SiC2の固溶量(モル分率)xの値をまとめて示す。
【0026】
【表1】
【0027】
合成体に含まれる形成相の種類は、回折メインピークの強い順に左から並べて示す。すなわち、左から順に、主成分、第2成分、第3成分、第4成分となっている。表1からわかるように焼結温度1200℃では、固溶体の組成は目標から遠く、また、y=0及びy=0.2の原料組成では、固溶体は主成分ではなく、第2成分となっている。一方、1300℃、1400℃の焼結温度で、ほぼ目標とする組成の固溶体が主成分のセラミックスが合成できることがわかる。
<酸化試験>
次に、固溶体を主成分とするセラミックスの耐酸化性を調べるため、モル比でTi:Al:Si:TiC=2:(2−y):y:3(y=0、0.2、0.4、0.6、0.8、1.0)の6種類の混合粉末を準備し、これを黒鉛製の内径50mmの円筒形焼結型に入れ、真空中で1400℃、50MPa、15分間の条件で加圧焼結を行うことにより固溶体を合成した。表2に、X線回折パターンから同定した合成体に含まれる形成相の種類、固溶体の組成をまとめて示す。
【0028】
【表2】
【0029】
表2から、ほぼ目標固溶量の固溶体を主成分とするセラミックスを合成できていることがわかる。
【0030】
これらの合成体から、5×5×10mmの試験片を放電加工により切り出し、ダイヤモンド研磨盤で表面を研磨し、1μmのダイヤモンドスラリー研磨剤でバフ研磨をして仕上げた。
<酸化試験条件:空気中1000℃>
これらの試験片を用いて、電気炉により、空気中1000℃の温度で酸化試験を行った。1、2、4、6、10、15、20、40、60、80、100時間の各時間で試験片を電気炉から取り出して、室温まで冷却後、重量を測定し、酸化増量を計算した。
【0031】
図4に、試験時間による酸化増量の変化を示す。どの目標組成の固溶体を主成分とするセラミックスも最初の20時間で酸化増量が急激に増加した後、飽和する傾向があることがわかる。
【0032】
図5に、1000℃、100時間後の酸化増量を比較したグラフを示す。どの目標組成の固溶体を主成分とするセラミックスも酸化増量は0.01kg/m2以下であり、純クロム材(1000℃、90時間で約0.06kg/m2(非特許文献5))より耐酸化性が優れていることがわかる。
<酸化試験条件:空気中1200℃>
図6に、1200℃での酸化試験の試験時間による酸化増量の変化を示す。Ti3SiC2の目標固溶量x=0.1、0.2及び0.3の場合は、酸化増量が小さく、酸化が進みにくいが、x=0.4と0.5の場合は、酸化が進行している。一方、x=0すなわちTi3AlC2の場合は、20時間まではx=0.1〜0.3の場合と同様に酸化増量が小さいが、その後急激に増加し、100時間では最も酸化増量が大きいことがわかる。
【0033】
図7に、1200℃、100時間後の酸化増量を比較したグラフを示す。x=0.1、0.2、0.3の場合は、酸化増量は0.02kg/m2以下であるが、x=0.4と0.5の場合は0.5kg/m2を超え、x=0の場合は1.5kg/m2を超えている。
【0034】
上記の検証によって、Ti3SiC2の目標固溶量xを0<x<0.4の範囲とすることにより、空気中、1200℃100時間の酸化試験後の酸化増量が0.1kg/m2未満となることが確認できた。
【0035】
図8に、1200℃100時間の酸化試験前後の試験片(x=0、0.1、0.5)の外観写真を示す。酸化増量が大きなx=0と0.5の試験片では、試験片表面に厚い酸化物が形成されていることがわかる。
<酸化試験条件:模擬空気中1385℃>
図9に、模擬空気(79体積%窒素−21体積%酸素混合ガス)を毎分0.81リットルの流量で流しながら、電気炉中で1385℃、100時間の酸化試験を行った後の酸化増量を比較した結果を示す。x=0.1以外は、すべて酸化増量が0.5kg/m2を超えている。一方、x=0.1の場合の酸化増量は0.052kg/m2であった。
【0036】
図10に、1385℃100時間の酸化試験後の試験片(x=0、0.1、0.2)の外観写真を示す。酸化増量が大きなx=0と0.2の試験片では、試験片表面に厚い酸化皮膜が形成されていることがわかる。
【0037】
図11に、エネルギー分散型X線分析装置付きの走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による酸化試験後の試験片(x=0、0.1)の断面の分析結果(反射電子像、Al元素像、Ti元素像、O元素像)をまとめて示す。x=0の試験片では、試験片表面から内部にかけて、Al,Ti及びOが観察され、試験片内部まで酸化していることがわかる。試験片表面のX線回折パターンを調べたところ、試験片表面には、酸化チタン(TiO2)と複合酸化物(Al2TiO5)の回折ピークが見られた。一方、x=0.1の試験片では、試験片表面にAlとOを含む被膜が見られるが、内部にはOは見られない。試験片表面のX線回折パターンを調べたところ、試験片表面には、酸化アルミニウム(Al2O3)、固溶体Ti3Al0.9Si0.1C2とごくわずかな酸化チタン(TiO2)の回折ピークが見られた。したがって、表面に形成された酸化アルミニウム被膜により、内部への酸化の進行が抑制されたものと考えられる。
<酸化試験条件:模擬空気中1484℃>
固溶体について、模擬空気(79体積%窒素−21体積%酸素混合ガス)を毎分0.81リットルの流量で流しながら、電気炉中で1484℃100時間の酸化試験を行った後の酸化増量を比較した。図12にその結果を示す。x=0.1以外は、すべて酸化増量が1.5kg/m2を超えている。また、一方、x=0.1の場合の酸化増量は0.082kg/m2で、酸化増量が抑えられている。試験片表面のX線回折パターンを調べたところ、試験片表面には、酸化アルミニウム(Al2O3)の回折ピークだけが見られた。
【0038】
これらのことから、1484℃100時間酸化試験後の酸化増量が少ない組成範囲はTi3SiC2の目標固溶量xが、0<x<0.2の間にあると考えられる。そこで、酸化増量が少ない組成の限界値を調べるため、x=0側から、0.02単位でxを増加させながら、また、x=0.2側から0.02単位でxを減少させながら、合成した固溶体を主成分とするセラミックスについて、1484℃100時間の酸化試験を行い、酸化増量を比較した。その結果を図13に示す。
【0039】
図13には、酸化増量0.1と0.2kg/m2を点線で示してある。図13から、1484℃100時間酸化試験後の酸化増量が少ない組成範囲は0<x<0.16の範囲である。特に、0.02<x<0.16の範囲では酸化増量0.1kg/m2以下となることがわかる。x=0.02では、酸化増量が0.104kg/m2となり、わずかに0.1kg/m2を超えている。したがって、0<x<0.16の範囲では、酸化増量0.2kg/m2以下を満たすものと考えられる。
【0040】
上記のx=0.02、0.04、0.12、0.14、0.16、0.18の固溶体を主成分とするセラミックスの合成は、モル比でTi:Al:Si:TiC=2:(2−y):y:3の混合粉末で、y=0.04、0.08、0.24、0.28、0.32、0.36とした混合粉末を真空中で焼結温度1400℃、焼結圧力50MPa、焼結温度保持時間15分間の条件で加圧焼結して行った。
<電気伝導率と比抵抗>
図14に、固溶体を主成分とするセラミックスの室温で測定した電気伝導率と電気抵抗率(比抵抗)を固溶体の組成xに対してプロットしたグラフを示す。これより、どの組成でも比抵抗が2×10−7Ωm〜5×10−7Ωmの範囲にあることがわかる。高温酸化雰囲気で使用可能な公知のセラミックス発熱体として、二ケイ化モリブデン(MoSi2)発熱体があるが、その比抵抗は2.15×10−7Ωm(非特許文献8)であり、本固溶体が発熱体として使用可能であることが確認された。
【0041】
図15に、室温で測定した5×5×10mmの試験片の寸法と重量から計算した固溶体を主成分とするセラミックスの密度をTi3SiC2の固溶量xに対してプロットしたグラフを示す。密度は4.18×103〜4.35×103kg/m3の範囲内にあり、MoSi2の密度6.27×103kg/m3(非特許文献8)の70%以下であり、より軽量の発熱体であることがわかる。文献によれば、端成分であるTi3AlC2の4点曲げ強度が350〜416MPa(非特許文献7)、Ti3SiC2の4点曲げ強度が350MPa(非特許文献9)であり、本発明の固溶体を主成分とするセラミックスは、これらの値と同等、又は固溶強化により若干高めと考えられる。一方、MoSi2の4点曲げ強度は325〜430MPa(非特許文献10)であり、固溶体を主成分とするセラミックスはMoSi2とほぼ同等の強度を持つものと考えられる。
<切削加工性>
図16に、2.5mm径の高速度鋼製ドリル刃でボール盤により、穴開け加工を施した(a)x=0.5及び(b)x=0の固溶体を主成分とするセラミックスの外観写真を示す。穴の周辺には欠けやクラックが見られず、切削加工が容易であることが確認された。
<熱膨張率>
図17は、x=0,0.1,0.2,0.3,0.4,0.5の固溶体を主成分とするセラミックスの熱膨張率を20〜1000℃の温度範囲で測定し、その値をxに対してプロットしたものである。9.7〜10.2×10−6K−1の範囲にあり、セラミックスとしては大きく、金属のチタン(20〜800℃で9.9×10−6K−1(非特許文献11))や白金(20〜1000℃で10.2×10−6K−1(非特許文献11))に近い。
<合成条件>
上記の各種検証の結果から、本発明においてTi3AlC2とTi3SiC2の固溶体原料のモル比は、チタン:アルミニウム:シリコン:炭化チタン=2:(2−y):y:3で、yの値が0<y<0.8の範囲のとすることができる。
【0042】
また、本発明のTi3AlC2にTi3SiC2の固溶体を主成分とするセラミックスの好ましい合成条件としては、空気中で、1200℃100時間の酸化試験後の酸化増量を0.1kg/m2未満とする場合、Ti3SiC2の固溶量xは0<x<0.4の範囲である。
【0043】
また、模擬空気中で、1484℃100時間の酸化試験後の酸化増量を0.2kg/m2未満とする場合、Ti3SiC2の固溶量xは0<x<0.16の範囲であり、酸化増量を0.1kg/m2未満とする場合0.02<x<0.16の範囲である。
<製造方法>
本願発明のTi3AlC2とTi3SiC2の固溶体を主成分とするセラミックスは、各原料粉末を上記の合成条件で混合、焼結して製造することができる。
【0044】
具体的には、Ti3AlC2、Ti3SiC2の固溶体を主成分とするセラミックスの各原料粉末を、本願発明のモル比の範囲内となるように秤量して、粉末混合機等を用いて十分に混合する。この混合粉末を黒鉛焼結型等に充填した後、真空または不活性ガスの雰囲気中で、焼結温度1300〜1400℃、印加圧力30〜70MPa、焼結温度保持時間5〜60分の条件で焼結して焼結体を製造することができる。これらの焼結工程には放電プラズマ焼結装置を好適に用いることができる。上記条件で製造した焼結体は切削加工、放電加工により所望の形状に加工することができる。
【実施例】
【0045】
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。すなわち、本発明は、その技術的思想の範囲である限り、以下の実施例以外の態様あるいは変形を全て包含するものである。
<実施例1>
目標組成がTi3Al0.7Si0.3C2、Ti3Al0.8Si0.2C2、Ti3Al0.9Si0.1C2の固溶体を合成するため、チタン粉末(純度99.9%、粒子径0.045mm以下)、アルミニウム粉末(純度99.9%、粒子径0.105mm以下)、シリコン粉末(純度99.9%、粒子径0.045mm以下)、炭化チタン粉末(純度99%、平均粒子径1.72μm)をモル比がチタン:アルミニウム:シリコン:炭化チタン=2:1.4:0.6:3、2:1.6:0.4:3、2:1.8:0.2:3となるように秤量し、粉末混合機(Willy A. Bachofen製TURBULA)で6時間混合した。
【0046】
これら3種類の混合粉末50gを内径50mmの円筒形黒鉛焼結型に充填し、放電プラズマ焼結装置(ソディック製PAS−V)を用いて、真空中で焼結温度1400℃、印加圧力50MPa、焼結温度保持時間15分間の条件で、加圧焼結(ホットプレス)を行った。
【0047】
焼結体の表面を研削盤で研削して、表面の黒鉛を取り除いた後、X線回折パターンを測定したところ、固溶体と思われるピーク、TiCと、ごくわずかなTi5Si3のピークが検出された。固溶体のピーク位置から、Vegardの法則により、固溶体組成を計算したところ、それぞれ目標組成に近い固溶体Ti3Al0.72Si0.28C2、Ti3Al0.81Si0.19C2、Ti3Al0.91Si0.09C2となっていることがわかった。
【0048】
焼結体から、放電加工機で切り出し、ダイヤモンド研磨盤で表面を研磨し、1μmのダイヤモンド研磨剤スラリーでバフ研磨して、5×5×10mmの試験片を準備した。これを、1200℃に加熱した電気炉に投入し、1、2、4、6、10、15、20、40、60、80、100時間の各時間で試験片を電気炉から取り出して、室温まで冷却後、重量を測定し、酸化増量を計算した。その結果、20時間まで急激に増加した後、飽和する傾向が見られた。100時間後の酸化増量は、それぞれ0.018,0.018,0.019kg/m2であった。文献によれば、耐酸化性が良い金属である純クロム材の酸化増量は1000℃90時間で約0.06kg/m2(非特許文献5)であるから、これよりも良いことがわかった。
<実施例2>
目標組成がTi3Al0.86Si0.14C2、Ti3Al0.88Si0.12C2、Ti3Al0.90Si0.10C2の固溶体を主成分とするセラミックスを合成するため、チタン粉末(実施例1に同じ)、アルミニウム粉末(実施例1に同じ)、シリコン粉末(実施例1に同じ)、炭化チタン粉末(実施例1に同じ)をモル比がチタン:アルミニウム:シリコン:炭化チタン=2:1.72:0.28:3、2:1.76:0.24:3、2:1.80:0.20:3となるように秤量し、粉末混合機(実施例1に同じ)で6時間混合した。
【0049】
それぞれの混合粉末50gを内径50mmの円筒形黒鉛焼結型に充填し、放電プラズマ焼結装置(実施例1に同じ)を用いて、真空中で焼結温度1400℃、加圧力50MPa、焼結温度保持時間15分間の条件で、加圧焼結を行った。
【0050】
焼結体の表面を研削盤で研削して、表面の黒鉛を取り除いた後、X線回折パターンを測定したところ、固溶体と思われるピークとTiCのピークが検出された。固溶体のピーク位置から、Vegardの法則により、固溶体組成を計算したところ、それぞれ目的組成に近い固溶体Ti3Al0.87Si0.13C2、Ti3Al0.89Si0.11C2、Ti3Al0.91Si0.09C2となっていることがわかった。
【0051】
焼結体から、放電加工機で切り出し、ダイヤモンド研磨盤で表面を研磨し、1μmのダイヤモンド研磨剤スラリーでバフ研磨して、5×5×10mmの試験片を準備した。これを、模擬空気(79体積%窒素−21体積%酸素混合ガス)を毎分0.81リットル流した電気炉で、1484℃100時間加熱した。電気炉中で室温まで冷却後、重量を測定し、酸化増量を計算した。その結果、酸化増量はそれぞれ0.076、0.077、0.081kg/m2であった。
<実施例3>
目標組成がTi3Al0.9Si0.1C2の固溶体を主成分とするセラミックスを合成するため、チタン粉末(実施例1に同じ)、アルミニウム粉末(実施例1に同じ)、シリコン粉末(実施例1に同じ)、炭化チタン粉末(実施例1に同じ)をモル比がチタン:アルミニウム:シリコン:炭化チタン=2:1.8:0.2:3となるように秤量し、粉末混合機(実施例1に同じ)で6時間混合した。
【0052】
この混合粉末100gを内径50mmの円筒形黒鉛焼結型に充填し、放電プラズマ焼結装置(実施例1に同じ)を用いて、真空中で焼結温度1400℃、印加圧力50MPa、焼結温度保持時間15分間の条件で、加圧焼結を行った。焼結体から、放電加工機で図18に示した厚さ3mmのヒーターエレメントを切り出し、空気中で通電加熱試験を行った。
【0053】
図19に、急速昇温・冷却試験時の温度測定結果を、設定昇温・冷却速度と実測の昇温速度、冷却速度の最大値とともに示す。温度はエレメントの表面を赤外放射温度計で計測した。試験後もヒーターエレメントにはクラック等は観察されず、毎秒78℃の急速昇温、毎秒45℃の急速冷却を行っても問題ないことが確認された。
<比較例1>
目標組成がTi3Al0.5Si0.5C2、Ti3Al0.6Si0.4C2の固溶体を主成分とするセラミックスを合成するため、チタン粉末(実施例1に同じ)、アルミニウム粉末(実施例1に同じ)、シリコン粉末(実施例1に同じ)、炭化チタン粉末(実施例1に同じ)をモル比がチタン:アルミニウム:シリコン:炭化チタン=2:1.0:1.0:3、2:1.2:0.8:3となるように秤量し、粉末混合機(実施例1に同じ)で6時間混合した。
【0054】
これら2種類の混合粉末50gを内径50mmの円筒形黒鉛焼結型に充填し、放電プラズマ焼結装置(実施例1に同じ)を用いて、真空中で焼結温度1400℃、印加圧力50MPa、焼結温度保持時間15分間の条件で、加圧焼結を行った。
【0055】
焼結体の表面を研削盤で研削して、表面の黒鉛を取り除いた後、X線回折パターンを測定したところ、固溶体と思われるピーク、TiCとごくわずかなTi5Si3のピークが検出された。固溶体のピーク位置から、Vegardの法則により、固溶体組成を計算したところ、それぞれ目標組成に近い固溶体Ti3Al0.53Si0.47C2、Ti3Al0.62Si0.38C2となっていることがわかった。
【0056】
焼結体から、放電加工機で切り出し、ダイヤモンド研磨盤で表面を研磨し、1μmのダイヤモンド研磨剤スラリーでバフ研磨して、5×5×10mmの試験片を準備した。これを、1200℃に加熱した電気炉に投入し、1、2、4、6、10、15、20、40、60、80、100時間の各時間で試験片を電気炉から取り出して、室温まで冷却後、重量を測定し、酸化増量を計算した。その結果、ほぼ直線的に増加する傾向が見られた。100時間後の酸化増量は、それぞれ0.81,0.66kg/m2であった。
<比較例2>
目標組成がTi3AlC2を主成分とするセラミックスを合成するため、チタン粉末(実施例1に同じ)、アルミニウム粉末(実施例1に同じ)、炭化チタン粉末(実施例1に同じ)をモル比がチタン:アルミニウム:炭化チタン=2:2:3となるように秤量し、粉末混合機(実施例1に同じ)で6時間混合した。
【0057】
この混合粉末50gを内径50mmの円筒形黒鉛焼結型に充填し、放電プラズマ焼結装置(実施例1に同じ)を用いて、真空中で焼結温度1400℃、印加圧力50MPa、焼結温度保持時間15分間の条件で、加圧焼結を行った。
【0058】
焼結体の表面を研削盤で研削して、表面の黒鉛を取り除いた後、X線回折パターンを測定したところ、Ti3AlC2とTiCのピークが検出された。焼結体から、放電加工機で切り出し、ダイヤモンド研磨盤で表面を研磨し、1μmのダイヤモンド研磨剤スラリーでバフ研磨して、5×5×10mmの試験片を準備した。
【0059】
これを、1200℃に加熱した電気炉に投入し、1、2、4、6、10、15、20、40、60、80、100時間の各時間で試験片を電気炉から取り出して、室温まで冷却後、重量を測定し、酸化増量を計算した。その結果、20時間までは増加量は0.02kg/m2以下であったが、40時間を超えると急激に増加し、100時間後の酸化増量は、1.91kg/m2であった。
<比較例3>
目標組成がTi3Al0.82Si0.18C2、Ti3Al0.84Si0.16C2の固溶体を主成分とするセラミックスを合成するため、チタン粉末(実施例1に同じ)、アルミニウム粉末(実施例1に同じ)、シリコン粉末(実施例1に同じ)、炭化チタン粉末(実施例1に同じ)をモル比がチタン:アルミニウム:シリコン:炭化チタン=2:1.64:0.36:3、2:1.68:0.32:3となるように秤量し、粉末混合機(実施例1に同じ)で6時間混合した。
【0060】
それぞれの混合粉末50gを内径50mmの円筒形黒鉛焼結型に充填し、放電プラズマ焼結装置(実施例1に同じ)を用いて、真空中で焼結温度1400℃、加圧力50MPa、焼結温度保持時間15分間の条件で、加圧焼結を行った。
【0061】
焼結体の表面を研削盤で研削して、表面の黒鉛を取り除いた後、X線回折パターンを測定したところ、固溶体と思われるピークとごくわずかなTiCのピークが検出された。固溶体のピーク位置から、Vegardの法則により、固溶体組成を計算したところ、それぞれ目的組成に近い固溶体Ti3Al0.83Si0.17C2、Ti3Al0.85Si0.15C2となっていることがわかった。焼結体から、放電加工機で切り出し、ダイヤモンド研磨盤で表面を研磨し、1μmのダイヤモンド研磨剤スラリーでバフ研磨して、5×5×10mmの試験片を準備した。これを、模擬空気(79体積%窒素−21体積%酸素混合ガス)を毎分0.81リットル流した電気炉で、1484℃100時間加熱した。電気炉中で室温まで冷却後、重量を測定し、酸化増量を計算した。その結果、酸化増量はそれぞれ1.59,2.21kg/m2であった。
<比較例4>
目標組成がTi3AlC2を主成分とするセラミックスを合成するため、チタン粉末(実施例1に同じ)、アルミニウム粉末(実施例1に同じ)、炭化チタン粉末(実施例1に同じ)をモル比がチタン:アルミニウム:炭化チタン=2:2:3となるように秤量し、粉末混合機(実施例1に同じ)で6時間混合した。
【0062】
この混合粉末50gを内径50mmの円筒形黒鉛焼結型に充填し、放電プラズマ焼結装置(実施例1に同じ)を用いて、真空中で焼結温度1400℃、印加圧力50MPa、焼結温度保持時間15分間の条件で、加圧焼結を行った。
【0063】
焼結体の表面を研削盤で研削して、表面の黒鉛を取り除いた後、X線回折パターンを測定したところ、Ti3AlC2とTiCのピークが検出された。焼結体から、放電加工機で切り出し、ダイヤモンド研磨盤で表面を研磨し、1μmのダイヤモンド研磨剤スラリーでバフ研磨して、5×5×10mmの試験片を準備した。これを、模擬空気(79体積%窒素−21体積%酸素混合ガス)を毎分0.81リットル流した電気炉で、1484℃100時間加熱した。電気炉中で室温まで冷却後、重量を測定し、酸化増量を計算した。その結果、酸化増量は2.15kg/m2であった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明により、1200℃以上の酸化雰囲気で長時間使用可能な軽量の金属導電性を示す導電性セラミックスを製造することが可能になる。また、この材料は複雑形状への加工や精密加工を切削加工や放電加工により容易に行うことができる。これによって、1200℃以上の酸化雰囲気中で長時間使用可能な自己温度調節機能を備えた軽量の抵抗発熱体(ヒーターエレメント)を開発することができる。しかも、加工コストを抑えることができ、安価に供給することができる。また、切削によるネジ加工も可能で、熱膨張率もセラミックスとしては大きく、チタンや白金等の金属に近いので、ネジによる金属との直接接合も可能になり、ヒーターエレメントと電極の接続、ヒーターエレメントの保持も容易になる。また、熱衝撃に強いため、急速昇温(毎秒78℃)、急速冷却(毎秒45℃)が可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
312チタンアルミニウムカーバイド(Ti3AlC2)とチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶体を主成分とすることを特徴とする高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックス。
【請求項2】
312チタンアルミニウムカーバイド(Ti3AlC2)とチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶体におけるチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶量xが0<x<0.4の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックス。
【請求項3】
空気中、1200℃100時間の酸化試験後の酸化増量が0.1kg/m2未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載の高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックス。
【請求項4】
312チタンアルミニウムカーバイド(Ti3AlC2)とチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶体におけるチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶量xが0<x<0.16の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックス。
【請求項5】
空気中、1484℃100時間の酸化試験後の酸化増量が0.2kg/m2未満であることを特徴とする請求項1又は4に記載の高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックス。
【請求項6】
チタン、アルミニウム、シリコン、炭化チタンの混合粉末を焼結して、312チタンアルミニウムカーバイド(Ti3AlC2)とチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶体とすることを特徴とする高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックスの製造方法。
【請求項7】
モル比が、チタン:アルミニウム:シリコン:炭化チタン=2:(2−y):y:3で、yの値が0<y<0.8の範囲であり、312チタンアルミニウムカーバイド(Ti3AlC2)とチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶体におけるチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶量xを0<x<0.4の範囲とすることを特徴とする請求項6に記載の高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックスの製造方法。
【請求項8】
モル比が、チタン:アルミニウム:シリコン:炭化チタン=2:(2−y):y:3で、yの値が0<y<0.32の範囲であり、312チタンアルミニウムカーバイド(Ti3AlC2)とチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶体におけるチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶量xを0<x<0.16の範囲とすることを特徴とする請求項6に記載の高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックスの製造方法。
【請求項1】
312チタンアルミニウムカーバイド(Ti3AlC2)とチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶体を主成分とすることを特徴とする高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックス。
【請求項2】
312チタンアルミニウムカーバイド(Ti3AlC2)とチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶体におけるチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶量xが0<x<0.4の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックス。
【請求項3】
空気中、1200℃100時間の酸化試験後の酸化増量が0.1kg/m2未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載の高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックス。
【請求項4】
312チタンアルミニウムカーバイド(Ti3AlC2)とチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶体におけるチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶量xが0<x<0.16の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックス。
【請求項5】
空気中、1484℃100時間の酸化試験後の酸化増量が0.2kg/m2未満であることを特徴とする請求項1又は4に記載の高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックス。
【請求項6】
チタン、アルミニウム、シリコン、炭化チタンの混合粉末を焼結して、312チタンアルミニウムカーバイド(Ti3AlC2)とチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶体とすることを特徴とする高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックスの製造方法。
【請求項7】
モル比が、チタン:アルミニウム:シリコン:炭化チタン=2:(2−y):y:3で、yの値が0<y<0.8の範囲であり、312チタンアルミニウムカーバイド(Ti3AlC2)とチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶体におけるチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶量xを0<x<0.4の範囲とすることを特徴とする請求項6に記載の高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックスの製造方法。
【請求項8】
モル比が、チタン:アルミニウム:シリコン:炭化チタン=2:(2−y):y:3で、yの値が0<y<0.32の範囲であり、312チタンアルミニウムカーバイド(Ti3AlC2)とチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶体におけるチタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)の固溶量xを0<x<0.16の範囲とすることを特徴とする請求項6に記載の高温耐酸化性に優れた導電性快削セラミックスの製造方法。
【図1】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−253651(P2011−253651A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125163(P2010−125163)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
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