アクチュエータ装置
【課題】振動を抑制することで安定した動作を確保できるアクチュエータ装置を得る。
【解決手段】ベース板10と、加圧板15と、平板状の圧電素子20A,20Bと、該圧電素子20A,20Bの間に挿入された補強板25と、圧電素子20A,20Bの一端部の表面に貼着された摩擦板30A,30Bと、圧電素子20Bの他端部裏面側に取り付けた重り40と、ベース板10と加圧板15との間に介在されたスペーサ36と、を備えたアクチュエータ装置。ベース板10及び/又は加圧板15には振動抑制部材が設けられている。例えば、機械的な内部損失の大きな樹脂シートやゴムシートが貼着されている。あるいは、ベース板10及び/又は加圧板15の振動を減衰させる突起が形成されている。
【解決手段】ベース板10と、加圧板15と、平板状の圧電素子20A,20Bと、該圧電素子20A,20Bの間に挿入された補強板25と、圧電素子20A,20Bの一端部の表面に貼着された摩擦板30A,30Bと、圧電素子20Bの他端部裏面側に取り付けた重り40と、ベース板10と加圧板15との間に介在されたスペーサ36と、を備えたアクチュエータ装置。ベース板10及び/又は加圧板15には振動抑制部材が設けられている。例えば、機械的な内部損失の大きな樹脂シートやゴムシートが貼着されている。あるいは、ベース板10及び/又は加圧板15の振動を減衰させる突起が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータ装置、特に、圧電素子を駆動源とするアクチュエータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電素子を駆動源とするアクチュエータ装置として、特許文献1には、電気的作用により伸縮し、該伸縮方向に平行な平面を有する圧電素子と、前記圧電素子の伸縮方向に平行な平面上に載置され、かつ、前記圧電素子の伸縮方向の前端に固定された第1摩擦部材と、前記第1摩擦部材の上面に当接するように載置され、被駆動体を駆動する駆動部材と、前記第1摩擦部材に対して前記駆動部材を押圧する押圧機構部と、前記圧電素子の伸縮方向の後端を固定する固定部材と、を有する圧電素子を用いた駆動装置が記載されている。
【0003】
しかし、前記駆動装置においては、圧電素子の駆動に伴って、摩擦部材や駆動部材に意図しない振動が発生しやすいという問題点を有している。それゆえ、振動に起因する適切な押圧が維持できず、安定した動作を確保できなかった。具体的には、駆動周波数が制限されたり、駆動速度の低下を招いていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−65777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、振動を抑制することで安定した動作を確保できるアクチュエータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明の一形態であるアクチュエータ装置は、
所定の間隔で互いに対向して配置されたベース板及び加圧板と、
前記ベース板と前記加圧板との間に挟持され、電圧の印加に伴って面方向に伸縮する平板状の圧電素子と、
を備えたアクチュエータ装置であって、
前記ベース板及び/又は前記加圧板に振動抑制部材が設けられていること、
を特徴とする。
【0007】
前記アクチュエータ装置において、圧電素子が所定の周波数電圧で駆動されると、駆動周波数ないしその高調波での振動がベース板や加圧板に発生しやすい。しかし、このような振動は、ベース板及び/又は加圧板に設けられた振動抑制部材によって抑制され、ベース板と加圧板による圧電素子の挟着状態にむらが発生することがなく、安定した動作が確保される。それゆえ、駆動周波数が広がり、駆動速度の低下などが回避される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ベース板や加圧板の振動を抑制することで安定した動作を確保でき、駆動周波数が広がり、駆動速度の低下などが回避される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】基本的な形態であるアクチュエータ装置を示す斜視図である。
【図2】前記アクチュエータ装置の分解斜視図である。
【図3】前記アクチュエータ装置において振動子を示す斜視図である。図である。
【図4】前記アクチュエータ装置において振動子と重りを示す斜視図である。
【図5】前記アクチュエータ装置の第1の動作例を示す説明図である。
【図6】圧電素子に印加する駆動電圧を示すグラフである。
【図7】前記アクチュエータ装置の第2の動作例を示す説明図である。
【図8】実施例1である加圧板と振動吸収部材を示す斜視図である。
【図9】実施例2である加圧板を示す斜視図である。
【図10】実施例2による駆動周波数特性を示すグラフである。
【図11】実施例3であるベース板を示す斜視図である。
【図12】前記アクチュエータ装置の曲げに対する保護機構を示す上方からの斜視図である。
【図13】前記アクチュエータ装置の曲げに対する保護機構を示す下方からの斜視図である。
【図14】前記アクチュエータ装置のストロークの制限機構を示す下方からの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るアクチュエータ装置の実施例について添付図面を参照して説明する。なお、各図において共通する部材、部分には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
(アクチュエータ装置の基本的構成、図1〜図7参照)
アクチュエータ装置は、図1、図2及び図3に示すように、ベース板10と、加圧板15と、平板状の圧電素子20A,20Bと、該圧電素子20A,20Bの間に挿入された補強板25と、圧電素子20A,20Bの一端部の表面に接合固定(貼着)された摩擦板30A,30Bと、圧電素子20Bの他端部裏面側に取り付けた重り40と、ベース板10と加圧板15との間に介在されたスペーサ36と、で構成されている。
【0012】
圧電素子20A,20Bは、帯状をなす単板の表裏面に電極を形成したもので、真鍮製の薄板材からなる補強板25の表裏面に接着されている。補強板25は電極としても機能し、その端部は圧電素子20A,20Bの他端部から突出している。
【0013】
加圧板15はベース板10に対して圧電素子20A,20Bを間に挟んでビスやカシメ、溶接などで固定されている。即ち、圧電素子20A,20Bはベース板10と加圧板15との間に摩擦板30A,30Bを介して所定の弾性力で挟持されている。加圧板15は、例えば、図示しないねじ部材を穴15aからスペーサ36の穴36aを通じてベース板10に螺着することにより固定されている。スペーサ36の厚さは、圧電素子20A,20Bの厚さ、補強板25の厚さ、摩擦板30A,30Bの厚さを加えた数値より若干薄くされている。
【0014】
加圧板15は、両側にスリット16を形成して所定のばね定数を保持しており、そのばね性で圧電素子20A,20Bを摩擦板30A,30Bを介してベース板10との間で弾性的に挟持している。即ち、加圧板15は板ばねを構成している。圧電素子20A,20Bに対する弾性的な圧接力はスペーサ36の厚さによって調整される。
【0015】
重り40は、図4に示すように、角材で構成した構造体からなり、横木41が圧電素子20Bに接着されている。
【0016】
圧電素子20A,20Bは、その分極方向が補強板25を挟んで互いに逆向きとされており、電圧印加方向と垂直方向に変位するd31モードを利用してアクチュエータとして利用される。即ち、圧電素子20A,20Bは分極方向に電界が作用すると、厚み方向に伸縮するとともに面方向にも伸縮する。厚み方向に伸びるときは面方向に縮み、厚み方向に縮むときは面方向に伸びる。
【0017】
以上の構成からなるアクチュエータ装置の第1の動作例を概説すると、図5(A)に示す通常状態から、低速充電すると圧電素子20A,20Bは緩やかに収縮し、重り40が摩擦板30A,30Bに近づく(図5(B)参照)。次に、逆方向に急速充電すると圧電素子20A,20Bは急速に伸長し、重り40は自身の慣性で動くことはなく、摩擦板30A,30Bがベース板10と加圧板15との間で滑りを生じる(図5(C)参照)。次に、低速充電すると圧電素子20A,20Bは緩やかに収縮し、重り40が摩擦板30A,30Bに近づく(図5(D)参照)。以上の動作を繰り返すことにより、重り40が図5中左方に移動することになる。なお、図5において、アクチュエータ装置は模式的に示されている。
【0018】
圧電素子20A,20Bを駆動するために印加する電圧は概略図6に示すとおりである。図6は圧電素子20A,20Bの緩やかな収縮、急速な伸長のプロファイルを示してもいる。
【0019】
即ち、前記アクチュエータ装置において、圧電素子20A,20B、補強板25、重り40、摩擦板30A,30Bが移動部であり、ベース板10、加圧板15、スペーサ36が固定部である。
【0020】
以上のごとく、前記アクチュエータ装置においては、圧電素子20A,20Bのd31モードでの動作によって、圧電素子20A,20B及び重り40が移動部となるコンパクトで薄型のアクチュエータ装置を得ることができる。特に、圧電素子20A,20Bは摩擦板30A,30Bを介してベース板10及び加圧板15と圧接しているため、摩擦板30A,30Bによって圧電素子20A,20Bが機械的に保護される。摩擦板30A,30Bを薄くすることで、移動体を構成する質量が重り40に集中することになり、重り40の慣性効果を高め、駆動力を大きくしたり、駆動電圧を小さくすることができる。
【0021】
また、加圧板15及びベース板10の主面の面積を摩擦板30A,30Bの主面の面積よりも大きくすることにより、重り40の移動量を大きくすることができる。さらに、加圧板15は自身のばね性で摩擦板30A,30Bを加圧しているため、別途弾性部材を必要とすることがなく、アクチュエータ装置がさらに小型化、低背化される。
【0022】
また、圧電素子20A,20Bは補強板25に固着されているため、圧電素子20A,20Bを薄くしても機械的強度を補強することができ、圧電素子20A,20Bの割れを未然に防止できる。2枚の圧電素子20A,20Bを補強板25の表裏面に固着し、それぞれの分極方向が補強板25を挟んで互いに逆向きであるため、2枚の圧電素子20A,20Bに並行して電圧を印加することにより、駆動電圧を低減できる。
【0023】
さらに、ベース板10及び/又は加圧板15の表面であって摩擦板30A,30Bが圧接する面には硬化処理及び/又は潤滑処理を施すことにより、滑らかな移動を実現でき、耐久性が向上する。さらに、摩擦板30A,30Bが圧電素子20A,20Bに接合固定されているので、圧電素子20A,20Bの振動が摩擦板30A,30Bに直接的に伝達され、ベース板10との間で高速な駆動が可能になる。
【0024】
前記アクチュエータ装置では、重り40を設けてこの重り40を移動部として構成したが、重り40を固定部とし、ベース板10、スペーサ36や加圧板15を移動部として構成してもよい。この場合を第2の動作例として図7に示す。なお、図7において、アクチュエータ装置は模式的に示されている。
【0025】
即ち、その移動形態は、図7(A)に示す通常状態から、低速充電すると圧電素子20A,20Bは緩やかに収縮し、ベース板10及び加圧板15が固定部(重り40)に近づく(図7(B)参照)。次に、逆方向に急速充電すると圧電素子20A,20Bは急速に伸長し、ベース板10及び加圧板15は自身の慣性で動くことはなく、摩擦板30A,30Bがベース板10と加圧板15との間で滑りを生じる(図7(C)参照)。次に、低速充電すると圧電素子20A,20Bは緩やかに収縮し、ベース板10及び加圧板15が固定部(重り40)に近づく(図7(D)参照)。以上の動作を繰り返すことにより、ベース板10及び加圧板15が図7中右方に移動することになる。
【0026】
なお、固定部(重り40)は、例えば、電子機器の筺体(図示せず)そのものであってもよい。
【0027】
(実施例1、図8参照)
実施例1は、図8に示すように、加圧板15の表面に枠状の振動吸収部材19を貼着したものである。振動吸収部材19としては、樹脂、ゴムなどからなるシートを用いることができる。加圧板15の4隅に粘土を取り付けてもよい。振動吸収部材19によって加圧板15に生じた振動を抑制し、アクチュエータとしての動作が安定化する。樹脂、ゴム、粘土などは、振動に対する機械的な内部損失が大きく、振動を簡単な構成で減衰させることができる。これにて、ベース板10と加圧板15とで摩擦板30A,30Bを適切な圧力での挟着を常時維持することができる。
【0028】
なお、図示しないが、ベース板10に振動吸収部材を貼着してもよい。
【0029】
(実施例2、図9参照)
実施例2は、図9に示すように、加圧板15の四つの側部に複数の突起17a,17b,17cを形成したものである。突起17a,17b,17cは、圧電素子20A,20Bの駆動周波数と同じ又はその整数倍の固有振動数を有している。これにて、駆動時に加圧板15の振動が抑制され、摩擦板30A,30Bを適切な圧力で保持でき、アクチュエータとしての動作が安定化する。
【0030】
具体的には、突起17aの矢印a方向への曲げ振動数は駆動周波数に等しく、突起17cの矢印b方向への曲げ振動数は駆動周波数に等しく設定されている。突起17bの矢印c方向への曲げ振動数は駆動周波数の2倍、突起17cの矢印d方向への曲げ振動数は駆動周波数の2倍に設定されている。圧電素子20A,20Bへの駆動波形は図6に示したようにノコギリ波形である。図9に示した加圧板15によって、ノコギリ波形によって加圧板15に発生する振動のうち、基本波と2倍波によって励起される振動を優先的に減衰させることができる。
【0031】
図9に示した加圧板15による振動抑制効果を図10に示す。図10は、横軸に駆動周波数、縦軸に移動速度を示している。点線で示す特性Aは、突起17a,17b,17cが形成されていない加圧板を用いた場合の移動速度であり、速度30mm/sを維持できる駆動周波数は約32kHzから約35kHzの範囲である。これに対して、突起17a,17b,17cを形成した加圧板15を用いた場合、速度30mm/sを維持できる駆動周波数の範囲は約36.2kHzまで拡大している。
【0032】
(実施例3、図11参照)
実施例3は、図11に示すように、ベース板10に複数の突起11a,11bを形成したものである。突起11a,11bは、圧電素子20A,20Bの駆動周波数と同じ又はその整数倍の固有振動数を有している。具体的には、突起11aの矢印e方向への曲げ振動数は駆動周波数に等しく、突起11bの矢印f方向への曲げ振動数は駆動周波数の2倍に設定されている。その作用効果は前記実施例2と同様である。
【0033】
(曲げに対する保護機構、図12及び図13参照)
ところで、前記アクチュエータ装置に対しては、使用中や組立て時に厚み方向の曲げ力M1,M2(図12及び図13参照)が加わり、圧電素子20A,20Bが割れたりすることがある。
【0034】
そこで、本実施例では、圧電素子20A,20Bを重り(構造体)40の水平アーム部42の間に配置している(図2参照)。従って、曲げ力M1が加わった場合、図12に示すように、圧電素子20A,20Bが割れる前に、加圧板15の端部15bが重り(構造体)40の水平アーム部42の底面に接触する。これにて、圧電素子20A,20Bにそれ以上の曲げ力が加わらず、割れるおそれはない。
【0035】
また、図13に示すベース板10の角部10bを水平アーム部42の窪み42a(図4をも参照、図4及び図13にて手前側の窪みは図示されず)に配置している。従って、曲げ力M2が加わった場合、圧電素子20A,20Bが割れる前に、ベース板10の角部10bが水平アーム部42の窪み42aに接触する。これにて、圧電素子20A,20Bにそれ以上の曲げ力が加わらず、割れるおそれはない。
【0036】
(ストロークの制限機構、図14参照)
さらに、本実施例では、動作ストロークを制限するため、ストロークの最小位置及び最大位置において、ベース板10と重り(構造体)40が互いに接触するように構成されている。アクチュエータが最も収縮した場合、図14に示すように、水平アーム部42の端部42bがベース板10の角部10cに接触し、それ以上のストロークが制限される。一方、アクチュエータが最も伸長した場合、ベース板10の突部10dが水平アーム部42の突部42cに接触し、それ以上のストロークが制限される。
【0037】
(他の実施例)
なお、本発明に係るアクチュエータ装置は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更できる。
【0038】
特に、アクチュエータ装置としての基本的形態は図1に示したもの以外に種々の形態を採用することができる。例えば、3枚の圧電素子を2枚の補強板を介在させて積層したもので、それぞれの分極方向を補強板を挟んで互いに逆向きにしたものであってもよい。また、圧電素子は1枚であってもよく、この場合には2枚の補強板を圧電素子の表裏面に固着して、補強を行ってもよい。あるいは、他の動作モード(例えば、d33モード)で動作する圧電素子を使用することもできる。特に、スペーサ36の形状は任意である。さらに、圧電素子の駆動回路の構成、印加電圧の形態、重りの取付け形態などは任意である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように、本発明は、アクチュエータ装置に有用であり、特に、安定した動作を確保できる点で優れている。
【符号の説明】
【0040】
10…ベース板
11a,11b…突起
15…加圧板
17a,17b,17c…突起
19…振動吸収部材
20A,20B…圧電素子
30A,30B…摩擦板
40…重り(構造体)
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータ装置、特に、圧電素子を駆動源とするアクチュエータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電素子を駆動源とするアクチュエータ装置として、特許文献1には、電気的作用により伸縮し、該伸縮方向に平行な平面を有する圧電素子と、前記圧電素子の伸縮方向に平行な平面上に載置され、かつ、前記圧電素子の伸縮方向の前端に固定された第1摩擦部材と、前記第1摩擦部材の上面に当接するように載置され、被駆動体を駆動する駆動部材と、前記第1摩擦部材に対して前記駆動部材を押圧する押圧機構部と、前記圧電素子の伸縮方向の後端を固定する固定部材と、を有する圧電素子を用いた駆動装置が記載されている。
【0003】
しかし、前記駆動装置においては、圧電素子の駆動に伴って、摩擦部材や駆動部材に意図しない振動が発生しやすいという問題点を有している。それゆえ、振動に起因する適切な押圧が維持できず、安定した動作を確保できなかった。具体的には、駆動周波数が制限されたり、駆動速度の低下を招いていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−65777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、振動を抑制することで安定した動作を確保できるアクチュエータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明の一形態であるアクチュエータ装置は、
所定の間隔で互いに対向して配置されたベース板及び加圧板と、
前記ベース板と前記加圧板との間に挟持され、電圧の印加に伴って面方向に伸縮する平板状の圧電素子と、
を備えたアクチュエータ装置であって、
前記ベース板及び/又は前記加圧板に振動抑制部材が設けられていること、
を特徴とする。
【0007】
前記アクチュエータ装置において、圧電素子が所定の周波数電圧で駆動されると、駆動周波数ないしその高調波での振動がベース板や加圧板に発生しやすい。しかし、このような振動は、ベース板及び/又は加圧板に設けられた振動抑制部材によって抑制され、ベース板と加圧板による圧電素子の挟着状態にむらが発生することがなく、安定した動作が確保される。それゆえ、駆動周波数が広がり、駆動速度の低下などが回避される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ベース板や加圧板の振動を抑制することで安定した動作を確保でき、駆動周波数が広がり、駆動速度の低下などが回避される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】基本的な形態であるアクチュエータ装置を示す斜視図である。
【図2】前記アクチュエータ装置の分解斜視図である。
【図3】前記アクチュエータ装置において振動子を示す斜視図である。図である。
【図4】前記アクチュエータ装置において振動子と重りを示す斜視図である。
【図5】前記アクチュエータ装置の第1の動作例を示す説明図である。
【図6】圧電素子に印加する駆動電圧を示すグラフである。
【図7】前記アクチュエータ装置の第2の動作例を示す説明図である。
【図8】実施例1である加圧板と振動吸収部材を示す斜視図である。
【図9】実施例2である加圧板を示す斜視図である。
【図10】実施例2による駆動周波数特性を示すグラフである。
【図11】実施例3であるベース板を示す斜視図である。
【図12】前記アクチュエータ装置の曲げに対する保護機構を示す上方からの斜視図である。
【図13】前記アクチュエータ装置の曲げに対する保護機構を示す下方からの斜視図である。
【図14】前記アクチュエータ装置のストロークの制限機構を示す下方からの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るアクチュエータ装置の実施例について添付図面を参照して説明する。なお、各図において共通する部材、部分には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
(アクチュエータ装置の基本的構成、図1〜図7参照)
アクチュエータ装置は、図1、図2及び図3に示すように、ベース板10と、加圧板15と、平板状の圧電素子20A,20Bと、該圧電素子20A,20Bの間に挿入された補強板25と、圧電素子20A,20Bの一端部の表面に接合固定(貼着)された摩擦板30A,30Bと、圧電素子20Bの他端部裏面側に取り付けた重り40と、ベース板10と加圧板15との間に介在されたスペーサ36と、で構成されている。
【0012】
圧電素子20A,20Bは、帯状をなす単板の表裏面に電極を形成したもので、真鍮製の薄板材からなる補強板25の表裏面に接着されている。補強板25は電極としても機能し、その端部は圧電素子20A,20Bの他端部から突出している。
【0013】
加圧板15はベース板10に対して圧電素子20A,20Bを間に挟んでビスやカシメ、溶接などで固定されている。即ち、圧電素子20A,20Bはベース板10と加圧板15との間に摩擦板30A,30Bを介して所定の弾性力で挟持されている。加圧板15は、例えば、図示しないねじ部材を穴15aからスペーサ36の穴36aを通じてベース板10に螺着することにより固定されている。スペーサ36の厚さは、圧電素子20A,20Bの厚さ、補強板25の厚さ、摩擦板30A,30Bの厚さを加えた数値より若干薄くされている。
【0014】
加圧板15は、両側にスリット16を形成して所定のばね定数を保持しており、そのばね性で圧電素子20A,20Bを摩擦板30A,30Bを介してベース板10との間で弾性的に挟持している。即ち、加圧板15は板ばねを構成している。圧電素子20A,20Bに対する弾性的な圧接力はスペーサ36の厚さによって調整される。
【0015】
重り40は、図4に示すように、角材で構成した構造体からなり、横木41が圧電素子20Bに接着されている。
【0016】
圧電素子20A,20Bは、その分極方向が補強板25を挟んで互いに逆向きとされており、電圧印加方向と垂直方向に変位するd31モードを利用してアクチュエータとして利用される。即ち、圧電素子20A,20Bは分極方向に電界が作用すると、厚み方向に伸縮するとともに面方向にも伸縮する。厚み方向に伸びるときは面方向に縮み、厚み方向に縮むときは面方向に伸びる。
【0017】
以上の構成からなるアクチュエータ装置の第1の動作例を概説すると、図5(A)に示す通常状態から、低速充電すると圧電素子20A,20Bは緩やかに収縮し、重り40が摩擦板30A,30Bに近づく(図5(B)参照)。次に、逆方向に急速充電すると圧電素子20A,20Bは急速に伸長し、重り40は自身の慣性で動くことはなく、摩擦板30A,30Bがベース板10と加圧板15との間で滑りを生じる(図5(C)参照)。次に、低速充電すると圧電素子20A,20Bは緩やかに収縮し、重り40が摩擦板30A,30Bに近づく(図5(D)参照)。以上の動作を繰り返すことにより、重り40が図5中左方に移動することになる。なお、図5において、アクチュエータ装置は模式的に示されている。
【0018】
圧電素子20A,20Bを駆動するために印加する電圧は概略図6に示すとおりである。図6は圧電素子20A,20Bの緩やかな収縮、急速な伸長のプロファイルを示してもいる。
【0019】
即ち、前記アクチュエータ装置において、圧電素子20A,20B、補強板25、重り40、摩擦板30A,30Bが移動部であり、ベース板10、加圧板15、スペーサ36が固定部である。
【0020】
以上のごとく、前記アクチュエータ装置においては、圧電素子20A,20Bのd31モードでの動作によって、圧電素子20A,20B及び重り40が移動部となるコンパクトで薄型のアクチュエータ装置を得ることができる。特に、圧電素子20A,20Bは摩擦板30A,30Bを介してベース板10及び加圧板15と圧接しているため、摩擦板30A,30Bによって圧電素子20A,20Bが機械的に保護される。摩擦板30A,30Bを薄くすることで、移動体を構成する質量が重り40に集中することになり、重り40の慣性効果を高め、駆動力を大きくしたり、駆動電圧を小さくすることができる。
【0021】
また、加圧板15及びベース板10の主面の面積を摩擦板30A,30Bの主面の面積よりも大きくすることにより、重り40の移動量を大きくすることができる。さらに、加圧板15は自身のばね性で摩擦板30A,30Bを加圧しているため、別途弾性部材を必要とすることがなく、アクチュエータ装置がさらに小型化、低背化される。
【0022】
また、圧電素子20A,20Bは補強板25に固着されているため、圧電素子20A,20Bを薄くしても機械的強度を補強することができ、圧電素子20A,20Bの割れを未然に防止できる。2枚の圧電素子20A,20Bを補強板25の表裏面に固着し、それぞれの分極方向が補強板25を挟んで互いに逆向きであるため、2枚の圧電素子20A,20Bに並行して電圧を印加することにより、駆動電圧を低減できる。
【0023】
さらに、ベース板10及び/又は加圧板15の表面であって摩擦板30A,30Bが圧接する面には硬化処理及び/又は潤滑処理を施すことにより、滑らかな移動を実現でき、耐久性が向上する。さらに、摩擦板30A,30Bが圧電素子20A,20Bに接合固定されているので、圧電素子20A,20Bの振動が摩擦板30A,30Bに直接的に伝達され、ベース板10との間で高速な駆動が可能になる。
【0024】
前記アクチュエータ装置では、重り40を設けてこの重り40を移動部として構成したが、重り40を固定部とし、ベース板10、スペーサ36や加圧板15を移動部として構成してもよい。この場合を第2の動作例として図7に示す。なお、図7において、アクチュエータ装置は模式的に示されている。
【0025】
即ち、その移動形態は、図7(A)に示す通常状態から、低速充電すると圧電素子20A,20Bは緩やかに収縮し、ベース板10及び加圧板15が固定部(重り40)に近づく(図7(B)参照)。次に、逆方向に急速充電すると圧電素子20A,20Bは急速に伸長し、ベース板10及び加圧板15は自身の慣性で動くことはなく、摩擦板30A,30Bがベース板10と加圧板15との間で滑りを生じる(図7(C)参照)。次に、低速充電すると圧電素子20A,20Bは緩やかに収縮し、ベース板10及び加圧板15が固定部(重り40)に近づく(図7(D)参照)。以上の動作を繰り返すことにより、ベース板10及び加圧板15が図7中右方に移動することになる。
【0026】
なお、固定部(重り40)は、例えば、電子機器の筺体(図示せず)そのものであってもよい。
【0027】
(実施例1、図8参照)
実施例1は、図8に示すように、加圧板15の表面に枠状の振動吸収部材19を貼着したものである。振動吸収部材19としては、樹脂、ゴムなどからなるシートを用いることができる。加圧板15の4隅に粘土を取り付けてもよい。振動吸収部材19によって加圧板15に生じた振動を抑制し、アクチュエータとしての動作が安定化する。樹脂、ゴム、粘土などは、振動に対する機械的な内部損失が大きく、振動を簡単な構成で減衰させることができる。これにて、ベース板10と加圧板15とで摩擦板30A,30Bを適切な圧力での挟着を常時維持することができる。
【0028】
なお、図示しないが、ベース板10に振動吸収部材を貼着してもよい。
【0029】
(実施例2、図9参照)
実施例2は、図9に示すように、加圧板15の四つの側部に複数の突起17a,17b,17cを形成したものである。突起17a,17b,17cは、圧電素子20A,20Bの駆動周波数と同じ又はその整数倍の固有振動数を有している。これにて、駆動時に加圧板15の振動が抑制され、摩擦板30A,30Bを適切な圧力で保持でき、アクチュエータとしての動作が安定化する。
【0030】
具体的には、突起17aの矢印a方向への曲げ振動数は駆動周波数に等しく、突起17cの矢印b方向への曲げ振動数は駆動周波数に等しく設定されている。突起17bの矢印c方向への曲げ振動数は駆動周波数の2倍、突起17cの矢印d方向への曲げ振動数は駆動周波数の2倍に設定されている。圧電素子20A,20Bへの駆動波形は図6に示したようにノコギリ波形である。図9に示した加圧板15によって、ノコギリ波形によって加圧板15に発生する振動のうち、基本波と2倍波によって励起される振動を優先的に減衰させることができる。
【0031】
図9に示した加圧板15による振動抑制効果を図10に示す。図10は、横軸に駆動周波数、縦軸に移動速度を示している。点線で示す特性Aは、突起17a,17b,17cが形成されていない加圧板を用いた場合の移動速度であり、速度30mm/sを維持できる駆動周波数は約32kHzから約35kHzの範囲である。これに対して、突起17a,17b,17cを形成した加圧板15を用いた場合、速度30mm/sを維持できる駆動周波数の範囲は約36.2kHzまで拡大している。
【0032】
(実施例3、図11参照)
実施例3は、図11に示すように、ベース板10に複数の突起11a,11bを形成したものである。突起11a,11bは、圧電素子20A,20Bの駆動周波数と同じ又はその整数倍の固有振動数を有している。具体的には、突起11aの矢印e方向への曲げ振動数は駆動周波数に等しく、突起11bの矢印f方向への曲げ振動数は駆動周波数の2倍に設定されている。その作用効果は前記実施例2と同様である。
【0033】
(曲げに対する保護機構、図12及び図13参照)
ところで、前記アクチュエータ装置に対しては、使用中や組立て時に厚み方向の曲げ力M1,M2(図12及び図13参照)が加わり、圧電素子20A,20Bが割れたりすることがある。
【0034】
そこで、本実施例では、圧電素子20A,20Bを重り(構造体)40の水平アーム部42の間に配置している(図2参照)。従って、曲げ力M1が加わった場合、図12に示すように、圧電素子20A,20Bが割れる前に、加圧板15の端部15bが重り(構造体)40の水平アーム部42の底面に接触する。これにて、圧電素子20A,20Bにそれ以上の曲げ力が加わらず、割れるおそれはない。
【0035】
また、図13に示すベース板10の角部10bを水平アーム部42の窪み42a(図4をも参照、図4及び図13にて手前側の窪みは図示されず)に配置している。従って、曲げ力M2が加わった場合、圧電素子20A,20Bが割れる前に、ベース板10の角部10bが水平アーム部42の窪み42aに接触する。これにて、圧電素子20A,20Bにそれ以上の曲げ力が加わらず、割れるおそれはない。
【0036】
(ストロークの制限機構、図14参照)
さらに、本実施例では、動作ストロークを制限するため、ストロークの最小位置及び最大位置において、ベース板10と重り(構造体)40が互いに接触するように構成されている。アクチュエータが最も収縮した場合、図14に示すように、水平アーム部42の端部42bがベース板10の角部10cに接触し、それ以上のストロークが制限される。一方、アクチュエータが最も伸長した場合、ベース板10の突部10dが水平アーム部42の突部42cに接触し、それ以上のストロークが制限される。
【0037】
(他の実施例)
なお、本発明に係るアクチュエータ装置は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更できる。
【0038】
特に、アクチュエータ装置としての基本的形態は図1に示したもの以外に種々の形態を採用することができる。例えば、3枚の圧電素子を2枚の補強板を介在させて積層したもので、それぞれの分極方向を補強板を挟んで互いに逆向きにしたものであってもよい。また、圧電素子は1枚であってもよく、この場合には2枚の補強板を圧電素子の表裏面に固着して、補強を行ってもよい。あるいは、他の動作モード(例えば、d33モード)で動作する圧電素子を使用することもできる。特に、スペーサ36の形状は任意である。さらに、圧電素子の駆動回路の構成、印加電圧の形態、重りの取付け形態などは任意である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように、本発明は、アクチュエータ装置に有用であり、特に、安定した動作を確保できる点で優れている。
【符号の説明】
【0040】
10…ベース板
11a,11b…突起
15…加圧板
17a,17b,17c…突起
19…振動吸収部材
20A,20B…圧電素子
30A,30B…摩擦板
40…重り(構造体)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔で互いに対向して配置されたベース板及び加圧板と、
前記ベース板と前記加圧板との間に挟持され、電圧の印加に伴って面方向に伸縮する平板状の圧電素子と、
を備えたアクチュエータ装置であって、
前記ベース板及び/又は前記加圧板に振動抑制部材が設けられていること、
を特徴とするアクチュエータ装置。
【請求項2】
前記振動抑制部材は、前記ベース板及び/又は前記加圧板に設けた振動吸収部材であること、を特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ装置。
【請求項3】
前記振動吸収部材は、樹脂、ゴム、粘土からなるものであること、を特徴とする請求項2に記載のアクチュエータ装置。
【請求項4】
前記振動抑制部材は、前記ベース板及び/又は前記加圧板に形成した突起であること、を特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ装置。
【請求項5】
前記突起は、駆動周波数と同じ又はその整数倍の固有振動数を有していること、を特徴とする請求項4に記載のアクチュエータ装置。
【請求項6】
前記圧電素子と前記ベース板及び/又は前記加圧板との間に摩擦板が介在されていること、を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のアクチュエータ装置。
【請求項7】
前記圧電素子の一端部に重りが固着されていること、を特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のアクチュエータ装置。
【請求項1】
所定の間隔で互いに対向して配置されたベース板及び加圧板と、
前記ベース板と前記加圧板との間に挟持され、電圧の印加に伴って面方向に伸縮する平板状の圧電素子と、
を備えたアクチュエータ装置であって、
前記ベース板及び/又は前記加圧板に振動抑制部材が設けられていること、
を特徴とするアクチュエータ装置。
【請求項2】
前記振動抑制部材は、前記ベース板及び/又は前記加圧板に設けた振動吸収部材であること、を特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ装置。
【請求項3】
前記振動吸収部材は、樹脂、ゴム、粘土からなるものであること、を特徴とする請求項2に記載のアクチュエータ装置。
【請求項4】
前記振動抑制部材は、前記ベース板及び/又は前記加圧板に形成した突起であること、を特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ装置。
【請求項5】
前記突起は、駆動周波数と同じ又はその整数倍の固有振動数を有していること、を特徴とする請求項4に記載のアクチュエータ装置。
【請求項6】
前記圧電素子と前記ベース板及び/又は前記加圧板との間に摩擦板が介在されていること、を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のアクチュエータ装置。
【請求項7】
前記圧電素子の一端部に重りが固着されていること、を特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のアクチュエータ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−39739(P2012−39739A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177297(P2010−177297)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
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