説明

HIF−2αの発現を抑制する核酸

【課題】細胞の増殖の制御に有用な核酸、及びそれらの利用法が求められていることにより、HIF-2αの発現抑制活性を有する核酸、該核酸からなる医薬組成物を提供する。
【解決手段】hif-2α遺伝子の一部の塩基配列と、該核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸とを含有し、かつHIF-2αの発現を抑制する核酸。上記核酸の血管新生抑制作用を利用した癌、糖尿病性網膜症、リウマチなどの疾患の治療または予防するための医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管新生因子として働くHIF-2αの発現抑制に用いるための核酸またはその誘導体、該核酸またはその誘導体を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の血管から新しい血管が形成されることを血管新生という。血管新生は、通常創傷治癒や炎症の修復の際に起こる生体内現象であるが、固形癌、糖尿病性網膜症、リウマチ、アテローム性動脈硬化症、乾せんなど多くの疾患の成立・悪性化に関与することが知られている(非特許文献1参照)。特に、癌の発生・腫瘍増殖には血管新生が大きな役割を果たしている。
【0003】
HIF(低酸素誘導性因子(hypoxia-inducible factor))は低酸素環境において機能する転写因子であり、血管新生や糖代謝、細胞増殖を促進する。通常低酸素環境においてのみ機能するが、多くの腫瘍で恒常的に発現しており、腫瘍増殖の原因の一つと考えられている(非特許文献2参照)。HIFはヘテロ二量体の転写因子であり、恒常的に発現しているHIF-1βサブユニットと、制御因子HIF-αサブユニットからなる。HIF-αサブユニットにはHIF-1α、 HIF-2α、 HIF-3αの3種類が知られており、それぞれが重複的、あるいは組織特異的に機能している。
【0004】
腫瘍抑制因子遺伝子VHL(von Hippel-Lindau tumor suppressor)はHIF-αサブユニットの分解を担っており、これによりHIFの恒常発現が抑えられる。VHLはほとんどの散発性明細胞腎臓癌およびVHL疾患で突然変異しており、このことが腫瘍におけるHIFの恒常発現に寄与している。腫瘍において恒常的に発現しているHIFを抑制することは腫瘍の血管新生を制御するので、HIFの抑制は作用機序に基づいた抗血管新生方法として有効である(非特許文献3参照)。
【0005】
これまで、HIF-αサブユニットの中でもHIF-1αが抗腫瘍作用の標的となることが知られている(非特許文献4参照)。一方HIF-2αも多数の癌種において恒常的に発現しており、また特定の癌種においてHIF-1αより特異的に腫瘍進行に関わること(非特許文献5〜6参照)、またVHLが変異した腫瘍においてはHIF-2αの阻害が十分に有効であることが知られている(非特許文献7〜9参照)。
【0006】
癌などの疾患の原因となる蛋白質をコードする核酸に結合することにより、その発現を阻害するように構成した抑制性オリゴヌクレオチド化合物は、それらの疾患の治療に有用である可能性がある。そのような例として例えば、hif-2α遺伝子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドなどが考えられる。
標的遺伝子の発現を抑制する方法として、RNA干渉(RNA interference、以下、RNAiともいう)を利用した方法等が知られている。例えば、21〜23塩基の長さの二本鎖RNAを細胞に導入することにより、標的遺伝子の発現が抑制されることが知られている。このようなRNAは、small interfering RNA(siRNA)と名づけられている。
【0007】
hif-2αのmRNAに対するアンチセンスヌクレオチド、siRNAは、知られているが(特許文献1、2、非特許文献5、8、10〜12参照)、いずれも本発明の二本鎖RNAとは異なる配列を有しているか、または具体的な配列が示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
国際公開第04/048526号
【0009】
国際公開第00/09657号
【非特許文献】
【0010】
Journal of Molecular Medicine, 73(7), 333-46 (1995)
【0011】
Nature, 441(25), 437-443 (2006)
【0012】
Nature Reviews Cancer, 3, 721-732 (2003)
【0013】
Nature Reviews Drug Discovery, 2, 4-9 (2003)
【0014】
Cancer Research, 63, 6130-6134 (2003)
【0015】
Cell Cycle, 6(8), 919-926 (2007)
【0016】
Molecular Cancer Research, 2, 89-95 (2004)
【0017】
PLoS Biology, 1(3), 439-444 (2003)
【0018】
Oncogene, 27(40), 5354-5358 (2008)
【0019】
Journal of Cellular Biochemistry, 92, 491-501 (2004)
【0020】
Cancer Biology & Therapy, 5(10), 1320-1326 (2006)
【0021】
Cancer Research, 66, 6264-6270 (2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、血管新生因子として働くHIF-2αの発現を抑制することが可能な核酸を提供することを目的とする。また本発明は、その治癒において血管新生抑制が有効となる癌、糖尿病性網膜症、リウマチなどの疾患を治療または予防するための医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、以下の(1)〜(24)に関する。
(1)配列番号22〜40のいずれかで表される塩基配列からなる核酸または該核酸の少なくとも一方の末端が1〜4塩基削除された核酸と、該核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸とを含有し、かつHIF-2αの発現抑制活性を有する核酸。
(2)配列番号22〜40のいずれかで表される塩基配列からなる核酸または該核酸の少なくとも一方の末端が1〜4塩基削除された核酸と、該核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸の少なくとも一方の核酸において、1〜3塩基が置換、欠失もしくは付加された核酸を含有し、かつHIF-2αの発現抑制活性を有する核酸。
(3)27塩基対以下の二重鎖形成部を有する、(1)または(2)に記載の核酸。
(4)15〜19塩基対からなる二重鎖形成部を有する、(3)に記載の核酸。
(5)(1)〜(4)のいずれか1項に記載の二本鎖核酸。
(6)(5)に記載の二本鎖核酸の少なくとも一方の鎖の3’末端または5’末端に1〜4塩基付加した二本鎖核酸。
(7)配列番号22〜40のいずれかで表される塩基配列からなる核酸。
(8)(7)に記載の核酸において、1〜3塩基が置換、欠失もしくは付加され、かつHIF-2αの発現抑制活性を有する核酸。
(9)(7)または(8)に記載の核酸を含む、30塩基以下の核酸。
(10)(1)〜(9)のいずれか1項に記載の核酸または二本鎖核酸を構成するヌクレオチドの一部または全部がリボヌクレオチドであり、かつHIF-2αの発現抑制活性を有する核酸。
(11)(1)〜(10)のいずれか1項に記載の核酸または二本鎖核酸を構成するヌクレオチドの一部または全部が、デオキシリボヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチドであり、かつHIF-2αの発現抑制活性を有する核酸。
(12)修飾ヌクレオチドの少なくとも1つが、リボヌクレオチドの2’−修飾ヌクレオチドである、(11)に記載の核酸。
(13)3’末端または5’末端に付加した1〜4塩基の少なくとも1塩基がデオキシリボヌクレオチドである、(11)に記載の核酸。
(14)(1)〜(13)のいずれか1項に記載の核酸をコードするベクター。
(15)(1)〜(14)のいずれか1項に記載の核酸またはベクターを有効成分とする、医薬組成物。
(16)核酸を細胞内に移行させるのに有効な担体をさらに含む、(15)に記載の医薬組成物。
(17)核酸を細胞内に移行させるのに有効な担体がカチオン性担体である、(16)に記載の医薬組成物。
(18)核酸を細胞内に移行させるのに有効な担体がリポソームである、(17)に記載の医薬組成物。
(19)リポソームがHIF-2αをコードする遺伝子の発現部位を含む組織または臓器に到達するリポソームである、(18)に記載の医薬組成物。
(20)核酸またはベクターとリード粒子とを構成成分とする複合粒子および該複合粒子を被覆する脂質膜から構成され、該脂質膜の構成成分が可溶な極性有機溶媒を含む液の中に、該脂質膜の構成成分が分散可能で、該複合粒子も分散可能な濃度で該極性有機溶媒を含む液が存在するリポソームである、(15)に記載の医薬組成物。
(21)HIF-2αの発現を抑制することを特徴とする、(15)〜(20)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(22)血管新生を抑制する、(21)に記載の医薬組成物。
(23)癌、糖尿病性網膜症またはリウマチの治療または予防に用いる、(15)〜(22)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(24)(1)〜(23)のいずれか1項に記載の核酸、ベクターまたは医薬組成物を対象に投与することを特徴とする、HIF-2αの発現を抑制する方法。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の二本鎖核酸(配列番号N、N+21:Nは43〜61の整数)を終濃度200pMでA-498細胞にトランスフェクションして48時間培養した後の、hif-2αのmRNAの発現をRT−PCRにより定量、評価した結果を示す。hif-2αのmRNA量を準定量するに際しては、対応するサンプルのgapdh(D-glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)のmRNA量を内部対照とした上で算出した。
【図2】図2は、本発明の二本鎖核酸(配列番号N、N+21:Nは43〜61の整数)を終濃度200pMでA-498細胞にトランスフェクションして48時間培養した後の、vegfaのmRNAの発現をRT−PCRにより定量、評価した結果を示す。vegfaのmRNA量を準定量するに際しては、対応するサンプルのgapdhのmRNA量を内部対照とした上で算出した。
【図3】図3は、本発明の二本鎖核酸(配列番号N、N+21:Nは43〜61の整数)の細胞増殖に対する抑制効果を細胞数の計測により評価した結果を示す。A-498細胞に二本鎖核酸を、1、0.3、0.1、0.03、0.01、0.003、0.001nMで、それぞれトランスフェクションした後、7日間培養した後の生細胞数を測定した。二本鎖核酸をトランスフェクションしていないA-498細胞の生細胞数を100%としたときの、それぞれの二本鎖核酸をトランスフェクションした場合の生細胞数の割合を縦軸に示す。
【図4】図3のつづき
【図5】図5は、本発明の修飾二本鎖核酸(配列番号N’、N’+6:N’は85〜90の整数)を終濃度200pMでA-498細胞にトランスフェクションして48時間培養した後の、hif-2αのmRNAの発現をRT−PCRにより定量、評価した結果を示す。また、グラフの右側には対応する無修飾の二本鎖核酸(配列番号N’、N’+6:N’は43、46、48、51、53または57)の結果を示す。hif-2αのmRNA量を準定量するに際しては、対応するサンプルのgapdhのmRNA量を内部対照とした上で算出した。
【図6】図6は、本発明の修飾二本鎖核酸(配列番号N’、N’+6:N’は85〜90の整数)を終濃度200pMでA-498細胞にトランスフェクションして48時間培養した後の、vegfaのmRNAの発現をRT−PCRにより定量、評価した結果を示す。また、グラフの右側には対応する無修飾の二本鎖核酸(配列番号N’、N’+6:N’は43、46、48、51、53または57)の結果を示す。vegfaのmRNA量を準定量するに際しては、対応するサンプルのgapdhのmRNA量を内部対照とした上で算出した。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の核酸が標的とするHIF-2αをコードする遺伝子(以下、hif-2α遺伝子ともいう)は、Genbank Accession No.NM_001430.3として登録されている、hif-2αの完全長mRNAに対応するDNA塩基配列(配列番号97)を含む遺伝子があげられる。本発明においては、配列番号97で表される塩基配列からなるヌクレオチドを標的遺伝子とも称する。
1.本発明の核酸
本発明において、hif-2α遺伝子の一部の塩基配列からなる核酸に対して相補的な塩基配列を含む核酸をアンチセンス鎖核酸と称し、アンチセンス鎖核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列を含む核酸をセンス鎖核酸とも称する。センス鎖核酸は、hif-2α遺伝子の一部の塩基配列からなる核酸そのものであってもよい。
【0026】
本発明の核酸としては、配列番号22〜40のいずれかで表される塩基配列からなる核酸または該核酸の少なくとも一方の末端が1〜4塩基削除された核酸と該核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸とを含有し、かつHIF-2αの発現抑制活性を有する核酸、または配列番号22〜40のいずれかで表される塩基配列からなる核酸または該核酸の少なくとも一方の末端が1〜4塩基削除された核酸と該核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸との少なくとも一方の核酸において、1〜3塩基が置換、欠失もしくは付加された核酸を含有し、かつHIF-2αの発現抑制活性を有する核酸があげられる。
【0027】
本発明の核酸としては、ヌクレオチドまたは該ヌクレオチドと同等の機能を有する分子が重合した分子であればいかなる分子であってもよく、例えばリボヌクレオチドの重合体であるRNA、デオキシリボヌクレオチドの重合体であるDNA、RNAとDNAとからなるキメラ核酸、およびこれらの核酸の少なくとも一つのヌクレオチドが該ヌクレオチドと同等の機能を有する分子で置換されたヌクレオチド重合体があげられる。siRNA、sh(short hairpin)RNA、およびこれらの核酸内にヌクレオチドと同等の機能を有する分子を少なくとも一つ含む誘導体も、本発明の核酸に含まれる。またRNA中のウリジンUは、DNAにおいてはチミンTに一義的に読み替えることができる。
【0028】
ヌクレオチドと同等の機能を有する分子としては、例えばヌクレオチド誘導体等があげられる。
ヌクレオチド誘導体としては、ヌクレオチドに修飾を施した分子であればいかなる分子あってもよいが、例えばRNAまたはDNAと比較して、ヌクレアーゼ耐性の向上もしくは安定化させるため、相補鎖核酸とのアフィニティーをあげるため、細胞透過性をあげるため、または可視化させるために、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドに修飾を施した分子等が好適に用いられる。
【0029】
ヌクレオチド誘導体としては、例えば糖部修飾ヌクレオチド、リン酸ジエステル結合修飾ヌクレオチド、塩基修飾ヌクレオチド、ならびに糖部、リン酸ジエステル結合および塩基の少なくとも一つが修飾されたヌクレオチド等があげられる。
糖部修飾ヌクレオチドとしては、ヌクレオチドの糖の化学構造の一部あるいは全てに対し、任意の置換基で修飾もしくは置換したもの、または任意の原子で置換したものであればいかなるものでもよいが、2’−修飾ヌクレオチドが好ましく用いられる。
【0030】
2’−修飾ヌクレオチドとしては、例えばリボースの2’−OH基がH、OR、R、R’OR、SH、SR、NH、NHR、NR、N、CN、F、Cl、BrおよびIからなる群(Rはアルキルまたはアリール、好ましくは炭素数1〜6のアルキルであり、R’はアルキレン、好ましくは炭素数1〜6のアルキレンである)から選択される置換基で置換された2’−修飾ヌクレオチド、好ましくは2’−OH基がFまたはメトキシ基があげられる。また、2-(methoxy)ethoxy基、3-aminopropoxy基、2-[(N,N-dimethylamino)oxy]ethoxy基、3-(N,N-dimethylamino)propoxy基、2-[2-(N,N-Dimethylamino)ethoxy]ethoxy基、2-(methylamino)-2-oxoethoxy基2-(N-methylcarbamoyl)etoxy 基および2-cyanoetoxy 基からなる群から選択される置換基で置換された2’−修飾ヌクレオチド等もあげられる。
【0031】
また、糖部修飾ヌクレオチドとしては、糖部に架橋構造を導入することにより2つの環状構造を有する架橋構造型人工核酸(Bridged Nucleic Acid)(BNA)があげられ、具体的には、2'位の酸素原子と4'位の炭素原子がメチレンを介して架橋したロックト人工核酸(Locked Nucleic Acid)(LNA)、エチレン架橋構造型人工核酸(Ethylene bridged nucleic acid)(ENA)[Nucleic Acid Research, 32, e175(2004)]等があげられ、さらにペプチド核酸(PNA)[Acc. Chem. Res., 32, 624 (1999)]、オキシペプチド核酸(OPNA)[J. Am. Chem. Soc., 123, 4653 (2001)]、ペプチドリボ核酸(PRNA)[J. Am. Chem. Soc., 122, 6900 (2000)]等もあげられる。
【0032】
リン酸ジエステル結合修飾ヌクレオチドとしては、ヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の化学構造の一部あるいは全てに対し、任意の置換基で修飾もしくは置換したもの、または任意の原子で置換したものであればいかなるものでもよく、例えば、リン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に置換されたヌクレオチド、リン酸ジエステル結合がホスホロジチオエート結合に置換されたヌクレオチド、リン酸ジエステル結合がアルキルホスホネート結合に置換されたヌクレオチド、リン酸ジエステル結合がホスホロアミデート結合に置換されたヌクレオチド等があげられる。
【0033】
塩基修飾ヌクレオチドとしては、ヌクレオチドの塩基の化学構造の一部あるいは全てに対し、任意の置換基で修飾もしくは置換したもの、または任意の原子で置換したものであればいかなるものでもよく、例えば、塩基内の酸素原子が硫黄原子で置換されたもの、水素原子が炭素数1〜6のアルキル基で置換されたもの、メチル基が水素もしくは炭素数2〜6のアルキル基で置換されたもの、アミノ基が炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルカノイル基等の保護基で保護されたものがあげられる。
【0034】
さらに、ヌクレオチド誘導体として、ヌクレオチドまたは糖部、リン酸ジエステル結合もしくは塩基の少なくとも一つが修飾されたヌクレオチド誘導体に脂質、リン脂質、フェナジン、フォレート、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、色素など、別の化学物質を付加したものもあげられ、具体的には、5’−ポリアミン付加ヌクレオチド誘導体、コレステロール付加ヌクレオチド誘導体、ステロイド付加ヌクレオチド誘導体、胆汁酸付加ヌクレオチド誘導体、ビタミン付加ヌクレオチド誘導体、Cy5付加ヌクレオチド誘導体、Cy3付加ヌクレオチド誘導体、6−FAM付加ヌクレオチド誘導体、およびビオチン付加ヌクレオチド誘導体等があげられる。
【0035】
また、ヌクレオチド誘導体は、核酸内の他のヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体とアルキレン構造、ペプチド構造、ヌクレオチド構造、エーテル構造、エステル構造、およびこれらの少なくとも一つを組み合わせた構造等の架橋構造を形成してもよい。
本発明の核酸は、hif-2α遺伝子の一部の塩基配列からなる核酸または該核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸と同等な機能を有する核酸であれば、いずれのヌクレオチドまたはその誘導体から構成されていてもよい。すなわち、hif-2α遺伝子の一部の塩基配列からなる核酸または該核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸は、その塩基配列を構成するヌクレオチドが、該ヌクレオチドと同等の機能を有するリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドまたはその誘導体に置換されたものであってもよい。
【0036】
本発明の核酸は、hif-2α遺伝子の一部の塩基配列からなる核酸と該核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸とが二重鎖を形成することができればいずれの長さでもよいが、二重鎖を形成できる配列の長さは、通常15〜27塩基であり、15〜25塩基が好ましく、15〜23塩基がより好ましく、15〜21塩基がさらに好ましく、15〜19塩基が特に好ましい。
【0037】
本発明の核酸としては、hif-2α遺伝子の一部の塩基配列からなる核酸が用いられるが、該核酸のうち1〜3塩基、好ましくは1〜2塩基、より好ましくは1塩基が欠失、置換または付加したものを用いてもよい。
HIF-2αの発現を抑制する核酸としては、hif-2α遺伝子の一部の塩基配列と、該核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸とを含み、かつHIF-2αの発現を抑制する核酸であれば、一本鎖核酸、二本鎖核酸等、いずれの核酸も用いられるが、二本鎖核酸が好適に用いられる。
【0038】
本発明において二本鎖核酸とは、二本の鎖が対合し二重鎖形成部を有する核酸をいう。二重鎖形成部とは、二本鎖核酸を構成するヌクレオチドまたはその誘導体が塩基対を構成して二重鎖を形成している部分をいう。二重鎖形成部は、通常15〜27塩基対であり、15〜25塩基対が好ましく、15〜23塩基対がより好ましく、15〜21塩基対がさらに好ましく、15〜19塩基対が特に好ましい。
【0039】
二本鎖核酸を構成する一本鎖の核酸は、通常15〜30塩基からなるが、15〜29塩基からなることが好ましく、15〜27塩基からなることがより好ましく、15〜25塩基からなることがさらに好ましく、17〜23塩基からなることが特に好ましく、19〜21塩基からなることが最も好ましい。
本発明の二本鎖核酸において、二重鎖形成部に続く3’側または5’側に二重鎖を形成しない追加のヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体を有する場合には、これを突出部(オーバーハング)と呼ぶ。突出部を有する場合には、突出部を構成するヌクレオチドはリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドまたはこれらの誘導体であってもよい。
【0040】
突出部を有する二本鎖核酸としては、少なくとも一方の鎖の3’末端または5’末端に1〜4塩基、通常は1〜3塩基からなる突出部を有するものが用いられるが、2塩基からなる突出部を有するものが好ましく用いられ、dTdTまたはUUからなる突出部を有するものがより好ましく用いられる。突出部は、アンチセンス鎖のみ、センス鎖のみ、およびアンチセンス鎖とセンス鎖の両方に有することができるが、アンチセンス鎖とセンス鎖の両方に突出部を有する二本鎖核酸が好ましく用いられる。また、二重鎖形成部に続いて標的配列と一部または全てが一致する配列、または、二重鎖形成部に続いて標的配列の相補鎖の塩基配列と一致する配列を用いることもできる。さらに、本発明の二本鎖核酸としては、例えばDicer等のリボヌクレアーゼの作用により上記の二本鎖核酸を生成する核酸分子(WO2005/089287)や、3’末端や5’末端の突出部を有していない二本鎖核酸などを用いることもできる。
【0041】
本発明の二本鎖核酸としては、標的遺伝子の塩基配列またはその相補鎖の塩基配列と同一の配列からなる核酸を用いてもよいが、該核酸の少なくとも一方の鎖の5’末端または3’末端が1〜4塩基削除された核酸と、該核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸とからなる二本鎖核酸を用いてもよい。該二本鎖核酸としては、二重鎖形成部が例えば15〜19塩基対からなる二本鎖核酸があげられる。
【0042】
また、本発明の核酸としては、一本鎖の核酸を用いることもできる。そのような核酸の例として、配列番号22〜40のいずれかで表される塩基配列からなる核酸や、これらの核酸において1〜3塩基、好ましくは1〜2塩基、より好ましくは1塩基が置換、欠失もしくは付加され、かつHIF-2αの発現抑制活性を有する核酸もあげることができる。またこれらの核酸を含む、30塩基以下、好ましくは29塩基以下、より好ましくは27塩基以下、さらに好ましくは25塩基以下、特に好ましくは23塩基以下の核酸をあげることができる。
【0043】
本発明の核酸としては、上記した二本鎖核酸のセンス鎖およびアンチセンス鎖を、スペーサー配列を介して連結して一本鎖核酸としたものであってもよい。該一本鎖核酸としては、ステムループ構造によって二重鎖形成部を有するshRNA等の一本鎖核酸であることが好ましい。ステムループ構造を有する一本鎖核酸は、通常50〜70塩基長である。
本発明の核酸としては、リボヌクレアーゼ等の作用により上記の一本鎖核酸または二本鎖核酸を生成するように設計した、70塩基長以下、好ましくは50塩基長以下、さらに好ましくは30塩基長以下の核酸であってもよい。
【0044】
本発明の核酸を製造する方法としては、特に限定されず、公知の化学合成を用いる方法、あるいは、酵素的転写法等があげられる。公知の化学合成を用いる方法として、ホスホロアミダイト法、ホスホロチオエート法、ホスホトリエステル法、CEM法[Nucleic Acid Research, 35, 3287 (2007)]等をあげることができ、例えば、ABI3900ハイスループット核酸合成機(アプライドバイオシステムズ社製)により合成することができる。合成が終了した後は、固相からの脱離、保護基の脱保護および目的物の精製等を行う。精製により、純度90%以上、好ましくは95%以上の核酸を得るのが望ましい。二本鎖核酸の場合には、合成・精製したセンス鎖、アンチセンス鎖を適当な比率、例えば、アンチセンス鎖1当量に対して、センス鎖0.1〜10当量、好ましくは0.5〜2当量、より好ましくは0.9〜1.1当量、さらに好ましくは等モル量で混合した後、アニーリングを行って用いてもよいし、または、混合したものをアニーリングする工程を省いて直接用いてもよい。アニーリングは、二本鎖核酸を形成できる条件であればいかなる条件で行ってもよいが、通常、センス鎖、アンチセンス鎖をほぼ等モル量で混合した後、94℃程度で5分程度加熱したのち、室温まで徐冷することにより行われる。本発明の核酸を製造する酵素的転写法としては、目的の塩基配列を有したプラスミドまたはDNAを鋳型としてファージRNAポリメラーゼ、例えば、T7、T3、またはSP6RNAポリメラーゼを用いた転写による方法があげられる。
【0045】
本発明の核酸は、トランスフェクション用の担体、好ましくはカチオン性リポソーム等のカチオン性担体を用いて細胞内に導入することができる。また、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法またはマイクロインジェクション法などにより、直接細胞内に導入することもできる。
本発明の核酸の代わりに、細胞内に導入してこれらが発現されるようなベクターを用いてもよい。具体的には、本発明の核酸をコードする配列を発現ベクター内のプロモーター下流に挿入して発現ベクターを構築し、細胞に導入することにより該核酸等を発現させることができる。
【0046】
発現ベクターとしては、pCDNA6.2-GW/miR(Invitrogen社製)、pSilencer 4.1-CMV(Ambion社製)、pSINsi-hH1 DNA(タカラバイオ社製)、pSINsi-hU6 DNA(タカラバイオ社製)、pENTR/U6(Invitrogen社製)等をあげることができる。
また、本発明の核酸をコードする配列をウイルスベクター内のプロモーター下流に挿入し、該ベクターをパッケージング細胞に導入して生産した組換えウイルスベクターを用いることもできる。ウイルスベクターとしては、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターなどがあげられる。
2.HIF-2αの発現抑制活性を有する核酸
HIF-2αの発現抑制活性を有する二本鎖核酸の第1の選択基準としては、hif-2α遺伝子の一部の塩基配列からなる核酸と、該核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸とからなる二本鎖核酸であることである。該一部の塩基配列からなる核酸は、(a)GまたはCが4塩基以上続く配列がない、(b)GC含量が20〜80%であることを第2の選択基準として選択することが好ましい。
【0047】
hif-2α遺伝子の一部の塩基配列からなる核酸は、Genbank Accession No.NM_001430.3として登録されているhif-2αの完全長mRNAのcDNA塩基配列(配列番号97)に基づいて設計することができる。
hif-2α遺伝子の一部の塩基配列のうち、HIF-2αの発現抑制活性を有する核酸を設計するために用いられる塩基配列としては、例えば配列番号1〜19のいずれかで表される塩基配列が好ましく、配列番号1、6および15のいずれかで表される塩基配列がさらに好ましく、配列番号1で表される塩基配列が特に好ましい。
【0048】
このようにして選択される核酸としては、例えばhif-2α遺伝子の一部の塩基配列からなる核酸と、該核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸とを含有し、かつHIF-2αの発現抑制活性を有する核酸とからなる二本鎖核酸があげられる。該二本鎖核酸を構成する一本鎖の核酸は、通常15〜30塩基からなるが、15〜29からなることが好ましく、15〜27からなることがより好ましく、15〜25からなることがさらに好ましく、17〜23からなることが特に好ましく、19〜21からなることが最も好ましい。該二本鎖核酸は通常15〜27塩基対、好ましくは15〜25塩基対、より好ましくは15〜23塩基対、さらに好ましくは15〜21塩基対、特に好ましくは15〜19塩基対からなる二重鎖形成部を有している。
【0049】
該二本鎖核酸の具体例として、下記(a)〜(f)があげられる。
(a)hif-2のmRNAの相補配列に該当する、配列番号22〜40のいずれかで表される塩基配列を含むアンチセンス鎖核酸と、該核酸の塩基配列に対して相補的なセンス鎖塩基配列を含む核酸とからなる二本鎖核酸。
(b)配列番号22〜40のいずれかで表される塩基配列からなるアンチセンス鎖核酸と、該核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列からなるセンス鎖核酸とからなる二本鎖核酸。
(c)配列番号22〜40のいずれかで表される塩基配列からなる核酸の5’末端または3’末端のうち、少なくとも一方の末端が1〜4塩基削除されたアンチセンス鎖核酸と、該核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列からなるセンス鎖核酸とからなる二本鎖核酸。
(d)配列番号1〜19のいずれかで表される塩基配列からなるセンス鎖核酸と、配列番号22〜40のいずれかで表される塩基配列からなるアンチセンス鎖核酸(ここで、センス鎖の配列番号N(Nは1〜19である)に対してアンチセンス鎖の配列番号はN+21である)とからなる二本鎖核酸の少なくとも一方の鎖において、1〜3塩基、好ましくは1〜2塩基、より好ましくは1塩基が置換、欠失もしくは付加され、かつHIF-2αの発現抑制活性を有する二本鎖核酸。
(e)(a)〜(d)のいずれかに記載の二本鎖核酸において、二重鎖形成部が27塩基対以下、好ましくは25塩基対以下、より好ましくは23塩基対以下、さらに好ましくは21塩基対以下、特に好ましくは19塩基対以下である二本鎖核酸。
(f)(a)〜(e)のいずれかに記載の二本鎖核酸において、アンチセンス鎖核酸またはセンス鎖核酸の少なくとも一方の核酸の3’末端または5’末端に、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体を1〜4塩基、好ましくは1〜3塩基、より好ましくは1〜2塩基、さらに好ましくは2塩基付加した二本鎖核酸。
【0050】
上記(f)の二本鎖核酸の具体的な例として、配列番号N’で表される塩基配列からなる核酸と、その相補鎖として配列番号N’+21で表される塩基配列からなる核酸とからなる二本鎖核酸があげられる。ここで、N’は43〜61のいずれかの整数を示す。
HIF-2αの発現抑制活性を有する一本鎖核酸としては、hif-2α遺伝子の一部の塩基配列からなる核酸のアンチセンス鎖核酸を用いることもできる。そのような核酸の例として、配列番号22〜40のいずれかで表される塩基配列からなる核酸や、これらの核酸において、1〜3塩基、好ましくは1〜2塩基、より好ましくは1塩基が置換、欠失もしくは付加され、かつHIF-2αの発現抑制活性を有する核酸もあげることができる。またこれらの核酸を含む、30塩基以下、好ましくは29塩基以下、より好ましくは27塩基以下、さらに好ましくは25塩基以下、特に好ましくは23塩基以下の核酸をあげることができる。
【0051】
HIF-2αの発現抑制活性を有する一本核酸としては、hif-2α遺伝子の一部の塩基配列からなる核酸と、該核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる、下記(A)〜(G)の一本鎖核酸もあげられる。
(A)hif-2のmRNAの相補配列に該当する、配列番号22〜40のいずれかで表される塩基配列を含むアンチセンス鎖核酸と、該塩基配列に対して相補的なセンス鎖核酸とをスペーサー配列を介して連結してなる一本鎖核酸。
(B)配列番号22〜40のいずれかで表される塩基配列からなるアンチセンス鎖核酸と、該塩基配列に対して相補的な塩基配列からなるセンス鎖核酸とをスペーサー配列を介して連結してなる一本鎖核酸。
(C)配列番号22〜40のいずれかで表される塩基配列からなる核酸の5’末端または3’末端のうち、少なくとも一方の末端が1〜4塩基削除されたアンチセンス鎖核酸と、該核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列からなるセンス鎖核酸とをスペーサー配列を介して連結してなる一本鎖核酸。
(D)配列番号1〜19のいずれかで表される塩基配列からなるセンス鎖核酸と、配列番号22〜40のいずれかで表される塩基配列からなるアンチセンス鎖核酸とをスペーサー配列を介して連結してなる一本鎖核酸に含まれる、センス鎖またはアンチセンス鎖の少なくとも一方の鎖において、1〜3塩基、好ましくは1〜2塩基、より好ましくは1塩基が置換、欠失もしくは付加され、かつHIF-2αの発現抑制活性を有する二本鎖核酸。
(E)(A)〜(D)のいずれかに記載の一本鎖核酸に含まれるセンス鎖とアンチセンス鎖とが27塩基対以下、好ましくは25塩基対以下、より好ましくは23塩基対以下、さらに好ましくは21塩基対以下、特に好ましくは19塩基対以下の二重鎖を形成する一本鎖核酸。
(F)ステムループ構造によって二重鎖形成部を形成する(A)〜(E)のいずれかに記載の一本鎖核酸。
(G)50〜70塩基長からなる(A)〜(F)のいずれかに記載の一本鎖核酸。
【0052】
これらの一本鎖核酸または二本鎖核酸を細胞に導入することにより、HIF-2αの発現を抑制することができる。アンチセンスDNAを用いたhif-2αのmRNAの発現抑制においては、一般的にアンチセンスDNAを数十nMから数百nMの濃度で必要とするのと比較して、例えば本発明の二本鎖核酸は、数百pM〜数nMの濃度でも、細胞に導入した後、24時間以上、例えば48時間培養した段階でもhif-2αのmRNAの発現を抑制することができる。
【0053】
また、本発明の一本鎖核酸または二本鎖核酸のhif-2αのmRNAの発現抑制活性の評価は、該核酸等を培養系癌細胞などにカチオン性リポソームなどを用いてトランスフェクションし、一定時間培養した後、当該癌細胞におけるhif-2αのmRNAの発現量をRT−PCRで定量することにより行うことができる。またその効果として血管新生因子の発現を抑制する効果については、本発明の一本鎖核酸または二本鎖核酸を導入した細胞が産生する血管新生因子VEGFの蛋白質量を定量することで、評価することができる。さらに細胞増殖を抑制する効果については、本発明の一本鎖核酸または二本鎖核酸を導入した細胞の生細胞数を算出することにより、評価することができる。
3.本発明の医薬組成物
本発明はまた、一本鎖核酸、二本鎖核酸等の核酸またはベクターを有効成分として含有する医薬組成物に関する。当該医薬組成物は、核酸を細胞内に移行させるのに有効な担体をさらに含むことができる。本発明の医薬組成物は血管新生抑制が有効な癌、糖尿病性網膜症、リウマチなどの疾患、HIF-2αの過剰発現が原因となっている疾患、VHLが変異していることが原因となっている疾患の治療または予防のために用いることができる。癌としては、例えば腎癌、肝臓癌、皮膚癌、乳癌、肺癌、消化器癌、頭頚部癌、前立腺癌、子宮癌、膀胱癌などの固形癌をあげることができる。
【0054】
核酸を細胞内に移行させるのに有効な担体としては、例えばカチオン性担体があげられる。カチオン性担体としては、カチオン性リポソームおよびカチオン性ポリマーなどがあげられる。また、核酸を細胞内に移行させるのに有効な担体として、ウイルスエンベロープを利用した担体を用いてもよい。カチオン性リポソームとしては、2−O−(2−ジエチルアミノエチル)カルバモイル−1,3−O−ジオレオイルグリセロールを含有するリポソーム(以下リポソームAともいう)、オリゴフェクトアミン(Invitrogen社)、リポフェクチン(Invitrogen社)、リポフェクトアミン(Invitrogen社)、リポフェクトアミン2000(Invitrogen社)、DMRIE−C(Invitrogen社)、GeneSilencer(Gene Therapy Systems社)、TransMessenger(QIAGEN社)、TransIT TKO(Mirus社)、などが好ましく用いられる。カチオン性ポリマーとしては、JetSI(Qbiogene社)、Jet−PEI(ポリエチレンイミン;Qbiogene社)などが好ましく用いられる。ウイルスエンベロープを利用した担体としては、GenomeOne(HVJ−Eリポソーム;石原産業社)などが好ましく用いられる。
【0055】
本発明の医薬組成物に含まれる一本鎖核酸、二本鎖核酸またはベクターに上記担体を含む組成物は、当業者に既知の方法により調製することができる。例えば、適当な濃度の担体分散液と一本鎖核酸、二本鎖核酸またはベクター溶液とを混合して調製することができる。カチオン性担体を用いる場合、一本鎖核酸、二本鎖核酸またはベクターは水溶液中で負電荷を帯びているため、常法により水溶液中で混合することによって容易に調製することができる。該組成物を調製するために用いる水性溶媒としては、注射用水、注射用蒸留水、生理食塩水などの電解質液、ブドウ糖液、マルトース液などの糖液などがあげられる。また、該組成物を調製する際のpHおよび温度などの条件は当業者が適宜選択できる。例えば、リポソームAの場合、10%マルトース水溶液中の16mg/mlのリポソーム分散液に、10%マルトース水溶液中のオリゴ二本鎖RNA溶液を、pH7.4、25℃で撹拌しながら徐々に添加して調製することができる。
【0056】
該組成物は、必要ならば超音波分散装置や高圧乳化装置などを用いて分散処理を行うことにより、均一な組成物とすることもできる。当業者であれば、担体と一本鎖核酸、二本鎖核酸またはベクターとを含む組成物の調製に最適な方法および条件は、用いる担体に依存するので、上記の方法にとらわれることなく、用いる担体に最適な方法を選択できる。
本発明の医薬組成物としては、一本鎖核酸、二本鎖核酸またはベクターとリード粒子とを構成成分とする複合粒子および該複合粒子を被覆する脂質膜から構成され、該脂質膜の構成成分が可溶な極性有機溶媒を含む液の中に、該脂質膜の構成成分が分散可能で、該複合粒子も分散可能な濃度で該極性有機溶媒を含む液が存在するリポソームも好適に用いられる。リード粒子としては、例えば、脂質集合体、リポソーム、エマルジョン粒子、高分子、金属コロイド、微粒子製剤等を構成成分とする微粒子のことであり、好ましくはリポソームを構成成分とする微粒子があげられる。本発明におけるリード粒子は、脂質集合体、リポソーム、エマルジョン粒子、高分子、金属コロイド、微粒子製剤等を2つ以上組み合わせた複合体を構成成分としていてもよく、脂質集合体、リポソーム、エマルジョン粒子、高分子、金属コロイド、微粒子製剤等と他の化合物(例えば糖、脂質、無機化合物等)とを組み合わせた複合体を構成成分としていてもよい。
【0057】
該複合粒子を被覆する脂質膜としては、例えば中性脂質およびポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン等を構成成分とするものがあげられる。
該リポソームは、例えばWO2006/080118等に記載の方法に従って調製することができる。
本発明の医薬組成物に含まれる一本鎖核酸、二本鎖核酸またはベクターと担体との配合比は、一本鎖核酸、二本鎖核酸またはベクターの1重量部に対して担体1〜200重量部が適当である。好ましくは、一本鎖核酸、二本鎖核酸またはベクターの1重量部に対して担体2.5〜100重量部、さらに好ましくは担体10〜20重量部である。
【0058】
本発明の医薬組成物には、上記担体の他に、医薬的に許容できるキャリアーまたは希釈剤などを含んでいてもよい。医薬的に許容できるキャリアーまたは希釈剤などは、本質的に化学的に不活性および無害な組成物であり、本発明の医薬組成物の生物学的活性に全く影響を与えないものである。そのようなキャリアーまたは希釈剤の例は、塩溶液、糖溶液、グリセロール溶液、エタノールなどがあるが、これらに限定されない。
【0059】
本発明の医薬組成物は、疾患の治療または予防に有効な量の該複合体を含み、かつ、患者に適切に投与できるような形態で提供される。本発明の医薬組成物の製剤形態は、例えば注射剤、点眼剤、吸入用などの液剤、例えば軟膏、ローション剤などの外用剤等であってもよい。
液剤の場合、本発明の医薬組成物の濃度範囲は通常、0.001〜25%(w/v)であり、好ましくは0.01〜5%(w/v)であり、より好ましくは0.1〜2%(w/v)である。本発明の医薬組成物は医薬的に許容される任意の添加剤、例えば、乳化補助剤、安定化剤、等張化剤、pH調製剤等を適当量含有していてもよい。医薬的に許容される任意の添加剤は、該複合体の分散前でも分散後でも適当な工程で添加することができる。
【0060】
凍結乾燥製剤は、一本鎖核酸、二本鎖核酸またはベクターと担体とを分散処理した後、凍結乾燥処理することにより調製することができる。凍結乾燥処理は、常法により行うことができる。例えば、上記の分散処理後の複合体溶液を無菌状態にて所定量をバイアル瓶に分注し、約−40〜−20℃の条件で予備乾燥を約2時間程度行い、約0〜10℃で減圧下に一次乾燥を行い、次いで、約15〜25℃で減圧下に二次乾燥して凍結乾燥することができる。そして、例えばバイアル内部を窒素ガスで置換し、打栓することにより、本発明の医薬組成物の凍結乾燥製剤を得ることができる。
【0061】
本発明の医薬組成物は、任意の適当な溶液の添加によって再溶解し、使用することができる。このような溶液としては、注射用水、生理食塩水などの電解質液、ブドウ糖液、その他一般輸液などをあげることができる。この溶液の液量は、用途などによって異なり、特に制限されないが、凍結乾燥前の液量の0.5〜2倍量、または500ml以下が好ましい。
【0062】
本発明の医薬組成物は、ヒトを含む動物に対し、例えば静脈内投与、動脈内投与、経口投与、組織内投与、経皮投与、経粘膜投与または経直腸投与することができるが、患者の症状に合わせた適切な方法により投与することが好ましい。特に静脈投与、経皮投与、経粘膜投与が好ましく用いられる。また、癌内局所投与など、局所投与をすることもできる。これらの投与方法に適した剤型としては、例えば各種の注射剤、経口剤、点滴剤、吸収剤、点眼剤、軟膏剤、ローション剤、坐剤等があげられる。
【0063】
本発明の医薬組成物の用量は、薬物、剤型、年齢や体重などの患者の状態、投与経路、疾患の性質と程度などを考慮した上で決定することが望ましいが、通常は一本鎖核酸、二本鎖核酸またはベクターの質量として、成人に対して1日当たり、0.1mg〜10g/日、好ましくは1mg〜500mg/日である。場合によっては、これ以下でも十分であるし、また逆にこれ以上の用量を必要とすることもある。また1日1回〜数回投与することもでき、1日〜数日の間隔をおいて投与することもできる。
【0064】
以下に、本発明を実施例により説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0065】
hif-2α遺伝子の発現を抑制する核酸の設計とその評価
(1)二本鎖核酸の調製
hif-2α遺伝子の発現を抑制できる核酸の配列として、hif-2αのmRNA配列(GenBank登録番号:NM_001430.3、配列番号97)から、(a)GまたはCが4塩基以上続く配列がない、(b)GC含量が20〜80%である、(c)より好ましくは5’側もしくは3’側非翻訳領域に位置する、の3つの条件に当てはまる配列19組を選択した。配列は配列番号N、およびその相補配列として配列番号N+21の塩基配列で示す。ここでNは1から19までの整数である。配列番号1〜19で表される配列からなるRNAのそれぞれの3’端に、適宜2塩基からなるDNA配列を付加し、配列番号N’で表される塩基配列からなる核酸と、その相補鎖として配列番号N’+21で表される塩基配列からなる核酸とからなる二本鎖核酸である、siRNAを設計した。ここでN’は43から61までの整数を示す。
【0066】
二本鎖核酸を構成する核酸の合成は、株式会社ジーンデザインに依頼した。
(2)スクリーニングにおける評価方法
スクリーニングにおける評価は、二本鎖核酸を担体と共に各種癌細胞に導入し、hif-2αのmRNA量をRT−PCR(Reverse transcription-polymerase chain reaction)を用いて定量することにより行った。
(3)二本鎖核酸と担体の複合体の調製
担体として、市販カチオニックリポソームであるハイパーフェクト(QIAGEN社製)を用い、添付の使用説明書に記載された方法に従って二本鎖核酸−ハイパーフェクトの複合体を調製した。
(4)二本鎖核酸によるhif-2αのmRNAの発現抑制
二本鎖核酸のトランスフェクションによりhif-2αのmRNAの発現が抑制されるかどうかを調べるため、hif-2αのmRNAの発現量をRT−PCRによる準定量により評価した。
【0067】
二本鎖核酸としては、配列番号N’で表される塩基配列からなる核酸と配列番号N’+21で表される塩基配列からなる核酸を用いた。ここでN’は43〜61までの整数を示す。
【0068】
【表1】

【0069】
表1に示されるとおり、配列番号N’(43〜61)で表される塩基配列からなる核酸と配列番号N’+21(64〜82)で表される塩基配列からなる核酸で形成される二本鎖核酸は、それぞれHIF-2 siRNA #1〜#19ともいう。表1中で大文字はリボヌクレオチド、小文字はデオキシリボヌクレオチドをそれぞれ示す。
【0070】
また、ヒトのいずれの遺伝子とも交差しないsiRNAであるNontargeting siRNA #1(以下、Nontargeting#1ともいう)(Dharmacon社製)を陰性対照として、配列番号62で表される塩基配列からなる核酸と配列番号83で表される塩基配列からなる核酸(以下、Control#1ともいう。Journal of Cellular Biochemistry, 92, 491-501 (2004))、ならびに配列番号63で表される塩基配列からなる核酸と配列番号83で表される塩基配列からなる核酸(以下、Control# 2ともいう。PLoS Biology, 1(3), 439-444 (2003))を陽性対照として、それぞれ用いた。
【0071】
これらの二本鎖核酸を、以下の方法により、それぞれヒト腎臓細胞であるA-498細胞(
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HTB 44)に導入した。
96ウェルの培養プレートに、MEM(GIBCO社製、11095)で希釈した二本鎖核酸を10μLずつ分注した後、添付の使用説明書に記載された量となるようにMEMで希釈したハイパーフェクトを10μLずつ添加して、二本鎖核酸−ハイパーフェクト複合体を調製した。次に、1.11%ウシ胎仔血清(FBS)、Non-Essential Amino-acids(NEAA)、Pyruvateを含むMEMに懸濁させたA-498細胞を、5000細胞数/180μL/ウェルとなるように播種し、37℃、5%CO条件下で培養することで、二本鎖核酸をA-498細胞に導入した。二本鎖核酸の最終濃度は200pMとなるように調製した。
【0072】
二本鎖核酸を導入した細胞を37℃の5%COインキュベーター内で48時間培養し、氷冷したPBSで洗浄し、Cells-to-Ct Kit(ABI社製)を用いて全RNAを回収し、製品に添付された説明書に記載された方法に従い逆転写反応を行い、cDNAを作製した。
得られたcDNAを鋳型とし、Universal Probe Library(Roche Applied Science社製)をプローブとして、ABI7900HT Fast(ABI社製)を用い、添付された使用説明書に記載された方法に従ってPCR反応させることにより、hif-2α遺伝子および構成的発現遺伝子であるgapdh(D-glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)遺伝子をPCR反応させて得られた増幅量から、それぞれhif-2αのmRNA量およびgapdhのmRNA量の準定量値を算出した。hif-2αのmRNA量を準定量するに際しては、対応するサンプルのgapdhのmRNA量を内部対照とした上で算出した。
【0073】
hif-2αのmRNA量についての結果を図1に示す。なお、検体のmRNA量は、担体のみを処理した群(mock群)における、hif- 2αのmRNA量およびgapdhのmRNA量を、それぞれ1としたときの相対的な割合として表した。
図1に示されるとおり、hif-2α遺伝子を標的とする本発明の二本鎖核酸を導入したA-498細胞は、陰性対照と比較してhif-2αのmRNA量が低下した。
【実施例2】
【0074】
二本鎖核酸によるvegfaのmRNAの発現抑制
HIF-2によりその転写が促進される血管新生因子であるVEGFの発現が、hif-2αのmRNAの発現抑制に伴って抑制されるかどうかを、実施例1(4)に記載されたRT−PCRによるmRNA量の準定量と同様の方法で評価した。VEGFをコードする遺伝子であるvegfaのmRNA量についての結果を図2に示す。
【0075】
図2に示されるとおり、hif-2α遺伝子を標的とする本発明の二本鎖核酸を導入したA-498細胞は、陰性対照と比較してvegfaのmRNA量が低下した。
【実施例3】
【0076】
二本鎖核酸のin vitroにおける抗細胞増殖活性
384ウェルの培養プレートに、MEM(GIBCO社製、11095)で希釈した二本鎖核酸を6μLずつ分注した後、添付の使用説明書に記載された量となるようにMEMで希釈したハイパーフェクトを10μLずつ添加して、二本鎖核酸−ハイパーフェクト複合体を調製した。次に、1.47%ウシ胎仔血清(FBS)、Non-Essential Amino-acids (NEAA)、Pyruvateを含むMEMに懸濁させたA-498細胞を、2000細胞数/34μL/ウェルとなるように播種し、37℃、5%CO条件下で培養することで、二本鎖核酸をA-498細胞に導入した。二本鎖核酸の最終濃度は、それぞれ1、0.3、0.1、0.03、0.01、0.003、0.001nMとなるように調製した。なお、二本鎖核酸の濃度は、それぞれの鎖が完全に二本鎖を形成していると仮定したときのモル濃度で示している。
【0077】
二本鎖核酸を導入した細胞を37℃の5%COインキュベーター内で7日間培養し、CellTiter-GloTM Luminescent Cell Viability Assay(Promega社製)を用いて生細胞率を測定した。測定方法は製品に添付された説明書に記載された方法に従った。担体のみ処理した場合のA-498細胞の生細胞率を100%として、それぞれの相対生細胞率を計算した。その結果を図3および図4に示す。
【0078】
図3および図4に示されるとおり、hif-2α遺伝子を標的とする二本鎖核酸の導入による生細胞率の減少は認められず、本発明の種々の二本鎖核酸は細胞増殖を阻害しないことが示された。
【実施例4】
【0079】
修飾二本鎖核酸によるhif-2α、vegfaのmRNAの発現抑制
二本鎖核酸を修飾することにより、核酸分解酵素(ヌクレアーゼ)耐性の向上や免疫原性の低下などの効果が見込まれる一方、RNAi効果が低下する場合もある。修飾により活性が変化するかを調べるため、hif-2αおよびvegfaのmRNAの発現量をRT−PCRによる準定量により評価した。
【0080】
修飾二本鎖核酸の修飾ヌクレオチドとしては、Oligonucleotides, 18(2), 187-200 (2008)を参考にして、リボヌクレオチドのリボースの2’−OH基を2’−メトキシ基で置換したものを用いた。修飾二本鎖核酸としては、配列番号N’で表される塩基配列からなる核酸と配列番号N’+6で表される塩基配列からなる核酸を用い、それぞれ対応する無修飾の二本鎖核酸による結果と比較した。ここでN’は85〜90までの整数を示す。
【0081】
【表2】

【0082】
表2に示されるとおり、配列番号N’(85〜90)で表される塩基配列からなる核酸と配列番号N’+6(91〜96)で表される塩基配列からなる核酸で形成される二本鎖核酸は、それぞれHIF-2 siRNA #1-OMe, #4-OMe, #6-OMe, #9-OMe, #11-OMe, #15-OMeともいう。これらに対応する無修飾の二本鎖核酸がそれぞれ表1に示されるHIF-2 siRNA #1, #4, #6, #9, #11, #15である。なお、表2中で大文字はリボヌクレオチド、小文字はデオキシリボヌクレオチド、斜体文字はリボースの2’-OH基が2’-メトキシ基に置換されたヌクレオチドを、それぞれ示す。
【0083】
hif-2αおよびvegfaのmRNA量について、実施例1(4)に記載されたRT−PCRによるmRNA量の準定量と同様の方法で評価した結果を、それぞれ図5および図6に示す。
図5および図6に示されるとおり、hif-2α遺伝子を標的とする本発明の修飾二本鎖核酸を導入したA-498細胞は、陰性対照と比較してhif-2α、vegfaのmRNA量が低下した。中でも、HIF-2 siRNA #1-OMe, #6-OMe, #15-OMeは高い抑制活性を保持した。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明により、HIF-2αの発現抑制活性を有する核酸、該核酸からなる医薬組成物などが提供される。本発明の核酸、医薬組成物は、血管新生を抑制するため癌、糖尿病性網膜症、リウマチなどの疾患の治療に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号22〜40のいずれかで表される塩基配列からなる核酸または該核酸の少なくとも一方の末端が1〜4塩基削除された核酸と、該核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸とを含有し、かつHIF-2αの発現抑制活性を有する核酸。
【請求項2】
配列番号22〜40のいずれかで表される塩基配列からなる核酸または該核酸の少なくとも一方の末端が1〜4塩基削除された核酸と、該核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸の少なくとも一方の核酸において、1〜3塩基が置換、欠失もしくは付加された核酸を含有し、かつHIF-2αの発現抑制活性を有する核酸。
【請求項3】
27塩基対以下の二重鎖形成部を有する、請求項1または2に記載の核酸。
【請求項4】
15〜19塩基対からなる二重鎖形成部を有する、請求項3に記載の核酸。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の二本鎖核酸。
【請求項6】
請求項5に記載の二本鎖核酸の少なくとも一方の鎖の3’末端または5’末端に1〜4塩基付加した二本鎖核酸。
【請求項7】
配列番号22〜40のいずれかで表される塩基配列からなる核酸。
【請求項8】
請求項7に記載の核酸において、1〜3塩基が置換、欠失もしくは付加され、かつHIF-2αの発現抑制活性を有する核酸。
【請求項9】
請求項7または8に記載の核酸を含む、30塩基以下の核酸。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の核酸または二本鎖核酸を構成するヌクレオチドの一部または全部がリボヌクレオチドであり、かつHIF-2αの発現抑制活性を有する核酸。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の核酸または二本鎖核酸を構成するヌクレオチドの一部または全部が、デオキシリボヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチドであり、かつHIF-2αの発現抑制活性を有する核酸。
【請求項12】
修飾ヌクレオチドの少なくとも1つが、リボヌクレオチドの2’−修飾ヌクレオチドである、請求項11に記載の核酸。
【請求項13】
3’末端または5’末端に付加した1〜4塩基の少なくとも1塩基がデオキシリボヌクレオチドである、請求項11に記載の核酸。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の核酸をコードするベクター。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の核酸またはベクターを有効成分とする、医薬組成物。
【請求項16】
核酸を細胞内に移行させるのに有効な担体をさらに含む、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
核酸を細胞内に移行させるのに有効な担体がカチオン性担体である、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
核酸を細胞内に移行させるのに有効な担体がリポソームである、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
リポソームがHIF-2αをコードする遺伝子の発現部位を含む組織または臓器に到達するリポソームである、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
核酸またはベクターとリード粒子とを構成成分とする複合粒子および該複合粒子を被覆する脂質膜から構成され、該脂質膜の構成成分が可溶な極性有機溶媒を含む液の中に、該脂質膜の構成成分が分散可能で、該複合粒子も分散可能な濃度で該極性有機溶媒を含む液が存在するリポソームである、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項21】
HIF-2αの発現を抑制することを特徴とする、請求項15〜20のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
血管新生を抑制する、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
癌、糖尿病性網膜症またはリウマチの治療または予防に用いる、請求項15〜22のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか1項に記載の核酸、ベクターまたは医薬組成物を対象に投与することを特徴とする、HIF-2αの発現を抑制する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−39036(P2013−39036A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285215(P2009−285215)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000001029)協和発酵キリン株式会社 (276)
【Fターム(参考)】