説明

アルキル基置換トリアリールアミン誘導体の新規な製造方法

【課題】遷移金属触媒を用いず、ほぼ定量的に進行する新規なクロスカップリング反応条件を見出し、トリアリールアミン誘導体の新規な製造方法を提供する。
【解決手段】環状エーテル溶媒中に、ハロゲン原子が置換した式(2)のトリアリールアミン誘導体を溶解または分散させた後、遷移金属触媒を用いず、アルキルリチウム試薬またはアルキルマグネシウムハライド試薬と反応させることを特徴とする式(1)で表されるアルキル基が置換したトリアリールアミン誘導体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真分野や有機エレクトロルミネッセンス分野で重要性の高いトリアリールアミン誘導体の新規な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トリアリールアミン誘導体は電子写真の感光体、近年では有機EL素子における正孔輸送材料、発光ホスト材料への応用等、重要な有機素材として広く当業者に認知されている。しかしながら、アルキル基を有しないトリアリールアミン誘導体は、概して殆どの有機溶剤に難溶であり、簡便で低コストである塗布プロセスを用いて感光体や、有機EL素子等の基板上に機能性薄膜を形成するには大きな制約があった。
【0003】
アリールアミン誘導体にアルキル基を導入する方法として、鈴木−宮浦反応に代表されるクロスカップリング反応が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、このクロスカップリング反応は、高価な遷移金属触媒を使用しなければならない、反応時間が概ね10〜30時間以上必要である、反応温度が概ね100℃以上必要である、収率が必ずしも定量的でない等の欠点があり、製造コスト面で不利であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Angewandte Chemie,International Edition,2004,vol.43,#14,p.1871−1876
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、遷移金属触媒を用いず、温和な反応条件で、短時間でほぼ定量的に進行する新規なクロスカップリング反応条件を見出し、トリアリールアミン誘導体に簡便にアルキル基を導入する新規な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
【0008】
1.下記一般式(1)で表されるアルキル基が置換したトリアリールアミン誘導体の製造方法であって、下記一般式(3)〜(5)で表される環状エーテル溶媒中に、下記一般式(2)で表されるハロゲン原子が置換したトリアリールアミン誘導体を溶解または分散させた後、遷移金属触媒を用いず、アルキルリチウム試薬またはアルキルマグネシウムハライド試薬と反応させることを特徴とする一般式(1)で表されるアルキル基が置換したトリアリールアミン誘導体の製造方法。
【0009】
【化1】

【0010】
(一般式(1)及び(2)において、R〜Rは水素原子または置換基を表す。複数のR〜Rは同じであっても異なっていてもよい。n1〜n3は0または1を表すが、全てが0であることはない。一般式(1)において、ALKはアルキル基を表す。一般式(2)においてX〜Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表す。)
【0011】
【化2】

【0012】
(一般式(3)及び一般式(4)において、R〜R22は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。一般式(5)において、R23〜R30は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
2.下記一般式(6)で表されるアルキル基が置換したトリアリールアミン誘導体の製造方法であって、下記一般式(3)〜(5)で表される環状エーテル溶媒中に、下記一般式(7)で表されるハロゲン原子が置換したトリアリールアミン誘導体を溶解または分散させた後、遷移金属触媒を用いず、アルキルリチウム試薬またはアルキルマグネシウムハライド試薬と反応させることを特徴とする一般式(6)で表されるアルキル基が置換したトリアリールアミン誘導体の製造方法。
【0013】
【化3】

【0014】
(一般式(6)及び(7)において、R〜Rは水素原子または置換基を表す。複数のR〜Rは同じであっても異なっていてもよい。n1〜n3は0または1を表すが、全てが0であることはない。一般式(6)において、ALKはアルキル基を表す。一般式(7)においてX〜Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表す。)
【0015】
【化4】

【0016】
(一般式(3)及び一般式(4)において、R〜R22は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。一般式(5)において、R23〜R30は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
3.前記環状エーテル溶媒が、前記一般式(3)で表される環状エーテル溶媒であることを特徴とする前記1または2に記載の一般式(1)または(6)で表されるアルキル基が置換したトリアリールアミン誘導体の製造方法。
【0017】
4.前記環状エーテル溶媒が、テトラヒドロフラン(THF)であることを特徴とする前記3に記載の一般式(1)または(6)で表されるアルキル基が置換したトリアリールアミン誘導体の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、遷移金属触媒を用いず、温和な反応条件で、短時間でほぼ定量的に進行する新規なクロスカップリング反応条件を見出し、トリアリールアミン誘導体に簡便にアルキル基を導入する新規な製造方法を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本願発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、特定の環状エーテル溶媒中、遷移金属触媒を用いず、アルキルリチウム試薬またはアルキルマグネシウムハライド試薬(グリニャール試薬)をハロゲン原子が置換した特定のトリアリールアミン誘導体と作用させることにより、簡便に高収率でトリアリールアミン誘導体にアルキル基を導入できることを見出し、本願発明に至った。
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0021】
〔一般式(1)で表されるトリアリールアミン誘導体の製造方法〕
前記一般式(1)で表されるアルキル基が置換したトリアリールアミン誘導体は、前記一般式(3)〜(5)で表される環状エーテル溶媒中に、前記一般式(2)で表されるハロゲン原子が置換したトリアリールアミン誘導体を溶解または分散させた後、遷移金属触媒を用いず、アルキルリチウム試薬またはアルキルマグネシウムハライド試薬と反応させることで製造される。
【0022】
一般式(1)及び(2)において、R〜Rは水素原子または置換基を表す。置換基としては隣接するベンゼン環同士を連結して含窒素縮合ヘテロ環を形成するのに必要な原子群、同一ベンゼン環上の複数のR〜Rが互いに結合して2環以上の縮合環を形成するのに必要な原子群、あるいは単なる連結基を含む。置換基の代表例としては、炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、炭素数1〜20の芳香族基(例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナンスロリル基等)、炭素数1〜20の複素芳香族基(例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、s−トリアジニル基、チエニル基、フリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基等)、炭素数1〜12のアルコキシ基、アリールオキシ基、炭素数1〜12のジアリールアミノ基、シアノ基、カルバゾリル基等が挙げられる。複数のR〜Rは同じであっても異なっていてもよい。
【0023】
n1〜n3は0または1を表すが、全てが0であることはない。好ましくはn1〜n3のいずれかが1で他が0の場合、または全てが1の場合である。
【0024】
ALKはアルキル基を表す。炭素数1〜12の第一級、第二級及び第三級アルキル基のいずれも好適に用いることができる。特に好ましくは第一級アルキル基である。具体例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基等が挙げられる。
【0025】
〜Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表す。好ましくは臭素原子である。
【0026】
〔一般式(6)で表されるトリアリールアミン誘導体の製造方法〕
前記一般式(6)で表されるアルキル基が置換したトリアリールアミン誘導体は、前記一般式(3)〜(5)で表される環状エーテル溶媒中に、前記一般式(7)で表されるハロゲン原子が置換したトリアリールアミン誘導体を溶解または分散させた後、遷移金属触媒を用いず、アルキルリチウム試薬またはアルキルマグネシウムハライド試薬と反応させることで製造される。
【0027】
一般式(6)及び(7)において、R〜Rは水素原子または置換基を表す。置換基としては隣接するベンゼン環同士を連結して含窒素縮合ヘテロ環を形成するのに必要な原子群、同一ベンゼン環上の複数のR〜Rが互いに結合して2環以上の縮合環を形成するのに必要な原子群、あるいは単なる連結基を含む。置換基の代表例としては、炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、炭素数1〜20の芳香族基(例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナンスロリル基等)、炭素数1〜20の複素芳香族基(例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、s−トリアジニル基、チエニル基、フリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基等)、炭素数1〜12のアルコキシ基、アリールオキシ基、炭素数1〜12のジアリールアミノ基、シアノ基、カルバゾリル基等が挙げられる。複数のR〜Rは同じであっても異なっていてもよい。
【0028】
n1〜n3は0または1を表すが、全てが0であることはない。好ましくはn1〜n3のいずれかが1で他が0の場合、または全てが1の場合である。
【0029】
ALKはアルキル基を表す。炭素数1〜12の第一級、第二級及び第三級アルキル基のいずれも好適に用いることができる。特に好ましくは第一級アルキル基である。具体例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基等が挙げられる。
【0030】
〜Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表す。好ましくは臭素原子である。
【0031】
以下に本発明の一般式(1)、(6)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
【化5】

【0033】
【化6】

【0034】
【化7】

【0035】
【化8】

【0036】
【化9】

【0037】
以下に本発明の一般式(2)、(7)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
【化10】

【0039】
【化11】

【0040】
【化12】

【0041】
【化13】

【0042】
【化14】

【0043】
〔一般式(3)〜(5)で表される環状エーテル溶媒〕
一般式(3)及び一般式(4)において、R〜R22は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、t−ブチルオキシ基が好ましく、より好ましくは、水素原子、メチル基、メトキシ基であり、特に好ましくは水素原子である。
【0044】
一般式(5)において、R23〜R30は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基が好ましく、より好ましくは、水素原子、メチル基であり、特に好ましくは水素原子である。
【0045】
上記一般式で表される環状エーテル溶媒(以下、本発明の溶媒と称する)は常圧下、−90〜50℃の温度範囲で液体であることが好ましい。また、沸点は常圧下、30〜120℃の範囲であることが好ましい。
【0046】
本発明の溶媒は、市販品のものは脱水グレードのものが好ましい。市販、非市販を問わず含水率としては100ppm以下であることが好ましい。
【0047】
本発明の溶媒は、本発明の一般式(2)または(7)で表されるハロゲン原子が置換したトリアリールアミン誘導体を−90〜30℃の温度範囲で均一に溶解または分散できるものが好ましい。さらには、W/V(%)で0.5〜25%の範囲で均一に溶解できるものがより好ましい。
【0048】
本発明の溶媒としては、前記一般式(3)で表される環状エーテル溶媒が好ましく、特にテトラヒドロフラン(THF)が好ましい。
【0049】
以下に本発明の溶媒の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
【化15】

【0051】
〔アルキルリチウム試薬及びアルキルマグネシウムハライド試薬〕
本発明におけるアルキルリチウム試薬及びアルキルマグネシウムハライド試薬(以下本発明の試薬と称する)におけるアルキル基としては、炭素数1〜12の第一級、第二級、及び第三級アルキル基のいずれも好適に用いることができる。特に好ましくは第一級アルキル基である。
【0052】
本発明のアルキルマグネシウムハライド試薬の好ましいハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられるが、最も好ましくは臭素原子である。
【0053】
本発明の試薬は、溶液の形態で供給、使用されることが好ましい。好適な溶媒としてはアルキルリチウム試薬ではn−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、及びジエチルエーテル等が挙げられる。アルキルマグネシウムハライド試薬ではジエチルエーテル、及びテトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0054】
本発明の試薬は従来公知の方法で容易に調整可能である。試薬の濃度は0.5〜2.5Mの範囲であることが好ましい。
【0055】
以下に本発明の試薬の具体例を列挙するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
アルキルリチウム試薬
Li−1 HC−Li/1M in Et
Li−2 nBu−Li/1.6M in n−hexane
Li−3 secBu−Li/1.1M in cyclohexane
Li−4 tBu−Li/1.4M in n−pentane
Li−5 nC11−Li/1.5M in n−hexane
Li−6 nC13−Li/1.4M in n−hexane
Li−7 nC17−Li/1.4M in n−hexane
Li−8 nC1225−Li/1.3M in n−hexane
アルキルマグネシウムハライド試薬
Mg−1 HC−MgBr/1M in THF
Mg−2 HC−MgBI/1M in Et
Mg−3 C−MgBr/1M in THF
Mg−4 iPr−MgBr/0.7M in THF
Mg−5 nC17−MgBr/1M in THF
Mg−6 nC1225−MgBr/1M in THF
〔トリアリールアミン誘導体の製造方法〕
本発明の製造方法では、反応は不活性ガス雰囲気下で実施することが好ましい。好ましい不活性ガスとしては窒素ガス、及びアルゴンガスが挙げられるが、製造コストの観点から窒素ガスが好ましい。不活性ガス中の水蒸気の含量は100ppm以下であることが好ましく、特に好ましくは50ppm以下である。
【0057】
ハロゲン原子が置換したトリアリールアミン誘導体を、本発明の溶媒に溶解または分散させる濃度は0.5〜25W/V(%)の範囲が好適に用いられる。
【0058】
本発明の溶媒に溶解または分散した後、溶液または分散液を常圧下、−90〜30℃の温度範囲下(好ましくは−30〜30℃)に調温し、遷移金属触媒を用いず、本発明のアルキルリチウム試薬またはアルキルマグネシウムハライド試薬を添加することにより反応させる。
【0059】
添加方法としては、滴下ロート及び注射器等、添加スピードをコントロールできる治具を好適に用いることができる。反応中の内温は、−70〜30℃の範囲(好ましくは−20〜30℃)に調温する。
【0060】
添加終了後、1〜10時間の範囲で反応中の内温を保ちつつ、撹拌することが好ましい。反応終了後は当業者には自明の公知の処理方法によって、目的物を容易に単離・精製することができる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0062】
実施例1
〔アルキル基置換トリアリールアミン誘導体の製造〕
(製造例1)
ALK−1の合成
脱水THF溶媒(関東化学社製)50mlにX−1を5.4g(17mmol)を溶解し、窒素気流下、内温0℃に冷却した。次にLi−2 10.9ml(17mmol)を20mlの滴下ロートにセットした。内温0〜10℃を保ちながら、約10分かけて滴下を行った。その後、内温を15〜25℃に保ちながら、3時間撹拌を行った。反応終了後、不溶物を濾別し、溶媒を減圧下に留去した。残さをメチレンクロリド−nヘキサンの混合溶媒で再結晶し、ALK−1を4.6g(収率93%)得た。構造はMASS及びNMRスペクトルにて同定した。
【0063】
(比較製造例1)
鈴木−宮浦カップリングによるALK−1の合成
脱水THF溶媒(関東化学社製)50mlにX−1を5.4g(17mmol)溶解し、n−ブチルボロン酸2.6g(25mmol)、酢酸パラジウム0.35g(1.6mmol)、燐酸カリウム7.1g(31mmol)、及びトリフェニルフォスフィン1.3g(3.2mmol)を加え、封管中、内温110℃で35時間加熱撹拌を行った。反応終了後、室温まで冷却し、不溶物を濾別後、溶媒を減圧下に留去した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:メチレンクロライド:n−ヘキサン:1:10)に付し、目的物を分離した。展開溶媒を濃縮後、残さをメチレンクロリド−nヘキサンの混合溶媒で再結晶し、ALK−1を2.7g(収率53%)得た。構造はMASS及びNMRスペクトルにて同定した。
【0064】
(製造例2)
ALK−2の合成
脱水THF溶媒(関東化学社製)50mlにX−2を5.0g(16mmol)を溶解し、窒素気流下、内温−15℃に冷却した。次にLi−2 10.2ml(16mmol)を20mlの滴下ロートにセットした。内温−10〜5℃を保ちながら、約10分かけて滴下を行った。その後、内温を10〜15℃に保ちながら、3時間撹拌を行った。反応終了後、不溶物を濾別し、溶媒を減圧下に留去した。残さをメチレンクロリド−nヘキサンの混合溶媒で再結晶し、ALK−2を4.5g(収率97%)得た。構造はMASS及びNMRスペクトルにて同定した。
【0065】
(比較製造例2)
鈴木−宮浦カップリングによるALK−2の合成
脱水THF溶媒(関東化学社製)50mlにX−2を5.0g(16mmol)溶解し、n−ブチルボロン酸2.4g(23mmol)、酢酸パラジウム0.35g(1.6mmol)、燐酸カリウム7.1g(31mmol)、及び下記リガンド1 1.3g(3.2mmol)を加え、封管中、内温100℃で30時間加熱撹拌を行った。反応終了後、室温まで冷却し、不溶物を濾別後、溶媒を減圧下に留去した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:メチレンクロライド:n−ヘキサン:1:10)に付し、目的物を分離した。展開溶媒を濃縮後、残さをメチレンクロリド−nヘキサンの混合溶媒で再結晶し、ALK−2を2.5g(収率54%)得た。構造はMASS及びNMRスペクトルにて同定した。
【0066】
【化16】

【0067】
(製造例3)
ALK−4の合成
脱水THF溶媒(関東化学社製)50mlにX−5を5.5g(10mmol)を溶解し、窒素気流下、内温0℃に冷却した。次にMg−4 15.0ml(11mmol)を30mlの滴下ロートにセットした。内温5〜10℃を保ちながら、約10分かけて滴下を行った。その後、内温を10〜25℃に保ちながら、3時間撹拌を行った。反応終了後、不溶物を濾別し、溶媒を減圧下に留去した。残さをトルエンで再結晶し、ALK−4を5.5g(収率97%)得た。構造はMASS及びNMRスペクトルにて同定した。
【0068】
(比較製造例3)
鈴木−宮浦カップリングによるALK−4の合成
脱水THF溶媒(関東化学社製)50mlにX−5を5.5g(10mmol)溶解し、i−Prボロン酸1.3g(15mmol)、酢酸パラジウム0.22g(1.0mmol)、燐酸カリウム4.2g(20mmol)、及びリガンド1 0.8g(0.2mmol)を加え、封管中、内温120℃で30時間加熱撹拌を行った。反応終了後、室温まで冷却し、不溶物を濾別後、溶媒を減圧下に留去した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエンラ:n−ヘキサン:1:10)に付し、目的物を分離した。展開溶媒を濃縮後、残さをトルエンで再結晶し、ALK−4を2.6g(収率45%)得た。構造はMASS及びNMRスペクトルにて同定した。
【0069】
(製造例4)
ALK−7の合成
脱水THF溶媒(関東化学社製)50mlにX−6を3.8g(7.8mmol)を溶解し、窒素気流下、内温−10℃に冷却した。次にLi−2 5.1ml(8.2mmol)を10mlの滴下ロートにセットした。内温−5〜0℃を保ちながら、約10分かけて滴下を行った。その後、内温を0〜5℃に保ちながら、6時間撹拌を行った。反応終了後、不溶物を濾別し、溶媒を減圧下に留去した。残さをトルエンで再結晶し、ALK−7を3.5g(収率96%)得た。構造はMASS及びNMRスペクトルにて同定した。
【0070】
(比較製造例4)
鈴木−宮浦カップリングによるALK−7の合成
脱水THF溶媒(関東化学社製)50mlにX−6を3.8g(7.8mmol)溶解し、n−Buボロン酸1.2g(12mmol)、酢酸パラジウム0.18g(0.8mmol)、燐酸カリウム3.3g(16mmol)、及びリガンド1 0.6g(1.6mmol)を加え、封管中、内温100℃で30時間加熱撹拌を行った。反応終了後、室温まで冷却し、不溶物を濾別後、溶媒を減圧下に留去した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン:n−ヘキサン:1:20)に付し、目的物を分離した。展開溶媒を濃縮後、残さをトルエンで再結晶し、ALK−7を1.4g(収率40%)得た。構造はMASS及びNMRスペクトルにて同定した。
【0071】
(製造例5)
ALK−12の合成
脱水テトラヒドロピラン溶媒(関東化学社製)50mlにX−11を4.1g(4.2mmol)を溶解し、窒素気流下、内温−20℃に冷却した。次にLi−1 13ml(13.2mmol)を20mlの滴下ロートにセットした。内温−15〜−5℃を保ちながら、約10分かけて滴下を行った。その後、内温を−5〜0℃に保ちながら、7間撹拌を行った。反応終了後、不溶物を濾別し、溶媒を減圧下に留去した。残さをトルエンで再結晶し、ALK−12を3.1g(収率95%)得た。構造はMASS及びNMRスペクトルにて同定した。
【0072】
(比較製造例5)
鈴木−宮浦カップリングによるALK−12の合成
脱水テトラヒドロピラン溶媒(関東化学社製)50mlにX−11を4.1g(4.2mmol)溶解し、メチルボロン酸1.1g(19mmol)、酢酸パラジウム0.28g(1.3mmol)、燐酸カリウム5.3g(25mmol)、及びリガンド1 1.0g(2.5mmol)を加え、封管中、内温130℃で30時間加熱撹拌を行った。反応終了後、室温まで冷却し、不溶物を濾別後、溶媒を減圧下に留去した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン:n−ヘキサン:1:15)に付し、目的物を分離した。展開溶媒を濃縮後、残さをトルエンで再結晶し、ALK−12を1.4g(収率40%)得た。構造はMASS及びNMRスペクトルにて同定した。
【0073】
(製造例6)
ALK−15の合成
脱水1,3−ジオキサン溶媒(関東化学社製)50mlにX−14を5.1g(6.1mmol)溶解し、窒素気流下、内温−5℃に冷却した。次にLi−8 5.2ml(6.7mmol)を20mlの滴下ロートにセットした。内温−5〜5℃を保ちながら、約10分かけて滴下を行った。その後、内温を5〜10℃に保ちながら、7間撹拌を行った。反応終了後、不溶物を濾別し、溶媒を減圧下に留去した。残さをトルエンで再結晶し、ALK−15を3.4g(収率96%)得た。構造はMASS及びNMRスペクトルにて同定した。
【0074】
(比較製造例6)
鈴木−宮浦カップリングによるALK−15の合成
脱水1,3−ジオキサン溶媒(関東化学社製)50mlにX−14を5.1g(6.1mmol)溶解し、n−ドデシルボロン酸2.00g(9.1mmol)、酢酸パラジウム0.14g(0.6mmol)、燐酸カリウム2.6g(12mmol)、及びリガンド1 0.5g(1.2mmol)を加え、封管中、内温120℃で25時間加熱撹拌を行った。反応終了後、室温まで冷却し、不溶物を濾別後、溶媒を減圧下に留去した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン:n−ヘキサン:1:20)に付し、目的物を分離した。展開溶媒を濃縮後、残さをトルエンで再結晶し、ALK−15を1.4g(収率38%)得た。構造はMASS及びNMRスペクトルにて同定した。
【0075】
(製造例7)
ALK−23の合成
脱水した2−メチル−テトラヒドロフラン50mlにX−22を6.0g(7.8mmol)溶解し、窒素気流下、内温−10℃に冷却した。次にLi−4 11ml(16mmol)を20mlの滴下ロートにセットした。内温−10〜0℃を保ちながら、約15分かけて滴下を行った。その後、内温を5〜10℃に保ちながら、5時間撹拌を行った。反応終了後、不溶物を濾別し、溶媒を減圧下に留去した。残さをトルエンで再結晶し、ALK−23を4.5g(収率92%)得た。構造はMASS及びNMRスペクトルにて同定した。
【0076】
(比較製造例7)
鈴木−宮浦カップリングによるALK−23の合成
脱水した2−メチル−テトラヒドロフラン50mlにX−22を6.0g(7.8mmol)溶解し、t−ブチルボロン酸1.2g(12mmol)酢酸パラジウム0.17g(0.8mmol)、燐酸カリウム3.3g(16mmol)、及びリガンド1 0.6g(1.6mmol)を加え、封管中、内温130℃で25時間加熱撹拌を行った。反応終了後、室温まで冷却し、不溶物を濾別後、溶媒を減圧下に留去した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン:n−ヘキサン:1:8)に付し、目的物を分離した。展開溶媒を濃縮後、残さをトルエンで再結晶し、ALK−23を1.9g(収率39%)得た。構造はMASS及びNMRスペクトルにて同定した。
【0077】
実施例1から、本発明の製造法は鈴木−宮浦カップリング反応を用いた従来の製造法に較べ、遷移金属触媒を用いずとも、温和な反応条件で、短時間でほぼ定量的に目的物を製造できることが分かる。
【0078】
実施例2
〔機能性薄膜の形成〕
上記製造したアルキル基が置換したトリアリールアミン誘導体は、広範囲な溶剤に高濃度に溶解可能であり、公知の塗布プロセスを用いて電子写真用感光体や有機EL素子に用いられる機能性薄膜を簡便に形成することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるアルキル基が置換したトリアリールアミン誘導体の製造方法であって、下記一般式(3)〜(5)で表される環状エーテル溶媒中に、下記一般式(2)で表されるハロゲン原子が置換したトリアリールアミン誘導体を溶解または分散させた後、遷移金属触媒を用いず、アルキルリチウム試薬またはアルキルマグネシウムハライド試薬と反応させることを特徴とする一般式(1)で表されるアルキル基が置換したトリアリールアミン誘導体の製造方法。
【化1】

(一般式(1)及び(2)において、R〜Rは水素原子または置換基を表す。複数のR〜Rは同じであっても異なっていてもよい。n1〜n3は0または1を表すが、全てが0であることはない。一般式(1)において、ALKはアルキル基を表す。一般式(2)においてX〜Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表す。)
【化2】

(一般式(3)及び一般式(4)において、R〜R22は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。一般式(5)において、R23〜R30は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【請求項2】
下記一般式(6)で表されるアルキル基が置換したトリアリールアミン誘導体の製造方法であって、下記一般式(3)〜(5)で表される環状エーテル溶媒中に、下記一般式(7)で表されるハロゲン原子が置換したトリアリールアミン誘導体を溶解または分散させた後、遷移金属触媒を用いず、アルキルリチウム試薬またはアルキルマグネシウムハライド試薬と反応させることを特徴とする一般式(6)で表されるアルキル基が置換したトリアリールアミン誘導体の製造方法。
【化3】

(一般式(6)及び(7)において、R〜Rは水素原子または置換基を表す。複数のR〜Rは同じであっても異なっていてもよい。n1〜n3は0または1を表すが、全てが0であることはない。一般式(6)において、ALKはアルキル基を表す。一般式(7)においてX〜Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表す。)
【化4】

(一般式(3)及び一般式(4)において、R〜R22は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。一般式(5)において、R23〜R30は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【請求項3】
前記環状エーテル溶媒が、前記一般式(3)で表される環状エーテル溶媒であることを特徴とする請求項1または2に記載の一般式(1)または(6)で表されるアルキル基が置換したトリアリールアミン誘導体の製造方法。
【請求項4】
前記環状エーテル溶媒が、テトラヒドロフラン(THF)であることを特徴とする請求項3に記載の一般式(1)または(6)で表されるアルキル基が置換したトリアリールアミン誘導体の製造方法。

【公開番号】特開2012−140387(P2012−140387A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1025(P2011−1025)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】