説明

CANタイプ光モジュール

【課題】実装位置のばらつきやストレスを抑制できるCANタイプ光モジュールを提供する。
【解決手段】本発明によるCANタイプ光モジュールは、光部品102が内側の面に実装された絶縁性の第1板状部材201bと開口部を有し開口部を覆うように第1板状部材201bが固着された導電性の第2板状部材201aとからなるステム201を有する。導電性のCAN部材103は第1板状部材201b上の光部品102を内包するように第2板状部材201aに固着され、複数のリード端子203は光部品102からの電気配線がそれぞれ電気的に接続され第1板状部材201bの外側に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はキャンパッケージ構造を有するCANタイプ(CAN−TYP)光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
超高速光通信システムに用いられる光インタフェースには、光信号と電気信号との間の変換を行う光電気素子が設けられているが、この光素子をCAN内に気密封止したCANタイプ光モジュールが広く用いられている。以下、このCANタイプ光モジュールの構造を簡単に説明する。
【0003】
図4はCANタイプ光モジュールにおけるCAN部の構造を概略的に示す側面断面図である。CAN部110は、ステム101、光部品102およびCANパッケージであるレンズ付ホルダ103を有する。ステム101には、ガラス封止部107を介してリード端子105が取り付けられており、ステム101の実装部には光素子等からなる光部品102が実装されている。
【0004】
また、レンズ付ホルダ103にはボールレンズ104がガラス封止により取り付けられ、ボールレンズ104は光部品102との間で光が光部品102に集光する位置関係を維持する。ステム101とレンズ付ホルダ103とは抵抗溶接部106で抵抗溶接により接合されている。このため、ステム101に実装されている光部品102の信号グランド(以下、シグナルGNDという。)は、抵抗溶接部106を介してレンズ付ホルダ103と電気的に接続された状態となっている。
【0005】
図5はCANタイプ光モジュールの全体構成例を示す側面断面図である。CAN部110は、サポート部120に溶接部140で溶接接合される。そして、サポート部120も同様に、レセプタクル部130に溶接部141で溶接接合される。上述したように光部品102のシグナルGNDはレンズ付ホルダ103と共通となっているので、CANタイプ光モジュール100は、全体のGNDがシグナルGNDとフレームGNDに分離されない状態となっている。
【0006】
図6はCANタイプ光モジュールがインタフェース(INF)ケースに搭載された光インタフェースの概略的構成を示す側面断面図である。CAN部110にサポート部120とレセプタクル部130とが溶接されて組み立てられた光モジュール100は、INFケース150に光モジュール固定部160を介して搭載される。
【0007】
光モジュール固定部160には、光モジュール100との電気的な絶縁を行うために絶縁シートなどの絶縁材が介在している。INFケース150はフレームグランド(GND)となっているので、INFケース150(フレームGND)と光モジュール100とを絶縁シートで絶縁することによりフレームGNDとシグナルGNDの分離を図っている。
【0008】
また、低ノイズで高速信号伝達を図ったCANタイプ光モジュールが特許文献1に開示されている。この光モジュールは、キャンパッケージのステムに高速信号配線を形成したセラミック基板を貫通させることにより、キャンパッケージ内の受発光素子の近傍に、ドライバLSI(Large Scale Integration)や増幅LSI等の電子部品を搭載可能としたものである。
【0009】
【特許文献1】特開2003−229629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図4に示すCAN部を有する光モジュール100では、INFケース150に組み入れる際、光モジュール固定部160に絶縁テープを巻くなどしてGNDの分離を行う必要がある。この方法ではテープなどを巻いたことにより実装が不安定になるために、光コネクタの一種であるレセプタクル部130が要求する高精度な位置決めが困難となり、光モジュール100へのストレスや実装位置のばらつきの要因となっていた。
【0011】
また、特許文献1に開示された光モジュールは、高速信号配線を形成したセラミック基板をステムに貫通させることにより、各種電子部品を受発光素子の近傍に搭載できるようにしたものであり、セラミック基板はステムとしての機能を有していない。このために、別個の金属ステムをセラミック基板に固着させ、光素子の光軸の精度を担保する必要があり構成が複雑化するという難点がある。
【0012】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、実装位置のばらつきやストレスを抑制できるCANタイプ光モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によるCANタイプ光モジュールは、光電気素子が内側の面に実装された絶縁性の第1板状部材と開口部を有し開口部を覆うように第1板状部材が固着された導電性の第2板状部材とからなるステムと、第1板状部材上の光電気素子を内包するように第2板状部材に固着された導電性のCAN部材と、光電気素子からの電気配線がそれぞれ電気的に接続され第1板状部材の外側に固定された複数のリード端子と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、絶縁性の第1板状部材と導電性の第2板状部材とからなるステムを設けることで、CANタイプ光モジュールに対する特別な絶縁処置をする必要がなく、リード端子から信号グランドを取り出すことができる。これにより、光モジュールへのストレスを解消することができ、また光インタフェースへの実装を精度良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明の一実施形態によるCANタイプ光モジュールのキャン部(CAN部)の概略的構成を示す側面断面図である。なお、図4〜図6で示した光モジュール100と同一構成要素である部材には同一参照番号を付している。
【0016】
図1に示すCAN部210において、ステム201は、導電性材料からなるドーナツ板形状の導電体ベース201aと絶縁材料からなる円盤形状の絶縁体ベース201bとが固着された構成となっている。導電体ベース201aは中央に円形の開口部を有し、それを覆うように絶縁体ベース201bが接合して固定されている。絶縁体ベース201bの内側の面に設けられた実装部に光電気素子等からなる光部品102が実装される。導電体ベース201aはたとえば金属製であり、絶縁体ベース201bはたとえばセラミック製である。
【0017】
ドーナツ板状の導電体ベース201aは、円盤状の絶縁体ベース201bと銀ロウ付部202で銀ロウ付けされている。即ち、この例では、絶縁体ベース201bの直径は、導電体ベース201aの開口部の直径より大きく、絶縁体ベース201bが導電体ベース201aの開口部を閉じるように、絶縁体ベース201bの周縁部が銀ロウ付けされる。また、導電体ベース201aの周縁部は、CANパッケージとなるレンズ付ホルダ103と抵抗溶接部106で抵抗溶接されている。レンズ付きホルダ103も金属のような導電体で形成されているので、導電体ベース201aとレンズ付きホルダ103とは電気的に接続された状態にある。
【0018】
なお、上述したように、レンズ付ホルダ103にはボールレンズ104がガラス封止により取り付けられ、ボールレンズ104は光部品102との間で光が光部品102に集光する位置関係を維持する。光部品102は、光信号と電気信号との変換を行う光電気素子を含む光学的および電気的回路からなる。
【0019】
一方、絶縁体ベース201bの外側の面に複数のリード端子203が固定されている。たとえば、リード端子203は、絶縁体ベース201bの外側の面に銀ロウ付けにより取り付けることができる。さらに、絶縁体ベース201bには、各リード端子203に対応して電気的接続用のスルーホール204が形成されている。すなわち、内側の実装部に実装された光部品102の電気的配線が外部に伸びたリード端子203にスルーホール204を通して電気的に接続されている。
【0020】
図1に示すように、スルーホール204もリード端子203も絶縁体ベース201bに形成されているので、いずれも導電体ベース201aとは絶縁されている。したがって、CAN部210の側面全体をフレームGNDに、リード端子203の少なくとも1つをシグナルGND端子にすることが可能になる。すなわち、次に説明するように、絶縁体ベース201bから伸びたリード端子203をフレームGNDとは独立したシグナルGNDとして使用することができ、後述するプリント配線板(PWB:Printed wiring board)のシグナルGNDに、特別な絶縁処理を施すことなく容易に接続することが可能となる。
【0021】
図2は、本実施形態によるCANタイプ光モジュールの全体構成例を示す側面断面図である。本実施形態によるCANタイプ光モジュール200は、図1に示すCAN部210を組み込んでいる。CAN部210はサポート部120に溶接部140で溶接接合される。サポート部120も同様に、レセプタクル部130に溶接部141で溶接接合される。上述したように、シグナルGNDはリード端子203のみによって引き出されるので、サポート部120およびレセプタクル部130のフレームGNDとは電気的に分離されている。
【0022】
図3は、本実施形態によるCANタイプ光モジュールがインタフェース(INF)ケースに搭載された光インタフェースの概略的構成を示す側面断面図である。CAN部210にサポート部120とレセプタクル部130とが溶接されて組み立てられた光モジュール200は、光INFケース250に光モジュール固定部260を介して搭載される。その際、光モジュール200はリード端子203によってシグナルGNDが引き出されるので、特段の絶縁処置をすることなく、リード端子203の信号端子とGNd端子とをプリント配線板270に電気的に接続することができる。
【0023】
このように光モジュール200の搭載に絶縁処理が不要となるために、高い位置精度での実装が可能となり、実装位置ばらつきを抑制することができる。さらに、絶縁シートを用いた絶縁処理による光モジュール200へのストレスを抑制することができる。したがって、光通信分野で用いられる光インタフェースの高精度の製造が容易になる。
【0024】
なお、上記実施の形態の構成及び動作は例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、高い位置精度が要求される光モジュールにおける電気的な絶縁構造に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態によるCANタイプ光モジュールのキャン部(CAN部)の概略的構成を示す側面断面図である。
【図2】本実施形態によるCANタイプ光モジュールの全体構成例を示す側面断面図である。
【図3】本実施形態によるCANタイプ光モジュールがインタフェース(INF)ケースに搭載された光インタフェースの概略的構成を示す側面断面図である。
【図4】背景技術によるCANタイプ光モジュールにおけるCAN部の構造を概略的に示す側面断面図である。
【図5】背景技術によるCANタイプ光モジュールの全体構成例を示す側面断面図である。
【図6】背景技術によるCANタイプ光モジュールがインタフェース(INF)ケースに搭載された光インタフェースの概略的構成を示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0027】
102 光部品
103 レンズ付ホルダ部
104 ボールレンズ
106 抵抗溶接部
120 サポート部
130 レセプタクル部
140,141 溶接部
160 光モジュール固定部
200 光モジュール
201 ステム
202 銀ロウ付部
203 リード端子
210 CAN部
250 INFケース
260 光モジュール固定部
270 プリント配線部(PWB)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CANタイプ光モジュールであって、
光電気素子が内側の面に実装された絶縁性の第1板状部材と、開口部を有し前記開口部を覆うように前記第1板状部材が固着された導電性の第2板状部材と、からなるステムと、
前記第1板状部材上の光電気素子を内包するように前記第2板状部材に固着された導電性のCAN部材と、
前記光電気素子からの電気配線がそれぞれ電気的に接続され、前記第1板状部材の外側に固定された複数のリード端子と、
を有することを特徴とするCANタイプ光モジュール。
【請求項2】
前記CAN部材には、前記光電気素子と光学的に対応する光学素子が固定されていることを特徴とする請求項1に記載のCANタイプ光モジュール。
【請求項3】
前記複数のリード端子の少なくとも1つは前記光電気素子の信号グランドに対応し、前記CAN部材とは電気的に絶縁していることを特徴とする請求項1または2に記載の光モジュール。
【請求項4】
請求項1−3のいずれか1項に記載のCANタイプ光モジュールを含む光インタフェース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−147245(P2009−147245A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−325399(P2007−325399)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】