説明

A型肝炎ウイルス核酸の検出のための組成物及び方法

【課題】HAV標的配列の精製、増幅及び検出に有用な核酸オリゴマーの提供。
【解決手段】本オリゴマー又はオリゴマーの組合せをキット配置に含め、HAV配列を増幅する及び/又は検出するための他のオリゴマー及び/又は他の試薬を含める。HAV核酸を試料中の他の成分より精製する工程、HAV RNA標的配列又はそれより作製されるcDNAを、インビトロ核酸ポリメラーゼと増幅オリゴマーのあらゆる組合せを用いて増幅して増幅産物を生成する工程及び、増幅産物の少なくとも一部と特異的にハイブリダイズする検出プローブを用いて増幅産物を検出する工程を用いる、試料中のHAVを検出する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトウイルスの診断検出に関し、具体的には、インビトロ核酸増幅と増幅配列の検出を用いてヒトA型肝炎ウイルスの配列を検出するためのアッセイに関する。
【背景技術】
【0002】
A型肝炎ウイルス(HAV)は、発熱、疲労、吐気、腹痛、下痢、食欲喪失及び黄疸を含む諸症状が2ヶ月未満現れる場合がある肝炎の1つの形態の原因物質である。HAVに感染した約10%〜15%は、感染後6〜9ヶ月に長期化又は再発性の症状がある。症候性と無症候性の感染後には、抗HAV免疫グロブリンG(IgG)の個々の産生に基づくHAVの免疫が続く。
【0003】
HAV感染症の発症率は、HAVへのワクチン接種(例えば、不活性化HAVを用いることによる)が1990年代後半以来広範に用いられた世界の諸地域では劇的に減少したが、衛生状態不良な非免疫集団では、例えば、地震の後に、一過性でも、HAV感染症の大流行(人口100,000につき700より多い症例)が発生し得る。HAVは、被感染者の糞便中に流れて、通常、糞−口経路で伝播する。共同体全体の大発生は、HAVに感染した食物取扱者により調理中の食物が汚染される場合、又は、流通システムにおける生育、収穫、包装、又は加工の間に食材が汚染されて生じる食物媒介性の伝播で生じる場合がある。伝播はまた、HAV汚染された血清、血液製剤、又は輸血や注射薬の使用等の汚染針との接触から生じる場合がある。HAV感染のリスクがあるヒトとしては、HAV被感染者と生活しているか又は性的接触がある人々、凝固因子障害(例、血友病)又は慢性肝疾患の人々、A型肝炎が蔓延している国々へ旅行する人々、男性と性的交渉をもつ男性、非合法薬の使用者及びA型肝炎が高率な(例えば、人口100,000につき>20症例)地域で生活する子供があげられる。
【0004】
HAVは、約7.5kbの(+)鎖一本鎖RNAゲノムを含有する27nmのRNAウイルス(ピコルナウイルス)であり、世界中で単一の血清型が見出されている。HAVは、感染症の急性期で肝臓で複製し、胆汁中に排泄されて糞便中に流出する(10個のウイルス/mlまで)。潜伏期間は、通常、症状が現れるまでの2〜6週間である。A型肝炎の診断は、症状や他の臨床特徴(例えば、血清アミノトランスフェラーゼレベルの上昇)では他の種類のウイルス肝炎から識別できない。典型的には、A型肝炎の診断は、抗HAV免疫グロブリン(Ig)が存在すると陽性の結果となる血清学的検査で確認する。一般に、抗HAV IgMは、症状の発症の5〜10日前に存在しているが、ほとんどの患者で6ヶ月以降までは検出できないのに対し、抗HAV IgGは、感染早期に出現し、個体が生存している期間に検出できる。HAV RNAは、感染急性期で、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による増幅と核酸配列決定等の核酸検査法を用いて、大部分の人々の血液及び大便から検出できるので、共同体全体の感染症を追跡するHAVの遺伝的関連性を同定するために用いられてきた(Dato et al., Morbidity Mortality Wkly. Rpt., 2003, 52(47): 1155-57; LaPorte et al., Morbidity Mortality Wkly. Rpt., 2003, 52(24): 565-67)。しかしながら、これらの方法は、一般的には、診断目的には用いられていない。
【0005】
米国では、毎年約100人がA型肝炎による急性肝不全で死亡する(死亡率約0.015%)。非致命的なA型肝炎症例でも、患者の入院、外来受診及び労働日数の損失の費用を含む、HAV感染症に関連してかなりの費用がかかる。A型肝炎大発生に関する公衆衛生の費用としては、被感染者又は感染源(例、汚染された水又は食物)を特定して曝された人々に曝露から2週間以内に免疫グロブリンを投与することがあげられる。特に、共同体全体で大発生した場合では、感染リスクの認知に起因する、かなりの心理的コストと経済損失が生じる可能性がある。汚染された食物及び水でHAVが比較的伝播しやすいことや、A型肝炎に関連する罹病率のため、HAVは生物テロに用いる病原体となりうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
生物試料や環境試料中のHAVの存在を正確に検出する必要がある。HAV被感染個体を迅速に診断する必要がある。例えば、免疫グロブリンが有効であるためには、HAV曝露の2週間以内にヒトへ投与しなければならず、肝炎症状の食物取扱者を速やかに評価して、HAV陽性源を公衆衛生当局へ報告する迅速で正確なアッセイが必要である。水や食物等の汚染材料の使用又は消費から生じる共同体全体の大発生又は大流行を防ぐために、上記の材料に存在するHAVを検出する必要がある。また、例えば、輸血やヒト体液に由来する諸因子の製造に用いる血液又は血清等の医学的処置に用い得る製品のHAV汚染を検出する必要もある。
【0007】
本発明は、試料中のHAV核酸の存在を検出する核酸検査法に用いるオリゴヌクレオチド配列を開示して、上記のニーズに応えるものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要約
本発明としては、HAV標的配列の精製、増幅及び検出に有用な核酸オリゴマーがあげられる。本オリゴマー又はオリゴマーの組合せをキット形態に含めてもよく、その実施態様としては、HAV配列を増幅する及び/又は検出するための他のオリゴマー及び/又は他の試薬があげられる。本発明としては、HAV核酸を試料中の他の成分より精製する工程、HAV RNA標的配列又はそれより作製されるcDNAを、インビトロ核酸ポリメラーゼと本明細書に記載の増幅オリゴマーのあらゆる組合せを用いて増幅し、増幅産物を生成する工程及び、増幅産物の少なくとも一部と特異的にハイブリダイズする検出プローブを用いて増幅産物を検出する工程を用いる、試料中のHAVを検出する方法があげられる。1つの実施態様としては、HAV RNA標的領域に特異的にハイブリダイズし、他の試料成分から分離されるHAV RNAを含むハイブリダイゼーション複合体を形成する配列を含む少なくとも1つの捕捉オリゴマーを用いて、HAV核酸を精製する。
【0009】
本発明の1つの態様としては、HAV標的領域を増幅するのに特異的な少なくとも2つのオリゴマーの組合せがあり、それには:第1のHAV標的領域のための、少なくとも配列番号139又は配列番号140の配列を含む配列番号138の配列に含まれる約23〜26ntのオリゴマー、又は配列番号142〜146の少なくとも1つの配列を含有する配列番号141の配列に含まれる約19〜25ntの範囲の大きさのオリゴマー、又は配列番号21〜27のいずれか1つのHAV標的特異部分を含む約50〜53ntの範囲の大きさのプロモータープライマーオリゴマー;第2のHAV標的領域のための、配列番号60の配列に含まれるか又は少なくとも配列番号156の配列を含む配列番号86の配列に含まれる約21〜27ntのオリゴマー、又は配列番号29〜32のいずれか1つのHAV標的特異部分を含む約48〜54ntの範囲の大きさのプロモータープライマーオリゴマー;第3のHAV標的領域のための、少なくとも配列番号148の配列を含む配列番号147の配列に含まれるか、又は少なくとも配列番号158の配列を含む配列番号157の配列に含まれる約24〜30ntのオリゴマー、又は配列番号31又は配列番号32のHAV標的特異部分を含むプロモータープライマーオリゴマー;第4のHAV標的領域のための、少なくとも配列番号97、配列番号159、又は配列番号160の配列を含有する配列番号93又は配列番号95の配列に含まれる約18〜27ntのオリゴマー、又は配列番号33のHAV標的特異部分を含むプロモータープライマーオリゴマー;第5のHAV標的領域のための、少なくとも配列番号150の配列を含む配列番号149の配列に含まれる約19〜31ntのオリゴマー、又は配列番号34〜40のいずれか1つのHAV標的特異部分を含む約51〜56ntの範囲の大きさのプロモータープライマーオリゴマー;第6のHAV標的領域のための、少なくとも配列番号162の配列を含む配列番号161の配列に含まれる約24〜28ntのオリゴマー、又は配列番号41又は配列番号42のHAV標的特異部分を含むプロモータープライマーオリゴマー;並びに、第7のHAV標的領域のための、少なくとも配列番号152〜配列番号155の配列のいずれか1つを含む配列番号151の配列に含まれるか、又は少なくとも配列番号164の配列を含む配列番号163に含まれるか、又は少なくとも配列番号166〜配列番号168の配列のいずれか1つを含む配列番号165に含まれる約20〜30ntのオリゴマー、又は配列番号43〜49のいずれか1つのHAV標的特異部分を含む約51〜56ntの範囲の大きさのプロモータープライマーオリゴマーを含む。第1のHAV標的領域に特異的な少なくとも2つのオリゴマーの組合せの好ましい実施態様は、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号143、配列番号144及び配列番号145より選択される。第2のHAV標的領域に特異的な少なくとも2つのオリゴマーの組合せの好ましい実施態様は、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号86、配列番号87、配列番号88及び配列番号156より選択される。第3のHAV標的領域に特異的な少なくとも2つのオリゴマーの組合せの好ましい実施態様は、配列番号31、配列番号32、配列番号61、配列番号62、配列番号89、配列番号90、配列番号91及び配列番号より選択される、第4のHAV標的領域に特異的な少なくとも2つのオリゴマーの組合せの好ましい実施態様は、配列番号33、配列番号63、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号95、配列番号96及び配列番号97より選択される。第5のHAV標的領域に特異的な少なくとも2つのオリゴマーの組合せの好ましい実施態様は、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号97、配列番号149及び配列番号150より選択される。第6のHAV標的領域に特異的な少なくとも2つのオリゴマーの組合せの好ましい実施態様は、配列番号41、配列番号42、配列番号71、配列番号72、配列番号98、配列番号99、配列番号101、配列番号161及び配列番号162より選択される。第7のHAV標的領域に特異的な少なくとも2つのオリゴマーの組合せの好ましい実施態様は、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号104、配列番号106、配列番号107、配列番号108、配列番号152、配列番号153、配列番号155、配列番号163、配列番号164、配列番号165、配列番号166、配列番号167及び配列番号168より選択される。他の好ましい実施態様としては、配列番号1〜14より選択される少なくとも1つの捕捉プローブオリゴマーがさらにあげられる。なお他の実施態様としては、配列番号109、配列番号111、配列番号113、配列番号115、配列番号117、配列番号119、配列番号121〜配列番号124及び配列番号126〜配列番号130より選択される少なくとも1つの検出プローブオリゴマーがさらにあげられる。オリゴマーの組合せの好ましい実施態様としては、選択HAV標的領域を増幅するのに特異的な少なくとも2つのオリゴマーと、選択HAV領域を増幅するのに特異的な選択された2つのオリゴマーの間に位置する、HAVゲノム配列に含まれる配列に特異的である少なくとも1つの検出プローブオリゴマーあげられる。そのようなオリゴマーの組合せの好ましい実施態様をキットと共に包装することができ、これには、HAV RNAを試料より精製することに用いる試薬及び/又はインビトロ核酸増幅に用いる試薬及び/又は検出プローブオリゴマーから検出可能シグナルを産生することに用いる試薬等他の試薬をさらに含有できる。
【0010】
本発明の他の態様は、試料中のHAVの存在を検出する方法であり、それには、HAVを含有する試料中の他の成分からHAV核酸を精製する工程;第1のHAV標的領域のための、少なくとも配列番号139又は配列番号140の配列を含む配列番号138の配列に含まれる約23〜26ntのオリゴマー、又は配列番号142〜146の少なくとも1つの配列を含有する配列番号141の配列に含まれる約19〜25ntの範囲の大きさのオリゴマー、又は配列番号21〜27のいずれか1つのHAV標的特異部分を含む約50〜53ntの範囲の大きさのプロモータープライマーオリゴマー;第2のHAV標的領域のための、配列番号60の配列に含まれるか又は少なくとも配列番号156の配列を含む配列番号86の配列に含まれる約21〜27ntのオリゴマー、又は配列番号29〜32のいずれか1つのHAV標的特異部分を含む約48〜54ntの範囲の大きさのプロモータープライマーオリゴマー;第3のHAV標的領域のための、少なくとも配列番号148の配列を含む配列番号147の配列に含まれるか、又は少なくとも配列番号158の配列を含む配列番号157の配列に含まれる約24〜30ntのオリゴマー、又は配列番号31又は配列番号32のHAV標的特異部分を含むプロモータープライマーオリゴマー;第4のHAV標的領域のための、少なくとも配列番号97、配列番号159、又は配列番号160の配列を含有する配列番号93又は配列番号95の配列に含まれる約18〜27ntのオリゴマー、又は配列番号33のHAV標的特異部分を含むプロモータープライマーオリゴマー;第5のHAV標的領域のための、少なくとも配列番号150の配列を含む配列番号149の配列に含まれる約19〜31ntのオリゴマー、又は配列番号34〜40のいずれか1つのHAV標的特異部分を含む約51〜56ntの範囲の大きさのプロモータープライマーオリゴマー;第6のHAV標的領域のための、少なくとも配列番号162の配列を含む配列番号161の配列に含まれる約24〜28ntのオリゴマー、又は配列番号41又は配列番号42のHAV標的特異部分を含むプロモータープライマーオリゴマー;並びに第7のHAV標的領域のための、少なくとも配列番号152〜配列番号155の配列のいずれか1つを含む配列番号151の配列に含まれるか、又は少なくとも配列番号164の配列を含む配列番号163に含まれるか、又は少なくとも配列番号166〜配列番号168の配列のいずれか1つを含む配列番号165に含まれる約20〜30ntのオリゴマー、又は配列番号43〜49のいずれか1つのHAV標的特異部分を含む約51〜56ntの範囲の大きさのプロモータープライマーオリゴマーを含む、選択HAV標的領域に特異的な少なくとも2つの増幅オリゴマーを含むインビトロ増幅反応を用いて、精製したHAV核酸又はそれより作製されるcDNA中のHAV標的配列を増幅して、選択HAV標的領域の増幅産物を生成する工程;並びに増幅産物の少なくとも一部と特異的にハイブリダイズする検出プローブを用いて増幅産物を検出する工程を含む。精製工程における好ましい実施態様は、HAV RNA中の配列に特異的にハイブリダイズする、配列番号1〜14のいずれか1つに含まれる配列を含む少なくとも1つの捕捉プローブオリゴマーと試料を接触させてHAV RNAとのハイブリダイゼーション複合体を形成して、HAV RNAを含有する該ハイブリダイゼーション複合体を他の試料成分から分離する。第1のHAV標的領域中の配列を増幅する好ましい実施態様は、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号143、配列番号144及び配列番号145より選択される、第1のHAV標的領域に特異的な少なくとも2つのオリゴマーを使用し;その後、第1のHAV標的領域の増幅産物に特異的にハイブリダイズする少なくとも1つの検出プローブを用いる。第2のHAV標的領域中の配列を増幅する好ましい実施態様は、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号86、配列番号87、配列番号88及び配列番号156より選択される、第2のHAV標的領域に特異的な少なくとも2つのオリゴマーを用いて;その後、第2のHAV標的領域の増幅産物に特異的にハイブリダイズする少なくとも1つの検出プローブを用いる。第3のHAV標的領域中の配列を増幅する好ましい実施態様は、配列番号31、配列番号32、配列番号61、配列番号62、配列番号89、配列番号90、配列番号91及び配列番号148より選択される、第3のHAV標的領域に特異的な少なくとも2つのオリゴマーを用いて;その後、第3のHAV標的領域の増幅産物に特異的にハイブリダイズする少なくとも1つの検出プローブを用いる。第4のHAV標的領域中の配列を増幅する好ましい実施態様は、配列番号33、配列番号63、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号95、配列番号96及び配列番号97より選択される、第4のHAV標的領域に特異的な少なくとも2つのオリゴマーを用いて;その後、第4のHAV標的領域の増幅産物に特異的にハイブリダイズする少なくとも1つの検出プローブを用いる。第5のHAV標的領域中の配列を増幅する好ましい実施態様は、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号97、配列番号149及び配列番号150より選択される、第5のHAV標的領域に特異的な少なくとも2つのオリゴマーを用いて;その後、第5のHAV標的領域の増幅産物に特異的にハイブリダイズする少なくとも1つの検出プローブを用いる。第6のHAV標的領域中の配列を増幅する好ましい実施態様は、配列番号41、配列番号42、配列番号71、配列番号72、配列番号98、配列番号99、配列番号101、配列番号161及び配列番号162より選択される、第6のHAV標的領域に特異的な少なくとも2つのオリゴマーを用いて;その後、第6のHAV標的領域の増幅産物に特異的にハイブリダイズする少なくとも1つの検出プローブを用いる。第7のHAV標的領域中の配列を増幅する好ましい実施態様は、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号104、配列番号106、配列番号107、配列番号108、配列番号152、配列番号153、配列番号155、配列番号163、配列番号164、配列番号165、配列番号166、配列番号167及び配列番号168からなる群より選択される、第7のHAV標的領域に特異的な少なくとも2つのオリゴマーを用いて;その後、第7のHAV標的領域の増幅産物に特異的にハイブリダイズする少なくとも1つの検出プローブを用いる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
本発明としては、HAVに汚染されるおそれがある、ヒト由来の生物試料(例、糞便、血液、血清、唾液、又は尿)、環境試料(例、水、土壌)、又は他の材料(例、食物)であり得る試料に存在するHAVを検出する方法があげられる。本方法は、HAVゲノムの領域をインビトロで増幅し、本増幅核酸中の配列へ特異的に結合するプローブを用いて本増幅核酸を検出し、HAV核酸配列の存在を検出することに基づく。本方法の1つの実施態様としては、HAVゲノムの領域を増幅する工程の前に、HAV核酸を試料から単離又は精製する工程があげられる。本実施態様は、好ましくは、増幅するHAVゲノムの領域の外側の、HAVゲノム中の配列へ特異的に結合する捕捉オリゴマーを用いて、捕捉オリゴマーと結合したHAV RNAから作られた複合体を、捕捉オリゴマーも結合する粒子等の捕捉支持体を用いて他の試料成分から分離してHAVゲノムRNAを単離する。HAVゲノム配列の一部を増幅することは、HAV RNA又は相補配列へ特異的に結合する1以上の増幅オリゴマーと、増幅オリゴマーを他のコピーの合成のためのプライマーとして用いてHAVゲノム配列又は相補配列の一部の他のコピーを作製するためのインビトロ酵素合成を用いる。好ましい実施態様は、定温増幅反応を用いて、HAVゲノム配列の一部の他のコピーを作製することである。その後、本増幅核酸へ1以上のプローブオリゴマーを特異的に結合させて、増幅配列へ結合したプローブオリゴマーより生じるシグナルを検出して増幅HAV配列を検出する。増幅HAV配列へ結合したプローブオリゴマーから生じるシグナルを検出すると試料中のHAVの存在が示される。上記の方法は、HAV感染症をヒトで診断するために用いる生物試料、汚染源の使用又は消費に起因するHAVの拡散を防ぐためのHAVで汚染された環境試料等の多様な試料中でHAVの存在を検出するのに有用である。上記の方法はまた、ヒトの体液試料について、血清又は血漿等中のHAVの存在を試験して、輸血又は治療因子の製造でヒト体液を用いることに起因するその後のHAV感染症を防ぐのに有用である。本発明の方法は、ヒトの組織又は臓器についてHAVの存在をスクリーニングして、移植治療においてそれらを用いないようにすることにも有用である。このように、上記の方法は、ヒト組織に由来するヒトの試料又は製品におけるHAV汚染を検出するのに特に重要である。
【0012】
本発明としては、HAV RNA又はHAV RNAに由来する核酸(例、HAV RNAより作製されるcDNA又は増幅配列)に特異的にハイブリダイズするオリゴマー等の核酸組成物があげられる。そのような組成物の1つには、HAV RNAに特異的にハイブリダイズして、このハイブリダイズしたHAV RNAを捕捉支持体(捕捉されたHAV RNAを他の試料成分から分離できるようにする)に付けて、試料等の複雑な混合物からHAV RNAを精製するために用いる捕捉オリゴマーがあげられる。そのような捕捉オリゴマーを用いる精製の方法を、一般に標的捕捉といい、ここではHAV RNAが特異的な標的核酸である。本発明の他のオリゴマーは、核酸増幅オリゴマーである(プライマーという場合もある)。他の実施態様としては、HAV RNA又は増幅HAV核酸配列に特異的にハイブリダイズして、HAV特異配列の存在を検出するシグナルを提供する、プローブオリゴマーがあげられる。これらの核酸配列は、HAV特異配列を捕捉、増幅及び検出するのに有用なため、試料中のHAVの存在を検出するため共に機能する。
【0013】
試料としては、HAVを含有する可能性があるあらゆる液体、又はHAVを含有するか又は表面に有する場合がある固形物があげられる。試料としては、例えば、水等の環境源、ヒトの体液又は汚物等の生物源及び食品、包装材料、又は食品加工に用いる他の成分由来のものがあげられる。生物試料には、HAV又はHAV核酸を含有し得る、生きているか死んだヒト由来のあらゆる組織又は材料があげられ、例えば、唾液、血液、血漿、血清、生検組織、胃腸組織、尿、糞便、又は他の体液、組織又は材料があげられる。試料は、標準法を用いてその物理状態を物理的又は機械的に破壊して処理し、HAV粒子又はHAV RNAを水溶液又は溶媒へ放出させることもできる。
【0014】
核酸としては、骨格構造で結合された、少なくとも2つ、好ましくは10以上の塩基から構成されるDNA若しくはその類似体、RNA若しくはその類似体、又は混合DNA−RNAポリマー又はオリゴマーがあげられる。DNAとRNAは、共通の塩基(DNAでは、A、T、G及びC、そしてRNAでは、A、G、C及びU)から構成され得るが、塩基類似体(例、イノシン)と非塩基位置(即ち、1以上の位置でヌクレオチドを欠くホスホジエステル骨格、例えば、米国特許第5,585,481号を参照)も本用語に含まれる。ポリマーが数百又は数千の長さのヌクレオチドであり得るのに対し、オリゴマーは、一般に1000以下の結合ヌクレオチドの核酸を意味し、しばしば2〜約100の結合ヌクレオチドが含まれる。一般に、オリゴマーは、下限が約10塩基で上限が約150塩基の範囲の大きさ、好ましくは、約15〜約70塩基の範囲の大きさが該当する。オリゴマーは、天然に存在する生物源から精製できるが、好ましくは、いかなる様々な周知の酵素法又は化学法をも用いてインビトロで合成する(例、Caruthers et al., 1987, Methods in Enzymol., 154: 287)。
【0015】
「核酸骨格」は、当該技術分野で公知の基又は結合(Eschenmoser, 1999, Science 284: 2118-2124)、例えば、糖−ホスホジエステル結合、2’−O−メチル結合、DNA中のグアニジンリンカー(「DNG」)、S−メチルチオ尿素リンカー、メチルホスホネート結合、ホスホロアミデート結合、ポリアミド又はペプチド核酸(PNA)等のアミド骨格修飾物、ホスホロチオエート結合、ホスホン酸エステル核酸結合、ピラノシルオリゴヌクレオチド結合、ビシクロ及びトリシクロ核酸結合、ホルムアセタール及び3’−チオホルムアセタール結合、モルホリノ結合又は天然のホスホジエステルヌクレオシド間結合の他の修飾物又はこれらの組合せをいう(Majlessi et al., 1998, Nucl. Acid Res. 26(9): 2224-2229; Dempcy et al., 1995, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 6097-6101; Browne et al., 1995, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 7051-7055; Arya & Bruice, 1998, J. Am. Chem. Soc. 120: 6619-6620; Reynolds et al., 1996, Nucl. Acids Res. 24(22): 4584-4591; Gryaznov & Chen, 1994, Am. Chem. Soc. 116: 3143-3144; Chaturvedi et al., 1996, Nucl. Acids Res. 24(12): 2318-2323; Hyrup & Nielsen, 1996, Bioorg. & Med. Chem. 4: 5-23; Hydig-Hielsen et al., PCT特許出願WO95/32305:Mesmaekerら, Syn. Lett., Nov. 1997: 1287-1290; Peyman et al., 1996, Angew. Chem.. Int. Ed. Engl. 35(22): 2636-2638; Aerschot et al., 1995, Angew. Chem.. Int. Ed. Engl. 34(12): 1338-1339; Koshkin et al., 1998, J. Am. Chem. Soc. 120: 13252-13253; Steffens & Leumann, 1997, J. Am. Chem. Soc. 119: 11548-11549; Jones et al., 1993, J. Org. Chem. 58: 2983-2991; Summerton & Weller, 1997, Antisense & Nucl. Acid Drug Dev. 7: 187-195; Stirchak et al., 1989, Nucl. Acids Res. 17(15): 6129-6141)。核酸骨格としては、同じオリゴマー又はポリマーの結合の混合物(例、鎖中1以上の糖−ホスホジエステル結合と1以上の2’−O−メチル結合)があっても、鎖全体で同じ結合(例、全て2’−O−メチル、又は全てアミド修飾の結合)があってもよい。
【0016】
「標的」、「標的配列」、又は「標的核酸」は、例えば、標準的な相補塩基対合を用いて他の核酸が結合する大きな配列(例、1000ntより大きい)又はより大きな核酸内のより小さな配列を意味する場合がある。標的核酸は、天然の又は合成して作製された、RNAでもDNAでもよい。例えば、標的は、HAVゲノム等の比較的大きな核酸でも、あるいは標的は、HAV RNAに含まれるより小さなサブ配列、その相補体、又はそれから作製される増幅産物でもよく、オリゴマー中の他の配列に特異的に結合する。当業者であれば、標的核酸がどのような形態でも、例えばセンス又はアンチセンス(+又は−)鎖で存在しうることを理解するであろう。
【0017】
「相補的な核酸」(又は、核酸相補性)とは、官能基の配向により、例えばAとT又はU塩基の間、そしてCとG塩基の間の水素結合により、対向する鎖中の塩基配列に結合する核酸の一方の鎖の塩基配列を意味する。「実質的に相補的な」とは、一方の鎖の塩基配列が対向する鎖の塩基配列に対して全て又は完全には相補的でないが、2つの鎖の塩基間に十分な結合がおこり、ある一連の条件(例えば、水溶液中の塩濃度、又は温度)で安定したハイブリダイズ複合体を形成することを意味する。そのような条件は、その塩基配列と、ハイブリダイズした鎖の50%が変性する融解温度(Tm)を決定するための当業者に公知の標準的数理計算を用いて、又は定型的な方法を用いて経験的にTmを決定して予測できる(例えば、Sambrook et al.,(Molecular Cloning, A Laboratory Manual)第2版(コールドスプリングハーバーラボラトリー、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー、1989)の 9.50-51、11.46-49、11.55-57 を参照)。
【0018】
「ハイブリダイゼーション条件」とは、1つの核酸鎖が相補的な鎖相互作用により第2の核酸鎖に結合してハイブリダイゼーション複合体を産生する、累積的な環境を意味する。そのような条件としては、例えば、温度、化学成分、核酸を含有する水溶液及び/又は有機溶液の化合物(例、塩類、緩衝剤、キレート剤、有機化合物)の濃度があげられる。インキュベーション時間や反応チャンバの容量といった他の因子も、当業者に周知のハイブリダイゼーション条件の一因となる場合がある(例えば、Sambrook et al., 同上、1.90-1.91、9.47-9.51、11.47-11.57 を参照)。
【0019】
「標識」とは、検出可能か又は、例えば、シグナルを産生する反応を触媒して検出できる応答を直接的又は間接的におこす分子部分をいう。標識としては、発光部分(例えば、蛍光性、生物発光性、又は化学発光性の化合物)、放射性同位体、結合対メンバー(例、ビオチン及びアビジン又はストレプタビジン)、酵素又は酵素基質、反応基又は例えば、色素や検出可能な色をもたらす粒子等の発色団があげられる。検出可能な応答又はシグナルは、例えば、光、色、放射性崩壊放射、電気シグナル、磁場又は消光又は混濁等のシグナル妨害等の標識の存在を示すあらゆる認知可能又は測定可能な出力である。
【0020】
「固定化オリゴマー又はプローブ」とは、捕捉支持体マトリックスへ共有的又は非共有的に結合又は付着するオリゴマーを意味し、標的核酸を含有する捕捉ハイブリッドを捕捉支持体へ結合させる手段を提供する。好ましい固定化プローブは、標的核酸へ直接的又は間接的に結合して、結合した標的核酸を非結合の試料材料から分離することを促進するオリゴマーである。1つの実施態様では、ハイブリダイゼーション複合体で標的と固定化プローブを結合させる捕捉プローブを介して、標的を固定化プローブに間接的に結合させる(米国特許第6,110,678及び6,280,952号、Weisburgらを参照)。例えば、ニトロセルロース、ナイロン、ガラス、ポリアクリレート、混合ポリマー、ポリスチレン、シランポリプロピレン及び磁気材料より作製されるマトリックス又は粒子等のあらゆる多様な支持体が用いられる。磁力を加えて溶液から容易に回収され得る相対的に均一な大きさの単分散性磁気球体は、支持体の好ましい実施態様である。
【0021】
「捕捉オリゴマー又はプローブ」とは、即ち、標的配列へ結合する標的特異部分と捕捉プローブを固定化プローブへ付ける部分を用いて、標的核酸と固定化プローブを結合する。1つの実施態様では、両方の付着が相補塩基配列のハイブリダイゼーション、即ち、捕捉プローブの標的相補配列と標的配列のハイブリダイゼーションと、捕捉プローブの他の部分の固定化プローブの相補配列へのハイブリダイゼーションに起因する。他の実施態様では、当該技術分野で周知の特異結合対メンバー(例、ビオチン及びアビジン又はストレプタビジン)を用いて1以上の付着が起こり得る。捕捉プローブを用いる組成物及び方法は公知である(米国特許第6,110,678号)。
【0022】
「分離すること」又は「精製すること」とは、試料の1以上の成分を他の試料成分から取り出すことを意味する。試料成分としては、タンパク質、炭水化物、脂質及び他の化合物等の材料をあげてもよい。一般に水溶液相中の核酸があげられる。好ましくは、核酸を分離するか又は精製して、少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約90%、なおより好ましくは、少なくとも約95%の核酸が他の試料成分から取り出される。
【0023】
増幅オリゴヌクレオチド又はオリゴマーは、標的核酸又はその相補配列へハイブリダイズして、核酸のインビトロ合成のプライマーとしての目的を果たすことにより核酸増幅反応に関わるオリゴマーをいう。増幅オリゴマーは、プロモータープライマーというオリゴマーでRNAポリメラーゼに結合するプロモーター配列等の他の機能配列を含有できる。一般に、増幅オリゴヌクレオチドは、標的配列(又はその相補鎖)に相補的な、少なくとも約10の連続塩基、好ましくは少なくとも約12の連続塩基を含有する。本連続塩基は、増幅オリゴマーへ結合する配列に対して、好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%、そして最も好ましくは約100%相補的である。増幅オリゴマーは、RNA、DNA、又は混合DNA−RNAでもよく、場合によっては、修飾されたヌクレオチド又は骨格結合を含んでいてもよい。
【0024】
プライマーは、鋳型核酸にハイブリダイズして、酵素により触媒される重合化反応において伸長され得る末端(通常、3’)を有するオリゴヌクレオチドをいう。プライマーの5’領域は、例えば、標的配列にない5’プロモーター配列を含むプロモータープライマー中等のように、標的核酸に相補的でなくてもよい。当業者であれば、プロモータープライマーがそのプロモーター配列から独立したプライマーとして(即ち、プロモーター配列の有無に関わらず)機能し得ること、そしてどの増幅オリゴマーも5’プロモーター配列を含むように修飾し、それによりプロモータープライマーとして機能し得ることを理解するであろう。
【0025】
「増幅」は、標的配列、その相補体、又はそれらの断片のコピーを多数入手するためのあらゆる公知の手順をいう。断片の増幅は、完全な標的核酸配列又はその相補体よりも小さいものを含有する増幅核酸の産生、例えば、完全なHAVゲノムの一部の増幅等をいう。完全な標的の断片又は一部の増幅は、標的核酸の内部位置にハイブリダイズして、重合化を開始する増幅オリゴマーを用いることに起因する。公知の増幅法としては、例えば、転写仲介増幅(TMA)、レプリカーゼ仲介増幅、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCP)及び鎖置換増幅(SDA)があげられる。レプリカーゼ仲介増幅は、自己複製するRNA分子と、QB−レプリカーゼ等のレプリカーゼを用いる(例えば、米国特許第4,786,600号、Krameら)。PCRは、DNAポリメラーゼ、多重プライマー及び熱サイクリングを用いて、DNA又はcDNAの2つの相補鎖のコピーを多数合成する(例、米国特許第4,683,195号、4,683,202号及び4,800,159号、Mullisら)。LCRは、少なくとも4つの異なるオリゴマーを用いて、ハイブリダイゼーション、ライゲーション及び変性の多重サイクルを用いて標的とその相補鎖を増幅する(例、米国特許第5,427,930号、Biekenmeyerら及び5,494,810号、Baranyら)。SDAは、制限エンドヌクレアーゼの認識部位を含有するプライマーを用いるが、本エンドヌクレアーゼは、標的配列を含むヘミ修飾化DNA二重鎖の1つの鎖に切れ目を入れて、一連のプライマー伸長及び鎖置換の工程を続ける(例、米国特許第5,422,252号、Walkerら)。転写仲介性又は転写結合性の増幅反応は、ポリメラーゼを用いて定温で循環し、検出可能な増幅産物となる転写産物の他のコピーを産生できる転写産物を作製する特異的なRNAポリメラーゼの機能的なプライマーを含有する、標的への相補鎖を二本鎖の形態で作製する。
【0026】
転写仲介又は転写結合性の増幅は、RNAポリメラーゼを用いた、RNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼ、デオキシリブヌクレオシド三リン酸、リボヌクレオシド三リン酸及びプロモータープライマーを用いて、場合によっては、1以上の他のオリゴヌクレオチドを含んでいてもよい定温反応で核酸鋳型より多数のRNA転写産物を生成する。上記の増幅の方法と反応条件は、すでに詳しく記載されている(例えば、米国特許第5,399,491号及び5,554,516号、Kacianら、米国特許第5,437,990号、Burgら、PCT番号WO88/01302及びWO/10315、Gingerasら、米国特許第5,130,238号、Malekら、米国特許第4,868,105号及び5,124,246号、Urdeaらを参照)。
【0027】
本発明の好ましい実施態様は、転写仲介増幅(米国特許第5,399,491及び5,554,516号に記載のTMA)を用いる。しかしながら、当業者であれば、本明細書に記載の方法及びオリゴヌクレオチドプライマーを、ポリメラーゼを用いてプライマーを合成的に伸長させるあらゆる核酸増幅法と共に適用できることは明らかであろう。
【0028】
「検出プローブ」は、特異的な標的配列へ結合するオリゴマーであり、結合によって、標的配列の存在を示す検出可能シグナルを直接的又は間接的に産生する。検出プローブは、プローブが標的へ結合して生じる電気インパルス等の検出可能シグナルを産生するために標識する必要はない。標識化プローブは、標識へ直接的又は間接的に結合したオリゴマーから構成される。標識化プローブを作製する及び/又は用いる方法は周知である(例、Sambrookら、同上、第10章;米国特許第6,361,945号、Beckerら;5,658,737号、Nelsonら;5,656,207号、Woodheadら;5,547,842号、Hoganら;5,283,174号、Arnoldら;4,581,333号、Kourilskyら;及び5,731,148号、Beckerら)。検出プローブとしては、合成リンカー(米国特許第5,585,481号及び5,639,604号、Arnoldら)と、アクリジニウムエステル(AE)化合物等の化学発光標識(米国特許第5,185,439号、5,656,207号及び5,658,737号)があげられる。
【0029】
「同種(homogeneous)検出可能標識」は、標識が標的へ結合しているか又は非結合であるかに依存する同種の態様で検出され得る標識である。即ち、同種反応における標識の検出は、シグナルが検出される混合物から標識の非結合体を物理的に分離しなくてもよい。当業者であれば、均質な反応が、溶液中でも、アレイ、バイオチップ、又は遺伝子チップ上等の支持体上でも起こり得ることを理解するであろう。同種検出可能標識とその検出条件は周知である(例えば、米国特許第5,283,174号、5,656,207号及び5,658,737号)。
【0030】
「から本質的になる」とは、本発明の基本的で新規の特性を実質的に変えない他の成分(複数)、組成物(複数)、又は方法工程(複数)を、本発明の組成物、キット、又は方法に含めうることをいう。本特性としては、本明細書に記載した捕捉プローブ、増幅プライマー及び検出プローブの組合せを用いて、1mlにつき25〜30コピーのHAVを含有する試料について少なくとも80%の感度で試料中のHAV核酸の存在を特異的に検出する能力があげられる。本明細書に記載の核酸オリゴマーとインビトロの方法を用いて、試料中に存在するHAVの検出の特異性及び/又は感度に実質的に影響を及ぼすいかなる成分(複数)、組成物(複数)、又は方法工程(複数)も、本用語には該当しない。
【0031】
他に定義しなければ、本明細書に用いる全ての科学及び技術用語は、通常当業者が理解するのと同じ意味である。本明細書で用いる用語の定義の多くは、例えば、「Dictionary of Microbiology and Molecular Biology」第2版(Singleton et al., 1994, ジョン・ウィリー・アンド・サンズ、ニューヨーク州ニューヨーク)、「The Encyclopedia of Molecular Biology」(Kendrew, Ed., 1994, Blackwell Science 社、マサチューセッツ州ケンブリッジ)、又はThe Harper Collins Dictionary of Biology」(Hale and Marham, 1991, Harper Perennial, ニューヨーク州ニューヨーク)から提供される。他に言及しなければ、本明細書で利用又は考慮する技術は、当業者に周知の標準的方法論である。実施例をあげて好ましい実施態様を例示する。
【0032】
本発明としては、試料中のHAV核酸を検出するための組成物(核酸増幅オリゴマー、検出プローブ及び場合によっては捕捉オリゴマー)と方法があげられる。本明細書に開示するオリゴマーとしての使用に適した配列を選択するために、公知のデータベース(例えば、GenBank登録番号AB020564〜AB020569)で利用可能な異なる単離物のゲノム配列、部分配列及び相補配列を含む、公知のHAVゲノム配列(Beneduce, et al., 1995, Virus Res. 36(2-3): 299-309;Fujiwara, et al., 2001, J. Hepatol. 35(1): 112-119;Hu et al., 2002, Acta Virol. 46(3): 153-157)を、同一又は類似の配列の領域を適合させて並置し、周知技術を用いて並置した配列を比較した。配列比較はアルゴリズムを用いれば容易となり得るが、当業者であれば、そのような比較をマニュアルで目視で容易に実施できる。比較配列間で配列変異が比較的少ないHAV配列の部分を、本明細書に記載の捕捉、増幅及び検出工程での使用に適した合成オリゴマーを設計するための基礎として選択した。オリゴマー配列を選択する場合、GC含量や予測される二次構造(例、ヘアピンターン又は分子内対合)の相対存在度といった、他の周知の配列特性も考慮した。
【0033】
上記の解析に基づいて、ヌクレオチド200、3700、4700、5700、5800、6000及び7000付近のHAVゲノムの領域を増幅HAV配列の検出に見込みがありそうな標的領域として選択した。各領域について、他の試料成分から、増幅オリゴマーとして、そしてプローブ配列として精製するために試料からHAV RNAを捕捉するのに用いるためのオリゴマーを設計した。標的領域の好ましい実施態様としては、HAVゲノムの0〜305nt、4714〜4765nt、5495〜5788nt、5788〜6069nt及び6952〜7413ntの部分である。
【0034】
一般に、捕捉オリゴマー配列には、標的領域付近の配列に特異的に結合して増幅される配列と、標的を含むハイブリダイゼーション複合体を、例えば固定化オリゴマーへのハイブリダイゼーションにより固形支持体へ付ける場合に用いる「テール」領域を含む(例、米国特許第6,110,678号)。好ましい捕捉オリゴマーとしては、配列番号1〜17に示す、HAV RNA配列に特異的に結合する標的特異配列と、共有結合したテール配列(例、dTdA30)があげられる。当業者であれば、捕捉オリゴマー(配列番号8〜14)の標的特異部分又はそのRNA同等物がそれを固定化プローブへ結合させるいかなる部分(例えば、なるテール配列、又はビオチン又はアビジン等の結合対のメンバー)にも結合できることを理解するであろう。いかなる骨格も、捕捉オリゴマーの塩基配列を結合させることができる。ある実施態様としては、捕捉オリゴマーの標的特異部分の2’−O−メチル結合と、テール部分の標準のDNA結合を用いる。ポリヌクレオチドテール配列は、固定化プローブの配列に相補的であればいかなる配列でもよく、配列長は概ね約5〜50残基であり、好ましくは、固定化ホモポリマー配列(例、G15)に対して相補的な、約10〜約40残基(例えば、C10〜C40)の範囲の実質的にホモポリマーの配列である。
【0035】
プライマー配列は、標的やその相補配列に結合しない他の配列を含有し得るにもかかわらず、HAV RNA標的配列又は相補鎖に特異的に結合して増幅される標的配列の側面に位置する。プライマーは、プロモータープライマーでもよく、T7 RNAポリメラーゼプロモーター(配列番号19)等の5’プロモーター配列を含んでもよい。プロモータープライマーの実施態様としては、配列番号20〜29があげられる。HAV特異的プライマーの他の実施態様としては、制限エンドヌクレアーゼ認識配列(配列番号132〜135)等の補助(ancillary)配列があげられる。当業者であれば、プライマーの標的特異配列が、付着プロモーター又は補助配列の有無にかかわらず、様々なインビトロ増幅条件においてプライマーとしての目的を果たすことを理解できるであろう。HAVゲノムの標的領域(例えば、ヌクレオチド部分200、3700、4700、5700、5800、6000及び7000付近)の配列のために増幅オリゴマーを設計した。当業者であれば、上記の数字が近傍にあるHAV標的領域のみを意味し、オリゴマーが1より多い標的領域のアッセイにおいて機能できることを理解することができる。即ち、上記のオリゴマーは、本発明の好ましい実施態様を群分けするための手近な(shorthand)参照として提供される標的領域数を同定して機能的に制限されるわけではない。増幅オリゴマーは、DNA、RNA、相補DNA又はRNA、又は混合DNA及びRNA配列として合成しても、1以上の非標準的な核酸骨格結合を含みうる。例えば、配列番号106のオリゴマーは、残基1〜4ではRNA塩基と2’−O−メチル結合で、他の残基では標準のDNA塩基及び結合で合成した。
【0036】
第1のHAV標的領域(200位付近)への増幅オリゴマーとしては、配列番号138の配列に含まれる約23〜26ntの範囲の大きさのものがあげられ、少なくとも配列番号139又は配列番号149の配列があげられる。本オリゴマーの実施態様としては、配列番号51〜配列番号57があげられる。本領域へのプロモータープライマーの実施態様としては、約50〜53ntの範囲の大きさの配列番号21〜27の標的特異部分があげられる。本標的領域の増幅オリゴマーとしては、配列番号141に含まれる約19〜25ntの範囲の大きさのものがあげられ、少なくとも配列番号142〜146のいずれか1の配列があげられる。本標的領域のための増幅オリゴマーの実施態様としては、配列番号15〜18、20〜27、50〜57及び80〜85のものがあげられる。
【0037】
第2のHAV標的領域(3700位付近)への増幅オリゴマーとしては、配列番号60又は配列番号86の配列に含まれる約21〜27ntの範囲の大きさのものがあげられ、少なくとも配列番号156の配列があげられる。本領域に対する本標的特異部分を含み、約48〜54ntの範囲の大きさのプロモータープライマーの実施態様としては、配列番号29〜32があげられる。本標的領域の増幅オリゴマーの実施態様には、配列番号28〜30、58〜60及び86〜88があげられる。
【0038】
第3のHAV標的領域(4700位付近)の増幅オリゴマーとしては、配列番号147に含まれ、少なくとも配列番号148の配列を含むか、又は配列番号157に含まれ、少なくとも配列番号158の配列を含む、約24〜30ntの範囲の大きさのものがあげられる。本標的領域の増幅オリゴマーの実施態様としては、配列番号31、32、62、68、89、90及び91があげられ、本うち配列番号31と配列番号32は、標的特異配列に付く5’プロモーター配列を含むプロモータープライマーの実施態様である。
【0039】
第4のHAV標的領域(5700位付近)の増幅オリゴマーとしては、配列番号93又は配列番号95の配列に含まれる、約18〜27ntの範囲の大きさのものがあげられる。本オリゴマーの実施態様としては、少なくとも配列番号97、配列番号159及び配列番号160のいずれか1つを含有するものがあげられる。本標的領域の増幅オリゴマーの実施態様としては、配列番号33、63及び92〜97があげられ、このうち配列番号33は、標的特異配列に付く5’プロモーター配列を含むプロモータープライマーの実施態様である。
【0040】
第5のHAV標的領域(5800位付近)の増幅オリゴマーとしては、配列番号149に含まれる約19〜31ntの範囲の大きさのものがあげられ、かつ少なくとも配列番号150の配列があげられる。本標的特異部分を含む、約51〜56ntの範囲の大きさのプロモータープライマーの実施態様としては、配列番号34〜40があげられる。本標的領域の増幅オリゴマーの他の実施態様としては、配列番号64〜70及び97があげられる。
【0041】
第6のHAV標的領域(6000位付近)の増幅オリゴマーとしては、配列番号161に含まれる約24〜28ntのものがあげられ、かつ配列番号162の配列があげられる。本標的領域のための増幅オリゴマーの実施態様には、配列番号41、42、71、72、98、99及び101があげられ、このうち配列番号41及び42は、標的特異配列に付く5’プロモーター配列を含むプロモータープライマーの実施態様である。
【0042】
第7のHAV標的領域(7000位付近)への増幅オリゴマーとしては、配列番号151に含まれる約20〜30ntの範囲の大きさのものがあげられ、少なくとも配列番号152〜配列番号155の配列のいずれか1つがあげられる。本標的領域のための増幅オリゴマーの他の実施態様としては、配列番号163があげられ、少なくとも配列番号164の配列があげられる。他の実施態様としては、配列番号165に含まれ、少なくとも配列番号166〜168の配列のいずれか1つを含む増幅オリゴマーである。本領域へのHAV標的特異部分を含む、約51〜56ntの範囲の大きさのプロモータープライマーの実施態様は、配列番号43〜49である。本領域への増幅オリゴマーの他の実施態様としては、配列番号73〜79及び102〜108があげられる。
【0043】
増幅するHAV配列にハイブリダイズしてそれを検出するようなオリゴマーを設計したが、それには、配列番号109、111、113、115、117、119、121、122、123,124及び126〜130の検出プローブがあげられる。当業者であれば、用いる増幅オリゴマーの組合せで決定される、増幅する配列の内部に含まれる配列にハイブリダイズするように検出プローブを選択できることを理解するであろう。検出プローブオリゴマーは、DNA、RNA、又は混合DNA及びRNAポリマーとして合成でき、2’−O−メチル結合等の代わりの骨格結合を含んでよい。例えば、配列番号109、111、117、119、121、122、128及び130のオリゴマーは2’−O−メチル結合で合成して、配列番号124及び127のオリゴマーは第2残基から3’末端残基までを2’−O−メチル結合で混合DNA及びRNAヌクレオチドとして合成した。検出プローブの好ましい実施態様としては、付着した化学発光標識、好ましくはアクリジニウムエステル(AE)化合物があり(米国特許第5,185,439号、5,639,604号、5,585,481号及び5,656,744号)、これは、好ましい実施態様において、非ヌクレオチドリンカーによりプローブに付く(米国特許第5,585,481号、5,656,744号及び5,639,604号、特に、第10欄第6行〜第11欄第3行及び実施例8)。本プローブオリゴマーの実施態様としては、公知の方法を用いて、配列番号119、121及び124では残基9と10の間、配列番号115、117、126、127及び128では残基10と11の間、配列番号109、111、123、124及び130では残基11と12の間、配列番号113,122及び129では残基12と13の間、そして配列番号122では残基13と14の間に、AE化合物で標識した。プローブオリゴマーは、相補オリゴマー配列とのハイブリダイゼーションにより、Tmを決定するための標準的な方法及び/又はハイブリダイゼーション複合体におけるアクリジニウムエステルのディファレンシャル加水分解を用いて試験して特性を決定した(詳細は米国特許第5,283,174号に記載)。例えば、ハイブリダイゼーションは、配列番号109及び配列番号110、配列番号111及び配列番号112、配列番号113及び配列番号114、配列番号115及び配列番号116、配列番号117及び配列番号118、配列番号119及び配列番号120、配列番号124及び配列番号125、配列番号128及び配列番号100及び配列番号130及び配列番号131の配列の相補対を用いて実施した。ハイブリダイゼーション試験は、配列番号124と配列番号137、配列番号129と配列番号136等の他の相補配列を用いて実施することができる。
【0044】
本発明の組成物としては、HAV核酸配列を検出するためのキットがあげられる。本キットとしては、HAV核酸配列をインビトロで増幅するためのプライマーとして機能する、本明細書に開示する増幅オリゴマーがあげられる。キットの例示としては、HAV RNAゲノムの標的領域中の配列又はその相補配列に特異的にハイブリダイズする第1の増幅オリゴマーと、標的領域中の他のHAV配列に特異的にハイブリダイズする第2の増幅オリゴマーがあげられ、好ましくは、1つがHAV RNAゲノム配列に相補的である。キットの実施態様としては、本明細書に記載するようなプライマー及びプロモータープライマーの組合せである増幅オリゴマーがあげられる。キットは、キットのために選択されるプライマーの標的領域の増幅HAV配列を検出するための検出プローブとしての目的を果たす1以上のオリゴマーも含有しうる。プローブオリゴマーを含む実施態様のキットとしては、本明細書に記載するプローブオリゴマーに直接的又は間接的に付着する標識があげられ、検出プローブ配列の1以上を用いる。キットは、標的HAV RNAを試料から精製するための捕捉オリゴマーとして機能するオリゴマーも含有しうる。本明細書に記載する捕捉オリゴマーの実施態様としては、共有結合したテール配列、又は標的捕捉に用いる他の結合部分を含有しうる。本明細書に記載の方法を実施するのに有用なキットも本発明に含まれ、好ましい実施態様としては、本明細書に記載等の少なくとも2つの増幅オリゴマーがあげられ、インビトロ増幅を実施するための、例えば、酵素、塩溶液及び核酸合成基質化合物等の試薬もあげられる。本明細書に記載のオリゴマーは、多様な異なる実施態様に包装でき、当業者であれば、本発明には多くの異なるキット配置を含むと理解するであろう。例えば、キットには、HAVゲノムの唯1つの標的領域のための増幅オリゴマーが含まれても、多数の標的領域のための増幅オリゴマーが含まれてもよい。当業者であれば、検出プローブを含むキットとして、キットの増幅オリゴマーにより増幅される配列に結合するプローブがあげられることを理解するであろう。即ち、キットの増幅オリゴマー及び検出プローブオリゴマーの選択は意図する標的領域に関連する。
【0045】
試料中のHAV核酸を検出するアッセイの実施態様としては、捕捉オリゴマーを用いてHAV標的核酸を試料より捕捉する工程、捕捉されたHAV核酸の領域を、少なくとも2つのプライマーの組合せを用いて増幅する工程及び増幅HAV配列を、それを検出プローブオリゴマーと特異的にハイブリダイズさせることによって検出して、増幅HAV配列へ結合したプローブより生じるシグナルを検出する工程があげられる。好ましい実施態様は、転写関連又は転写仲介性の増幅反応を用いる。増幅核酸又はプローブのいずれか一方を標識しても、両方を非標識にしてもよく、検出可能シグナルは、そのプローブと増幅核酸のハイブリダイゼーションより生じる電気インパルスのように、ハイブリダイゼーション複合体と関連した間接的な標識又は応答により生じる。
【0046】
捕捉工程は、好ましくは、HAV標的配列に特異的にハイブリダイズする標的特異配列(例えば、配列番号8〜14)と、本ハイブリダイズした標的核酸を他の試料成分から分離できる部分を含む捕捉オリゴマーを用いる。捕捉工程は、上記のように(米国特許第6,110,678号)、テール部分の固定化プローブへのハイブリダイゼーションにより、標的核酸が他の試料成分から分離できる部分として機能する、例えば配列番号1〜7等のテール部分も含む捕捉オリゴマーを用いてもよい。好ましい実施態様は、捕捉オリゴマーの相補テール配列にハイブリダイズする共有結合又は固定化したポリdTオリゴマーのある、単分散性(即ち、サイズにおいて±約5%の均質性)の磁気球体である指示体を用いる。少なくとも標的核酸と捕捉オリゴマーを含み、好ましくは、固定化プローブも含むハイブリダイゼーション複合体は、標準的な物理的分離方法(例、磁力の適用、濾過、又は遠心分離)を用いて他の試料成分から分離し、捕捉した標的核酸は、1回以上洗浄して、標的核酸を他の試料成分からさらに精製できる。例えば、ハイブリダイゼーション複合体において標的核酸が付着した粒子を、本複合体を維持する洗浄溶液において1回以上懸濁させてから、上記のように、洗浄溶液から複合体が付着した粒子を回収する。
【0047】
捕捉されたHAV標的配列を増幅することは、例えば、配列番号66及び配列番号95、又はそれらの相補配列が側面にあるHAV配列等の増幅する配列の側面にある少なくとも2つのプライマーを用いるインビトロ増幅反応を用いる。1つの実施態様は、転写結合増幅反応を用いて、実質的に定温条件において多数のRNAコピーの配列を作製する(上記した米国特許第5,399,491号及び5,554,516号)。転写結合増幅は、2種類のプロモーター(1つは、RNAポリメラーゼのプロモーター配列を含有するプロモータープライマー)、酵素(逆転写酵素とRNAポリメラーゼ)、基質(デオキシリボヌクレオシド三リン酸、リボヌクレオシド三リン酸)、並びに、溶液状態の適切な塩及び緩衝剤を用いて、核酸鋳型から多数のRNA転写産物を生成する。簡潔には、プロモータープライマーを標的RNA配列に特異的にハイブリダイズさせて、逆転写酵素によるプロモータープライマーの3’端からの伸長により第1鎖cDNAを作製して、生じるDNA:RNA二重鎖中の鋳型鎖を、RNアーゼH活性を用いて分解する。本cDNAへ第2のプライマーが結合して、第2のプライマーの端から逆転写酵素により他のDNA鎖を合成して、RNAポリメラーゼが結合する機能性プロモーター配列がある二本鎖DNAを作製する。多数のRNA転写産物(「アンプリコン」)が転写され、各々が上記のような新たな複製ラウンドの鋳型になり得ることから、多量の一本鎖増幅配列が産生される(例えば、単一の鋳型から約100〜3,000の転写産物)。転写結合増幅反応を用いる本発明の実施態様は、プロモータープライマー(配列番号20〜49)を他のプライマー(配列番号15〜18、80〜99及び101〜108)とともに用いて、検出のために選択HAV配列を増幅する。
【0048】
検出工程は、増幅HAV配列へ特異的に結合する少なくとも1つのプローブを用いる。実施態様は、検出プローブの増幅HAV配列への結合を検出するために、あらゆる公知の検出法(例、放射活性、蛍光、酵素、比色、電気、又は発光シグナルの検出)を用いてよく、この検出されるシグナルが試料中のHAVの存在を示す。プローブオリゴマーの実施態様(配列番号109、111、113、115、117、119、121、122〜124、126〜130)としては、非標識であっても、多種のいかなる公知の標識を用いて標識してもよい。好ましい実施態様としては、非結合の検出プローブを混合物から除去しない同種の検出反応において検出工程を実施する。同種の検出反応に用いるプローブオリゴマーの実施態様は、好ましくは、上記で詳細した(米国特許第5,283,174号、5,656,744号及び5,658,737号)ように検出される化学発光シグナルを産生する多種のAE化合物の1つで標識する。
【0049】
一般に、好ましいアッセイ実施態様としては、以下の工程が含まれる。HAV含有試料をもたらし、標準実験法を用いてこれを調製して、HAVを含有する実質的に水性の溶液又は懸濁液を作製してよい。本試料溶液又は懸濁液のアリコート(0.5ml)を等量(0.4〜0.5ml)の標的捕捉試薬、即ち、1以上の捕捉オリゴマー(4ピコモル/反応)、捕捉オリゴマーの一部へ相補的な固定化プローブが付いた磁気粒子及び塩化合物を含有する溶液と混合して、ハイブリダイゼーション条件をもたらす。標的捕捉試薬としては、好ましくは、HAV粒子を崩壊させてHAV RNAを捕捉オリゴマーとのハイブリダイゼーションのために放出させる、界面活性剤又は他のカオトロピック剤があげられる。本混合物を、捕捉オリゴマーの標的特異部分のHAV標的配列へのハイブリダイゼーションさせるために60℃で20〜30分、その後、捕捉オリゴマーと固定化プローブの結合させるために室温で20〜30分間インキュベートする。反応容器の外側へ約10分間磁場をかけて、HAV RNAを含むハイブリダイゼーション複合体が付いた粒子を分離して、他の試料成分を含有する溶液相を吸引除去する。ハイブリダイゼーション複合体の付いた粒子を洗浄するために、それらを1mlの洗浄緩衝液に懸濁し、実質的に上記のように溶液から分離して本溶液を除去する。精製されたHAV RNAを含むハイブリダイゼーション複合体の付いた粒子を、増幅試薬(緩衝剤、塩、dXTP及びXTP基質)と増幅オリゴマーの組合せ(プロモータープライマー及びプライマーの組合せ、各々3〜30ピコモル、概して15ピコモル)を含有する溶液と混合して、オイル(0.2mlの濾過済みシリコンオイル)で覆って蒸発を防ぎ、60℃で10分間、その後42℃で10分間インキュベートしてから、酵素(逆転写酵素とRNAポリメラーゼ)を加えて、本混合物を42℃で60分間インキュベートする。検出には、この増幅された反応混合物を少なくとも1つのアクリジニウム標識された検出プローブオリゴマーとともにインキュベートして、ルミノメーター(例、Gen−Probe Leader(登録商標)、Gen−Probe社、カリフォルニア州サンディエゴ)の標準的な方法を用いて検出できるように、2百万以下の最大の検出可能シグナル(相対発光量、又はRLU)を提供する。ハイブリダイゼーション溶液中の増幅された反応混合物の非希釈又は希釈アリコートと検出プローブを混合し、60℃で20分間インキュベートして、増幅された標的配列にプローブオリゴマーがハイブリダイゼーションできるようにする。その後、選択試薬(例、塩基)を用いて非結合プローブ上の標識を加水分解して、60℃で10分間インキュベートし、続けて検出試薬(例、H)を加えて化学発光を産生し、pHの中和(例えば、酸の添加による)を続けて、ルミノメーターで化学発光シグナル(RLU)を(例えば、1〜5秒)検出する。
【0050】
上記の方法における使用への捕捉オリゴマー、増幅オリゴマー及び検出プローブは、DNA、RNA、又は混合DNA及びRNAポリマーを生成する標準的な方法を用いて合成できる。本オリゴマーには、標準又は修飾結合及び/又は天然に存在するヌクレオシド(A、T又はU、G、C)、類似体(例、イノシン)、又は合成プリン及びピリミジン誘導体(例、P又はK塩基)を含めることができる(Lin & Brown, 1989, Nucl. Acids Res. 17: 10373-83; Lin & Brown, 1992, Nucl. Acids Res. 20: 5149-52)。
【0051】
本発明の一般原理は、本発明のいくつかの実施態様を記載する以下の実施例を参照すればより完全に理解することができる。本実施例に記載する具体的な成分に加えて、一般に、以下に記載する実験では、以下の試薬を使用した。標的捕捉試薬は、790mM HEPES,680mM LiOH,10%(v/v)ラウリル硫酸リチウム(LLS),230mMコハク酸、0.03%(v/v)消泡剤、ポリdT14が共有結合した100μg/ml磁気粒子(1ミクロンのSera−MagTM粒子、Seradyn社、インディアナ州インディアナポリス)及び1以上の捕捉オリゴマー(400μlにつき各4ピコモル)で構成される。洗浄緩衝液は、150mM NaCl,10mM HEPES,6.5mM NaOH,1mM EDTA,0.3%(v/v)エタノール、0.1% SDS,0.02%(w/v)メチルパラベン,0.01%(w/v)プロピルパラベンよりpH7.5から構成される。増幅試薬は、11.6mM Tris塩基,15mM Tris−HCl,22.7mM MgCl,23.3mM KCl,3.33%グリセロール,0.05mM酢酸亜鉛,0.665mM dATP,0.665mM dCTP,0.665mM dGTP,0.665mM dTTP,5.32mM ATP,5.32mM CTP,5.32mM GTP,及び5.32mM UTPよりpH7で構成される。酵素試薬は、140U/μl T7 RNAポリメラーゼ,224RTU/μlのMoloneyマウス白血病ウイルス逆転写酵素(MMLV−RT),16mM HEPES,70mM N−アセチル−L−システイン、3mM EDTA,0.05%(w/v)アジ化ナトリウム,20mM Tris,50mM KCl,20%(v/v)グリセロール,10%(v/v)TRITON(登録商標)X−102,150mMトレハロースよりpH7で構成された。(酵素単位は、典型的には、T7プロモーターを含有するDNA鋳型を用いて、37℃で1時間で1ナノモルのATPをRNAへ取り込むT7 RNAポリメラーゼを1Uとし、1UのMMLV−RTは、200〜400μMのオリゴdTプライマーとポリA鋳型を用いて37℃で10分で1ナノモルのdTTPを取り込む)。プローブ試薬は、100mMコハク酸,2%(w/v)LLS,230mM LiOH,15mM Aldrithiol−2,1.2mM LiCl,20mM EDTA,20mM EGTA,3%(v/v)エタノールより構成し、LiOHでpH4.7へ調整した。選択試薬は、600mMホウ酸,182mM NaOH,1%(v/v)オクトキシノール(TRITON(登録商標)X−100)よりpH8.5で構成される。検出試薬は、1mM硝酸と32mM Hを含有する検出試薬Iと、1.5M NaOHである検出試薬II(pHを中和する)であった(詳細は、米国特許第5,283,174号を参照)。
【実施例1】
【0052】
検出プローブの特定
標準のホスホロアミダイト化学(Caruthers et al., 1987, Methods in Enzymol., 154: 287)を用いて配列番号109、111、113、119、123、126及び130のオリゴマーを合成して、周知の方法(米国特許第5,185,439号及び5,283,174号)を用いてリンカーを介してアクリジニウムエステル(AE)標識を付け、定型のクロマトグラフィー法(例、HPLC)を用いてプローブを精製した。プローブは、配列番号109、配列番号111、配列番号123及び配列番号130では残基11と12の間、配列番号113では残基12と13の間、配列番号126では残基10と11の間、そして配列番号119では残基9と10の間にAE標識した。本プローブオリゴマーを特定するために、プローブの予測Tmより低温で、各々を相補的なDNA及び/又はRNAオリゴマー(例えば、配列番号110と配列番号109、配列番号112と配列番号111、配列番号114と配列番号113、配列番号120と配列番号119、そして配列番号131と配列番号130)とハイブリダイズさせてから、標準的な方法を用いてTmを実験的に決定した。非結合プローブ中のAEと比較した、相補的なオリゴマーにハイブリダイズしたプローブ中のAE標識のディファレンシャル加水分解も、標準的な方法(米国特許第5,283,174号を参照)を用いて実験的に決定した。簡潔には、非結合プローブ中の標識の半分の加水分解に必要な時間と比較した、シグナルの半分がハイブリッドでのAE加水分解により失われるのに必要な時間の比を決定した。Tmは、配列番号109、111、113、119及び130のオリゴマーでは、相補的なDNAへハイブリダイズする場合、59℃〜66℃の範囲であり、配列番号109、111、123、126及び130のオリゴマーでは、相補的なRNAへハイブリダイズする場合、76℃〜81℃の範囲であった。ディファレンシャル加水分解の比は、配列番号109、111、113、119及び130のプローブでは、相補的なDNAへハイブリダイズする場合、12〜25の範囲であり、ディファレンシャル加水分解の比は、配列番号109、111、123、126及び130のプローブでは、相補的なRNAへハイブリダイズする場合、18〜104の範囲であった。別に、残基9と10の間で標識した配列番号121、残基13と14の間で標識した配列番号122、残基9と10の間で標識した配列番号124、そして残基11と12の間で標識した配列番号130のプローブで、同様のハイブリダイゼーション及びディファレンシャル加水分解試験を実施すると、プローブを相補的なRNAへハイブリダイズさせる場合、ディファレンシャル加水分解比は、43〜190の範囲であった。上記の結果は、これら合成プローブオリゴマーの全てがその相補的な標的配列に特異的にハイブリダイズして、増幅HAV配列を特異的に検出するのに有用な検出可能シグナルを産生することを示した。
【実施例2】
【0053】
試料からのHAV RNAの精製
標準のホスホロアミダイト化学を用いて合成して、標準的な方法を用いて精製した配列番号1〜7の捕捉オリゴマーについて、ヒト血漿試料中のウイルスから放出されるHAV RNAを捕捉する能力を試験した。HAV粒子を正常なヒト血漿(0.5ml)へ公知の濃度で加えて試料を作製し、HAV(例えば、各反応につき500〜1000)を含有する試料を等量の、各捕捉オリゴマーを個別に(4ピコモル/反応)、そしてポリdT磁気粒子を含有する標的捕捉試薬と混合した。本混合物を60℃で30分間、その後室温で30分間インキュベートして、HAV RNAを粒子へ捕捉するハイブリダイゼーション複合体を形成した。容器の外側へ磁場を10分間かけて、捕捉したHAV RNAが付いた磁気粒子を分離してから、溶液相を吸引して他の試料成分を除去して、ハイブリダイゼーション複合体の付いた粒子を連続して2回洗浄し、各々、1mlの洗浄緩衝液を室温で用いて、洗浄溶液を粒子の外へ吸引した。その後、実施例1に記載のように、ハイブリダイゼーション複合体の付いた粒子を、標識された検出プローブを含有するプローブ試薬(0.1ml)に懸濁させて、60℃で20分間インキュベートし、選択試薬(0.2ml)の添加、混合及び60℃で10分間のインキュベーションを続けた。化学発光シグナルの産生及び検出は、実質的に上記のように、200μlの検出試薬Iを加え、インキュベーション及び200μlの検出試薬IIを加えて混合物のpH中和、そしてルミノメーターを用いてRLUを測定して実施した。試験した捕捉オリゴマーの全てについて、バックグラウンド(HAVを含有しない同様の試料のRLU)より有意に高い陽性シグナルを検出して、試料中のHAV RNAの存在を検出した。本アッセイでは、捕捉オリゴマーの間の性能に有意差がほとんど示されなかった。
【実施例3】
【0054】
HAV配列の増幅及び検出
正常ヒト血漿中のHAV試料を実質的に実施例2に記載のように調製して、HAVゲノムの選択した標的領域を増幅して検出するアッセイのために様々な捕捉オリゴマーの組合せを用いてHAV RNAを捕捉した。本ゲノムの0〜305残基の標的領域については捕捉工程で配列番号2、3及び4を使用した。ゲノムの4714〜4765残基の標的領域については捕捉工程で配列番号4、5、6及び7を使用した。ゲノムの5495〜5788残基の標的領域については捕捉工程で配列番号1及び6を使用した。ゲノムの5788〜6069残基の標的領域については捕捉工程で配列番号2を使用した。ゲノムの6952〜7413残基の標的領域については捕捉工程で配列番号1、4、5及び7を使用した。捕捉工程は実質的に実施例2に記載のように実施した。
【0055】
HAVゲノム中の異なる標的領域のプライマーとして機能する増幅オリゴマーの様々な組合せを含む、実質的に上記の反応物中で、捕捉したHAV RNAを増幅した。標的領域を増幅するために用いるプライマーは、以下の通りであった:0〜305残基領域については配列番号16及び配列番号22、4714〜4765残基領域については配列番号89及び配列番号32、5495〜5788残基領域については配列番号92及び配列番号33、5788〜6069残基領域については配列番号94及び配列番号37、そして6952〜7413残基領域については配列番号108及び配列番号46。増幅反応は、いずれも実質的に上記と同様に実施した。即ち、標的捕捉工程由来のHAV RNAが付いた粒子を、増幅試薬と上記の増幅オリゴマーの個別の組合せ(一般的には各々15ピコモル)と共に混合して、シリコンオイル(0.2ml)で覆って蒸発を防ぎ、60℃で10分間、その後42℃で10分間インキュベートした。酵素試薬(逆転写酵素とRNAポリメラーゼ)を加えて、本増幅反応物を42℃で60分間インキュベートした。
【0056】
検出では、増幅領域に含有する配列に特異的にハイブリダイズする標識した検出プローブオリゴマーと共に本増幅混合物をインキュベートした。これには、0〜305残基領域として配列番号109又は配列番号111、4714〜4765残基領域として配列番号115、5495〜5788残基領域として配列番号117、5788〜6069残基領域として配列番号121及び/又は配列番号122、そして6952〜7413残基領域として配列番号129又は配列番号130が含まれていた。プローブは、プローブ試薬中に、ハイブリダイズした標識化プローブより2百万以下のRLUの最大検出可能シグナルを産生する標識化プローブの比活性に基づいてすでに決定した量を提供した。本プローブと増幅配列をプローブ試薬中で55〜60℃でインキュベートして、実質的に実施例1及び2に記載のように、ハイブリダイズしたプローブから化学発光シグナルを産生させて検出した。捕捉されたHAV RNAと共に試験したプライマー組合せの全てで、増幅アッセイの感度は、試料中に存在する400〜1000コピーのHAV RNAを検出した。
【0057】
上記の試験で使用した捕捉オリゴマー、増幅オリゴマー及び検出プローブの組合せを表1に概略要約する。
表1:試料中のHAVを試験するためのオリゴマーの組合せ
【0058】
【表1】

【0059】
HAV含有試料とは別に、異なる捕捉オリゴマー(配列番号1、2、3、4、5、6及び7)を用いて同様の実験を実施し、ここでは、標的捕捉工程を、各アッセイ条件について9回の反復で実質的に上記に記載のように実施した。これらの試験の全てで、標的領域はHAVの残基5788〜6069であり、これについて配列番号36及び配列番号96の同じ増幅オリゴマーを、上記のように実施して捕捉したHAV RNAとともに増幅反応で用いて、上記のように、ハイブリダイズした検出プローブ(残基11と12の間にAEで標識した、配列番号123又は124)からの化学発光を測定して増幅産物を検出した。上記のアッセイの結果(9回の反復での平均RLU)を表2に示す。
【0060】
表2:残基5788〜6069の標的領域の増幅及び検出
【0061】
【表2】

【0062】
上記の結果は、捕捉オリゴマーの全てが、試料中のHAVの存在を示すために増幅及び検出されるのに十分なほどHAV RNAを試料から精製したことを示す。
【実施例4】
【0063】
血漿試料中のHAVの検出
本実施例は、HAV陽性血漿試料中のHAV核酸を検出したアッセイを用いる。試料を調製するために、ヒト血漿中のHAVの市販ストックをHAV陰性血漿へ希釈して、25、30、100、300及び500HAVコピー/mlの試料を得た;陰性対照は、HAVなしの血漿であった。各アッセイでは、20回の反復試料で実施して、捕捉オリゴマーの配列番号4(6.5ピコモル/反応)及び配列番号5(1.3ピコモル/反応)を含有する0.4mlの標的捕捉試薬と0.5mlの試料を混合して、標的捕捉工程は、60℃で20分のインキュベーションを用いること以外は、実質的に実施例3に記載のように実施した。各アッセイで、HAV RNAに結合した配列番号4及び5の捕捉オリゴマーを含むハイブリダイゼーション複合体が付いた洗浄済みの磁気粒子を、増幅オリゴマーを(配列番号36は13ピコモル/反応で、配列番号96は20ピコモル/反応で)含有する75μlの増幅試薬を含有する増幅反応物に使用した。上記のように、各混合物をオイル層で覆い、60℃で10分インキュベートし、酵素試薬(25μl)を加えて、本混合物を41.5℃で60分間インキュベートして、HAV標的配列を増幅できるようにした。増幅した配列は、2−メチル−AE標識化検出プローブを(配列番号121及び122、各々25μlのプローブ試薬中0.007〜0.13ピコモル/反応で)用いて、これを増幅HAV配列へのプローブのハイブリダイゼーションのために60℃で15分間インキュベートして検出した。その後、250μlの選択試薬を加えて、本混合物を60℃で10分インキュベートして、非結合プローブ上の標識を加水分解し、上記のように検出試薬I及びIIを用いて検出を実施し、化学発光(RLU)を産生して、ルミノメーター(LEADERTMHM Plus,Gen−Probe社)で測定した。本結果は、本アッセイが、25HAV/mlを含有する試料で約80〜100%、30HAV/mlを含有する試料で約90〜100%、100HAV/mlを含有する試料で約98〜100%、そして300及び500HAV/mlを含有する試料で100%の感度であることを示した。陰性対照(HAVを含有しない)では、陽性結果が検出されなかった。上記の結果は、本アッセイが臨床試料中のHAVを1mlの試料につき約25コピーのHAVの感度で検出することを示す。
【実施例5】
【0064】
同一試料中のHAV RNAと他のウイルス標的の検出
本アッセイには、実質的に実施例1〜4に記載のHAVを検出する標的捕捉、増幅及び検出の工程が含まれ、本試料中の他の標的、ヒトパルボウイルスB19を捕捉、増幅及び検出するための他のオリゴマーを含む。HAVを検出するための捕捉オリゴマーは配列番号4及び5であり、増幅オリゴマーは配列番号36及び96であり、そして検出プローブは配列番号121及び122であり、実質的に実施例4に記載のように用いた。パルボウイルスB19の核酸を検出するには、パルボウイルスB19を検出するための既報のアッセイ(米国特許公開公報番号US−2003−0124578−A1)と同様に、配列番号169の捕捉プローブ、配列番号170及び171の増幅オリゴマー、残基5と6の間で標識した配列番号173と残基9と10の間で標識した配列番号174の検出プローブを用いる。既知量のHAV及びパルボウイルスB19が含まれるように0.5mlの正常ヒト血漿の試料を調製し、捕捉オリゴマー(配列番号4、5及び169)を含有する0.4mlの標的捕捉試薬と混合する。実質的に実施例2に記載のように標的捕捉工程を実施して、上記のHAV特異的及びパルボウイルス特異的な増幅オリゴマーを用いること以外は、実質的に実施例3及び4に記載のように、精製したウイルス標的を同じ増幅反応混合物中で増幅させる。ウイルス標的配列の増幅に続き、検出工程は、上記のようなHAV特異的プローブとパルボウイルス特異的プローブを用いるが、異なるウイルス標的のプローブは異なるAE化合物で標識して、ディファレンシャル速度論を用いて、検出工程において異なるシグナルの検出を可能にする(米国特許第5,658,737号に記載)。本アッセイにおいて、HAVとパルボウイルス19のいずれの核酸も、両方の標的を含有する試料中に検出される。HAVの検出のアッセイの感度は約25コピー/mlであり、即ち、25、30、100、300及び500コピーのHAVを1mlに含有する試料の80%〜100%で陽性シグナルを検出する。試料中のパルボウイルスB19の検出のアッセイ感度は150国際単位/ml(IU/ml)程度低く、即ち、150IU/mlを含有する試料の20%〜40%で陽性シグナルを検出する。本アッセイは、400以上のパルボウイルスB19 IU/mlを信頼し得るほどに検出する、即ち、400、600、800、1600及び3000IU/mlを含有する試料で70%〜100%の陽性検出である。上記の結果は、HAVと(やはり特異的に検出される)他のウイルス、パルボウイルスB19が試料に含まれる場合にもHAV核酸が特異的に検出されることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HAV標的領域を増幅するための少なくとも2つのオリゴマーの組合せであって:
第1のHAV標的領域のための、配列番号60の配列に含まれるか若しくは少なくとも配列番号156の配列を含む配列番号86の配列に含まれる約21〜27ntのオリゴマー、または配列番号29〜32のいずれか1つのHAV標的特異部分を含む約48〜54ntの範囲の大きさのプロモータープライマーオリゴマー;
第2のHAV標的領域のための、少なくとも配列番号148の配列を含む配列番号147の配列に含まれるか若しくは少なくとも配列番号158の配列を含む配列番号157の配列に含まれる約24〜30ntのオリゴマー、または配列番号31若しくは32のHAV標的特異部位を含むプロモータープライマーオリゴマー;
第3のHAV標的領域のための、少なくとも配列番号97、159、若しくは160の配列を含む配列番号93若しくは95の配列に含まれる約18〜27ntのオリゴマー、または配列番号33の標的特異部位を含むプロモータープライマーオリゴマー;
第4のHAV標的領域のための、少なくとも配列番号150の配列を含む配列番号149の配列に含まれる約19〜31ntのオリゴマー、または配列番号34〜40のいずれか1つのHAV標的特異部位を含む約51〜56ntの範囲の大きさのプロモータープライマーオリゴマー;
第5のHAV標的領域のための、少なくとも配列番号162の配列を含む配列番号161の配列に含まれる約24〜28ntのオリゴマー、または配列番号41若しくは42のHAV標的特異部位を含むプロモータープライマーオリゴマー;ならびに
第6のHAV標的領域のための、少なくとも配列番号152〜155のいずれか1つの配列を含む配列番号151の配列に含まれるか、若しくは少なくとも配列番号164の配列を含む配列番号163に含まれるか、若しくは配列番号166〜168のいずれか1つの配列を含む配列番号165に含まれる約20〜30ntのオリゴマー、または配列番号43〜49のいずれか1つのHAV標的特異部位を含む約51〜56ntの範囲の大きさのプロモータープライマーオリゴマーを含む、前記組合せ。
【請求項2】
配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号86、配列番号87、配列番号88、および配列番号156からなる群より選択される、第1のHAV標的領域のための請求項1の少なくとも2つのオリゴマーの組合せ。
【請求項3】
配列番号31、配列番号32、配列番号61、配列番号62、配列番号89、配列番号90、配列番号91、および配列番号148からなる群より選択される、第2のHAV標的領域のための請求項1の少なくとも2つのオリゴマーの組合せ。
【請求項4】
配列番号33、配列番号63、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号95、配列番号96、および配列番号97からなる群より選択される、第3のHAV標的領域のための請求項1の少なくとも2つのオリゴマーの組合せ。
【請求項5】
配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号97、配列番号149、および配列番号150からなる群より選択される、第4のHAV標的領域のための請求項1の少なくとも2つのオリゴマーの組合せ。
【請求項6】
配列番号41、配列番号42、配列番号71、配列番号72、配列番号98、配列番号99、配列番号101、配列番号161、および配列番号162からなる群より選択される、第5のHAV標的領域のための請求項1の少なくとも2つのオリゴマーの組合せ。
【請求項7】
配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号105、配列番号106、配列番号107、配列番号108、配列番号152、配列番号153、配列番号155、配列番号163、配列番号164、配列番号165、配列番号166、配列番号167、および配列番号168からなる群より選択される、第6のHAV標的領域のための請求項1の少なくとも2つのオリゴマーの組合せ。
【請求項8】
請求項1の少なくとも2つのオリゴマーの組合せであって、少なくとも1つの捕捉プローブオリゴマーをさらに含み、ここで該少なくとも1つの捕捉オリゴマーが(i)配列番号1〜7からなる群より選択されるか、または(ii)固定化プローブに結合する配列もしくは部分に共有結合した標的特異配列であって、該標的特異配列は配列番号8〜14からなる群より選択される、組合せ
【請求項9】
請求項8の少なくとも2つのオリゴマーの組合せであって、ここで該少なくとも1つの捕捉プローブオリゴマーが(i)配列番号2、3、および4からなる群より選択されるか、または(ii)固定化プローブに結合する配列もしくは部分に共有結合した標的特異配列であって、該標的特異配列は配列番号9、10、および11からなる群より選択される、組合せ。
【請求項10】
配列番号113、配列番号115、配列番号117、配列番号119、配列番号121〜124、および配列番号126〜130からなる群より選択される少なくとも1つの検出プローブオリゴマーをさらに含む、請求項1の少なくとも2つのオリゴマーの組合せ。
【請求項11】
請求項1に記載の少なくとも2つのオリゴマーの組合せを含むキット。
【請求項12】
試料中のHAVの存在を検出する方法であって:
HAVを含有する試料中の他の成分からHAV核酸を精製する工程;
選択HAV標的領域に特異的な少なくとも2つの増幅オリゴマーを含むインビトロ増幅反応を用いて、精製したHAV核酸又はそれから作製されるcDNA中のHAV標的配列を増幅して、選択HAV標的領域の増幅産物を生成する工程であって、
HAV標的領域を増幅するための少なくとも2つのオリゴマーの組合せであって:
第1のHAV標的領域のための、配列番号60の配列に含まれるか若しくは少なくとも配列番号156の配列を含む配列番号86の配列に含まれる約21〜27ntのオリゴマー、または配列番号29〜32のいずれか1つのHAV標的特異部分を含む約48〜54ntの範囲の大きさのプロモータープライマーオリゴマー;
第2のHAV標的領域のための、少なくとも配列番号148の配列を含む配列番号147の配列に含まれるか若しくは少なくとも配列番号158の配列を含む配列番号157の配列に含まれる約24〜30ntのオリゴマー、または配列番号31若しくは32のHAV標的特異部位を含むプロモータープライマーオリゴマー;
第3のHAV標的領域のための、少なくとも配列番号97、159、若しくは160の配列を含む配列番号93若しくは95の配列に含まれる約18〜27ntのオリゴマー、または配列番号33の標的特異部位を含むプロモータープライマーオリゴマー;
第4のHAV標的領域のための、少なくとも配列番号150の配列を含む配列番号149の配列に含まれる約19〜31ntのオリゴマー、または配列番号34〜40のいずれか1つのHAV標的特異部位を含む約51〜56ntの範囲の大きさのプロモータープライマーオリゴマー;
第5のHAV標的領域のための、少なくとも配列番号162の配列を含む配列番号161の配列に含まれる約24〜28ntのオリゴマー、または配列番号41若しくは42のHAV標的特異部位を含むプロモータープライマーオリゴマー;ならびに
第6のHAV標的領域のための、少なくとも配列番号152〜155のいずれか1つの配列を含む配列番号151の配列に含まれるか、若しくは少なくとも配列番号164の配列を含む配列番号163に含まれるか、若しくは配列番号166〜168のいずれか1つの配列を含む配列番号165に含まれる約20〜30ntのオリゴマー、または配列番号43〜49のいずれか1つのHAV標的特異部位を含む約51〜56ntの範囲の大きさのプロモータープライマーオリゴマーを含む、前記工程;並びに
増幅産物の少なくとも一部と特異的にハイブリダイズする検出プローブを用いて増幅産物を検出する工程
とを含む、前記方法。
【請求項13】
請求項12の方法であって、ここで精製工程が、少なくとも1つの捕捉プローブオリゴマーと試料を接触させ、ここで該少なくとも1つの捕捉プローブオリゴマーが(i)配列番号1〜7からなる群より選択されるか、または(ii)固定化プローブに結合する配列もしくは部分に共有結合した標的特異配列であって、該標的特異配列が配列番号8〜14からなる群より選択され、そしてここで該捕捉プローブオリゴマーがHAV RNA中の配列に特異的にハイブリダイズしてHAV RNAとのハイブリダイゼーション複合体を形成して、そしてHAV RNAを含有するハイブリダイゼーション複合体を他の試料成分から分離する、請求項12の方法。
【請求項14】
増幅工程が、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号86、配列番号87、配列番号88、および配列番号156からなる群より選択される、第2のHAV標的領域に特異的な少なくとも2つのオリゴマーを用いて第2のHAV標的領域中の配列を増幅し;ここで検出工程は、第2のHAV標的領域の増幅産物に特異的にハイブリダイズする少なくとも1つの検出プローブを用いる、請求項12の方法。
【請求項15】
増幅工程が、配列番号31、配列番号32、配列番号61、配列番号62、配列番号89、配列番号90、配列番号91、および配列番号148からなる群より選択される、第3のHAV標的領域に特異的な少なくとも2つのオリゴマーを用いて第3のHAV標的領域中の配列を増幅し;ここで検出工程は、第3のHAV標的領域の増幅産物に特異的にハイブリダイズする少なくとも1つの検出プローブを用いる、請求項12の方法。
【請求項16】
増幅工程が、配列番号33、配列番号63、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号95、配列番号96、および配列番号97からなる群より選択される、第4のHAV標的領域に特異的な少なくとも2つのオリゴマーを用いて第4のHAV標的領域中の配列を増幅し;ここで検出工程は、第4のHAV標的領域の増幅産物に特異的にハイブリダイズする少なくとも1つの検出プローブを用いる、請求項12の方法。
【請求項17】
増幅工程が、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号97、配列番号149及び配列番号150からなる群より選択される、第5のHAV標的領域に特異的な少なくとも2つのオリゴマーを用いて第5のHAV標的領域中の配列を増幅し;ここで検出工程は、第5のHAV標的領域の増幅産物に特異的にハイブリダイズする少なくとも1つの検出プローブを用いる、請求項12の方法。
【請求項18】
増幅工程が、配列番号41、配列番号42、配列番号71、配列番号72、配列番号98、配列番号99、配列番号101、配列番号161及び配列番号162からなる群より選択される、第6のHAV標的領域に特異的な少なくとも2つのオリゴマーを用いて第6のHAV標的領域中の配列を増幅し;ここで検出工程は、第6のHAV標的領域の増幅産物に特異的にハイブリダイズする少なくとも1つの検出プローブを用いる、請求項12の方法。
【請求項19】
増幅工程が、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号104、配列番号106、配列番号107、配列番号108、配列番号152、配列番号153、配列番号155、配列番号163、配列番号164、配列番号165、配列番号166、配列番号167及び配列番号168からなる群より選択される、第7のHAV標的領域に特異的な少なくとも2つのオリゴマーを用いて第7のHAV標的領域中の配列を増幅し;そしてここで検出工程は、第7のHAV標的領域の増幅産物に特異的にハイブリダイズする少なくとも1つの検出プローブを用いる、請求項12の方法。

【公開番号】特開2011−182795(P2011−182795A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84635(P2011−84635)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【分割の表示】特願2007−521628(P2007−521628)の分割
【原出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【出願人】(500169900)ジェン−プローブ・インコーポレーテッド (32)
【Fターム(参考)】