アマモ苗海中育成方法およびアマモ場造成方法
【課題】大きい面積で運搬にも便利なアマモ苗育成用積層体によってアマモの苗を海中で育成することができるようにする。
【解決手段】 ポリ乳酸製格子状基体(1)にやし繊維(2)を敷いてマット状中間層(3)を形成し、中間層(3)にアマモ種子(4)がゼラチン(5)で包まれている加工種子(6)を散布し、その上をポリ乳酸製繊維よりなる被覆ネット(8)で覆い、留め部材として工業用ホッチキス(9)で被覆ネット(8)を中間層(3)を介して基体(1)に固定することによりアマモ苗育成用積層体(10)を作る。このアマモ苗育成用積層体(10)を所定の海域に運んでアマモ苗の育成に適した強さの太陽光がとどく海中の水深位置にくるように、複数のアンカー(11)付きロープ(12)により海底(13)に固定するとともに、海面(14)に浮くブイ(15)付きロープ(16)により水平状態が保たれるように配置する。
【解決手段】 ポリ乳酸製格子状基体(1)にやし繊維(2)を敷いてマット状中間層(3)を形成し、中間層(3)にアマモ種子(4)がゼラチン(5)で包まれている加工種子(6)を散布し、その上をポリ乳酸製繊維よりなる被覆ネット(8)で覆い、留め部材として工業用ホッチキス(9)で被覆ネット(8)を中間層(3)を介して基体(1)に固定することによりアマモ苗育成用積層体(10)を作る。このアマモ苗育成用積層体(10)を所定の海域に運んでアマモ苗の育成に適した強さの太陽光がとどく海中の水深位置にくるように、複数のアンカー(11)付きロープ(12)により海底(13)に固定するとともに、海面(14)に浮くブイ(15)付きロープ(16)により水平状態が保たれるように配置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アマモ苗海中育成方法およびアマモ場造成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アマモ場の造成方法として、従来、生分解性のポットに砂を入れ、その砂にアマモの種または苗を植えて、静穏な場所の水域等で育成し苗床とする一方、アマモの苗をポットごと砂地の移植場に移植する方法は、下記特許文献1により知られていた。
【特許文献1】特開2003−111530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の方法では、ポットでアマモの苗を育成するものであるから、多数のポットを必要とするし、アマモの苗が育成した後、多数のポットを移植場に運ぶのは非常に面倒でもあった。さらに、アマモの苗を生分解性のポットごと砂地の移植場に移植した場合、ポットが海中で生分解するまでは、苗が成育して根や地下茎が伸びてきてもポットの外へ出ることができない。したがって、アマモの根づきが悪いし地下茎が周囲に伸び得ないため、アマモの繁茂が不充分であった。
【0004】
本発明の目的は、ポットよりはるかに大きい面積の苗床となりかつ運搬にも便利なアマモ苗育成用積層体によってアマモの苗を海中で育成することができ、しかもアマモ育苗後の積層体を海底に配置し、苗が成育して根や地下茎がのびてきた場合、積層体がその成長の支障とならないアマモ苗海中育成方法およびアマモ場造成方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明によるアマモ苗海中育成方法は、生分解性格子状基体にまず発芽したさいのアマモの根が絡みつく天然繊維を敷いてマット状中間層を形成し、つぎに中間層全面に1または複数のアマモ種子がゼラチンまたはこれと同効物で包まれている加工種子を多数散布し、つぎにその上を生分解性繊維および天然繊維のいずれか一方の繊維よりなり加工種子より出た芽が通過しうる程度の網目を有する被覆ネットで覆い、最後に留め部材または縫製糸で被覆ネットを中間層を介して基体に固定することによりアマモ苗育成用積層体を作り、このアマモ苗育成用積層体を所定の海域に運んでアマモ苗の育成に適した強さの太陽光がとどく海中の水深位置にくるように、複数のアンカー付きロープにより海底に固定するとともに、海面に浮くブイを有するロープにより水平状態が保たれるように配置することを特徴とするものである。
【0006】
上記請求項1の発明において、生分解性格子状基体の具体的な材料としては、ポリ乳酸繊維製のものおよびやし繊維製のものが挙げられる。マット状中間層を形成する天然繊維としては、繊維間の絡まりが強くかつ適当な空隙が得られることから、やし繊維が好適であり、また、中間層の厚さとしては、3〜30mmが適当である。アマモ種子がゼラチンまたはこれと同効物で包まれている加工種子の形態となされているのは、つぎの理由による。すなわち、アマモ種子が裸であると、アマモ種子の周囲が海流に洗われ、アマモ種子がその発芽を阻害する新鮮な多くの酸素に絶えず触れるが、上記加工種子の形態であると、ゼラチン等によりアマモ種子の海流に洗われるのが阻止され、しかしながら多少の酸素は必要とするアマモ種子にゼラチン等に含まれている少量の酸素が供給されるからである。アマモ苗の育成に適した強さの太陽光がとどく水深は、アマモ苗育成用積層体が配置せられる海域の水の透明度にも左右されるが、大体1〜5m程度である。被覆ネット用生分解性繊維の材料の具体例としては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリビニルアルコール、ポリカプロラクタンおよび脂肪酸ポリエステル等を挙げることができる。さらに、同天然繊維の具体例としては、やし、麻、綿および羊毛等を挙げることができる。
【0007】
請求項2の発明によるアマモ場造成方法は、請求項1記載のアマモ苗海中育成方法により育成せられたアマモ苗を有する多数のアマモ苗育成用積層体をアマモ場造成用海域に運び、これらを海底に沈めて分散配置し、アマモ場を造成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明のアマモ苗海中育成方法によれば、アマモ苗の育成に適した強さの太陽光がとどく水深の海中を任意に選ぶことができる。海上では、太陽光が強すぎるばかりでなくアマモ苗が水に浸からないために枯れてしまい、他方海底では、岩の多い所や砂が流れるような所など底の状態が悪いと、アマモ苗が育成しないが、海中ではこのようなことがない。また、格子状基体にまず発芽したさいのアマモの根が絡みつく天然繊維を敷いてマット状中間層を形成し、つぎに中間層全面に1または複数のアマモ種子がゼラチンまたはこれと同効物で包まれている加工種子を多数散布し、つぎにその上を生分解性繊維および天然繊維のいずれか一方の繊維よりなり加工種子より出た芽が通過しうる程度の網目を有する被覆ネットで覆い、最後に留め部材または縫製糸で被覆ネットを中間層を介して基体に固定することによりアマモ苗育成用積層体を作るものであるから、アマモ種子は流されることなく発芽し、被覆ネットの網目を通して苗が伸び、根は苗が流されないように中間層にしっかり絡みつくとともに、格子状基体の格子目から下方に伸び得る。また、アマモ苗育成用積層体を所定の海域に運んでアマモ苗の育成に適した強さの太陽光がとどく海中の水深位置にくるように、複数のアンカー付きロープにより海底に固定するとともに、海面に浮くブイ付きロープにより水平状態が保たれるように配置してアマモ苗を育成するものであるから、積層体に多数のアマモ苗が順調に育成する。アマモ苗が育成すると、アンカー付きロープを外してこの積層体をアマモ場造成用海域までブイを付けたまま小船等で曳航するか、或いはアンカー付きロープおよびブイ付きロープを外してこの積層体を台船に引き上げて運ぶことができるから、アマモ苗のアマモ場造成用海域への運搬が便利であるし、従来のポットに較べて一挙に多数のアマモ苗を運ぶことができる利点がある。
【0009】
請求項2の発明のアマモ場造成方法によれば、請求項1記載のアマモ苗海中育成方法により育成せられたアマモ苗を有する積層体を多数アマモ場造成用海域に運び、これらを海底に沈めて分散配置し、アマモ場を造成するものであるから、従来のポットでアマモ苗を育成するのと異なり、アマモ場の造成を能率的に行なうことができる。そして、海底において、苗が成育して根や地下茎が伸びてきた場合、積層体における格子状基体の格子目より地中に根や地下茎が伸びていき、自然の状態でアマモが地中にしっかりと根づき地下茎から生えた新芽により充分繁茂する。さらに、格子状基体は、生分解性であり、マット状中間層は天然繊維を敷いたものであり、被覆ネットは生分解性繊維および天然繊維のいずれか一方の繊維よりなるものであるから、アマモ苗を有する積層体を海底に分散配置後、日時の経過により積層体は分解消失する。したがって、アマモ造成場の海域の環境を損ねることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を実施するための最良の形態を、以下図面を参照して説明する。
【0011】
図1ないし図3は、請求項1の発明の実施形態を示すものである。請求項1の発明によるアマモ苗海中育成方法は、図2に示すように、幅2m、長さ5mおよび厚さ1mmのポリ乳酸製格子状基体(1)にまず発芽したさいのアマモの根が絡みつくやし繊維(2)を10mmの厚さに敷いてマット状中間層(3)を形成し、つぎに中間層(3)全面に複数のアマモ種子(4)がゼラチン(5)で包まれている幅20mm、長さ20mmおよび厚さ10mmの加工種子(6)を多数散布し、つぎにその上を加工種子(6)より出た芽が通過しうる程度の目あい1.5mm×1.5mmを有する網目(7)のポリ乳酸製繊維よりなる被覆ネット(8)で覆い、最後に留め部材として工業用ホッチキス(9)で被覆ネット(8)を中間層(3)を介して基体(1)に固定することによりアマモ苗育成用積層体(10)を作.る。
【0012】
このアマモ苗育成用積層体(10)100個を図1に示すように所定の海域に運んでアマモ苗の育成に適した強さの太陽光がとどく海中の水深位置にくるように、複数のアンカー(11)付きロープ(12)により海底(13)に固定するとともに、海面(14)に浮くブイ(15)付きロープ(16)により水平状態が保たれるように配置する。
【0013】
上記加工種子(6)は、つぎのようにして作る。すなわち、長方形の容器にゼラチンを流し込み、つぎにゼラチン全体にアマモ種子を散布してゼラチン中に沈める。ゼラチンが固まると、容器から平板状ゼラチンを取り出し、この平板状ゼラチンを1つのゼラチン塊に5〜10のアマモ種子が含まれるように格子状に切断し、加工種子(6)を得る。
【0014】
図4は、請求項2の発明の実施形態を示すものである。請求項2の発明によるアマモ場造成方法は、請求項1記載のアマモ苗海中育成方法により育成せられたアマモ苗(17)を有する100個のアマモ苗育成用積層体(10)からアンカー付きロープおよびブイ付きロープを外し、適当数ずつ台船に引き上げてアマモ場造成用海域に運び、これらを自重で海底(13)に沈めて分散配置し、アマモ場を造成するものである。アマモの根は、格子状基体(1)の格子目(1a)より地中に伸びる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】請求項1の発明による実施の形態を示すもので、アマモ苗育成用積層体をアマモ苗の育成に適した強さの太陽光がとどく海中の水深位置にくるように複数のアンカー付きロープにより海底に固定するとともに、海面に浮くブイを有するロープにより水平状態が保たれるように配置した状態を示す側面図である。
【図2】図1のアマモ苗育成用積層体の平面図で、被覆ネットおよびマット状中間層を順次剥ぎ取った状態を示す。
【図3】一部を切り欠いた加工種子斜視図である。
【図4】請求項2の発明による実施の形態を示すもので、アマモ苗育成用積層体をアマモ場造成用海域の海底に沈めて配置し、アマモの根が格子状基体の格子目より地中に伸び出しかけた状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0016】
1 格子状基体
2 やし繊維
3 マット状中間層
4 アマモ種子
5 ゼラチン
6 加工種子
7 網目
8 被覆ネット
9 留め部材(工業用ホッチキス)
10 アマモ苗育成用積層体
11 アンカー
12 アンカー付きロープ
13 海底
14 海面
15 ブイ
16 ブイ付きロープ
17 アマモ苗
【技術分野】
【0001】
本発明は、アマモ苗海中育成方法およびアマモ場造成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アマモ場の造成方法として、従来、生分解性のポットに砂を入れ、その砂にアマモの種または苗を植えて、静穏な場所の水域等で育成し苗床とする一方、アマモの苗をポットごと砂地の移植場に移植する方法は、下記特許文献1により知られていた。
【特許文献1】特開2003−111530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の方法では、ポットでアマモの苗を育成するものであるから、多数のポットを必要とするし、アマモの苗が育成した後、多数のポットを移植場に運ぶのは非常に面倒でもあった。さらに、アマモの苗を生分解性のポットごと砂地の移植場に移植した場合、ポットが海中で生分解するまでは、苗が成育して根や地下茎が伸びてきてもポットの外へ出ることができない。したがって、アマモの根づきが悪いし地下茎が周囲に伸び得ないため、アマモの繁茂が不充分であった。
【0004】
本発明の目的は、ポットよりはるかに大きい面積の苗床となりかつ運搬にも便利なアマモ苗育成用積層体によってアマモの苗を海中で育成することができ、しかもアマモ育苗後の積層体を海底に配置し、苗が成育して根や地下茎がのびてきた場合、積層体がその成長の支障とならないアマモ苗海中育成方法およびアマモ場造成方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明によるアマモ苗海中育成方法は、生分解性格子状基体にまず発芽したさいのアマモの根が絡みつく天然繊維を敷いてマット状中間層を形成し、つぎに中間層全面に1または複数のアマモ種子がゼラチンまたはこれと同効物で包まれている加工種子を多数散布し、つぎにその上を生分解性繊維および天然繊維のいずれか一方の繊維よりなり加工種子より出た芽が通過しうる程度の網目を有する被覆ネットで覆い、最後に留め部材または縫製糸で被覆ネットを中間層を介して基体に固定することによりアマモ苗育成用積層体を作り、このアマモ苗育成用積層体を所定の海域に運んでアマモ苗の育成に適した強さの太陽光がとどく海中の水深位置にくるように、複数のアンカー付きロープにより海底に固定するとともに、海面に浮くブイを有するロープにより水平状態が保たれるように配置することを特徴とするものである。
【0006】
上記請求項1の発明において、生分解性格子状基体の具体的な材料としては、ポリ乳酸繊維製のものおよびやし繊維製のものが挙げられる。マット状中間層を形成する天然繊維としては、繊維間の絡まりが強くかつ適当な空隙が得られることから、やし繊維が好適であり、また、中間層の厚さとしては、3〜30mmが適当である。アマモ種子がゼラチンまたはこれと同効物で包まれている加工種子の形態となされているのは、つぎの理由による。すなわち、アマモ種子が裸であると、アマモ種子の周囲が海流に洗われ、アマモ種子がその発芽を阻害する新鮮な多くの酸素に絶えず触れるが、上記加工種子の形態であると、ゼラチン等によりアマモ種子の海流に洗われるのが阻止され、しかしながら多少の酸素は必要とするアマモ種子にゼラチン等に含まれている少量の酸素が供給されるからである。アマモ苗の育成に適した強さの太陽光がとどく水深は、アマモ苗育成用積層体が配置せられる海域の水の透明度にも左右されるが、大体1〜5m程度である。被覆ネット用生分解性繊維の材料の具体例としては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリビニルアルコール、ポリカプロラクタンおよび脂肪酸ポリエステル等を挙げることができる。さらに、同天然繊維の具体例としては、やし、麻、綿および羊毛等を挙げることができる。
【0007】
請求項2の発明によるアマモ場造成方法は、請求項1記載のアマモ苗海中育成方法により育成せられたアマモ苗を有する多数のアマモ苗育成用積層体をアマモ場造成用海域に運び、これらを海底に沈めて分散配置し、アマモ場を造成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明のアマモ苗海中育成方法によれば、アマモ苗の育成に適した強さの太陽光がとどく水深の海中を任意に選ぶことができる。海上では、太陽光が強すぎるばかりでなくアマモ苗が水に浸からないために枯れてしまい、他方海底では、岩の多い所や砂が流れるような所など底の状態が悪いと、アマモ苗が育成しないが、海中ではこのようなことがない。また、格子状基体にまず発芽したさいのアマモの根が絡みつく天然繊維を敷いてマット状中間層を形成し、つぎに中間層全面に1または複数のアマモ種子がゼラチンまたはこれと同効物で包まれている加工種子を多数散布し、つぎにその上を生分解性繊維および天然繊維のいずれか一方の繊維よりなり加工種子より出た芽が通過しうる程度の網目を有する被覆ネットで覆い、最後に留め部材または縫製糸で被覆ネットを中間層を介して基体に固定することによりアマモ苗育成用積層体を作るものであるから、アマモ種子は流されることなく発芽し、被覆ネットの網目を通して苗が伸び、根は苗が流されないように中間層にしっかり絡みつくとともに、格子状基体の格子目から下方に伸び得る。また、アマモ苗育成用積層体を所定の海域に運んでアマモ苗の育成に適した強さの太陽光がとどく海中の水深位置にくるように、複数のアンカー付きロープにより海底に固定するとともに、海面に浮くブイ付きロープにより水平状態が保たれるように配置してアマモ苗を育成するものであるから、積層体に多数のアマモ苗が順調に育成する。アマモ苗が育成すると、アンカー付きロープを外してこの積層体をアマモ場造成用海域までブイを付けたまま小船等で曳航するか、或いはアンカー付きロープおよびブイ付きロープを外してこの積層体を台船に引き上げて運ぶことができるから、アマモ苗のアマモ場造成用海域への運搬が便利であるし、従来のポットに較べて一挙に多数のアマモ苗を運ぶことができる利点がある。
【0009】
請求項2の発明のアマモ場造成方法によれば、請求項1記載のアマモ苗海中育成方法により育成せられたアマモ苗を有する積層体を多数アマモ場造成用海域に運び、これらを海底に沈めて分散配置し、アマモ場を造成するものであるから、従来のポットでアマモ苗を育成するのと異なり、アマモ場の造成を能率的に行なうことができる。そして、海底において、苗が成育して根や地下茎が伸びてきた場合、積層体における格子状基体の格子目より地中に根や地下茎が伸びていき、自然の状態でアマモが地中にしっかりと根づき地下茎から生えた新芽により充分繁茂する。さらに、格子状基体は、生分解性であり、マット状中間層は天然繊維を敷いたものであり、被覆ネットは生分解性繊維および天然繊維のいずれか一方の繊維よりなるものであるから、アマモ苗を有する積層体を海底に分散配置後、日時の経過により積層体は分解消失する。したがって、アマモ造成場の海域の環境を損ねることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を実施するための最良の形態を、以下図面を参照して説明する。
【0011】
図1ないし図3は、請求項1の発明の実施形態を示すものである。請求項1の発明によるアマモ苗海中育成方法は、図2に示すように、幅2m、長さ5mおよび厚さ1mmのポリ乳酸製格子状基体(1)にまず発芽したさいのアマモの根が絡みつくやし繊維(2)を10mmの厚さに敷いてマット状中間層(3)を形成し、つぎに中間層(3)全面に複数のアマモ種子(4)がゼラチン(5)で包まれている幅20mm、長さ20mmおよび厚さ10mmの加工種子(6)を多数散布し、つぎにその上を加工種子(6)より出た芽が通過しうる程度の目あい1.5mm×1.5mmを有する網目(7)のポリ乳酸製繊維よりなる被覆ネット(8)で覆い、最後に留め部材として工業用ホッチキス(9)で被覆ネット(8)を中間層(3)を介して基体(1)に固定することによりアマモ苗育成用積層体(10)を作.る。
【0012】
このアマモ苗育成用積層体(10)100個を図1に示すように所定の海域に運んでアマモ苗の育成に適した強さの太陽光がとどく海中の水深位置にくるように、複数のアンカー(11)付きロープ(12)により海底(13)に固定するとともに、海面(14)に浮くブイ(15)付きロープ(16)により水平状態が保たれるように配置する。
【0013】
上記加工種子(6)は、つぎのようにして作る。すなわち、長方形の容器にゼラチンを流し込み、つぎにゼラチン全体にアマモ種子を散布してゼラチン中に沈める。ゼラチンが固まると、容器から平板状ゼラチンを取り出し、この平板状ゼラチンを1つのゼラチン塊に5〜10のアマモ種子が含まれるように格子状に切断し、加工種子(6)を得る。
【0014】
図4は、請求項2の発明の実施形態を示すものである。請求項2の発明によるアマモ場造成方法は、請求項1記載のアマモ苗海中育成方法により育成せられたアマモ苗(17)を有する100個のアマモ苗育成用積層体(10)からアンカー付きロープおよびブイ付きロープを外し、適当数ずつ台船に引き上げてアマモ場造成用海域に運び、これらを自重で海底(13)に沈めて分散配置し、アマモ場を造成するものである。アマモの根は、格子状基体(1)の格子目(1a)より地中に伸びる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】請求項1の発明による実施の形態を示すもので、アマモ苗育成用積層体をアマモ苗の育成に適した強さの太陽光がとどく海中の水深位置にくるように複数のアンカー付きロープにより海底に固定するとともに、海面に浮くブイを有するロープにより水平状態が保たれるように配置した状態を示す側面図である。
【図2】図1のアマモ苗育成用積層体の平面図で、被覆ネットおよびマット状中間層を順次剥ぎ取った状態を示す。
【図3】一部を切り欠いた加工種子斜視図である。
【図4】請求項2の発明による実施の形態を示すもので、アマモ苗育成用積層体をアマモ場造成用海域の海底に沈めて配置し、アマモの根が格子状基体の格子目より地中に伸び出しかけた状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0016】
1 格子状基体
2 やし繊維
3 マット状中間層
4 アマモ種子
5 ゼラチン
6 加工種子
7 網目
8 被覆ネット
9 留め部材(工業用ホッチキス)
10 アマモ苗育成用積層体
11 アンカー
12 アンカー付きロープ
13 海底
14 海面
15 ブイ
16 ブイ付きロープ
17 アマモ苗
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性格子状基体にまず発芽したさいのアマモの根が絡みつく天然繊維を敷いてマット状中間層を形成し、つぎに中間層全面に1または複数のアマモ種子がゼラチンまたはこれと同効物で包まれている加工種子を多数散布し、つぎにその上を生分解性繊維および天然繊維のいずれか一方の繊維よりなり加工種子より出た芽が通過しうる程度の網目を有する被覆ネットで覆い、最後に留め部材または縫製糸で被覆ネットを中間層を介して基体に固定することによりアマモ苗育成用積層体を作り、このアマモ苗育成用積層体を所定の海域に運んでアマモ苗の育成に適した強さの太陽光がとどく海中の水深位置にくるように、複数のアンカー付きロープにより海底に固定するとともに、海面に浮くブイを有するロープにより水平状態が保たれるように配置することを特徴とするアマモ苗海中育成方法。
【請求項2】
請求項1記載のアマモ苗海中育成方法により育成せられたアマモ苗を有する多数のアマモ苗育成用積層体をアマモ場造成用海域に運び、これらを海底に沈めて分散配置し、アマモ場を造成することを特徴とするアマモ場造成方法。
【請求項1】
生分解性格子状基体にまず発芽したさいのアマモの根が絡みつく天然繊維を敷いてマット状中間層を形成し、つぎに中間層全面に1または複数のアマモ種子がゼラチンまたはこれと同効物で包まれている加工種子を多数散布し、つぎにその上を生分解性繊維および天然繊維のいずれか一方の繊維よりなり加工種子より出た芽が通過しうる程度の網目を有する被覆ネットで覆い、最後に留め部材または縫製糸で被覆ネットを中間層を介して基体に固定することによりアマモ苗育成用積層体を作り、このアマモ苗育成用積層体を所定の海域に運んでアマモ苗の育成に適した強さの太陽光がとどく海中の水深位置にくるように、複数のアンカー付きロープにより海底に固定するとともに、海面に浮くブイを有するロープにより水平状態が保たれるように配置することを特徴とするアマモ苗海中育成方法。
【請求項2】
請求項1記載のアマモ苗海中育成方法により育成せられたアマモ苗を有する多数のアマモ苗育成用積層体をアマモ場造成用海域に運び、これらを海底に沈めて分散配置し、アマモ場を造成することを特徴とするアマモ場造成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2006−296240(P2006−296240A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−119992(P2005−119992)
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【出願人】(390039114)株式会社田中 (21)
【出願人】(000222668)東洋建設株式会社 (131)
【出願人】(504389474)特定非営利活動法人アマモ種子バンク (2)
【出願人】(000201490)前田工繊株式会社 (118)
【出願人】(000204192)太陽工業株式会社 (174)
【出願人】(000115463)ライト工業株式会社 (137)
【出願人】(599027312)株式会社 吉田組 (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【出願人】(390039114)株式会社田中 (21)
【出願人】(000222668)東洋建設株式会社 (131)
【出願人】(504389474)特定非営利活動法人アマモ種子バンク (2)
【出願人】(000201490)前田工繊株式会社 (118)
【出願人】(000204192)太陽工業株式会社 (174)
【出願人】(000115463)ライト工業株式会社 (137)
【出願人】(599027312)株式会社 吉田組 (5)
【Fターム(参考)】
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