説明

RFID質問器及びデータ通信方法

【課題】自律的に無線タグにおける受信電波の干渉を低減するRFID質問器を提供する。
【解決手段】無線タグと信号を送受する質問器において、当該無線タグとの通信で用いられる複数のチャネルのうち空きチャネルを検出するキャリアセンス部と、検出された空きチャネルを用いて当該無線タグへ信号を送信する送信部と、当該無線タグとの通信における通信異常を検知する異常検知部と、通信異常が検知された場合に、当該無線タグへの送信を中断し、所定の送信休止時間経過後に再度空きチャネルを検出し、検出された空きチャネルを用いて無線タグへの信号送信を再開するよう制御する制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグと無線通信により信号を送受信するRFID質問器及び無線タグとのデータ通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
識別情報等を記憶するタグとの間で無線通信により情報をやりとりする技術として、RFID(Radio Frequency Identification)技術がある。
【0003】
このRFID技術を用いたシステムは、質問器(Interrogator)及び応答器(Transponder)から構成される。質問器は、応答器としてのICチップにアクセスし、そのICチ
ップに書き込まれている情報(例えば、ID情報)を読み取る。また、質問器は、しばしば、そのICチップに情報を書き込む。従って、以下、質問器のことを「リーダ/ライタ」と呼ぶことにする。また、応答器は、固有のID情報が書き込まれたICチップであり、ICタグ、無線ICタグ、RFIDタグ、電子タグ、無線タグ等のさまざまな名称で呼ばれているが、以下では、「無線タグ」と呼ぶことにする。
【0004】
このように、RFID技術を用いたシステムでは、RFIDリーダ/ライタ(以降、単にリーダ/ライタと表記する)が無線タグ内の情報を非接触状態で読み書きする。無線タグとしては、例えば、リーダ/ライタから送信される電波をエネルギー源として動作し、当該電波の反射波に自身が記憶する情報を乗せて返答するものがある。
【0005】
このような従来のRFIDシステムの構成例を図7に示す。図7は、2台のリーダ/ライタ1001及び1002が隣接設置される構成例を示す。このように複数のリーダ/ライタが隣接設置され、各リーダ/ライタが電波により無線タグと通信する場合には、各リーダ/ライタそれぞれが送信する電波により各リーダ/ライタ間で電波の干渉が生ずる。例えば、図7のリーダ/ライタ1001では、リーダ/ライタ1002から発せられた電波により干渉が起こる(リーダ/ライタ間干渉)。また、各無線タグにおいても、隣接する複数のリーダ/ライタからの電波を同時に受信することにより、電波の干渉が生ずる(リーダ/ライタ・タグ間干渉)。
【0006】
上述のリーダ/ライタ間干渉を回避する方法として、各リーダ/ライタが通信開始前にキャリアセンスを行い、空きチャネルを探す方法がある(非特許文献1参照)。すなわち、各リーダ/ライタが、他のリーダ/ライタとは異なる周波数チャネルを用いて通信を行うよう制御する方法である。
【0007】
このようなキャリアセンスを行うシステムでは、更に、1つのチャネルを各リーダ/ライタ間で公平に使用するために、最大連続送信時間と送信停止時間が規定されている(非特許文献1参照)。図8は、同一チャネルにおける、送信時間(最大連続送信時間及び送信停止時間)とキャリアセンスとの関係を示す図である。図8に示すように、キャリアセンスにより所定のチャネルを獲得し通信しているリーダ/ライタは、最大連続送信時間の経過により、所定の送信停止時間中通信を止める必要がある。これにより、送信待ちのリーダ/ライタは、先に通信中であったリーダ/ライタの送信停止時間中に当該チャネルを獲得する機会が得られる。
【0008】
以下、キャリアセンスを行い、かつ、最大連続送信時間及び送信停止時間により送信制御を行うリーダ/ライタの送信処理について図9を用いて説明する。図9は、リーダ/ライタの送信処理フローを示す図である。
【0009】
リーダ/ライタは、無線タグと通信する際に、まずキャリアセンスを行う(S1101からS1107)。キャリアセンスを行うにあたり、リーダ/ライタはまず、初期チャネル(所定の周波数)を設定する(S1101)。続いて、リーダ/ライタは、この設定されたチャネルにおける電波の受信電力を測定する(S1102)。この設定されたチャネルにおける電波の受信電力が閾値より大きい場合には(S1103;NO)、他のリーダ/ライタにより当該チャネルが使用されていると判断し、リーダ/ライタは先に設定したチャネルを別チャネルに変更する(S1104)。
【0010】
一方、設定されたチャネルにおける電波の受信電力が閾値以下であると判断すると(S1103;YES)、リーダ/ライタはバックオフ時間(ランダムな待ち時間)を設定する(S1105)。そして、リーダ/ライタは、設定されたバックオフ時間内に受信された電波の受信電力を測定する(S1106)。これらは、同一タイミングでキャリアセンスを行っているリーダ/ライタ間での干渉を防ぐための制御である。
【0011】
設定されたバックオフ時間内の受信電力が閾値より大きいと判断すると(S1107;NO)、リーダ/ライタは、同一タイミングでキャリアセンスを行っている他のリーダ/ライタが存在すると判断し、先に設定したチャネルを別チャネルに変更する(S1104)。一方、設定されたバックオフ時間内の受信電力が閾値以下と判断すると(S1107;YES)、リーダ/ライタは、同一チャネルを選択した他のリーダ/ライタがいないと判断し、設定されたチャネルにより送信を開始する。
【0012】
以降、キャリアセンスにより所定のチャネルを獲得したリーダ/ライタは、獲得したチャネルを用いて送信を行うが、連続で送信できる時間は、最大連続送信時間として規定される時間内である(S1108)。当該最大連続送信時間が経過すると、リーダ/ライタは、最小送信停止時間以上、送信を停止する(S1109)。更に送信を行う必要がある場合には、最小送信停止時間が経過すると、リーダ/ライタは、再度キャリアセンスをやりなおす(S1101からS1107)。
【非特許文献1】European Telecommunications Standards Institute, “Electromagnetic compatibility and Radio spectrum Matters (ERM); Radio Frequency Identification Equipment operating in the band 865 MHz to 868 MHz with power levels up to 2 W; Part 1: Technical requirements and methods of measurement”, ETSI EN 302 208-1, 2004-09, V1.1.1, p.10, 26
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述のリーダ/ライタにおけるキャリアセンスでは、各リーダ/ライタで使用するチャネルを変えることにより、リーダ/ライタ間干渉を回避することはできるものの、リーダ/ライタ・タグ間干渉を回避することはできない。無線タグは、周波数フィルタ等の機能を有していないものが多いため、異なる周波数チャネル間で同時に信号を受信した場合に正常にデータを復調、復号することができないからである。
【0014】
リーダ/ライタ・タグ間干渉の低減には、隣接する複数のリーダ/ライタの送信が時間的に重ならないよう、制御装置により集中制御する方法が有効である。しかし、この方法では、制御装置による制御手法を事前に各リーダ/ライタにおける干渉の影響度等を把握して決めなければならないため、リーダ/ライタの設置環境に応じて設定を変更する必要があり、設置工数がかかり作業も煩雑になるという問題がある。
【0015】
本発明は、自律的に無線タグにおける受信電波の干渉を低減するRFID質問器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上述した課題を解決するために以下の構成を採用する。即ち、本発明は、無線タグと信号を送受する質問器において、当該無線タグとの通信で用いられる複数のチャネルのうち空きチャネルを検出するキャリアセンス部と、検出された空きチャネルを用いて当該無線タグへ信号を送信する送信部と、当該無線タグとの通信における通信異常を検知する異常検知部と、通信異常が検知された場合に、当該無線タグへの送信を中断し、所定の送信休止時間経過後に再度空きチャネルを検出し、検出された空きチャネルを用いて無線タグへの信号送信を再開するよう制御する制御部とを備える質問器についてのものである。
【0017】
本発明では、キャリアセンス部により空きチャネルが検出され、その空きチャネルが用いられ無線タグへの送信が開始される。
【0018】
これにより、本発明では、キャリアセンスにより検出された空きチャネルによって送信が開始されるため、隣接する質問器間の信号干渉を回避することができる。
【0019】
なお、質問器とは、例えば、RFIDリーダ、或いは、RFIDリーダ/ライタである。また、無線タグとは、例えば、固有のID情報が書き込まれたICチップであり、ICタグ、無線ICタグ、RFIDタグ、電子タグ等と呼ばれるものである。
【0020】
また、本発明では、無線タグとの通信において通信異常が検知された場合、当該無線タグへの送信を中断し、所定の送信休止時間経過後に再度キャリアセンスが行われ、無線タグへの信号送信が再開される。
【0021】
本発明によれば、通信異常が検知されると送信が中断されるため、無線タグが、異なるチャネルにより送信される信号を異なるリーダライタから同時に受信することにより通信不能状態となる場合(質問器・タグ間干渉)についても即座に回避することができる。
【0022】
更に、各質問器は、お互いにネットワークにより接続され集中制御されることなく、自律制御により干渉を回避することができる。
【0023】
また、上記異常検知部は、通信異常を無線タグへの信号の送信開始時点から所定のタイムアウト時間内に検知するようにしてもよい。
【0024】
本発明では、送信開始時点を起点とする所定のタイムアウト時間が設けられており、そのタイムアウト時間内に通信異常が検知され、その通信異常の検知により、当該無線タグへの送信が中断され、所定の送信休止時間経過後に再度キャリアセンスが行われ、無線タグへの信号送信が再開される。
【0025】
一方、当該タイムアウト時間外であれば、通信異常が発生したとしても検知されないため、送信が継続される。
【0026】
従って、本発明によれば、先に送信を開始した質問器は、タイムアウト時間経過後に送信を開始する質問器による質問器・タグ間干渉を回避することができる。
【0027】
また、上記制御部は、タイムアウト時間を無線タグへの送信の優先度に応じて変更する変更部を更に有し、上記異常検知部は、当該無線タグとの通信における異常が上記タイムアウト時間継続する場合に、通信異常と検知するようにしてもよい。
【0028】
本発明では、通信相手の無線タグとの通信において異常を検知するための所定の時間であるタイムアウト時間が無線タグへの送信の優先度に応じて変更される。
【0029】
従って、本発明によれば、無線タグへの送信の優先度に応じてタイムアウト時間が変更されるため、例えば、優先度に応じて通信異常が検知され難くすることができる。これによれば、優先度に応じて通信異常の検知による通信中断を起こり難くすることができるため、送信の優先度に応じた送信機会の付与を実現することができる。優先度が同じであれば、公平に送信機会を付与することができる。
【0030】
すなわち、本発明によれば、質問器間干渉及び質問器・タグ間干渉を回避し、かつ、送信機会を制御することが可能となる。
【0031】
また、上記変更部は、通信異常が検知された場合の送信中断の回数に応じて、無線タグへの送信の優先度を決定する。
【0032】
従って、本発明によれば、通信異常が検知された場合の送信中断の回数に応じて、無線タグへの送信の優先度が決定されるため、例えば、送信中断の回数が多い質問器の優先度を上げることにより、複数の質問器の間で公平に送信機会を付与することができる。
【0033】
また、上記制御部は、無線タグへの連続送信時間が所定の最大連続送信時間を越える場合に、無線タグへの送信を終了するよう制御し、上記送信休止時間を上記最大連続送信時間と同程度の長さとする。
【0034】
従って、本発明によれば、通信異常による送信中断があった場合においても、正常送信を継続している質問器の送信を次のキャリアセンスを得る機会まで妨害することがなくなる。ひいては、効率のよい送信機会付与を行うことができる。
【0035】
なお、本発明は、以上の何れかの機能を実現させるプログラムであってもよい。また、本発明は、そのようなプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体であってもよい。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、自律的に無線タグにおける受信電波の干渉を低減するRFID質問器を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、図面を参照して、それぞれ本発明の実施形態におけるRFIDリーダ/ライタ(以降、単にリーダ/ライタと表記する)について説明する。なお、以下に述べる実施形態の構成は例示であり、本発明は以下の実施形態の構成に限定されない。また、以下の説明における「無線タグ」及び「リーダ/ライタ」とは、背景技術の項で説明したものと同様とする。
【0038】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態におけるリーダ/ライタについて、以下に説明する。
【0039】
〔装置構成〕
まず、第一実施形態におけるリーダ/ライタの装置構成について、図1を用いて説明する。図1は、第一実施形態におけるリーダ/ライタの装置構成を示すブロック図である。
【0040】
本実施形態におけるリーダ/ライタ100は、アンテナ10、マイクロプロセッサ(以
降、MPUと表記する)101、局部発振器102、共用器103、送信部110、及び受信部120から構成される。そして、送信部110は、更に、符号化部111、AM(Amplitude Modulation)変調部112、フィルタ部113、アップコンバータ部114、アンプ部115を有する。また、受信部120は、更に、復号化部121、AM復調部122、フィルタ部123、ダウンコンバータ部124、アンプ部125を有する。
【0041】
これら機能部のうちMPU101を除く他の機能部は、無線タグと実際に通信を行うための機能部であり、MPU101により制御される。MPU101は、メモリ(図示せず)等に記憶される制御プログラムを実行することにより、上述の他の機能部を制御し、本発明に係るRFID送信制御を行う。本発明はこのようなRFID送信制御に関する技術に着目したものであるため、MPU101を除く他の機能部は、無線タグとの通信を実現し得る構成であれば、これらに限定されるものではない。
【0042】
なお、図1中の、制御部105(本発明の制御部に相当)、タイマ106、送受信処理部107(本発明の送信部に相当)、キャリアセンス処理部108(本発明のキャリアセンス部に相当)、及び異常処理部109(本発明の異常検知部に相当)は、MPU101により実行されるRFID送信制御プログラムの各機能イメージを示している。また、MPU101は、入出力インタフェース(図示せず)等を経由して、他の制御装置とデータを送受信するようにしてもよい。
【0043】
まず、以下に、無線タグと実際に通信を行うための各機能部について簡単に説明する。
【0044】
符号化部111は、MPU101から渡される送信データ(無線タグへのリードコマンド、ライトコマンド等を含む)を符号化し、符号化された信号をAM変調部112へ渡す。
【0045】
AM変調部112は、符号化された送信信号に対し振幅変調処理を施す。変調された信号は、フィルタ部113に渡される。
【0046】
フィルタ部113は、変調された信号の中から所望の周波数成分を有する信号を抽出する。例えば、ここで抽出される信号の周波数は、MPU101による送信制御により選択された周波数に応じて変えられるようにしてもよい。こうしてフィルタリングされた信号は、アップコンバータ部114へ渡される。
【0047】
アップコンバータ部114は、フィルタリングされた信号を、局部発振器102からの出力信号と混合させることにより高周波信号へ変換する。高周波信号へ変換された信号は、アンプ部115へ渡される。
【0048】
局部発振器102は、アップコンバータ部114において一定の高周波信号に変換させるために、所定の周波数を発振する。例えば、局部発振器102は、MPU101の制御により選択された所定のチャネルにより送信するため、発振すべき周波数が指定されるようにしてもよい。
【0049】
アンプ部115は、変換された高周波信号を増幅する。増幅された信号は、共用器103を経由してアンテナ10から送信される。共用器103は、アンテナ10を送信部110と受信部120とで共用するための機能部である。アンテナ10は、無線タグと電波を送受信するために用いられる。アンテナ10から所定の周波数により送信された信号は、無線タグで受信される。そして、無線タグは、例えば、受信された電波の反射波に自身が記憶する情報を乗せて返信する。なお、本実施形態では、共用器103を備えることにより、1つのアンテナ10が共用される構成となるが、送信用、受信用の2本のアンテナを
備えるようにしてもよい。
【0050】
次に、受信部120を構成する各機能部について説明する。
【0051】
アンプ部125は、アンテナ10で受信され、共用器103を経由して受けた微弱な信号を増幅する。アンプ部125にはローノイズアンプを用い、増幅する信号のノイズを低減させるようにしてもよい。増幅された信号は、ダウンコンバータ部124へ渡される。
【0052】
ダウンコンバータ部124は、増幅された信号を局部発振器102からの出力信号と混合させることにより低周波信号に変換する。変換された信号は、フィルタ部123へ渡される。
【0053】
フィルタ部123は、変換された信号から所望の周波数成分の信号を抽出する。例えば、ここで抽出される信号の周波数は、MPU101による送信制御により選択された周波数に応じて変えられるようにしてもよい。こうしてフィルタリングされた信号は、AM復調部122へ渡される。
【0054】
AM復調部122は、フィルタリングされた信号を復調処理する。復調された信号は、復号化部121により復号される。復号されたデータは、MPU101に渡される。
【0055】
次に、MPU101により実行される制御プログラムの各機能イメージについて説明する。本実施形態におけるリーダ/ライタ100は、これら各機能によりRFID送信制御を実現する。
【0056】
キャリアセンス処理部108は、キャリアセンスを行う。すなわち、キャリアセンス処理部108は、無線タグとの通信で用いられる複数のチャネルのうち空きチャネルを検出する。キャリアセンス処理部108は、例えば、所定の周波数を局部発振器102若しくはフィルタ123に設定することにより設定された周波数の信号を抽出し、抽出された信号成分の受信電力を電力測定部(図示せず)により測定し、その受信電力に基づき空きチャネルか否かを検出するようにしてもよい。
【0057】
送受信処理部107は、無線タグとの通信によりやりとりされるデータ処理を行う。送受信処理部107は、符号化部111へリードコマンドやライトコマンド等の送信信号を出力する。出力された信号は、送信部110を構成する各機能により信号処理され無線タグへ送信される。また、送受信処理部107は、復号化部121から受信信号を得る。
【0058】
異常処理部109は、無線タグとの通信における通信異常を検知する。通信異常は、例えば、無線タグからの応答が一定期間ない、若しくは、送受信処理部107が受ける受信信号の伝送誤りが一定期間連続するような場合に検知される。異常処理部109による通信異常の検知には、タイムアウト時間等が用いられる。
【0059】
タイマ106は、本RFID送信制御により監視される各時間(タイムアウト時間、最大連続送信時間、タイムアウト監視時間、最小送信停止時間)を計測する。タイムアウト時間とは、通信異常を検知するための通信異常継続時間である。例えば、異常処理部109は、無線タグとの通信における異常が所定のタイムアウト時間継続する場合に、通信異常を検知する。その他の所定の時間については、動作例の項にて説明する。
【0060】
制御部105は、タイマ106により監視される時間に応じて、送受信処理部107、キャリアセンス処理部108、異常処理部109等の開始又は停止を制御する。また、無線タグへの送信の停止は、送受信処理部107の処理が停止されると共に、アンプ115
等への供給電力の停止、若しくはMPU101からの送信信号の送出の停止等により行われるようにしてもよい。制御部105は、以下の動作例で述べる送信制御を実現する。
【0061】
〔動作例〕
次に、第一実施形態におけるリーダ/ライタの動作例について、図2を用いて説明する。図2は、第一実施形態におけるリーダ/ライタの送信制御の概要を示す図である。以下は、MPU101により実行される送信制御の説明である。
【0062】
図2には、隣接する2台のリーダ/ライタ(リーダ/ライタ#1及び#2)が同時間帯に1つの無線タグと通信する場合の、リーダ/ライタ#1及び#2の送信制御の様子が示されている。また、図2では、横軸に時間が示され、時間軸の上側の白抜き四角にリーダ/ライタと無線タグとのデータ送信が示され、斜線の四角に無線タグとの通信不能状態が示され、CSにてキャリアセンスが示されている。以下、図2の例に基づき、リーダ/ライタ#1及び#2の動作について説明する。
【0063】
リーダ/ライタ#1は、キャリアセンス(キャリアセンス処理部108)により所定の空きチャネルを選択すると、その空きチャネルを使って無線タグへの信号送信(送受信処理部107)を始める。
【0064】
送信を開始すると共に、リーダ/ライタ#1は、タイムアウト監視時間の経過を監視する。タイムアウト監視時間とは、送信開始時点を起点とするタイムアウトの監視時間帯である。この時間帯にタイムアウトが検知されると、リーダ/ライタは一定時間送信を停止する。ここで、タイムアウトとは、通信相手の無線タグとの通信が正常に行われないことを各リーダ/ライタが検知することをいう。例えば、リーダ/ライタは、所定の時間(図2に示すタイムアウト時間(TTO))以上通信異常が続いた場合に、タイムアウトを検知する。
【0065】
タイムアウトの検知は、例えば、符号化部111へ送信信号を送ってから正常に復号化部121から受信信号が得られないような場合に、そのような通信異常の時間をMPU101内のタイマ106により監視することで行われる。また、復号化部121からの正常な受信信号が得られないような場合とは、無線タグからの応答が一定期間ない、若しくは伝送誤りが一定期間連続するような場合が該当する。
【0066】
図2の例では、リーダ/ライタ#1は、そのタイムアウト監視時間中に無線タグとの通信においてタイムアウトが検出されないため、そのまま送信が継続される。そして、リーダ/ライタ#1は、最大連続送信時間(T1)が経過すると、送信を停止する。更に送信を継続したい場合には、リーダ/ライタ#1は、最小送信停止時間(T2)が経過した後、再度のキャリアセンスを経て送信を再開する。
【0067】
一方、リーダ/ライタ#2は、キャリアセンスによりリーダ/ライタ#1の使用中のチャネル以外の空きチャネルを選択すると、その空きチャネルを使ってリーダ/ライタ#2の通信対象となる無線タグへの信号送信を始める。
【0068】
このとき、リーダ/ライタ#1が通信中の無線タグ及びリーダ/ライタ#2の通信対象となる無線タグがリーダ/ライタ#1からの信号とリーダ/ライタ#2からの信号とを混信してしまい受信不能状態となった場合、リーダ/ライタ#1及び#2は、無線タグからの返信を受け取れなくなる(図2に示す斜線の四角)。これにより、リーダ/ライタ#1及び#2は、共にタイムアウトを検出する。
【0069】
リーダ/ライタ#1は、このタイムアウトの検出タイミングがタイムアウト監視時間外
であることから、検出されたタイムアウトを無視し、再送等により送信を継続する。一方、リーダ/ライタ#2は、このタイムアウトを検出するタイミングがタイムアウト監視時間内にあることから、一定時間(T3)送信を停止する。これにより、リーダ/ライタ#1と通信中であった無線タグは、再びリーダ/ライタ#1からの信号のみが受信されるようになり通信可能状態となる。結果、リーダ/ライタ#1では、タイムアウト時間(TTO)時間経過後、無線タグとの通信が正常状態に戻る。ここでの、一定時間(T3)が本発明の送信休止時間に相当する。
【0070】
リーダ/ライタ#2は、一定時間(T3)経過後、再度キャリアセンスを行い送信の開始を試みる。図2の例では、リーダ/ライタ#2における送信再開のタイミングが2回ともリーダ/ライタ#1の送信タイミングと重なっているため、いずれも送信が停止される。
【0071】
なお、上記一定時間(T3)を最大連続送信時間(T1)と同程度の長さとしてもよい(T3はT1より大きくてもよい)。これにより、通信異常による送信中断があった場合においても、正常送信を継続しているリーダ/ライタの送信を次のキャリアセンスを得る機会まで妨害することがなくなる。
【0072】
〈動作フロー〉
以下、第一実施形態におけるリーダ/ライタの送信制御の処理フローについて、図3を用いて説明する。図3は、第一実施形態におけるリーダ/ライタの送信制御処理フローを示すフローチャートである
リーダ/ライタは、無線タグと通信する際に、まずキャリアセンスを行う(S100からS106)。リーダ/ライタは、初期チャネル(所定の周波数)を設定し(S100)、この設定されたチャネルにおける電波の受信電力を測定する(S101)。この設定されたチャネルにおける電波の受信電力が閾値より大きい場合には(S102;NO)、他のリーダ/ライタにより当該チャネルが使用されていると判断し、リーダ/ライタは先に設定したチャネルを別チャネルに変更する(S103)。
【0073】
一方、設定されたチャネルにおける電波の受信電力が閾値以下であると判断すると(S102;YES)、リーダ/ライタはバックオフ時間(ランダムな待ち時間)を設定する(S104)。そして、リーダ/ライタは、設定されたバックオフ時間内に受信された電波の受信電力を測定する(S105)。
【0074】
設定されたバックオフ時間内の受信電力が閾値より大きいと判断すると(S106;NO)、リーダ/ライタは、先に設定したチャネルを別チャネルに変更する(S103)。一方、設定されたバックオフ時間内の受信電力が閾値以下と判断すると(S106;YES)、リーダ/ライタは、設定されたチャネルにより送信を開始する(S107)。
【0075】
リーダ/ライタは、送信を開始すると、その送信開始時点から所定のタイムアウト監視時間内の通信タイムアウトを監視する(S108及び109)。リーダ/ライタは、このタイムアウト監視時間内に(S108;YES)タイムアウトが検出されると(S109;YES)、一定時間送信を停止する(S110)。リーダ/ライタは、更に送信を行う場合、一定時間の送信停止後、キャリアセンスから再度やりなおすこととなる(S100)。
【0076】
一方、通信タイムアウトが検知されず正常に送信されている場合(S109;NO)、リーダ/ライタは、最大連続送信時間が経過するまで送信を継続することができる(S111;NO)。なお、タイムアウト監視時間外に(S108;NO)通信タイムアウトが発生した場合においても、再送等により送信は継続され、最大連続送信時間が経過するま
で送信処理は継続される。
【0077】
送信継続中に最大連続送信時間が経過した場合には(S111;YES)、リーダ/ライタは、最小送信停止時間以上、送信を停止する(S112)。リーダ/ライタは、更に送信を行う場合、当該最小送信停止時間経過後、キャリアセンスから再度やりなおす(S100)。
【0078】
〈第一実施形態における作用/効果〉
ここで、上述した第一実施形態におけるリーダ/ライタの作用及び効果について述べる。
【0079】
本実施形態によるリーダ/ライタでは、まず、キャリアセンスにより空きチャネルが検出され送信が開始される。そして、送信開始時点を起点とする所定のタイムアウト監視時間が設けられており、そのタイムアウト監視時間内に無線タグとの通信においてタイムアウトが検知されると、一定時間送信停止された後に、再度キャリアセンスが行われる。
【0080】
一方、当該タイムアウト監視時間外であれば、タイムアウトが検知されたとしても、再送等により送信が継続される。
【0081】
すなわち、本実施形態によるリーダ/ライタでは、キャリアセンスにより検出された空きチャネルによって送信が開始されるため、隣接するリーダ/ライタ間の信号干渉を回避することができる。
【0082】
さらに、本実施形態によるリーダ/ライタでは、タイムアウト監視時間内にタイムアウトが発生すると一定時間送信が停止されるため、無線タグが、異なるチャネルにより送信される信号を異なるリーダ/ライタから同時に受信することにより通信不能状態となる場合(リーダ/ライタ・タグ間干渉)についても回避することができる。つまり、先に送信を開始したリーダ/ライタは、タイムアウト監視時間経過後に送信を開始するリーダ/ライタによるリーダ/ライタ・タグ間干渉を回避することができる。
【0083】
また、各リーダ/ライタは、お互いにネットワークにより接続され集中制御されることなく、自律制御により干渉を回避することができる。
【0084】
[第二実施形態]
本発明の第二実施形態に係るリーダ/ライタについて以下に説明する。先に説明した第一実施形態では、送信開始時点を起点とするタイムアウト監視時間を設けることにより、タイムアウト監視時間内にタイムアウトが発生した場合に一定時間送信を停止し、再度キャリアセンスからやりなおすというものであった。第二実施形態におけるリーダ/ライタは、第一実施形態におけるタイムアウト監視時間をなくし、無線タグにおける干渉を回避しつつ、リーダ/ライタ間の送信機会を公平に与えるようにするものである。
【0085】
〔装置構成〕
第二実施形態に係るリーダ/ライタは、第一実施形態と同様の機能部から構成され、MPU101における送信制御の内容が異なる。従って、装置構成の説明は省略する。
【0086】
〔動作例〕
第二実施形態におけるリーダ/ライタの動作例について、図4を用いて説明する。図4は、第二実施形態におけるリーダ/ライタが2台隣接設置運用されている場合の送信制御の概要を示す図である。以下は、MPU101により実行される送信制御の説明であり、MPU101は以下の動作が実現されるように各機能部を制御する。
【0087】
図4には、隣接する2台のリーダ/ライタ(リーダ/ライタ#1及び#2)が同時間帯にそれぞれの通信対象となる無線タグと通信を行う場合における、リーダ/ライタ#1及び#2それぞれの送信制御の様子が示されている。また、図4では、横軸に時間が示され、時間軸の上側の白抜き四角でリーダ/ライタと無線タグとのデータ送信が示され、斜線の四角に無線タグとの通信不能状態が示され、CSによりキャリアセンスが示されている。以下、図4の例により、リーダ/ライタ#1及び#2の動作について説明する。
【0088】
リーダ/ライタ#1は、キャリアセンスにより所定の空きチャネルを選択し、その空きチャネルを使って無線タグへの信号送信を始める。ここで、リーダ/ライタ#2は、リーダ/ライタ#2の通信対象となる無線タグへ別の空きチャネルを使って通信を開始する。これにより、リーダ/ライタ#1が通信中の無線タグ及びリーダ/ライタ#2の通信対象となる無線タグは、リーダ/ライタ#1及び#2双方からの信号を受信することにより通信不能状態となる。
【0089】
このとき、リーダ/ライタ#1及び#2にはそれぞれ所定のタイムアウト時間(TTO)が設定されている。リーダ/ライタが初期状態の場合、このタイムアウト時間(TTO)には、初期タイムアウト時間(TINIT)が設定される。初期タイムアウト時間(TINIT)には、各リーダ/ライタにおいてランダムな時間が設定される。初期タイムアウト時間(TINIT)には、例えば、200ミリ秒(ms)から400msのランダムな時間が設定されるようにしてもよい。
【0090】
図4は、リーダ/ライタ#1のタイムアウト時間(TTO#1)がリーダ/ライタ#2のタイムアウト時間(TTO#2)よりも長い時間が設定されている場合の例である。これにより、リーダ/ライタ#2は、リーダ/ライタ#1よりも先にタイムアウトを検知する。なお、タイムアウトが検知されるまでの通信異常状態では、各リーダ/ライタは、再送等により送信を継続するため、無線タグの通信不能状態は継続する。
【0091】
タイムアウトを検知したリーダ/ライタ#2は、一定時間(T3)送信を停止する。これにより、リーダ/ライタ#1と通信中であった無線タグでは、再びリーダ/ライタ#1から送信される信号のみ受信されるようになるため、正常な通信が再開される。結果、リーダ/ライタ#1では、自身のタイムアウト時間(TTO#1)が経過する前に通信状態が正常に戻るためタイムアウトは検知されず、そのまま送信が継続される。
【0092】
送信を停止したリーダ/ライタ#2は、自身のタイムアウト時間(TTO#2)を更新する。リーダ/ライタ#2は、まず、タイムアウトカウンタ(N)をインクリメントする。インクリメントする数はどのような数でもよい。続けて、リーダ/ライタ#2は、インクリメントされたタイムアウトカウンタ(N)とタイムアウトステップ値(T)とを乗算して得た値を、初期タイムアウト時間(TINIT)に加算する。これにより得られた値を、リーダ/ライタ#2は、自身のタイムアウト時間(TTO#2)とする。タイムアウトステップ値(T)は、予めメモリ等に記憶されたものを使うようにしてもよく、例えば、200msという時間が設定される。
【0093】
リーダ/ライタ#1は、最大連続送信時間(T1)が経過するまで正常に送信を継続し、その時間経過後、送信を停止する。このとき、リーダ/ライタ#1は、自身のタイムアウト時間(TTO#1)を初期タイムアウト時間に再設定する。なお、リーダ/ライタ#1は、初期タイムアウト時間(TINIT)を再度乱数により更新するようにしてもよい。更に送信を継続する場合には、リーダ/ライタ#1は、最小送信停止時間(T2)経過した後、再度のキャリアセンスを経て送信を開始する。
【0094】
図4の例では、このリーダ/ライタ#1による送信時に、リーダ/ライタ#2は、一定時間(T3)の送信停止を終え、再度のキャリアセンスの後、送信を再開している。これにより、再び、無線タグは通信不能状態となる。
【0095】
このときのリーダ/ライタ#2のタイムアウト時間(TTO#2)は、リーダ/ライタ#1のタイムアウト時間(TTO#1)よりも長くなっている。リーダ/ライタ#2は、先の処理にて、タイムアウト時間を更新しているからである。よって、今度は、リーダ/ライタ#1のほうが先にタイムアウトを検出するようになる。
【0096】
タイムアウトを検出したリーダ/ライタ#1は、直ちに送信を停止し、タイムアウト時間(TTO#1)を更新する。タイムアウト時間の更新方法は、上述のリーダ/ライタ#2の場合と同様である。すなわち、リーダ/ライタ#1は、インクリメントされたタイムアウトカウンタ(N)とタイムアウトステップ値(T)とを乗算して得た値と初期タイムアウト時間(TINIT)とを加算し、これにより得られた値をタイムアウト時間(TTO#1)とする。
【0097】
一方、リーダ/ライタ#2は、タイムアウト時間(TTO#2)経過前に通信が回復するため、タイムアウトが検出されず通信を継続する。リーダ/ライタ#2は、最大連続送信時間(T1)が経過するまで通信を継続することができる。リーダ/ライタ#2は、最大連続送信時間(T1)経過後、送信を停止し、タイムアウト時間(TTO#2)を初期タイムアウト時間(TINIT)に再設定する。
【0098】
このように、図4の例では、リーダ/ライタ#1、#2、#1、#2というふうに、送信機会が順番に割り当てられるようになる。
【0099】
また上述の図4の例では、隣接するリーダ/ライタが2台の場合の送信制御を説明したが、隣接するリーダ/ライタが3台の場合も同様の制御となる。図5は、第二実施形態におけるリーダ/ライタが3台隣接されている場合の送信制御の概要を示す図である。
【0100】
図5に示されるように、隣接するリーダ/ライタが3台の場合には、リーダ/ライタ#1、#2、#3と順番に送信機会が与えられる。これは、第三実施形態におけるリーダ/ライタでは、タイムアウトによる送信停止が発生する回数に比例してタイムアウト時間が長くなるため、待ち回数が多い程、タイムアウトが検知され難くなるからである。
【0101】
〈動作フロー〉
以下、第二実施形態におけるリーダ/ライタの送信制御の処理フローについて、図6を用いて説明する。図6は、第二実施形態におけるリーダ/ライタの送信制御処理フローを示すフローチャートである。
【0102】
リーダ/ライタは、無線タグと通信する際に、まずキャリアセンスを行う(S100からS106)。その後、リーダ/ライタは、キャリアセンスにより取得した空きチャネルを用いて、送信を開始する(S107)。なお、キャリアセンスの処理については、第一実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0103】
リーダ/ライタは、無線タグとの通信中、通信タイムアウトが発生しているか否かを検知する(S601)。リーダ/ライタは、自身が保持するタイムアウト時間(TTO)以上の間、通信不能状態が継続すれば(S601;YES)、通信タイムアウトと判断する。通信タイムアウトが検知されると(S601;YES)、リーダ/ライタは、タイムアウト時間(TTO)を更新し(S602、S603)、一定時間送信を停止する(S110)。タイムアウト時間について具体的には、タイムアウトカウンタ(N)がインクリメ
ントされ(S602)、そのインクリメントされたタイムアウトカウンタ(N)に基づいて、以下の式により求められる。リーダ/ライタは、更に送信を行う場合、一定時間の送信停止後、キャリアセンスから再度やりなおす(S100)。
【0104】
タイムアウト時間(TTO)=初期タイムアウト時間(TINIT)+
タイムアウトカウンタ(N)×
タイムアウトステップ値(T)
一方、通信タイムアウトが起こらず正常に送信されている場合(S601;NO)、リーダ/ライタは、最大連続送信時間が経過するまで送信を継続することができる(S604;YES)。
【0105】
送信処理継続中に最大連続送信時間が経過した場合には(S604;NO)、リーダ/ライタは、タイムアウト時間(TTO)を初期タイムアウト時間(TINIT)に再設定する(S605)。このとき、リーダ/ライタは、初期タイムアウト時間(TINIT)を乱数により再度設定しなおすようにしてもよい。
【0106】
その後、リーダ/ライタは、最小送信停止時間以上、送信を停止する(S112)。リーダ/ライタは、更に送信を行う場合、当該最小送信停止時間経過後、キャリアセンスから再度やりなおす(S100)。
【0107】
〈第二実施形態における作用/効果〉
ここで、上述した第二実施形態におけるリーダ/ライタの作用及び効果について述べる。
【0108】
本実施形態によるリーダ/ライタでは、通信相手の無線タグとの通信において異常を検知するための所定の時間であるタイムアウト時間がリーダ/ライタの通信状況に応じて更新される。
【0109】
最大連続送信時間経過まで正常に送信が行われた場合には、当該タイムアウト時間は、初期値(初期タイムアウト時間)に設定される。一方、送信中にタイムアウトが検知された場合には、当該タイムアウト時間は、タイムアウトが検知される回数に比例して長くなるように更新される。
【0110】
このようにして更新されるタイムアウト時間を用いて、本実施形態によるリーダ/ライタでは、送信制御が行われる。第一実施形態と同様に、まず、キャリアセンスにより空きチャネルが検出され送信が開始される。そして、当該送信中に、そのときのタイムアウト時間が用いられタイムアウトが検知されると、一定時間送信が停止される。また、タイムアウトが検知されない場合には、最大連続送信時間中、送信が継続される。
【0111】
すなわち、本実施形態によるリーダ/ライタでは、第一実施形態と同様に、キャリアセンスにより検出された空きチャネルによって送信が開始されるため、隣接するリーダ/ライタ間の信号干渉を回避することができる。
【0112】
さらに、本実施形態によるリーダ/ライタでは、タイムアウトが発生すると一定時間送信が停止されるため、無線タグが、異なるチャネルにより送信される信号を異なるリーダ/ライタから同時に受信することにより通信不能状態となる場合(リーダ/ライタ・タグ間干渉)についても回避することができる。
【0113】
さらに、タイムアウトが検出される度に長くなるようにタイムアウト時間が更新されるため、タイムアウト回数(送信待ち回数)が増える度に送信機会を得る確率が大きくなる
ように制御される。よって、無線タグにおける干渉の回避を実現しつつ、リーダ/ライタ間で公平に送信機会が得られるようになる。
【0114】
〈変形例〉
上述の第二実施形態では、タイムアウトが検出される度に長くなるようにタイムアウト時間が更新されるが、リーダ/ライタの送信するデータ毎に優先度を設け、その優先度に応じてタイムアウト時間を決定するようにしてもよい。例えば、データの優先度が高い場合には、タイムアウト時間が長くなるように制御される。また、リーダ/ライタ毎に優先度を設けるようにしてもよい。
【0115】
これにより、送信する信号の優先度、若しくは、リーダ/ライタの優先度に応じて送信機会が割り当てられるようになる。
【0116】
[その他]
本実施形態は次の発明を開示する。各項に開示される発明は、必要に応じて可能な限り組み合わせることができる。
【0117】
(付記1)
無線タグと信号を送受する質問器において、
前記無線タグとの通信で用いられる複数のチャネルのうち空きチャネルを検出するキャリアセンス部と、
前記検出された空きチャネルを用いて前記無線タグへ信号を送信する送信部と、
前記無線タグとの通信における通信異常を検知する異常検知部と、
前記通信異常が検知された場合に、前記無線タグへの送信を中断し、所定の送信休止時間経過後に再度空きチャネルを検出し、該検出された空きチャネルを用いて無線タグへの信号送信を再開するよう制御する制御部と、
を備える質問器。
【0118】
(付記2)
前記異常検知部は、前記通信異常を前記無線タグへの信号の送信開始時点から所定のタイムアウト時間内に検知する、付記1記載の質問器。
【0119】
(付記3)
前記制御部は、
前記タイムアウト時間を前記無線タグへの送信の優先度に応じて変更する変更部を更に有し、
前記異常検知部は、
前記無線タグとの通信における異常が前記タイムアウト時間の間継続する場合に通信異常と検知する、
付記1記載の質問器。
【0120】
(付記4)
前記変更部は、前記通信異常が検知された場合の送信中断の回数に応じて前記送信の優先度を決定する、付記3記載の質問器。
【0121】
(付記5)
前記変更部は、前記通信異常が検知された場合の送信中断の回数が多くなるほど前記送信の優先度を上げ、前記優先度が高くなるほど前記タイムアウト時間が長くなるようにする、
付記4記載の質問器。
【0122】
(付記6)
前記制御部は、前記無線タグへの連続送信時間が所定の最大連続送信時間を越える場合に、前記無線タグへの送信を終了するよう制御し、前記送信休止時間を前記最大連続送信時間と同程度の長さとする、
付記1記載の質問器。
【0123】
(付記7)
無線タグと信号を送受する質問器におけるデータ通信方法であって、
前記無線タグとの通信で用いられる複数のチャネルのうち空きチャネルを検出するステップと、
前記検出された空きチャネルを用いて前記無線タグへ信号を送信するステップと、
前記無線タグとの通信における通信異常を検知する異常検知ステップと、
前記通信異常が検知された場合に、前記無線タグへの送信を中断し、所定の送信休止時間経過後に再度空きチャネルを検出し、該検出された空きチャネルを用いて無線タグへの信号送信を再開するよう制御する制御ステップと、
を備えるデータ通信方法。
【0124】
(付記8)
前記異常検知ステップは、前記通信異常を前記無線タグへの信号の送信開始時点から所定のタイムアウト時間内に検知する、付記7記載のデータ通信方法。
【0125】
(付記9)
前記制御ステップは、
前記タイムアウト時間を前記無線タグへの送信の優先度に応じて変更する変更ステップを更に有し、
前記異常検知ステップは、
前記無線タグとの通信における異常が前記タイムアウト時間の間継続する場合に通信異常と検知する、
付記7記載のデータ通信方法。
【0126】
(付記10)
前記変更ステップは、前記通信異常が検知された場合の送信中断の回数に応じて前記送信の優先度を決定する、付記9記載のデータ通信方法。
【0127】
(付記11)
前記変更ステップは、前記通信異常が検知された場合の送信中断の回数が多くなるほど前記送信の優先度を上げ、前記優先度が高くなるほど前記タイムアウト時間が長くなるようにする、
付記10記載のデータ通信方法。
【0128】
(付記12)
前記制御ステップは、前記無線タグへの連続送信時間が所定の最大連続送信時間を越える場合に、前記無線タグへの送信を終了するよう制御し、前記送信休止時間を前記最大連続送信時間と同程度の長さとする、
付記7記載のデータ通信方法。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】RFIDリーダ/ライタの装置構成を示すブロック図である。
【図2】第一実施形態におけるリーダ/ライタの送信制御の概要を示す図である。
【図3】第一実施形態におけるリーダ/ライタの送信制御処理フローを示す図である。
【図4】第二実施形態におけるリーダ/ライタの送信制御の概要(2台の場合)を示す図である。
【図5】第二実施形態におけるリーダ/ライタの送信制御の概要(3台の場合)を示す図である。
【図6】第二実施形態におけるリーダ/ライタの送信制御処理フローを示す図である。
【図7】複数のリーダ/ライタ設置時の干渉を示す図である。
【図8】送信時間とキャリアセンスを示す図である。
【図9】従来のリーダ/ライタの送信制御処理フローを示す図である。
【符号の説明】
【0130】
10 アンテナ
100、1001、1002 RFIDリーダ/ライタ
101 マイクロプロセッサ(MPU)
102 局部発振器
103 共用器
105 制御部
106 タイマ(TIMER)
107 送受信処理部
108 キャリアセンス処理部
109 異常処理部
110 送信部
111 符号化部
112 AM変調部
113 フィルタ部
114 アップコンバータ部
115 アンプ部
120 受信部
121 復号化部
122 AM復調部
123 フィルタ部
124 ダウンコンバータ部
125 アンプ部
1003、1004 無線タグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線タグと信号を送受する質問器において、
前記無線タグとの通信で用いられる複数のチャネルのうち空きチャネルを検出するキャリアセンス部と、
前記検出された空きチャネルを用いて前記無線タグへ信号を送信する送信部と、
前記無線タグとの通信における通信異常を検知する異常検知部と、
前記通信異常が検知された場合に、前記無線タグへの送信を中断し、所定の送信休止時間経過後に再度空きチャネルを検出し、該検出された空きチャネルを用いて無線タグへの信号送信を再開するよう制御する制御部と、
を備える質問器。
【請求項2】
前記異常検知部は、前記通信異常を前記無線タグへの信号の送信開始時点から所定のタイムアウト時間内に検知する、請求項1記載の質問器。
【請求項3】
前記制御部は、
前記タイムアウト時間を前記無線タグへの送信の優先度に応じて変更する変更部を更に有し、
前記異常検知部は、
前記無線タグとの通信における異常が前記タイムアウト時間の間継続する場合に、通信異常と検知する、
請求項1記載の質問器。
【請求項4】
前記変更部は、前記通信異常が検知された場合の送信中断の回数に応じて前記送信の優先度を決定する、請求項3記載の質問器。
【請求項5】
前記制御部は、前記無線タグへの連続送信時間が所定の最大連続送信時間を越える場合に、前記無線タグへの送信を終了するよう制御し、前記送信休止時間を前記最大連続送信時間と同程度の長さとする、
請求項1記載の質問器。
【請求項6】
無線タグと信号を送受する質問器におけるデータ通信方法であって、
前記無線タグとの通信で用いられる複数のチャネルのうち空きチャネルを検出するステップと、
前記検出された空きチャネルを用いて前記無線タグへ信号を送信するステップと、
前記無線タグとの通信における通信異常を検知する異常検知ステップと、
前記通信異常が検知された場合に、前記無線タグへの送信を中断し、所定の送信休止時間経過後に再度空きチャネルを検出し、該検出された空きチャネルを用いて無線タグへの信号送信を再開するよう制御する制御ステップと、
を備えるデータ通信方法。
【請求項7】
前記異常検知ステップは、前記通信異常を前記無線タグへの信号の送信開始時点から所定のタイムアウト時間内に検知する、請求項6記載のデータ通信方法。
【請求項8】
前記制御ステップは、
前記タイムアウト時間を前記無線タグへの送信の優先度に応じて変更する変更ステップを更に有し、
前記異常検知ステップは、
前記無線タグとの通信における異常が前記タイムアウト時間の間継続する場合に、通信異常と検知する、
請求項6記載のデータ通信方法。
【請求項9】
前記変更ステップは、前記通信異常が検知された場合の送信中断の回数に応じて前記送信の優先度を決定する、請求項8記載のデータ通信方法。
【請求項10】
前記制御ステップは、前記無線タグへの連続送信時間が所定の最大連続送信時間を越える場合に、前記無線タグへの送信を終了するよう制御し、前記送信休止時間を前記最大連続送信時間と同程度の長さとする、
請求項6記載のデータ通信方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−67621(P2007−67621A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−248988(P2005−248988)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】