説明

アルミナセメント組成物及びそれを用いた補修工法

【課題】劣化したコンクリート構造物の補修に用いるアルミナセメント組成物およびそれを使用した補修工法を提供する。
【解決手段】アルミナセメント、ポゾラン物質、SiO/ROモル比が0.5〜2であるアルカリ金属珪酸塩、増粘剤および流動化剤を含有するアルミナセメント組成物であり、増粘剤が、粘度10,000〜40,000mPa・sの水溶性アルキルセルロース、水溶性ヒドロキシアルキルアルキルセルロースおよびスルホン酸塩基とアミド酸塩基を含有するポリマーの中から選ばれた少なくとも1種である前記アルミナセメント組成物であり、流動化剤が、ポリカルボン酸系物質類およびリグニンスルホン酸系物質類の中から選ばれた少なくとも1種である前記のうちいずれかのアルミナセメント組成物であり、前記のうちいずれかのアルミナセメント組成物を用いることを特徴とする補修工法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物の補修、特に硫酸により劣化を受けた下水処理施設のコンクリート構造物の補修などに使用するアルミナセメント組成物およびそれを用いた補修工法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理施設におけるコンクリート構造物は、下水中で発生する硫酸還元細菌の影響で硫酸が発生しコンクリートが侵食され、さらに内部の鉄筋の腐食で錆による膨張圧が生じ、コンクリートにひび割れ、浮きが発生し、コンクリート片のはく落などが起きている。このような下水処理施設での補修工法としては、劣化部をウォータージェットにより除去し断面修復してから樹脂ライニングを行う方法が多く実施されている。これに用いる断面修復材は、高炉水砕スラグにポリマーを配合した材料(特許文献1)、アルミナセメントを使用した材料(特許文献2、3)、高炉水砕スラグやシリカフュームなどの微粉末を多量に混和したセメントモルタルが使用されている(特許文献4)。また、アルミナセメントと高炉スラグ微粉末を用いた材料で、5μm以下のアルミナセメント粒子を25重量%以下とし、リチウム塩を含有する材料が提案されている(特許文献5)。
さらに、アルミナセメント、ポゾラン物質、LiO含有量が0.7〜2.5質量%のヘクトライト、無機繊維、および流動化剤を含有するアルミナセメント組成物が使用されている(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平03−290348号公報
【特許文献2】特開2003−89565号公報
【特許文献3】特開2004−292245号公報
【特許文献4】特開2000−128618号公報
【特許文献5】特開2002−293603号公報
【特許文献6】特開2007−223876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、硫酸によるコンクリート構造物の劣化は、セメントの水和で生じる水酸化カルシウムと硫酸が反応することで進行するため、通常のポルトランドセメントを用いた補修材料では樹脂ライニングにわずかなピンホールが存在すれば長期的な耐久性は望めないという課題があった。また、アルミナセメントを使用した場合でも下水処理施設には、湿度が低く風通りのよい開放されたピットや水路なども存在し、冬季の寒い時期の施工では、セメントの凝結時間が遅れるため初期収縮ひび割れが発生しやすく、表層部がドライアウトし、十分な付着強度が得られないという課題があった。さらに、微粉末を多量に混和した材料は、自己収縮がポリマーセメントよりも大きく、冬季に限らず初期ひび割れが発生しやすく、モルタルの粘りが強く作業性が悪いという課題があった。
本発明者らは、前記課題を解決するため、特定のアルミナセメント組成物およびそれを用いた補修工法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(1)アルミナセメント、ポゾラン物質、SiO/ROモル比が0.5〜2であるアルカリ金属珪酸塩、増粘剤および流動化剤を含有するアルミナセメント組成物、(2)増粘剤が、粘度3,000〜40,000mPa・sの水溶性アルキルセルロース、水溶性ヒドロキシアルキルアルキルセルロースおよびスルホン酸塩基とアミド酸塩基を含有するポリマーの中から選ばれた少なくとも1種である(1)のアルミナセメント組成物、(3)流動化剤が、ポリカルボン酸系物質類およびリグニンスルホン酸系物質類の中から選ばれた少なくとも1種である(1)または(2)のアルミナセメント組成物、(4)高分子繊維を含有する(1)〜(3)いずれかのアルミナセメント組成物、(5)セメント混和用ポリマーを含有する(1)〜(4)いずれかのアルミナセメント組成物、(6)骨材を含有する(1)〜(5)いずれかのアルミナセメント組成物、(7)(1)〜(6)のうちいずれかのアルミナセメント組成物を用いることを特徴とする補修工法、(8)(1)〜(6)のうちいずれかのアルミナセメント組成物を吹付けることを特徴とする補修工法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のアルミナセメント組成物は、流動性、作業性に優れる。さらに、その硬化体は、初期ひび割れ抵抗性、強度発現性、耐硫酸性などに優れるため、長期耐久性が良好なコンクリート構造物の補修を行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明における部や%は、特に規定しない限り質量基準で示す。
【0008】
本発明で使用するアルミナセメントとは、モノカルシウムアルミネートを主要鉱物として含有するクリンカー粉砕物から得られるものであり、例えば、アルミナセメント1号やアルミナセメント2号などが使用できる。アルミナセメントの粉末度は、水和活性の点で2000〜8000cm/gが好ましい。また、アルミナセメントの粒度調整を行い、粒子径5μm以下の粒子を全体の30質量%未満としたものが硬化するときの収縮が小さくなるので好ましい。
【0009】
本発明で使用するポゾラン物質とは、アルカリ刺激によりポゾラン活性を示す物質であり、アルミナセメントと併用することで、水和物の相転移による強度低下を抑制する目的や、施工時のモルタルのダレ抵抗性を向上させる目的で使用するものである。例えば、高炉水砕スラグ、高炉徐冷スラグ、転炉スラグ、シリカフューム、およびフライアッシュなどが挙げられる。
ポゾラン物質の粉末度は、水和活性の点でブレーン比表面積3000cm/g以上が好ましい。
ポゾラン物質の使用量は、通常、アルミナセメント100部に対して、80〜200部が好ましく、100〜150部がより好ましい。なお、シリカフュームは、アルミナセメント100部に対して1〜10部が好ましい。
【0010】
本発明で使用するSiO/RO(Rはアルカリ金属)モル比が0.5〜2であるアルカリ金属珪酸塩は、低温時の硬化性状の改善と耐硫酸性の向上を目的に使用する。アルカリ金属珪酸塩は、特に限定されるものではないが、珪酸ナトリウム、珪酸カリウムおよび珪酸リチウムなどがあげられる。これらは、粉末状あるいは溶液として使用して差し支えないが、プレミックスできることから粉末状のものが好ましい。中でも、工業的に安価である珪酸ナトリウムがより好ましい。SiO/ROモル比は0.5〜2が好ましく0.5〜1がより好ましい。0.5以下であると流動性に悪影響を及ぼす場合があり、2以上では耐硫酸性に悪影響を及ぼす場合がある。
アルカリ金属珪酸塩の使用量は、アルミナセメント100部に対して0.05〜10部が好ましく、0.1〜5部がより好ましい。0.05部未満では低温での硬化促進効果が小さく、10部を超えて使用すると、流動性に悪影響を及ぼす。
【0011】

本発明で使用するセメントとしては、普通、早強、超早強、低熱、および中庸熱などの各種ポルトランドセメントや、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ、又はシリカを混合した各種混合セメント、石灰石粉末や高炉徐冷スラグ微粉末などを混合したフィラーセメント、並びに、都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰を原料として製造された環境調和型セメント(エコセメント)などのポルトランドセメントが挙げられ、これらのうちの一種又は二種以上が使用可能である。
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【0012】
本発明で使用する増粘剤は、主に、断面修復した際のダレの防止と保水性の向上のために用いるものであり、粘度3,000〜40,000mPa・sの水溶性アルキルセルロース、水溶性ヒドロキシアルキルアルキルセルロースまたはスルホン酸塩基とアミド酸塩基を含有するポリマーの中から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする。例えば、信越化学社製SBQ−30000PEやBASFポゾリス社製STARVISなどが挙げられる。本発明における増粘剤の粘度は20℃における2%水溶液で測定したものである。
増粘剤の使用量は、アルミナセメント100部に対して、0.01〜5部が好ましく、0.05〜3部がより好ましい。0.01部未満では、ダレの防止と保水性の向上の効果は少なく、5部を超えて使用すると低温における硬化性状に悪影響を及ぼす場合がある。
【0013】
本発明で使用する流動化剤とは、モルタルに適度な流動性を与える目的で使用するものであり、例えば、ポリカルボン酸系物質類、メラミン系物質類、リグニンスルホン酸系質類、ナフタレンスルホン酸系物質類などが挙げられる。これらの中で、適度な流動性を与え、強度発現性に影響を与えにくい点でポリカルボン酸系物質類、リグニンスルホン酸系物質類を併用して使用することが好ましい。
【0014】
アルミナセメントにリチウムを含有する物質やアルカリ金属珪酸塩等を併用すると、少量でもフローロスが大きくなる傾向があり、20m以上のポンプ圧送を必要とする施工方法に適用することが困難な場合がある。しかしながら、ポリカルボン酸系物質とリグニンスルホン酸系物質を併用して使用すると、適当な流動性を与え且つフローロスを抑制できることが可能となり、コテ塗りはもちろんポンプ圧送性にも優れるアルミナセメント組成物とすることが可能である。
ポリカルボン酸系物質とリグニンスルホン酸系物質を併用する割合は、ポリカルボン酸系物質類100部に対してリグニンスルホン酸系物質類10〜200部が好ましい。10部未満では流動性ロスを抑制する効果が小さく、200部を超えると初期強度発現性を阻害する場合がある。
流動化剤の使用量は、アルミナセメント100部に対して0.05〜1.5部が好ましく、0.1〜1部がより好ましい。0.05部未満では、適度な流動性が得られ難く、1.5部を超えると強度発現性に影響する場合がある。
【0015】
本発明で使用する高分子繊維とは、アルミナセメントが硬化するまでに入るひび割れを抑制するために使用するもので、ひび割れ応力を分散する効果がある。繊維長やアスペクト比は特に限定するものではないが、ひび割れ抑制効果やモルタルの流動性を阻害しにくい点で繊維長が2〜15mm、アスペクト比が300〜1000の高分子繊維が好ましい。
高分子繊維の種類としては、例えば、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維などが挙げられる。特に限定されるものではないが、これらの中でモルタル中における繊維の付着力が比較的優れるビニロン繊維やアクリル繊維の使用が好ましい。
高分子繊維の使用量は、アルミナセメントとポゾラン物質と骨材の合計100部に対して0.02〜0.6部が好ましく、0.07〜0.4部がより好ましい。0.02部未満では、ひび割れ抑制効果が小さく、0.6部を超えるとモルタルの流動性に影響する場合がある。
【0016】
本発明で使用するセメント混和用ポリマーとは、JIS A 6203で規定されているセメント混和用のポリマー(ポリマーディスパージョン)であり、中性化、塩害、凍害などの耐久性を向上させ、モルタルの付着強度、曲げ強度、引張強度などの強度特性を改善する目的で使用する。
例えば、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、および天然ゴムなどのゴムラテックス、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸エステル、酢酸ビニルビニルバーサテート系共重合体、およびスチレン・アクリル酸エステル共重合体やアクリロニトリル・アクリル酸エステルに代表されるアクリル酸エステル系共重合体、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂に代表される液状ポリマーなどが挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物を使用できる。
セメント混和用ポリマーの使用量は、アルミナセメント100部に対して固形分換算で1〜20部が好ましく、3〜10部がより好ましい。1部未満では耐久性の向上効果が小さく、20部を超えると強度発現性に影響する場合がある。
【0017】
本発明のアルミナセメント組成物は、水と混合し、骨材を含まないペースト、あるいは骨材を含むモルタルやコンクリートとして使用できるが、使用する骨材の種類としては、特に限定されるものではないが、耐酸性を有する骨材の使用が好ましい。例えば、珪石骨材、アルミナ骨材、ムライト骨材、シャモット骨材、炭化珪素骨材、アルミナセメントクリンカー骨材などが挙げられる。
骨材の使用量は、アルミナセメントとポゾラン物質及びアルカリ金属珪酸塩の合計100部に対して250部以下であり、250部を超えると流動性や付着強度が低下する傾向がある。
また、2mm以下の薄塗りをする場合は骨材を含まないペーストを使用し、2mmを超える厚みを確保する場合は骨材を含むモルタルやコンクリートを使用することが好ましい。
【0018】
本発明では、低温においてより迅速な強度発現が必要な場合は、炭酸、硫酸、硝酸、水酸化物、リン酸、ホウ酸、有機酸などのリチウム塩を併用することができる。
また、本発明のアルミナセメント組成物には品質に悪影響を与えない範囲で、AE剤、増粘剤、発泡剤、凝結遅延剤、撥水剤、防錆剤、防凍剤、収縮低減剤、防水剤、抗菌剤などの各種添加剤を併用することができる。
【0019】
本発明のアルミナセメント組成物を用いたコンクリート構造物の補修では、ミキサーで練り混ぜたモルタルやコンクリートをコテで塗っても良く、型枠を作りその内部に充填しても良く、さらに、圧縮空気を用いて吹き飛ばす吹付けで施工しても良い。特に、大きな断面を補修する場合は,モルタルを吹付けで施工することが作業効率の点で好ましい。
【0020】
以下、実施例、比較例を挙げてさらに詳細に内容を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0021】
アルミナセメント100部に対して、ポゾラン物質100部、表1に示す種類と量の、アルカリ金属珪酸塩0.5部、増粘剤A0.1部、流動化剤0.7部(流動化剤A0.5部、流動化剤B0.2部)を加え、さらに、アルミナセメントとポゾラン物質とアルカリ金属珪酸塩の合計100部に対して、骨材170部を加えドライモルタルとしアルミナセメント組成物を調製した。なお、液体のアルカリ金属珪酸塩については水投入時に同時に添加した。このアルミナセメント組成物100部に対して水を13.8部加え、モルタルを調製した。モルタルのフロー、フロー保持率、ダレ性、始発時間、圧縮強度、耐硫酸性、保水率を測定した。その結果を表1に示す。
【0022】
(使用材料)
アルミナセメント:アルミナセメント1号、市販品
アルカリ金属珪酸塩A:市販品、無水メタ珪酸ナトリウム(粉末) SiO/ROモル比=1
アルカリ金属珪酸塩B:市販品、珪酸リチウム(液体) SiO/ROモル比=2アルカリ金属珪酸塩C:市販品、一号珪酸カリウム(液体) SiO/ROモル比=2
増粘剤A:市販品、メチルセルロース系増粘剤(商品名:SBQ−30000PE、信越化学社製、粘度30,000mPa・s)
ポゾラン物質A:高炉水砕スラグ微粉末、ブレーン比表面積7000cm/g、市販品
流動化剤:流動化剤Aのポリカルボン酸系物質(BASFポゾリス社製、商品名メルフラックスAP101F)100部に対し流動化剤Bのリグニンスルホン酸系物質(日本製紙ケミカル社製、商品名バニレックスN)40部を配合した混合物
骨材:乾燥珪砂、最大粒径1.2mm
【0023】
(試験方法)
フロー試験、圧縮強度試験:JIS R 5201に準拠して測定した。
フロー保持率: 練り混ぜた直後のフローと60分後のフローの比。測定は温度20℃、湿度80%で行った。
フロー保持率(%)=(60分後のフロー/練り混ぜ直後のフロー)×100
ダレ性:縦30cm×横30cm×厚み6cmのコンクリート製平版の表面を湿らせ、厚み2cmでモルタルを塗り付けて24時間後の付着状態を観察した。異常なければ○とし、はらんだり、ずれ落ちたりすれば×とした。試験は温度20℃、湿度60%の室内で行った。
始発時間:JIS A 1147に準拠して測定した(試験温度5℃)。
耐硫酸性試験: 練り混ぜたモルタルをφ7.5×15cmに成形し、温度20℃の水中に28日間養生後、温度20℃で5%硫酸水溶液中に28日間浸漬したときの硫酸イオンの浸透深さを測定した。浸透深さの判定はフェノールフタレイン法で行った。
保水率:練り混ぜたモルタルをφ5×2.5cmに成形し、速やかにその質量を測定し、温度20℃、湿度60%の室内に24時間放置した後、再び質量を測定した。
保水率(%)=(24時間後の質量/成型直後の質量)×100
【0024】
【表1】

【0025】
表1より、本発明のアルミナセメント組成物は、フローが大きくその保持率が高い優れた流動性と、優れたダレ性を有し、しかも、始発時間が長く作業性が良好で強度発現性、耐硫酸性および保水性に優れていることが判る。
【実施例2】
【0026】
アルミナセメント100部に対して、表2に示す量の増粘剤A、B、Cを加えた配合物を調製し、この配合物中のアルミナセメント100部に対して、ポゾラン物質100部、アルカリ金属珪酸塩A0.5部、流動化剤0.7部、さらに、アルミナセメントとポゾラン物質とアルカリ金属珪酸塩の合計100部に対して、骨材170部を加えドライモルタルとしたこと以外は実施例1と同様に行った。その結果を表2に示す。
【0027】
(使用材料)
増粘剤B:市販品、ヒドロキシプロピルメチルセルロース系増粘剤(商品名:SEB−15T、信越化学社製、粘度15,000mPa・s)
増粘剤C:市販品、スルホン酸基とアミド酸基を含有する合成ポリマー系増粘剤(商品名:STARVIS、BASFポゾリス社製)
【0028】
【表2】

【0029】
表2より、本発明のアルミナセメント組成物は、フローが大きくその保持率が高い優れた流動性と、優れたダレ性を有し、しかも、始発時間が長く作業性が良好で強度発現性、耐硫酸性及び保水性に優れていることが判る。
【実施例3】
【0030】
アルミナセメント100部に対して、表3に示す種類と量のポゾラン物質を加えた配合物を調製し、この配合物中のアルミナセメント100部に対して、アルカリ金属珪酸塩A0.5部、増粘剤A0.1部、流動化剤0.7部、さらに、アルミナセメントとポゾラン物質とアルカリ金属珪酸塩の合計100部に対して、骨材170部加えドライモルタルとしたこと以外は実施例1と同様に行った。その結果を表3に示す。
【0031】
(使用材料)
ポゾラン物質B:フライアッシュ、ブレーン比表面積4500cm/g、市販品
ポゾラン物質C:シリカフューム、平均粒子径0.1〜0.2μm、市販品
【0032】
【表3】

【0033】
表3より本発明のアルミナセメント組成物は、フローが大きくその保持率が高い優れた流動性と、優れたダレ性を有し、しかも、始発時間が長く作業性が良好で強度発現性、耐硫酸性及び保水性に優れていることが判る。
【実施例4】
【0034】
アルミナセメント100部に対して、表4に示す量の流動化剤Aと流動化剤Bを加え配合物を調製し、この配合物中のアルミナセメント100部に対して、アルカリ金属珪酸塩0.5部、増粘剤A0.1部、ポゾラン物質A100部、さらに、アルミナセメントとポゾラン物質とアルカリ金属珪酸塩の合計100部に対して、骨材170部を加えドライモルタルとしたこと以外は実施例1と同様に行った。その結果を表4に示す。
【0035】
【表4】

【0036】
表4より、本発明のアルミナセメント組成物は、フローが大きくその保持率が高い優れた流動性と、優れたダレ性を有し、しかも、始発時間が長く作業性が良好で強度発現性、耐硫酸性及び保水性に優れていることが判る。
【実施例5】
【0037】
アルミナセメント100部に対して、アルカリ金属珪酸塩0.5部、増粘剤A0.1部、流動化剤0.7部、ポゾラン物質A100部、さらに、アルミナセメントとポゾラン物質とアルカリ金属珪酸塩の合計100部に対して、骨材170部を加え、さらに、アルミナセメントとポゾラン物質とアルカリ金属珪酸塩と骨材の合計100部に対して表5に示す種類と量の高分子繊維を加えドライモルタルとし、初期ひび割れ抵抗性を測定したこと以外は実施例1と同様に行った。その結果を表5に示す。
【0038】
(使用材料)
高分子繊維A:ビニロン繊維、繊維長6mm、繊維径26μm、アスペクト比231、市販品
高分子繊維B:ビニロン繊維、繊維長6mm、繊維径14μm、アスペクト比429、市販品
【0039】
(試験方法)
初期ひび割れ抵抗性:練り混ぜたモルタルを縦30cm×横30cm×厚さ6cmのコンクリート製平板に厚さ10mmとなるようにコテで塗り付け、温度5℃、湿度40%、平均風速2m/sの空間に放置し、1日後のひび割れ全長さを測定した。
【0040】
【表5】

【0041】
表5より、本発明のアルミナセメント組成物は、フローが大きくその保持率が高い優れた流動性と、優れたダレ性を有し、しかも、始発時間が長く作業性が良好で強度発現性、耐硫酸性、保水性に優れ、さらに、初期ひび割れ抵抗性に優れていることが判る。
【実施例6】
【0042】
アルミナセメント100部に対して表6に示す量のセメント混和用ポリマーを加えた配合物を調製し、この配合物中のアルミナセメント100部に対して、アルカリ金属珪酸塩0.5部、増粘剤A0.1部、流動化剤0.7部、ポゾラン物質A 100部、さらに、アルミナセメントとポゾラン物質とアルカリ金属珪酸塩の合計100部に対して、骨材170部、さらに、アルミナセメントとポゾラン物質とアルカリ金属珪酸塩と骨材の合計100部に対して高分子繊維Aを表6に示す量を加えドライモルタルとし、塩化物イオン浸透抵抗性を測定したこと以外は実施例1と同様に行った。
【0043】
(使用材料)
セメント混和用ポリマー:アクリル−スチレン系再乳化型樹脂粉末、市販品
【0044】
(試験方法)
塩分浸透性試験:JIS A 1171に準拠した。
【0045】
【表6】

【0046】
表6より、本発明のアルミナセメント組成物は、フローが大きくその保持率が高い優れた流動性と、優れたダレ性を有し、しかも、始発時間が長く作業性が良好で強度発現性、耐硫酸性に優れ、さらに、塩分浸透性に優れていることが判る。
【実施例7】
【0047】
表7に示す実施例1、2、3、5、6の各実験No.のアルミナセメント組成物を用いて、サンドブラストで表面を目粗しした0.5mのコンクリート表面に厚み2cmになるようにコテを用いて塗り付け、ダレ性、60分練り置いた後のコテ塗り性、浮き、ひび割れを確認し、さらに、材齢30日後の付着強度を測定した。その結果を表7に示す。
【0048】
(試験方法)
ダレ性:サンドブラストした表面を目粗しした0.5mのコンクリート表面に厚み2cmになるように塗りつけて24時間後の付着状態を観察した。異常がなければ○とし、はらんだり、ずれ落ちたりすれば×とした。試験は温度20℃、湿度60%の室内で行った。
60分練り置いた後のコテ塗り性:練り混ぜてから60分後にコテ塗りを行ったときの作業性を確認した。硬くてコテ塗りできない場合は×、塗りにくい場合は△、練り混ぜ直後とほぼ同様なコテ塗り性であれば○とした。
浮き:材齢28日後に硬化したモルタルをハンマーで打音検査を行った。浮きがある場合は×、浮きが無い場合は○とした。
ひび割れ:材齢28日後に硬化したモルタルのひび割れの有無を観察し、ひび割れ全長さを測定した。付着強度:材齢28日後にφ55mmのコアドリルで硬化したモルタルを下地コンクリートまで削孔し、エポキシ樹脂で引張試験用のアタッチメントを取り付け、材齢30日となる時点で建研式引張試験機により測定した。
【0049】
【表7】

【0050】
表7より、本発明のアルミナセメント組成物は、優れたダレ性を有し、しかも、60分後のコテ塗り性に優れ、硬化したモルタルに浮きが無く、ひび割れが少なく、コンクリートとの付着強度が高いことが判る。
【実施例8】
【0051】
表8に示す実施例1、2、3、4、5、6の各実験No.のアルミナセメント組成物を用いて、サンドブラストで表面を目粗しした0.5mのコンクリート表面に厚み4cmになるように吹き付けた直後にコテ仕上げを行い、ダレ性、60分練り置いた後のポンプ圧送性、さらに、実施例7と同様に、浮き、ひび割れを確認し、材齢30日後の付着強度を測定した。その結果を表8に示す。
【0052】
(試験方法)
ダレ性:サンドブラストした表面を目粗しした0.5mのコンクリート表面に厚み4cmになるように吹き付けて24時間後の付着状態を観察した。異常がなければ○とし、はらんだり、ずれ落ちたりすれば×とした。試験は温度20℃、湿度60%の室内で行った。
60分練り置いた後のポンプ圧送性:練り混ぜたアルミナセメント組成物をホッパーに投入し、ホース先端まで圧送後運転を停止し、60分後再起動したときのポンプの圧送負荷を確認した。負荷が大き過ぎて圧送できない場合は×、圧送できる場合を○とした。
【0053】
【表8】

【0054】
表8より、本発明のアルミナセメント組成物は、優れたダレ性を有し、しかも、60分後のポンプ圧送性に優れ、硬化したモルタルに浮きが無く、ひび割れが少なく、コンクリートとの付着強度が高いことが判る。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のアルミナセメント組成物およびそれを用いた補修工法は、流動性、作業性に優れる。さらに、初期ひび割れ抵抗性、強度発現性、耐硫酸性などに優れるため長期耐久性が良好なコンクリート構造物の補修を容易に行うことが可能となるので、下水処理施設などの土木分野に幅広く適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナセメント、ポゾラン物質、SiO/ROモル比が0.5〜2であるアルカリ金属珪酸塩、増粘剤および流動化剤を含有するアルミナセメント組成物。
【請求項2】
増粘剤が、粘度10,000〜40,000mPa・sの水溶性アルキルセルロース、水溶性ヒドロキシアルキルアルキルセルロースおよびスルホン酸塩基とアミド酸塩基を含有するポリマーの中から選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載のアルミナセメント組成物。
【請求項3】
流動化剤が、ポリカルボン酸系物質類およびリグニンスルホン酸系物質類の中から選ばれた少なくとも1種である請求項1または2に記載のアルミナセメント組成物。
【請求項4】
高分子繊維を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルミナセメント組成物。
【請求項5】
セメント混和用ポリマーを含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のアルミナセメント組成物。
【請求項6】
骨材を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載のアルミナセメント組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のアルミナセメント組成物を用いることを特徴とする補修工法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のアルミナセメント組成物を吹付けることを特徴とする補修工法。

【公開番号】特開2012−82113(P2012−82113A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230906(P2010−230906)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】