説明

アウトサイドミラー

【課題】ハウジングカバー内部への気流の流入を抑制し、内部で発生し得るエッジトーン、キャビティートーン、共鳴音等の異音を抑制するドアミラーの構造を提供する。
【解決手段】車体5に装着されるベース部材70と、ベース部材に回動自在に支持された支持軸71と、ベース部材との間に隙間10を有し、支持軸と一体回転可能に設けられたハウジングカバー72と、ハウジングカバーに装着されたミラー73とを備えたアウトサイドミラー7において、ハウジングカバーにおける、ベース部材との間の隙間10と対向する部分に、隙間からハウジングカバー72内に流入する気流12と対峙する壁部75を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウトサイドミラーに関し、詳しくはアウトサイドミラーの騒音低減技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の側面に装備されている可倒式のアウトサイドミラーは、車体に装着されるベース部材と、ベース部材に回動自在に支持された支持軸と、支持軸と一体回転可能に設けられたハウジングカバーと、ハウジングカバーに装着されたミラーとを備えている。そして、電動格納式の場合、ハウジングカバーの内部に電動駆動源や駆動伝達部材などが収納されていて1つのユニットとされている。このため、ハウジングカバーの内部構造は複雑となっていて、走行時に、ハウジングカバーとベース部材との間の隙間からハウジングカバー内に進入した気流が、支持軸等の内部部品と衝突してエッジトーンを発生させる場合や、ハウジングカバー内を通過する際に、キャビティートーンや共鳴音を発生させる場合がある。
このため特許文献1では、支持軸に凸凹形状を形成し、気流により発生する音源となる周期的な渦を崩壊させることで、気流が衝突する際に発生するエッジトーンを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−241618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては、周期的な渦を崩壊させてはいるが、ハウジングカバー内部の空洞で発生するキャビティートーンや共鳴音は、依然として発生する可能性が高く、ハウジングカバー内部で発生し得る複数の異音を抑制できる構造が要望されている。
本発明は、ハウジングカバー内部への気流の流入を抑制し、内部で発生し得るエッジトーン、キャビティートーン、共鳴音等の異音を抑制するドアミラーの構造を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るアウトサイドミラーは、車体に装着されるベース部材と、ベース部材に回動自在に支持された支持軸と、ベース部材との間に隙間を有し、支持軸と一体回転可能に設けられたハウジングカバーと、ハウジングカバーに装着されたミラーとを備え、ハウジングカバーにおける、ベース部材との間の隙間と対向する部分に、隙間からハウジングカバー内に流入する気流と対峙する壁部を設けたことを特徴としている。
本発明に係るアウトサイドミラーにおいて、壁部は、支持軸の外側に形成され、ベース部材に向かって突出したリング状のリブであることを特徴としている。
本発明に係るアウトサイドミラーにおいて、ベース部材側に位置するリング状のリブの端部は、ベース部材に向かって凹凸状に形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、支持軸と一体回転可能に設けられたハウジングカバーにおける、車体に装着されるベース部材との間の隙間と対向する部分に、隙間からハウジングカバー内に流入する気流と対峙する壁部を設けることで、車両走行時にハウジングカバーに沿って流れ、隙間からハウジングカバー内へ進入する気流の流速が減速されるので、ハウジングカバー内部への気流の流入が抑制され、ハウジングカバー内部で発生し得るエッジトーン、キャビティートーン、共鳴音などの異音を抑制することができる。
本発明によれば、壁部を、支持軸の外側に形成され、ベース部材に向かって突出したリング状のリブとして形成した場合、ベース部材側に位置するリング状のリブの端部をベース部材に向かって凹凸状に形成することで、リブに衝突した気流によってリブの下流側で二次的に発生する周期的な渦流を、凹凸状の部分によって崩壊することができるので、周期的な渦流を発生源とする共鳴音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係るアウトサイドミラーが装着された車両の概略平面図。
【図2】車両に装着されたアウトサイドミラーの状態を説明する図。
【図3】本発明に係るアウトサイドミラーの第1の実施形態を示す分解図。
【図4】第1の実施形態に係るアウトサイドミラーの主要部となる壁部近傍の構成と気流の流れを示す部分拡大断面図。
【図5】従来のアウトサイドミラーの構成による気流の速度分布を示す図。
【図6】第1の実施形態のアウトサイドミラーの構成による気流の速度分布を示す図。
【図7】本発明に係るアウトサイドミラーの第2の実施形態を示す分部拡大図。図。
【図8】第2の実施形態に係るアウトサイドミラーの主要部となる壁部近傍の構成と気流の流れを示す部分拡大断面図。
【図9】第2の実施形態のアウトサイドミラーの構成による気流の速度分布を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を用いて本発明に係る実施形態について説明する。
図1において、車両1の運転席2側と助手席3側に配置された車体となるフロントサイドドア4,5には、車両側方および後方を視認するための可倒式のアウトサイドミラー6,6が装着されている。各アウトサイドミラー6は、左右対称の構成であり、その構成は同一構成であるので、以下、一方のアウトサイドミラー6を例に説明する。アウトサイドミラー7は、図2に示すように、ベース部材70と、ベース部材70に回動自在に支持された支持軸71と、支持軸71と一体回転可能に設けられたハウジングカバー72と、ハウジングカバー72に装着されたミラー73と、ミラー73を左右方向と上下方向に可動させてミラー面の角度を調整する図示しない駆動機構とを備えている。
【0009】
ベース部材70は、フロントサイドドア5に固定されていて、ハウジングカバー72を、ミラー73のミラー面が車両後方側を向く起立位置と、同ミラー面がウインドガラス8と対向する2点鎖線で示す格納位置へと回動可能に支持軸71を支持している。
【0010】
ベース部材70とハウジングカバー72との間には、図4に示すように、ハウジングカバー72の回動時にベース部材70が干渉しないように、支持軸71近傍において隙間10が設けられている。ベース部材70には、中空状の支持軸71を支持するための受け部70bが形成された窪み部70aが形成されている。
【0011】
このようなアウトサイドミラー6,6を備えた車両1が走行すると、走行風がハウジングカバー72に当たり、同カバーの表面に沿って気流12が流れるが、その際に隙間10からハウジングカバー72内に進入し、この進入した気流12が、支持軸71等の内部部品と衝突してエッジトーンを発生させる場合や、ハウジングカバー72内を通過する際に、キャビティートーンや共鳴音を発生させる場合がある。
(第1の実施形態)
そこで本形態では、図3、4に示すように、ハウジングカバー72における、ベース部材70との間に設けられた隙間10と対向する部分に、隙間10からハウジングカバー72内に流入する気流12と対峙する壁部75を設けたことを特徴としている。この壁部75は支持軸71の外側に位置するハウジングカバー72に、ベース部材70に向かって突出したリング状のリブとして形成されている。このリンク状のリブとして形成された壁部75は、支持軸71が受け部70bで支持された状態の時に、ベース部材70の窪み部70aに内に進入するように配置されていて、隙間10と対峙するように配置されている。ただしハウジングカバー72はベース部材70に対して回動するために、窪み部70aの内面70cと壁部75の外面75aの間には回動時の抵抗を低減するために、隙間10よりも狭いクリアランス11を設定している。また、支持軸71の外周面71aとハウジングカバー72との間も組付性を考慮した隙間13が形成されている。
【0012】
本発明者らは、このような構成のアウトサイドミラー6における気流の流れについてコンピュータを用い解析した。その解析結果を図5,図6に示す。図5は壁部75を持たない従来のアウトサイドミラーに対して走行時と同様の気流を与えたときの解析結果を示し、図6は、本形態の主要部となる壁部75を有するアウトサイドミラーに対して走行時と同様の気流を与えたときの解析結果を示す。解析結果は、気流の速度分布をカラー画像として表示するものであるが、図面上ではカラー表示ができないため、速度分布の境界線を線図として示した。
【0013】
従来構成のアウトサイドミラー場合、図5に示すように壁部75がないので、気流12は、隙間10から支持軸71の外周面71aとハウジングカバー72の間の隙間13からハウジングカバー72内に流入するとともに、ベース部材70の窪み部70a内において、速度分布の密度が高く、複数の渦流を発生されている。また、壁部75が無いため、その流速は低減すること無く、隙間10から隙間13を介してハウジングカバー72内に流入する。このため、エッジトーンを発生やハウジングカバー72内を通過する際にキャビティートーンや共鳴音を発生してしまう。
【0014】
これに対し本形態の構成のアウトサイドミラー場合、図6に示すように壁部75があるため、気流12が隙間10に流れ込むと壁部75に衝突して抵抗となるため、その速度が減速される。また、隙間10に進入して減速された気流12は、隙間11を介してベース部材70の窪み部70a内に進入するが、その際、壁部75によってその流れ方向が変更され隙間11を介してベース部材70の窪み部70a内に進入し、隙間13を介してハウジングカバー72に流入するので、その時の気流12の速度は、壁部75がない場合よりも減速されているとともに、気流12が壁部75を回り込んでからハウジングカバー72内に流入するため、流動抵抗が大きく、より減速されてからハウジングカバー72内に流入するものと考えられる。
【0015】
このように、ベース部材70とハウジングカバー72の間の隙間10や、ハウジングカバー72内への流入速度を低減することができるため、従来の構成に比べて、支持軸71等の内部部品と衝突時エッジトーンの発生や、ハウジングカバー72内を通過する際のキャビティートーンや共鳴音の発生を抑制することができる。
(第2の実施形態)
図7、図8に示す第2の実施形態では、第1の実施形態におけるリング状のリブとして形成された壁部75に対して、ベース部材70側に位置するリング状のリブの端部75Cをベース部材70に向かって凹凸状に形成したことを特徴としている。
【0016】
第1の実施形態においては、隙間10から進入する気流は、壁部75の外面75aからベース部材70の窪み部70aに案内されて壁部75の内面75bと支持軸71の外周面71aとの間の隙間13を介してハウジングカバー72内に流入するが、図6に示すように、壁部75の端部75cを通過した下流側での流速密度が高く、隙間13での渦流が発生することが見受けられる。このため、この端部75cを凹凸状とした。凹凸状とする領域は、成形性を考慮すると、支持軸71の端部75cの全周でも良いが、凹凸状の効果としては、少なくとも気流12が進入する側に位置する領域にだけ形成されていれば良い。
【0017】
図9は本形態の主要部となる壁部75の端部75cを凹凸状としてアウトサイドミラーに対して走行時と同様の気流を与えたときの解析結果を示す。解析結果は、気流の速度分布をカラー画像として表示するものであるが、図面上ではカラー表示ができないため、第1の実施形態と同様に、速度分布の境界線を線図として示した。
【0018】
このように壁部75の端部75cを凹凸状に形成すると、図9に示すように、端部75cよりも気流12の下流側となる端部75c近傍および隙間13で速度分布の密度が、図6に示す場合と比べて低くなった。これは、端部75cの凹凸形状によって渦流が崩壊されて速度分布の密度が低下したものと考えられる。このような渦流の発生がなくなると、これを起因する共鳴音を抑制することができる。
【0019】
上記形態において、壁部75は、支持軸71の周囲を全周するリング状のリブとして形成したので、全周方向からの気流12の進入を抑制することができ、支持軸71等の内部部品と衝突時エッジトーンの発生や、ハウジングカバー72内を通過する際のキャビティートーンや共鳴音の発生を抑制することができるとともに、成形も容易に行える。
【符号の説明】
【0020】
4,5 車体
6 アウトサイドミラー
10 隙間
70 ベース部材
71 支持軸
72 ハウジングカバー
73 ミラー
75 壁部
75c リブの端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に装着されるベース部材と、前記ベース部材に回動自在に支持された支持軸と、前記ベース部材との間に隙間を有し、前記支持軸と一体回転可能に設けられたハウジングカバーと、前記ハウジングカバーに装着されたミラーとを備えたアウトサイドミラーにおいて、
前記ハウジングカバーにおける、前記ベース部材との間の隙間と対向する部分に、前記隙間から前記ハウジングカバー内に流入する気流と対峙する壁部を設けたことを特徴とするアウトサイドミラー。
【請求項2】
請求項1記載のアウトサイドミラーにおいて、
前記壁部は、前記支持軸の外側に形成され、前記ベース部材に向かって突出したリング状のリブであることを特徴とするアウトサイドミラー。
【請求項3】
請求項2記載のアウトサイドミラーにおいて、
前記ベース部材側に位置する前記リング状のリブの端部は、前記ベース部材に向かって凹凸状に形成されていることを特徴とするアウトサイドミラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−240422(P2012−240422A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108638(P2011−108638)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】