説明

ひずみゲージの製造方法

【課題】インライン生産可能なひずみゲージの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、ひずみゲージの製造方法を提供し、該方法は、接着樹脂フィルム上に抵抗性材料からなる箔がコーティングされた転写箔フィルムを準備する工程;ひずみの被測定物の外表面上の所望の部分に、該転写箔フィルムの該接着樹脂フィルム面を当接させる工程;および該転写箔フィルムを処理して、該接着樹脂を介して箔ゲージパターンを該被測定物に転写する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ひずみゲージの製造方法に関する。より詳細には、軸受などに箔ゲージを直接設置することが可能な、ひずみゲージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
転動体を用いた軸受には、一般的に、剛性を増す目的、あるいは、運搬時の微動や摩耗の防止のために隙間をなくす目的などで、転動体に予圧が付与されている。従来は、予圧自体の計測は行われておらず、例えば、締め付けトルク圧の値に基づいて予圧を間接的に計測すること、あるいは技術者の勘に頼って予圧を付与することが多かった。そのため、予圧が適切に設定されていないおそれがあった。
【0003】
このような軸受において、予圧を直接計測する目的で、ひずみゲージなどの圧力センサを軸受の外表面に設けることが開示されている(特許文献1)。ここでは、軸受の外表面に溝が設けられており、その中に圧力センサが収納されている。この圧力センサによって、ナットの締め付けによって付与される予圧の値をモニターでき、適正な値に設定できることが報告されている。
【0004】
一般的なひずみゲージである箔ゲージは、プラスチックなどのベース上に数ミクロン厚の抵抗箔がフォトエッチングなどによってパターン形状に接着された構造であり、通常、接着剤で被測定物に貼り付けられている。このように、箔ゲージの製造にはウェットプロセスが用いられることが多く、さらに、箔ゲージを搭載したベースを個々に被測定物に対して接着させる必要がある。したがって、軸受の製造プロセスにおいて、軸受にインラインでひずみゲージを取り付けることは困難であった。
【特許文献1】特開2002−213438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、インライン生産可能なひずみゲージの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ひずみゲージの製造方法を提供し、該方法は、
接着樹脂フィルム上に抵抗性材料からなる箔がコーティングされた転写箔フィルムを準備する工程;
ひずみの被測定物の外表面上の所望の部分に、該転写箔フィルムの該接着樹脂フィルム面を当接させる工程;および
該転写箔フィルムを処理して、該接着樹脂を介して箔ゲージパターンを該被測定物に転写する工程;
を含む。
【0007】
好適な実施態様では、上記抵抗材料は、銅ニッケル合金、ニッケルクロム合金、銅マンガン合金、および鉄クロム合金からなる群より選択される。
【0008】
より好適な実施態様では、上記転写箔フィルムに、上記抵抗性材料からなる箔と接するようにリード線が配置されている。
【0009】
ある好適な実施態様では、上記接着樹脂は熱硬化性接着樹脂である。
【0010】
さらに好適な実施態様では、上記被測定物は軸受である。
【0011】
本発明はまた、抵抗性材料からなるひずみゲージが、接着樹脂のみを介して外表面上に付与されている、部材を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法によれば、簡便な手段によって、ひずみゲージを被測定物の表面上に直接付与することができる。さらに、本発明の方法によれば、被測定物の製造ラインにおいてひずみゲージを付与することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
ひずみゲージは、ひずみを受感するとその電気抵抗が変化する性質を利用したものである。ひずみゲージは、ひずみを受感する抵抗素子の種類によって、箔ゲージ、線ゲージ、半導体ゲージなどに分類される。本発明においては、ひずみゲージとは、主として箔ゲージのことをいう。箔ゲージは、抵抗素子が抵抗性材料からなる箔(抵抗箔)で形成されたパターンを有しており、被測定物に応じて所定の抵抗値を有するように、任意のゲージ長ならびに任意のグリッド幅および本数を有する(図1を参照のこと)。ゲージ長は、通常0.15〜120mmであり、グリッド幅は、通常0.1〜50mmである。一般的には、数mm×数mm程度の大きさである。
【0014】
抵抗性材料としては、通常、抵抗箔として使用され得る材料であれば、特に限定されない。このような抵抗性材料としては、銅ニッケル合金(例えば、コンスタンタン、アドバンス)、ニッケルクロム合金(例えば、ニクロム、カルマ)、銅マンガン合金(例えば、マンガニン、イサベリン、ノボコンスタント)、鉄クロム合金などが挙げられる。抵抗性材料は、所望の抵抗を有するものが適宜選択される。
【0015】
本発明で使用される接着樹脂フィルムは、主として有機高分子接着樹脂からなるフィルムである。本発明においては、加熱、加圧、紫外線照射、電子線照射などによって硬化する接着樹脂フィルムが好適である。このような接着樹脂としては、熱硬化性接着樹脂(例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン系接着樹脂など)、感圧性接着樹脂、感光性接着樹脂などが挙げられる。本発明においては、接着力や転写の容易性などの点で、熱硬化性接着樹脂が好適である。接着樹脂フィルムの厚さは、通常、約0.1〜5μmである。
【0016】
本発明において、転写箔フィルムとは、上記接着樹脂フィルム上に上記抵抗性材料からなる箔(薄膜)がコーティングされたフィルムである。抵抗性材料は、真空蒸着、スパッタリング、めっきなどの当業者が一般的に用いる手段によって、接着樹脂フィルムの片面上にほぼ均一にコーティングされている。この転写箔フィルムには、箔ゲージパターンが形成されている必要はない。箔(薄膜)の厚さは、特に限定されないが、通常は、数μm、より好適には約0.1〜2.0μmである。転写箔フィルムには、必要に応じて、さらに、転写の際に箔を保護するための転写保護フィルムがコーティングされていてもよい。このような転写保護フィルムとしては、ポリエステルフィルムなどが挙げられる。あるいは、転写箔フィルムには、必要に応じて、複数の任意の長さのリード線が、箔と接するように所定の間隔で配置されていてもよい。リード線は、箔ゲージに電流を流してその電気抵抗変化を測定するための装置と箔ゲージとを連結する目的で、便宜のために設けられる。リード線は、例えば、はんだ付けや点溶接によって抵抗箔と接続され得る。
【0017】
本発明において、ひずみの被測定物は、固体の部材であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、軸受、トルク計、圧力計などの部材が挙げられる。
【0018】
本発明のひずみゲージの製造方法について、以下でより詳細に説明する。本発明の方法は、箔転写技術を利用して行われる。すなわち、本発明の方法は、接着樹脂フィルム上に抵抗性材料からなる箔がコーティングされた転写箔フィルムを準備する工程;ひずみの被測定物の外表面上の所望の部分に、該転写箔フィルムの該接着樹脂フィルム面を当接させる工程;および該転写箔フィルムを処理して、該接着樹脂を介して箔ゲージパターンを該被測定物に転写する工程を含む。
【0019】
まず、接着樹脂フィルム上に抵抗性材料からなる箔がコーティングされた転写箔フィルムを準備する工程では、ひずみの被測定物に応じて、上記の転写箔フィルムを準備する。
【0020】
次いで、ひずみの被測定物の外表面上の所望の部分に、該転写箔フィルムの該接着樹脂フィルム面を当接させる。ここでは、単に所望の部分に配置するだけであって、加熱や加圧などは行わない。
【0021】
次いで、該転写箔フィルムを処理して、該接着樹脂を介して箔ゲージパターンを該被測定物に転写する。ここで、処理とは、接着樹脂の種類に応じて異なり、加熱、加圧、紫外線照射、電子線照射などの手段によって、転写箔フィルムの上から所定の箔ゲージパターンの形状を描画または押し当てることをいう。この処理によって、箔ゲージパターンが転写される。
【0022】
接着樹脂が熱硬化性接着樹脂である場合、例えば、転写箔フィルムの上から加熱しながら所定のパターンを描画または押し当てることによって、箔ゲージパターンが被測定物の外表面に転写される。加熱の手段としては、例えば、感熱転写プリンターに使用されているようなサーマルヘッドを用いて印刷すること、所定のパターンの型を加熱して押し当てること、レーザー照射によって描画することなどが挙げられる。
【0023】
感圧性接着樹脂の場合、例えば、転写箔の上から所定のパターンの型を押し当てること、あるいはピンの先端を押し当てながら所定のパターンを描画することによって転写することができる。
【0024】
感光性接着樹脂の場合、例えば、紫外線ビームによって転写箔の上から所定のパターンを描画すること、あるいは、所定のパターンのフォトマスクを介して紫外線を照射することによって、箔ゲージパターンが被測定物の外表面に転写される。
【0025】
このようにして、被測定物の外表面上に、箔ゲージパターンが容易に転写される。
【0026】
転写された箔ゲージパターンは、必要に応じて、さらに保護フィルムで被覆され得る。保護フィルムとしては、ポリエステルフィルムなどが挙げられる。保護フィルムは、適切な接着樹脂を用いて箔ゲージパターン全体を覆うように接着され得る。あるいは、保護フィルムは、溶融または溶解した保護フィルム材料を、箔ゲージパターン全体を覆うように塗布した後、冷却または乾燥させることによって形成することもできる。あるいは、保護フィルムは、めっきによって形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の方法によれば、非常に簡便な手段によって、ひずみゲージを被測定物の表面上に直接付与することができる。さらに、本発明の方法によれば、被測定物の製造ラインにおいてひずみゲージを付与することが可能となる。そのため、ひずみゲージの付与が必要な被測定物の製造効率を改善できる。特に、軸受などに容易に付与することができるので、予圧の適切な設定に有用である。また、トルク計、圧力計などにも応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】箔ゲージパターンの一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0029】
1 箔ゲージ
2 リード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ひずみゲージの製造方法であって、
接着樹脂フィルム上に抵抗性材料からなる箔がコーティングされた転写箔フィルムを準備する工程;
ひずみの被測定物の外表面上の所望の部分に、該転写箔フィルムの該接着樹脂フィルム面を当接させる工程;および
該転写箔フィルムを処理して、該接着樹脂を介して箔ゲージパターンを該被測定物に転写する工程;
を含む、方法。
【請求項2】
前記抵抗材料が、銅ニッケル合金、ニッケルクロム合金、銅マンガン合金、および鉄クロム合金からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記転写箔フィルムに、前記抵抗性材料からなる箔と接するようにリード線が配置されている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記接着樹脂が熱硬化性接着樹脂である、請求項1から3のいずれかの項に記載の方法。
【請求項5】
前記被測定物が軸受である、請求項1から4のいずれかの項に記載の方法。
【請求項6】
部材の外表面上に接着樹脂を介して転写された、抵抗性材料からなる箔ひずみゲージ。

【図1】
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【公開番号】特開2007−271285(P2007−271285A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−93710(P2006−93710)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(501003227)株式会社ミレニアムゲートテクノロジー (5)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】