説明

SAP変異体及びその使用

ポリペプチドは、血液、肝臓、又は腎臓において、変性作用や酵素分解を受けやすい。幾つかのポリペプチドではその安定性が低いことが原因となって、効能のある物質について血漿中での有効濃度を維持するために、ポリペプチド薬剤を継続して患者に投与することが必要であった。更に、治療用ペプチドの医薬的組成物は、通常の使用に適するべく、有効期限が数年であることが好ましい。しかし、ペプチド組成物は、化学的又は物理的な変性・分解を受けやすいため本来不安定である。一側面において、本発明は、ヒトSAPと比べて、長くなったインビボ半減期、延長された有効期限、又はより上昇したインビトロ安定性、又は上昇した製造効率を有するSAP変異体の蛋白質、組成物、医薬製剤、及び配合物を提供する。長くなったプラズマ半減期の利点として、投与量及び/又は投与頻度の減少が含まれるがこれらに限定されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願へのクロスリファレンス
本出願は、米国仮特許出願61/268,961(出願日2009年6月17日)の利益を主張するものである。前記関連出願で教示した内容については、全て本明細書に組み込むものとする。
【背景技術】
【0002】
血清アミロイドP(SAP)は、ペントラキシンファミリー蛋白質のメンバーである。SAPは肝臓によって分泌され、安定ペンタマーとして血液中を循環する。これまでの研究によると、SAPは、免疫反応の開始及び収束(resolution)の両段階において重要な役割を果たすことが示されている。SAPは細菌の表面にある糖残基に結合し、それによって抗原提示細胞によるオプソニン化及び取り込みを促進することができる。また、SAPは、免疫反応の収束時のアポトーシス細胞で発生した遊離DNA及びクロマチンにも結合し、従ってこれらの抗原に対する二次炎症性反応を防ぐ。全三つの典型的なFcγ受容体(FcγR)に結合するというSAPの能力によって、SAPが結合した分子は細胞外領域から除去される。該受容体は、FcγRII(CD32)及びFcγRIII(CD16)に対して特に親和性を有する。受容体に結合した後、SAP及び任意の結合複合体は、一般的に細胞によって取り込まれ、そして処理される。
【0003】
近年、様々な病気を治療するための治療用薬剤としてSAPを用いることが提案されて来ており、該病気としては、線維症関連の病気、過敏症、自己免疫疾患、粘膜炎及び微生物感染等による炎症性疾患が含まれる。例えば、米国特許出願11/707,333、12/217,617、12/720,845及び12/720,847を参照されたい。ヒトの病気を治療するための蛋白質治療薬は、ヘルスケア産業に革命をもたらしてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願第11/707,333号明細書
【特許文献2】米国特許出願第12/217,617号明細書
【特許文献3】米国特許出願第12/720,845号明細書
【特許文献4】米国特許出願第12/720,847号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、治療用薬剤として有用であるための必要な効能及び/又は充分な量を有する蛋白質治療剤を生成することについては多くの困難が存在する。可能性を有する多くの治療用薬剤は、天然由来の蛋白質と比べて、その生物学的活性(例えば、プラズマ半減期)を増強するべく改変される。通常、組換え発現技術は、充分な量のポリペプチドを生成するために実施される。残念ながら、多くの組換えシステムは、天然由来の形態とは異なった生物学的特性を有するポリペプチドを生成し、そのことにより薬物速度論、安全性、及び治療用製品の効果に影響を及ぼす可能性がある。
【0006】
従って、ヒトの治療に適したSAPポリペプチドの開発に関するニーズが依然として残っている。
【0007】
本発明の概要
一側面において、本開示内容は血清アミロイドP(SAP)変異体及びSAPオリゴマーを提供する。特定の態様において、本開示内容は、以下の変異体を提供する:5つのSAPプロモーターを含むSAP変異体であって、各前記SAPプロモーターが、SEQ ID NO:1と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有し、且つ少なくとも1つの前記SAPプロモーターは、血清由来ヒトSAPの対応サンプルと比べて、前記SAP変異体の生物学的活性を変える1以上のアミノ酸化学的改変(修飾)を有する該変異体。好ましい態様において、変異体SAPプロモーターは、以下の特徴を有する少なくとも1種のアミノ酸改変を含む:SEQ ID NO:1に対する1以上の変異体アミノ酸の存在;SEQ ID NO:1に対して1以上のアミノ酸の欠損;1以上のアミノ酸に関する改変部分への結合(例えば、PEG部分、デキストラン部分など);又はこれらの組合せ。幾つかの実施形態において、前記SAP変異体は、ヒトSAP蛋白質の変異体である。幾つかの実施形態において、1以上の前記SAPプロモーターは、SEQ ID NO:1と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも100%同一のアミノ酸配列を有する。好ましい実施形態において、本発明のSAP変異体は、長くなったプラズマ半減期(血漿半減期)、上昇したインビトロ安定性、又は上昇したインビボ安定性のうち1以上から選択される変更された生物学的活性を有する。幾つかの実施形態において、本開示内容のSAP変異体は、前記SAP蛋白質の製造効率の上昇を特徴とする(例えば、前記蛋白質生成物をより多く生成すること、前記蛋白質生成物の均一性を上昇させること、前記蛋白質生成物の安定性を上昇させること)。
【0008】
特定の態様において、本開示内容は、N結合型グリカン又はO結合型グリカンを実質的に有さない1以上のSAPプロモーターを含むSAP変異体を提供する。幾つかの実施形態において、SAPプロモーターは、N結合型グリカンの結合を妨げるアミノ酸改変をSEQ ID NO:1の32番目の位置において含む。幾つかの実施形態において、少なくとも1つのSAPプロモーターにおいて、SEQ ID NO:1の32番目の位置のアミノ酸がアスパラギン(N)以外である。好ましい実施形態において、少なくとも1つのSAPプロモーターにおいて、SEQ ID NO:1の32番目の位置のアミノ酸が、アスパラギン酸(D)、グルタミン(Q)、又はグルタミン酸(E)である。
【0009】
特定の態様において、本開示内容は、血清由来ヒトSAPの対応サンプルと比べて、プロテアーゼ切断耐性がより強いSAP変異体を提供する。幾つかの実施形態において、本開示内容のSAP変異体は、セリンプロテアーゼ、スレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、金属プロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ、又はこれらの組合せによるプロテアーゼ切断耐性がより強い。ある実施形態において、本開示内容は、キモトリプシン、トリプシン、プロナーゼ、又はこれらの組合せによるプロテアーゼ切断耐性がより強いSAP変異体を提供する。幾つかの実施形態において、プロテアーゼ耐性であるSAP変異体は、SEQ ID NO:1の144番目の位置のアミノ酸がフェニルアラニン(F)以外である少なくとも1つのSAPプロモーターを含む。好ましい実施形態において、プロテアーゼ耐性であるSAP変異体は、SEQ ID NO:1の145番目の位置のアミノ酸がアスパラギン酸(D)以外である少なくとも1つのSAPプロモーターを含む。幾つかの実施形態において、プロテアーゼ耐性であるSAP変異体は、SEQ ID NO:1の144番目の位置のアミノ酸がフェニルアラニン(F)以外であり、且つSEQ ID NO:1の145番目の位置のアミノ酸がアスパラギン酸(D)以外である少なくとも1つのSAPプロモーターを含む。好ましい実施形態において、プロテアーゼ耐性であるSAP変異体は、SEQ ID NO:1の144番目の位置がロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、又はアラニン(A)である少なくとも1つのSAPプロモーターを含む。好ましい実施形態において、プロテアーゼ耐性であるSAP変異体は、SEQ ID NO:1の145番目の位置がグルタミン酸(E)である少なくとも1つのSAPプロモーターを含む。
【0010】
特定の態様において、本開示内容は、血清由来ヒトSAPの対応サンプルと比べて、カルシウム依存性自己凝集に対する耐性がより強いSAP変異体を提供する。幾つかの実施形態において、カルシウム依存性自己凝集に対して耐性であるSAP変異体は、SEQ ID NO:1の167番目の位置のアミノ酸がグルタミン酸(E)である少なくとも1つのSAPプロモーターを含む。好ましい実施形態において、カルシウム依存性自己凝集に対して耐性であるSAP変異体は、SEQ ID NO:1の167番目の位置が、アスパラギン酸(D)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、アラニン(A)、又はヒスチジン(H)である少なくとも1つのSAPプロモーターを含む。
【0011】
特定の態様において、本開示内容は、1種以上の不活性ポリマーと共有結合した1以上のアミノ酸を含む少なくとも1つのSAPプロモーターを含むSAP変異体を提供する。幾つかの実施形態において、前記少なくとも1種の不活性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)部分である。ある実施形態において、1以上の前記SAPプロモーターは、SEQ ID NO:1に対して、少なくとも1つの天然(native)又は変異体(例えば、アミノ酸の置換、付加、又は削除)であるシステイン(C)を含み、該システインは、結合したPEG部分を有する。好ましい実施形態において、1以上の前記SAPプロモーターは、変異体システイン(C)を含み、該システインは、SEQ ID NO:1のN末端に位置しており、且つ結合したPEG部分を有する。他の実施形態では、1以上の前記SAPプロモーターは、SEQ ID NO:1に対して、少なくとも1つの天然又は変異体(Q)を含み、該Qは、結合したPEG部分を有する。好ましい実施形態において、1以上の前記SAPプロモーターは、SEQ ID NO:1の32番目の位置において、結合したPEG部分を有するグルタミン(Q)を含む。幾つかの実施形態において、前記SAP変異体は、PEG部分と結合した1以上のシステイン(C)残基、及びPEG部分と結合した1以上のグルタミン(Q)残基を含む少なくとも1つのSAPプロモーターを含む。幾つかの実施形態において、前記少なくとも1種の不活性ポリマーは、デキストラン部分である。ある実施形態において、1以上の前記SAPプロモーターは、SEQ ID NO:1に対して、天然又は変異体であるグルタミン(Q)残基を含み、該残基は、結合したデキストラン部分を有する。好ましい実施形態において、1以上の前記SAPプロモーターは、SEQ ID NO:1の32番目の位置において結合したデキストラン部分を有する天然グルタミン残基を含む。ある実施形態において、前記SAP変異体は、PEG部分と結合した1以上のアミノ酸及びデキストラン部分と結合した1以上のアミノ酸を含む少なくとも1つのSAPプロモーターを含む。
【0012】
特定の態様において、本開示内容は、少なくとも2つの、少なくとも3つの、少なくとも4つの、又は少なくとも5つの異なる本明細書に記載の変異体SAPプロモーターを含むSAP変異体を提供する。
【0013】
特定の態様において、本開示内容は、少なくとも2つのSAPペンタマーを含む共有結合的に架橋したSAPオリゴマーを提供する(ここで、各SAPペンタマーは、5つのSAPプロモーターを含む)。本発明のSAPオリゴマーは、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列と、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも100%同一であるSAPプロモーターを含むことができる。従って、本発明のSAPオリゴマーは、少なくとも1つの、少なくとも2つの、少なくとも3つの、少なくとも4つの、少なくとも5つの、少なくとも6つの、少なくとも7つの、少なくとも8つの、少なくとも9つの、又はそれより多くの本明細書に記載のSAP変異体プロモーターを含むことができる。幾つかの実施形態において、本発明のSAPオリゴマーは、少なくとも2つの、少なくとも3つの、少なくとも4つの、少なくとも5つの、少なくとも6つの、少なくとも7つの、少なくとも8つの、少なくとも9つの、又はそれより多くの本明細書に記載の異なったSAP変異体プロモーターを含むことができる。好ましい実施形態において、本発明の架橋SAPオリゴマーは、ヒト血清から単離したSAPの対応サンプルと比べて、長くなったプラズマ半減期、上昇したインビトロ安定性、及び上昇したインビボ安定性のうち1以上を有することを特徴とする。
【0014】
特定の態様において、前記SAPオリゴマーは、1種以上の化学架橋剤を通して共有結合したSAPペンタマーを含む。ある実施形態において、少なくとも1種の化学架橋剤は、以下から選択されるヘテロ二官能性剤である:スクシンイミジル 4−(N−マレイミドメチル) シクロヘキサン−1−カルボキシレート、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミド エステル、N−スクシンイミジル (4−ヨードアセチル) アミノベンゾエート、スクシンイミジル 4−(p−マレイミドフェニル) ブチレート、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル) カルボジイミド 塩酸 、4−スクシンイミジルオキシカルボニル−α−メチル−α(2−ピリジルジチオ)−トルエン、N−スクシンイミジル 3−(2−ピリジルジチオ) プロピオネート、又はスクシンイミジル 6−((3−(2−ピリジルジチオ) プロピオネート) ヘキサノエート。ある実施形態において、少なくとも1種の前記化学架橋剤は、以下から選択されるホモ二官能性剤である:ジスクシンイミジル スベリン酸、ビスマレイミドヘキサン、又はジメチルピメルイミデート−2 HCl。ある実施形態において、少なくとも1種の前記化学架橋剤は、以下から選択される光反応剤である:ビス−(β−(4−アジドサリチルアミド)エチル)ジスルフィド、又はN−スクシンイミジル−6−(4’−アジド−2’−ニトロフェニルアミノ)ヘキサノエート。
【0015】
特定の態様において、本開示内容は、ほ乳類での使用に適した医薬製剤であって、且つ1以上のSAP変異体、及び/又は共有結合的に架橋したSAPオリゴマーを含む医薬製剤を提供する。本発明の医薬製剤は、本明細書に記載した少なくとも1種のSAP変異体及び/又は共有結合的に架橋したSAPオリゴマー、並びに医薬的に適用可能なキャリアを含む。幾つかの実施形態において、前記医薬製剤は、更に追加の有効成分を含む。幾つかの実施形態において、前記医薬製剤は、持続放出性配合物として調製される。幾つかの実施形態において、本開示内容の医薬製剤は、注入、静脈注射、吸入、継続的デポ注射(continuous depot)、又はポンプにより局所的に患者(被験者)に投与するのに適している。
【0016】
本開示内容は、更に以下の方法を提供する:SAP応答性の異常又は症状を治療又は予防する方法であって、1種以上の本発明のSAP変異体及び/又はSAPオリゴマーを、該治療又は予防を必要とする患者に、治療上有効量投与することを含む該方法。SAP応答性の異常又は症状としては、以下のものが含まれるが、これらに限定されない:線維性又は線維増殖性の異常又は症状、過敏性の異常又は症状、自己免疫性の異常又は症状、及び粘膜炎。本発明のSAP変異体及び/又はSAPオリゴマーは、注入、静脈注射、吸入、継続的デポ注射、若しくはポンプ、又はこれらの組合せにより局所的に投与することができる。幾つかの実施形態において、本発明のSAP変異体及び/又はSAPオリゴマーは、1種以上の追加の有効成分とともに投与される。ある実施形態において、前記SAP変異体及び/又はオリゴマーは、共投与するために配合される。前記SAP変異体及び/又はオリゴマーは、分離形態で共投与することができ、又は組み合せた配合物で共投与することができる。前記SAP変異体及び/又はオリゴマーは、同時に投与することができ、又は異なる投与スケジュールで投与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】配列SEQ ID NO:1に対するアミノ酸置換E167Qを含むSAP変異体は、非改変の組み換え型ヒトSAP(rhSAP)の対応サンプルと比べると、カルシウム介在性の自己凝集に対する耐性が強い。SAPを含む溶液に、段階的に増加させた特定量のカルシウムを追加した。SAP凝集の量については、分光光度計を用いて600nmでの溶液の吸光度を測定することによって観察した。
【図2】配列SEQ ID NO:1に対するアミノ酸置換E167Qを含むSAP変異体は、非改変の組み換え型ヒトSAP(rhSAP)の対応サンプルと比べると、同様のプラズマ半減期を有する。ラットにSAPを投与した(ラット1匹あたりの投与量 1mg/kg 静脈(i.v.)、n=3)。SAP蛋白質の血漿濃度(μg/ml)について、24時間にわたって変化を評価した。
【図3】配列SEQ ID NO:1に対するSAP変異体E167Q及びSAP変異体N32Dは、非改変の組み換え型ヒトSAP(rhSAP)の対応サンプルと比べると、少なくとも同じくらい活性がある。単球リッチな末梢血単核球(PBMC)をSAP濃度を変化させてインキュベートした。インキュベーション後、結果物である培養上澄み液を除去し、ELISAアッセイを行い、マクロファージ由来ケモカイン(MDC)の産生量を定量した。
【図4】SAP変異体N32Dのプラズマ半減期は、野生型rhSAPのプラズマ半減期と類似している。一方で、アシアロ形態のhSAPのプラズマ半減期は、非改変の組み換え型ヒトSAP(rhSAP)の対応サンプルと比べると、有意に減少している。ラットにSAPを投与した(ラット1匹あたりの投与量 1mg/kg 静脈(i.v.)、n=3)。SAP蛋白質の血漿濃度(μg/ml)について、24時間にわたって変化を評価した。
【図5】PEGがrhSAPに共有結合する化学反応を表している。
【図6】陰イオン交換クロマトグラフィーによって、反応構成物からPEG化rhSAPを精製した。クロマトグラフィーカラムからの画分(Fraction)をプール(pooled)して、SDS−PAGE分析を行う前に濃縮した。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
概要
血清アミロイドP(「SAP」)は、ほ乳類における天然由来の血清蛋白質であり、ペントラキシンファミリーのメンバーである構造的に関連するタンパク質である。該タンパク質は、125,000ダルトンの糖蛋白質として肝臓で生成され、血清中の生理学的半減期が24時間である。SAPは5つの同一サブユニット又は「プロモーター」から構成され、これらのサブユニット又は「プロモーター」は、ディスク状分子中で非共有結合している。SAPプロモーターは、2つの「プロモーターインターフェース」を介して互いに非共有結合している。サブユニット1由来のプロモーターインターフェース1は、サブユニット2由来のプロモーターインターフェース2と結合している。サブユニット2由来のプロモーターインターフェース1は、サブユニット3由来のプロモーターインターフェース2と結合している等。各プロモーターは、FcγRと結合可能な「A面」(”A−face”)と、カルシウム結合及びカルシウム媒介リガンド結合を媒介する向かいの「B面」(”B−face”)とを露出している。イオン性のカルシウム濃度が高いと、SAPは、凝集してアミロイドP成分として沈殿する。該沈殿物は、糸球体基底膜、並びにヒトの皮膚、子宮頚管(cervix)、睾丸(testis)、及び胎盤組織における通常の構成成分である。以下の文献を参照されたい:Baltz, M. L., et al., Clin. Exp. Immunol., 66:691−700 (1986); Dyck, R. F., et al., J. Exp. Med., 152:1162−1174 (1980); Melvin, T., Am. J. Pathol., 125:460−464 (1986); Breathnach, S. M., J. Invest. Derm., 92:53−58 (1989); Clayton, J., Cell. Pathol., 43:63−66 (1983); Herriut, R., et al., J. Pathol., 157:11−14 (1989); Khan, A. M., et al., Placenta, 6:551−554 (1985)。ヒトSAPプロモーターの成熟配列は、以下に表されるとおりである(アミノ酸 20−223 Genbank Accession No. NP_001630; シグナル配列は記載していない)。
【0019】
HTDLSGKVFVFPRESVTDHVNLITPLEKPLQNFTLCFRAYSDLSRAYSLFSYNTQGRDNELLVYKERVGEYSLYIGRHKVTSKVIEKFPAPVHICVSWESSSGIAEFWINGTPLVKKGLRQGYFVEAQPKIVLGQEQDSYGGKFDRSQSFVGEIGDLYMWDSVLPPENILSAYQGTPLPANILDWQALNYEIRGYVIIKPLVWV (SEQ ID NO:1)
【0020】
通常の創傷治癒過程、並びに線維症を引き起こす無制御のイベントには、線維芽細胞の増殖及び分化並びに細胞外マトリックスの沈着を伴う。これら線維芽細胞が局所的に発生するのか、又は循環する前駆体群から発生するのかは不明である。線維細胞、線維細胞前駆体、筋線維芽細胞前駆体、及び造血単球前駆体は、末梢血単核球に由来する固有の群である繊維芽細胞様細胞に属している。これらの細胞は、組織の損傷部位に移動して血管形成及び創傷治癒を促進することができる。血清又は血漿が存在しない状態で培養したCD14+末梢血単核球は72時間内に線維細胞に分化する。SAPは、線維細胞、線維細胞前駆体、筋線維芽細胞前駆体、及び/又は造血単球前駆体の分化を、血清と同様のレベルで阻害することが近年示された。一方で、SAPが欠乏した血漿では、単球が線維細胞、線維細胞前駆体、筋線維芽細胞前駆体、及び/又は造血単球前駆体への分化を阻害する能力が減少している。リューマチ性関節炎、強皮症、混合性結合組織病、及び特定の全身性線維性の病気を患った患者由来の血清は、健康な個体に由来する血清と比べると、線維細胞、線維細胞前駆体、筋線維芽細胞前駆体、及び/又は造血単球前駆体へのインビトロでの分化を阻害する効能が減少している。従って、健康な被験者で観察されるものと比べると、これらの病気に罹患している患者達においては、SAPの血清でのレベルが有意に低くなっている。こうした結果は、SAPが異常な低レベルになることにより、繊維症へつながる病理学上の進行が加速される可能性があることを示している。また、これらの結果は、慢性的な炎症性の症状において、線維症を予防するために、SAPが治療用薬剤として有用である可能性を示している。近年、様々な他の異常を治療するための治療用薬剤として、SAPを使用できることが示唆されてきている。前記異常としては、繊維症に関連した異常、過敏性の異常、自己免疫性の異常、粘膜炎、及び炎症性の異常(例えば、微生物感染によって引き起こされる異常)が含まれる。例えば、以下の文献を参照されたい:米国特許出願番号11/707,333、12/217,617、12/720,845、及び12/720,847。
【0021】
ポリペプチドは、血液、肝臓、又は腎臓において、変性作用や酵素分解を受けやすい。幾つかのポリペプチドではその安定性が低いことが原因となって、効能のある物質について血漿中での有効濃度を維持するために、ポリペプチド薬剤を継続して患者に投与することが必要であった。更に、ポリペプチド薬剤は注入によって投与されるのが普通であるため、ポリペプチド薬剤を頻繁に注入することは、患者に対して深刻な不快感を及ぼす可能性がある。従って、高い薬理学的効果を維持しつつ、血液内の循環半減期が長いポリペプチド薬剤を開発するために多くの研究がなされてきた。よって、本開示内容の主な目的は、ヒトSAPと比べてインビボ半減期が延長されたSAP変異体、組成物、医薬製剤及び配合物を提供することにある。プラズマ半減期が上昇することの利点としては、投与量及び投与頻度の減少が含まれるが、これに限定されない。
【0022】
更に、治療用ペプチドの医薬的組成物は、通常の使用に適するべく、有効期限が数年であることが好ましい。しかし、ペプチド組成物は、化学的又は物理的な変性・分解を受けやすいため本来不安定である。
【0023】
化学的変性・分解の例としては、酸化、加水分解、ラセミ化、又は架橋を含む共有結合の変化が含まれるがこれらに限定されない。物理的変性・分解の例としては、生来のペプチドの構造と比べてコンフォメーション変化することが挙げられ、該変化によって、ポリペプチドが表面に凝集、沈殿、又は吸着する可能性がある。従って、本開示内容の更なる目的は、ヒトSAPと比べて、有効期限が延長された、又はインビトロ安定性がかなり上昇したSAP変異体、組成物、医薬製剤及び配合物を提供することにある。製造プロセスの最中、生成物の特徴(例えば、翻訳後の改変(修飾)及び/又はフォールディング)において再現性の高い一貫性を有するタンパク質を大量に生成することが困難になることがよくある。幾つかの実施形態において、本開示内容のSAP変異体は、特にインビボ使用の用途(例えば治療要薬剤として)において、SAP蛋白質の製造効率(例えば、蛋白質生成物生成量の増加、蛋白質生成物の均一性の上昇、蛋白質生成物の安定性の上昇)が上昇していることを特徴とする。
【0024】
定義
別途規定しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語については、当業者が通常理解する意味と同じ意味である。概して言うと、本明細書中で使用される命名法、並びに細胞培養、分子遺伝学、有機化学、並びに核酸化学及びハイブリダイゼーションにおける研究手法については、当分野で周知・慣用である。核酸合成及びペプチド合成については、標準的な技術を用いる。技術及び手法については、概して、当分野での従来の方法や種々の一般的な参考文献に従って実践した(例えば、Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2d ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.)。これらについては本明細書中で後述する。
【0025】
本明細書中で使用される冠詞「a」及び「an」は、文法的な冠詞の対象について1つ又は複数の物(即ち、1以上)を意味する(即ち、本明細書において、特に規定しない限りは単数又は複数を意味する)。例えば、「an element」は1つの元素又は複数の元素を意味する。
【0026】
本明細書中で使用される用語「治療」(“treatment”及び“treating”)等は、所望の薬理学的又は生理学的な効果を得ることを意味する。前記効果については、病気(異常)若しくは症状を完全若しくは部分的に予防するという意味で予防的なものであってもよく、並びに/又は、病気及び/若しくは該病気による悪影響を完全若しくは部分的に治すという意味で治療的なものであってもよい。本明細書中で使用される「治療」は、哺乳類、特にヒトでの病気に対する任意の治療を含み、例えば以下のものが含まれる:(a)生存期間の延長;(b)病気による死亡リスクの低減;(c)病気にかかる可能性があるがまだ病気に罹患していると診断されてはいない患者において病気が発生するリスクの低減;(d)病気の阻害、即ち病気の進行の停止(例えば病気の進行速度の低減);及び(e)病気の緩和、即ち、病気の退行の誘発。
【0027】
本明細書中で使用される用語であって、異常又は症状を「阻害」又は「予防」する治療剤については、統計学的サンプルにおいて以下のような機能を有する化合物を意味する:(1)非治療コントロール・サンプルと比べて、治療サンプルにおいて異常又は症状の発生を抑制;又は、(2)非治療コントロール・サンプルと比べて、治療サンプルにおいて、異常又は症状の1以上の発症を遅延又は発病度合いの低減。
【0028】
本明細書中で使用される用語「被験者」及び「患者」(“subject” and “patient”)は、哺乳類を含めた動物を意味し、例えばヒト等が挙げられる。用語「哺乳類」については、霊長類、飼いならされた動物(例えば、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ヤギ、ブタ、マウス、ラット、ウサギ、ギニア・ピッグ、動物園などの檻にいる動物)及び野生動物が含まれる。
【0029】
本明細書中で使用される用語「組織」は、器官、又は専門化された細胞群(例えば、皮膚組織、肺組織、腎臓組織、及び他のタイプの細胞群)を意味する。
【0030】
用語「治療効果」は、当分野で理解される用語であり、動物(具体的には哺乳類、より具体的にはヒト)において、薬理学的に活性のある物質で引き起こされる局所的又は全身的な効果を意味する。語句「治療上有効量」とは、任意の治療に適用できる合理的な利点/リスクの割合において、ある所望の局所的又は全身的な効果をもたらす物質等の量を意味する。こうした物質の治療上有効量は、治療する患者及び病状、該患者の体重及び年齢、病状の度合い、投与形態等に依存して変動するであろう。そして、当業者は容易に治療上有効量を決定することができる。例えば、本明細書で記述する特定の組成物は、前述の治療に適用できる合理的な利点/リスクの割合において、所望の効果を生み出すのに充分な量で、投与することができる。
【0031】
本明細書中で使用される用語「核酸」は、ポリヌクレオチドを意味し、例えば、デオキシリボ核酸(DNA)、及び、適すれば、リボ核酸(RNA)がある。また、該用語は以下のものを含むものとして理解されたい:均等物としては、ヌクレオチド類似体から製造されたRNA又はDNAのいずれかの類似体;及び記述された実施形態に適用可能な物として、1本鎖ポリヌクレオチド(例えば、センス鎖又はアンチセンス鎖)及び2本鎖ポリヌクレオチド。
【0032】
用語「ペプチド」、「蛋白質」、及び「ポリペプチド」は、本明細書中では、相互に変換可能に使用される。用語「精製蛋白質」は、1種類の蛋白質又は複数種類の蛋白質が調製された物を意味し、好ましくは、細胞又は細胞溶解産物中の蛋白質(複数可)に通常関連している他の蛋白質から単離された物、又は該他の蛋白質を実質的に有さない物を意味する。用語「他の細胞蛋白質を実質的に有さない」又は「他の混入蛋白質を実質的に有さない」は、混入蛋白質が(乾燥重量で)20%未満しか含まれない各蛋白質の個々の調製物、好ましくは5%未満しか含まれない調製物を含むものとして定義される。各蛋白質の機能的な形態については、当分野で公知のクローニングされた遺伝子を用いた精製調製物として調製することができる。「精製された」とは、他の蛋白質等(特には、対象となる再構築された混合物において、精製された調製物としての構成蛋白質の特性、又はその機能においての構成蛋白質の特性のいずれかを実質的にマスキングしたり、消失させたり、混乱させたり、又は変化させたりすることができる他の蛋白質)の他の生物学的巨大分子が実質的に存在していない状態で記載の分子が存在することを意味する。本明細書中で使用される用語「精製された」は、好ましくは少なくとも乾燥重量で80%、より好ましくは85重量%の範囲、さらに好ましくは95−99重量%、そして、最も好ましくは少なくとも99.8重量%で同タイプの生体巨大分子が存在することを意味する(ただし、水、バッファー、又は他の小分子(特に分子量が5000未満の分子)については存在しても良い)。本明細書中で使用される「純粋な」とは、好ましくは前述の用語「精製された」と同一の数値限界を有する。
【0033】
本明細書中で使用される用語「半減期」又は「プラズマ半減期」(血漿半減期)は、患者(被験者)にペプチド薬を投与するという文脈においては、患者における薬剤の血漿濃度を半分にするのに必要な時間として定義される。「半減期」に関する更なる説明については、Pharmaceutical Biotechnology (1997, DFA Crommelin and RD Sindelar, eds., Harwood Publishers, Amsterdam, pp 101 120)を参照されたい。
【0034】
SAP変異体及びSAPオリゴマー
(ii)SAP変異体蛋白質
一側面において、本開示内容は、血清アミロイドP(SAP)変異体蛋白質を提供する。用語「SAP変異体」は、5つのSAPサブユニット又は「プロモーター」を含むSAP蛋白質を意味する。好ましい態様において、SAP変異体は、少なくとも1つのSAP蛋白質生物学的活性を改変する1以上のアミノ酸改変を有する少なくとも1つのSAPプロモーター(すなわち、変異体SAPプロモーター)を含む。幾つかの実施形態において、アミノ酸改変として、以下のものが含まれるがこれらに限定されない:配列SEQ ID NO:1に対しての1以上の変異体アミノ酸の存在(例えば、アミノ酸の置換又は付加);配列SEQ ID NO:1に対しての1以上の天然のアミノ酸の欠失(例えば、アミノ酸削除);1以上のアミノ酸への改変部分の結合(例えば、PEG部分、デキストラン部分等);又はこれらの組合せ。幾つかの実施形態において、SAPプロモーターは、SEQ ID NO:1に対しての少なくとも1つの変異体アミノ酸、及び改変部分と結合した少なくとも1つのアミノ酸を含む。特に、本発明のSAP変異体は、血清由来ヒトSAPの対応サンプルと比べて改変された生物学的活性を有することを特徴とする。幾つかの態様において、本開示内容のSAP変異体は、以下から選択される改変された1以上の生物学的活性を有することを特徴とする:長くなったプラズマ半減期、上昇したインビボ安定性、上昇したインビトロ安定性、又は上昇した製造効率。
【0035】
用語「SAPプロモーター」は、SEQIDNO.1によって例示されるSAPプロモーターと少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一であるポリペプチドを意味する。従って、用語「SAPプロモーター」は、前記いずれかのポリペプチドを含む断片及び融合蛋白質を包含する。好ましい態様において、本開示内容のSAP変異体は、ヒトSAP蛋白質である。一般的に、SAPプロモーターは、生物学的に関連した温度、pHレベル、及び浸透圧において、水性溶液中で可溶性となるようにデザインされるであろう。本開示内容のSAP変異体を形成するために互いに非共有結合したプロモーターは、同一のアミノ酸配列及び/又は翻訳後改変を有することができ、或いは、個々のプロモーターは、異なる配列及び/又は改変を有することができる。従って、SAP変異体は、少なくとも2つの、少なくとも3つの、少なくとも4つの、又は5つの同一SAPプロモーターを含むことができる。或いは、SAP変異体は、少なくとも2つの、少なくとも3つの、少なくとも4つの、又は少なくとも5つの同一又は異なる変異体SAPプロモーターを含むことができる。幾つかの実施形態において、少なくとも1つの、少なくとも2つの、少なくとも3つの、又は少なくとも4つのSAPプロモーターは、SEQ ID NO:1と100%同一の配列を有する。好ましい実施形態において、SAP変異体は、本明細書に記載の1以上の改変された生物学的活性を付与する少なくとも1つの変異体SAPプロモーターを含む。翻訳後改変は、インビボ及び/又はインビトロで影響を受けることができ、前記改変としては、翻訳後SAPポリペプチドのプロセッシング(例えば、シグナル配列除去、前ペプチド成熟等)及び化学的改変(例えば、グリコシル化、PEG化等)が含まれるがこれらに限定されない。
【0036】
また、本発明は、SAPポリペプチドと特定度合いの配列同一性又は類似性を共有するSAPプロモーターを提供する。2つのアミノ酸配列の同一性のパーセンテージを決定する際に、配列は最適の比較を行うためにアライメントを行う(例えば、最適のアライメントを行うために、第一及び第二のアミノ酸配列又は核酸配列のうち一方又は両方にギャップを導入することができる。また、非相同配列については、比較対象から除外することができる)。好ましい実施形態において、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又はそれらよりも長いの長さの参考配列(例えば、ヒトSAP)を比較目的でアライメントする。そして、対応するアミノ酸の位置で、アミノ酸残基の比較を行う。第一配列のある位置が、第二配列の対応する位置のアミノ酸残基と同一の残基で占められている場合には、該位置において分子は同一である(ここで使用するアミノ酸の「同一性」は、アミノ酸の「ホモロジー」と同じ意味である)。2つの配列間の同一性のパーセンテージは、ギャップの数や各ギャップの長さを考慮した上での、該配列間で共有する同一の位置の数の関数である。そして、該ギャップは、2つの配列の最適なアライメントを導入するために必要である。
【0037】
配列の比較、並びに2つの配列間の同一性及び類似性のパーセンテージの決定は、数学的なアルゴリズムを用いて行うことができる(Computational Molecular Biology, Lesk, A. M., ed., Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D. W., ed., Academic Press, New York, 1993; Computer Analysis of Sequence Data, Part 1, Griffin, A. M., and Griffin, H. G., eds., Humana Press, New Jersey, 1994; Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987; and Sequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M Stockton Press, New York, 1991)。
【0038】
ある実施形態において、2つのアミノ酸配列間の同一性のパーセンテージは、Needleman及びWunsch(J Mol. Biol. (48):444−453 (1970))のアルゴリズムを用いて決定される。該アルゴリズムは、GCGソフトウェアパッケージ中(http://www.gcg.com で入手可)のGAPプログラムに組み込まれている。特定の実施形態において、以下のパラメータがGAPプログラムで使用される:Blossom 62 matrix又はPAM250 matrixのいずれか、及びgap weightを16、14、12、10、8、6、又は4、及びlength weightを1、2、3、4、5、又は6。本発明の別の例では、2つのヌクレオチド配列間の同一性のパーセンテージは、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムを用いて決定される(Devereux、J.、et al.、Nucleic Acids Res. 12(1):387 (1984)) (http://www.gcg.comで入手可)。使用される例示的なパラメータとしては、以下のものが含まれる:NWSgapdna.CMP matrix、及びgap weightを40、50、60、70、又は80、及びlength weightを1、2、3、4、5、又は6。
【0039】
別の実施形態では、2つのアミノ酸配列間の同一性のパーセンテージは、E. Myers及びW. Millerのアルゴリズム(CABIOS, 4:11−17 (1989))を用いて決定される。該アルゴリズムは、ALIGNプログラム(バージョン 2.0)中に組み込まれており、PAM120 weight residue table、gap length penaltyを12、及びgap penaltyを4にして用いている。
【0040】
2つのアミノ酸配列間での最良の全体アライメントを決定するための別の実施形態としては、Brutlagらのアルゴリズム(Comp. App. Biosci., 6:237−245 (1990))に基づくFASTDBコンピュータープログラムを用いて決定することができる。配列のアライメントにおいて、クエリー及び対象配列は、両方のアミノ酸配列である。前記包括的な配列アライメントの結果は、パーセント同一性で提示される。ある実施形態において、アミノ酸配列の同一性は、Brutlagらのアルゴリズム(Comp. App. Biosci., 6:237−245 (1990))に基づくFASTDBコンピュータープログラムを用いて行われる。特定の実施形態において、アミノ酸アライメントの同一性及び類似性のパーセンテージを計算するために用いられるパラメータとして以下のものが含まれる:Matrix=PAM 150, k−tuple=2, Mismatch Penalty=1, Joining Penalty=20, Randomization Group Length=0, Cutoff Score=1, Gap Penalty=5 及び Gap Size Penalty=0.05。
【0041】
本発明の幾つかの態様では、SAPポリペプチド(すなわち、プロモーター)を提供する。又は、これらのポリペプチドを用いるための治療方法を提供する。ここで、該ポリペプチドは、少なくとも一部において、参考配列に対比して規定される。好ましい実施形態において、前記参考配列として、アミノ酸配列SEQ ID NO:1が該当する。従って、前記ポリペプチドとしては、参考配列と同一でないアミノ酸残基を特定のパーセンテージで有することができる。好ましい一実施形態において、前記非同一残基は、該残基が非同一の対象とする残基と類似の化学特性を有する。類似の特性を有するグループとして以下のアミノ酸が含まれる:E、D、N、及びQ;H、K、及びR;Y、F、及びW;I、L、V、M、C、及びA;並びにS、T、C、P、及びA。
【0042】
別の実施形態では、非同一残基は、少なくとも1種の進化上関連した種(例えば、動植物等の分類上で同一の目内での種)におけるオルソロガス配列と参考配列との間で進化上保存されたもの以外の残基である。参考配列がほ乳類の場合、好ましい実施形態において突然変異可能なアミノ酸は、別のほ乳類種におけるオルソロガス配列と参考配列との間で保存されたもの以外の残基である。例えば、本発明の方法において使用されるポリペプチドが、ヒトSAP(SEQ ID NO:1)と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むと述べた場合、前記ポリペプチドは、ヒトSAPと別のほ乳類のSAPとで異なっている部位と非同一の残基を有することができる。
【0043】
SEQ ID NO:1と少なくとも90%の同一性を有するSAPポリペプチド(すなわち、プロモーター)は、多様性の範囲内で保存的置換を有するポリペプチドを含む。保存的置換として、典型的にみられるものとして、以下のものが挙げられる:脂肪族アミノ酸Ala、Val、Leu、及びIle間での1つのアミノ酸から別のアミノ酸への置き換え;ヒドロキシル残基Ser及びThrの相互交換;酸性残基Asp及びGluの交換;アミド残基Asn及びGln間の置換;塩基性残基Lys及びArgの交換、芳香族残基Phe及びTyr間での置き換え。どのアミノ酸変更が表現型上サイレントとなる可能性が高いかに関する追加的ガイダンスについては、Bowie et al., Science 247:1306−1310 (1990)を参照されたい。
【0044】
また、本開示内容は、特定のアミノ酸残基における突然変異をSAPプロモーターに与える。例示的な突然変異については、本明細書で開示する。そして、ヒトSAP(例えば、一例としてSEQ ID NO:1)のアミノ酸部位に従って、位置番号を特定する。ある実施形態において、SAP変異体は、i)SEQ ID NO:1に対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%同一である1以上のプロモーターを有する ii)血清由来ヒトSAPの対応サンプルと比べて、以下の特徴のうち1以上を有する:長くなったプラズマ半減期、上昇したインビトロ安定性、上昇したインビボ安定性、又は上昇した製造効率。本明細書中に記載するように、SAPプロモーターのアミノ酸は、1以上の特定のアミノ酸残基を付加したり、1以上の特定のアミノ酸残基を削除したり、又は1以上の特定のアミノ酸残基を置き換えたりすることによって突然変異してもよい。SAPポリペプチドを突然変異させたり、又は化学的に改変したりするための方法については後述する。
【0045】
強化された血清半減期及びインビボ安定性は、治療効果を達成するのに必要な投与頻度を減らす目的として望ましいであろう。従って、特定の態様において、SAP変異体の血清半減期は、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも10日、若しくは少なくとも20日、又はそれらよりも長い期間である。薬物動力学的分析、並びに半減期及びインビボ安定性の決定を行うための方法については、当業者が熟知しているであろう。詳細については以下の文献を参照されたい:Kenneth, A et al: Chemical Stability of Pharmaceuticals: A Handbook for Pharmacists 及び Peters et al, Pharmacokinetc analysis: A Practical Approach (1996)。また、以下の文献も参照されたい:「Pharmacokinetics」,M Gibaldi & D Perron(出版社 Marcel Dekker), 2nd Rev. ex edition (1982)。該文献では、薬物動力学的パラメーターを記載している(例えば、tα半減期及びtβ半減期、並びに時間曲線下面積(AUC: area under the curve))。本開示内容の実施例において記載しているように、インビボ安定性を決定するための1つの方法としては、SAP変異体を動物に投与し、投与後に定期的に動物の血漿内でのSAP変異体の濃度を測定することを伴う。SAP変異体の薬物動力学的プロファイル(すなわち、特定時間内におけるSAPの血漿濃度)は、別のSAP蛋白質、例えば血清由来ヒトSAPの対応サンプルのプロファイルと比較することができる。
【0046】
特定の態様において、本開示内容のSAP変異体は、ヒトSAPに関する別の同一組成物と比べて同一条件下での安定性が高い。ある実施形態において、本開示の組成物は、ヒトSAPの対応するサンプルと比べて、有効期限やインビトロ安定性が、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、又は少なくとも5倍、又はそれらよりも大きい倍率である。インビトロ安定性を測定するための方法が当分野で多く知られており、例えば蛋白質安定性を測定する以下の方法が含まれる:SDS−PAGE、ウェスタンブロット法、RP−HPLC、AEX−HPLC、LC−MS、又はN−末端配列決定。
【0047】
幾つかの実施形態において、本発明のSAP変異体は、血清由来ヒトSAPの対応サンプルと比べて、改変された、又は類似の生物学的活性を有する。SAP変異体の生物学的活性は、例えば、単球から線維芽細胞へのインビトロでの分化を阻害するためのIC50を決定することによって決定できる。幾つかの実施形態において、ヒト血清から単離した野生型SAPの対応サンプルと比べて、SAP変異体のIC50は、1/2未満、1/3未満、1/4未満、1/10未満、又は1/100未満である。線維芽細胞分化に関する応答であって、SAPに対する末梢血単核球(PBMC)又は単球細胞の応答を決定するためによく特徴付けられた方法が数多く存在する。こうした方法を用いることにより、ヒト血清由来SAP、任意の他のSAP変異体ポリペプチド、又は他の線維芽細胞抑制剤若しくは活性剤のサンプルと比較して、本発明に係る任意のSAPポリペプチド変異体の相対的な効能を決定することができる。これらの方法の使用に適したPBMC又は単球は、様々な組織の培養株から得ることができる。或いは、線維芽細胞分化アッセイ用の適切な細胞は、PBMC又は単球細胞を含む任意の生物学的サンプルから得ることができる。生物学的サンプルは、血清、血漿(プラズマ)、健康な組織、又は線維組織から得ることができる。一般的に、線維芽細胞分化アッセイは、様々な濃度のSAPポリペプチドを有する培地中にPBMC又は単球細胞をインキュベートして、線維芽細胞分化の度合いを決定することによって行われる。SAPの濃度は0.0001μg/mL〜1mg/mlの範囲にわたってもよく、幾つかの実施形態において、以下の濃度であってもよい:0.001μg/mL、1.0μg/mL、5μg/mL、10μg/mL、15μg/mL、20μg/mL、25μg/mL、30μg/mL、35μg/mL、40μg/mL、45μg/mL、50μg/mL、100μg/mL、200μg/mL、300μg/mL、又は500μg/mL。幾つかのアッセイにおいて、培地には、1−100ng/mlのhMCSFを添加することができる;好ましいhMCSF濃度は、25ng/mLである。PBMC及び単球が線維芽細胞に分化した指標については、当業者によって決定することができる。一般的に、線維芽細胞は、長く伸びた紡錘形と卵型の核の存在とを有する粘着性の細胞として形態学的に定義されている。幾つかのアッセイにおいて、例えば、倒立顕微鏡を用いて直接カウントすることによって線維芽細胞を数える前に、細胞は固定されて、Hema 3で染色される。線維芽細胞分化の量は、SAPに対する細胞応答を表すものとして当業者に解釈される。本開示内容の実施例に表されるように、線維芽細胞分化の抑制度合いが大きい場合には、SAP応答の度合いが大きいことを表す。線維芽細胞分化を測定する別の方法では、線維芽細胞に特異的な細胞表面マーカーや分泌因子の発現を検出することを伴う(例えば、サイトカイン(例えば、IL−1ra、ENA−78/CXCL−5、PAI−1)、フィブロネクチン、コラーゲン−1、マクロファージ由来ケモカイン)。細胞表面マーカー又は分泌因子を検出及び/又は定量する方法は当分野で公知であり、1種以上の線維芽細胞特異的マーカーに対する免疫反応性の抗体を用いた様々なELISA及びFACSベースの技術が含まれるがこれらに限定されない。
【0048】
特定の態様において、本開示内容は、血清由来ヒトSAPの対応サンプルと比べて、プロテアーゼ切断耐性が高いSAP変異体を提供する。本発明のSAP変異体は、任意の数のプロテアーゼに対するプロテアーゼ切断耐性を有することができ、プロテアーゼとしては、以下のものが含まれる:セリンプロテアーゼ、スレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、金属プロテアーゼ、及びグルタミン酸プロテアーゼ。ある実施形態において、SAP変異体は、キモトリプシン、トリプシン、又はプロナーゼによる切断に対する耐性がより高い。好ましい実施形態において、プロテアーゼ耐性であるSAP変異体は、血清由来ヒトSAPの対応サンプルと比べて、長くなったプラズマ半減期を有する。蛋白質分解による切断を測定するための方法として、プロテアーゼ処理した蛋白質サンプル(例えばSAP変異体及び血清由来ヒトSAPスタンダード)を以下の手段で分析する方法が挙げられるがこれらに限定されない:SDS−PAGE、ウェスタンブロット法、RP−HPLC、AEX−HPLC、LC−MS、又はN−末端配列決定。プロテアーゼ切断アッセイの他の例は、当業者の成しうる範囲内であり、以下の文献に例示されている:Kinoshita CM, et al., Protein Science 1:700−709 (1992)。従って、本発明のSAP変異体は、別のSAP蛋白質の対応サンプル(例えば、血清由来ヒトSAPのサンプル)と比較して、プロテアーゼ切断に対する相対的な耐性に関して容易にアッセイすることができる。
【0049】
カルシウムが無い状態で、ヒトSAPは、残基Phe144とAsp145の間でα−キモトリプシン切断を受ける(Kinoshita CM、et. al.、Protein Science 1:700−709 (1992))。ある実施形態において、SAPプロモーターは、SEQ ID NO:1の144番目及び/又は145番目の位置において、アミノ酸改変を有しており、結果として、プロテアーゼ切断耐性がより高いSAP変異体となる。幾つかの実施形態において、SAPプロモーターは、SEQ ID NO:1の144番目の位置に変異体アミノ酸を含む。特に、プロテアーゼ切断耐性がより高いSAP変異体は、SEQ ID NO:1の144番目の位置アミノ酸が、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、アラニン(A)、又はグルタミン(Q)残基であってもよい。また、SAPプロモーターは、SEQ ID NO:1の145番目の位置に変異体アミノ酸を独立して又は関連して含むことができる。本開示内容の変異体SAPプロモーターは、SEQ ID NO:1の145番目の位置にグルタミン酸(E)を含むことができる。ある実施形態において、SAP変異体は、以下の特徴をもつ1以上のプロモーターを含む:i)SEQ ID NO:1と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であること;及び、ii)SEQ ID NO:1に対して以下のアミノ酸置換のうち1以上を含むこと:F144L、F144I、F144V、F144A、F144G、D145E。プロテアーゼ切断耐性である前述した任意のSAPプロモーターは、本明細書で記載した他の任意のアミノ酸改変を更に含むことができる。
【0050】
更に、本開示内容は、血清由来ヒトSAPの対応サンプルと比べて、SAP変異体の金属結合性を上昇させる。SAPプロモーターのカルシウム結合サイトにおいて金属結合性が上昇すると、SEQ ID NO:1の145番目の位置のアミノ酸残基を含有するループ構造が安定することにより、前記プロモーターの蛋白質分解に対する感受性が減少する。ある実施形態において、上昇した金属結合性を有するSAP変異体は、SEQ ID NO:1の145番目の位置に変異体アミノ酸を有する1以上のSAPプロモーターを含む。特に、上昇した金属結合性によって特徴付けられるSAP変異体は、SEQ ID NO:1の145番目の位置において、以下のアミノ酸を有することができる:グルタミン酸(E)、グルタミン(Q)、ヒスチジン(H)、アラニン(A)、グリシン(G)。好ましい実施形態において、SAP変異体は、血清由来ヒトSAPの対応サンプルと比べて、カルシウムに対する上昇した金属結合性を示す。SAP蛋白質のカルシウム結合定数は、種々の方法で測定することができ、該方法としては、以下の文献に例示されているものも含まれる:Calcium−binding Protein Protocols: methods and techniques by Hans J. Vogel, Contributor Hans J. Vogel, Published by Humana Press, 2002。幾つかの実施形態において、SAP蛋白質のカルシウム結合定数は、ある範囲のカルシウム濃度を用いた平衡透析を行い、その後Scatchard plot分析を行うことによって測定することができる(例えば Segel, I.H., Enzyme Kinetics 1975, Wiley−Interscience Publisher, p218−19を参照されたい)。平衡透析は、放射性同位体のカルシウム、又はカルシウム感受性電極のいずれかを用いて行い、遊離カルシウムレベルを定量することができる。また、カルシウム結合定数は、色素性キレート化剤(chromophoric chelator)(5,5’−ジブロモ−1,2−ビス(2アミノフェノキシ) エタン−N,N,N’,N’−テトラ酢酸)の存在下で、SAP溶液にカルシウムを滴定することによって決定できる(Linse, S, Helmbersson, A. Forsen, S, 1991 JBC 266:13 pp. 8050−8054)。また、等温滴定カロリメトリーを、カルシウム結合親和性を測定するために用いることができる(Wiseman, T., Williston, S., Brandts, J.F., and Lin, L.N., (1989) Anal Biochem 179, 131−7)。上昇した金属結合性を特徴とするSAP変異体は、以下における変化について血清由来ヒトSAPの対応サンプルと比べることができる:蛋白質分解の安定性(例えば、カルシウム存在下、又は非存在下におけるキモトリプシンによる消化)、インビトロ生物学的活性、及び/又は薬物動力学、並びに生物物理学的な同定方法(例えば、RP−HPLC、SE−HPLC、SDS−PAGE、LC−MS)。ある実施形態において、SAP変異体は、以下の特徴を有する1以上のSAPプロモーターを含む:i)SEQ ID NO:1と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であること;及び、ii)以下のアミノ酸置換のうち1以上を含むこと:D145E、D145Q、D145H、D145A、又はD145G。上昇した金属結合性を示す前述した任意のSAPプロモーターは、本明細書に記載した他の任意のアミノ酸改変を更に含むことができる。
【0051】
リガンド非存在下で、カルシウム結合によりSAPは自己凝集する(Emsley、et. al. Nature 367:338−345 (1994))。そして、一旦凝集すると、SAPは急速に血流から除去される(Pepys、et. al.、Nature 417:254−259 (2002))。ある実施形態において、本開示内容のSAP変異体は、血清由来ヒトSAPの対応サンプルと比べて、カルシウム依存性自己凝集に対する耐性が高い。幾つかの実施形態において、カルシウム依存性自己凝集に対する耐性を有するSAP変異体は、SEQ ID NO:1の167番目の位置において変異体アミノ酸を含む1以上のSAPプロモーターを含む。幾つかの実施形態において、カルシウム依存性自己凝集に対する耐性を有するSAP変異体は、SEQ ID NO:1の167番目の位置で、アスパラギン酸(D)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、アラニン(A)、又はヒスチジン(H)を含む。SAPの凝集は、任意の数の既知の方法によって決定することができ、該方法には、ゲルろ過クロマトグラフィー、及び動的光散乱が含まれる(Ho、et. al.、J Biol Chem 280:31999−32008 (2005)を参照)。従って、本発明のSAP変異体は、別のSAP蛋白質の対応サンプル(例えば、血清由来ヒトSAPのサンプル)と比較して、凝集に対する相対的な耐性に関して容易にアッセイすることができる。ある実施形態において、SAP変異体は、以下の特徴を有する1以上のSAPプロモーターを含む:i)SEQ ID NO:1と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であること;及び、ii)以下のアミノ酸置換のうち1以上を含むこと:E167D、E167N、E167Q、E167A、E167H。前述した任意の自己凝集耐性を有するSAPプロモーターは、本明細書に記載の他の任意のアミノ酸改変を更に含むことができる。
【0052】
ポリペプチドのグリコシル化は、典型的にはN結合型又はO結合型の何れかである。N結合型は、アスパラギン残基の側鎖に、炭化水素部分が結合することを意味する。トリペプチド配列であるアスパラギン−X−セリン及びアスパラギン−X−スレオニン(ここで、Xはプロリン以外任意のアミノ酸)は、アスパラギン残基の側鎖に炭化水素部分が酵素的に結合するための認識配列である。従って、ポリペプチド中にこれらトリペプチド配列のうちのいずれかが存在することにより、潜在的なN結合型グリコシル化部位が作成される。O結合型グリコシル化は、糖部分(例えば、N−アセチルガラクトサミン、ガラクトース、又はキシロース)がヒドロキシアミノ酸(最もありふれているのはセリン残基又はスレオニン残基)に結合することを意味する。
【0053】
特定の態様において、本開示内容は、実質的にグリカンを有さない少なくとも1つのSAPプロモーターを含むSAP変異体を提供する。「実質的に有さない」とは、少なくとも約25%(例えば、少なくとも約27%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%、又は少なくとも約99%)のSAPプロモーターのアミノ酸がグリコシル化されていないことを意味する。好ましい実施形態において、SAPプロモーター又はSAP変異体は、いずれのグリカン結合構造も有さない。
【0054】
幾つかの実施形態において、本開示内容のSAPプロモーターは、N結合型グリカン、O結合型グリカン、又はN結合型グリカン及びO結合型グリカンの両方の結合を阻害するために改変される。SAP変異体上のN結合型グリコシル化部位の除去は、上述のトリペプチド配列(N結合型グリコシル化部位に関する)のうち1以上を前記SAPプロモーターが欠損するように、1以上の前記SAPプロモーターのアミノ酸配列を改変することによって行うことができる(例えば、アミノ酸の除去、付加、又は置換)。また、前記改変は、SAPプロモーターの1以上のセリン又はスレオニン残基を削除又は置換することを含む。好ましい実施形態において、SAP変異体は、SEQ ID NO:1の32、33、及び/又は34番目の位置において変異体アミノ酸を含む少なくとも1つのSAPプロモーターを含む。好ましい実施形態において、変異体SAPプロモーターは、SEQ ID NO:1の32番目の位置においてアスパラギン酸(D)、グルタミン(Q)、又はグルタミン酸(E)を含む。また、変異体SAPプロモーターは、SEQ ID NO:1の33番目の位置においてプロリンを独立して又は関連して含むことができる。ある実施形態において、SAP変異体は、以下の特徴を有する1以上のプロモーターを含む:i)SEQIDNO:1と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であること;及び、ii)以下のアミノ酸置換のうち1以上を含むこと:N32D、N32Q、N32E、N33P。実質的にグリカンを有さない前述した任意のSAPプロモーターは、本明細書に記載の他の任意のアミノ酸改変を更に含むことができる。
【0055】
特定の態様において、本発明のSAP変異体は、1種以上の不活性ポリマーと共有結合した1以上のアミノ酸を含む1以上のSAPプロモーターを含む。
【0056】
SAPプロモーターに結合する不活性ポリマーは、任意の効果的な分子量を有するものであってよく、或いは分岐状又は非分岐状であってもよい。本発明で使用されるポリマーは、以下のものが含まれるがこれらに限定されない:(a)デキストラン及びデキストラン誘導体(デキストラン硫酸、架橋したデキストリン、及びカルボキシメチルデキストリンが含まれる);(b)セルロース及びセルロース誘導体(メチルセルロース、及びカルボキシメチルセルロースが含まれる);(c)デンプン、シクロデキストリン、及びデキストリン、並びにそれらの誘導体;(d)ポリアルキレングリコール及びそれらの誘導体(PEG、mPEG、PEGホモポリマー、ポリプロピレングリコールホモポリマー、エチレングリコールとプロピレングリコールのコポリマーが含まれる。ここで、前記ホモポリマー及びコポリマーは、1つの末端がアルキル基で置換されているか又は置換されていない);(e)ヘパリン及びヘパリン断片;(f)ポリビニルアルコール及びポリビニルエチルエーテル;(g)ポリビニルピロリドン;(h)α,β−ポリ((2−ヒドロキシエチル)−DL−アスパルトアミド;及び(i)ポリオキシエチル化ポリオール。1種以上の不活性ポリマーが共有結合した1以上のアミノ酸を有する前述した任意のSAPプロモーターは、本明細書に記載した任意のアミノ酸改変を更に含むことができる。
【0057】
好ましい実施形態において、本開示内容は、ポリエチレングリコール部分が共有結合した少なくとも1つのアミノ酸を含む1以上のSAPプロモーターを含むSAP変異体を提供する。幾つかの実施形態において、ポリエチレングリコール部分の分子量は、約1kDa〜約100kDである(用語「約」は、ポリエチレングリコールの調製において、ある分子は記述した分子量よりも大きく、ある分子は記述した分子量よりも小さいことを表す)。所望の治療用プロファイルに依存して、他のサイズを使用してもよい(例えば、所望の持続放出の期間、抗原性の度合い又は欠如等)。ある実施形態において、ポリエチレングリコールの平均分子量は、少なくとも1、少なくとも20、又は少なくとも40kDaであってもよい。ポリエチレングリコールは分岐状構造を有しても良い。そして、分岐状ポリエチレングリコールは、例えば以下の文献に記載されている:米国特許第5,643,575号;Morpurgo et al., Appl. Biochem. Biotechnol. 56:59−72 (1996); Vorobjev et al., Nucleosides Nucleotides 18:2745−2750 (1999);及び Caliceti et al., Bioconjug. Chem. 10:638−646 (1999)。ポリエチレングリコール部分は、触媒的部位又は標的部位への影響を考慮して、SAP変異体に結合することができる。
【0058】
好ましい実施形態において、本開示内容は、デキストラン部分に共有結合した少なくとも1つのアミノ酸を含む1以上のSAPプロモーターを含むSAP変異体を提供する。幾つかの実施形態において、SAPプロモーターに結合したデキストラン部分の分子量は、一般的に約1kDa〜約250kDaである(用語「約」は、デキストラン結合物の調製において、ある分子は記述した分子量よりも大きく、ある分子は記述した分子量よりも小さいことを表す)。所望の治療用プロファイルに依存して、他のサイズを使用してもよい(例えば、所望の持続放出の期間、抗原性の度合い又は欠如等)。ある実施形態において、デキストランの平均分子量は、少なくとも1、少なくとも20、又は少なくとも40kDaであってもよい。SAPは、デキストラン又はデキストラン誘導体(デキストラン硫酸、p−アミノエチル架橋デキストラン、及びカルボキシメチルデキストランを含む)に結合することができる。
【0059】
(ii)SAPオリゴマー
特定の態様において、本開示内容は、2以上のSAPペンタマーを含むSAPオリゴマーを提供する。好ましい態様において、SAPオリゴマーは、共有結合的に架橋したペンタマー、すなわちプロモーター−プロモーター架橋を介したオリゴマーである。
【0060】
当業者に知られた化学的架橋剤が、その使用方法のみならず、数多く存在する。ある実施形態において、SAPペンタマーは、1種以上のヘテロ二官能性架橋剤を用いて架橋している。該架橋剤は、段階的に蛋白質を結合するために使用することができる。ヘテロ二官能性架橋剤によって、蛋白質を結合するためのより特異的な結合方法をデザインすることができる。それによって、ホモ蛋白質ポリマー等の望ましくない副反応の発生を減らすことができる。幅広い種類のヘテロ二官能性架橋剤が公知となっている。以下の架橋剤が含まれる:スクシンイミジル 4−(N−マレイミドメチル) シクロヘキサン−1−カルボキシレート (SMCC)、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミド エステル (MBS); N−スクシンイミジル (4−ヨードアセチル) アミノベンゾエート (SIAB)、スクシンイミジル 4−(p−マレイミドフェニル) ブチレート (SMPB)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル) カルボジイミド 塩酸 (EDC); 4−スクシンイミジルオキシカルボニル−α−メチル−α−(2−ピリジルジチオ)−トルエン (SMPT)、N−スクシンイミジル 3−(2−ピリジルジチオ) プロピオネート (SPDP)、スクシンイミジル 6−((3−(2−ピリジルジチオ) プロピオネート) ヘキサノエート (LC−SPDP)。N−ヒドロキシスクシンイミド部分を有するこれらの架橋剤は、N−ヒドロキシスルフォスクシンイミドの類似体として入手可能であり、一般的に水溶解度がより大きい。更に、連結鎖(linking chain)内にジスルフィド架橋を有するこれらの架橋剤は、インビボでの架橋切断量を減らすためにアルキル誘導体として代わりに合成することが出来る。
【0061】
ヘテロ二官能性架橋剤のほかに、他の架橋剤が複数存在し、該架橋剤として、ホモ二官能性架橋剤及び光反応性架橋剤が含まれる。有用なホモ二官能性架橋剤の例としては、ジスクシンイミジル スベリン酸 (DSS)、ビスマレイミドヘキサン (BMH)、及びジメチルピメルイミデート−2 HCl (DMP)が挙げられる。そして、本発明においての使用目的で有用な光反応性架橋剤の例としては、ビス−(β−(4−アジドサリチルアミド)エチル)ジスルフィド (BASED)及びN−スクシンイミジル−6−(4’−アジド−2’−ニトロフェニルアミノ)ヘキサノエート (SANPAH)が挙げられる。蛋白質の結合技術を参照するのであれば、Means et al. (1990) Bioconjugate Chemistry 1:2−12を参照されたい。
【0062】
上述した物も含め、ヘテロ二官能性架橋剤の特に有用な一分類として、一級アミン反応基、N−ヒドロキシスクシンイミド (NHS)、又はその水可溶性類似体N−ヒドロキシスルフォスクシンイミド (スルホ−NHS)が含まれる。アルカリ性pHの一級アミン(リシンε基)はプロトン化されておらず、NHSまたはスルホ−NHSエステルを求核攻撃することによって反応する。こうした反応の結果、アミド結合が形成され、NHS又はスルホ−NHSが副生物として放出される。
【0063】
また、チオールは、ヘテロ二官能性架橋剤の一部分として特に有用は反応基である。ありふれたチオール反応基として、マレイミド、ハロゲン、及びピリジルジスルフィドが含まれる。マレイミドは、弱酸性〜中性条件下(pH 6.5−7.5)でフリーなメルカプト基(システイン残基)と特異的に分単位で反応する。ハロゲン(ヨードアセチル官能基)は、生理的pHでーSH基と反応する。両方の反応基とも、結果として安定したチオエーテル結合を形成する。
【0064】
ヘテロ二官能性架橋剤の第三の部分は、スペーサーアーム及びブリッジである。前記ブリッジは、2つの反応性末端とつながった構造になっている。前記ブリッジの最も明白な特徴は、立体障害に対する影響である。ある例においては、ブリッジをより長くすることによって、2つの複合生体分子を結合するのに必要な距離をより簡単に確保することができる。
【0065】
ヘテロ二官能性薬剤を用いた蛋白質−蛋白質結合の調製は、2ステッププロセスであり、アミン反応及びスルフヒドリル反応を伴う。こうしたプロセスは、一般的に周知である。例えば、以下の文献を参照されたい:Partis et al. (1983) J. Pro. Chem. 2:263); Ellman et al. (1958) Arch. Biochem. Biophys. 74:443; Riddles et al. (1979) Anal. Biochem. 94:75); Blattler et al. (1985) Biochem 24:1517)。
【0066】
特定の態様において、本開示内容は、少なくとも2つのSAPペンタマーを含む共有結合的に架橋したSAPオリゴマーを提供し、各SAPペンタマーは、5つのSAPプロモーターを含む。ある実施形態において、本発明のSAPオリゴマーは、SEQIDNO:1のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも100%同一であるSAPプロモーターを含むことができる。或いは、本発明のSAPオリゴマーは、少なくとも1つの、少なくとも2つの、少なくとも3つの、少なくとも4つの、少なくとも5つの、少なくとも6つの、少なくとも7つの、少なくとも8つの、少なくとも9つの、又はそれより多くの本明細書に記載の変異体SAPプロモーターを含むことができる。幾つかの実施形態において、本発明のSAPオリゴマーは、少なくとも2つの、少なくとも3つの、少なくとも4つの、少なくとも5つの、少なくとも6つの、少なくとも7つの、少なくとも8つの、少なくとも9つの、又はそれより多くの異なる本明細書に記載の変異体SAPプロモーターを含むことができる。好ましい実施形態において、本発明の架橋SAPオリゴマーは、ヒト血清から単離したSAPの対応サンプルと比べた場合に、長くなったプラズマ半減期、上昇したインビトロ安定性、及び上昇したインビボ安定性のうち1以上を特徴とする。ある実施形態において、前記架橋SAPオリゴマーは、血清由来ヒトSAPと比べた場合に、以下のうち1以上の特徴を有する:上昇したプロテアーゼ耐性、上昇したカルシウム−介在性自己凝集耐性、及び上昇した金属イオン結合性。
【0067】
SAP変異体の製造方法
一側面において、本開示内容は、本発明のSAP変異体及びSAPオリゴマーを生成するための方法を提供する。本開示内容のSAP変異体は、SAP蛋白質の少なくとも1種の生物学的活性を改変する1以上のアミノ酸改変を有する少なくとも1つのプロモーターを含むことができる。本明細書に記載するように、アミノ酸改変物を生成する方法として、以下の方法が含まれるがこれらに限定されない:SEQ ID NO:1の少なくとも1つのアミノ酸の突然変異(例えば、1以上のアミノ酸の削除、1以上のアミノ酸の付加、又は1以上のアミノ酸の置換)、SEQ ID NO:1の1以上のアミノ酸の化学的改変(例えば、SEQ ID NO:1のアミノ酸に1以上の不活性ポリペプチドの結合)、又はこれらの組合せ。
【0068】
特定の態様において、本発明の変異体SAPプロモーターは、ランダム突然変異誘発技術、定方向突然変異誘発技術、進化分子工学(directed evolution)、又はこれらの組み合わせを用いて生成することができる。変異体SAPプロモーターは、核酸のコーディング配列中にランダム突然変異又は定方向突然変異を導入する技術を用いて生成することができる。その後、所望の発現システムにおいて核酸を発現させ、結果物であるペプチドを対象となる特性について評価する(例えば、自己凝集耐性、プロテアーゼ切断耐性、上昇した金属イオン結合性、長くなった血清半減期、長くなったインビトロ半減期、長くなったインビボ半減期)。DNA配列にランダム突然変異又は定方向突然変異を導入する技術については周知であり、PCR突然変異誘発、飽和突然変異誘発、及び変性オリゴヌクレオチドアプローチ等が含まれる。以下の文献を参照されたい:Sambrook and Russell (2001, Molecular Cloning, A Laboratory Approach, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Y.) and Ausubel et al. (2002, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY)。
【0069】
ランダムPCR突然変異誘発においては、Taqポリメラーゼのフィデリティ(fidelity)の低くすることを利用して、クローニングしたDNAフラグメントにランダム突然変異を導入する(Leung et al., 1989, Technique 1:11 15)。突然変異したDNA領域は、TaqDNAポリメラーゼによるDNA合成のフィデリティを低くする条件下でのPCRを利用して増幅する(例えば、変更されたdGTP/dATP比率を使用したり、及びPCR反応でMn2+を付加するなど)。増幅されたDNA断片のプールは、適切なクローニングベクターに挿入され、ランダム突然変異体ライブラリーが提供される。
【0070】
飽和突然変異誘発は、クローニングされたDNA断片に、単一の塩基置換を多数急速に導入することを可能にする(Mayers et al., 1985, Science 229:242)。該技術は、突然変異の発生を含み、例えば、一本鎖DNAをインビトロで化学的処理したり又は放射線処理したり、及び相補的DNA鎖を合成したりすることによる。突然変異の頻度は、処理の厳格さの度合いを変更することによって、変更することができる。そして実質的に全ての可能な限りの塩基置換を得ることができる。この手順は、突然変異体断片を遺伝的に選択することを伴わないため、中立な置換、並びに機能を変更する置換の両方が得られる。更に、ポイントミューテーションの分布には、保存配列エレメントに対してのバイアスがかからない。
【0071】
また、核酸ホモログのライブラリーは、変性オリゴヌクレオチド配列の群から生成できる。変性オリゴヌクレオチド配列の化学的合成は、自動DNA合成機内で行うことができる。そして、前記合成的遺伝子は、適切な発現ベクター内にライゲーションされる。変性オリゴヌクレオチドの合成は公知である(例えば、以下の文献を参照されたい:Narang, S A (1983) Tetrahedron 39:3; Itakura et al. (1981) Recombinant DNA, Proc 3rd Cleveland Sympos. Macromolecules, ed. A G Walton, Amsterdam: Elsevier pp. 273 289; Itakura et al. (1984) Annu. Rev. Biochem. 53:323; Itakura et al. (1984) Science 198:1056; Ike et al. (1983) Nucleic Acid Res. 11:477。こうした技術は、他のペプチドの進化分子工学で用いられてきた(例えば、以下の文献を参照されたい Scott et al. (1990) Science 249:386 390; Roberts et al. (1992) PNAS 89:2429 2433; Devlin et al. (1990) Science 249: 404 406; Cwirla et al. (1990) PNAS 87: 6378 6382; 並びに U.S. Pat. Nos. 5,223,409, 5,198,346, 及び 5,096,815)。
【0072】
また、変異体SAPプロモーターは、「進化分子工学」の技術を用いて生成することができる。該戦略は、従来のランダム突然変異誘発手法とは異なっている。なぜなら、対象となるペプチドをエンコードする核酸配列が、変異、スクリーニング、及び増殖という再帰的な循環を受けることを伴うからである。
【0073】
いくつかの「進化分子工学」技術において、得られた核酸の多様性は、核酸配列においてランダムにポイントミューテーションを作成する突然変異方法によって生成される。ポイントミューテーションの技術としては、以下の技術が含まれるがこれらに限定されない:「error−prone PCR」(商標)(Caldwell and Joyce, 1994; PCR Methods Appl. 2: 28 33; and Ke and Madison, 1997, Nucleic Acids Res. 25: 3371 3372)、oligonucleotide−directed mutagenesisの繰り返し(Reidhaar−Olson et al., 1991, Methods Enzymol. 208:564 586)、及びランダム突然変異に関する前述した任意の方法。
【0074】
進化分子工学が作用することによって多様性を生成する別の方法としては、突然変異誘発遺伝子の使用がある。対象となる核酸を、欠陥のあるDNA修復遺伝子を典型的にエンコードする遺伝子の系統の突然変異誘発細胞内で培養する(米国特許第6,365,410号; Selifonova et al., 2001, Appl. Environ. Microbiol. 67:3645 3649; Long−McGie et al., 2000, Biotech. Bioeng. 68:121 125; see, Genencor International Inc, Palo Alto Calif.)。
【0075】
進化分子工学技術を用いた多様性の達成に関しては、変性プライマーに沿った飽和突然変異誘発を用いて実現することができる(Gene Site Saturation Mutagenesis(商標), Diversa Corp.,San Diego, Calif.)。こうしたタイプの飽和突然変異誘発において、多様化させる核酸配列の長さをカバーするためにデザインされた変性プライマーを使用して、PCR反応中のポリメラーゼを誘導(prime)する。この方法で、アミノ酸に関するコーディング配列の各コドンは、残りのありふれた19種類のアミノ酸それぞれをエンコードするように変異させることができる。また、この技術は、核酸分子の残りの部分には触れずに、突然変異を導入したり、削除したり、核酸コーディング配列の特定領域に挿入したりするために使用することができる。遺伝子飽和(gene saturation)技術の手法については、周知であり、米国特許第6,171,820号を参照されたい。
【0076】
また、変異体SAPプロモーターは、遺伝子シャッフリング、モチーフシャッフリング、エキソンシャッフリング、及び/又はコドンシャッフリング(総合的に、「DNA シャッフリング」と呼ぶ)の技術を用いて生成することができる。DNAシャッフリング技術は、本発明において有用なペプチドの活性を変化させるために使用することができ、改変された活性を有するペプチドを生成するために使用することができる。一般的には以下の文献を参照されたい:米国特許第 5,605,793号; 5,811,238号; 5,830,721号; 5,834,252号; 及び 5,837,458号, 並びに Stemmer et al. (1994, Nature 370(6488):389 391); Crameri et al. (1998, Nature 391 (6664):288 291); Zhang et al. (1997, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94(9):4504 4509); Stemmer et al. (1994, Proc. Natl. Acad. Sci USA 91(22):10747 10751), Patten et al. (1997, Curr. Opinion Biotechnol. 8:724 33); Harayama, (1998, Trends Biotechnol. 16(2):76 82); Hansson, et al., (1999, J. Mol. Biol. 287:265 76); and Lorenzo and Blasco (1998, Biotechniques 24(2):308 13)。これら各文献の全体の内容は本明細書に組み込まれる。
【0077】
DNAシャッフリングは、ポリヌクレオチド配列において変異体を生成するために、相同組み換え又は部位特異的組み換えによって、2以上のDNAセグメントを組み立てることを伴う。DNAシャッフリングは、以下の新たな変異体を生成するために使用されてきた:ヒト免疫不全ウィルスタイプI蛋白質(Pekrun et al., 2002, J. Virol. 76(6):2924 35)、トリアジンヒドロラーゼ(Raillard et al. 2001, Chem Biol 8(9):891 898)、マウス白血病ウィルス(MLV)蛋白質(Powell et al. 2000, Nat Biotechnol 18(12):1279 1282)、及びインドールグリセロールホスフェートシンターゼ (Merz et al. 2000, Biochemistry 39(5):880 889)。
【0078】
DNAシャッフリング技術は、インビトロでのDNAの相同組み換えを許容する天然の相同組み換えを模倣することによって、生体分子の多様性を生み出すべく開発された(Stemmler, 1994, Nature 370: 389 391; and Stemmler, 1994, PNAS 91: 10747 10751)。一般的に、この方法においては、関連する遺伝子群は断片化される。そして、変性、リハイブリダイゼーション、その後のTaqポリメラーゼによる5’オーバーハングの伸長という再帰的なサイクルをうける。各サイクルに関して、断片の長さは増加し、異なる遺伝子由来の断片が互いにハイブリダイズするとDNAの組み換えが発生する。通常、最初のDNA断片化は、ヌクレアーゼ消化、典型的にはDNase(Stemmlerらの上記参考文献を参照されたい)を用いて行われる。しかし、PCR合成を中断することによって実現することもできる(米国特許第5,965,408号、全体の内容を本明細書に組み込む;Diversa Corp., San Diego, Calif)。DNAシャッフリング方法は、ランダムポイントミューテーション方法よりも有利な点がある。該方法は、各シャッフリングのラウンドごとに有用な突然変異の直接組み換えを生成でき、従って、ペプチドの改善された表現型に関する自己選択がある。DNAシャッフリング技術は、当業者に周知である。前記技術の詳細な説明については、以下の文献を参照されたい:Stemmler, 1994, Nature 370: 389 391 and Stemmler, 1994, PNAS 91: 10747 10751。また、DNAシャッフリング技術については、以下の文献にも記載されている:米国特許第6,180,406号, 6,165,793号, 6,132,970号, 6,117,679号, 6,096,548号, 5,837,458号, 5,834,252号, 5,830,721号, 5,811,238号, 及び5,605,793号。これら各文献の全体の内容を本明細書に組み込む。
【0079】
また、当分野では、DNAシャッフリングに関して、さらに最新の改良された基本技術が提供されている。一例として、エキソンシャッフリング、エキソン、又はペプチドの特定のドメインをエンコードするエキソンの組み合わせは、キメラのオリゴヌクレオチドを用いて増幅される。そして、増幅された分子は、自己−プライミングPCRアセンブリ(self−priming PCR assembly)によって組み換えが行われる(Kolkman and Stemmler, 2001, Nat. Biotech. 19:423 428)。別の例では、一時的なテンプレート(RACHITT)のライブラリー構築物上でランダムにキメラを発生させる技術を用いて、一本鎖親DNA断片を、完全な長さの一本鎖テンプレート上にアニールさせる(Coco et al., 2001, Nat. Biotechnol. 19:354 359)。さらに別の例では、付着伸長プロセス(StEP)、即ち非常に省略されたアニーリング/伸長サイクルを有する温度サイクルを用いて、隣接プライマーからのDNA重合反応を繰り返し中断する(Zhao et al., 1998, Nat. Biotechnol. 16: 258 261)。CLERYとして知られる技術においては、インビトロファミリーシャッフリングを酵母内でのインビボ相同組み換えと組み合わせる(Abecassis et al., 2000, Nucleic Acids Res. 28:E88)。遺伝子間組み換えを最大化するために、各核酸の相補鎖からの一本鎖DNAをDNaseで切断して、アニールする(Kikuchi et al., 2000, Gene 243:133 137)。そして、切断可能な配列と結合した様々な長さの2つの切断された核酸の平滑末端をライゲーションして、相同組み換えを行うことなく遺伝子融合を発生させる(Sieber et al., 2001, Nat Biotechnol. 19:456 460; Lutz et al., 2001, Nucleic Acids Res. 29:E16; Ostermeier et al., 1999, Nat. Biotechnol. 17:1205 1209; Lutz and Benkovic, 2000, Curr. Opin. Biotechnol. 11:319 324)。また、共通する配列ホモロジーのほとんど無い核酸間での組み換えは、エキソヌクレアーゼ媒介平滑末端DNA断片を用いて、これらの断片をともにライゲーションして組み替えることにより強化される(米国特許第 6,361,974、該文献の内容全体を本明細書に組み込む)。
【0080】
さらに、進化分子工学及び遺伝子シャッフリング技術について詳述した公開プロトコルに加えて、選択ペプチドに関する遺伝子シャッフリング及び選択方法を実践する市販のサービスが現在利用可能となっている。Maxygen(Redwood City, Calif.)は、カスタムメイドしたDNAシャッフルのライブラリーを生成する市販のサービスを提供している。さらに、この会社では、選択ペプチドファミリーに関する遺伝子シャッフリング及び選択を含めて、カスタマイズした進化分子工学手法を行ってくれるであろう。
【0081】
Optigenix社(Newark, Del.)では、プラスミドシャッフリングの関連サービスを提供している。Optigenixでは遺伝子ファミリーを使用して、該ファミリー内の新たな特性を有する突然変異を得ている。対象となる核酸は、Aspergillus発現システム内のプラスミドでクローニングされる。そして、関連ファミリーのDNAは発現システム内に導入され、ファミリーの保存領域における組み換えが宿主内で起こる。その後、結果として突然変異体のDNAが発現し、そこから生成されたペプチドを、所望の特性の存在や、望ましくない特性の欠如に関してスクリーニングする。
【0082】
「進化」に関する各再帰的なラウンドに続いて、変異した遺伝子によって発現した所望のペプチドが、対象となる特徴に関してスクリーニングされる。その後、「候補」遺伝子が増幅され、次のDNAシャッフリングのラウンドのためにプールされる。使用されるスクリーニング手順については、「進化」しているペプチド及び対象となる特徴に大きく依存する。数ある特徴の中でも、ペプチド安定性、生物学的活性、抗原性等の特徴については、周知の手法を用いることによって選択することができる。
【0083】
上述した突然変異及び選択の技術は互いに組み合わせることができ、また、該技術は、本発明の方法において有用な最良の可能な変異体SAPプロモーターを生成させる更なる手法と組み合わせることができることを当業者は理解するであろう。従って、本発明はSAP変異体の生成に関する任意の1つの方法に限定されるのではなく、本明細書に記載した任意の及び全ての方法論を包含するものとして解釈すべきである。例えば、特定のポイントミューテーションを核酸配列に導入するための手順を最初に実行し、その後、DNAシャッフリング、選択、及び増幅という再帰的なラウンドを実行することができる。幾つかの変異体では、ポイントミューテーションを最初に導入して該ミューテーションが存在しない遺伝子群に多様性を導入することができる。そして、その後のDNAシャッフリング及びスクリーニングのラウンドで、有利なポイントミューテーションに関する選択を行うであろう。
【0084】
特定の態様において、本開示内容は、SAPプロモーターの1以上のアミノ酸を化学的に改変するための方法を提供する。不活性ポリマーをポリペプチドに結合させるための当分野で記載されている方法が複数あり、以下の物を用いる方法が含まれるがこれらに限定されない:臭化シアノゲン(アルキル化)、及びジアルデヒドカップリング化学、及び過ヨウ素酸酸化。特に、アミノ酸をPEG化するための方法が当分野で多く知られている。例えば、米国特許第4,088,538では、PEGに共有結合した酵素であって、酵素活性のあるポリマー−酵素結合体を開示している。同様に、米国特許第4,496,689では、ポリマー(例えば、PEG又はメトキシポリ(エチレングリコール)(「mPEG」))と共有結合したα−1プロテアーゼ阻害剤の複合体を開示している。Abuchowskiら (J. Biol. Chem. 252: 3578 (1977))は、ウシ血清アルブミンのアミン基にmPEGを共有結合させることについて開示している。米国特許第4,414,147号では、ジカルボン酸の無水和物(例えば、ポリ(エチレンスクシン無水和物))に結合させることによって、インターフェロンの疎水性を低く維持する方法を開示している。PCT WO 87/00056では、蛋白質(例えば、インターフェロン−β、インターロイキン−2、及びイムノトキシン)にPEG及びポリオキシエチル化ポリオールを結合させることについて開示している。欧州特許154,316号では、化学的に改変されたリンホカインについて開示及び特許請求している(例えば、リンホカインの少なくとも1つの第一級アミノ基に直接結合したPEGを含有するIL−2)。米国特許第4,055,635号では、ポリマー性物質(例えば、多糖類)に共有結合した蛋白質分解性酵素の水可溶性複合体の医薬組成物を開示している。PEGをペプチドに結合させた別の実施形態では、ペプチド上のグリコシル残基を非特異的に酸化することによって行っている。酸化された糖は、ペプチドにPEG部分が結合するための部位として利用される。例えば、WO 94/05332では、ヒドラジンPEG又はアミノPEGを使用して糖蛋白質にPEGを付加することについて開示している。グリコシル部分は、対応するアルデヒドにランダムに酸化され、続いてアミノ−PEGと結合する。
【0085】
また、本開示内容は、部位特異的なPEG化を含むSAP変異体を提供する。幾つかの実施形態において、SAPプロモーターは、改変方法として、「フリー」のシステイン残基(すなわち、ジスルフィド結合に関与していないシステイン)を導入して、詳述されたマレイミド化学物質を用いて前記残基にPEGが結合することができる(例えば、以下の文献を参照されたい:Natarajan, Bioconjug Chem. 2005 Jan−Feb;16(1):113−21; Goodson, Biotechnology NY. 1990 Apr;8(4):343−6)。改変SAP変異体が提供され、ここでポリマー結合サイトは、変異体システイン残基を介して導入される。前記システイン残基は、1以上の天然SAPアミノ酸残基を置き換えることによってもよく、または、SAPポリペプチドに1以上のシステインをを付加することによってもよい。幾つかの実施形態において、システイン残基は、SEQ ID NO:1の−1の位置に導入される(すなわち、ポリペプチドのN末端に付加される)。幾つかの実施形態において、システイン残基は、SEQ ID NO:1の32番目の位置において、天然アミノ酸をシステイン残基に置き換えることによって導入される。幾つかの実施形態において、導入されたシステインはPEG化されている。
【0086】
システイン残基をPEG化する目的で、ジチオトレイトール(DDT)等の還元剤でポリペプチドをPEG化前に処理してもよい。続いて、前記還元剤は、脱塩等の従来の方法で除去される。PEGのシステイン残基への結合は、典型的には、適切なバッファ中で行われ、pHは6〜9、温度は、4℃〜25℃、時間は約16時間以下である。システイン残基に結合させるための活性PEGポリマーの例として、以下の直鎖状PEG及び分岐状PEGが含まれるがこれらに限定されない:ビニススルホン−PEG(PEG−VS)(例えば、ビニススルホン−mPEG(mPEG−VS));オルトピリジル−ジスルフィド−PEG(PEG−OPSS)(例えば、オルトピリジル−ジスルフィド−mPEG (MPEG−OPSS));及び、マレイミド−PEG(PEG−MAL)(例えば、マレイミド−mPEG (mPEG−MAL)及び分岐状マレイミド−mPEG2 (mPEG2−MAL))。
【0087】
PEG又はデキストランをSAPに付加するための1つのアプローチとして、酵素トランスグルタミナーゼ(グルタミル−ペプチド γ−グルタミルトランスフェラーゼ; EC 2.3.2.13)を利用する。該酵素は、カルシウム依存性の一級アミンへのアシル付加を触媒する(ここで、ペプチド結合したグルタミン残基のガンマ−カルボキサミド基はアシルドナーであり、前記一級アミンはアシルアクセプターでもあり、アミンドナーでもある)。従って、トランスグルタミナーゼ反応は、トランスグルタミナーゼのアミンアクセプターとして作用することができるGln残基を介して、PEG又はデキストラン等のポリマーにSAPを共有結合又は部位特異的結合をさせるために使用することができる。
【0088】
SAP中のトランスグルタミナーゼのアミンアクセプターは、天然のGln残基であってもよく、又は導入されたGln残基(即ち変異体)であってもよい。一般的に、グルタミンリピートは、該リピート中の各グルタミン残基のアクセプター特性を強化することが示されている。また、グルタミン残基へのアクセス性は、トランスグルタミナーゼ基質として機能する能力を決定する際に重要であることが示されている(Kahlem, P. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1996, 93, 14580−14585)。幾つかの実施形態において、SAP変異体はN32Q変異を含んでおり、トランスグルタミナーゼアミンアクセプターを導入している。幾つかの実施形態において、SAP変異体は、SEQ ID NO: 2と少なくとも70、80、85、90、95、98、又は100%同一のアミノ酸配列を含んでいる(ここで、Xは、任意のアミノ酸であり、Aは3〜20、及びYは1〜10である):
【0089】
XAQYHTDLSGKVFVFPRESVTDHVNLITPLEKPLQNFTLCFRAYSDLSRAYSLFSYNTQGRDNELLVYKERVGEYSLYIGRHKVTSKVIEKFPAPVHICVSWESSSGIAEFWINGTPLVKKGLRQGYFVEAQPKIVLGQEQDSYGGKFDRSQSFVGEIGDLYMWDSVLPPENILSAYQGTPLPANILDWQALNYEIRGYVIIKPLVWV (SEQ ID NO: 2)
【0090】
幾つかの実施形態において、Yは1である。幾つかの実施形態において、Yは2である。幾つかの実施形態において、SAP変異体は、トランスグルタミナーゼアミンアクセプターを介して、PEGと結合している。幾つかの実施形態において、SAP変異体は、トランスグルタミナーゼアミンアクセプターを介してデキストランと結合している。
【0091】
Gln残基にポリマーを付加する方法は、当分野では文献に記載されている(例えば、以下の文献を参照されたい:米国出願公開番号20060116322号, Sugimura et al. 281 (26): 17699. (2006); Sato, H. Adv Drug Deliv Rev. 2002 Jun 17;54(4):487−504; Sato, et al, Bioconjug Chem. 2000 Jul−Aug;11(4):502−9; Sato, et al Bioconjug Chem. 2001 Sep−Oct;12(5):701−10, Fontana, et al Adv Drug Deliv Rev. 2008 Jan 3;60(1):13−28. Epub 2007 Aug 16, Hohenadl, J Biol Chem. 1995 Oct 6;270(40):23415−20))。ポリマーは、トランスグルタミナーゼアミンドナーとして作用するであろう一級アミンを含むように結合しているか、又は改変されている。
【0092】
本明細書に記載のSAP変異体及びSAP共有結合架橋オリゴマーは、以下の細胞内で生成することができる:細菌、昆虫、酵母、真菌、又は哺乳動物(例えば、ヒトを含む)。宿主細胞がヒトである場合のこれらの例において、細胞は、生きている被験体内のものであってもよいし、又は例えば、細胞培養、組織サンプル、細胞懸濁液等中などの実験材料から単離されてもよい。他の適切な宿主細胞が当業者に知られている。
【0093】
更に、本開示内容は、SAPプロモーターを生成するための発現ベクターを提供する。例えば、企図する発現ベクターとして、SAPプロモーターをエンコードするヌクレオチド配列を含み、コーディング配列は、少なくとも1つの転写制御配列と機能的に結合している。SAPプロモーターの発現を誘導する制御配列は当分野で認識されており、複数の周知の基準で選択される。例示的な制御配列は、Goeddel; Gene Expression Technology: Methods in Enzymology, Academic Press, San Diego, CA (1990)に記載されている。例えば、機能的に結合させたときにDNA配列の発現を制御する様々な種類の任意の制御配列を、SAPプロモーターをエンコードするDNA配列を発現させるためのこれらのベクターで使用することができる。前記有用な発現制御配列として、例えば以下のものが含まれる:SV40の初期プロモーター又は後期プロモーター、アデノウィルス又はサイトメガロウイルスの最初期プロモーター、lacシステム、trpシステム、TAC又はTRCシステム、T7RNAポリメラーゼによってその発現が誘導されるT7プロモーター、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ又は他の糖分解酵素のプロモーター、酸性ホスファターゼのプロモーター(例えば、Pho5)、並びに酵母α−接合因子のプロモーター、並びに原核細胞、又は真核細胞、又はこれらのウイルス、並びにこれらの様々な組み合わせの遺伝子の発現を制御することが知られた他の配列。発現ベクターのデザインは、形質転換されるターゲット宿主細胞の選択等の要素に依存する可能性がある点を理解されたい。更に、ベクターのコピー数、前記コピー数を制御する能力、及び抗生物質マーカー等のベクターによってエンコードされる任意の他の蛋白質の発現も考慮すべきである。
【0094】
また、本開示内容は、SAPプロモーターを発現するために組み換え型遺伝子をトランスフェクトした宿主細胞を提供する。宿主細胞は、任意の原核細胞又は真核細胞であってよい。例えば、SAPプロモーターは、以下の細胞で発現させることができる:E.coli等の細菌、昆虫、酵母、又は哺乳動物。他の適切な宿主細胞が当業者に知られている。
【0095】
従って、本開示内容は、SAPプロモーターを生成するための方法を提供する。例えば、本発明のSAPプロモーターをエンコードする発現ベクターをトランスフェクトした宿主細胞は、ポリペプチドの発現の発生を許容するような適切な条件下で培養することができる。SAPプロモーターは、分泌シグナル配列を含むことにより分泌させることができ、そして、蛋白質を含む細胞と培地の混合物から単離することもできる。或いは、SAPプロモーターは細胞質内に保持することができ、該細胞は、収集され、溶解され、そして、プロモーターが単離される。細胞培養物は、宿主細胞、培地、及び他の副産物を含む。細胞培養に適した培地は周知である。蛋白質は、蛋白質を精製するための公知技術を用いて、細胞培養培地、宿主細胞、又はその両方から単離することができ、該技術としては、以下のものが含まれる:イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、限外ろ過、電気泳動、及び蛋白質の特定のエピトープに特異的な抗体を用いてたイムノアフィニティ精製。
【0096】
従って、SAPプロモーターのコーディング配列は、微生物細胞のプロセス又は真核細胞のプロセスを介した組み換え型形態の蛋白質を生成するために使用することができる。標準的な手法としては、発現ベクター等の遺伝子構築物にポリヌクレオチド配列をライゲーションする、及び宿主(真核(酵母、鳥類、昆虫、又はほ乳類)、又は原核(細菌細胞)のいずれか)に対して形質転換又はトランスフェクトを行う。
【0097】
組み換え型蛋白質を製造するための発現ビヒクルは、プラスミド及び他のベクターを含む。例えば、SAPプロモーターを発現させるための適切なベクターとして、以下の種類のプラスミドが含まれる:原核細胞(例えば、E. coli)での発現用である、pBR322−由来のプラスミド、pEMBL−由来のプラスミド、pEX−由来のプラスミド、pBTac−由来のプラスミド、及びpUC−由来のプラスミド。
【0098】
酵母での組み換え型蛋白質の発現用に、複数のベクターが存在する。例えば、YEp24、YIp5、YEp51、YEp52、pYES2、及びYRp17は、S.cerevisiaeへ遺伝子構築物を導入するのに有用なクローニングビヒクル及び発現ビヒクルである(例えば、Broach et al., (1983) in Experimental Manipulation of Gene Expression, ed. M. Inouye Academic Press, p. 83を参照。該文献の内容を本明細書に組み込む)。これらのベクターは、pBR322 oriの存在によりE.coli中で複製することができ、また、酵母の2ミクロンプラスミドの複製決定因子によりS.cerevisiaeの中で複製することができる。独立栄養選択、又は対抗選択がしばしば酵母で用いられる。そして、薬剤耐性マーカー(例えば、アンピシリンなど)が細菌で用いられる。
【0099】
ほ乳類発現ベクターは、細菌内のベクター増殖を促進する原核配列、及び真核細胞で発現する1種以上の真核転写単位の両方を含むことができる。以下に由来するベクターは、真核細胞のトランスフェクションに適切なほ乳動物発現ベクターの例である:pcDNAI/amp、pcDNAI/neo、pRc/CMV、pSV2gpt、pSV2neo、pSV2−dhfr、pTk2、pRSVneo、pMSG、pSVT7、pko−neo、及びpHyg。これらのベクターのうち幾つかは、細菌プラスミド(例えば、pBR322)からの配列を用いて改変され、原核細胞及び真核細胞の両方における複製及び薬剤耐性選択を促進する。或いは、ウイルスの誘導体(例えば、ウシパピローマウィルス(BPV−1)、又はエプスタイン−バーウィルス(pHEBo、pREP由来、及びp205))は、真核細胞における蛋白質の一時的な発現の為に使用することができる。他のウィルス性(レトロウイルス性も含む)発現システムの例は、後述の遺伝子治療送達システムの記載の中に見出すことができる。プラスミドの調製及び宿主生物の形質転換に用いられる様々な方法が周知となっている。原核細胞及び真核細胞の両方に適した他の発現システム並びに一般的な組み替え手法については、以下の文献を参照されたい:Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed., ed. by Sambrook, Fritsch and Maniatis (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989) Chapters 16 and 17。幾つかの例において、バキュロウイルス発現システムを使用することによって組み換え型SAPポリペプチドを発現することが望ましい可能性がある。前記バキュロウイルス発現システムの例として、pVL−由来のベクター(例えば、pVL1392、pVL1393、及びpVL941)、pAcUW由来のベクター(例えば、pAcUW1)、及びpBlueBac由来のベクター(例えば、beta−galを含有するpBlueBac III)が含まれる。
【0100】
幾つかの例において、脊椎動物細胞では、SAPプロモーターを生成することが望ましく、培養(組織培養)での脊椎動物細胞の増殖は、ルーチン手法になる。有用なほ乳類宿主細胞株の例としては、以下の物が挙げられる:SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS−7, ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓株(懸濁液培養中で増殖するためにサブクローンされた293又は293細胞、Graham et al., J. Gen Virol. 36:59. (1977));幼児ハムスター腎臓細胞(BHK, ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO, Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980));マウスセルトリ細胞(TM4, Mather, Biol. Reprod. 23:243−251 (1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76, ATCC CRL−1587);ヒト子宮頚癌細胞(HELA, ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK, ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A, ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138, ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(Hep G2, HB 8065);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562, ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383:44−68 (1982));MRC 5細胞;FS4細胞;ヒト肝臓癌株(Hep G2);及び、骨髄腫又はリンパ腫細胞(例えば、Y0, J558L, P3 及びNS0細胞)(米国特許第5,807,715号参照)。
【0101】
ある実施形態において、SAPプロモーター製造は、インビトロ翻訳システムを用いて行うことができる。インビトロ翻訳システムは、一般的に、RNA分子を蛋白質に翻訳するための必要最小限の要素を少なくとも含有する細胞フリーな抽出物である翻訳システムである。典型的に、インビトロ翻訳システムは、リボソーム、tRNA、開始剤メチオニル−tRNAMet、蛋白質、又は翻訳に関与する複合体(例えば、eIF2、eIF3、cap結合蛋白質(CBP)を含むcap結合(CB)複合体、及び真核開始因子4F(eIF4F)を少なくとも含む。種々のインビトロ翻訳システムが周知であり、市場で入手可能であるキットが含まれる。インビトロ翻訳システムの例としては、真核細胞溶解物が含まれ、例えば、ウサギ網状赤血球溶解物、ウサギ卵母細胞溶解物、ヒト細胞溶解物、昆虫細胞溶解物、及び小麦胚芽抽出物が挙げられる。細胞溶解物については、例えば、以下の製造業者から入手できる:Promega Corp., Madison, Wis.; Stratagene, La Jolla, Calif.; Amersham, Arlington Heights, Ill.; 及びGIBCO/BRL, Grand Island, N.Y.。典型的には、インビトロ翻訳システムは、巨大分子を含み、例えば、酵素、翻訳因子、開始因子、及び伸長因子、化学薬剤、並びにリボソーム等が挙げられる。更に、インビトロ転写システムを使用することができる。該システムは、典型的には、少なくとも以下の要素を含む:RNAポリメラーゼホロ酵素、リボヌクレオチド、並びに任意の転写開始因子、伸長因子、及び終了因子。インビトロ転写及び翻訳は、ワンポット反応で組み合せて、1種以上の単離DNAから蛋白質を生成することができる。
【0102】
生成物の特性(例えば、翻訳後の改変及び/又はフォールディング)において、再現可能な一貫性をもって大量の蛋白質を生成することが困難であることがよくある。幾つかの実施形態において、本開示内容のSAP変異体は、(特にインビボでの使用のための(例えば、治療用薬剤としての))SAP蛋白質を製造する効率が上昇していることを特徴としている(例えば、蛋白質生成物をより多く製造すること、蛋白質生成物の均一性が上昇すること、蛋白質生成物の安定性が上昇すること)。幾つかの実施形態において、本開示内容のSAP変異体は、同一の細胞株において発現する野生型SAPと比べると、細胞内(例えば、原核細胞、真核細胞)で発現したときに、上昇した安定性、及び/又は均一性を有することを特徴とする。例えば、組み換え型蛋白質は、一般的に、該蛋白質の結合グリカン構造に関して高度な不均一性を有することを特徴とする。グリコシル化を阻害するための改変アミノ酸配列を有するSAP変異体(例えば、SEQ ID NO:1の32番目の位置におけるアミノ酸置換、例えば、N32D)は、細胞から更に均一に生成されることが期待される。
【0103】
例示的な実施形態において、SAP変異体は、例えば、巨大分子(特に他の蛋白質及び核酸)の混入、感染性の又は発熱性の薬剤が無いことに関して、80%、85%、90%、95%、98%、99%、若しくは99.9%の純度、又はこれらよりも高い純度で精製することができる。SAP変異体は、実質的に他のポリペプチドを有さなくてもよく、特に動物由来の他のポリペプチドを実質的的に有さなくても良い。
【0104】
SAP変異体は、画分方法及び/又は従来の精製方法並びに培地を用いて精製することができる。サンプルを画分化するために、硫酸アンモニウム沈殿、及び酸又はカオトロープ抽出を使用することができる。例示的な精製ステップとして、ヒドロキシアパタイト、サイズ排除、FPLC及び逆相高速液体クロマトグラフィーを含むことができる。適切な陰イオン交換メディアとして、誘導体化されたデキストラン、アガロース、セルロース、ポリアクリルアミド、特殊シリカ等が含まれる。PEI、DEAE、QAE及びQ誘導体も適しており、例えば、DEAE Fast−Flow Sepharose (Pharmacia, Piscataway, NJ)が含まれる。例示的なクロマトグラフィーのメディアとして、フェニル基、ブチル基、又はオクチル基で誘導体化されたメディア(例えば、Phenyl−Sepharose FF (Pharmacia), Toyopearl butyl 650 (Toso Haas, Montgomeryville, PA), Octyl−Sepharose (Pharmacia)等);又は、ポリアクリル樹脂(例えばAmberchrom CG 71 (Toso Haas)等)が含まれる。適切な固体担体として、以下の物が含まれる:ガラスビーズ、シリカ−ベース樹脂、セルロース樹脂、アガロースビーズ、架橋したアガロースビーズ、ポリスチレンビーズ、架橋したポリアクリルアミド樹脂等。これらは使用される条件下で不溶性である。これらの担体は、蛋白質との結合を可能にする反応基で修飾することができ、反応基としては例えば、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、ヒドロキシル基、及び/又は炭化水素部分がある。カップリング化学の例としては、臭化シアノゲン活性化、N−ヒドロキシスクシンイミド活性化、エポキシド活性化、スルフヒドリル活性化、ヒドラジド活性化、並びにカルボジイミドカップリング化学のためのカルボキシル及びアミノ誘導体が含まれる。これらの又は他の固体メディアは周知であり、当分野で幅広く使用されており、市販の販売元から入手可能である。担体にポリペプチドを結合させるための方法は周知となっている。特定の方法を選択することはルーチンな設計事項であり、選択した担体の特性を一因として決定される。例えば、以下の文献を参照されたい:Affinity Chromatography: Principles & Methods (Pharmacia LKB Biotechnology, Uppsala, Sweden, 1988)。また、本明細書に記載のSAP変異体は、アフィニティータグ(例えば、ポリヒスチジン、マルトース−結合蛋白質、GST、デンプン結合ドメイン、FLAG、及び免疫グロブリンドメイン)を用いて単離し、本明細書で更に記載するように精製を促進することができる。
【0105】
治療方法
ある態様において、本開示内容は、患者においてSAP応答異常を治療するための方法を提供し、該方法は、治療を必要とする患者に本発明のSAP変異体又はSAPオリゴマーを治療上有効量で投与することによる。治療における投与量及び頻度は、当業者が決定することができ、患者の症状、年齢、及び体重、並びに治療又は予防すべき異常の性質や発病度合いによって変動するであろう。幾つかの実施形態において、SAP変異体又はSAPオリゴマーは、患者に対して、1日に1回若しくは2回、1週間に1回若しくは2回、ひと月に1回若しくは2回、又は症状の発症直前若しくは発症時に投与される。
【0106】
投与量については、当業者に知られた技術又は本明細書中の教示によって容易に決定することができる。SAPの毒性及び治療用効率は、実験動物での標準的な医薬的手続によって決定することができ、例えば、LD50及びED50を決定することができる。前記ED50(Effective Dose 50)は、50%の動物群において特定の効果を生み出すのに必要な薬剤量である。LD50(Lethal Dose 50)は、50%のサンプル群を殺す薬剤量である。
【0107】
幾つかの実施形態において、SAP応答異常は線維症である。線維症のための治療としてSAPを使用することについては、米国特許出願2007/0243163号に記載されており、本明細書中に組み込まれる。対象の方法を用いた治療を受けることができる線維症関連の異常として、以下のものが含まれるがこれらに限定されない:膠原病、間質性肺疾患、ヒト線維性肺疾患(例えば、閉塞性細気管支炎、特発性肺線維症、既知の病因からの肺線維症、肺疾患における腫瘍ストロマ、肺に影響を及ぼす全身性強皮症、Hermansky−Pudlak症候群、石炭労働者の塵肺症、石綿症、珪肺、慢性肺高血圧症、AIDS関連肺高血圧症、サルコイドーシス、中度から深刻なものまでの喘息等)、繊維性の血管病、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、静脈瘤、冠梗塞、脳梗塞、心筋線維症、筋骨格線維症、術後癒着、ヒト腎臓病(例えば、腎炎症候群、アルポート症候群、HIV関連ネフロパシー、腎嚢胞、ファブリー病、糖尿病性ネフロパシー、慢性糸球体腎炎、全身性狼瘡に関連した腎炎等)、全身性進行性硬化症(PSS)、初期スカロッピング胆管炎(primary scalloping cholangitis (PSC))、肝臓線維症、肝硬変、腎臓線維症、肺線維症、嚢胞性繊維症、慢性移植片対宿主病、強皮症(局所性及び全身性)、グレーブス眼症、糖尿病性網膜症、緑内障、ペーロニー病、ペニス線維症、膀胱鏡検査後の尿道狭窄症、外科手術後の内側癒着、瘢痕化、骨髄線維症、突発性腹膜後線維症、既知の病因からの腹膜性線維症、薬剤誘導麦角中毒、良性又は悪性癌に付随する線維症発生、微生物感染付随する線維症発生(例えば、ウィルス性、細菌性、寄生虫性、真菌性等)、アルツハイマー病、炎症性腸疾患に付随する線維症(クローン病及び顕微鏡的大腸炎における狭窄形成を含む)、ストローマ細胞腫瘍、粘膜炎、化学的又は環境的な損傷によって誘発される線維症(例えば、癌化学療法、殺虫剤、又は放射線(例えば、癌放射線治療))。
【0108】
幾つかの実施形態において、線維症関連の異常は、以下のものから選択される:全身性又は局所性強皮症、ケロイド、肥大性傷跡、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、肺炎、及び線維症、突発性肺線維症、肝硬変、慢性B型又はC型肝炎感染の結果生じる線維症、腎臓病、損傷組織の結果から生じる心臓病、黄斑改質、並びに網膜症及びガラス体網膜症。幾つかの実施形態において、線維症関連異常は、化学療法の薬剤、放射線誘発線維症、並びに傷及び火傷から生じる。幾つかの実施形態において、線維症関連異常又は症状は、術後の傷跡、例えば、続いて行われる線維柱帯切除術、又は他の眼のろ過手術、から生じる。
【0109】
幾つかの実施形態において、SAP応答性異常は、過敏性異常であり、例えば、Th1又はTh2応答を介したものが挙げられる。また、過敏症治療用としてのSAPの使用については、米国仮特許出願番号61/209,795に記載されており、本明細書に組み込まれる。SAPを用いた治療を受けることができる過敏性関連異常としては、以下のものが含まれるがこれらに限定されない:アレルギー性鼻炎、アレルギー性副鼻腔炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性気管支収縮、アレルギー性呼吸困難、アレルギー性である肺粘液生成の増加、アトピー性湿疹、皮膚炎、蕁麻疹、アナフィラキシー、肺炎及びアレルギー性−喘息。
【0110】
幾つかの実施形態において、本発明のSAP変異体又はSAPオリゴマーは、アナフィラキシー等の様々な抗原に対するアレルゲン特異的免疫応答を治療するために使用することができ、以下の抗原が含まれるがこれらに限定されない:抗菌剤(例えば、セファロスポリン、スルホンアミド、ペニシリン及び他のβ−ラクタム)、抗痙攣薬(例えば、フェニトイン、フェノバルビタール、カルバマゼピン、ダプソン、アロプリノール、及びミノサイクリン)、化学療法剤(例えば、タキサン、白金化合物、アスパラギナーゼ、及びエピポドフィロトキシン)、ヘパリン、インシュリン、プロタミン、アスピリン、及び他の非ステロイド性抗炎症性薬剤、筋弛緩剤(例えば、サクシニルコリン、アトラクリウム、ベクロニウム、及びパンクロニウム)、誘導剤(induction agents)(例えば、バルビツレート、エトミデート、プロポフォール)、麻酔薬(例えば、フェンタニル、メペリジン、モルヒネ)、血管内容量拡張のためのコロイド、造影剤、血液製剤、ラテックス、動物産物、動物鱗屑、イエダニ、昆虫(例えば、牙、針、毒液)、化粧品、金属(例えば、ニッケル、コバルト、及びクロム酸)、植物、胞子、花粉、食物(例えば、ミルク、卵、小麦、大豆、ピーナッツ、及び木の実、シーフード)、ワクチン接種、及び真菌性の抗原(例えば、Aspergillus, Curvularia, Exserohilum,及びAlternaria species)。
【0111】
幾つかの実施形態において、SAP応答性異常は、自己免疫疾患であり、例えば、Th1又はTh2応答を介するものが挙げられる。また、自己免疫疾患のための治療剤としてSAPを使用することについては、米国仮特許出願61/209,845に記載されており、本明細書中に組み込まれる。SAPを用いた治療を受けることができる自己免疫関連の異常として、以下のものが含まれるがこれらに限定されない:I型糖尿病、多発性硬化症、リューマチ性関節炎、乾癬性関節炎、自己免疫性心筋炎、天疱瘡、重症筋無力症、橋本甲状腺炎、グレーヴス病、アジソン病、自己免疫性肝炎、慢性Lyme関節炎、家族性拡張型心筋症、若年性皮膚筋炎、多発性軟骨炎、シェーグレン症候群、乾癬、若年性突発性関節炎、炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、慢性閉塞性肺疾患、及び移植片対宿主病。
【0112】
幾つかの実施形態において、SAP応答性異常は粘膜炎である。また、粘膜炎のための治療剤としてSAPを使用することについては、米国仮特許出願12/217,614に記載されており、本明細書中に組み込まれる。本発明の方法は、口内、食道、及び胃腸の粘膜炎、並びに胃潰瘍、十二指腸潰瘍、又は胃及び食道のびらんの治療に有用である可能性がある。
【0113】
幾つかの実施形態において、本発明のSAP変異体又はSAPオリゴマーは、炎症性の病気を治療するために使用することができる。幾つかの実施形態において、炎症性疾患は、ウィルス性、細菌性、真菌性、又は寄生虫性の感染であってもよい。また、ウィルス性感染のための治療剤としてSAPを使用することについては、米国特許6,406,698及び国際公開WO1997/026906に記載されており、両方とも本明細書中に組み込まれる。
【0114】
医薬製剤及び配合物
特定の態様において、本開示内容は、投与のために配合された1種以上のSAP治療用薬剤(すなわち、SAP変異体及びSAPオリゴマー)を含む医薬製剤を提供する。本発明の治療用薬剤は、1種以上の生理学的に許容可能なキャリア又は賦形剤を用いた従来の態様で配合することができる。例えば、治療用薬剤並びにそれらの生理学的許容可能な塩及び溶媒和物は、以下の方法で投与するために配合することができる:例えば、注入(例えば、SubQ、IM,IP)、吸入若しくは吹送(口又は鼻のいずれかを介して)、又は経口、口腔内、舌下、経皮的、鼻腔、非経口(腸管外)、若しくは直腸の投与。ある実施形態において、治療用薬剤は、ターゲット細胞が存在する部位(即ち、特定の組織、器官、又は液体(例えば、血液、脳脊髄液、腫瘍量等))に局所的に投与することができる。
【0115】
また、本発明は、本発明に係る任意のSAP変異体又はSAPオリゴマーの利用を更に提供し、該利用とは、本明細書中に記載した異常又は症状を患者において治療又は予防するための薬品を製造する際の利用であり、例えば、本明細書中に記載した異常又は症状の治療のための薬品を製造する際にSAP変異体又はSAPオリゴマーを利用することである。幾つかの態様において、本発明に係る任意のSAP変異体又はSAPオリゴマーは、本明細書中に記載した病気又は症状の治療又は予防を行う際に使用するための医薬製剤を製造するために使用することができる。
【0116】
治療用薬剤は、種々の投与モードのために配合することができ、該投与モードとしては、全身性及び局在性又は局所性の投与が含まれる。技術及び配合については、一般的に、以下の文献に見出すことができる:Remington’s Pharmaceutical Sciences, Meade Publishing Co., Easton, PA。非経口(腸管外)投与に関しては、注射が好ましく、筋肉内、静脈内、腹腔内及び皮下の注入が含まれる。注射に関しては、化合物は液体溶液中に配合することができ、好ましくは、生理学的適合可能なバッファ(例えば、ハンクス溶液、又はリンガー溶液)中に配合する。更に、前記化合物は、固体形態で配合して、使用直前に再溶解又は懸濁することもできる。また、凍結乾燥形態も含まれる。幾つかの実施形態において、治療用薬剤は、当業者に知られた種々の方法で細胞に投与することができ、該方法として以下の方法が含まれるがこれらに限定されない:リポソーム中でカプセル化、イオン浸透療法、他のベシクル内への取り込み(例えば、ヒドロゲル、シクロデキストリン、生分解性ナノカプセル、及び生付着性ミクロスフェア)。
【0117】
経口投与に関しては、医薬的組成物は、例えば、錠剤、ロゼンジ、又はカプセルといった形態をとることができ、該形態は、従来の手段で、医薬的に許容可能な賦形剤と共に調製される。該賦形剤としては、例えば以下のものが含まれる:結合剤(例えば、予めゼラチン状にしたトウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、、ラクトース、微結晶性セルロース、又はリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、又はシリカ);錠剤分解物質(例えば、ポテトデンプン、又はグリコール酸デンプンナトリウム);又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)。錠剤は、周知の方法でコーティングすることができる。経口投与のための液体調製物は、例えば、溶液、シロップ、又は懸濁液等の形態をとることができ、また、該調製物は、水や他の適切な媒体を使用前に用いて構築するための乾燥生成物として提供されてもよい。前記液体調製物は、従来の手段を用いて医薬的に許容可能な添加剤と共に調製することができる。該添加剤として、例えば以下の物が含まれる:沈殿防止剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、又は水素化された食用油脂);乳化剤(例えば、レシチン又はアカシア);非水性媒体(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、又は分画化した植物性油);、及び保存剤(例えば、メチル若しくはプロピル−p−ヒドロキシベンゾエート、又はソルビン酸)。また、調製物は、緩衝塩、矯味剤、着色剤、及び甘味料を適宜含むことができる。経口投与のための調製物は、活性化合物を制御しながら放出するために適切に配合することができる。
【0118】
吸入による投与(例えば、肺への送達)に関して言うと、治療用薬剤は、便宜上、適切な推進剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の適切なガス)を使用して、加圧パック又は噴霧器からエアロゾル・スプレー投与する形態で投与することができる。加圧エアロゾルの場合、投与単位は、計量された分量だけ送達するためのバルブを設けることによって決定することができる。吸入器又は吹き入れ器において使用することを目的とする、例えば、ゼラチン等のカプセル及びカートリッジは、前記化合物と適切な粉末ベース(ラクトース又はデンプン等)との混合粉末を含有して配合することができる。
【0119】
また、本発明の方法において、医薬的化合物は、吹送、粉末、及びエアロゾル配合物を含む鼻腔内又は気管支内の経路で投与することができる(例えば、ステロイド吸入剤については、以下の文献を参照されたい:Rohatagi (1995) J. Clin. Pharmacol. 35:1187−1193; Tjwa (1995) Ann. Allergy Asthma Immunol. 75:107−111)。例えば、エアロゾル配合物は、許容可能な加圧推進薬(例えば、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素等)内に設置することができる。また、前記配合物は、例えば、噴霧器(nebulizer又はatomizer)中など、非加圧調製物のための医薬品として配合することもできる。典型的には、前記投与は、医薬的に許容可能な水性バッファ中での形態となる。
【0120】
SAPポリペプチド変異体の呼吸系送達(例えば、鼻腔、吸入等)に適切な医薬組成物は、固体又は液体のいずれかの形態で調製することができる。
【0121】
本発明のSAP変異体又はSAPオリゴマーは、注入(例えば、大量注入又は連続注入)による非経口(腸管外)投与の為に配合することができる。注入のための配合物は、添加保存薬と共に、単位投与形態(例えば、アンプル、又はマルチ投与容器)で投与することができる。組成物は、例えば、油性又は水性の媒体中で懸濁液、溶液、又はエマルジョンの形態をとることができる。そして、該組成物は、製剤化剤(例えば、沈殿防止剤、安定化剤、及び/又は分散剤)を含むことができる。或いは、前記有効成分は、使用前に適切な媒体(例えば、滅菌済発熱性物質除去水)を用いて構築するための粉末形態であってもよい。
【0122】
また、本発明のSAP変異体又はSAPオリゴマーは、デポ製剤(蓄積性製剤)として配合することもできる。こうした長期間作用する配合物は、移植(例えば、皮下、又は筋肉内、)、又は筋肉内注入によって投与することができる。従って、例えば、治療用薬剤は、適切なポリマー性若しくは疎水性材料(例えば、(製薬的に)許容可能な油中のエマルジョンとして)、又はイオン交換樹脂、又は難可溶性誘導体(例えば、難可溶性可溶性塩)を用いて配合することができる。また、制御放出配合物として、パッチも含まれる。
【0123】
ある実施形態において、本明細書中に記載の化合物は、中枢神経システム(CNS)への送達目的で配合することができる(下記の文献を参照されたい:Begley, Pharmacology & Therapeutics 104: 29−45 (2004))。CNSへの薬物送達のための従来のアプローチは、以下のものがふくまれる:神経外科手術的方法(例えば、脳内注入、又は脳室内注入);薬剤の分子的な操作(例えば、内因性輸送経路の1つである脳血流関門を利用しようとする試みにおいて、それ自体脳血流関門を通過することができない薬剤と組み合せて、内皮細胞表面分子と親和性を有する輸送ペプチドを含むキメラの融合蛋白質を製造すること);薬剤の脂質溶解度を増加させるようにデザインする薬理学的方法(例えば、脂質又はコレステロールキャリアに水可溶性薬剤を結合させること);及び、高浸透圧破壊によるBBB(脳血流関門)の完全性の一時的な破壊(頚動脈にマンニトール溶液を注射すること、又はアンギオテンシンペプチド等の生物学的活性剤の使用することから生じる)。
【0124】
ある実施形態において、本発明のSAP変異体又はSAPオリゴマーは、局所性配合物に組み込まれ、該配合物は、局所的薬物投与に一般的に適した局所性キャリアを含有し、及び任意の前述した公知物質を含む。前記局所性キャリアは、所望の形態で組成物を提供するように選択することができ、例えば、軟膏、ローション、クリーム、マイクロエマルジョン、ゲル、オイル、溶液等が挙げられる。また、前記局所性キャリアは、天然由来又は人工合成由来のいずれかの材料で構成することができる。選択されたキャリアは、局所性配合物の有効成分又は他の構成成分に逆効果を及ぼさないことが好ましい。本明細書中の使用のための適切な局所性キャリアの例としては、水、アルコール及び他の非毒性有機的溶媒、グリセリン、鉱物油、シリコーン、ワセリン、ゼリー、ラノリン、脂肪酸、植物性油、パラベン、ワックス等が含まれる。
【0125】
医薬的組成物(化粧用調製物も含む)は、約0.00001〜100%の割合(例えば、0.001〜10重量%、又は0.1重量%〜5重量%)で本明細書中に記載の1種以上のSAP変異体又はSAPオリゴマーを含むことができる。ある局所的配合物において、有効成分は、以下に述べる量で存在する:約0.25重量%〜75重量%の配合物、好ましくは約0.25重量%〜30重量%の配合物、より好ましくは約0.5重量%〜15重量%の配合物、そして、最も好ましくは約1.0重量%〜10重量%の配合物。
【0126】
眼の症状については、例えば、治療用薬剤の全身の、局所的な、眼内の注入を行うことにより、又は治療用薬剤を放出する持続放出デバイスを挿入することにより、治療又は予防を行うことができる。本発明のSAP変異体又はSAPオリゴマーは、眼の角膜及び内部領域(例えば、前眼房、結膜、後眼房、硝子体、眼房水、硝子体液、角膜、虹彩/毛様体、レンズ、脈絡膜/網膜、及び強膜)へ化合物が浸透するのに充分な時間、化合物の眼表面への接触を維持させるように医薬的に許容可能な眼の媒体中に送達することができる。前記医薬的に許容可能な眼の媒体は、例えば、軟膏、植物性油、又はカプセル材料であってもよい。或いは、前記化合物は、直接硝子体及び眼房水に注入することができる。更に別の方法として、前記化合物は、眼の治療目的で、静脈内への注射又は注入等により、全身へ投与することもできる。
【0127】
本明細書中に記載の治療用薬剤は、当分野での方法に従った酸素の無い環境で保存することができる。
【0128】
例示的な組成物は、1種以上の医薬的に許容可能なキャリア、及び、任意で、他の治療用成分とともに、SAP変異体又はSAPオリゴマーを含むことができる。キャリア(複数可)は、組成物の他の成分と適合可能で、患者において許容できない有害な効果を誘引しないという意味において、「医薬的に許容可能」でなければならない。こうしたキャリアについては、本明細書中に記載されているか、又は薬理学分野の当業者に周知である。幾つかの実施形態において、医薬的組成物は、発熱性物質を含まず、ヒト患者への投与に適している。幾つかの実施形態において、医薬的組成物は、無刺激であり、ヒト患者への投与に適している。幾つかの実施形態において、医薬的組成物は、アレルゲンを含まず、ヒト患者への投与に適している。組成物は、製薬分野で周知である任意の製薬方法によって製造することができる。
【0129】
幾つかの実施形態において、SAP変異体又はSAPオリゴマーは、時間放出配合物中で投与され、例えば、除放ポリマーを含む組成物中で投与される。SAP変異体又はSAPオリゴマーは、急激な放出から保護するキャリアと共に製造することができる。例としては、制御放出媒体(例えば、ポリマー)、マイクロカプセル化した送達システム、又は生体付着性ゲルが含まれる。或いは、SAP変異体又はSAPオリゴマーの延長送達は、吸収を送らせる組成物薬剤中に含ませることによって達成することができる(例えば、モノステアリン酸アルミニウム、ヒドロゲル、及びゼラチン)。
【0130】
核酸化合物を送達する方法については当分野で公知である(例えば、以下の文献を参照されたい:Akhtar et al., 1992, Trends Cell Bio., 2, 139; 及び Delivery Strategies for Antisense Oligonucleotide Therapeutics, ed. Akhtar, 1995; Sullivan et al., 国際公開WO 94/02595)。こうしたプロトコルを、実質的にすべての核酸化合物を送達するために使用することができる。核酸化合物は、当業者に知られた様々な方法により細胞へ投与することができる。該方法として、以下のものが含まれるがこれらに限定されない:リポソーム内のカプセル化、イオン浸透療法、又は、他の媒体内(例えば、ヒドロゲル、シクロデキストリン、生分解性ナノカプセル、及び生付着性マイクロスフフィア)への取り込み。或いは、前記核酸/媒体の組合せは、直接注入又は注入ポンプによって、局所的に送達される。送達のための他のルートとしては、経口送達(錠剤又はピルの形態)、及び/又は鞘内送達(Gold, 1997, Neuroscience, 76, 1153−1158)が含まれるがこれらに限定されない。他のアプローチとしては、様々な輸送及びキャリアシステムの使用が含まれ、例えば、結合物及び生分解性ポリマーの使用が挙げられる。薬物送達方法についての包括的なレビューについては、以下の文献を参照されたい: Ho et al., 1999, Curr. Opin. Mol. Ther., 1, 336−343 及び Jain, Drug Delivery Systems: Technologies and Commercial Opportunities, Decision Resources, 1998 及び Groothuis et al., 1997, J. NeuroVirol., 3, 387−400。核酸の送達及び投与に関する更なる詳細については、以下の文献に記載されている:Sullivan et al., supra, Draper et al., PCT WO93/23569, Beigelman et al., 国際公開WO99/05094,及び Klimuk et al.,国際公開WO99/04819。
【実施例】
【0131】
下記の実施例は、上述の発明を用いた態様をより完全に記述し、並びに本発明の様々な態様を実施することを企図したベスト・モードを明らかにすべく提供される。こうした実施例は、本発明の真の範囲を決して制限する意味で提供されるものではなく、むしろ、例示目的で提示されることを理解されたい。
【0132】
実施例1:
カルシウム介在性自集に対して耐性のSAP変異体
配列SEQ ID NO:1に対してE167Qアミノ酸置換を含む組み換え型ヒトSAP(rhSAP)変異体をCHO細胞内で発現させ、CHO細胞培養培地から精製した。そして、rhSAP変異体のカルシウム介在性凝集を、野生型rhSAPの対応サンプルと比較した。カルシウム量を段階的に増加させて、rhSAP変異体E167Q、又は野生型rhSAPのいずれかの溶液に添加した(それぞれ、SAP濃度は4.4mg/mL)。そして、SAP凝集量は、分光光度計を用いて600nmでの溶液の吸光度を測定することによって観察した。図1は、rhSAP変異体E167Qについて、野生型rhSAPと比べて、カルシウム介在性凝集に対する耐性が有意に高いことを示している。
【0133】
また、rhSAP変異体E167Qの薬物速度論(PK)を野生型rhSAPの対応サンプルと比較した。ラットに、rhSAP変異体E167Q又は野生型rhSAPの対応サンプルのいずれかを投与した(ラット1匹あたりの投与量1mg/kg 静脈(i.v.)、n=3)。その後24時間、ラットは、SAP蛋白質の血漿濃度(μg/mL)について評価を行った。図2は、rhSAP変異体E167Qが野生型rhSAPと類似のプラズマ半減期を有することが示している。
【0134】
更なる実験において、インビトロバイオアッセイを使用して、rhSAP変異体E167Qの相対活性を決定した。該アッセイにおいて、単球が豊富な末梢血単核球(PBMC)を、rhSAP変異体E167Q又はhSAPのいずれかの濃度を変化させて96時間インキュベートした。該インキュベーションに続いて、結果となる培養上澄みを除去し、ELISAによりアッセイして、生成されたマクロファージ由来ケモカイン(MDC)の量を定量した。MDCは、線維芽細胞によって生成されるので、単球が線維芽細胞へ分化したことを示す。サンプルの50%阻害濃度(IC50)をhSAP参考スタンダードと比較することにより、SAP変異体の相対効能を決定することができる。結果は、サンプル対hSAP参考スタンダードのIC50比率として表される。
【0135】
全てのSAPサンプル及びスタンダードは、最初に、Supplemented FibroLife Media中で、1.0 mg/mLの濃度に希釈された。SAPスタンダードは、連続して希釈され、以下の実用スタンダードが生成された。60、30、20、13.4、8.8、6.0、3.0、1.5、及び0.75μg/mL(最終スタンダード濃度30、15、10、6.7、4.4、3.0、1.5、0.75、及び0.375μg/mL)。以下の表1を参照されたい。
【0136】
【表1】

【0137】
ELISAアッセイの準備として、キャプチャ抗体(即ち、マウス抗ヒトMDC)を、キャリア蛋白質が無い状態でPBS中で実用濃度に希釈した。希釈した前記キャプチャ抗体を、96−ウェルプレートにコーティングするために使用した。その後、各プレートを、シールして、室温で一晩インキュベートした。コーティングされたプレートを使用する前に、各ウェルを吸引して、洗浄バッファーで洗浄し、前記プロセスを2回繰り返した(全体で三回の洗浄を行った)。その後、プレートは、300μLの試薬希釈液を各ウェルに加えて、1時間室温でインキュベートすることによって、ブロックした。インキュベーション後、吸引及びウェル洗浄手順を繰り返した。
【0138】
ELISAアッセイのために、単球/線維芽細胞培養、又はSAPスタンダードのいずれかからの上澄みのサンプル100μLを各ウェルに添加した。その後、ウェルの吸引及び洗浄を行う前に、プレートを2時間室温でインキュベートした。そして、ストレプトアビジン−HRPの実用希釈液を100μL、各ウェルに追加した。プレートは、ストップ溶液50μLを各ウェルに追加する前に、20分間室温でインキュベートした。すぐに、各ウェルの吸光度を、450nmに設定したマイクロプレートリーダーを用いて測定した。もし、波長の補正が可能である場合には、前記マイクロプレートリーダーは、540nm又は570nmに設定した。もし、波長の補正ができない場合には、540nm又は570nmの読取結果は、450nmでの読み取り結果から差し引いた。こうした差し引きにより、プレートにおける光学的不完全性を是正する。
【0139】
図3は、rhSAP変異体E167Qが、少なくとも野生型rhSAPと同じくらい生物学的に活性があることを示している。
【0140】
実施例2:脱グリコシル化SAP変異体は、改変されたプラズマ半減期及び生物学的活性を有する。
配列SEQ ID NO:1に対してN32Dアミノ酸置換を含む組み換え型ヒトSAP(rhSAP)変異体を、CHO細胞内で発現させ、CHO細胞培養培地から精製した。該突然変異は、N−グリコシル化コンセンサス部位が崩壊しており、それによって、該部位においてSAPへN結合型グリカンが結合することが妨害されている。並行して、野生型hSAPは、シアリダーゼで処理し、SAPポリペプチド(すなわち、アシアロhSAP)に結合した全てのシアル酸部分を除去した。未処理のrhSAP N32D及びアシアロhSAPの両方について、rhSAPの対応サンプルとPKアッセイにおいて比較を行い、インビボでの血清の安定性を測定した(図4)。rhSAP N32DのPKは、野生型SAPと比べてわずかに減少していたのに対して、rhSAP N32Dの半減期は、アシアロhSAPの半減期よりも実質的に高かった。更に、rhSAP N32D変異体は、インビトロバイオアッセイを用いて、血清由来のhSAPの対応サンプルと比較を行い、これらの蛋白質の相対活性を決定した(図3)。これらのデータは、N32DSAP変異体は、野生型hSAPに劣らず、プラズマ半減期及び生物学的活性を維持していることが示している。
【0141】
実施例3:PEGのSAPへの共有結合
組み換え型ヒトSAP(rhSAP)変異体を20kDaの活性化されたメトキシPEG誘導体(PEG)に共有結合させた。前記PEG部分は、図5に示した以下のプロトコルに従って、rhSAPの一級アミン基に結合させた。まず、rhSAP1mgに対して、約1mgの20kDaのメトキシ−PEG−スクシンイミジル−カルボキシメチル エステル(JenKem cat# M−SCM−20K)を、rhSAP溶液20mg/mLに溶解させた。室温で24時間カップリング反応を進行させた。結果物であるPEG化rhSAPを、陰イオン交換クロマトグラフィーによって反応構成物から精製した。クロマトグラフィーカラムの画分をプールして濃縮した(図6)。こうした手順で製造されたPEG化rhSAPは、1〜3の20kDaPEG/プロモーターを含んでいた。そして、SDS−PAGEで評価されているが、1 PEG/プロモーターが、最も豊富な形態となっていた。
【0142】
PEG化rhSAP及びヒト血清由来SAP(hSAP)については、インビトロバイオアッセイを用いて生物学的活性に関するアッセイを行った。該アッセイにおいては、単球リッチな末梢血単核球(PBMC)を、PEG化rhSAP又はhSAPのいずれかの濃度を変化させて96時間インキュベートした。該インキュベーション後、結果物である培養上澄み液を除去し、ELISAでアッセイを行い、産生されたマクロファージ由来ケモカイン(MDC)の量を定量した。MDCは線維細胞によって生成されるため、従って、単球が線維細胞に分化したことを示す。サンプルの50%阻害濃度(IC50)を、hSAP参考スタンダードと比べることによって、SAP変異体の相対効能を決定することができる。前述の実施例に記載されているように、結果については、サンプル対hSAP参考スタンダードのIC50比率で表されている。
【0143】
PEG化rhSAP変異体は、hSAP対応サンプルと比べて、IC50比が0.24であった。この結果によって、PEG化rhSAPは、野生型SAPに劣らず、活性を有することが示された。
【0144】
参照による組み込み
本明細書で記述した全ての刊行物及び特許文献については、個々の刊行物及び特許文献がそれぞれ特異的に又は個別に記載されているかのように、その全体の内容が本明細書中に組み込まれる。
【0145】
主題に関する特定の実施形態について議論してきたが、上述した明細書の内容は、例示的なものであって、決して限定的なものではない。本明細書及び後述の特許請求の範囲をレビューすれば、当業者にとって多くのバリエーションが明らかとなるであろう。本発明の全範囲は、均等物の全範囲、及び、明細書、前記バリエーションと共に、特許請求の範囲を参照することにより決定されるべきものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5つのSAPプロモーターを含む血清アミロイドP(SAP)変異体であって、各前記SAPプロモーターが、SEQ ID NO:1と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有し、且つ少なくとも1つの前記SAPプロモーターは、血清由来ヒトSAPの対応サンプルと比べて、前記SAP変異体の生物学的活性を変える1以上のアミノ酸突然変異又は化学的改変を有する該変異体。
【請求項2】
請求項1に記載のSAP変異体であって、前記SAP変異体は、ヒトSAP蛋白質の変異体である該変異体。
【請求項3】
請求項1に記載のSAP変異体であって、1以上の前記SAPプロモーターが、SEQ ID NO:1と少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有する該変異体。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項に記載のSAP変異体であって、前記生物学的活性が、上昇したプラズマ半減期、上昇したインビトロ安定性、上昇したインビボ安定性、又は上昇した製造効率の1つ以上から選択される該変異体。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項に記載のSAP変異体であって、少なくとも1つの前記SAPプロモーターが、SEQ ID NO:1に記載の配列に対する変異体アミノ酸を含む該変異体。
【請求項6】
請求項1〜4いずれか1項に記載のSAP変異体であって、1以上の前記SAPプロモーターが、N結合型グリカン又はO結合型グリカンを実質的に有さない該変異体。
【請求項7】
請求項6に記載のSAP変異体であって、1以上の前記SAPプロモーターにおいて、SEQ ID NO:1の32番目の位置のアミノ酸がアスパラギン(N)以外である該変異体。
【請求項8】
請求項7に記載のSAP変異体であって、前記SAPプロモーターにおいて、SEQ ID NO:1の32番目の位置のアミノ酸が、アスパラギン酸(D)、グルタミン(Q)、又はグルタミン酸(E)である該変異体。
【請求項9】
請求項1〜8いずれか1項に記載のSAP変異体であって、前記SAP変異体は、血清由来ヒトSAPの対応サンプルと比べて、プロテアーゼ切断耐性が高い該変異体。
【請求項10】
請求項9に記載のSAP変異体であって、前記SAP変異体において、セリンプロテアーゼ、スレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、金属プロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ、又はこれらの組合せによるプロテアーゼ切断耐性がより高い該変異体。
【請求項11】
請求項9又は10に記載のSAP変異体であって、前記SAP変異体において、キモトリプシン、トリプシン、プロナーゼ、又はこれらの組合せによるプロテアーゼ切断耐性が高い該変異体。
【請求項12】
請求項9〜11いずれか1項に記載のSAP変異体であって、前記SAP変異体が、SEQ ID NO:1の144番目の位置のアミノ酸がフェニルアラニン(F)以外である少なくとも1つのSAPプロモーターを含む該変異体。
【請求項13】
請求項9〜11いずれか1項に記載のSAP変異体であって、前記SAP変異体が、SEQ ID NO:1の145番目の位置のアミノ酸がD以外である少なくとも1つのSAPプロモーターを含む該変異体。
【請求項14】
請求項9〜11いずれか1項に記載のSAP変異体であって、前記SAP変異体が、SEQ ID NO:1の144番目の位置のアミノ酸がF以外であり、更にSEQ ID NO:1の145番目の位置のアミノ酸がD以外である少なくとも1つのSAPプロモーターを含む該変異体。
【請求項15】
請求項12又は14に記載のSAP変異体であって、前記SAPプロモーターが、SEQ ID NO:1の144番目の位置において、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、又はアラニン(A)を含む該変異体。
【請求項16】
請求項13又は14に記載のSAP変異体であって、前記SAPプロモーターが、SEQ ID NO:1の145番目の位置において、グルタミン酸(E)を含む該変異体。
【請求項17】
請求項1〜16いずれか1項に記載のSAP変異体であって、前記SAP変異体は、血清由来ヒトSAPの対応サンプルと比べて、カルシウム依存性自己凝集に対する耐性が高い該変異体。
【請求項18】
請求項17に記載のSAP変異体であって、前記SAP変異体が、SEQ ID NO:1の167番目の位置のアミノ酸がE以外である少なくとも1つのSAPプロモーターを含む該変異体。
【請求項19】
請求項18に記載のSAP変異体であって、前記SAPプロモーターが、SEQ ID NO:1の167番目の位置において、アスパラギン酸(D)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、アラニン(A)、又はヒスチジン(H)への突然変異を含む該変異体。
【請求項20】
請求項1〜19いずれか1項に記載のSAP変異体であって、前記SAP変異体が、1種以上の不活性ポリマーと共有結合した1以上のアミノ酸を含む少なくとも1つのSAPプロモーターを含む該変異体。
【請求項21】
請求項20に記載のSAP変異体であって、前記少なくとも1種の不活性ポリマーが、ポリエチレングリコール(PEG)部分である該変異体。
【請求項22】
請求項21に記載のSAP変異体であって、前記PEG部分が、前記SAPプロモーターの少なくとも1つの天然システイン残基、又は変異体システイン残基に結合している該変異体。
【請求項23】
請求項22に記載のSAP変異体であって、前記変異体システイン残基が、SEQ ID NO:1のN末端に位置している該変異体。
【請求項24】
請求項21に記載のSAP変異体であって、前記PEG部分が、SEQ ID NO:1の少なくとも1つの天然グルタミン(Q)残基又は変異体グルタミン(Q)残基に結合している該変異体。
【請求項25】
請求項24に記載のSAP変異体であって、前記天然グルタミン(Q)残基 が、SEQ ID NO:1の32番目の位置である該変異体。
【請求項26】
請求項20〜25いずれか1項に記載のSAP変異体であって、前記少なくとも1種の不活性ポリマーがデキストラン部分である該変異体。
【請求項27】
請求項26に記載のSAP変異体であって、前記デキストラン部分が、SEQ ID NO:1の少なくとも1つの天然グルタミン残基又は変異体グルタミン残基と結合している該変異体。
【請求項28】
請求項27に記載のSAP変異体であって、前記天然グルタミン残基が、SEQ ID NO:1のアミン酸配列に対応するQ32の位置にある該変異体。
【請求項29】
少なくとも2つのSAPペンタマーを含む共有結合的に架橋したSAPオリゴマーであって、前記各SAPペンタマーは、5つのSAPプロモーターを含むSAPオリゴマー。
【請求項30】
請求項29に記載の共有結合的に架橋したSAPオリゴマーであって、前記架橋SAPオリゴマーが、ヒト血清から単離したSAPの対応サンプルと比べて、上昇したプラズマ半減期、上昇したインビトロ安定性、及び上昇したインビボ安定性のうち1以上を有することを特徴とする該SAPオリゴマー。
【請求項31】
請求項29又は30に記載の共有結合的に架橋したSAPオリゴマーであって、1以上の前記SAPプロモーターが、SEQ ID NO:1と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有する該SAPオリゴマー。
【請求項32】
請求項29〜31いずれか1項に記載の共有結合的に架橋したSAPオリゴマーであって、少なくとも1つの前記SAPペンタマーが、請求項1〜28のいずれか1項に記載のSAP変異体である該SAPオリゴマー。
【請求項33】
請求項29〜32いずれか1項に記載の共有結合的に架橋したSAPオリゴマーであって、前記SAPペンタマーが、1種以上の化学架橋剤を介して共有結合している該SAPオリゴマー。
【請求項34】
請求項33に記載の共有結合的に架橋したSAPオリゴマーであって、少なくとも1種の前記化学架橋剤が、ヘテロ二官能性架橋剤である該SAPオリゴマー。
【請求項35】
請求項34に記載の共有結合的に架橋したSAPオリゴマーであって、前記ヘテロ二官能性架橋剤が、スクシンイミジル 4−(N−マレイミドメチル) シクロヘキサン−1−カルボキシレート、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミド エステル、N−スクシンイミジル (4−ヨードアセチル) アミノベンゾエート、スクシンイミジル 4−(p−マレイミドフェニル) ブチレート、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル) カルボジイミド 塩酸 、4−スクシンイミジルオキシカルボニル−α−メチル−α(2−ピリジルジチオ)−トルエン、N−スクシンイミジル 3−(2−ピリジルジチオ) プロピオネート、又はスクシンイミジル 6−((3−(2−ピリジルジチオ) プロピオネート) ヘキサノエートから選択される該SAPオリゴマー。
【請求項36】
請求項33に記載の共有結合的に架橋したSAPオリゴマーであって、少なくとも1種の前記化学架橋剤がホモ二官能性架橋剤である該SAPオリゴマー。
【請求項37】
請求項36に記載の共有結合的に架橋したSAPオリゴマーであって、前記ホモ二官能性架橋剤が、ジスクシンイミジルスベリン酸塩、ビスマレイミドヘキサン、又はジメチルピメルイミデート−2 HClから選択される該SAPオリゴマー。
【請求項38】
請求項33に記載の共有結合的に架橋したSAPオリゴマーであって、少なくとも1種の前記化学架橋剤が、光反応架橋剤である該SAPオリゴマー。
【請求項39】
請求項38に記載の共有結合的に架橋したSAPオリゴマーであって、前記光反応架橋剤が、ビス−(β−(4−アジドサリチルアミド)エチル)ジスルフィド、又はN−スクシンイミジル−6−(4’−アジド−2’−ニトオフェニル−アミノ)ヘキサノエートから選択される該SAPオリゴマー。
【請求項40】
ほ乳類での使用に適した医薬製剤であって、請求項1〜39のいずれか1項に記載のSAP変異体、又は共有結合的に架橋したSAPオリゴマー、及び製薬的に許容可能な担体を含む該医薬製剤。
【請求項41】
請求項41に記載の医薬製剤であって、持続放出性配合物として調製される該医薬製剤。
【請求項42】
請求項40又は41に記載の医薬製剤であって、前記医薬製剤が、注入、静脈注射、吸入、継続的デポ注射、又はポンプにより局所的に患者に投与するのに適している該医薬製剤。
【請求項43】
患者において線維性又は線維増殖性の異常又は症状を治療又は予防する方法であって、請求項1〜39のいずれか1項に記載のSAP変異体又は共有結合的に架橋したSAPオリゴマーを、該治療又は予防を必要とする患者に、治療上有効量投与することを含む該方法。
【請求項44】
患者において、過敏性の異常又は症状を治療又は予防する方法であって、請求項1〜39のいずれか1項に記載のSAP変異体又は共有結合的に架橋したSAPオリゴマーを、該治療又は予防を必要とする患者に、治療上有効量投与することを含む該方法。
【請求項45】
患者において、自己免疫性の異常又は症状を治療又は予防する方法であって、請求項1〜39のいずれか1項に記載のSAP変異体又は共有結合的に架橋したSAPオリゴマーを、該治療又は予防を必要とする患者に、治療上有効量投与することを含む該方法。
【請求項46】
患者において、粘膜炎を治療又は予防する方法であって、請求項1〜39のいずれか1項に記載のSAP変異体又は共有結合的に架橋したSAPオリゴマーを、該治療又は予防を必要とする患者に、治療上有効量投与することを含む該方法。
【請求項47】
請求項43〜46いずれか1項に記載の方法であって、前記SAP変異体又は共有結合的に架橋したSAPオリゴマーを、注入、静脈注射、吸入、継続的デポ注射、若しくはポンプ、又はこれらの組合せにより局所的に投与する該方法。
【請求項48】
請求項43〜47いずれか1項に記載の方法であって、追加の有効成分を患者に投与することを更に含む該方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−530714(P2012−530714A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516311(P2012−516311)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/039043
【国際公開番号】WO2010/148234
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(510006945)プロメディオール, インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】